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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185745
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】体組織穿孔デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
A61B18/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093550
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀岡 浩二
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK04
4C160KK13
4C160KK36
4C160MM33
4C160MM38
(57)【要約】
【課題】先端部が穿孔部位に当接した感触が手元まで十分に伝わる体組織穿孔デバイスを実現できるようにする。
【解決手段】体組織穿孔デバイスは、先端側に設けられた湾曲部110Aと、基端側に設けられた直線状部110Bとを有するシャフト110と、シャフト110の先端に形成され、生体組織を変性させて穿孔するための穿孔用頭部130とを備えている。シャフト110は、基端側に設けられた外側シャフト111と、先端部が外側シャフト111から突出するように外側シャフト111に挿入連結された内側シャフト112とを有し、内側シャフト112の基端112Bは、直線状部110Bに達している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側に設けられた湾曲部と、基端側に設けられた直線状部とを有するシャフトと、
前記シャフトの先端に形成され、生体組織を変性させて穿孔するための穿孔用頭部とを備え、
前記シャフトは、基端側に設けられた外側シャフトと、先端部が前記外側シャフトから突出するように前記外側シャフトに挿入連結された内側シャフトとを有し、
前記内側シャフトの基端は、前記直線状部に達している、体組織穿孔デバイス。
【請求項2】
前記外側シャフトは、前記湾曲部の少なくとも一部に形成され、前記湾曲部の曲率半径方向に沿った第1の径方向における肉厚が、前記第1の径方向と直交する第2の径方向における肉厚よりも薄くなった易変形部を有する、請求項1に記載の、体組織穿孔デバイス。
【請求項3】
先端側に設けられた湾曲部と、基端側に設けられた直線状部とを有するシャフトと、
前記シャフトの先端に形成され、生体組織を変性させて穿孔するための穿孔用頭部とを備え、
前記シャフトは、先端から基端まで連続した管体からなり、
前記管体の外表面は、先端側の部分よりも外径が大きくなる段差部を、先端から所定の距離離れた位置に有している、体組織穿孔デバイス。
【請求項4】
前記段差部は、前記管体の外側に固定されたリング状部材により形成されている、請求項3に記載の体組織穿孔デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は体組織穿孔デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、心房細動の治療法の1つとして、左心房の適切な部位をアブレーションカテーテルによって焼灼する手技が採用されている。アブレーションカテーテルは、心房中隔を貫通して右心房から左心房へ差し入れられる場合がある。この場合には心房中隔穿刺(ブロッケンブロー法)により、心房中隔を貫通する開存孔を予め形成する。
【0003】
ブロッケンブロー法においては、ダイレータを下大静脈から挿入して、ダイレータの先端を心房中隔の卵円窩に当接させ、卵円窩を左心房側に押し込んで変形させる。次にダイレータ内を通して送り込んだ穿孔デバイスにより卵円窩を穿孔して開存孔を形成する。
【0004】
ブロッケンブロー法に用いられる穿孔デバイスには、機械的な穿刺による穿孔を行う穿刺針と、高周波エネルギーを用いた穿孔を行うRFニードルとが存在する(例えば、特許文献1を参照。)。RFニードルは、穿孔用頭部から出力される高周波エネルギーにより生体組織を変性させて穿孔を行う。このため、鋭利な先端部を必要とする穿刺針よりも安全性が高く、RFニードルの使用が増加している。
【0005】
穿孔デバイスは、穿孔用頭部を含む先端部を湾曲した形状とすることにより、卵円窩の位置に送り込むことが容易となる。しかし、穿孔デバイスをダイレータ等の中を通して卵円窩の位置に送り込む際に湾曲した先端部の形状がダイレータに干渉し、摺動抵抗が大きくなって挿入が困難になったり、ダイレータの位置が動いてしまったりするおそれがある。このため、穿孔デバイスの湾曲部に曲げ剛性が小さい柔軟部を設けて、穿孔デバイスのダイレータ内の移動を容易にすることが検討されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】再公表特許2018/163899号
【発明の概要】
【0007】
RFニードルを用いた穿孔は、穿孔用頭部を適切な力で穿孔部位に押し当てて行う。穿孔用頭部が穿孔部位に当接しているかどうかは、目視することができないため手元に伝わる感触に頼らなければならない。このため、穿孔用頭部が穿孔部位に当接し、押圧する際の感触が手元まで伝わるようにする必要がある。
【0008】
一方、湾曲したシャフトの穿孔用頭部が穿孔部位に当接したときに生じる力の向きは、シャフトの基端部が伸びる方向とは異なっており、穿孔用頭部の感触が基端部に伝わりにくい構造になっている。湾曲部に柔軟部を設けると、柔軟部もクッションとして機能するため、さらに感触が伝わりにくくなってしまう。
【0009】
また、穿孔デバイスのシャフトは、ダイレータから突出する部分を細くするために、長いシャフト本体部の先端に短く細い先端部を継ぎ足している。接続部もクッションのように機能するため、穿孔用頭部の感触は、シャフトの基端部にさらに伝わりにくくなる。
【0010】
本開示の課題は、穿孔用頭部の感触が手元まで十分に伝わる穿刺デバイスを実現できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の体組織穿孔デバイスの第1の態様は、先端側に設けられた湾曲部と、基端側に設けられた直線状部とを有するシャフトと、シャフトの先端に形成され、生体組織を変性させて穿孔するための穿孔用頭部とを備え、シャフトは、基端側に設けられた外側シャフトと、先端部が外側シャフトから突出するように外側シャフトに挿入連結された内側シャフトとを有し、内側シャフトの基端は、直線状部に達している。
【0012】
体組織穿孔デバイスの第1の態様によれば、内側シャフトの基端が直線状部に達しているため、穿孔用頭部が穿孔部位に当接した際に生じる力が、内側シャフトを介して直線状部まで伝わるため、先端部の感触が手元まで十分に伝わる。
【0013】
体組織穿孔デバイスの第1の態様において、外側シャフトは、湾曲部の少なくとも一部に形成され、湾曲部の曲率半径方向に沿った第1の径方向おける肉厚が、第1の径方向と直交する第2の径方向における肉厚よりも薄くなった易変形部を有していてもよい。このような構成とすることにより、先端部の感触が手元まで十分に伝わると共に、湾曲部が変形しやすくなるので、ダイレータの通過が容易となる。
【0014】
体組織穿孔デバイスの第2の態様は、先端側に設けられた湾曲部と、基端側に設けられた直線状部とを有するシャフトと、シャフトの先端に形成され、生体組織を変性させて穿孔するための穿孔用頭部とを備え、シャフトは、先端から基端まで連続した管体からなり、管体の外表面は、先端側の部分よりも外径が大きくなる段差部を、先端から所定の距離離れた位置に有している。
【0015】
体組織穿孔デバイスの第2の態様によれば、シャフトは、先端から基端まで連続した管体からなるため、先端の感触を手元まで十分に伝えることができる。また、段差部を有しているため、穿孔用頭部がダイレータから突出する突出長を制御できる。
【0016】
体組織穿孔デバイスの第2の態様において、段差部は、管体の外側に固定されたリング状部材により形成することができる。このような構成とすれば、段差部を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示の体組織穿孔デバイスによれば、先端部が穿孔部位に当接した感触が手元まで十分に伝わるため、操作性及び安全性が大きく向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施形態に係る穿孔デバイスを示す側面図である。
図2】一実施形態に係る穿孔デバイスの先端部を示す断面図である。
図3】一実施形態に係る穿孔デバイスをシース組立体と組み合わせた状態を示す断面図である。
図4】ダイレータの一例を示す断面図である。
図5】外シースの一例を示す断面図である。
図6】穿孔デバイスの第1変形例を示す側面図である。
図7】易屈曲部を示す断面図である。
図8】穿孔デバイスの第2変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1及び図2に示すように、一実施形態に係る体組織の穿孔デバイス100は、RFニードルであり、中空のシャフト110と、シャフト110の先端に設けられた穿孔用頭部130と、シャフト110の基端に設けられた操作部150とを有している。
【0020】
シャフト110は、基端側において操作部150と連結された外側シャフト111と、外側シャフト111よりも細く、先端側に突出した内側シャフト112とを有している。穿孔用頭部130を含むシャフト110の先端部は、湾曲した湾曲部110Aとなっており、基端側は直線状部110Bとなっている。
【0021】
外側シャフト111及び内側シャフト112は中空筒状であり、内側シャフト112の外径は外側シャフト111の内径とほぼ等しい。内側シャフト112は、内側シャフト基端112Bが、直線状部110B達するように外側シャフト111内に挿入されている。穿孔用頭部130が形成された内側シャフト先端112Aは、外側シャフト111の先端よりも先端側に突出している。本実施形態において、外側シャフト111及び内側シャフト112はステンレス等の金属製であり、内側シャフト112はスポット溶接等により外側シャフト111に固定されている。
【0022】
シャフト110全体の長さは、器具が使用される態様にもよるが、350mm~1800mm程度である。湾曲部110Aは、器具が使用される態様にもよるが、卵円窩の穿孔を行う場合には、長さが20~100mm程度であることが好ましい。また、直線状部110Bが伸びる方向における湾曲部110Aの基端から先端までの長さL1に対する、L1と直交する方向における湾曲部110Aの基端から先端までの長さL2との比(L2/L1)が、0.5~1.2程度であることが好ましい。湾曲部110Aは全体が一定の曲率で湾曲していてもよく、曲率が次第に大きくなるように又は次第に小さくなるように変化していてもよい。また、先端側に湾曲していない直線状の部分を有していてもよい。
【0023】
外側シャフト111は、強度、変形性、及び薬液供給性等の観点から、外径が0.8mm~1.5mm程度で、肉厚が0.15mm~0.4mm程度とすることが好ましい。内側シャフトは、強度、変形性、及び薬液供給性等の観点から、肉厚が0.1mm~0.3mm程度とすることが好ましい。
【0024】
穿孔用頭部130は、内側シャフト先端112Aを閉ざすように設けられており、穿孔用頭部130から高周波エネルギーが出力される。穿孔用頭部130は、例えば、白金や金などにより形成したり、表面を金メッキして形成したりすることができる。穿孔用頭部130は、管腔内を移動する際に引っ掛かりが生じにくくできるため、先端表面が角をもたない湾曲面であることが好ましい。例えば、先端側に向かって凸となった略半球形状や、弾頭形状等とすることができる。本実施形態において、シャフト110は、導電性を有しており、穿孔用頭部130に高周波電流を供給する電路として機能する。シャフト110が導電性の場合、その外表面には、合成樹脂等の電気絶縁材料からなる絶縁層(図示せず)が設けられている。
【0025】
本実施形態の穿孔デバイス100は、例えば、図3図5に示すように、シース組立体200と組み合わされて、心房中隔の卵円窩に開存孔を形成する手技(ブロッケンブロー法)に用いられる。シース組立体200は、穿孔デバイス100が挿入されダイレータ210と、ダイレータ210が挿入される外シース220とを有している。
【0026】
ブロッケンブロー法の施術の例を挙げると、施術者は、まず血管等の体内管腔に予め挿通されたガイドワイヤに沿ってシース組立体200を右心房まで挿入する。次に、施術者は、ガイドワイヤを抜去して、ダイレータ210に穿孔デバイス100を挿通して穿孔用頭部130を右心房まで送り込む。次に、施術者は、穿孔用頭部130をダイレータ210の先端から突出させて、心房中隔の卵円窩に押し当てた後、卵円窩に押し当てられた穿孔用頭部130に高周波エネルギーを供給して、卵円窩を焼灼して孔を形成する。この後、テーパ状になったシース組立体200の先端部により孔を押し拡げつつ、シース組立体200を左心房内に侵入させる。
【0027】
シース組立体200は、シャフト110の湾曲部110Aとほぼ一致した湾曲部を先端側に有している。湾曲部を設けることにより、ダイレータ210の先端部が卵円窩に容易に向くようにでき、穿孔デバイス100による卵円窩の穿孔及びシース組立体200の左心房への挿入が容易にできる。
【0028】
卵円窩を焼灼する際には、穿孔デバイス100の穿孔用頭部130をダイレータ210の先端から突出させなければならいが、穿孔用頭部130が大きく突出しすぎると、心房内を傷つけてしまうおそれがある。このため、本実施形態においては、図4に示すようにダイレータ210の先端部に内径が外側シャフト111の外径よりも小さく、内側シャフト112の外径よりも大きい、ダイレータ小径部213を設けている。外側シャフト111は、ダイレータ小径部213の段差215に当接し、ダイレータ小径部213に侵入できないので、穿孔用頭部130がダイレータ210の先端から突出する突出長を制限することができる。
【0029】
内側シャフト112の外側シャフト111から突出した部分の長さは、器具が使用される態様にもよるが、10mm~30mm程度とすることが好ましい。この場合、穿孔用頭部130の長さが0.5mm~3mm程度となるように、ダイレータ小径部213の長さは内側シャフトの突出した部分の長さより5mm~10mm程度短くすることが好ましい。
【0030】
また、穿孔を行う場合には、穿孔用頭部130が卵円窩の部分に当接するように手探りで位置合わせをしなければならない。このため、穿孔用頭部130が他の部分よりも薄く柔らかい卵円窩の部分に当接した感触が、施術者の手元まで十分に伝わるようにする必要がある。しかし、湾曲部110Aの先端側に設けられた穿孔用頭部130が卵円窩に当接した際に生じる力の向き(ベクトル)は、直線状部110Bの延びる方向と一致しない。このため、穿孔用頭部130が卵円窩に当接した感触は、操作部150に伝わりにくい。さらに、シャフト110は抜け止めとなる段差を形成するために、外側シャフト111の先端側に内側シャフト112が継ぎ足された構成となっている。2本のシャフトを継ぎ足す場合、連結部において力が吸収されやすいので、さらに感触が手元まで伝わりにくくなる。
【0031】
しかし、本実施形態において、内側シャフト基端112Bが湾曲部110Aを越えて直線状部110Bに達する位置まで挿入されている。このため、穿孔用頭部130が卵円窩に当接した際に生じる力は、内側シャフト112を介して外側シャフト111の直線状部110Bに伝わる。このため、穿孔用頭部130が卵円窩に当接した感触が、施術者の手元まで十分に伝わる。
【0032】
内側シャフト112はスポット溶接により外側シャフト111に固定することができる。スポット溶接をする箇所を増やすことにより、連結部分における力の吸収が生じにくくなり、感触が手元までより伝わりやすくなる。内側シャフト112の外側シャフト111への挿入長さを長くすることにより、軸方向の溶接箇所を増やすことが容易にできる。スポット溶接の箇所は製造コスト等を考慮して決めればよいが、力が伝わりやすくする観点から、周方向に位置をずらして複数カ所にスポット溶接を行うことができる。また、軸方向に位置をずらして複数箇所にスポット溶接を行ってもよい。軸方向に位置をずらす場合、内側シャフト112と外側シャフト111との重なり部分の最も先端側と最も基端側とを溶接することが好ましい。さらに、周方向及び軸方向の両方に位置をずらしてスポット溶接を行ってもよい。なお、内側シャフト112の外側シャフト111への固定は、スポット溶接に限らず、リング形状やスパイラル形状にレーザ溶接してもよく、重なり部分の全体を固定してもよい。また、接着等の溶接以外の方法により固定することもできる。
【0033】
内側シャフト基端112Bは、湾曲部110Aと直線状部110Bとの境界を越えて、直線状部110B側に達していてもよい。さらに、内側シャフト基端112Bが外側シャフト111の基端にまで達していてもよい。内側シャフト112の一部に、らせん状の切り込み(スパイラルスリット))を設けることができる。内側シャフト112の材質や肉厚によってはシャフトの剛性が高くなりすぎて、シャフト110の湾曲部110Aがダイレータ210を通過する際の抵抗が大きくなったり、通過できなくなったりするおそれがある。湾曲部の少なくとも一部において内側シャフト112にスパイラルスリットを設けることにより、穿孔用頭部130が穿孔部位に当接した際の感触を手元まで伝えることを可能にしつつ、シャフト110の剛性の上昇を抑えることができる。
【0034】
なお、スパイラルスリットを有する内側シャフト112は、レーザ加工等により形成できる。また、スパイラルスリットに限らず、内側シャフト112を網目状等とすることもできる。また、細い棒状の部材が基端側に延びる構造とすることもできる。
【0035】
湾曲部110Aの曲げ剛性をさらに小さくしたい場合には、図6に示す第1変形例のように、湾曲部110Aの少なくとも一部において外側シャフト111の一部を肉薄にした易変形部111Cを設けることもできる。この場合においても、内側シャフト112は、直線状部110Bまで延びているため、湾曲部110Aにおいて外側シャフト111に易変形部111Cを設けても、穿孔用頭部130が穿孔部位に当接した感触を十分に手元まで伝えることができる。
【0036】
本変形例において、易変形部111Cは、湾曲部110Aの曲率半径方向Rにおいて外面を研磨しており、図7に示すように曲率半径方向Rに沿った第1の径方向D1おける肉厚t1が、第1の径方向D1と直交する第2の径方向D2における肉厚t2よりも薄くなっている。このため、湾曲部110Aの曲率を変化させる方向には変形が生じやすくなるが、それ以外の方向については曲げ剛性が維持される。このため、ダイレータ210内の通過を容易にしつつ、卵円窩の押圧を可能にする剛性は維持できる。但し、変形性と剛性のバランスが取れる場合は、易変形部111Cにおいて外側シャフト111の全周を削って肉薄にしてもよい。
【0037】
なお、一般的な穿孔用デバイスにおいて外側シャフト111の肉厚は0.15mm~0.4mm程度であり、内側シャフト112が挿入された湾曲部に設けられた易変形部111Cの第1の径方向における肉厚は、変形性と強度とを両立させる観点から、その25%~70%とすることが好ましい。
【0038】
図7に示す第2変形例のように、シャフト110の先端から基端までの全体を連続した管体とし、先端から所定の位置にリング状部材115を固定することにより先端側の部分よりも外径が大きくなる段差部115Aを設けた構成としてもよい。シャフト110の先端から基端までが1つの部材からなるため、穿孔部位に触れた穿孔用頭部130の感触が基端までより良く伝わりやすくできる。また、段差部115Aが抜け止めとなるため、穿孔用頭部130のダイレータ210からの突出長を制御することもできる。段差部115Aは、抜け止めとして機能すればよく、連続したリング状ではなく、1つ又は複数の凸部により形成することもできる。また、管体の外側に他の部材を固定するのではなく、管体の外表面を変形させて段差部115Aを形成したり、段差部より先端側の部分を研削等により細くすることにより形成したりしてもよい。
【0039】
シャフト110の基端に設けられた操作部150は、把持をしてシャフト110を操作できればどのような形状であってもよい。操作部150を貫通させてシャフト110を固定することにより、穿孔用頭部130の感触が施術者に伝わりやすくすることができる。但し、施術者の手元に感触が伝われば、シャフト110は操作部150を貫通していなくてもよい。
【0040】
操作部150には、高周波電源装置に接続するための電源用コネクタ152が設けられている。電源用コネクタ152は、通電ケーブル153を介して金属製のシャフト110に接続されており、シャフト110に高周波電流を流すことができる。
【0041】
操作部150の基端にはシリンジ等が接続可能な液用コネクタ155が設けられている。シャフト110の先端部には、開口112aが設けられており、液用コネクタ155から注入された生理食塩水や造影剤等の薬液をシャフト110の内腔を通して施術部位に送り込むことができる。
【0042】
本実施形態の穿孔デバイス100が挿入されるダイレータ210は、内腔214を有する中空管体であり、先端側にダイレータ湾曲部216を有する。ダイレータ210は、可撓性の樹脂等により形成することができる。穿孔デバイス100の挿入を容易にし、穿孔デバイスが挿入された状態での操作が容易となるように、ダイレータ湾曲部216は、穿孔デバイス100の湾曲部110Aとほぼ一致して湾曲していることが好ましい。
【0043】
ダイレータ210の先端には、先端側に向かってテーパ状に縮径するダイレータテーパ部212が形成されている。ダイレータテーパ部212により、穿孔デバイス100により形成された卵円窩の孔を広げることができる。
【0044】
ダイレータ210は、穿孔デバイス100の内側シャフト112の外径よりもわずかに内径が大きく、外側シャフト111の外径よりも内径が小さいダイレータ小径部213を有している。ダイレータ小径部213の基端部には段差215が形成されている。穿孔デバイス100の内側シャフト112はダイレータ小径部213に侵入できるが、外側シャフト111は、段差215に当接して侵入できない。段差215は、外側シャフト111の先端と当接すればよく、ダイレータ210の中心軸に向かって傾斜するなどしていてもよい。
【0045】
ダイレータ210の基端には、Yコネクタ等と連結可能なダイレータコネクタ211が設けられている。ダイレータコネクタ211は、ダイレータ210の他の部分と一体成型しても良く、別に成型した部材を固定してもよい。
【0046】
ダイレータ210が挿入される外シース220は、シース本体221と、シース本体221の基端に設けられたハブ224とを有している。
【0047】
シース本体221は長尺の管体あり、先端側にシース湾曲部222を有している。シース湾曲部222の湾曲角度は、ダイレータ湾曲部216の湾曲角度とほぼ一致していることが好ましい。また、ダイレータ210を外シース220に挿入してシース組立体とした状態で、ダイレータ湾曲部216とシース湾曲部222とは、湾曲開始位置、湾曲方向がほぼ一致していることが好ましい。シース本体221は、可撓性の樹脂等により形成することができる。
【0048】
シース本体221の先端には、先端側に向かって次第に縮径するシーステーパ部223が設けられている。外シース220にダイレータ210を挿入してシース組立体200とした際に、ダイレータテーパ部212とシーステーパ部223とは、ほぼ連続したテーパ形状となることが好ましい。これにより、ダイレータテーパ部212と共に卵円窩に設けられた孔を拡大して、外シース220を左心室に侵入させることができる。
【0049】
ハブ224は、シース本体221の基端に設けられており、シース本体221の内腔を塞ぐ弁体225を有している。弁体225は、押圧により押し拡げられるため、ダイレータ210を挿入することができる。ダイレータを引き抜くと弁体225が閉じるため、シース本体221から血液が漏れ出たり、体内に空気が入ったりしないようにできる。ハブ224は、樹脂等により形成することができるが、ダイレータ210の挿抜等を容易にするため、シース本体221よりも剛性を高くすることが好ましい。弁体は、ゴム又はエラストマー等の弾性体により形成することができる。
【0050】
ハブ224には、シリンジ等を接続可能なシースポート227が液ライン226を介して接続されている。シースポート227によりシース本体221内をプライミングしたり、造影剤等の薬剤を注入したりすることができる。
【0051】
本実施形態において、シャフト110はステンレス等の金属材料により形成されており、穿孔用頭部130に高周波電流を供給する電路として機能する。しかし、シャフト110とは別に高周波電流を穿孔用頭部130に供給する配線を設ける構成とすることもできる。この場合には、シャフト110を絶縁性とすることができ、種々の樹脂材料によりシャフト110を形成することができる。シャフト110を絶縁性とする場合には、シャフト110の外表面を覆う絶縁層は形成しなくてよい。また、高周波電源と接続する通電ケーブル153は配線と接続すればよい。
【0052】
なお、外側シャフト111及び内側シャフト112の一方を金属、他方を樹脂等の絶縁性材料により形成することもできる。外側シャフト111を樹脂により形成し、金属により形成した内側シャフト112を外側シャフト111の基端まで挿入すれば、外側シャフト111を絶縁層、内側シャフト112を電路として用いることができる。
【0053】
シャフト110は、ダイレータ内を通過させる際に変形と復元とが生じると共に、施術者が手で曲げて形状付けができる程度の変形性を有していることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本開示の体組織穿孔デバイスは、先端部が穿孔部位に当接した感触が手元まで十分に伝わり、操作性及び安全性が大きく向上し、心臓手術等において有用である。
【符号の説明】
【0055】
100 穿孔デバイス
110 シャフト
110A 湾曲部
110B 直線状部
111 外側シャフト
111C 易変形部
112 内側シャフト
112A 内側シャフト先端
112B 内側シャフト基端
112a 開口
115 リング状部
115A 段差部
130 穿孔用頭部
150 操作部
152 電源用コネクタ
153 通電ケーブル
155 液用コネクタ
200 シース組立体
210 ダイレータ
211 ダイレータコネクタ
212 ダイレータテーパ部
213 ダイレータ小径部
214 内腔
215 段差
216 ダイレータ湾曲部
220 外シース
221 シース本体
222 シース湾曲部
223 シーステーパ部
224 ハブ
225 弁体
226 液ライン
227 シースポート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8