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特開2022-185751ヤゲン形成データ設定装置、眼鏡レンズ加工装置及びヤゲン形成データ設定プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185751
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】ヤゲン形成データ設定装置、眼鏡レンズ加工装置及びヤゲン形成データ設定プログラム
(51)【国際特許分類】
   B24B 9/14 20060101AFI20221208BHJP
   G02C 13/00 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
B24B9/14 H
B24B9/14 A
G02C13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093562
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】武市 教児
(72)【発明者】
【氏名】川村 侑己
(72)【発明者】
【氏名】中子 裕也
【テーマコード(参考)】
2H006
3C049
【Fターム(参考)】
2H006DA01
3C049AA03
3C049AB05
3C049AC02
3C049BA07
3C049BB02
3C049BC02
3C049BC03
3C049CA01
3C049CB03
3C049CB04
(57)【要約】
【課題】 ヤゲン形成データの設定をより容易に行えるようにする。
【解決手段】 眼鏡フレームのリムに眼鏡レンズを保持させるためのヤゲンを設定するためのヤゲン形成データ設定装置であって、眼鏡フレームのリム情報を取得するリム情報取得手段と、ディスプレイの表示を制御する表示制御手段と、を有し、表示制御手段は、ヤゲンの形成データを設定するための設定画面であって、取得されたリム情報に基づき、リムに対応する設定画面を前記ディスプレイに表示させる。
【選択図】 図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡フレームのリムに眼鏡レンズを保持させるためのヤゲンを設定するためのヤゲン形成データ設定装置であって、
眼鏡フレームのリム情報を取得するリム情報取得手段と、
ディスプレイの表示を制御する表示制御手段と、を有し、
前記表示制御手段は、ヤゲンの形成データを設定するための設定画面であって、取得された前記リム情報に基づき、前記リムに対応する前記設定画面を前記ディスプレイに表示させることを特徴とするヤゲン形成データ設定装置。
【請求項2】
請求項1のヤゲン形成データ設定装置において、
前記表示制御手段は、取得された前記リム情報に基づき、前記リムに対応するヤゲンを形成するために必要となるパラメータを前記設定画面に識別可能に表示することを特徴とするヤゲン形成データ設定装置。
【請求項3】
請求項2のヤゲン形成データ設定装置において、
前記リム情報は、前記リムの断面形状のタイプを示すタイプ情報を含むことを特徴とするヤゲン形成データ設定装置。
【請求項4】
請求項3のヤゲン形成データ設定装置において、
前記タイプ情報は、少なくとも前記リムの溝形状のタイプを含み、
前記パラメータは、少なくとも前記リムの溝形状の溝幅と溝深さを含むことを特徴とするヤゲン形成データ設定装置。
【請求項5】
請求項3又は4のヤゲン形成データ設定装置において、
前記リム情報取得手段は、前記表示制御手段の制御によって前記設定画面に表示された前記リムの断面形状における複数のタイプの中から一つが選択されることで前記タイプ情報を取得することを特徴とするヤゲン形成データ設定装置。
【請求項6】
眼鏡フレームのリムに眼鏡レンズを保持させるためのヤゲンを眼鏡レンズの周縁に形成するための加工具を有し、設定されたヤゲン形成データに基づいて前記加工具によって眼鏡レンズの周縁にヤゲンを形成する眼鏡レンズ加工装置であって、
請求項1~5の何れかのヤゲン形成データ設定装置を備えることを特徴とする眼鏡レンズ加工装置。
【請求項7】
眼鏡フレームのリムに眼鏡レンズを保持させるためのヤゲンを設定するためのヤゲン形成データ設定装置で実行されるヤゲン形成データ設定プログラムであって、
眼鏡フレームのリムの情報を取得するリム情報取得ステップと、
ディスプレイの表示を制御する表示制御ステップと、を含み、
前記表示制御ステップは、ヤゲンの形成データを設定するための設定画面であって、取得された前記リム情報に基づき、前記リムに対応する前記設定画面を前記ディスプレイに表示させるステップを含み、
これらのステップをヤゲン形成データ設定装置の制御ユニットに実行させることを特徴とするヤゲン形成データ設定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼鏡フレームのリムに眼鏡レンズを保持させるためのヤゲンを設定するためのヤゲン形成データ設定装置、ヤゲンを眼鏡レンズの周縁に形成する眼鏡レンズ加工装置、及びヤゲン形成データ設定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
高カーブフレーム等のリムに眼鏡レンズを保持させるヤゲンの前ヤゲン(ヤゲンの前側の斜面)と後ヤゲン(ヤゲンの後側の斜面)とを別々の加工具によって眼鏡レンズに周縁に形成する眼鏡レンズ加工装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、前ヤゲンの高さと後ヤゲンの高さとを個別に設定できるヤゲン形成データ設定装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-48113号公報
【特許文献2】特開2016-49592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来装置においては、前ヤゲンの高さ及び後ヤゲンの高さ等のヤゲン形成状態の設定は、それぞれ操作者が必要なパラメータを認識し、前ヤゲンの高さ及び後ヤゲンの高さ等の数値を入力することで設定する方法であった。その設定のためには、操作者が専門知識と高い技量を有している必要があり、レンズ加工に不慣れな操作者ではヤゲン形成データの設定が容易でなかった。
【0005】
本開示は、レンズ加工に不慣れな操作者であっても、ヤゲン形成データの設定をより容易に行えるヤゲン形成データ設定装置、眼鏡レンズ加工装置及びヤゲン形成データ設定プログラムを提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るヤゲン形成データ設定装置は、眼鏡フレームのリムに眼鏡レンズを保持させるためのヤゲンを設定するためのヤゲン形成データ設定装置であって、眼鏡フレームのリム情報を取得するリム情報取得手段と、ディスプレイの表示を制御する表示制御手段と、を有し、前記表示制御手段は、ヤゲンの形成データを設定するための設定画面であって、取得された前記リム情報に基づき、前記リムに対応する前記設定画面を前記ディスプレイに表示させることを特徴とする。
【0007】
本開示に係る眼鏡レンズ加工装置は、眼鏡フレームのリムに眼鏡レンズを保持させるためのヤゲンを眼鏡レンズの周縁に形成するための加工具を有し、設定されたヤゲン形成データに基づいて前記加工具によって眼鏡レンズの周縁にヤゲンを形成する眼鏡レンズ加工装置であって、上記のヤゲン形成データ設定装置を備えることを特徴とする。
【0008】
本開示に係るゲン形成データ設定プログラムは、眼鏡フレームのリムに眼鏡レンズを保持させるためのヤゲンを設定するためのヤゲン形成データ設定装置で実行されるヤゲン形成データ設定プログラムであって、眼鏡フレームのリムの情報を取得するリム情報取得ステップと、ディスプレイの表示を制御する表示制御ステップと、を含み、
前記表示制御ステップは、ヤゲンの形成データを設定するための設定画面であって、取得された前記リム情報に基づき、前記リムに対応する前記設定画面を前記ディスプレイに表示させるステップを含み、これらのステップをヤゲン形成データ設定装置の制御ユニットに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、レンズ加工に不慣れな操作者であっても、ヤゲン形成データの設定をより容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】眼鏡レンズ加工装置が備える加工機構部の構成を説明する図である。
図2】加工具回転軸に取り付けられた加工具の例である。
図3】第2加工具ユニットの概略構成図である。
図4】レンズ形状測定ユニットの概略構成図である。
図5】ヤゲン形成データ設定装置及び眼鏡レンズ加工装置に関する制御系ブロック図である。
図6】レンズLEに形成されるヤゲンにおける前ヤゲンの高さ、後ヤゲンの高さ及びヤゲン頂点幅を説明する図である。
図7】加工条件を設定する場合のディスプレイの画面例である。
図8】リム情報を設定するための画面例を示す図である。
図9】リムに対応するヤゲンを形成するために必要となるパラメータを設定するための設定画面の例を示す図である。
図10】ムに対応するヤゲンを形成するために必要となるパラメータを識別可能に表示する方法の他の例を示す図である。
図11】リム溝の向きがフレームカーブに沿う向きの場合に、ヤゲン形状データを求める方法を説明する図である。
図12】リム溝の向きが所定の平面に平行な向きの場合に、ヤゲン形状データを求める方法を説明する図である。
図13】強制ヤゲン加工モードにおけるヤゲンのシミュレーション画面の例を示す図である。
図14】リム溝の溝幅及び溝深さを複数個所で設定する場合の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施形態を図面に基づいて説明する。図1~14は本実施形態に係るヤゲン形成データ設定装置、眼鏡レンズ加工装置及びヤゲン形成データ設定プログラムについて説明する図である。
【0012】
[概要]
例えば、ヤゲン形成データ設定装置(例えば、ヤゲン形成データ設定装置55)は、眼鏡フレームのリムに眼鏡レンズを保持させるためのヤゲンを設定するために使用される。例えば、ヤゲン形成データ設定装置は、リム情報取得手段(例えば、データ取得ユニット60)を備える。例えば、リム情報取得手段は、眼鏡フレームのリム情報を取得する。例えば、リム情報取得手段は、リム情報が入力画面によって入力されることでリム情報を取得してもよいし、送信されたリム情報が受信することでリム情報を取得してもよい。また、例えば、ヤゲン形成データ設定装置は、表示制御手段(例えば、制御ユニット50)を備える。例えば、表示制御手段は、ディスプレイ(例えば、ディスプレイ62)の表示を制御する。
【0013】
例えば、リム情報は、少なくともリムの断面形状のタイプを示すタイプ情報を含む。例えば、リムの断面形状のタイプは、リムの断面の溝形状のタイプである。例えば、溝形状のタイプは、角形状(四角形状)と、三角形状と、丸形状(溝の断面形状が円の一部の形状)と、の何れかを含んでいてもよい。なお、リム溝の角形状は、溝の奥の隅が丸くされているU字形状を含んでいてもよい。また、リム溝の三角形状は、溝の奥側が丸くされている場合を含んでいてもよい。また、リム溝の丸形状は、溝の断面形状が楕円形状の一部になっている場合を含んでいてもよい。
【0014】
例えば、表示制御手段は、ヤゲンの形成データを設定するための設定画面(例えば、設定画面670、設定画面690)をディスプレイに表示させる。例えば、表示制御手段は、取得されたリム情報に基づき、リムに対応する設定画面をディスプレイに表示させる。これにより、レンズ加工に不慣れな操作者(例えば、ヤゲン設定の専門知識に乏しい操作者)でも、設定画面に従えば、より容易に適切なヤゲンを設定できる。
【0015】
例えば、表示制御手段は、取得されたリム情報に基づき、リムに対応するヤゲンを形成するために必要となるパラメータを設定画面に識別可能に表示する。例えば、表示制御手段は、リムのタイプに対応するパラメータの設定の必要性が操作者に認識される形態で設定画面に表示されればよい。例えば、パラメータは、リムのタイプの溝形状の特徴量を示すものであってもよい。例えば、パラメータは、少なくともリムの溝形状の溝幅と溝深さを含んでいてもよい。例えば、リムの溝形状が角形状の場合、パラメータは溝幅と溝深さが必要とされる。一方、リムの溝形状が三角形状及び丸形状の場合、パラメータは溝幅が必要とされるが、溝深さはなくてもよい。例えば、リムの溝形状が三角形状及び丸形状の場合、溝深さは、溝幅に対して一定の関係(例えば、溝幅の半分の値、または溝幅に一定の係数を乗じた値)となり、溝幅が決まれば自動的に決められるためである。このため、例えば、表示制御手段は、リムの溝形状が角形状の場合には、溝幅及び溝深さの両方の値の入力欄を設定画面に表示し、リムの溝形状が三角形状及び丸形状の場合には、溝幅の値の入力欄を設定画面に表示するが、溝深さの入力欄を設定画面に表示させない(例えば、入力を制限する)ことで、溝幅の入力が不要な旨を識別可能にする。あるいは、例えば、表示制御手段は、リムの溝形状が三角形状及び丸形状の場合には、溝深さの入力欄の色を溝幅の入力欄とは異なる色で表示し、溝幅の入力が不要な旨を識別可能にしてもよい。これにより、レンズ加工に不慣れな操作者でも、ヤゲン形成に必要となるパラメータの値を容易に設定できる。
【0016】
なお、識別可能なパラメータは、直接的又は間接的に設定されてもよい。例えば、リムの材質がセルの場合、リムの断面形状のタイプは角形状、三角形状及び丸形状の3つのタイプとされる。一方、リムの材質がメタルの場合、標準的に、リムの断面形状のタイプは三角形状とされる。したがって、リム情報取得手段によってリムの材質がメタルとして取得された場合には、リムの断面形状のタイプが間接的に三角形状に設定されるため、リムに対応するパラメータも間接的に設定される。このため、表示制御手段は、取得されたリム材質に基づき、ヤゲン形成に必要となるパラメータを設定画面に識別可能に表示してもよい。
【0017】
例えば、表示制御手段は、リムの断面形状のタイプを選択するためのタイプ選択情報を設定画面に表示してもよい。例えば、リム情報取得手段は、リムのタイプ選択情報の中から一つが選択されることでリムの断面形状のタイプを取得してもよい。これにより、レンズ加工に不慣れな者でも、リムの溝タイプを選択することで、より簡単に適切なヤゲン設定ができる。
【0018】
なお、表示制御手段は、リムの溝の向きを選択するための選択情報を設定画面に表示させてもよい。例えば、リムの溝の向きの選択情報は、フレームカーブに沿う向きと、フレームカーブに拘わらず、一定の方向の向きであって、所定の平面(例えば、リムの輪郭形状の左端、右端、上端、下端の4点で定められる平面)に平行な向きと、を含む。この場合、リムの溝の向きの選択情報の中から一つが選択されることで、リム情報取得手段は、ヤゲン形成のために役立つリムの情報を取得する。
【0019】
また、リム情報取得手段は、フレームカーブの値をリムの情報の一部として取得してもよい。フレームカーブの値は、リムの溝の向きがフレームカーブに沿う向きの場合に、ヤゲン形状データの演算に利用される。例えば、表示制御手段は、フレームカーブの値を入力するための入力画面をディスプレイに表示し、この入力画面によってフレームカーブの値が入力されることにより、リム情報取得手段はフレームカーブの値を取得してもよい。また、フレームカーブの値は、リムの形状を測定する装置から送信されたデータを受信することで、リム情報取得手段はフレームカーブの値を取得してもよい。
【0020】
例えば、ヤゲン形成データ設定装置は、ヤゲン形状データを得る演算手段(例えば、制御ユニット50)と、演算結果(例えば、制御ユニット50)を出力する出力手段と、を備える。例えば、演算手段は、リム情報取得手段によって取得されたリムの断面形状のタイプと、設定画面で設定されたパラメータ(例えば、リムの溝形状の溝幅と溝深さ)と、に基づき、眼鏡レンズにヤゲンを形成するためのヤゲン形状データを得る。例えば、ヤゲン形状データは、少なくとも眼鏡レンズの前面側の前ヤゲンの高さと、眼鏡レンズの後面側の後ヤゲンの高さと、を含む。ヤゲン形状データは、ヤゲン頂点幅を含んでいてもよい。例えば、演算手段は、前ヤゲンを形成するための前ヤゲン加工具(例えば、前ヤゲン加工具162)の加工斜面の傾斜角度に基づき、前ヤゲンの高さを求める。演算手段は、さらに、後ヤゲンを形成する後ヤゲン加工具(例えば、後ヤゲン加工具163)の加工斜面の傾斜角度に基づき、後ヤゲンの高さを求める。また、演算手段は、フレームカーブの情報に基づいてリムの傾斜角度を求め、求めたリムの傾斜角度に基づいて前ヤゲンの高さと、後ヤゲンの高さを求める。
【0021】
例えば、本形態に係る眼鏡レンズ加工装置(例えば、眼鏡レンズ加工装置1)は、眼鏡フレームのリムに眼鏡レンズを保持させるためのヤゲンを眼鏡レンズの周縁に形成するための加工具(例えば、前ヤゲン加工具162、後ヤゲン加工具163)を有し、設定されたヤゲン形成データに基づいて加工具によって眼鏡レンズの周縁にヤゲンを形成する眼鏡レンズ加工装置であって、ヤゲン加工データ設定装置を備えていてもよい。例えば、眼鏡レンズ加工装置は、眼鏡レンズを保持するレンズ保持軸(例えば、レンズチャック軸102)を備える。眼鏡レンズ加工装置は、眼鏡レンズの前面側に前ヤゲンを形成する前ヤゲン加工具(例えば、前ヤゲン加工具162)と、眼鏡レンズの後面側に後ヤゲンを形成する後ヤゲン加工具(例えば、後ヤゲン加工具163)と、を持つヤゲン加工具を備える。例えば、眼鏡レンズ加工装置は、ヤゲン加工具とレンズ保持軸に保持された眼鏡レンズとの相対的に位置関係を変更する移動手段(例えば、移動ユニット300)を備える。例えば、眼鏡レンズ加工装置は、ヤゲン加工データ設定装置で得られたヤゲン形状データに基づき、レンズ保持軸に保持されたレンズの周縁にヤゲンを形成するための加工制御データを取得する加工制御データ取得手段(例えば、制御ユニット50)を備える。例えば、眼鏡レンズ加工装置は、加工制御データに基づいて移動手段を制御し、ヤゲン加工具によって眼鏡レンズの周縁にヤゲンを形成する制御手段(例えば、制御ユニット50)を備える。
【0022】
なお、本開示においては、本実施形態に記載する装置に限定されない。例えば、上記実施形態の機能を行う制御プログラム(ソフトウェア)をネットワーク又は各種記憶媒体等を介して、システムあるいは装置に供給する。そして、システムあるいは装置の制御部(例えば、CPU等)がプログラムを読み出し、実行することも可能である。
【0023】
例えば、ヤゲン形成データ設定プログラムは、眼鏡フレームのリムの情報を取得するリム情報取得ステップを含む。例えば、ヤゲン形成データ設定プログラムは、ディスプレイの表示を制御する表示制御ステップを含む。例えば、表示制御ステップは、ヤゲンの形成データを設定するための設定画面であって、取得されたリム情報に基づき、リムに対応する設定画面を前記ディスプレイに表示させる。
【0024】
[実施例]
本開示の典型的な実施例の一つについて、図面を参照して説明する。図1は、実施例に係る眼鏡レンズ加工装置1が備える加工機構部の構成を説明する図である。
【0025】
例えば、眼鏡レンズ加工装置1はレンズ保持手段の例であるレンズ保持ユニット100を備える。例えば、眼鏡レンズ加工装置1はレンズ形状測定ユニット200を備える。例えば、眼鏡レンズ加工装置1は第1加工具ユニット150を備える。第1加工具ユニット150は、レンズLEの周縁を加工する加工具を回転させるために構成されている。例えば、眼鏡レンズ加工装置1は第2加工具ユニット500を備える。第2加工具ユニット500は、レンズLEの仕上げ加工後の周縁に面取り及び溝堀の少なくとも一つの加工を行うための加工具を回転させるために構成されている。例えば、眼鏡レンズ加工装置1は移動手段の例である移動ユニット300を備える。移動ユニット300はレンズLEと第1加工具ユニット150が持つ加工具との相対的な位置関係を変える(調整)するために構成されている。また、移動ユニット300は、レンズLEと、第2加工具ユニット500が持つ加工具と、の相対的な位置関係を変える(調整)するために構成されている。
【0026】
<レンズ保持ユニット>
レンズ保持ユニット100は、レンズLEを狭持(保持)して回転させるためのレンズチャック軸102と、キャリッジ101と、を備える。レンズチャック軸102は、一対のレンズチャック軸102L及び102Rを備える。キャリッジ101の左腕101Lにレンズチャック軸102Lが回転可能に保持され、キャリッジ101の右腕101Rにレンズチャック軸102Rが回転可能に保持されている。レンズチャック軸102(レンズLE)は、モータ120によって回転される。
【0027】
<第1加工具ユニット>
第1加工具ユニット150は、加工具回転軸161を回転するためのモータ160を備える。加工具回転軸161は、レンズチャック軸102と平行な位置関係で、本体ベース170に回転可能に保持されている。加工具回転軸161にレンズLEの周縁を加工するための複数の加工具168が取り付けられている。
【0028】
図2は、加工具回転軸161に取り付けられた加工具168の例である。加工具168は、例えば、前ヤゲン加工具162と、後ヤゲン加工具163と、通常仕上げ加工具164と、鏡面仕上げ加工具165と、粗加工具166と、の少なくとも1つを含む。実施例では加工具162~166として砥石が使用されているが、カッターが使用されても良い。
【0029】
粗加工具166は、レンズLEの周縁を粗加工するために使用される。通常仕上げ加工具164は、低カーブのレンズLEに通常の小ヤゲンを形成するためV溝164Vと平仕上げ加工面164aと、を有する。V溝164Vによって低カーブレンズの周縁に前ヤゲン及び後ヤゲンが同時に形成される。V溝164Vによって形成される前ヤゲン及び後ヤゲンの高さ(レンズLEのチャック中心に対する径方向の距離)は、例えば、1mmである。鏡面仕上げ加工具165は、通常仕上げ加工具164によって仕上げ加工されたレンズ周縁をさらに鏡面仕上げするために使用される。
【0030】
後ヤゲン加工具163は、高カーブのレンズLEの周縁に後ヤゲンLVr(レンズLEの後側のヤゲン斜面)を形成するための加工斜面163Vrと、レンズLEの周縁において後ヤゲンLVrからレンズ後側に延びる後裾野LCrを形成するための加工面163Crと、を有する。前ヤゲン加工具162は、高カーブのレンズLEの周縁に前ヤゲンLVf(レンズLEの前側のヤゲン斜面)を形成するための加工斜面162Vfを有する。また、前ヤゲン加工具162は、レンズLEの周縁において前ヤゲンLVfからレンズ前側に延びる前裾野LCfを形成するための加工面162Cfを有していてもよい。なお、高カーブレンズのヤゲン加工においては、レンズ前側には前裾野LCfを形成しない方式もあるので、前ヤゲン加工具162の加工面162Cfが設けられていなくてもよい。
【0031】
前ヤゲン加工具162の加工斜面162Vfは、通常仕上げ加工具164のV溝164Vによって形成される前ヤゲンより大きな高さ(レンズLEの径方向の距離が長い)の前ヤゲンLVfを高カーブレンズに形成するためのサイズを持つ。後ヤゲン加工具163の加工斜面163Vrも通常仕上げ加工具164のV溝164Vによって形成される後ヤゲンより大きな高さ(レンズLEの径方向の距離が長い)の後ヤゲンLVrを高カーブレンズに形成するためのサイズを持つ。加工斜面162Vf及び加工斜面163Vrは、例えば、5mm以上のヤゲンの高さを形成可能なサイズを持つ。前ヤゲン加工具162の加工斜面162Vfの傾斜角度αf(X軸に対する角度)、後ヤゲン加工具163の加工斜面163Vrの傾斜角度αrは、後述するメモリ70に記憶されている。
【0032】
なお、前ヤゲン加工具162は、後ヤゲン加工具163と離れて加工具回転軸161に配置されていても良い。また、前ヤゲン加工具162は加工具回転軸161とは別に設けられた加工具回転軸(例えば、第2加工具ユニット500の加工具回転軸501)に配置されていても良い。また、前ヤゲン加工具162は、第2加工具ユニット500が備える前面取り加工具502a(図3参照)を兼用してもよい。
【0033】
<第2加工具ユニット>
図1おいて、第2加工具ユニット500はキャリッジ101の前方に配置されている。図3は、第2加工具ユニット500の概略構成図である。加工具回転軸501に、レンズLEの周縁コバ(角部)を面取り加工するための面取り加工具502が取り付けられている。面取り加工具502は、レンズLEの前面コバを面取り加工するための前面取り加工具502aと、レンズLEの後面コバを面取り加工するための後面取り加工具502bと、を備える。例えば、面取り加工具502は砥石で構成されているが、カッターであってもよい。加工具回転軸501は、アーム510に回転可能に保持されている。アーム510を支持する支持部材512には、加工具回転軸501を回転するための駆動源であるモータ514が取り付けられている。モータ514の回転は、アーム510内等に配置されたギヤ又はベルト等の回転伝達機構(図示を略す)を介して加工具回転軸501に伝達され、加工具回転軸501が回転される。また、アーム510は、退避位置と加工位置との間で移動可能に支持部材512に取り付けられている。支持部材512にはアーム510を移動するためのモータ516が取り付けられている。モータ516の駆動によってアーム510が移動されることにより、加工具回転軸501(面取り加工具502)が退避位置から所定の加工位置に移動される。なお、支持部材512は、取り付け部材518を介してベース170に取り付けられている。
【0034】
<移動ユニット>
移動ユニット300は、レンズチャック軸102に保持されたレンズLEと、加工具(加工具168及び面取り加工具502)と、の相対的な位置を調整するために構成されている。例えば、移動ユニット300は、レンズチャック軸102と加工具回転軸161及び回転軸501との軸間距離を変動させる第1移動ユニット310と、レンズチャック軸102の軸方向にレンズLEを移動させる第2移動ユニット330と、を備える。実施例ではレンズチャック軸102の軸方向をX方向とする。レンズチャック軸102と加工具回転軸161及び回転軸501との軸間距離を変動させる方向をY方向とする。
【0035】
第1移動ユニット310は、モータ315を備える。モータ315の回転により移動支基301がX方向に移動される。これにより、移動支基301に搭載されたキャリッジ101及びレンズチャック軸102(レンズLE)がX方向に移動される。なお、第1移動ユニット310の構成は、加工具回転軸161及び回転軸501をX方向に移動させることでもよい。
【0036】
第2移動ユニット330は、キャリッジ101(レンズチャック軸102)をY方向に移動するためモータ335を備える。キャリッジ101はシャフト333,334に沿ってY方向に移動可能に移動支基301に保持されている。モータ335の回転はY方向に延びるボールネジ337に伝達され、ボールネジ337の回転によりキャリッジ101(レンズチャック軸102とレンズLE)はY方向に移動される。なお、実施例では第2移動ユニット330はレンズチャック軸102をY方向に移動する構成であるが、加工具回転軸161及び回転軸501をY方向に移動させる構成でもよい。すなわち、第2移動ユニット330はレンズチャック軸102と加工具回転軸161及び回転軸501との軸間の距離を相対的に変化させる構成であれば良い。
【0037】
<レンズ形状測定ユニット>
図1において、キャリッジ101の上方にレンズ形状測定ユニット200が配置されている。レンズ形状測定ユニット200は、レンズLEのレンズ前面(前屈折面)の形状と、レンズ後面(後屈折面)の形状と、を測定するために使用される。レンズ形状測定ユニット200は、例えば、レンズ前面形状を測定するための測定ユニット200Fと、レンズ後面形状を測定するための測定ユニット200Rと、を備える。
【0038】
図4は、測定ユニット200Fの概略構成図である。測定ユニット200Fは、レンズ前面に接触する測定子206Fを有する。測定子206Fはアーム204Fの先端に取り付けられている。アーム204Fは、X方向に移動可能に、取付支基201Fに保持されている。アーム204Fは、ラック211F、ピニオン212F、ギヤ214F等を介してモータ216Fに接続されている。モータ216Fの駆動によってアーム204FがX方向に移動され、測定子206FがレンズLEの前面に押し当てられる。ピニオン212Fは、検知器213F(例えば、エンコーダ)の回転軸に取り付けられている。検知器213FによってX方向に移動される測定子206Fの位置が検知される。
【0039】
レンズ後面形状を測定するための測定ユニット200Rの構成は、測定ユニット200Fと左右対称であるので、その説明は省略する。測定ユニット200Rは、レンズ後面に接触される測定子206Rと、測定子206RをX方向に移動させるモータ216Rと、測定子206RのX方向における移動位置を検知する検知器213Rと、を備える。
【0040】
レンズ形状の測定時には、測定子206Fがレンズ前面に接触され、測定子206Rがレンズ後面に接触される。この状態でレンズ保持ユニット100によってレンズLEが回転されるとともに、玉型データに基づいて移動ユニット300によってレンズチャック軸102L及び102RがY方向に移動されることにより、玉型に対応したレンズ前面及びレンズ後面のレンズ形状が同時に測定される。すなわち、測定ユニット200Fによって玉型に対応したレンズ前面のコバ位置が測定され、測定ユニット200Rによって玉型に対応したレンズ後面のコバ位置が測定される。
【0041】
<制御系ブロック図>
図5は眼鏡レンズ加工装置1に関する制御系ブロック図である。眼鏡レンズ加工装置1は、ヤゲン形成データ設定装置55を備える。ヤゲン形成データ設定装置55は、データ取得ユニット60を備える。例えば、データ取得ユニット60は、眼鏡フレームのリムに眼鏡レンズを保持させるためのヤゲンを形成するために必要なリムの情報を取得する。データ取得ユニット60はデータ入力ユニットの機能を兼ねていてもよい。例えば、データ取得ユニット60はディスプレイ62を備える。例えば、データ取得ユニット60はデータ入力ユニット63を備える。例えば、ディスプレイ62はタッチパネルの機能を備え、データ入力ユニット63を含むように構成されていてもよい。ヤゲン形成データ設定装置55は、制御ユニット50を備える。制御ユニット50は、ディスプレイ62の表示を制御する表示制御ユニットを兼用する。制御ユニット50は、データ取得ユニット60に接続されている。ディスプレイ62の表示を制御する表示制御ユニットは、データ取得ユニット60に設けられていてもよい。また、制御ユニット50はヤゲン形状データを求める演算手段の制御ユニットを兼ねる。また、制御ユニット50はデータを出力するための出力手段を兼ねる。
【0042】
例えば、データ取得ユニット60は記憶手段の例であるメモリ70を備える。メモリ70にはデータ取得ユニット10によって取得された各種データが記憶される。また、メモリ70には、事前に設定されたヤゲン情報が記憶される。また、ヤゲン形成データ設定装置55の動作を制御するための各種プログラムが記憶されている。メモリ70は、データ取得ユニット60と分離されていてもよい。
【0043】
また、本実施例では、制御ユニット50は、眼鏡レンズ加工装置1の制御ユニットを兼ね、眼鏡レンズ加工装置1の全体の制御を司るためにも構成されている。制御ユニット50に、図1~4に示した各ユニットの電気系構成要素(モータ等)が接続されている。制御ユニット50はレンズ加工のための各種の演算を行うように構成されている。メモリ70には、レンズLEの周縁加工に関する各種のプログラムが記憶されている。
【0044】
また、データ取得ユニット60は玉型形状測定装置30に接続されていてもよい。例えば、玉型形状測定装置30は、眼鏡フレームのリムの形状を測定することで、リム情報として、リムに取り付けるレンズLEの玉型(レンズを周縁加工するための目標形状)を得る。また、玉型形状測定装置30がリムの形状の測定結果に基づいてフレームカーブの情報を得た後、フレームカーブの情報がデータ取得ユニット60によって取得されることでもよい。
【0045】
なお、ヤゲン形成データ設定装置55は、眼鏡レンズ加工装置1と分離されていてもよい。この場合、例えば、ヤゲン形成データ設定装置55と眼鏡レンズ加工装置1の制御ユニットとがデータ通信可能に構成される。
【0046】
<動作>
以上のような構成を備えるヤゲン形成データ設定装置55及び眼鏡レンズ加工装置1における動作を説明する。以下では、眼鏡フレームが高カーブフレームであり、レンズLEが高カーブレンズであり、眼鏡フレームのリムにレンズLEを保持させるヤゲンが高カーブヤゲンである場合を中心に説明する。高カーブヤゲンの形成では、前ヤゲンLVfと後ヤゲンLVrは、それぞれ前ヤゲン加工具162と後ヤゲンLVrとによって個別に加工される。このため、高カーブヤゲンの形成においては、図6に示されるように、リムの溝形状に対応して、前ヤゲンLVfの高さVfhと、後ヤゲンLVrの高さVrhと、が異なる量で加工可能にされる。また、リムの溝形状に対応して、ヤゲン頂点LVtがヤゲン頂点幅Vwで平加工される場合もある。例えば、ヤゲン頂点LVtは平仕上げ加工面164aによって加工される。
【0047】
レンズLEの周縁の加工に際し、データ取得ユニット60によってレンズLEの玉型データ(rn、θn)が取得される。rnは動径長のデータであり、θnは動径角のデータである。例えば、nは、1000点である。例えば、玉型形状測定装置30によって測定された眼鏡フレームのリムの輪郭形状がデータ取得ユニット60に取得される。玉型データはメモリ20に記憶されていたデータが呼び出されることで、データ取得ユニット60によって取得されてもよい。
【0048】
玉型データが取得されたら、操作者はレンズLEの周縁を加工するための加工条件をディスプレイ62によって設定(入力)する。図7は、加工条件を設定する場合のディスプレイ62の画面例である。図7において、ディスプレイ62の画面601には右眼用玉型TGRと左眼用玉型TGLが表示されている。レンズLEの周縁加工のために、玉型に対するレンズLEの光学中心位置を配置するためのレイアウトデータが入力される。例えば、レイアウトデータは、左右の玉型中心間距離FPD(右眼用玉型TGRの幾何中心TCRと左眼用玉型TGLの幾何中心TCLとの中心間距離)と、瞳孔間距離PD(右眼用光学中心OCRと左眼用光学中心OCLとの距離)と、左右の玉型の幾何中心に対する光学中心の高さ距離と、を含む。これらの値は、画面上の表示欄がタッチされることで表示されるテンキーによって入力できる。
【0049】
また、加工条件として、設定欄641aによってレンズの材質(プラスチック、ポリカーボネイト等)を設定できる。例えば、設定欄641aがタッチされると、レンズの材質の選択画面がポップアップ表示され、その中からレンズの材質を選択できる。
【0050】
また、加工条件として、設定欄641bによって眼鏡フレームのタイプ(リムの材質)を設定できる。例えば、設定欄641bがタッチされると、眼鏡フレームのタイプの選択画面がポップアップ表示される。例えば、眼鏡フレームのタイプの選択画面では、メタル(メタルフレーム)、セル(セルフレーム)、ツーポイント(リムレスフレーム)、ナイロール(ハーフリム)の中から選択できる。ここで、リムの材質で区別されるメタル及びセルの何れかが選択された場合、レンズLEにヤゲンを形成する必要があるので、ヤゲン形成に必要なデータを設定及び入力するための設定画面が表示される。
【0051】
図8は、リム材質のメタル及びセルの何れかが選択された場合に、リム情報を設定するための画面であって、ディスプレイ62に表示される画面610の例である。リム材質の表示欄651aには、選択されたリム材質がメタルとセルの何れであるかが表示される。さらに画面610には、リム情報として、リム溝の向きを選択するための選択欄651bが表示されていてもよい。
【0052】
例えば、リム溝の向きは、フレームカーブ(リムの左右方向の湾曲)に沿う向きと、フレームカーブに拘わらず、所定の平面(例えば、リムの輪郭形状の左端、右端、上端、下端の4点で定められる平面)に平行な向きと、を選択可能にされている。リム溝の向きによって、ヤゲン形成における前ヤゲン高さVfh、後ヤゲン高さVrh、及びヤゲン頂点幅Vwの値が異なるためである。
【0053】
なお、画面610の右上の表示欄661には、操作者の理解を助けるために、リム溝の向きの説明として、リム溝がフレームカーブに沿う向きの場合を示す図形662aと、リム溝が所定の平面に平行な向きの場合を示す図形662bと、が表示されている。図形662aと図形662bの何れかが指定されることで、リム溝の向きが選択されてもよい。また、リム溝の向きの角度が直接入力されてもよい。
【0054】
<レンズ材質がセルの場合>
ここで、レンズ材質がセルの場合には、一例として、リムの断面形状のタイプを選択するための選択欄651cが画面610上に表示される。選択欄651cがタッチされると、リム溝のタイプを選択するための画面がポップアップ表示され、複数のタイプ情報の中から一つが選択可能にされる。リムの断面形状のタイプは、リムの断面の溝形状(以下、リム溝)のタイプである。リム溝の形状は、代表的な複数の所定形状の中から操作者によって選択されることで、データ取得ユニット60の制御ユニット50により取得される。
【0055】
例えば、リム溝の形状は、角形状(四角形状)と、三角形状と、丸形状(溝の断面形状が円の一部の形状)と、の3つの所定タイプから一つを選択可能にされている。なお、画面610の左下の表示欄663には、リム溝のタイプを示す角形状(四角形状)、三角形状及び丸形状をそれぞれ模した角溝図形664a、三角溝図形664b及び丸溝図形664cが表示されている。これにより、操作者がリム溝のタイプを選択するに当たり、何れを選択して良いかの操作者の理解を助けることができる。操作者が眼鏡フレームのリム溝を確認し、何れのタイプであるかを選択欄651cによって選択する。なお、リム溝のタイプの選択は、表示欄663に表示された角溝図形664a、三角溝図形664b及び丸溝図形664cの中の一つが指定される方法であってもよい。
【0056】
リム溝のタイプが選択されると、図9(a)のように、画面610の右下には、選択されたリム溝のタイプに基づき、リムに対応するヤゲンを形成するために必要となるパラメータを設定するための設定画面670が表示される。実施例では、設定画面670は、画面610内に表示されているが、画面610とは別の画面がポップアップ表示されてもよいし、画面610の全体に表示されてもよい。なお、図9(a)は、リム溝のタイプとして角形状が選択された例である。また、表示欄663の溝形状を模した図形は、選択されたリム溝のタイプの図形の色が強調表示され、他の図形は薄い色の表示に切換えられる。これにより、操作者は何れのタイプのリム溝を選択したかを認識できる。
【0057】
設定画面670において、リム溝のタイプに対応したパラメータは、リム溝の形状の特徴量をとして、少なくとも溝幅Gwと溝深さGdが含まれている。リム溝のタイプが角形状の場合、溝幅Gwの値は入力欄671aで入力され、溝深さGdは、入力欄671bで入力される。また、リム形状の特徴量として、後面側リム幅Rrtの値が入力欄671cで入力可能とされていてもよい。後面側リム幅Rrtの入力は必ずしも必要なく、メモリ70に記憶された標準的な値が使用されてもよい。溝幅Gwの入力欄671aと、溝深さGdの入力欄671bと、が表示されていることにより、操作者は、角形状の場合にヤゲン形成のために必要なパラメータとしてリム溝の溝幅と溝深さがあると認識できる。また、リム幅Rrtの入力欄671cが表示されていれば、リム幅Rrtの値の必要性が操作者に理解される。
【0058】
操作者は、眼鏡フレームのリム溝の溝幅と溝深さを測定し(例えば、ノギス等が使用される)、測定した値を入力欄671a、671bに入力する。また、後面側リム幅Rrtの入力欄671cが表示されていれば、後面側リム幅を測定した値を入力欄671cに入力する。例えば、入力欄671a、671b及び671cがそれぞれタッチされると、テンキーがポップアップ表示され、テンキーによって数値を入力できる。
【0059】
図9(b)は、リム溝のタイプとして三角形状が選択された例である。リム溝のタイプが三角形状の場合、パラメータは溝幅が必要とされるが、溝深さはなくてもよい。三角形状の場合、溝深さは、溝幅に対して一定の関係(例えば、溝幅の半分の値、または溝幅に一定の係数を乗じた値)となり、溝幅が決まれば自動的に決められるためである。このため、三角形状の場合には、溝幅Gwの入力欄671aが表示されているが、溝深さGdの入力欄671bは表示されていない。すなわち、図9(b)の例では、溝深さGdの値の入力が制限されている。このため、リム溝が三角形状の場合、操作者は、ヤゲン形成のためのパラメータとして溝深さは必要ないと認識できる。
【0060】
図9(c)は、リム溝のタイプとして丸形状が選択された例である。丸形状の場合も、三角形状の場合と同様に、パラメータは溝幅が必要とされるが、溝深さはなくてもよい。これは、三角形状の場合と同様な理由による。このため、丸形状の場合も、溝幅Gwの入力欄671aが表示されているが、溝深さGdの入力欄671bは表示されていない。このため、丸形状の場合も、操作者はヤゲン形成のためのパラメータとして溝深さは必要ないと認識できる。
【0061】
このように、リムのタイプ(溝形状)に対応するヤゲンを形成するために必要となるパラメータが、リムのタイプに対応して識別可能に表示されるため、レンズ加工に不慣れな操作者でも、リムのタイプに対応してヤゲン形成に必要となるパラメータの値を容易に設定できる。
【0062】
また、リム溝のタイプが選択されると、次に、リムに対応するヤゲンを形成するために必要となるパラメータの設定画面が表示され、操作者の操作が誘導されるので、加工に不慣れな操作者であっても、ヤゲンを形成するために必要な設定作業が分かりやすく、容易にヤゲン設定をできる。
【0063】
図10は、リムに対応するヤゲンを形成するために必要となるパラメータを識別可能に表示する方法の他の例である。図10(a)はリム溝が三角形状の場合を示し、図10(b)はリム溝が丸形状の場合を示している。図10(a)、図10(b)のそれぞれにおいて、溝深さGdの入力欄671bは、溝幅Gwの入力欄671aとは異なる色で表示されている。すなわち、このような色の違いで、溝深さGdの入力の必要性が識別可能にされている。図10の例では、図9(a)、図9(b)と異なり、深さGdの入力欄671bが設けれているので、必要に応じて溝深さGdの値が入力可能である。例えば、リム溝が三角形状及び丸形状の場合であっても、溝幅Gwと溝深さGdの関係が標準より外れていると分かった場合、又は、より正確なヤゲンを形成したい場合には、操作者は、溝深さを測定し、その値を入力欄671aで入力できる。図9(a)の場合と同じく、入力欄671bがタッチされると、テンキーがポップアップ表示され、数値を入力できる。
【0064】
また、パラメータを識別可能に表示する方法としては、次の方法であってもよい。溝幅Gwの入力欄671aに値が入力さると、制御ユニット50によって溝幅Gwと溝深さGdの関係が一定の関係であるとして溝深さGdが求められ、求められた値が溝深さGdの入力欄671bに自動的に入力されることで表示されてもよい。このような表示も、パラメータが識別可能に表示される方法に含まれる。
【0065】
リムに対応するヤゲンを形成するために必要となるパラメータを識別可能に表示する方法は、上記の記載に限られず、表形式(パラメータに対応する数値入力欄が表で表された形式)で入力を制限する方法など、種々の変容が可能である。
【0066】
<レンズ材質がメタルの場合>
レンズ材質がメタルの場合、例えば、リムの断面形状のタイプを選択するための選択欄651cには、自動的に、三角形状が設定される。そして、設定画面670には、図9(b)又は図10(a)と同様に、三角形状のリム溝を模した図形が含まれる画面が表示される。メタルの場合、溝形状は、標準的には三画形状のためである。このため、リムの材質としてメタルが選択されることで、リムのタイプは間接的に選択されることになり、リムに対応するパラメータも間接的に設定されることになる。
【0067】
また、メタルの場合、標準的に、リム溝の特徴量のパラメータにおける溝幅は1.0mmであり、溝深さは0.4mmである。また、溝の開き角度(溝の前斜面と後斜面が成す角度)は110度である。このため、図9(b)又は図10(a)に示される溝幅Gwの入力欄671aには、初期値として自動的に標準的な値が入れられて表示されてもよい。また、図10(a)に示された溝深さGdの入力欄671bにおいては、標準的な溝深さの値が自動的に入れられて表示されてもよい。これにより、操作者は、リムの測定が不要であることが分かる。操作者は、眼鏡フレームのリムが標準的なものであれば、そのままで設定を完了させる。一方、操作者は、リムが標準的なものとは異なるようであれば、少なくとも溝幅を測定した値を入力すればよい。
【0068】
図9(a)の説明に戻り、画面610には、フレームカーブ(リムの左右方向の湾曲)の値を入力するための入力欄651が設けられている。フレームカーブは、リム溝の向きとしてフレームカーブに沿う向きが選択された場合に、フレームカーブに応じたヤゲン形成の演算に利用される。なお、フレームカーブは、玉型形状測定装置30の測定データがデータ取得ユニット60によって受信されることで取得されてもよい。この場合、入力欄651にはデータ取得ユニット60が取得した値が表示される。
【0069】
以上のように、画面610(設定画面670を含む)におけるヤゲン設定のための入力が完了したら、画面610を閉じるためのボタン(図示を略す)がタッチされると、ディスプレイ62の画面610が閉じられ、図7の加工条件を設定するための画面601に戻る。画面601では、その他の加工条件として、レンズ周縁加工モード(オートヤゲン加工、強制ヤゲン加工、平加工、穴加工、等)、鏡面加工の有無、面取り加工の有無、レンズのチャッキングモード(枠心モード、光心モード)を入力欄641c、641d、641e及び641fによって設定(例えば、所定の選択条件の中から選択)できる。
【0070】
<ヤゲン形状データの演算>
次に、以上のように画面610で設定されたデータに基づき、リムの溝形状に対応するヤゲン形状データ(前ヤゲンLVfの高さVfh、後ヤゲンLVrの高さVrh及びヤゲン頂点幅Vw)を演算する方法の例を説明する。
【0071】
図11はヤゲン形状データを求める方法を説明する図である。図11は、リムの材質がセルであり、リム溝の向きがフレームカーブに沿う向きの場合である。図11(a)は、リム溝が角形状の場合、図11(b)は、リム溝が三角形状の場合、図11(c)はリム溝が丸形状の場合をそれぞれ示している。各図において、リム溝の傾斜角βgは、フレームカーブから求められる角度(レンズLEを保持するレンズチャック軸102の軸方向であるX方向に対するリムの傾斜角度)である。なお、高カーブレンズのヤゲン形成においては、前裾野LCfは形成しないものとする。
【0072】
図11(a)において、リム溝が角形状の場合、後ヤゲンLVrの斜面にリム溝の後側端Rrcが当接するものとする。また、後ヤゲン頂点Vrtが、リム溝の底面Vgに当接する。また、レンズ前面LEfと前ヤゲンLVfとの交点Lvcがリム溝の前側面Vsfに当接するものとする。例えば、交点Lvcは、リム溝の前側端から一定距離だけ深さ方向に位置するものとする。これら3点の内の少なくとの2点がリム溝に当接することでレンズLEがリム溝に安定して保持される。なお、後裾野LCrは、後面側リム幅Rrtが考慮され、後面側リムが当接しないように後ヤゲンLVrの高さVrhが求められる。後面側リム幅Rrtの値は、入力欄671cで入力されていない場合は、標準的な値に基づいて定められればよい。
【0073】
上記のような条件で、後ヤゲンLVrの高さVrhは、溝幅Gwと、溝深さGdと、リム溝の傾斜角βgと、後ヤゲン加工具163の加工斜面163Vrの傾斜角度αrと、に基づいて数学的に求められる。この演算は制御ユニット70によって行われる。なお、傾斜角βgは、玉型の動径角θnによって異なる。このため、高さVrhは、動径角θnごとに演算されてもよいが、各動径角θnの最大値として定められてもよい。同様に、前ヤゲンLVfの高さVfhは、溝幅Gwと、溝深さGdと、リム溝の傾斜角βgと、前ヤゲン加工具162の加工斜面162Vfの傾斜角度αfと、に基づいて数学的に求められる。そして、ヤゲン頂点幅Vwは、リム溝の底面Vgにおける後ヤゲン頂点Vrtの位置と、リム溝の前側面Vsfにおける交点Lvcと、が分かれば、溝幅Gwと、溝深さGdと、傾斜角βgと、後傾斜角度αrと、の関係から数学的に求められる。
【0074】
図11(b)において、リム溝が三角形状の場合、後ヤゲンLVrの斜面にリム溝の後側端Rrcが当接し、前ヤゲン頂点Vftがリム溝の前斜面Vafに当接するものとする。レンズ前面LEfと前ヤゲンLVfとの交点Lvcは、リム溝の深さ方向に平行な方向でリム溝の前側端から一定距離だけ離れるものとする。後裾野LCrの条件はリム溝が角形状の場合と同様とする。なお、三角形状のリム溝の前斜面Vafと後斜面Varとが成す開き角度は、標準的な角度(例えば、110度)であるとする。なお、三角形状の溝深さは、溝幅Gwが定められることで求められるため、設定画面670で設定されていなくともよい。
【0075】
このような条件で、前ヤゲンLVfの高さVfh、後ヤゲンLVrの高さVrh、及びヤゲン頂点幅Vwは、溝幅Gwと、溝深さGdと、傾斜角βgと、傾斜角度αfと、傾斜角度αrと、に基づいて数学的に求められる。
【0076】
図11(c)において、リム溝が丸形状の場合、リム溝の円弧Gcsに前ヤゲン頂点Vftと、交点Lvcと、が当接するものとする。その他の条件は、三角形状のリム溝の場合と同様とする。この条件により、丸形状の場合における前ヤゲンLVfの高さVfh、後ヤゲンLVrの高さVrh、及びヤゲン頂点幅Vwは、溝幅Gwと、溝深さGdと、傾斜角βgと、傾斜角度αfと、傾斜角度αrと、に基づいて数学的に求められる。
【0077】
なお、ヤゲン形状データ(前ヤゲンの高さVfh、後ヤゲンの高さVrh及びヤゲン頂点幅Vw)の演算方法は、上記に限られず、種々の方法が使用され得る。例えば、前ヤゲンLVfの高さVfhは一定値とし、溝幅Gw及び溝深さGdに応じて後ヤゲンLVrの高さVrh及びヤゲン頂点幅Vwが求められるようにしてもよい。また、例えば、リム溝が三角形状及び丸形状の場合、溝幅Gw及び前ヤゲンの高さVfhは一定値としてもよい。
【0078】
図12は、リム溝の向きが所定の平面に平行な向きの場合に、ヤゲン形状データを求める方法を説明する図である。すなわち、所定の平面に平行な向きは、レンズLEの加工時においては、レンズLEがレンズチャック軸102に保持された場合に、レンズチャック軸102に垂直な平面に平行な向きとなる。
【0079】
図12(a)は、リム溝が角形状の場合である。この場合、前ヤゲン頂点Vftと後ヤゲン頂点Vrtが、リム溝の底面Vgに当接するものとする。前ヤゲンLVfの斜面にリム溝の前側端Rfcが当接し、後ヤゲンLVrの斜面にリム溝の後側端Rrcが当接するものとする。交点Lvc及び後裾野LCrは、それぞれリム側から一定距離だけ離れるものとする。このような条件で、前ヤゲンの高さVfh、後ヤゲンの高さVrh、及びヤゲン頂点幅Vwは、溝幅Gwと、溝深さGdと、傾斜角度αfと、傾斜角度αrと、に基づいて数学的に求められる。
【0080】
図12(b)は、リム溝が三角形状の場合である。この場合、前ヤゲン頂点Vftと後ヤゲン頂点Vrtが、リム溝の前斜面Vafと後斜面Varにそれぞれ当接するものとする。交点Lvc及び後裾野LCrは、それぞれリム側から一定距離だけ離れるものとする。このような条件で、前ヤゲンの高さVfh、後ヤゲンの高さVrh、及びヤゲン頂点幅Vwは、傾斜角度αfと、傾斜角度αrと、に基づいて数学的に求められる。なお、リム溝が三角形状の場合、ヤゲン頂点幅Vwは形成されなくてもよいし、面取り程度の幅であってもよい。、
図12(c)は、リム溝が丸形状の場合である。この場合、前ヤゲン頂点Vft及び後ヤゲン頂点Vrtの少なくとも一方が、リム溝の円弧Gcsに当接するものとする。また、前ヤゲンLVfの斜面にリム溝の前側端Rfcが当接し、後ヤゲンLVrの斜面にリム溝の後側端Rrcが当接するものとする。また、交点Lvc及び後裾野LCrは、それぞれリム側から一定距離だけ離れるものとする。このような条件で、前ヤゲンの高さVfh、後ヤゲンの高さVrh、及びヤゲン頂点幅Vwは、溝幅Gwと、傾斜角度αfと、傾斜角度αrと、に基づいて数学的に求められる。
【0081】
リム溝の向きが所定の平面に平行な向きの場合においても、ヤゲン形状データ(前ヤゲンの高さVfh、後ヤゲンの高さVrh及びヤゲン頂点幅Vw)の演算方法は、上記に限られず、種々の方法が使用され得る。例えば、リム溝が三角形状及び丸形状の場合、
ヤゲン頂点幅Vwは、面取りのための一定幅であってもよい。例えば、前ヤゲンの高さVfhは、何れの溝形状の場合も、一定距離としてもよい。
【0082】
以上のように、ヤゲン形成データ設定装置55によって得られたヤゲン形状データ及び加工条件の設定データは、眼鏡レンズ加工装置1の制御ユニット50に出力される(実施例では、制御ユニット50は、ヤゲン形成データ設定装置55と眼鏡レンズ加工装置1の制御ユニットを兼ねている)。
【0083】
眼鏡レンズ加工装置1によるレンズLEの加工動作を簡単に説明する。操作者はレンズLEをレンズチャック軸102に保持させ、加工を開始させる。加工開始信号が入力されると、レンズLEの周縁加工に先立ち、レンズ形状の測定が行われる。制御ユニット50は、取得された玉型データに基づいてレンズ形状測定ユニット200及び移動ユニット300の駆動を制御し、レンズチャック軸102に保持されたレンズLEの前面及び後面の形状を測定する。この測定により、玉型に対応したレンズLEの前面形状及び後面形状が得られる。
【0084】
次に、制御ユニット50は、レンズLEの前面形状及び後面形状の取得結果に基づき、レンズLEの周縁に形成するヤゲンの軌跡を所定の演算によって求める。例えば、高カーブレンズのオートヤゲンが設定されている場合、制御ユニット50は、ヤゲン軌跡(例えば、前ヤゲン頂点と後ヤゲン頂点の中間の軌跡)のヤゲンカーブをレンズLEの前面カーブと同じにする。あるいは、ヤゲンカーブはフレームカーブに近似されてもよい。ヤゲン軌跡が求められると、制御ユニット50は、ヤゲン形成データ設定装置55で設定されたヤゲン形成データに基づき(さらに言えば、ヤゲン形成データを基に演算されたヤゲン形状データに基づき)、レンズLEにヤゲンを形成するための加工制御データを求める(取得する)。すなわち、実施例では、制御ユニット50は、ヤゲン形成データ設定装置55によって取得された前ヤゲンの高さVfhと、後ヤゲンの高さVrhと、ヤゲン頂点幅Vwと、に基づき、前ヤゲン加工具162によってレンズLEの前ヤゲンLVfを形成するための加工制御データと、後ヤゲン加工具163によってレンズLEの後ヤゲンLVrを形成するための加工制御データと、仕上げ加工具164の平仕上げ加工面164aによってヤゲン頂点幅を加工するための加工制御データと、をそれぞれ求める。
【0085】
加工制御データが求められると、レンズLEの周縁にヤゲンを形成する加工動作が実行される。制御ユニット50は、レンズLEを回転させながら玉型に基づいて移動ユニット300を制御し、レンズLEの周縁を粗加工具166によって粗加工する。続いて、制御ユニット50は、取得したヤゲンの加工制御データに基づき、移動ユニット300を制御することでレンズLEの周縁にヤゲンを形成する。すなわち、制御ユニット50は、移動ユニット300の駆動を制御することで、前ヤゲン加工具162によってレンズLEの前ヤゲンLVfを形成し、後ヤゲン加工具163によってレンズLEの後ヤゲンLVrを形成し、仕上げ加工具164の平仕上げ加工面164aによってヤゲン頂点幅を確保するようにレンズLEの周縁を加工する。
【0086】
強制ヤゲン加工モードが選択されている場合について説明する。この場合、制御ユニット50は、レンズ形状測定ユニット200によるレンズLEの前面形状及び後面形状の取得後、装置の動作を停止し、ディスプレイ62に図13のようなヤゲンのシミュレーションの画面680を表示させる。図13は、強制ヤゲン加工モードにおけるヤゲンのシミュレーション画面の例である。ヤゲン形成に関し、レンズ加工に慣れ、専門知識のある操作者の場合は、以下のヤゲンのシミュレーションの画面680によって、専門的なヤゲン形成のための設定が行える。この機能は、ヤゲン形成データ設定装置55が備えていてもよい。
【0087】
図13において、操作者が玉型図形TGRにおけるカーソル681を玉型上で移動させると、カーソル681で指定された動径角におけるヤゲン断面形状の図形682が画面上の左上に表示される。これにより、操作者は任意の動径角におけるヤゲン形状を確認できる。ヤゲン形成データの各値は、表示欄683によって変更できる。表示欄683には、前ヤゲン高さ、後ヤゲン高さ、ヤゲン頂点幅、ヤゲン位置及びチルト量の各値の表示がなされている。操作者が各値の欄をタッチすることでポップアップ表示されるテンキーを操作することにより、各値を所望の値に変更できる。これにより、ヤゲン形成データ設定装置55で事前に設定されたヤゲン情報を適宜変更できる。
【0088】
ヤゲン情報が変更された後、再び加工開始信号が入力されると、制御ユニット50は、前述と同様にレンズLEの周縁に形成するヤゲンの軌跡を演算した後に加工制御データを求め、加工制御データに基づいて移動ユニット300を制御することで各加工具によってレンズLEの周縁にヤゲンを形成する。
【0089】
<変容例>
例えば、上記の実施例では、リム溝の溝幅及び溝深さは、リムの動径角(玉型と同じ動径角)によらずに同じものとしているが、リムによっては動径角の場所によって異なる場合がある。この場合、リム溝の溝幅及び溝深さを、リムの動径角の複数個所で設定してもよい。図14は、リム溝の溝幅及び溝深さを複数個所で設定する場合の例である。図14の設定画面690は、例えば、画面610上に表示されたボタン(図示を略す)がタッチされることで、ポップアップ表示されてもよいし、別の画面に切換えられてもよい。例えば、設定画面690には、玉型に対応するリムの図形FRIが表示されている。例えば、リム溝の溝幅及び溝深さは、リムの左右上下の中心点FTCに対する上端点FPaと、下端点FPbと、左端点FPcと、右端点FPdと、の4点を指定する(図14における上下左右とは、眼鏡フレームの装用時の上下左右とする)。点FPa、FPb、FPc、FPdにおける溝幅及び溝深さは、それぞれの点に対応するように設けられた入力欄691a、691b、691c、691dによってそれぞれ設定できる。そして、点FPa、FPb、FPc、FPdのそれぞれの間の溝幅及び溝深さは、例えば、各点で設定された溝幅及び溝深さを補間するように動径角毎に求めればよい。
【0090】
なお、この設定画面690においても、リムのタイプ(リム溝の断面形状)に対応してヤゲン形成に必要となるパラメータの例である溝深さは、その設定が制限される、又は異なる色に表示される等、設定の必要性が識別可能に表示される。
【0091】
以上、本開示の典型的な実施例を説明したが、本開示はここに示した実施例に限られず、本開示の技術思想を同一にする範囲において種々の変容が可能である。
【符号の説明】
【0092】
1 眼鏡レンズ加工装置
50 制御ユニット
55 ヤゲン形成データ設定装置
62 ディスプレイ
60 データ取得ユニット
102 レンズチャック軸
162 前ヤゲン加工具
163 後ヤゲン加工具
168 加工具
670 設定画面
690 設定画面
Gw 溝幅
Gd 溝深さ
図1
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