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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185739
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/06 20060101AFI20221208BHJP
   B60W 10/00 20060101ALI20221208BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
B60W10/06 900
B60W10/00 900
H02M3/155 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093538
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】保田 智史
(72)【発明者】
【氏名】坂田 浩一
【テーマコード(参考)】
3D202
5H730
【Fターム(参考)】
3D202AA03
3D202BB00
3D202BB01
3D202BB24
3D202CC89
5H730AS04
5H730AS05
5H730BB13
5H730BB14
5H730BB88
5H730DD02
5H730FD01
5H730FD11
5H730FF09
5H730FG12
5H730XX03
5H730XX12
5H730XX23
5H730XX32
5H730XX43
(57)【要約】
【課題】コンデンサの電圧が過電圧に至るのを抑制する。
【解決手段】第2制御装置は、第1制御装置の異常である第1異常または第1制御装置との通信異常である第2異常を検知したときには、エンジンの運転とインバータおよび昇降圧コンバータのゲート遮断とを伴って走行するようにエンジンとインバータと昇降圧コンバータとを制御する第1制御を実行し、第1制御の実行中に第1電力ラインの電圧が所定電圧以上に至ったときには、昇降圧コンバータの上アームスイッチング素子をオンとする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動輪に連結されたエンジンおよびモータと、
第1電力ラインに接続されると共に複数のスイッチング素子のスイッチングにより前記モータを駆動するインバータと、
前記第1電力ラインに取り付けられたコンデンサと、
第2電力ラインに接続された蓄電装置と、
前記第1電力ラインの正極側ラインに接続された上アームスイッチング素子と、前記第1電力ラインおよび前記第2電力ラインの負極側ラインに接続された下アームスイッチング素子と、前記上アームスイッチング素子および前記下アームスイッチング素子の接続点と前記第2電力ラインの正極側ラインとに接続されたリアクトルとを有し、前記第1電力ラインと前記第2電力ラインとの間で電圧変換を伴う電力のやりとりが可能な昇降圧コンバータと、
走行用指令を設定する第1制御装置と、
前記第1制御装置と通信可能に接続され、前記第1制御装置からの前記走行用指令に基づいて前記エンジンと前記インバータと前記昇降圧コンバータとを制御する第2制御装置と、
を備えるハイブリッド車両であって、
前記第2制御装置は、
前記第1制御装置の異常である第1異常または前記第1制御装置との通信異常である第2異常を検知したときには、前記エンジンの運転と前記インバータおよび前記昇降圧コンバータのゲート遮断とを伴って走行するように前記エンジンと前記インバータと前記昇降圧コンバータとを制御する第1制御を実行し、
前記第1制御の実行中に前記第1電力ラインの電圧が所定電圧以上に至ったときには、前記昇降圧コンバータの前記上アームスイッチング素子をオンとする、
ハイブリッド車両。
【請求項2】
請求項1記載のハイブリッド車両であって、
前記第2制御装置は、前記第1制御装置からの前記走行用指令に基づいて前記インバータおよび前記昇降圧コンバータの制御指令を設定する第1処理部と、前記第1処理部により設定された前記インバータおよび前記昇降圧コンバータの前記制御指令に基づいて前記インバータおよび前記昇降圧コンバータとを制御する第2処理部とを有し、
前記第2処理部は、前記第1異常または前記第2異常を検知したときには、前記インバータおよび前記昇降圧コンバータについてゲート遮断を行なう、
ハイブリッド車両。
【請求項3】
請求項2記載のハイブリッド車両であって、
前記第2処理部は、前記第1異常または前記第2異常を検知したときに加えて、前記第1処理部の異常である第3異常を検知したときにも、前記インバータおよび前記昇降圧コンバータについてゲート遮断を行なう、
ハイブリッド車両。
【請求項4】
請求項1ないし3のうちの何れか1つの請求項に記載のハイブリッド車両であって、
第2モータと、
前記第2モータと前記エンジンと前記駆動輪に連結された駆動軸との3軸に3つの回転要素が共線図において前記第2モータ、前記エンジン、前記駆動軸の順に並ぶように接続されたプラネタリギヤと、
前記第1電力ラインに接続されると共に複数のスイッチング素子のスイッチングにより前記第2モータを駆動する第2インバータと、
を更に備え、
前記モータは、前記駆動軸に接続され、
前記第2制御装置は、前記第1制御装置からの前記走行用指令に基づいて前記エンジンと前記インバータと前記昇降圧コンバータと前記第2インバータとを制御し、
前記第2制御装置は、前記第1制御として、前記エンジンについて所定回転数で回転するように制御し、前記インバータおよび前記昇降圧コンバータについてゲート遮断を行ない、前記第2インバータについて三相オンまたはゲート遮断を行なう、
ハイブリッド車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハイブリッド車両としては、駆動輪に連結されたエンジンおよびモータと、モータを駆動するインバータと、インバータに電力ラインを介して接続されたバッテリと、統合制御ECUと、コントローラおよび調停回路を有すると共にインバータを制御するモータ制御ECUと、エンジンを制御するエンジンECUと、を備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このハイブリッド車両では、統合制御ECUが、エンジンのモータのトルク指令を設定してコントローラに送信し、コントローラが、モータのトルク指令を駆動信号に変換して調停回路を介してインバータに出力する。また、ハイブリッド車両では、走行中にコントローラに異常が生じると、調停回路が、コントローラからインバータへの駆動指令を遮断すると共にインバータを三相オンとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-62930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のハード構成に加えて、電力ラインにバッテリ側から昇降圧コンバータ、コンデンサが設けられたハイブリッド車両において、統合制御ECUに異常が生じたときや、統合制御ECUとモータ制御ECUとの通信異常が生じたときに、エンジンECUによるエンジンの運転とモータ制御ECUによるインバータおよび昇降圧回路のゲート遮断とを伴って退避走行を行なうことが考えられている。この場合、モータの回転に伴って発生する逆起電圧が比較的高いと、その逆起電圧に基づく電力が電力ラインに供給されてコンデンサの電圧が比較的高くなる可能性がある。
【0005】
本発明のハイブリッド車両は、コンデンサの電圧が過電圧に至るのを抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハイブリッド車両は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のハイブリッド車両は、
駆動輪に連結されたエンジンおよびモータと、
第1電力ラインに接続されると共に複数のスイッチング素子のスイッチングにより前記モータを駆動するインバータと、
前記第1電力ラインに取り付けられたコンデンサと、
第2電力ラインに接続された蓄電装置と、
前記第1電力ラインの正極側ラインに接続された上アームスイッチング素子と、前記第1電力ラインおよび前記第2電力ラインの負極側ラインに接続された下アームスイッチング素子と、前記上アームスイッチング素子および前記下アームスイッチング素子の接続点と前記第2電力ラインの正極側ラインとに接続されたリアクトルとを有し、前記第1電力ラインと前記第2電力ラインとの間で電圧変換を伴う電力のやりとりが可能な昇降圧コンバータと、
走行用指令を設定する第1制御装置と、
前記第1制御装置と通信可能に接続され、前記第1制御装置からの前記走行用指令に基づいて前記エンジンと前記インバータと前記昇降圧コンバータとを制御する第2制御装置と、
を備えるハイブリッド車両であって、
前記第2制御装置は、
前記第1制御装置の異常である第1異常または前記第1制御装置との通信異常である第2異常を検知したときには、前記エンジンの運転と前記インバータおよび前記昇降圧コンバータのゲート遮断とを伴って走行するように前記エンジンと前記インバータと前記昇降圧コンバータとを制御する第1制御を実行し、
前記第1制御の実行中に前記第1電力ラインの電圧が所定電圧以上に至ったときには、前記昇降圧コンバータの前記上アームスイッチング素子をオンとする、
ことを要旨とする。
【0008】
本発明のハイブリッド車両では、第2制御装置は、第1制御装置の異常である第1異常または第1制御装置との通信異常である第2異常を検知したときには、エンジンの運転とインバータおよび昇降圧コンバータのゲート遮断とを伴って走行するようにエンジンとインバータと昇降圧コンバータとを制御する第1制御を実行し、第1制御の実行中に第1電力ラインの電圧が所定電圧以上に至ったときには、昇降圧コンバータの上アームスイッチング素子をオンとする。第2制御装置が、第1異常または第2異常を検知したときに第1制御を実行することにより、第1電力ライン(インバータ側)から第2電力ライン(蓄電装置側)に電力が供給されるのを抑制しつつ、退避走行を行なうことができる。このとき、モータの回転に伴って発生する逆起電圧が第1電力ラインの電圧よりも高いと、逆起電圧に基づく電力が第1電力ラインに供給されて第1電力ラインの電圧が上昇する。したがって、第1電力ラインの電圧が所定電圧以上に至ったときに昇降圧コンバータの上アームスイッチング素子をオンとすることにより、第1電力ラインの正極側ラインから昇降圧コンバータの上アームスイッチング素子およびリアクトルを介して第2電力ラインの正極側ラインに電流が流れるから、第1電力ラインの電圧の更なる上昇を抑制し、この電圧が過電圧に至るのを抑制することができる。
【0009】
本発明のハイブリッド車両において、前記第2制御装置は、前記第1制御装置からの前記走行用指令に基づいて前記インバータおよび前記昇降圧コンバータの制御指令を設定する第1処理部と、前記第1処理部により設定された前記インバータおよび前記昇降圧コンバータの前記制御指令に基づいて前記インバータおよび前記昇降圧コンバータとを制御する第2処理部とを有し、前記第2処理部は、前記第1異常または前記第2異常を検知したときには、前記インバータおよび前記昇降圧コンバータについてゲート遮断を行なうものとしてもよい。この場合、前記第2処理部は、前記第1異常または前記第2異常を検知したときに加えて、前記第1処理部の異常である第3異常を検知したときにも、前記インバータおよび前記昇降圧コンバータについてゲート遮断を行なうものとしてもよい。こうすれば、第1異常や第2異常に加えて、第3異常が生じたときでも、退避走行を行なうことができる。また、前記第1処理部は、マイクロコンピュータであり、前記第2処理部は、ASICであるものとしてもよい。第2処理部をASICとすることにより、第2処理部を有する第2制御装置の部品コストの低減を図ることが可能となる。
【0010】
本発明のハイブリッド車両において、第2モータと、前記第2モータと前記エンジンと前記駆動輪に連結された駆動軸との3軸に3つの回転要素が共線図において前記第2モータ、前記エンジン、前記駆動軸の順に並ぶように接続されたプラネタリギヤと、前記第1電力ラインに接続されると共に複数のスイッチング素子のスイッチングにより前記第2モータを駆動する第2インバータとを更に備え、前記モータは、前記駆動軸に接続され、前記第2制御装置は、前記第1制御装置からの前記走行用指令に基づいて前記エンジンと前記インバータと前記昇降圧コンバータと前記第2インバータとを制御し、前記第2制御装置は、前記第1制御として、前記エンジンについて所定回転数で回転するように制御し、前記インバータおよび前記昇降圧コンバータについてゲート遮断を行ない、前記第2インバータについて三相オンまたはゲート遮断を行なうものとしてもよい。ここで、第2インバータの三相オンは、第2インバータの複数のスイッチング素子のうち上アームの全てまたは下アームの全てをオンとする制御である。第2インバータについて三相オンを行なう場合、第2モータで引き摺りトルクが発生し、この引き摺りトルクがプラネタリギヤを介して前進走行用のトルクとして駆動軸に作用することにより、退避走行を行なうことができる。第2インバータについてゲート遮断を行なう場合、第2モータの回転に伴って発生する逆起電圧が第2電力ラインの電圧よりも高くなるようにエンジンを運転することにより、第2モータで逆起電圧に基づく逆起電圧トルクが発生し、この逆起電圧トルクがプラネタリギヤを介して前進走行用のトルクとして駆動軸に作用することにより、退避走行を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
図2】モータMG1,MG2を含む電機駆動系の構成の概略を示す構成図である。
図3】エンジンECU24により実行される異常時エンジン処理の一例を示すフローチャートである。
図4】モータECU40のASIC40bにより実行される異常時モータコンバータ処理の一例を示すフローチャートである。
図5】プラネタリギヤ30の共線図の一例を示す説明図である。
図6】エンジンECU24およびASIC40bが第1異常や第2異常を検知したときのエンジン22やインバータ41,42、昇降圧コンバータ46の動作と高電圧系電力ライン45aの電圧VHと電圧低下要求の有無との様子の一例を示す説明図である。
図7】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例0013】
図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図であり、図2は、モータMG1,MG2を含む電機駆動系の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、プラネタリギヤ30と、モータMG1(第2モータ)と、モータMG2(モータ)と、インバータ41(第2インバータ)と、インバータ42(インバータ)と、昇降圧コンバータ46と、メインバッテリ50(蓄電装置)と、補機バッテリ60と、DC/DCコンバータ62と、ハイブリッド用電子制御ユニット(以下、「HVECU」という)70とを備える。
【0014】
エンジン22は、ガソリンや軽油などを燃料として動力を出力する内燃機関として構成されており、エンジン22のクランクシャフト23は、プラネタリギヤ30のキャリヤに接続されている。このエンジン22は、エンジン用電子制御ユニット(以下、「エンジンECU」という)24により運転制御されている。
【0015】
エンジンECU24は、CPUやROM、RAM、フラッシュメモリ、入出力ポート、通信ポートを有するマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」という)を備える。エンジンECU24には、エンジン22を運転制御するのに必要な各種センサからの信号、例えば、エンジン22のクランクシャフト23の回転位置を検出するクランクポジションセンサからのクランク角θcrなどが入力ポートを介して入力されている。エンジンECU24からは、エンジン22を運転制御するための各種制御信号が出力ポートを介して出力されている。エンジンECU24は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。エンジンECU24は、クランクポジションセンサからのクランク角θcrに基づいてエンジン22の回転数Neを演算している。
【0016】
プラネタリギヤ30は、シングルピニオン式の遊星歯車機構として構成されている。プラネタリギヤ30のサンギヤには、モータMG1の回転子が接続されている。プラネタリギヤ30のリングギヤには、駆動輪39a,39bにデファレンシャルギヤ38を介して連結された駆動軸36が接続されている。プラネタリギヤ30のキャリヤには、上述したように、エンジン22のクランクシャフト23が接続されている。
【0017】
モータMG1は、回転子コアに永久磁石が埋め込まれた回転子と固定子コアに三相コイルが巻回された固定子とを有する同期発電電動機として構成されており、上述したように、回転子がプラネタリギヤ30のサンギヤに接続されている。モータMG2は、モータMG1と同様に同期発電電動機として構成されており、回転子が駆動軸36に接続されている。
【0018】
インバータ41,42は、モータMG1,MG2の駆動に用いられると共に高電圧系電力ライン45aに接続されている。図2に示すように、インバータ41は、6つのスイッチング素子としてのトランジスタT11~T16と、6つのトランジスタT11~T16のそれぞれに並列に接続された6つのダイオードD11~D16とを有する。トランジスタT11~T16は、それぞれ、高電圧系電力ライン45aの正極側ラインと負極側ラインとに対してソース側とシンク側になるように2個ずつペアで配置されている。また、トランジスタT11~T16の対となるトランジスタ同士の接続点の各々には、モータMG1の三相コイル(U相、V相、W相)の各々が接続されている。したがって、インバータ41に電圧が作用しているときに、モータ用電子制御ユニット(以下、「モータECU」という)40によって、対となるトランジスタT11~T16のオン時間の割合が調節されることにより、三相コイルに回転磁界が形成され、モータMG1が回転駆動される。インバータ42は、インバータ41と同様に、6つのトランジスタT21~T26と6つのダイオードD21~D26とを有する。そして、インバータ42に電圧が作用しているときに、モータECU40によって、対となるトランジスタT21~T26のオン時間の割合が調節されることにより、三相コイルに回転磁界が形成され、モータMG2が回転駆動される。以下、トランジスタT11~T16,T21~T26のうちトランジスタT11~T13,T21~T23を「上アーム」といい、トランジスタT14~T16,T24~T26を「下アーム」ということがある。
【0019】
昇降圧コンバータ46は、図2に示すように、高電圧系電力ライン45aと低電圧系電力ライン45bとに接続されており、2つのスイッチング素子としてのトランジスタT31,T32と、2つのトランジスタT31,T32のそれぞれに並列に接続された2つのダイオードD31,D32と、リアクトルLとを有する。トランジスタT31は、高電圧系電力ライン45aの正極側ラインに接続されている。トランジスタT32は、トランジスタT31と、高電圧系電力ライン45aおよび低電圧系電力ライン45bの負極側ラインと、に接続されている。リアクトルLは、トランジスタT31およびトランジスタT32の接続点と、低電圧系電力ライン45bの正極側ラインと、に接続されている。昇降圧コンバータ46は、モータECU40によってトランジスタT31,T32のオン時間の割合が調節されることにより、高電圧系電力ライン45aの電圧VHの調節を伴って、低電圧系電力ライン45bの電力を昇圧して高電圧系電力ライン45aに供給したり、高電圧系電力ライン45aの電力を降圧して低電圧系電力ライン45bに供給したりする。以下、トランジスタT31,T32のうちトランジスタT31を「上アーム」といい、トランジスタT32を「下アーム」ということがある。高電圧系電力ライン45aの正極側ラインと負極側ラインとには、平滑用のコンデンサ47が取り付けられており、低電圧系電力ライン45bの正極側ラインと負極側ラインとには、平滑用のコンデンサ48が取り付けられている。
【0020】
モータECU40は、図2に示すように、マイコン40aと、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)40bとを備える。マイコン40aは、CPUやROM、RAM、フラッシュメモリ、入出力ポート、通信ポートを有し、ASIC40bは、CPUなどを有すると共に各種処理を行なう処理部や、通信ポートを有する。マイコン40aには、モータMG1,MG2や昇降圧コンバータ46を駆動制御するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。マイコン40aに入力される信号としては、例えば、モータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43a,44aからのモータMG1,MG2の回転子の回転位置θm1,θm2や、モータMG1,MG2のV相、W相に流れる相電流を検出する電流センサ43v,43w,44v,44wからのモータMG1,MG2のV相、W相の相電流Iv1,Iw1,Iv2,Iw2を挙げることができる。高電圧系電力ライン45aの正極側ラインと負極側ラインとに取り付けられた電圧センサ47aからの高電圧系電力ライン45aの電圧VHや、低電圧系電力ライン45bの正極側ラインと負極側ラインとに取り付けられた電圧センサ48aからの低電圧系電力ライン45bの電圧VLも挙げることができる。マイコン40aからは、モータMG1,MG2や昇降圧コンバータ46を駆動制御するための各種制御信号が出力ポートを介してASIC40bに出力されている。マイコン40aからASIC40bに出力される信号としては、インバータ41,42のトランジスタT11~T16,T21~T26のスイッチング制御指令や、昇降圧コンバータ46のトランジスタT31,T32のスイッチング制御指令を挙げることができる。マイコン40aは、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。マイコン40aは、回転位置検出センサ43a,44aからのモータMG1,MG2の回転子の回転位置θm1,θm2に基づいてモータMG1,MG2の電気角θe1,θe2や角速度ωm1,ωm2、回転数Nm1,Nm2を演算している。ASIC40bは、マイコン40aからのインバータ41,42のトランジスタT11~T16,T21~T26のスイッチング制御指令や、昇降圧コンバータ46のトランジスタT31,T32のスイッチング制御指令に基づいて、トランジスタT11~T16,T21~T26,T31,T32のスイッチング制御を行なう。ASIC40bは、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。マイコン40aおよびASIC40bを設けることにより、マイコンを2個設ける場合に比して、モータECU40の部品コストの低減を図ることが可能となる。
【0021】
メインバッテリ50は、例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池として構成されており、図1に示すように、低電圧系電力ライン45bに接続されている。このメインバッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、「バッテリECU」という)52により管理されている。
【0022】
バッテリECU52は、CPUやROM、RAM、フラッシュメモリ、入出力ポート、通信ポートを有するマイコンを備える。バッテリECU52には、メインバッテリ50を管理するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。バッテリECU52に入力される信号としては、例えば、メインバッテリ50の端子間に取り付けられた電圧センサからのメインバッテリ50の電圧Vbや、メインバッテリ50の出力端子に取り付けられた電流センサからのメインバッテリ50の電流Ib、メインバッテリ50に取り付けられた温度センサからのメインバッテリ50の温度Tbを挙げることができる。バッテリECU52は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。バッテリECU52は、電流センサからのメインバッテリ50の電流Ibの積算値に基づいてメインバッテリ50の蓄電割合SOCを演算している。
【0023】
補機バッテリ60は、定格電圧がメインバッテリ50よりも低い例えばリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池、鉛蓄電池として構成されており、補機系電力ライン45cに接続されている。実施例では、この補機系電力ライン45cに、電源リレーを介してエンジンECU24やモータECU40、バッテリECU52が接続されると共に電源リレーを介さずにHVECU70が接続され、電源リレーは、イグニッションスイッチ80のオンオフに応じてオンオフされるものとした。即ち、エンジンECU24やモータECU40、バッテリECU52は、イグニッションスイッチ80がオンであるとき(電源リレーがオンであるとき)には作動し、イグニッションスイッチ80がオフであるとき(電源リレーがオフであるとき)には停止するものとした。また、HVECU70は、イグニッションスイッチ80がオンオフのうちの何れであるかに拘わらずに作動するものとした。
【0024】
DC/DCコンバータ62は、低電圧系電力ライン45bと補機系電力ライン45cとに接続されており、HVECU70によって制御されることにより、低電圧系電力ライン45bの電力を降圧して補機系電力ライン45cに供給する。
【0025】
HVECU70は、CPUやROM、RAM、フラッシュメモリ、入出力ポート、通信ポートを有するマイコンを備える。HVECU70には、各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。HVECU70に入力される信号としては、例えば、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号や、シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSPを挙げることができる。アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや、ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP、車速センサ87からの車速Vも挙げることができる。HVECU70は、上述したように、エンジンECU24やモータECU40、バッテリECU52と通信ポートを介して接続されている。
【0026】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20では、基本的には、HVECU70とエンジンECU24とモータECU40との協調制御により、エンジン22の運転を伴って走行するハイブリッド走行(HV走行)モードや、エンジン22の運転停止を伴って走行する電動走行(EV走行)モードで走行するように、エンジン22とモータMG1,MG2と昇降圧コンバータ46とを制御する。
【0027】
HV走行モードでは、HVECU70は、最初に、アクセル開度Accおよび車速Vに基づいて駆動軸36に要求される走行用トルクTr*を設定し、走行用トルクTr*に駆動軸36の回転数Nd(モータMG2の回転数Nm2)を乗じて駆動軸36に要求される走行用パワーPr*を設定する。続いて、メインバッテリ50の蓄電割合SOCに基づく充放電要求パワーPb*(メインバッテリ50が放電するときが正の値)を走行用パワーPr*から減じてエンジン22に要求される要求パワーPe*を設定する。そして、エンジン22から要求パワーPe*が出力されると共に走行用トルクTr*が駆動軸36に出力されるようにエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定し、エンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*をエンジンECU24に送信すると共にモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40のマイコン40aに送信する。エンジンECU24は、エンジン22が目標回転数Ne*および目標トルクTe*に基づいて運転されるようにエンジン22の運転制御(吸入空気量制御や燃料噴射制御、点火制御など)を行なう。マイコン40aは、モータMG1,MG2がトルク指令Tm1*,Tm2*で駆動されるようにインバータ41,42のトランジスタT11~T16,T21~T26のスイッチング制御指令を生成してASIC40bに出力する。ASIC40bは、このトランジスタT11~T16,T21~T26のスイッチング制御指令に基づいてトランジスタT11~T16,T21~T26のスイッチング制御を行なう。
【0028】
EV走行モードでは、HVECU70は、HV走行モードと同様に走行用トルクTr*を設定し、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0を設定すると共に走行用トルクTr*が駆動軸36に出力されるようにモータMG2のトルク指令Tm2*を設定し、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*をモータECU40のマイコン40aに送信する。マイコン40aおよびASIC40bによるインバータ41,42の制御については上述した。
【0029】
また、HV走行モードやEV走行モードでは、モータECU40のマイコン40aは、モータMG1,MG2をトルク指令Tm1*,Tm2*で駆動できるように高電圧系電力ライン45aの目標電圧VH*を設定し、高電圧系電力ライン45aの電圧VHが目標電圧VH*となるように昇降圧コンバータ46のトランジスタT31,T32のスイッチング制御指令を生成してASIC40bに出力する。ASIC40bは、このトランジスタT31,T32のスイッチング制御指令に基づいてトランジスタT31,T32のスイッチング制御を行なう。こうしたHV走行モードやEV走行モードでのエンジン22やインバータ41,42、昇降圧コンバータ46の制御を「通常制御」という。
【0030】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作、特に、HV走行モードでHVECU70の異常である第1異常や、HVECU70とモータECU40のマイコン40aとの通信異常である第2異常が生じたときの動作について説明する。図3は、エンジンECU24により実行される異常時エンジン処理の一例を示すフローチャートであり、図4は、モータECU40のASIC40bにより実行される異常時モータコンバータ処理の一例を示すフローチャートである。図3の異常時エンジン処理は、エンジンECU24が第1異常や第2異常を検知したときに実行される。図4の異常時モータコンバータ処理は、ASIC40bが第1異常や第2異常を検知したときに繰り返しの実行が開始される。なお、HVECU70は、例えばマイコン40aとの通信途絶時間が所定時間T1(例えば数秒程度)以上であるときに、第2異常を検知して第2異常信号をエンジンECU24やASIC40bに送信し、その後に第2異常の検知を終了すると、第2異常信号の送信を終了する。マイコン40aは、例えばHVECU70との通信途絶時間が所定時間T1以上であるときに、第2異常を検知して第2異常信号をASIC40bに出力し、その後に第2異常の検知を終了すると、第2異常信号の出力を終了する。エンジンECU24は、例えばHVECU70との通信途絶時間が所定時間T1以上であるときに第1異常を検知し、HVECU70から第2異常信号を受信しているときに第2異常を検知する。ASIC40bは、例えばHVECU70との通信途絶時間が所定時間T1以上であるときに第1異常を検知し、HVECU70やマイコン40aから第2異常信号を受信や入力しているときに第2異常を検知する。
【0031】
図3の異常時エンジン処理では、エンジンECU24は、エンジン22についての回転数制御の実行を開始して(ステップS100)、本処理を終了する。ここで、回転数制御では、エンジン22が目標回転数Ne1で回転するようにエンジン22の運転制御を行なう。目標回転数Ne1については後述する。この回転数制御は、第1異常や第2異常が解消したり、イグニッションスイッチ80がオフされてエンジンECU24が停止したりするまで行なわれる。
【0032】
図4の異常時モータコンバータ処理では、モータECU40のASIC40bは、インバータ41について三相オンを行なうと共に、インバータ42および昇降圧コンバータ46についてゲート遮断を行なう(ステップS200)。インバータ41の三相オンは、トランジスタT11~T16のうち上アーム(トランジスタT11~T13)の全てまたは下アーム(トランジスタT14~T16)の全てをオンとする制御である。インバータ42のゲート遮断は、トランジスタT21~T26の全てをオフとする制御であり、昇降圧コンバータ46のゲート遮断は、トランジスタT31,T32の全てをオフとする制御である。
【0033】
図5は、プラネタリギヤ30の共線図の一例を示す説明図である。図中、S軸は、サンギヤの回転数(モータMG1の回転数Nm1)を示し、C軸は、キャリヤの回転数(エンジン22の回転数Ne)を示し、R軸は、リングギヤの回転数(駆動軸36の回転数NdおよびモータMG2の回転数Nm2)を示す。また、図中、「ρ」は、プラネタリギヤ30のギヤ比(サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)である。インバータ41について三相オンを行なうと、モータ32でその回転数Nm1の絶対値が小さくなる方向のトルク(いわゆる引き摺りトルク)Tdが発生する。モータMG1の回転数Nm1が正の値であるときには、この引き摺りトルクTdがエンジン22の回転数Neを押さえ込む方向(図4の下向き)のトルクとなる。このため、エンジン22について回転数制御を実行すると、モータMG1で発生した引き摺りトルクTdがプラネタリギヤ30を介して前進走行用のトルク(-Td/ρ)として駆動軸36に作用し、退避走行を行なうことができる。上述の目標回転数Ne1は、退避走行を行なうときに、モータMG2の回転数Nm2(車速V)が比較的高くてもモータMG1の回転数Nm1が正の値となるように設定される。この目標回転数Ne1は、予め設定されるものとしてもよいし、エンジンECU24とモータECU40とで通信可能である場合には、モータECU40からエンジンECU24にモータMG2の回転数Nm2を入力してこの回転数Nm2に基づいて設定されるものとしてもよい。また、昇降圧コンバータ46のゲート遮断を行なうことにより、退避走行の際に高電圧系電力ライン45a(インバータ41,42側)から低電圧系電力ライン54b(メインバッテリ50側)に電力が供給されるのを抑制することができる。なお、インバータ42についてゲート遮断を行なっているときにおいて、モータMG2の回転に伴って発生する逆起電圧が高電圧系電力ライン45aの電圧VHよりも高いときには、逆起電圧に基づく電力が高電圧系電力ライン45aに供給されて高電圧系電力ライン45aの電圧VHが上昇する。
【0034】
インバータ41について三相オンを行なうと共にインバータ42および昇降圧コンバータ46についてゲート遮断を行なっているときに、マイコン40aから電圧低下要求が入力されると(ステップS210)、昇降圧コンバータ46についてゲート遮断から上アームオンに切り替える(ステップS220)。ここで、昇降圧コンバータ46の上アームオンは、上アーム(トランジスタT31)をオンにして保持する制御である。なお、マイコン40aは、電圧センサ47aからの高電圧系電力ライン45aの電圧VHが閾値VHref1以上に至ると、電圧VHが閾値VHref1以下の閾値VHref2未満に至るまで、電圧低下要求をASIC40bに出力する。閾値VHref1は、コンデンサ47や高電圧系電力ライン45aの耐久性などに基づいて設定される。昇降圧コンバータ46について上アームオンを行なうことにより、高電圧系電力ライン45aの正極側ラインから昇降圧コンバータ46のトランジスタT31およびリアクトルを介して低電圧系電力ライン45bの正極側ラインに電流が流れるから、高電圧系電力ライン45aの電圧VHの更なる上昇を抑制し、電圧VHが過電圧に至るのを抑制することができる。その後に、マイコン40aから電圧低下要求が入力されなくなると(ステップS230)、昇降圧コンバータ46について上アームオンからゲート遮断に切り替えて(ステップS240)、本処理を終了する。この本処理の繰り返しの実行は、第1異常や第2異常が解消したり、イグニッションスイッチ80がオフされてモータECU40が停止したりするまで行なわれる。
【0035】
図6は、モータMG2の回転数Nm2(車速V)がエンジンECU24およびASIC40bが第1異常や第2異常を検知したときのエンジン22やインバータ41,42、昇降圧コンバータ46の動作と高電圧系電力ライン45aの電圧VHと電圧低下要求の有無との様子の一例を示す説明図である。図示するように、エンジンECU24およびASIC40bが第1異常や第2異常を検知すると(時刻t11)、エンジンECU24は、エンジン22について通常制御から回転数制御に切り替え、ASIC40bは、インバータ41について通常制御から三相オンに切り替えると共にインバータ42および昇降圧コンバータ46について通常制御からゲート遮断に切り替える。これにより、上述したように、モータMG1で発生する引き摺りトルクTdを用いて退避走行を行なうことができる。なお、モータMG2の回転に伴って発生する逆起電圧が高電圧系電力ライン45aの電圧VHよりも高いときには、逆起電圧に基づく電力が高電圧系電力ライン45aに供給されて高電圧系電力ライン45aの電圧VHが上昇する。そして、高電圧系電力ライン45aの電圧VHが閾値VHref1以上に至ってマイコン40aからASIC40bに電圧低下要求が入力されると(時刻t12)、ASIC40bは、昇降圧コンバータ46についてゲート遮断から上アームオンに切り替える。これにより、高電圧系電力ライン45aの電圧VHの更なる上昇を抑制し、電圧VHが過電圧に至るのを抑制することができる。
【0036】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20では、エンジンECU24は、第1異常や第2異常を検知したときには、エンジン22について回転数制御を行なう。また、モータECU40のASIC40bは、第1異常や第2異常を検知したときには、インバータ41について三相オンを行なうと共にインバータ42および昇降圧コンバータ46についてゲート遮断を行なう。これにより、高電圧系電力ライン45aから低電圧系電力ライン45bに電力が供給されるのを抑制しつつ退避走行を行なうことができる。そして、こうした制御を行なっているときに高電圧系電力ライン45aの電圧VHが閾値VHref1以上に至ると、昇降圧コンバータ46について上アームオンを行なう。これにより、高電圧系電力ライン45aの電圧VHの更なる上昇を抑制し、電圧VHが過電圧に至るのを抑制することができる。
【0037】
実施例のハイブリッド自動車20では、高電圧系電力ライン45aの電圧VHは、モータECU40のマイコン40aに入力されるものとした。しかし、高電圧系電力ライン45aの電圧VHは、モータECU40のマイコン40aおよびASIC40bに入力されるものとしてもよい。この場合、エンジンECU24がエンジン22について回転数制御を行ない、モータECU40のASIC40bがインバータ41について三相オンを行なうと共にインバータ42および昇降圧コンバータ46についてゲート遮断を行なっているときにおいて、マイコン40aの異常である第3異常が生じたときでもこの制御を継続し、ASIC40bに入力される高電圧系電力ライン45aの電圧VHが閾値VHref1以上に至ると、ASIC40bは、昇降圧コンバータ46について上アームオンを行なうものとしてもよい。こうすれば、第1異常や第2異常に加えて、第3異常が生じたときでも、退避走行を行なうことができると共に高電圧系電力ライン45aの電圧VHが過電圧に至るのを抑制することができる。
【0038】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータECU40のASIC40bは、第1異常や第2異常を検知したときには、インバータ41について三相オンを行なうものとした。しかし、インバータ41についてゲート遮断を行なうものとしてもよい。この場合、モータMG1の回転に伴って発生する逆起電圧が高電圧系電力ライン45aの電圧VHよりも高くなるように上述の目標回転数Ne1を設定してエンジン22について回転数制御を行なうことにより、モータMG1で発生した逆起電圧に基づく逆起電圧トルクTbv1が発生し、この逆起電圧トルクTbv1がプラネタリギヤ30を介して前進走行用のトルク(-Tbv1/ρ)として駆動軸36に作用することにより、退避走行を行なうことができる。目標回転数Ne1は、予め設定されるものとしてもよいし、エンジンECU24とモータECU40とで通信可能である場合には、モータECU40からエンジンECU24に高電圧系電力ライン45aの電圧VHを入力してこの電圧VHに基づいて設定されるものとしてもよい。
【0039】
実施例のハイブリッド自動車20では、図1に示したように、エンジン22とプラネタリギヤ30とモータMG1,MG2とインバータ41,42と昇降圧コンバータ45とメインバッテリ50とを備えるものとした。しかし、図7の変形例のハイブリッド自動車120に示すように、図1のハイブリッド自動車20からプラネタリギヤ30、モータMG1、インバータ41が除かれ且つクラッチ128、変速機130、変速機用電子制御ユニット(以下、「変速ECU」という)140が追加されたハード構成としてもよい。
【0040】
クラッチ128は、例えば油圧駆動の摩擦クラッチとして構成され、エンジン22とモータMG2との間に配置され、変速ECU140によってオンオフ制御されて、エンジン22とモータMG2との接続および接続の解除を行なう。変速機130は、モータMG2の回転軸に接続された入力軸と、駆動軸36に接続された出力軸と、複数の遊星歯車と、油圧駆動の複数の摩擦係合要素(クラッチ、ブレーキ)とを有する。この変速機130は、変速ECU140によって複数の摩擦係合要素が係脱されて複数の前進段や後進段を形成し、入力軸と出力軸との間で動力を伝達する。
【0041】
変速ECU140は、CPUやROM、RAM、フラッシュメモリ、入出力ポート、通信ポートを有するマイコンを備える。変速ECU140には、変速機130の入力軸の回転数や、変速機130の出力軸の回転数などが入力ポートを介して入力されている。変速ECU140からは、クラッチ128への制御信号や、変速機130への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。変速ECU140は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。
【0042】
こうして構成されたハイブリッド自動車120では、HVECU70は、第2異常を検知すると、第2異常信号をエンジンECU24やASIC40bに加えて変速ECU140にも送信し、その後に第2異常の検知を終了すると、第2異常信号の送信を終了する。変速ECU140は、エンジンECU24と同様に、例えばHVECU70との通信途絶時間が所定時間T1以上であるときに第1異常を検知し、HVECU70から第2異常信号を受信しているときに第2異常を検知する。
【0043】
続いて、HV走行モードでエンジンECU24やモータECU40のASIC40b、変速ECU140が第1異常や第2異常を検知したときの動作について説明する。エンジンECU24は、エンジン22について上述の回転数制御を行なう。ASIC40bは、インバータ42および昇降圧コンバータ46についてゲート遮断を行なう。変速ECU140は、クラッチ128についてオンで保持すると共に変速機130について退避走行用の変速段となるように制御する。これにより、高電圧系電力ライン45a(インバータ42側)から低電圧系電力ライン54b(メインバッテリ50側)に電力が供給されるのを抑制しつつ、退避走行を行なうことができる。このとき、モータMG2の回転に伴って発生する逆起電圧が高電圧系電力ライン45aの電圧VHよりも高いときには、逆起電圧に基づく電力が高電圧系電力ライン45aに供給されて高電圧系電力ライン45aの電圧VHが上昇する。そして、高電圧系電力ライン45aの電圧VHが閾値VHref1以上に至ると、マイコン40aからASIC40bに電圧低下要求が入力され、ASIC40bは、昇降圧コンバータ46についてゲート遮断から上アームオンに切り替える。これにより、高電圧系電力ライン45aの電圧VHの更なる上昇を抑制し、電圧VHが過電圧に至るのを抑制することができる。
【0044】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータECU40は、マイコン40aおよびASIC40bを備えるものとした。しかし、モータECU40は、ASIC40bに代えてサブマイコンを備えるものとしてもよい。また、エンジンECU24も、マイコンおよびASICを有するものとしてもよい。
【0045】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジンECU24とモータECU40とバッテリECU52とHVECU70とを備えるものとした。しかし、エンジンECU24とモータECU40とバッテリECU52とのうちの少なくとも2つを一体に構成するものとしてもよい。
【0046】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「エンジン」に相当し、モータMG2が「モータ」に相当し、インバータ42が「インバータ」に相当し、コンデンサ47が「コンデンサ」に相当し、メインバッテリ50が「蓄電装置」に相当し、昇降圧コンバータ46が「昇降圧コンバータ」に相当し、HVECU70が「第1制御装置」に相当し、エンジンECU24とモータECU40とバッテリECU52とが「第2制御装置」に相当する。また、マイコン40aが「第1処理部」に相当し、ASIC40bが「第2処理部」に相当する。さらに、モータMG1が「第2モータ」に相当し、プラネタリギヤ30が「プラネタリギヤ」に相当し、インバータ41が「第2インバータ」に相当する。
【0047】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0048】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、ハイブリッド車両の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0050】
20,120 ハイブリッド自動車、22 エンジン、23 クランクシャフト、24 エンジンECU、30 プラネタリギヤ、32 モータ、36 駆動軸、38 デファレンシャルギヤ、39a,39b 駆動輪、40a マイコン、40b ASIC、41,42 インバータ、43a,44a 回転位置検出センサ、43v,43w,44v,44w 電流センサ、45a 高電圧系電力ライン、45b 低電圧系電力ライン、45c 補機系電力ライン、46 昇降圧コンバータ、47,48 コンデンサ、47a,48a 電圧センサ、50 メインバッテリ、60 補機バッテリ、62 DC/DCコンバータ、70 HVECU、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、87 車速センサ、D11~D16,D21~D26,D31,D32 ダイオード、MG1 モータ(第2モータ)、MG2 モータ(モータ)、T11~T16,T21~T26,T31,T32 トランジスタ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7