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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185738
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】蓄電装置の冷却システム
(51)【国際特許分類】
   B60L 58/26 20190101AFI20221208BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20221208BHJP
   B60K 11/06 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
B60L58/26
B60L50/60
B60K11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093537
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 洋介
【テーマコード(参考)】
3D038
5H125
【Fターム(参考)】
3D038AA09
3D038AB01
3D038AC22
5H125AA01
5H125AC12
5H125BA09
5H125BC19
5H125CD07
5H125EE22
5H125EE25
(57)【要約】
【課題】車室内の空気を蓄電装置に送り込むための吸気通路に温度センサを設けずにまたは温度センサを設けた場合にその検出値を用いずに、蓄電装置に車室内の温度が蓄電装置の温度よりも高いことに起因する蓄電装置の温度上昇を抑制可能にする。
【解決手段】蓄電装置と共に車両に搭載され、車室内の空気を蓄電装置に送風する送風ファンと、送風ファンを制御する制御装置と、を備える蓄電装置の冷却システムであって、制御装置は、車両の停車中であり且つ蓄電装置の電流に関連する電流関連値が値0を含む所定範囲内であり且つ送風ファンを駆動していて且つ蓄電装置の温度上昇が継続している所定条件の成立を確認したときには、送風ファンを停止する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電装置と共に車両に搭載され、車室内の空気を前記蓄電装置に送風する送風ファンと、前記送風ファンを制御する制御装置と、を備える蓄電装置の冷却システムであって、
前記制御装置は、前記車両の停車中であり且つ前記蓄電装置の電流に関連する電流関連値が値0を含む所定範囲内であり且つ前記送風ファンを駆動していて且つ前記蓄電装置の温度上昇が継続している所定条件の成立を確認したときには、前記送風ファンを停止する、
蓄電装置の冷却システム。
【請求項2】
請求項1記載の蓄電装置の冷却システムであって、
前記制御装置は、前記所定条件の成立の継続時間が所定時間以上に至ったときに、前記所定条件の成立を確認したと判定する、
蓄電装置の冷却システム。
【請求項3】
請求項1記載の蓄電装置の冷却システムであって、
前記制御装置は、前記所定条件の成立の継続に伴ってカウンタをカウントアップすると共に前記所定条件が成立していないときに前記カウンタをリセットし、前記カウンタが所定値以上に至ったときに、前記所定条件の成立を確認したと判定する、
蓄電装置の冷却システム。
【請求項4】
請求項1ないし3のうちの何れか1つの請求項に記載の蓄電装置の冷却システムであって、
前記制御装置は、前記所定条件の成立を確認して前記送風ファンを停止した後に、前記蓄電装置の温度が第1所定温度以上に至ったときには、前記送風ファンを駆動し、前記蓄電装置の温度が前記第1所定温度よりも低い第2所定温度以下に至るまで、前記送風ファンの駆動を継続する、
蓄電装置の冷却システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置の冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の蓄電装置の冷却システムとしては、車室内の空気を取り込んで蓄電装置に送り込む冷却ファンと、車室内の空気の取り込み口から冷却ファンを経て蓄電装置に至るまでの吸気通路に設けられた吸気温度センサと、を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この冷却システムでは、車速に応じた冷却ファンの最大許容回転数以下の範囲内で、蓄電装置の温度に応じて冷却ファンの回転数を変化させる可変制御を行なう。また、冷却ファンによる送出空気体積が、吸気通路における空気の取り込み口から吸気温度センサに至るまでの体積以上になったときに吸気温度センサから吸気温度を取得し、吸気温度が蓄電装置の温度以上であるときに冷却ファンを停止する。このようにして、車室内の温度が蓄電装置の温度よりも高いことに起因する蓄電装置の温度上昇を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-95061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の冷却システムでは、車室内の温度が蓄電装置の温度よりも高いか否かを判定するために、吸気温度センサにより吸気温度を検出する必要がある。一方、システムの部品点数の削減などのために吸気温度センサを省略したり、吸気温度センサの信頼性が低いときに吸気温度センサにより検出される吸気温度を用いないようにすることも求められている。したがって、吸気温度センサを設けずにまたは吸気温度センサにより検出される吸気温度を用いずに、車室内の温度が蓄電装置の温度よりも高いことに起因する蓄電装置の温度上昇を抑制可能にすることが課題の一つとされている。
【0005】
本発明の蓄電装置の冷却システムは、車室内の空気を蓄電装置に送り込むための吸気通路に温度センサを設けずにまたは温度センサを設けた場合にその検出値を用いずに、蓄電装置に車室内の温度が蓄電装置の温度よりも高いことに起因する蓄電装置の温度上昇を抑制可能にすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の蓄電装置の冷却システムは、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の蓄電装置の冷却システムは、
蓄電装置と共に車両に搭載され、車室内の空気を前記蓄電装置に送風する送風ファンと、前記送風ファンを制御する制御装置と、を備える蓄電装置の冷却システムであって、
前記制御装置は、前記車両の停車中であり且つ前記蓄電装置の電流に関連する電流関連値が値0を含む所定範囲内であり且つ前記送風ファンを駆動していて且つ前記蓄電装置の温度上昇が継続している所定条件の成立を確認したときには、前記送風ファンを停止する、
ことを要旨とする。
【0008】
本発明の蓄電装置の冷却システムでは、車両の停車中であり且つ蓄電装置の電流に関連する電流関連値が値0を含む所定範囲内であり且つ送風ファンを駆動していて且つ蓄電装置の温度上昇が継続している所定条件の成立を確認したときには、送風ファンを停止する。車両の停車中であり且つ電流関連値が所定範囲内であり(蓄電装置の発熱が十分に小さいと想定され)且つ送風ファンを駆動しているときに、蓄電装置の温度上昇が継続しているときには、車室内の温度が蓄電装置の温度よりも高いと想定される。したがって、所定条件の成立を確認したときに、送風ファンを停止することにより、車室内の温度が蓄電装置の温度よりも高いことに起因する蓄電装置の更なる温度上昇を抑制することができる。ここで、「電流関連値」には、電流だけでなく、電流の二乗値、電流やその二乗値に緩変化処理を施した処理後値、電流の二乗値に蓄電装置の内部抵抗値を乗じて得られる蓄電装置の発熱量なども含まれる。
【0009】
本発明の蓄電装置の冷却システムにおいて、前記制御装置は、前記所定条件の成立の継続時間が所定時間以上に至ったときに、前記所定条件の成立を確認したと判定するものとしてもよい。また、前記制御装置は、前記所定条件の成立の継続に伴ってカウンタをカウントアップすると共に前記所定条件が成立していないときに前記カウンタをリセットし、前記カウンタが所定値以上に至ったときに、前記所定条件の成立を確認したと判定するものとしてもよい。これらのようにすれば、所定条件の成立の確認をより適切に行なうことができる。
【0010】
本発明の蓄電装置の冷却システムにおいて、前記制御装置は、前記所定条件の成立を確認して前記送風ファンを停止した後に、前記蓄電装置の温度が第1所定温度以上に至ったときには、前記送風ファンを駆動し、前記蓄電装置の温度が前記第1所定温度よりも低い第2所定温度以下に至るまで、前記送風ファンの駆動を継続するものとしてもよい。所定条件の成立を確認して送風ファンを停止した後に蓄電装置の温度が第1所定温度以上に至ったときには、送風ファンによって蓄電装置の温度よりも高温の車室内の空気を蓄電装置に送風していたことにより蓄電装置の温度が上昇したのではなく、別要因により蓄電装置の温度が上昇していると想定される。したがって、送風ファンを駆動することにより、蓄電装置の過熱を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施例としての蓄電装置の冷却システムを備える電気自動車20の構成の概略を示す構成図である。
図2】ECU70により実行される制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
図3】停車中条件および発熱小条件が成立しているときのメインバッテリ38の温度Tbおよび送風ファン60の駆動の有無の様子の一例を示す説明図である。
図4】ECU70により実行される制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
図5】停車中条件および発熱小条件が成立しているときのメインバッテリ38の温度Tbおよび送風ファン60の駆動の有無の様子の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例0013】
図1は、本発明の一実施例としての蓄電装置の冷却システムを備える電気自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例の電気自動車20は、走行用モータ32と、走行用インバータ34と、蓄電装置としてのメインバッテリ38と、補機バッテリ40と、DC/DCコンバータ44と、冷却装置50と、電子制御ユニット(以下、「ECU」という)70とを備える。なお、電気自動車20は、システムオフ中に外部電源からの電力を用いてメインバッテリ38を充電可能となっている。実施例の蓄電装置の冷却システムとしては、主として、冷却装置50およびECU70が該当する。
【0014】
走行用モータ32は、例えば同期発電電動機として構成されており、走行用モータ32の回転子は、駆動輪22にデファレンシャルギヤ24を介して連結された駆動軸26に接続されている。走行用インバータ34は、走行用モータ32の駆動に用いられると共に電力ライン36に接続されている。走行用インバータ34に電圧が作用しているときに、ECU70によって走行用インバータ34の複数のスイッチング素子がスイッチング制御されることにより、走行用モータ32が回転駆動される。電力ライン36には、車室内の空気調和を行なう図示しない空調装置(コンプレッサ)も接続されている。
【0015】
メインバッテリ38は、例えば定格電圧が数百V程度のリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池として構成されており、電力ライン36に接続されている。このメインバッテリ38は、ケース52内に収容されている。補機バッテリ40は、例えば定格電圧が12Vのチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池、鉛蓄電池として構成されており、電力ライン42に接続されている。電力ライン42には、補機バッテリ40に加えて、冷却装置50のファン用インバータ64やECU70、図示しないライト類やオーディオシステム、ナビゲーション装置なども接続されている。DC/DCコンバータ44は、電力ライン36と電力ライン42とに接続されており、電力ライン36の電力を降圧して電力ライン42に供給する。
【0016】
冷却装置50は、上述のケース52と、吸気通路54と、送風ファン60と、ファン用モータ62と、ファン用インバータ64とを備える。メインバッテリ38および冷却装置50は、車室内、例えば、後部座席の下方などに配置される。ケース52には、吸気口52iおよび排出口52oが形成されている。送風ファン60により送風される空気は、吸気口52iを介してケース52内に流通してメインバッテリ38と熱交換を行なう。また、ケース52内の空気は、排出口52oから排出される。
【0017】
吸気通路54は、車室内の空気を取り込み口55から取り込んで送風ファン60を経由してケース52の吸気口52iに案内するための通路であり、取り込み口55に加えて、取り込みダクト56と、送風ファン60を収容するケース部57と、接続ダクト58とを有する。取り込み口55には、塵埃を除去するフィルタ55fが取り付けられている。取り込みダクト56は、取り込み口55からの空気をケース部57に形成された吸気口57iに案内するための通路である。ケース部57には、取り込みダクト56からの空気を吸い込むための吸気口57iに加えて、ケース部57内の空気を接続ダクト58に送り出すための送出口57oも形成されている。接続ダクト58は、ケース部57からの空気をケース52の吸気口52iに案内するための通路である。
【0018】
送風ファン60は、例えばシロッコファン(多翼送風機)として構成されている。この送風ファン60は、取り込みダクト56から吸気口57iを介してケース部57内に取り込んだ空気を送出口57oを介して接続ダクト58に送り出す。ファン用モータ62は、送風ファン60を回転駆動するためのモータであり、例えば同期電動機として構成されている。ファン用インバータ64は、ファン用モータ62の駆動に用いられると共に電力ライン42に接続されている。ファン用インバータ64に電圧が作用しているときに、ECU70によってファン用インバータ64の複数のスイッチング素子がスイッチング制御されることにより、ファン用モータ62(送風ファン60)が回転駆動される。
【0019】
ECU70は、図示しないが、CPUやROM、RAM、フラッシュメモリ、入出力ポート、通信ポートを有するマイクロコンピュータを備える。ECU70には、各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。ECU70に入力される信号としては、例えば、回転位置センサ(例えばレゾルバ)32aからの走行用モータ32の回転子の回転位置θmrを挙げることができる。温度センサ38tからのメインバッテリ38の温度Tbや、電圧センサ38vからのメインバッテリ38の電圧Vb、電流センサ38iからのメインバッテリ38の電流Ibも挙げることができる。回転位置センサ(例えばレゾルバ)62aからのファン用モータ62(送風ファン60)の回転位置θmfも挙げることができる。スタートスイッチ72からのスタート信号や、図示しないシフトレバーの操作位置を検出する図示しないシフトポジションセンサからのシフトポジションSP、図示しないアクセルペダルの踏み込み量を検出する図示しないアクセルペダルポジションセンサからのアクセル開度Acc、図示しないブレーキペダルの踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサからの図示しないブレーキペダルポジション、車速センサ74からの車速Vも挙げることができる。
【0020】
ECU70からは、各種制御信号が出力ポートを介して出力されている。ECU70から出力される信号としては、例えば、走行用インバータ34への制御信号や、DC/DCコンバータ44への制御信号、ファン用インバータ64への制御信号を挙げることができる。ECU70は、回転位置センサ32aからの走行用モータ32の回転子の回転位置θmrに基づいて走行用モータ32の回転数Nmrを演算したり、回転位置センサ62aからのファン用モータ62の回転子の回転位置θmfに基づいてファン用モータ62の回転数Nmf(送風ファン60の回転数Nf)を演算したりしている。また、ECU70は、電流センサ38iからのメインバッテリ38の電流Ibの積算値に基づいてメインバッテリ38の蓄電割合SOCを演算したり、温度センサ38tからのメインバッテリ38の温度Tbおよび蓄電割合SOCに基づいてメインバッテリ38の許容入出力電力Win,Wout(メインバッテリ38から放電する側が正の値)を設定したりしている。メインバッテリ38の許容入力電力Winは、値0以下の範囲内で、蓄電割合SOCが高いほど絶対値が小さくなり且つ温度Tbが閾値Tbhiよりも高い領域で温度Tbが閾値Tbhi以下の領域に比して絶対値が小さくなるように設定される。メインバッテリ38の許容出力電力Woutは、値0以上の範囲内で、蓄電割合SOCが低いほど絶対値が小さくなり且つ温度Tbが閾値Tbhiよりも高い領域で温度Tbが閾値Tbhi以下の領域に比して絶対値が小さくなるように設定される。
【0021】
こうして構成された実施例の電気自動車20では、ECU70は、アクセル開度Accおよび車速Vに基づいて走行に要求される(駆動軸26に要求される)要求トルクTd*を設定し、設定した要求トルクTd*が駆動軸26に出力されるように走行用モータ32のトルク指令Tm*の仮値である仮トルクTmtmpを設定する。また、メインバッテリ38の許容入出力電力Win,Woutを走行用モータ32の回転数Nmrで除して、走行用モータ32の許容上下限トルクTmin,Tmaxを設定する。そして、走行用モータ32の仮トルクTmtmpを許容上下限トルクTmin,Tmaxで制限して走行用モータ32のトルク指令Tm*を設定し、走行用モータ32がトルク指令Tm*で駆動されるように走行用インバータ34の複数のスイッチング素子をスイッチング制御する。
【0022】
次に、実施例の電気自動車20が備える蓄電装置の冷却システムの動作、特に、送風ファン60の制御について説明する。図2は、ECU70により実行される制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、繰り返し実行される。
【0023】
図2の制御ルーチンが実行されると、ECU70は、最初に、メインバッテリ38の温度Tbや電流Ib、車速Vなどのデータを入力する(ステップS100)。ここで、メインバッテリ38の温度Tbは、温度センサ38tにより検出された値が入力される。メインバッテリ38の電流Ibは、電流センサ38iにより検出された値が入力される。車速Vは、車速センサ74により検出された値が入力される。
【0024】
こうしてデータを入力すると、車速Vに基づいて、車両が停車中である停車中条件が成立しているか否かを判定し(ステップS110)、メインバッテリ38の電流Ibに基づいて、メインバッテリ38の発熱がその温度上昇に影響を与えない程度に小さい発熱小条件が成立しているか否かを判定し(ステップS120)、メインバッテリ38の温度Tbに基づいて、メインバッテリ38の冷却のために送風ファン60の駆動を要求する駆動温度条件が成立しているか否かを判定する(ステップS130)。
【0025】
ここで、ステップS110の処理は、車速Vが閾値Vref以下であるか否かを判定することにより行なわれる。閾値Vrefとしては、例えば、0km/hやそれよりも若干高い値などが用いられる。ステップS120の処理は、メインバッテリ38の電流Ibの二乗値が閾値Ibref以下であるか否かを判定することにより行なわれ、例えば、数A程度の二乗値が用いられる。閾値Ibrefは、メインバッテリ38の仕様、特に熱容量などに基づいて設定される。ステップS130の処理は、メインバッテリ38の温度Tbが閾値Tbref1以上であるか否かを判定することにより行なわれる。閾値Tbref1は、メインバッテリ38の仕様に基づいて設定され、例えば、30℃~40℃程度が用いられる。
【0026】
ステップS110で停車中条件が成立していないと判定したときや、ステップS120で発熱小条件が成立していないと判定したとき、ステップS130で駆動温度条件が成立していないと判定したときには、送風ファン60の通常制御を実行し(ステップS140)、カウンタCspを値0にリセットして(ステップS150)、本ルーチンを終了する。ここで、カウンタCspは、停車中条件、発熱小条件、駆動温度条件が成立していて且つ送風ファン60を駆動していて且つメインバッテリ38の温度上昇が継続しているときの継続時間を意味する。
【0027】
ここで、ファン通常制御は、以下のように行なわれる。ECU70は、送風ファン60(ファン用モータ62)の停止中に、メインバッテリ38の温度Tbが閾値Tbref1以上に至ると、送風ファン60の駆動を開始し、送風ファン60の駆動中に、メインバッテリ38の温度Tbが閾値Tbref1よりも低い閾値Tbref2以下に至ると、送風ファン60の駆動を停止する。閾値Tbref1は、送風ファン60の停止中に上述の駆動温度条件が成立しているか否かを判定するのに用いられる閾値である。閾値Tbref2は、送風ファン60の駆動中にその停止を要求する停止温度条件が成立しているか否かを判定するのに用いられる閾値である。閾値Tbref2としては、例えば、閾値Tbref1よりも数℃程度低い値が用いられる。
【0028】
送風ファン60の駆動に際しては、以下のファン駆動制御が実行される。ECU70は、メインバッテリ38の温度Tbおよび車速Vに基づいて送風ファン60(ファン用モータ62)の目標回転数Nf*を設定し、送風ファン60が目標回転数Nf*で回転するようにファン用インバータ64の複数のスイッチング素子をスイッチング制御する。目標回転数Nf*は、例えば、メインバッテリ38の温度Tbに基づく仮回転数Nftmpを、車速Vに基づく許容上限回転数Nfmaxで上限ガードして設定することができる。仮回転数Nftmpは、メインバッテリ38の温度Tbが高いほど高くなるように設定される。これは、メインバッテリ38をその温度Tbに応じて冷却するためである。許容上限回転数Nfmaxは、車速Vが高いほど高くなるように設定される。これは、車速Vが高いほど送風ファン60やファン用モータ62の駆動による騒音がロードノイズなどに紛れるためである。
【0029】
ステップS110で停車中条件が成立していると判定し、且つ、ステップS120で発熱小条件が成立していると判定し、且つ、ステップS130で駆動温度条件が成立していると判定したときには、送風ファン60を強制停止中であるか否かを判定する(ステップS160)。送風ファン60の強制停止は、後述のステップS210の処理により行なわれる。送風ファン60を強制停止中でないと判定したときには、送風ファン60の駆動を開始するまたは継続する(ステップS170)。送風ファン60の駆動に際しては、上述のファン駆動制御が実行される。
【0030】
続いて、メインバッテリ38の温度上昇が継続しているか否かを判定する(ステップS180)。この処理は、例えば、メインバッテリ38の温度Tbの今回値が前回値よりも高いか否かを判定することにより行なうことができる。停車中条件、発熱小条件、駆動温度条件が成立していて且つ送風ファン60を駆動しているときには、送風ファン60によって車室内の空気をケース52内に送風することにより、基本的には、メインバッテリ38を冷却することができる。しかし、電力ライン36(メインバッテリ38)からの電力を用いて作動可能な図示しない空調装置により車室内の暖房を行なっている場合など、車室内の温度がメインバッテリ38の温度Tbよりも高く、送風ファン60によってメインバッテリ38の温度Tbよりも高温の空気をケース52内に送風している場合、メインバッテリ38の温度Tbが上昇し得る。ステップS180の処理は、これを考慮して行なわれる処理である。
【0031】
ステップS180でメインバッテリ38の温度上昇が継続していないと判定したときには、カウンタCspを値0にリセットして(ステップS150)、本ルーチンを終了する。この場合、送風ファン60によって車室内の空気をケース52内に送風することにより、メインバッテリ38が冷却されていると想定される。そして、その後に、停車中条件、発熱小条件、駆動温度条件のうちの少なくとも1つが不成立になると、送風ファン60の通常制御を実行する。
【0032】
ステップS180でメインバッテリ38の温度上昇が継続していると判定したときには、カウンタCspを値1だけカウントアップし(ステップS190)、そのカウンタCspが閾値Cspref以上に至ったか否かを判定する(ステップS200)。上述したように、停車中条件、発熱小条件、駆動温度条件が成立していて且つ送風ファン60を駆動しているときにおいて、送風ファン60によってメインバッテリ38の温度Tbよりも高温の空気をケース52内に送風している場合、メインバッテリ38の温度Tbが上昇し得る。閾値Csprefは、停車中条件、発熱小条件、駆動温度条件が成立していて且つ送風ファン60を駆動していて且つメインバッテリ38の温度上昇が継続しているのを確認するのに要する時間、且つ、送風ファン60によってメインバッテリ38の温度Tbよりも高温の空気をケース52内に送風していることによりメインバッテリ38の温度上昇が生じていると確定するのに要する時間、に相当するカウンタ値である。この閾値Csprefとしては、例えば、数分~数十分程度に相当するカウンタ値が用いられる。なお、停車中条件、発熱小条件、駆動温度条件が成立していて且つ送風ファン60を駆動していて且つメインバッテリ38の温度上昇が継続しているときとしては、例えば、ディーラや整備工場で図示しない空調装置により車室内の暖房を行ないながら作業者が車両の点検を行なっているときなどを挙げることができる。ステップS200でカウンタCspが閾値Cspref未満であると判定したときには、本ルーチンを終了する。
【0033】
ステップS200でカウンタCspが閾値Cspref以上であると判定したときには、停車中条件、発熱小条件、駆動温度条件が成立していて且つ送風ファン60を駆動していて且つメインバッテリ38の温度上昇が継続しているのを確認したと判定し、送風ファン60によってメインバッテリ38の温度Tbよりも高温の空気をケース52内に送風していることによりメインバッテリ38の温度上昇が生じていると確定する。そして、送風ファン60を強制停止して(ステップS210)、本ルーチンを終了する。これにより、吸気通路54に温度センサを設けずにまたは温度センサを設けた場合にその検出値を用いずに、車室内の温度がメインバッテリ38の温度Tbよりも高いことに起因するメインバッテリ38の更なる温度上昇を抑制することができる。そして、その後に、停車中条件、発熱小条件、駆動温度条件の全てが成立しているときには、ステップS160で送風ファン60を強制停止中であると判定して、本ルーチンを終了する。
【0034】
図3は、停車中条件および発熱小条件が成立しているときのメインバッテリ38の温度Tbおよび送風ファン60の駆動の有無の様子の一例を示す説明図である。図示するように、送風ファン60の停止中に、メインバッテリ38の温度Tbが閾値Tbref1以上に至って駆動温度条件が成立すると(時刻t11)、送風ファン60の駆動を開始する。そして、送風ファン60の駆動中に、メインバッテリ38の温度上昇に伴ってカウンタCspをカウントアップし、カウンタCspが閾値Cspref以上に至ると(時刻t12)、送風ファン60を強制停止する。これにより、吸気通路54に温度センサを設けずにまたは温度センサを設けた場合にその検出値を用いずに、車室内の温度がメインバッテリ38の温度Tbよりも高いことに起因するメインバッテリ38の更なる温度上昇を抑制することができる。
【0035】
以上説明した実施例の電気自動車20が備える蓄電装置の冷却システムでは、停車中条件、発熱小条件、駆動温度条件が成立していて且つ送風ファン60を駆動していて且つメインバッテリ38の温度上昇が継続しているのを確認したときに、送風ファン60を強制停止する。これにより、吸気通路54に温度センサを設けずにまたは温度センサを設けた場合にその検出値を用いずに、車室内の温度がメインバッテリ38の温度Tbよりも高いことに起因するメインバッテリ38の更なる温度上昇を抑制することができる。
【0036】
実施例の蓄電装置の冷却システムでは、ECU70は、車速Vが閾値Vref以下であるか否かを判定することにより、停車中条件が成立しているか否かを判定するものとした。しかし、走行用モータ32の回転数Nmrの絶対値が閾値Nmrref以下であるか否かや、駆動軸26の回転数Ndが閾値Ndref以下であるか否か、駆動輪22の回転数Nwが閾値Nwref以下であるか否か、のうちの何れかを判定することにより、停車中条件が成立しているか否かを判定するものとしてもよい。
【0037】
実施例の蓄電装置の冷却システムでは、ECU70は、メインバッテリ38の電流Ibの二乗値が閾値Ibref以下であるか否かを判定することにより、発熱小条件が成立していると判定するものとした。しかし、メインバッテリ38の電流Ibの二乗値になまし処理やレート処理などの緩変化処理を施した処理後値Ibscが閾値Ibref2以下であるか否かや、メインバッテリ38の電流Ibの絶対値が閾値Ibref3以下であるか否か、メインバッテリ38の電流Ibに緩変化処理を施した処理後値Ibsc2の絶対値が閾値Ibref4以下であるか否か、のうちの何れかを判定することにより、発熱小条件が成立していると判定するものとしてもよい。また、メインバッテリ38の電流Ibの二乗値にメインバッテリ38の内部抵抗値を乗じて得られるメインバッテリ38の発熱量Qbが閾値Qbref1以下であるか否かや、メインバッテリ38の発熱量Qbに緩変化処理を施した処理後値Qbscが閾値Qbref2以下であるか否か、うちの何れかを判定することにより、発熱小条件が成立していると判定するものとしてもよい。
【0038】
実施例の蓄電装置の冷却システムでは、ECU70は、図2の制御ルーチンを実行するものとした。しかし、これに代えて、図4の制御ルーチンを実行するものとしてもよい。図4の制御ルーチンは、ステップS300~S340の処理が追加された点を除いて、図2の制御ルーチンと同一である。したがって、図4の制御ルーチンのうち図2の制御ルーチンと同一の処理については、同一のステップ番号を付し、詳細な説明を省略する。
【0039】
図4の制御ルーチンでは、ECU70は、ステップS180で送風ファン60を強制停止中であると判定したときには、メインバッテリ38の温度Tbが上述の閾値Tbref1よりも高い閾値Tbref3以上であるか否かを判定する(ステップS300)。ここで、閾値Tbref3は、メインバッテリ38の過熱温度よりも若干低い温度として設定され、例えば、閾値Tbref1よりも数十℃程度高く且つ上述の閾値Tbhi付近の温度が用いられる。送風ファン60を強制停止したにも拘わらずにメインバッテリ38の温度Tbが更に上昇して閾値Tbref3以上に至ったときには、送風ファン60によってメインバッテリ38の温度Tbよりも高温の空気をケース52内に送風していたことによりメインバッテリ38の温度上昇が生じていたのではなく、別要因によりメインバッテリ38の温度上昇が生じていると想定される。別要因としては、例えば、電力ライン42(補機バッテリ40)からの電力を用いてメインバッテリ38を昇温可能な図示しないヒータの誤作動などを挙げることができる。ステップ300の処理は、こうした別要因によりメインバッテリ38の温度上昇が生じているか否かを判定する処理である。ステップS300でメインバッテリ38の温度Tbが閾値Tbref3未満であると判定したときには、本ルーチンを終了する。
【0040】
ステップS300でメインバッテリ38の温度Tbが閾値Tbref3以上であると判定したときには、上述の別要因によりメインバッテリ38の温度上昇が生じていると判定し、送風ファン60の強制駆動を開始する(ステップS310)。送風ファン60の強制駆動に際しては、上述のファン駆動制御が実行される。これにより、メインバッテリ38の過熱を抑制することができる。また、メインバッテリ38の温度Tbが閾値Tbhiよりも高いことによる不都合、例えば、メインバッテリ38の許容入出力電力Win,Woutの絶対値が小さくなってメインバッテリ38の性能を十分に発揮できなくなるという不都合を抑制することができる。続いて、メインバッテリ38の温度Tbを入力し(ステップS320)、入力したメインバッテリ38の温度Tbが上述の閾値Tbref2以下に至ったか否かを判定する(ステップS330)。メインバッテリ38の温度Tbが閾値Tbref2よりも高いと判定したときには、ステップS320に戻る。こうしてステップS320,S330の処理を繰り返し実行して、ステップS340でメインバッテリ38が閾値Tbref2以下に至ったと判定すると、送風ファン60を停止して(ステップS340)、本ルーチンを終了する。
【0041】
図5は、停車中条件および発熱小条件が成立しているときのメインバッテリ38の温度Tbおよび送風ファン60の駆動の有無の様子の一例を示す説明図である。図示するように、送風ファン60の停止中に、メインバッテリ38の温度Tbが閾値Tbref1以上に至って駆動温度条件が成立すると(時刻t21)、送風ファン60の駆動を開始する。そして、送風ファン60の駆動中に、メインバッテリ38の温度上昇に伴ってカウンタCspをカウントアップし、カウンタCspが閾値Cspref以上に至ると(時刻t22)、送風ファン60を強制停止する。送風ファン60を強制停止させたにも拘わらずにメインバッテリ38の温度Tbが更に上昇して閾値Tbref3以上に至ると(時刻t23)、上述の別要因によりメインバッテリ38の温度上昇が生じていると判定し、送風ファン60の強制駆動を開始する。これにより、メインバッテリ38の過熱を抑制することができる。送風ファン60の強制駆動中に、メインバッテリ38の温度Tbが閾値Tbref2以下に至ると(時刻t24)、送風ファン60を停止する。
【0042】
実施例では、走行用モータ32およびメインバッテリ38を備える電気自動車20の構成とした。しかし、走行用のモータおよびメインバッテリ38に加えてエンジンを更に備えるハイブリッド自動車の構成としてもよい。また、走行用のモータおよびメインバッテリ38に加えて燃料電池を備える燃料電池自動車の構成としてものとしてもよい。
【0043】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、送風ファン60が「送風ファン」に相当し、ECU70が「制御装置」に相当する。
【0044】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0045】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、蓄電装置の冷却システムの製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0047】
20 電気自動車、22 駆動輪、24 デファレンシャルギヤ、26 駆動軸、32 走行用モータ、32a 回転位置センサ、34 走行用インバータ、36 電力ライン、38 メインバッテリ、38i 電流センサ、38t 温度センサ、38v 電圧センサ、40 補機バッテリ、42 電力ライン、44 DC/DCコンバータ、50 冷却装置、52 ケース、52i 吸気口、52o 排出口、54 吸気通路、55 取り込み口、55f フィルタ、56 ダクト、57 ケース部、57i 吸気口、57o 送出口、58 接続ダクト、60 送風ファン、62 ファン用モータ、62a 回転位置センサ、64 ファン用インバータ、70 ECU、72 スタートスイッチ、74 車速センサ。
図1
図2
図3
図4
図5