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特開2022-185752生体情報検出システム、プログラム、及び、生体情報検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185752
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】生体情報検出システム、プログラム、及び、生体情報検出方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/11 20060101AFI20221208BHJP
   A61B 5/0245 20060101ALI20221208BHJP
   A61B 5/113 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
A61B5/11 110
A61B5/0245 A
A61B5/113
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093563
(22)【出願日】2021-06-03
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム、「真の社会イノベーションを実現する革新的「健やか力」創造拠点」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【弁理士】
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(74)【代理人】
【識別番号】100206966
【弁理士】
【氏名又は名称】崎山 翔一
(72)【発明者】
【氏名】大槻 知明
(72)【発明者】
【氏名】山本 幸平
(72)【発明者】
【氏名】北川 月子
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
【Fターム(参考)】
4C017AA02
4C017AA14
4C017AB04
4C017AC40
4C017BC07
4C017BC11
4C017BC16
4C017BC20
4C017FF15
4C038VA04
4C038VB31
4C038VB33
4C038VC20
(57)【要約】
【課題】非接触で生体情報が検出されながら、生体情報の検出精度が確保され得る生体情報検出システムを提供する。
【解決手段】生体情報検出システム1は、信号情報取得部と、フィルタ設定部と、生体情報取得部とを備えている。信号情報取得部は、複数の信号情報を取得する。複数の信号情報の各々は、生体Mからの互いに異なる反射波Rに対応する。複数の信号情報の各々は、時間領域において複数のピークを有している。フィルタ設定部は、複数の信号情報の複数のピークの時間軸方向における位置に基づいて周波数フィルタを設定する。生体情報取得部は、複数の信号情報の少なくとも1つに基づく情報に対して周波数フィルタを用いてフィルタリング処理を行うことによって、生体Mの生体情報を取得する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が、生体からの互いに異なる反射波に対応すると共に時間領域において複数のピークを有する複数の信号情報、を取得する信号情報取得部と、
前記複数の信号情報の前記複数のピークの時間方向における位置に基づいて周波数フィルタを設定するフィルタ設定部と、
前記複数の信号情報の少なくとも1つに基づく情報に対して、前記周波数フィルタを用いてフィルタリング処理を行うことによって、前記生体の生体情報を取得する生体情報取得部と、を備えている、生体情報検出システム。
【請求項2】
前記複数の信号情報の前記複数のピークの前記時間方向おける位置に基づいて、各々が前記複数のピークの少なくとも1つを含む複数のピークグループを設定し、各前記ピークグループの前記時間方向における位置を演算するピークグループ演算部をさらに備え、
前記フィルタ設定部は、前記ピークグループ演算部において演算された前記各ピークグループの前記時間方向における位置に基づいて、前記周波数フィルタを設定する、請求項1に記載の生体情報検出システム。
【請求項3】
前記各ピークグループの前記時間方向における位置に基づいて、前記複数のピークグループのうち少なくとも2つのピークグループを代表ピークグループとして選出するピークグループ選出部と、
前記時間方向における複数の前記代表ピークグループの間隔を示す代表ピークグループ間隔を演算するピーク間隔演算部と、をさらに備え、
前記フィルタ設定部は、前記ピーク間隔演算部によって演算された前記代表ピークグループ間隔に基づいて、前記周波数フィルタを設定する、請求項2に記載の生体情報検出システム。
【請求項4】
前記生体情報は、前記生体において周期的に繰り返される動作であり、
前記ピークグループ選出部は、前記複数のピークグループのうち、前記動作の周期に対して尤もらしい間隔で前記時間方向に位置する前記ピークグループの組み合わせを、前記複数の代表ピークグループとして選出する、請求項3に記載の生体情報検出システム。
【請求項5】
前記フィルタ設定部は、前記複数の信号情報の前記複数のピークグループの前記時間方向における位置に基づいて演算される中心周波数を有するように前記周波数フィルタを設定する、請求項2から4のいずれか一項に記載の生体情報検出システム。
【請求項6】
前記ピーク間隔演算部は、複数の前記代表ピークグループ間隔を演算し、
前記フィルタ設定部は、前記複数の代表ピークグループ間隔の平均の逆数を中心周波数とするように前記周波数フィルタを設定する、請求項3又は4に記載の生体情報検出システム。
【請求項7】
前記ピークグループ演算部は、前記複数の信号情報に含まれる前記複数のピークから、前記複数の信号情報のうち基準となる基準信号情報に含まれる前記複数のピークの各々から所定の時間範囲内にある少なくとも1つの前記ピークを特定し、特定された前記ピークに基づいて前記各ピークグループの前記時間方向における位置を演算する、請求項2から6のいずれか一項に記載の生体情報検出システム。
【請求項8】
前記ピークグループ演算部は、前記ピークグループ毎に、前記ピークグループに含まれる前記少なくとも1つのピークの前記時間方向における位置の平均を前記ピークグループの前記時間方向における位置として演算する、請求項2から7のいずれか一項に記載の生体情報検出システム。
【請求項9】
各前記信号情報は、前記反射波に対応する情報に短時間フーリエ変換を行った情報に対して、時間区分毎にスペクトル積分した情報である、請求項1から8のいずれか一項に記載の生体情報検出システム。
【請求項10】
前記生体情報取得部においてフィルタリング処理が行われる前記複数の信号情報の少なくとも1つに基づく情報は、前記複数の信号情報のうち少なくとも2つを組み合わせた情報である、請求項1から9のいずれか一項に記載の生体情報検出システム。
【請求項11】
前記生体情報取得部においてフィルタリング処理が行われる前記複数の信号情報の少なくとも1つに関する情報は、複数の前記反射波が反射した位置のうち前記生体情報に対応する皮膚変動が最も大きい位置において反射した前記反射波に対応する前記信号情報に基づいている、請求項1から10のいずれか一項に記載の生体情報検出システム。
【請求項12】
各々が、生体からの互いに異なる反射波に対応すると共に時間領域において複数のピークを有する複数の信号情報、を取得することと、
前記複数の信号情報において前記複数のピークの時間方向における位置に基づいて周波数フィルタを設定することと、
前記複数の信号情報の少なくとも1つに基づく情報に対して、前記周波数フィルタを用いてフィルタリング処理を行うことによって、前記生体の生体情報を取得することと、
をコンピュータに実行させる、プログラム。
【請求項13】
各々が、生体からの互いに異なる反射波に対応すると共に時間領域において複数のピークを有する複数の信号情報、を取得することと、
前記複数の信号情報において前記複数のピークの時間方向における位置に基づいて周波数フィルタを設定することと、
前記複数の信号情報の少なくとも1つに基づく情報に対して、前記周波数フィルタを用いてフィルタリング処理を行うことによって、前記生体の生体情報を取得することと、を有している、生体情報検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報検出システム、プログラム、及び、生体情報検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人、又は、動物のなどの生体に関する生体情報を非接触で検出する技術が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1には、生体の動きに関する信号情報を取得し、取得された信号情報に対して処理を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-127398号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生体に関する生体情報が接触式のセンサによって検出される場合、生体の皮膚の露出、及び、露出させた部分へのセンサの取り付けなどが要される。「生体」は、例えば、人、及び、動物を含んでいる。撮像装置によって撮像された画像を用いて生体情報が検出される場合、非接触で生体情報が検出され得る。しかし、暗所では検出精度が劣化すると共に、画像を撮像するためプライバシの保護の観点における問題もあった。
【0005】
上記問題を解決するため、生体へ電磁波を送信波として照射し、生体からの反射波に基づく信号情報を取得し、取得された信号情報を処理することによって生体情報を検出する技術が考えられている。例えば、ドップラーセンサを用いて生体からのドップラー信号を取得することによって、生体情報として生体の心拍、又は、呼吸などを検出することが考えられている。このような非接触式の生体情報の検出は、接触式の生体情報の検出に比べて、ノイズの影響を受けやすく、生体情報の検出精度が確保され難い。例えば、センサと生体との間における送信波及び反射波の伝搬によって、ノイズが生じる。このノイズ又は生体の体勢に起因して、信号情報からの生体情報の抽出精度が低下するおそれがある。
【0006】
本発明の一つの態様は、非接触で生体情報が検出されながら、生体情報の検出精度が確保され得る生体情報検出システムを提供することを目的とする。本発明の別の態様は、非接触で生体情報が検出されながら、生体情報の検出精度が確保され得るプログラムを提供することを目的とする。本発明のさらに別の態様は、非接触で生体情報が検出されながら、生体情報の検出精度が確保され得る生体情報検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一つの態様における生体情報検出システムは、信号情報取得部と、フィルタ設定部と、生体情報取得部とを備えている。信号情報取得部は、複数の信号情報を取得する。複数の信号情報の各々は、生体からの互いに異なる反射波に対応する。複数の信号情報の各々は、時間領域において複数のピークを有している。フィルタ設定部は、複数の信号情報の複数のピークの時間方向における位置に基づいて周波数フィルタを設定する。生体情報取得部は、複数の信号情報の少なくとも1つに基づく情報に対して周波数フィルタを用いてフィルタリング処理を行うことによって、生体の生体情報を取得する。
【0008】
上記一つの態様において、互いに異なる反射波に対応する複数の信号情報が用いられる。このため、反射波の伝搬などによって生じたノイズ又は生体の体勢に起因して捉えづらくなった生体情報の抽出精度が、ダイバーシチ効果によって改善され得る。さらに、複数の反射波に対応する複数の信号情報のピークに基づいて周波数フィルタが設定されるため、生体情報に対応する周波数帯域が周波数フィルタによって正確に抽出され得る。この結果、非接触で生体情報が検出されながら、生体情報の検出精度が確保され得る。
【0009】
上記一つの態様において、生体情報検出システムは、ピークグループ演算部をさらに備えてもよい。ピークグループ演算部は、複数の信号情報の複数のピークの時間方向おける位置に基づいて、複数のピークグループを設定してもよい。複数のピークグループの各々は、複数のピークの少なくとも1つを含んでいてもよい。ピークグループ演算部は、各ピークグループの時間方向における位置を演算してもよい。フィルタ設定部は、ピークグループ演算部において演算された各ピークグループの時間方向における位置に基づいて、周波数フィルタを設定してもよい。この場合、複数のピークの少なくとも1つを含むピークグループの時間方向における位置に基づいて、周波数フィルタが設定される。このため、周波数フィルタによって、生体情報に対応する周波数帯域がさらに正確に抽出され得る。
【0010】
上記一つの態様において、生体情報検出システムは、ピークグループ選出部と、ピーク間隔演算部とをさらに備えてもよい。ピークグループ選出部は、各ピークグループの時間方向における位置に基づいて、複数のピークグループのうち少なくとも2つのピークグループを代表ピークグループとして選出してもよい。ピーク間隔演算部は、時間方向における複数の代表ピークグループの間隔を示す代表ピークグループ間隔を演算してもよい。フィルタ設定部は、ピーク間隔演算部によって演算された代表ピークグループ間隔に基づいて、周波数フィルタを設定してもよい。この場合、周波数フィルタによって、生体情報に対応する周波数帯域がさらに正確に抽出され得る。
【0011】
上記一つの態様において、生体情報は、生体において周期的に繰り返される動作であってもよい。ピークグループ選出部は、複数のピークグループのうち、動作の周期に対して尤もらしい間隔で時間方向に位置するピークグループの組み合わせを、複数の代表ピークグループとして選出してもよい。この場合、生体の動作の周期により近い間隔で位置するピークグループの組み合わせが選出さるため、周波数フィルタによって、生体情報に対応する周波数帯域がさらに正確に抽出され得る。
【0012】
上記一つの態様において、フィルタ設定部は、複数の信号情報の複数のピークグループの時間方向における位置に基づいて演算される中心周波数を有するように周波数フィルタを設定してもよい。この場合、生体情報に対応する周波数帯域がさらに正確に抽出され得る。
【0013】
上記一つの態様において、ピーク間隔演算部は、複数の代表ピークグループ間隔を演算してもよい。フィルタ設定部は、複数の代表ピークグループ間隔の平均の逆数を中心周波数とするように周波数フィルタを設定してもよい。この場合、生体情報に対応する周波数帯域がさらに正確に抽出され得る。
【0014】
上記一つの態様において、ピークグループ演算部は、複数の信号情報に含まれる複数のピークから、複数の信号情報のうち基準となる基準信号情報に含まれる複数のピークの各々から所定の時間範囲内にある少なくとも1つのピークを特定してもよい。ピークグループ演算部は、特定されたピークに基づいて各ピークグループの時間方向における位置を演算してもよい。この場合、複数の信号情報のピークに関する情報が一つに纏められ、各ピークグループの時間方向における位置の間隔が、生体の動作の周期により近づくと考えられる。この結果、生体情報に対応する周波数帯域をさらに正確に抽出できる周波数フィルタが設定され得る。
【0015】
上記一つの態様において、ピークグループ演算部は、ピークグループ毎に、ピークグループに含まれる少なくとも1つのピークの時間方向における位置の平均をピークグループの時間方向における位置として演算してもよい。この場合、複数の信号情報のピークに関する情報が一つに纏められ、各ピークグループの時間方向における位置の間隔が、生体の動作の周期により近づくと考えられる。この結果、生体情報に対応する周波数帯域をさらに正確に抽出できる周波数フィルタが設定され得る。
【0016】
上記一つの態様において、各信号情報は、反射波に対応する情報に短時間フーリエ変換を行った情報に対して、時間区分毎にスペクトル積分した情報であってもよい。この場合、信号情報からノイズが除去され得る。
【0017】
上記一つの態様において、生体情報取得部においてフィルタリング処理が行われる複数の信号情報の少なくとも1つに基づく情報は、複数の信号情報のうち少なくとも2つを組み合わせた情報であってもよい。この場合、信号情報におけるノイズがさらに低減され得る。
【0018】
上記一つの態様において、生体情報取得部においてフィルタリング処理が行われる複数の信号情報の少なくとも1つに関する情報は、複数の反射波が反射した位置のうち生体情報に対応する皮膚変動が最も大きい位置において反射した反射波に対応する信号情報に基づいていてもよい。この場合、生体情報の検出精度がさらに向上し得る。例えば、心拍を検出する場合には、心臓に近い位置において反射した反射波に対応する信号情報によれば、より心拍の検出精度が向上され得る。例えば、呼吸を検出する場合には、肺に近い位置において反射した反射波に対応する信号情報によれば、より呼吸の検出精度が向上され得る。
【0019】
本発明の別の態様におけるプログラムは、複数の信号情報を取得することと、周波数フィルタを設定することと、生体の生体情報を取得することと、をコンピュータに実行させる。複数の信号情報の各々は、生体からの互いに異なる反射波に対応する。複数の信号情報の各々は、時間領域において複数のピークを有している。周波数フィルタは、複数の信号情報において複数のピークの時間方向における位置に基づいて設定される。生体の生体情報は、複数の信号情報の少なくとも1つに基づく情報に対して、周波数フィルタを用いてフィルタリング処理を行うことによって取得される。
【0020】
本発明のさらに別の態様における生体情報検出方法は、複数の信号情報を取得することと、周波数フィルタを設定することと、生体の生体情報を取得することと、を有している。複数の信号情報の各々は、生体からの互いに異なる反射波に対応する。複数の信号情報の各々は、時間領域において複数のピークを有している。周波数フィルタは、複数の信号情報において複数のピークの時間方向における位置に基づいて設定される。生体の生体情報は、複数の信号情報の少なくとも1つに基づく情報に対して、周波数フィルタを用いてフィルタリング処理を行うことによって取得される。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一つの態様は、非接触で生体情報が検出されながら、生体情報の検出精度が確保され得る生体情報検出システムを提供できる。本発明の別の態様は、非接触で生体情報が検出されながら、生体情報の検出精度が確保され得るプログラムを提供できる。本発明のさらに別の態様は、非接触で生体情報が検出されながら、生体情報の検出精度が確保され得る生体情報検出方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態における生体情報検出システムのブロック図である。
図2】生体情報検出システムの概略図である。
図3】生体情報検出システムの概略図である。
図4】フーリエ変換部から出力されるスペクトログラムの一例を示す図である。
図5】積分部から出力される情報の一例を示す図である。
図6】ピークグループ演算部における演算処理の一例を説明するための図である。
図7】ピークグループ選出部における演算処理の一例を説明するための図である。
図8】フィルタ設定部において設定された周波数フィルタによるフィルタリング処理の結果の一例を示す図である。
図9】生体情報検出システムの信号処理部のハードウェア構成の一例を示す図である。
図10】生体情報検出方法の一例を示すフローチャートである。
図11】互いに異なる信号情報が入力された場合において、生体情報取得部において取得された生体情報を示す図である。
図12】(a)は比較例の実験結果を示す図であり、(b)は本実施形態における生体情報検出システムの実験結果を示す図である。
図13】推定RRIと真値との誤差の累積確率分布CDFを示す図である。
図14】生体情報の検出精度がRMSEによって被験者ごとに示した図である。
図15】推定RRIと真値との誤差の累積確率分布CDFを示す図である。
図16】推定RRIと真値との誤差の累積確率分布CDFを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ本発明における生体情報検出システムの実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。まず、図1から図3を参照して、本発明の実施形態における生体情報検出システムの概略構成について説明する。図1は、本実施形態における生体情報検出システムのブロック図である。図2及び図3は、生体情報検出システムの概略図である。
【0024】
生体情報検出システム1は、生体に関する生体情報を非接触で検出する。「生体情報」は、生体において周期的に繰り返される動作の情報であり、例えば、心拍、及び、呼吸の情報を含んでいる。生体情報検出システム1は、電磁波又は音波などを生体に向けて照射し、生体からの複数の反射波に関する情報を取得する。電磁波は、可視光を含んでいてもよい。「反射波に関する情報」とは、反射波の振幅の時間変化を示す情報である。生体情報検出システム1は、取得された複数の反射波に関する情報に基づいて、複数の反射波によるダイバーシチ効果を利用して、生体情報を検出する。生体情報検出システム1は、複数の反射波に関する情報に基づいて生体情報の時間変化の周期を示す複数のピークを推定することによって、生体情報を検出する。「生体情報の時間変化の周期」とは、例えば、生体の動作の周期である。例えば、生体情報として、心拍の周期、又は、呼吸の周期などの生体の動作の周期が検出される。生体情報検出システム1は、信号制御部2と、信号処理部3とを含んでいる。
【0025】
図2に示されているように、信号制御部2は、ビームフォーミングを行う。信号制御部2は、電磁波又は音波などの送信波Tを生体に向けて照射し、生体からの反射波Rに関する情報を取得する。信号制御部2は、互いに異なる複数の反射波Rに関する情報を取得する。信号制御部2は、例えば、ドップラーレーダーである。この場合、信号制御部2は、ドップラー効果によって生じる周波数シフトを観測することによって、生体の生体情報を検出する。生体情報検出システム1は、ドップラー効果以外を利用するレーダーであってもよい。以下、一例として、信号制御部2がドップラーレーダーである場合を主として説明する。信号制御部2は、信号送信部11と信号受信部12とを含んでいる。本実施形態において、信号制御部2は、複数の信号受信部12を含んでいる。
【0026】
信号送信部11は、送信波Tを発振する。送信波Tは、例えば、無変調連続波(CW:Continuous Wave)である。生体情報検出システム1の信号制御部2は、例えば、着座した生体Mの正面に配置される。生体情報検出システム1と生体Mとの距離dは、例えば、60cm~70cmである。生体情報検出システム1と生体Mとの距離dは、例えば、3m以上であってもよい。
【0027】
図3に示されているように、信号制御部2の信号送信部11は、例えば、送信波T0,T1,T2,T3,T4を生体Mに向けて送信する。送信波T0,T1,T2,T3,T4は、例えば、信号送信部11から送信される1つの信号波である。ここでは、1つの信号波のうち互いに異なる角度に向かう成分を、便宜的に送信波T0,T1,T2,T3,T4として説明する。本実施形態の変形例として、信号送信部11は、送信波T0,T1,T2,T3,T4を、互いに異なる場所又は互いに異なる時間においてそれぞれ独立して送信してもよい。
【0028】
送信波T0,T1,T2,T3,T4は、例えば、互いに異なる角度で生体情報検出システム1から送信される。送信波T0は、例えば、送信波T0から送信波T4が向けられた位置のうち、検出対象の生体情報に対応する皮膚変動が最も大きい位置に向けて送信される。送信波T0は、例えば、送信波T0から送信波T4のうち生体Mの心臓又は肺に最も近い位置に向けて送信される。
【0029】
送信波T1は、例えば、送信波T0から角度θ1だけ傾斜して送信される。送信波T2は、例えば、送信波T0から角度θ2だけ傾斜して送信される。送信波T3は、例えば、送信波T0から角度θ3だけ傾斜して送信される。送信波T4は、例えば、送信波T0から角度θ4だけ傾斜して送信される。例えば、角度θ1,θ2,θ3,θ4は、それぞれ、+15°、+30°、-15°、-30°である。例えば、角度が正の場合は、送信波T0から上方向に傾斜しており、角度が負の場合は、送信波T0から下方向に傾斜している。上方向及び下方向は、いずれも鉛直方向と平行な方向である。
【0030】
図2に示されているように、信号受信部12は、生体Mからの複数の反射波Rを受信する。反射波Rは、生体Mの生体情報に応じて変調されている。信号受信部12は、例えば、上述した送信波T0,T1,T2,T3,T4にそれぞれ対応する複数の反射波Rを受信する。複数の反射波Rは、例えば、互いに異なる経路によって生体Mから信号受信部12に到達する。各反射波Rは、例えば、互いに異なる信号受信部12によって受信される。例えば、信号送信部11が互いに異なる周波数を有する複数の送信波Tを発振する場合、信号送信部11が互いに異なる時間に複数の送信波Tを発振する場合、及び、信号送信部11が互いに異なる生体Mの部位に複数の送信波Tを発振する場合などには、複数の反射波Rは、1つの信号受信部12によって受信されてもよい。例えば、反射波Rは、生体Mの心拍又は呼吸に起因する胸壁の変動x(t)に応じて変調されている。以下、一例として、ドップラーレーダーによって生体Mの心拍を検出する場合を主として説明する。
【0031】
信号送信部11は、ソース21と、パワーアンプ22と、送信アンテナ23とを含んでいる。ソース21は、送信アンテナ23から送信される送信波Tの信号を生成する。ソース21は、送信波Tの信号を生成する発信源である。パワーアンプ22は、ソース21において生成された信号を増幅する。送信アンテナ23は、パワーアンプ22からの信号を送信波Tに変換し、生体Mに向けて送信する。
【0032】
信号受信部12は、受信アンテナ31と、調整器32と、ミキサー33と、バンドパスフィルタ34と、電圧利得制御アンプ35と、ADコンバータ36とを含んでいる。受信アンテナ31は、変調された反射波Rを信号に変換する。調整器32は、反射波Rから変換された信号からのノイズ除去等の処理を行う。ミキサー33は、ソース21が生成した信号と、調整器32から出力された信号をミキシングする。この結果、ドップラー信号が生成される。バンドパスフィルタ34は、ミキサー33において生成されたドップラー信号からノイズを除去する。電圧利得制御アンプ35は、バンドパスフィルタ34から出力された信号を増幅する。ADコンバータ36は、電圧利得制御アンプ35から出力された信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する。この結果、信号受信部12からドップラー信号の情報を含むデジタル信号が出力される。信号受信部12は、デジタル信号に変換したドップラー信号を信号処理部3に出力する。
【0033】
信号処理部3は、信号受信部12から取得された信号に基づいて、生体情報を示す情報を取得する。信号処理部3は、例えば、信号受信部12において取得されたドップラー信号を処理し、生体Mの生体情報を示す情報を生成する。図1に示されているように、信号処理部3は、信号情報取得部41と、仮ピーク検出部42と、ピークグループ演算部43と、ピークグループ選出部44と、ピーク間隔演算部45と、フィルタ設定部46と、情報演算部47と、生体情報取得部48と、格納部49とを含んでいる。
【0034】
信号情報取得部41は、信号受信部12から出力された情報を取得する。例えば、信号情報取得部41は、信号受信部12から取得した情報に対して各種処理を行うことによって、検出対象の生体情報に対応する周波数成分に応じた信号を生成し、生成された信号を信号情報として取得する。信号情報取得部41は、例えば、信号受信部12から出力された情報に基づいて、複数の信号情報を取得し出力する。複数の信号情報の各々は、生体Mからの互いに異なる反射波Rに対応する。信号情報取得部41は、例えば、複数の信号受信部12の受信アンテナ31から取得された信号に基づいて、信号処理によって、互いに異なる部位に対応する複数の信号情報を抽出する。
【0035】
複数の信号情報の各々は、時間領域において複数のピークを有する情報である。本明細書において、「時間領域」とは、信号情報の強度の時間変化について、強度と時間とをそれぞれ互いに直交する軸方向に示した状態をいう。本実施形態の変形例として、信号情報取得部41は、信号受信部12から出力された情報をそのまま出力してもよい。本実施形態において、信号情報取得部41は、受信情報取得部51と、第一フィルタ部52と、フーリエ変換部53と、積分部54と、第二フィルタ部55とを含んでいる。
【0036】
受信情報取得部51は、信号受信部12から出力された情報を取得する。受信情報取得部51は、例えば、信号受信部12において受信した反射波Rに関するドップラー信号を取得する。取得されたドップラー信号は、送信波Tを生成する信号と、反射波Rから生成された信号との間における周波数シフトを表す。取得されたドップラー信号は、例えば、I/Q信号によって構成されている。I信号は、送信波Tを生成する信号の位相と同一の位相である同相(In-phase)成分を有している信号である。Q信号は、送信波Tを生成する信号の位相に対して直交する直交位相(Quadrature)成分を有している信号である。
【0037】
信号送信部11は、例えば、送信波T0が送信される方向を基準として、-60°~+60°の範囲に送信波Tを送信する。換言すれば、信号送信部11は、ビームフォーミングによって、例えば、太腿から頭部の範囲に送信波Tを送信する。信号送信部11は、例えば、15°刻みの9方向に送信波Tを送信してもよい。この場合、信号受信部12は、9方向の送信波Tに対応する9つの反射波Rを受信する。この場合、受信情報取得部51は、9方向の送信波Tに対応する9つのI/Q信号を取得する。
【0038】
第一フィルタ部52は、受信情報取得部51において取得された情報に対して、フィルタリング処理を行う。第一フィルタ部52は、例えば、受信情報取得部51において取得されたドップラー信号に対して、フィルタリング処理を行う。例えば、第一フィルタ部52は、ドップラー信号からノイズ成分を除去するバンドパスフィルタを含んでいる。第一フィルタ部52は、ドップラー信号に対して、バンドパスフィルタを用いてノイズ成分を除去する。このバンドパスフィルタの通過帯域は、検出する生体情報に応じて決定される。例えば、生体情報検出システム1が心拍を検出する場合には、上記バンドパスフィルタの通過帯域は、5.0Hz以上30Hz以下に設定される。
【0039】
フーリエ変換部53は、入力された情報に対して短時間フーリエ変換(STFT:Short-Time Fourier Transform)を行う。本明細書において、「短時間フーリエ変換」とは、入力された情報から複数の時間区分の情報を作成し、時間区分毎にフーリエ変換を行うことをいう。例えば、短時間フーリエ変換において、入力された情報に窓関数をずらしながら掛けることによって、複数の時間区分の情報が作成される。この結果、フーリエ変換部53は、短時間フーリエ変換によって、時間区分毎に、入力された情報を時間領域から周波数領域に変換する。各時間区分は、例えば、互いに同一の時間幅を有している。例えば、短時間フーリエ変換において、ウィンドウサイズは512msであり、ステップサイズは10msである。フーリエ変換部53は、受信情報取得部51及び第一フィルタ部52を介して、信号受信部12から入力された情報に対して短時間フーリエ変換を行う。
【0040】
フーリエ変換部53は、入力された情報に対して短時間フーリエ変換を行うことによって、時間区分毎に、各周波数の強度を示す情報を作成し、出力する。フーリエ変換部53は、入力された情報に対して短時間フーリエ変換を行うことによって、スペクトログラムを作成し、出力する。スペクトログラムは、時間区分毎に周波数スペクトルを示す。例えば、フーリエ変換部53において作成されるスペクトログラムは、横軸が時間を示し、縦軸が周波数を示し、各座標における画素の明暗又は色が座標に対応する時間及び周波数における強度を示すグラフによって表示される。図4は、フーリエ変換部53によって作成されたスペクトログラムの一例を示している。図4において、強度は、グレースケールによって示されている。フーリエ変換部53は、例えば、信号受信部12から入力された情報に対して、スペクトログラムを作成する。フーリエ変換部53は、第一フィルタ部52から出力されたドップラー信号に基づいて、スペクトログラムを作成する。
【0041】
積分部54は、入力された情報に対して、時間区分毎に予め設定された周波数範囲においてスペクトル積分を行い、出力する。積分部54は、例えば、入力された情報から複数の時間区分の情報を作成し、時間区分毎にスペクトル積分を行う。例えば、入力された情報に窓関数をずらしながら掛けることによって複数の時間区分の情報が作成される。積分部54は、例えば、入力された情報を複数の時間区分に分割し、分割された時間区分毎にスペクトル積分を行う。「スペクトル積分」とは、周波数スペクトルの周波数積分である。換言すれば、スペクトル積分とは、周波数領域における周波数方向の積分である。
【0042】
積分部54は、例えば、フーリエ変換部53から出力された情報に対して、時間区分毎に予め設定された周波数範囲においてスペクトル積分を行う。スペクトル積分を行う周波数範囲は、例えば、第一フィルタ部52におけるフィルタリング処理の通過帯域に対応している。スペクトル積分を行う周波数範囲は、例えば、5.0Hz以上30Hz以下である。積分部54は、例えば、フーリエ変換部53から出力された情報に対して、フーリエ変換部53において設定された時間区分毎にスペクトル積分を行う。
【0043】
本実施形態の変形例として、積分部54は、例えば、窓関数によって、スペクトル積分を行う各時間区分を、フーリエ変換部53において設定された時間区分とは異なる時間区分に設定してもよい。図5は、積分部54から出力された情報の一例を示している。図5において、横軸は時間を示しており、縦軸は各時間区分におけるスペクトル積分値を示している。積分器4は、時間区分毎のスペクトル積分を出力する。
【0044】
第二フィルタ部55は、積分部54から出力された情報に対して、フィルタリング処理を行う。例えば、第二フィルタ部55は、積分部54から出力された情報からノイズ成分を除去するバンドパスフィルタを含んでいる。このバンドパスフィルタのカットオフ周波数は、検出する生体情報に応じて決定される。平常時の人の心拍は、例えば、40bpm(beat per minute)~120bpm程度である。この場合、人の心拍の周波数は、0.8~2.0Hz程度である。このため、例えば、生体情報検出システム1が心拍を検出する場合には、上記バンドパスフィルタの通過帯域は、0.8Hz以上2.0Hz以下に設定される。
【0045】
例えば、信号情報取得部41は、第二フィルタ部55から出力された情報を、信号情報として、仮ピーク検出部42及び情報演算部47に出力する。信号情報取得部41は、複数の信号情報を、第二フィルタ部55から仮ピーク検出部42及び情報演算部47に出力する。第二フィルタ部55から出力された情報は、積分部54から出力された情報に対応する。したがって、信号情報取得部41から出力される各信号情報は、反射波Rに対応する情報に短時間フーリエ変換を行った情報に対して、時間区分毎にスペクトル積分を行った情報である。信号情報取得部41は、第二フィルタ部55を含まず、積分部54から出力される情報を、信号情報として、仮ピーク検出部42及び情報演算部47に出力してもよい。仮ピーク検出部42に出力される信号情報と、情報演算部47に出力される信号情報とは、異なっていてもよい。
【0046】
仮ピーク検出部42は、信号情報取得部41から入力された複数の信号情報B,B,B,Bの各々について、図6に示されている複数の仮ピークPE0,PE1,PE2,PE3を検出する。信号情報Bは、図3に示した送信波T0に対応する信号情報である。信号情報Bは、図3に示した送信波T1に対応する信号情報である。信号情報Bは、図3に示した送信波T2に対応する信号情報である。信号情報Bは、図3に示した送信波T3に対応する信号情報である。仮ピーク検出部42は、信号情報取得部41において取得された全ての信号情報を用いなくてもよい。
【0047】
仮ピーク検出部42において検出される複数の仮ピークPE0,PE1,PE2,PE3は、生体情報の時間変化の周期を示すピークを推定するのに用いられる仮のピークである。仮ピーク検出部42は、例えば、信号情報B,B,B,Bのそれぞれにおいて、時間方向における複数の仮ピークPE0,PE1,PE2,PE3の位置を取得する。「時間方向」とは、時間領域における時間軸方向を意味する。例えば、仮ピーク検出部42は、信号情報Bにおいて、時間方向における複数の仮ピークPE0の位置を取得し、信号情報Bにおいて、時間方向における複数の仮ピークPE1の位置を取得する。「時間方向におけるピークの位置」とは、ピークが発生した時間を意味する。以下、「時間方向における位置」を単に「位置」ともいう。
【0048】
ピークグループ演算部43は、仮ピーク検出部42において検出された各仮ピークPE0,PE1,PE2,PE3の位置に基づいて、複数のピークグループGRを設定する。各ピークグループGRは、複数の仮ピークPE0,PE1,PE2,PE3の少なくとも1つを含んでいる。ピークグループ演算部43は、例えば、複数の信号情報B,B,B,Bに含まれる複数の仮ピークPE0,PE1,PE2,PE3から、各ピークグループGRを構成する少なくとも1つの仮ピークPE0,PE1,PE2,PE3を特定する。
【0049】
ピークグループ演算部43は、例えば、複数の信号情報B,B,B,Bのうち基準となる基準信号情報を決定する。基準信号情報は、例えば、送信波T0に対応する信号情報Bである。ピークグループ演算部43は、例えば、基準信号情報に含まれる複数の仮ピークPE0の各々から所定の時間範囲W内にある少なくとも1つの仮ピークPE0,PE1,PE2,PE3を、各ピークグループGRを構成するピークとして特定する。この時間範囲Wは、例えば、仮ピークPE0から±0.05秒である。
【0050】
ピークグループ演算部43は、複数の信号情報B,B,B,Bにおける複数の仮ピークPE0,PE1,PE2,PE3の位置に基づいて、各ピークグループGRの時間方向における位置P1,P2,P3,P4,P5,P6,P7,P8を演算する。ピークグループ演算部43は、例えば、各ピークグループGRに含まれる仮ピークPE0,PE1,PE2,PE3に基づいて、各ピークグループGRの位置P1~P8を演算する。ピークグループ演算部43は、ピークグループGR毎に、ピークグループGRに含まれる少なくとも1つの仮ピークPE0,PE1,PE2,PE3の時間方向における位置の平均をピークグループGRの位置P1~P8として演算する。本明細書において、「平均」は、相加平均に限定されず、例えば、加重平均なども含んでいる。
【0051】
ピークグループ選出部44は、各ピークグループGRの位置に基づいて、複数のピークグループGRから複数の代表ピークグループを選出する。「代表ピークグループ」は、ピークグループ選出部44によって選出される複数のピークグループGRである。代表ピークグループは、ピークグループ演算部43において設定された複数のピークグループGRの一部であってもよいし、全てであってもよい。「複数の代表ピークグループの選出」は、代表ピークグループ自体の選出と、代表ピークグループの時間方向における位置の選出との少なくとも一方を含んでいる。代表ピークグループは、生体Mの動作の周期に対して尤もらしい間隔で時間方向に位置するピークグループGRである。ピークグループ選出部44は、複数のピークグループGRのうち、生体Mの動作の周期に対して尤もらしい間隔で時間方向に位置するピークグループGRの組み合わせを、複数の代表ピークグループとして選出する。生体Mの動作は、例えば、心拍である。
【0052】
ピークグループ選出部44は、例えば、ビタビアルゴリズム(Viterbi Algorithm)を用いて、尤もらしい間隔で時間方向に位置するピークグループGRの組み合わせを特定し、特定された組み合わせに含まれるピークグループGRを複数の代表ピークグループとして選出する。ビタビアルゴリズムは、複数の系列から最も確からしい系列を選択する最尤推定法の1つである。「最も確からしい」と「尤もらしい」とは、同一の意味である。
【0053】
ピークグループ選出部44は、ビタビアルゴリズムにおいて、隣接RRI(R-R interval)に基づいてブランチメトリックを演算する。「RRI」は、ノードの間隔である。本実施形態において、ノードは、図7に示されているように、各ピークグループGRの位置P1,P2,P3,P4,P5,P6,P7,P8を含んでいる。図7において、ピークグループGRの位置として、位置P1~P8に加えて、位置P17~P19が示されている。「メトリック」は、系列内の状態の確からしさを示す指標である。「ブランチメトリック」とは、各状態間の確からしさを示す指標である。例えば、ブランチメトリックは、隣接RRIに基づいて演算される。ブランチメトリックは、例えば、隣接RRIの差の二乗である。本実施形態において、隣接RRIの差は、平均ゼロの正規分布に従うことが確認されている。
【0054】
ピークグループ選出部44は、ビタビアルゴリズムによって、ピークグループGRの位置P1~P19において、パスメトリックが最小又は最大となるピークグループGRの組み合わせを特定する。「パスメトリック」とは、系列におけるブランチメトリックの累積である。パスメトリックが最小又は最大である系列が、最も確からしい系列である。ピークグループ選出部44は、最も確からしい系列に含まれる各ノードを、代表ピークグループ、又は、代表ピークグループの位置として特定する。本実施形態において、ノード間を連結する線のうち太線によって接続されるノードの系列が、最も確からしい系列として特定された系列である。換言すれば、図7に示されている例において、位置P1,P2,P4・・・P19に位置するピークグループGRが代表ピークグループとして選出される。
【0055】
ピーク間隔演算部45は、時間方向における複数の代表ピークグループの間隔を示す代表ピークグループ間隔を演算する。図7に示されている例において、位置P1と位置P2との差、位置P2と位置P4との差が、各代表ピークグループの間隔である。ピーク間隔演算部45は、複数の代表ピークグループ間隔の平均を代表ピークグループ間隔として出力する。
【0056】
フィルタ設定部46は、信号情報取得部41において取得された複数の信号情報の複数の仮ピークの時間方向における位置に基づいて、周波数フィルタを設定する。周波数フィルタは、信号情報からフィルタリング処理によって所望の周波数成分を除去する。周波数フィルタは、例えば、バンドパスフィルタである。「周波数フィルタの設定」は、可変フィルタの帯域設定を含んでいる。以下、フィルタ設定部46によって設定される周波数フィルタを単に「周波数フィルタ」という。
【0057】
フィルタ設定部46は、ピークグループ演算部43において演算された各ピークグループGRの時間方向における位置に基づいて、周波数フィルタを設定する。フィルタ設定部46は、例えば、ピーク間隔演算部45から出力された代表ピークグループ間隔に基づいて、周波数フィルタを設定する。フィルタ設定部46は、各ピークグループGRの位置に基づいて演算される中心周波数を有するように周波数フィルタを設定する。例えば、フィルタ設定部46は、ピーク間隔演算部45から出力された代表ピークグループの間隔の逆数を中心周波数とするように周波数フィルタを設定する。
【0058】
情報演算部47は、信号情報取得部41から出力された信号情報に基づいて、例えば、複数の信号情報の組み合わせを演算し、出力する。例えば、情報演算部47は、信号情報取得部41において取得された全ての信号情報を用いなくてもよい。情報演算部47は、信号情報取得部41において取得された複数の信号情報のうち少なくとも2つを組み合わせる。信号情報の組み合わせは、例えば、複数の信号情報の平均である。この場合、情報演算部47は、信号情報取得部41において取得された複数の信号情報のうち少なくとも2つを平均する。本実施形態の変形例として、信号情報の組み合わせは、複数の信号情報の和などの複数の信号情報の合成であってもよい。
【0059】
情報演算部47には、例えば、複数の反射波Rが反射した位置のうち、検出対象の生体情報に対応する皮膚変動が最も大きい位置において反射した反射波Rに対応する信号情報が入力される。情報演算部47には、例えば、複数の反射波Rのうち生体Mの心臓又は肺に最も近い位置において反射した反射波Rに対応する信号情報が入力される。生体Mの心臓又は肺に最も近い位置において反射した反射波Rは、図3における送信波T0の反射波Rである。本実施形態において、情報演算部47には、信号情報取得部41において取得された複数の信号情報のうち、一部の信号情報が入力される。換言すれば、情報演算部47には、複数の反射波Rのうちの一部の反射波Rに対応する信号情報が入力される。例えば、情報演算部47は、複数の反射波Rに対応する複数の信号情報を取得し、これらの信号情報を平均する。情報演算部47に入力される情報は、図3に示されている、送信波T0と、送信波T3と、送信波T4とのそれぞれに対応する信号情報を含んでいる。本実施形態の変形例として、情報演算部47に1つの信号情報が入力されてもよい。この場合、情報演算部47は、入力された信号情報をそのまま出力する。
【0060】
生体情報取得部48は、複数の信号情報の少なくとも1つに基づく情報に対して、周波数フィルタを用いてフィルタリング処理を行うことによって、生体Mの生体情報を取得する。図8は、周波数フィルタによるフィルタリング処理の結果の一例を示す図である。生体情報取得部48は、例えば、周波数フィルタによるフィルタリング処理の結果から、生体情報の時間変化の周期を示すピークを取得する。生体情報取得部48は、例えば、周波数フィルタによるフィルタリング処理の結果から、取得されたピークの数及びピーク間隔を生体情報として取得する。例えば、生体情報取得部48は、周波数フィルタによるフィルタリング処理の結果から、取得されたピークの数及びピーク間隔を、心拍数、及び、心拍間隔として取得してもよい。生体情報取得部48は、フィルタリング処理の結果をそのまま生体情報として出力してもよい。生体情報取得部48は、取得された生体情報を格納部49に出力する。生体情報取得部48は、取得された生体情報を、生体情報検出システム1の外部に出力してもよい。
【0061】
生体情報取得部48においてフィルタリング処理が行われる、複数の信号情報の少なくとも1つに基づく情報は、例えば、情報演算部47から出力された情報である。本実施形態の変形例として、生体情報取得部48は、情報演算部47を介さずに、信号情報取得部41から直接的に信号情報を取得してもよい。生体情報取得部48においてフィルタリング処理が行われる、複数の信号情報の少なくとも1つに基づく情報は、例えば、複数の反射波Rが反射した位置のうち、検出対象の生体情報に対応する皮膚変動が最も大きい位置において反射した反射波Rに対応する信号情報に基づいている。生体情報取得部48においてフィルタリング処理が行われる、複数の信号情報の少なくとも1つに基づく情報は、例えば、複数の反射波Rのうち生体Mの心臓又は肺に最も近い位置において反射した反射波Rに対応する信号情報に基づいている。例えば、情報演算部47は、図3における複数の送信波T0,T3,T4に対応する信号情報を取得し、これらの信号情報を平均する。
【0062】
格納部49は、各機能部に用いられる情報を予め格納している。格納部49は、各機能部からの出力を格納する。格納部49は、例えば、信号情報取得部41において取得された情報を格納する。格納部49は、例えば、フーリエ変換部53、積分部54、ピークグループ演算部43、ピークグループ選出部44、ピーク間隔演算部45、及び、情報演算部47などの演算結果を格納する。格納部49は、例えば、周波数フィルタの帯域情報を格納する。格納部49は、生体情報取得部48において取得された生体情報を格納する。
【0063】
次に、図9を参照して、生体情報検出システム1の信号処理部3のハードウェア構成について説明する。図9は、生体情報検出システム1の信号処理部3のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0064】
信号処理部3は、プロセッサ101と、主記憶装置102と、補助記憶装置103と、通信装置104と、入力装置105と、出力装置106と、表示装置107とを備えている。信号処理部3は、これらのハードウェアと、プログラム等のソフトウェアとにより構成された1又は複数のコンピュータを含んでいる。信号情報取得部41、仮ピーク検出部42、ピークグループ演算部43、ピークグループ選出部44、ピーク間隔演算部45、フィルタ設定部46、情報演算部47、生体情報取得部48、及び、格納部49のそれぞれは、1つのコンピュータによって構成されていてもよいし、複数のコンピュータによって構成されていてもよい。生体情報検出システム1は、ハードウェアと協働して実現されている。
【0065】
信号処理部3が、複数のコンピュータによって構成される場合には、これらのコンピュータはローカルで接続されてもよいし、インターネット又はイントラネットなどの通信ネットワークを介して接続されてもよい。この接続によって、論理的に1つの生体情報検出システム1が構築される。
【0066】
プロセッサ101は、オペレーティングシステム及びアプリケーション・プログラムなどを実行する。主記憶装置102は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)により構成される。例えば、信号処理部3の各種機能部の少なくとも一部は、プロセッサ101及び主記憶装置102によって実現され得る。
【0067】
補助記憶装置103は、ハードディスク及びフラッシュメモリなどにより構成される記憶媒体である。補助記憶装置103は、一般的に主記憶装置102よりも大量のデータを記憶する。例えば、格納部49の少なくとも一部は、補助記憶装置103によって実現され得る。
【0068】
通信装置104は、ネットワークカード又は無線通信モジュールにより構成される。例えば、信号情報取得部41の少なくとも一部は、通信装置104によって実現され得る。入力装置105は、キーボード、マウス、及び、タッチパネルなどにより構成される。例えば、信号情報取得部41の少なくとも一部は、入力装置105によって実現され得る。出力装置106は、プリンタ、及び、ディスプレイなどにより構成される。例えば、生体情報取得部48の少なくとも一部は、出力装置106によって実現され得る。
【0069】
補助記憶装置103は、予め、プログラム及び処理に必要なデータを格納している。このプログラムは、生体情報検出システム1の各機能要素をコンピュータに実行させる。このプログラムによって、例えば、後述する生体情報検出方法における各処理がコンピュータにおいて実行される。このプログラムは、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどの有形の記録媒体に記録された上で提供されてもよい。このプログラムは、データ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。
【0070】
次に、図10を参照して、生体情報検出方法について説明する。図10は、生体情報検出の一例を示すフローチャートである。
【0071】
まず、信号制御部2が、ビームフォーミングを行う(処理S1)。例えば、処理S1において、信号送信部11が送信波Tを生体に向けて送信し、信号受信部12が生体からの反射波Rを受信する。信号受信部12が受信した情報は、受信情報取得部51によって取得される。
【0072】
次に、第一フィルタ部52が、受信情報取得部51において取得された情報に対して、フィルタリング処理を行う(処理S2)。生体情報検出システム1が心拍を検出する場合には、処理S2におけるフィルタリング処理によって、受信情報取得部51において取得された情報から5.0Hz以上30Hz以下の周波数帯域が抽出される。
【0073】
次に、フーリエ変換部53が、第一フィルタ部52から出力された情報に対して短時間フーリエ変換を行う(処理S3)。フーリエ変換部53は、処理S3において、第一フィルタ部52から出力された情報に対して短時間フーリエ変換を行うことによって、時間区分毎に、各周波数の強度を示す情報を作成し、出力する。フーリエ変換部53は、例えば、第一フィルタ部52から出力された情報に対して短時間フーリエ変換を行うことによって、スペクトログラムを作成し、出力する。
【0074】
次に、積分部54が、フーリエ変換部53から出力された情報に対して、時間区分毎に予め設定された周波数範囲においてスペクトル積分を行う(処理S4)。積分部54は、例えば、処理S4において、フーリエ変換部53から出力された情報に対して、時間区分毎に第一フィルタ部52におけるフィルタリング処理の通過帯域と同一の周波数範囲においてスペクトル積分を行う。
【0075】
次に、第二フィルタ部55が、積分部54から出力された情報に対して、フィルタリング処理を行う(処理S5)。生体情報検出システム1が心拍を検出する場合には、処理S5におけるフィルタリング処理によって、積分部54から出力された情報から0.8Hz以上2.0Hz以下の周波数帯域が抽出される。処理S5が終了すると、処理S6及び処理S12が実行される。処理S6から処理S11と処理S12は、並行して実行されてもよい。処理S6から処理S11と、処理S12とは、いずれか一方が先に実行されてもよい。
【0076】
次に、仮ピーク検出部42が、第二フィルタ部55から出力された複数の信号情報の各々について、複数の仮ピークを検出する(処理S6)。仮ピーク検出部42は、処理S6において、例えば、第二フィルタ部55から出力された複数の信号情報B,B,B,Bの各々について、複数の仮ピークPE0,PE1,PE2,PE3を検出する。
【0077】
処理S6が終了すると、ピークグループ演算部43が、仮ピーク検出部42において検出された各仮ピークの位置に基づいて、複数のピークグループGRを設定する(処理S7)。ピークグループ演算部43は、処理S7において、例えば、送信波T0に対応する信号情報Bを基準信号情報に決定する。ピークグループ演算部43は、処理S7において、例えば、基準信号情報に含まれる複数の仮ピークPE0の各々から所定の時間範囲W内にある少なくとも1つの仮ピークPE0,PE1,PE2,PE3を、各ピークグループGRを構成するピークとして特定する。この時間範囲Wは、例えば、仮ピークPE0から±0.05秒である。
【0078】
処理S7が終了すると、ピークグループ演算部43が、複数のピークグループGRの時間方向における位置を演算する(処理S8)。ピークグループ演算部43は、処理S8において、たとえば、ピークグループGR毎に、ピークグループGRに含まれる少なくとも1つの仮ピークPE0,PE1,PE2,PE3の時間方向における位置の平均をピークグループGRの位置P1~P8として演算する。
【0079】
処理S8が終了すると、ピークグループ選出部44が、各ピークグループGRの位置に基づいて、複数のピークグループGRから代表ピークグループを選出する(処理S9)。ピークグループ選出部44は、処理S9において、例えば、ビタビアルゴリズムによって、ピークグループGRの位置P1~P19において、パスメトリックが最小又は最大となるピークグループGRの組み合わせを特定する。図7に示されている例において、位置P1,P2,P4・・・P19に位置するピークグループGRが代表ピークグループとして選出される。
【0080】
処理S9が終了すると、ピーク間隔演算部45が、時間方向における複数の代表ピークグループの間隔を示す代表ピークグループ間隔を演算する(処理S10)。ピーク間隔演算部45は、処理S10において、例えば、複数の代表ピークグループ間隔の平均を代表ピークグループ間隔として出力する。
【0081】
処理S10が終了すると、フィルタ設定部46が、複数の仮ピークの時間方向における位置に基づいて、周波数フィルタを設定する。(処理S11)。フィルタ設定部46は、処理S11において、例えば、ピーク間隔演算部45から出力された代表ピークグループの間隔の逆数を中心周波数とするように周波数フィルタを設定する。
【0082】
処理S5が終了すると、情報演算部47が信号情報の平均を演算する(処理S12)。情報演算部47は、処理S12において、処理S5において処理された複数の信号情報B,B,B,Bを取得し、これらの信号情報を平均する。
【0083】
処理S11及び処理S12が終了すると、生体情報取得部48が生体情報を取得する(処理S13)。生体情報取得部48は、処理S13において、処理S12において情報演算部47から出力された情報に対して、処理S11において設定された周波数フィルタを用いてフィルタリング処理を行うことによって、生体の生体情報を取得する。生体情報取得部48は、例えば、生体情報として、心拍数及び心拍間隔の少なくとも1つ、又は、呼吸数及び呼吸間隔の少なくとも1つを示す情報を取得する。
【0084】
次に、上述した実施形態における生体情報検出システム1、プログラム、生体情報検出方法による作用効果について説明する。
【0085】
生体情報検出システム1は、信号情報取得部41と、フィルタ設定部46と、生体情報取得部48とを備えている。信号情報取得部41は、生体からの互いに異なる反射波Rに対応する複数の信号情報B,B,B,Bを取得する。フィルタ設定部46は、複数の信号情報B,B,B,Bの複数の仮ピークPE0,PE1,PE2,PE3の時間方向における位置に基づいて周波数フィルタを設定する。生体情報取得部48は、複数の信号情報B,B,B,Bの少なくとも1つに基づく情報に対して周波数フィルタを用いてフィルタリング処理を行うことによって、生体の生体情報を取得する。
【0086】
以上のように、互いに異なる反射波Rに対応する複数の信号情報B,B,B,Bが用いられる。このため、信号送信部11と生体との間における送信波T及び反射波Rの伝搬によって生じたノイズ又は生体の体勢に起因して捉えづらくなった生体情報の抽出精度が、ダイバーシチ効果によって改善され得る。さらに、複数の反射波Rに対応する複数の信号情報B,B,B,Bの仮ピークPE0,PE1,PE2,PE3に基づいて周波数フィルタが設定されるため、生体情報に対応する周波数帯域が周波数フィルタによって正確に抽出され得る。この結果、非接触で生体情報が検出されながら、生体情報の検出精度が確保され得る。
【0087】
ピークグループ演算部43は、複数の信号情報B,B,B,Bの複数の仮ピークPE0,PE1,PE2,PE3の時間方向おける位置に基づいて、複数のピークグループGRを設定する。複数のピークグループGRの各々は、複数の仮ピークPE0,PE1,PE2,PE3の少なくとも1つを含んでいる。ピークグループ演算部43は、各ピークグループGRの位置P1~P8を演算する。フィルタ設定部46は、ピークグループ演算部43において演算された各ピークグループGRの位置P1~P8に基づいて、周波数フィルタを設定する。この場合、複数の仮ピークPE0,PE1,PE2,PE3の少なくとも1つを含むピークグループGRの位置P1~P8に基づいて、周波数フィルタが設定される。このため、周波数フィルタによって、生体情報に対応する周波数帯域がさらに正確に抽出され得る。
【0088】
ピークグループ選出部44は、各ピークグループGRの位置P1~P8に基づいて、複数のピークグループGRのうち少なくとも2つのピークグループGRを代表ピークグループとして選出する。ピーク間隔演算部45は、時間方向における複数の代表ピークグループの間隔を示す代表ピークグループ間隔を演算する。フィルタ設定部46は、ピーク間隔演算部45によって演算された代表ピークグループ間隔に基づいて、周波数フィルタを設定する。この場合、周波数フィルタによって、生体情報に対応する周波数帯域がさらに正確に抽出され得る。
【0089】
生体情報は、生体において周期的に繰り返される動作である。ピークグループ選出部44は、複数のピークグループGRのうち、生体の動作の周期に対して尤もらしい間隔で時間方向に位置するピークグループGRの組み合わせを、複数の代表ピークグループとして選出する。この場合、生体の動作の周期により近い間隔で位置するピークグループGRの組み合わせが選出されるため、周波数フィルタによって、生体情報に対応する周波数帯域がさらに正確に抽出され得る。
【0090】
フィルタ設定部46は、複数の信号情報B,B,B,Bの複数のピークグループGRの時間方向における位置P1~P8に基づいて演算される中心周波数を有するように周波数フィルタを設定する。この場合、生体情報に対応する周波数帯域がさらに正確に抽出され得る。
【0091】
フィルタ設定部46は、複数の代表ピークグループの間隔の平均の逆数を中心周波数とするように周波数フィルタを設定する。この場合、生体情報に対応する周波数帯域がさらに正確に抽出され得る。
【0092】
ピークグループ演算部43は、複数の信号情報B,B,B,Bに含まれる複数の仮ピークPE0,PE1,PE2,PE3から、基準信号情報に含まれる複数の仮ピークPE0の各々から所定の時間範囲W内にある少なくとも1つの仮ピークを特定する。ピークグループ演算部43は、特定された仮ピークに基づいて各ピークグループGRの時間方向における位置P1~P8を演算する。この場合、複数の反射波Rにそれぞれ対応する複数の信号情報B,B,B,Bの仮ピークPE0,PE1,PE2,PE3に関するの情報が一つに纏められ、各ピークグループGRの時間方向における位置P1~P8の間隔が、生体の動作の周期により近づくと考えられる。この結果、生体情報に対応する周波数帯域をさらに正確に抽出できる周波数フィルタが設定され得る。
【0093】
ピークグループ演算部43は、ピークグループGR毎に、ピークグループGRに含まれる仮ピークPE0,PE1,PE2,PE3の時間方向における位置の平均をピークグループGRの位置P1~P8として演算する。この場合、複数の反射波Rにそれぞれ対応する複数の信号情報B,B,B,Bの仮ピークPE0,PE1,PE2,PE3に関するの情報が一つに纏められ、各ピークグループGRの時間方向における位置P1~P8の間隔が、生体の動作の周期により近づくと考えられる。この結果、生体情報に対応する周波数帯域をさらに正確に抽出できる周波数フィルタが設定され得る。
【0094】
各信号情報B,B,B,Bは、反射波に対応する情報に短時間フーリエ変換を行った情報に対して、時間区分毎にスペクトル積分した情報である。この場合、信号情報からノイズが除去され得る。
【0095】
生体情報取得部48においてフィルタリング処理が行われる複数の信号情報の少なくとも1つに基づく情報は、複数の信号情報B,B,B,Bのうち少なくとも2つを組み合わせた情報である。この場合、ダイバーシチ効果などによって、信号情報におけるノイズがさらに低減され得る。
【0096】
生体情報取得部48においてフィルタリング処理が行われる複数の信号情報の少なくとも1つに関する情報は、複数の反射波Rが反射した位置のうち、検出対象の生体情報に対応する皮膚変動が最も大きい位置において反射した反射波Rに対応する信号情報Bに基づいている。この場合、生体情報の検出精度がさらに向上し得る。例えば、心拍を検出する場合には、心臓に近い位置において反射した反射波Rに対応する信号情報Bによれば、より心拍の検出精度が向上され得る。例えば、呼吸を検出する場合には、肺に近い位置において反射した反射波Rに対応する信号情報Bによれば、より呼吸の検出精度が向上され得る。
【0097】
次に、図11から図16を参照して、生体情報検出システム1の検証の一例を説明する。本検証では、生体情報の検出として、心拍の検出が行われた。本検証の信号制御部2において、変調方式は無変調連続波であり、発振周波数は60GHzであり、サンプリング周波数は1000Hzであり、送信電力は1mWであった。本件証において、信号制御部2は、4つの受信アンテナ31を含んでいた。生体情報の検出対象としての被験者は、5人であった。送信波Tが生体に向けて送信され、生体からの反射波Rが受信される際に、各被験者は着座し、静止していた。本件証においては、図3に示したように、信号送信部11から生体Mに送信波T0,T1,T2,T3,T4が送信される。距離特性を確認する検証以外では、送信アンテナ23及び受信アンテナ31から生体までの距離は、60cm~70cmであった。各被験者に対して、120秒間の信号情報が取得された。
【0098】
生体情報検出システム1の検出精度を判断するため、心電図による測定値が真値として用いられた。生体情報検出システム1による検出精度の評価指標として、推定RRIと真値とのRMSE、及び、推定RRIと真値との誤差の累積確率分布CDFが用いられた。推定RRIとは、生体情報検出システムにおける心拍の検出結果である。“N”が観測されたRRIの数であり、“RRIest(i)”がi番目の推定RRIであり、“RRIref(i)”がi番目の真値RRIである場合、以下の式(1)によってRMSEは表される。
【数1】
【0099】
確率変数Xがx以下になる確率の関数F(x)は、以下の式(2)によって表される。
【数2】
【0100】
図11には、-30度方向と-15度方向と0度方向との送信波T4,T3,T0が生体に照射され場合における各信号情報に基づく、生体情報の検出結果のデータD11,D12,D13,D14が示されている。すなわち、複数の反射波Rにそれぞれ対応する信号情報に基づく、生体情報の検出結果を示している。データD11は、-30度方向に対応する信号情報に周波数フィルタが適用された場合に検出された生体情報のデータである。データD12は、-15度方向に対応する信号情報に周波数フィルタが適用された場合に検出された生体情報のデータである。データD13は、0度方向に対応する信号情報Bに周波数フィルタが適用された場合に検出された生体情報のデータである。データD14は、データD11,D12,D13が合成されたデータである。領域αに示されているように、データD11,D12,D13では、波形が崩れた。しかし、複数の反射波Rに対応する信号情報が用いられることによって、データD14のように波形の崩れが低減された。このように、複数の反射波Rに対応する信号情報が用いられることによって、波形の崩れが低減され、検出漏れが抑制されることが確認された。
【0101】
図12(a)は、比較例による生体情報の検出結果を示している。この比較例においては、上述した処理S5の後に、第二フィルタ部55から出力される信号情報にビタビアルゴリズムが適用されている。すなわち、第二フィルタ部55から出力された信号情報に含まれている複数の仮ピークに対して、ビタビアルゴリズムを適用することによって選出されたピークを示している。したがって、図12(a)に示されている各データは、周波数フィルタが適用されていないデータである。図12(b)は、生体情報検出システム1による生体情報の検出結果を示している。したがって、図12(b)に示されている各データは、周波数フィルタが適用されたデータである。
【0102】
図12(a)及び図12(b)において、データα1は、真値を示すデータである。データα2は、送信波T0のみが生体に照射され、1つの反射波Rに対応する信号情報Bのみが信号情報取得部41から出力される場合に検出された生体情報のデータである。データα3は、送信波T4,T3,T0が生体に照射され、3つの反射波Rにそれぞれ対応する信号情報が用いられた場合のデータである。
【0103】
図12(a)に示されているデータα2において、RMSEは267msであった。図12(a)に示されているデータα3において、RMSEは189msであった。図12(a)におけるデータα2とデータα3との比較によって、複数の反射波Rに対応する信号情報が用いられれば、RRIの検出精度が向上することが確認された。
【0104】
図12(b)に示されているデータα2において、RMSEは214msであった。図12(b)に示されているデータα3において、RMSEは67msであった。図12(a)と図12(b)との比較によって、周波数フィルタが適用されれば、RRIの検出精度が向上することが確認された。図12(b)におけるデータα2とデータα3との比較によって、周波数フィルタが適用され、かつ、複数の反射波Rに対応する信号情報が用いられれば、RRIの検出精度がさらに向上することが確認された。
【0105】
図13には、推定RRIと真値との誤差の累積確率分布CDFが示されている。図13において、横軸は推定RRIと真値との誤差を示しており、縦軸は確率の関数を示している。データD21~D26は、1つの反射波Rに対応する信号情報のみが用いられ、かつ、周波数フィルタが適用されている場合のデータである。データD21~D26は、それぞれ異なる方向へ送信された送信波Tに基づくデータである。データD21~D26において、生体への送信波Tの照射角度は、60度から-60度の範囲でそれぞれ異なる。データD30は、複数の反射波Rに対応する信号情報が用いられ、かつ、周波数フィルタが適用されている場合のデータである。データD21~D26と、データD30との比較によって、複数の反射波Rに対応する信号情報が用いられた場合には、1つの反射波Rに対応する信号情報が用いられた場合よりも、推定RRIと真値との誤差の発生抑制が格段に向上することが確認された。複数の反射波Rに対応する信号情報が用いられ、かつ、周波数フィルタが適用される場合には、1つの反射波Rに対応する信号情報が用いられ、かつ、周波数フィルタが適用される場合に比べて、CDFの中央値において、RRI誤差が平均50ms低減された。
【0106】
図14には、生体情報の検出精度がRMSEによって被験者ごとに示されている。データD31は、1つの反射波Rに対応する信号情報が用いられ、かつ、周波数フィルタが適用されている場合のデータである。データD32は、複数の反射波Rに対応する信号情報が用いられ、かつ、周波数フィルタが適用されている場合のデータである。データD31において、生体への送信波Tの照射角度は0度である。図14に示されているように、被験者に依存することなく、複数の反射波Rに対応する信号情報が用いられる場合の検出精度は、1つの反射波Rに対応する信号情報が用いられる場合に比べて、被験者に依存することなく向上することが確認された。複数の反射波Rに対応する信号情報が用いられる場合の検出精度は、1つの反射波Rに対応する信号情報が用いられる場合に比べて、5人の被験者のRMSEの平均が67.5ms改善された。
【0107】
図15及び図16には、推定RRIと真値との誤差の累積確率分布CDFが示されている。図15及び図16において、横軸は推定RRIと真値との誤差を示しており、縦軸は確率の関数を示している。
【0108】
図15及び図16において、データD41は、1つの反射波Rに対応する信号情報のみが信号情報取得部41から出力され、出力された信号情報にビタビアルゴリズムが適用され、かつ、周波数フィルタが適用されていない場合のデータである。データD42は、1つの反射波Rに対応する信号情報のみが信号情報取得部41から出力され、かつ、周波数フィルタが適用された場合のデータである。データD43は、複数の反射波Rに対応する信号情報が信号情報取得部41から出力され、出力された複数の信号情報にビタビアルゴリズムが適用され、かつ、周波数フィルタが適用されていない場合のデータである。データD50は、複数の反射波Rに対応する信号情報が信号情報取得部41から出力され、出力された複数の信号情報に周波数フィルタが適用された場合のデータである。
【0109】
図15に示されている検出結果において、送信アンテナ23及び受信アンテナ31から生体までの距離は、2.0mであった。図16に示されている検出結果において、送信アンテナ23及び受信アンテナ31から生体までの距離は、3.0mであった。図15及び図16に示されているデータD41,D42,D43,D50から、検出対象の生体との距離が離れたとしても、複数の反射波Rに対応する信号情報が用いられ、かつ、周波数フィルタが適用された場合には、推定RRIと真値との誤差の発生が抑制されることが確認された。
【0110】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態及び変形例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0111】
例えば、生体情報検出システム1は、SIMO、MISO、MIMOなどのレーダーであってもよい。生体情報検出システム1は、例えば、MIMO FMCW Radarであってもよい。生体情報検出システム1は、互いに異なる複数種のレーダーを含んでいてもよい。例えば、ドップラーセンサの代わりにMIMO FMCW Radarが用いられる場合、生体情報検出システム1は、MIMO FMCW Radarによって取得された情報に基づいて、生体情報を検出する。この場合、生体情報検出システム1は、MIMO FMCW Radarによって取得された情報を受信情報取得部51において取得し、ドップラー信号の場合と同様に処理する。
【0112】
上述した実施形態において、信号送信部11が、互いに上下方向に傾斜した複数の送信波T0,T1,T2,T3,T4を送信する場合について説明した。しかし、信号送信部11が送信する送信波の方向は上下方向に限定されない。例えば、信号送信部11から送信される送信波は、生体Mに向かって送信波T0に対して左右方向に傾斜する成分を含んでいてもよい。左右方向は、鉛直方向に直交する方向である。左右方向は、送信波T0の伝搬方向にも直交する方向である。信号制御部2は、3次元方向のビームフォーミングを行ってもよい。これらの場合においても、各送信波に対応する反射波Rが信号受信部12において受信されるように構成されてもよい。
【符号の説明】
【0113】
1…生体情報検出システム、41…信号情報取得部、43…ピークグループ演算部、44…ピークグループ選出部、45…ピーク間隔演算部、46…フィルタ設定部、48…生体情報取得部、B,B,B,B…信号情報、GR…ピークグループ、M…生体、P1~P19…位置、PE0~PE3…仮ピーク、R…反射波、W…時間範囲。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16