(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185758
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】防水装置
(51)【国際特許分類】
E02B 3/04 20060101AFI20221208BHJP
E04H 9/14 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
E02B3/04 301
E04H9/14 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093571
(22)【出願日】2021-06-03
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】501224109
【氏名又は名称】鈴木樹脂工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 元
(72)【発明者】
【氏名】住友 宏次
【テーマコード(参考)】
2D118
2E139
【Fターム(参考)】
2D118AA20
2D118BA07
2D118GA41
2E139AA07
2E139AC19
(57)【要約】
【課題】台風や豪雨による増水時に建物の出入口への浸水を防止するため従来の土のうや水のうに代わる防水装置であって、小型軽量で収納性が良く使い勝手を向上させた防水装置を提供する。
【解決手段】上部が開放されて内部に水を溜める複数のボックス1で構成され、ボックス1の上部から下部にかけて勾配を付けることで上部よりも底面を小さくし、底面に水抜き穴6を設け、上部の対向した側面5a、5bの二か所に切り欠き2を設け、切り欠き2の一方は、切り欠いた部分に他のボックス1と連結させる連結フック3を形成し、ボックス1には内側向きに突き出し部4a、4b、4c、4dを設け、切り欠き2を形成しない側面5dの外側に規制溝7を設けており、複数並べて連結させたボックス1間に止水プレート8を挟みこんで隙間を塞ぎ、任意の大きさの防止装置を組み立てる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物への浸水防止のため前記建物の出入口に設置される防水装置であって、
上部が開放されて内部に水を溜める複数のボックスで構成され、
前記ボックスは前記上部から下部にかけて勾配を付けることで前記上部よりも底面を小さくし、
前記底面に水抜き穴を設け、
前記上部の対向した側面の二か所に切り欠きを設け、
前記切り欠きの一方は、切り欠いた部分に他の前記ボックスと連結させる連結部を形成し、
前記ボックスには内側向きに突き出し部を設け、
前記切り欠きを形成しない前記側面の外側に規制溝を設け、前記ボックスを複数連結させた状態において、止水プレートを隣り合う前記ボックスの間を塞ぐ位置に、前記規制溝に挟んで取り付けることを特徴とする防水装置。
【請求項2】
前記ボックスは略直方体のメインボックスと略扇形のサブボックスであり、どちらか一方あるいは両方を複数連結させることで任意の形に組み立てることを特徴とする請求項1に記載の防水装置。
【請求項3】
前記サブボックスは、単体または複数連結させて扇形の角度を変更できることを特徴とする請求項2に記載の防水装置。
【請求項4】
前記規制溝は、前記ボックスの前記下部から前記上部に傾斜を付けて配置し、前記ボックスを横に連結させたとき前記ボックス間で前記規制溝の間には上部が狭くなる台形形状を形成することを特徴とする請求項1に記載の防水装置。
【請求項5】
前記止水プレートは、前記ボックスより柔らかい材質とし、前記規制溝に合わせた台形形状と同等以上の寸法とし、前記規制溝に強制的に挟み込むことを特徴とする請求項1に記載の防水装置。
【請求項6】
前記ボックスにおいて前記突き出し部は、対向した前記側面二か所に設けてボックスを上に載せるときの受け面とし、前記突き出し部の一部は突き出し量を変えて上段に載せる前記ボックスの姿勢を保持することを特徴とする請求項1に記載の防水装置。
【請求項7】
前記メインボックスでは、前記突き出し部を対向する側面の中央部を含む位置に形成し、かつ対向する前記側面で互いに異なる形状とし、前記メインボックスを積み重ねる方向を変えることで重なり量が変わることを特徴とする請求項2に記載の防水装置。
【請求項8】
前記ボックスを複数連結させた状態において、連結された前記切り欠きと前記連結部が水路を構成し、複数連結された前記ボックスのうち中央付近に設置される前記ボックスの一つに注水すると前記水路を経由して全ての前記ボックスに注水され、前記ボックスが二段連結されるときは上段に載せた前記ボックスの前記水抜き穴を水路として、前記上段から下段へ注水されることを特徴とする請求項1に記載の防水装置。
【請求項9】
前記ボックスの側面のうち少なくとも一つは前記側面の内側と外側が平坦であることを特徴とする請求項1記載の防水装置。
【請求項10】
前記ボックスの側面のうち少なくとも一つの前記側面に防水シートを掛ける突起を設けることを特徴とする請求項1記載の防水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台風や豪雨による増水時に住宅や商業施設など建物の出入口への浸水を防止するための防水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の気候変動により台風、豪雨による水害が増加しており、建物の浸水対策への要望が高まっている。大規模な浸水防止設備を準備できない場合、簡易的な手段として土のうや水のうなどが一般住宅や小規模施設で用いられている。土のうを用いる場合では、地方自治体などで袋と砂が提供されるが、砂置場に出向いて袋に砂を詰めて持ち帰り設置するという作業になるため、トラックや多くの人手が必要となり重労働である。
砂の代わりに水袋を使う水のうや、袋に入れた親水性ポリマーを水で膨らませて固形物にする水のうなども市販されているが、水を入れて運ぶ作業の労力は土のうと大差なく、また親水性ポリマーを使う場合は膨張した袋を使用後に処理することが難しいという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許6436410号公報
【特許文献2】特許4718887号公報
【特許文献3】特開2019-2172号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】アクアディフェンサー シリ-ズ「防水ボックス」カタログ 株式会社ダイクレ インターネット<https://webb-daikure.net/catalogcat/%e7%b0%a1%e6%98%93%e9%98%b2%e6%b0%b4%e8%a3%bd%e5%93%81/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
土のうや水のうに代わる先行技術として、特許文献1に記載の浸水防止用水のう箱がある。この浸水防止用水のう箱は、直方体と円弧状の箱をブロックのように水平・垂直方向に組み合わせて連結させ、箱の中には水を入れて住宅や施設の入口に防水壁を構成する。この箱は軽量でコンパクトに収納できるとしており、複数の箱を連結して使用することを想定している。箱は最下段と上段で構造が異なるため最下段と上段の直方体、またコーナーを構成する円弧状の箱のように複数種類の箱を複数個準備する必要がある。また未使用時に収納する場合、箱同士が重なり合う構造になっていないため使用時と変わらない容積で収納することになり場所を取る。
また、注水時は箱を並べて一つひとつの箱にそれぞれホース等で水を入れる必要があり、人手と長時間を要する作業になってしまう。
また、箱は硬質プラスチックなどの軽量素材を使うとしているが、箱は数十cm程度の大きさになることを想定すると箱同士の水平連結や垂直積みの間を隙間なく連結する必要があり、歪が無い高精度な寸法で箱を製造しなければならない。そのため箱の原価が高額になり複数の箱を購入する費用も高額になってしまう。
【0006】
特許文献2では複数のボックスに一か所から注水する先行技術が開示されている。このボックスは単体ではなく複数を連結固定されているので横穴を開けるだけで注水できるが、ボックス全体のサイズが大きくなるため個々のボックスを折り畳み可能な構造にしており、実現するには複雑で高度な技術を必要とし高額な製品になってしまう。
【0007】
特許文献3及び非特許文献1では、普段は植物栽培用プランターとして設置し増水時には建物の出入口にプランターを並べて連結手段で連結し防水壁を構成するもので、建物の出入口付近に常設しておき、非常時には迅速に移動できることが特徴となっている。しかしプランターを横一列に並べるだけで、扇形の展開や多段積みもできず設置の自由度が無いため、対応できる出入口が限られてしまう。また土と植物が入ったプランターは重量が重く非常時に複数のプランターを必要な場所まで移動させる労力が大きな負担になる。
【0008】
本発明は、前述した従来の浸水防止用具の問題点を解決した安価で収納性が良く使い勝手を向上させた防水装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の防水装置は建物の出入口に設置され浸水を防ぐ防水装置であって、上部が開放された水を溜める複数のボックスで構成され、前記ボックスは上部から下部にかけて勾配を付けることで上部より底面を小さくし、底面に水抜き穴を設け、上部の対向した側面二か所に切り欠きを設け、前記切り欠きの一方は、切り欠いた部分に他のボックスと連結させる連結部を形成し、前記ボックス内側向きに突き出し部を設け、前記切り欠きを形成しない側面の外側に止水プレートを挟み込むための規制溝を設けたことを特徴としている。
【0010】
ボックスを連結させた状態でボックス間にできる隙間を塞ぐため止水プレートを使う。ボックスを連結させた状態で隣り合うボックス側面に形成した規制溝に止水プレートを挟み込むことで隙間からの漏水を防ぐ。止水プレートはボックス本体より柔らかい材質であり、ボックス側面の規制溝の傾斜に合わせて上部が狭い台形形状とし、規制溝と同等以上の寸法にして強制的に挟み込んで固定する。
【0011】
ボックスは少なくとも略直方体と略扇形の2種類を作り、どちらか一方あるいは両方を任意の数使用し、横に連結させ上に積み上げることで任意の形に組み立てることができる。
略扇形ボックスは単体または複数を連結させることで扇形に配置する際の角度を選択できる形状としている。略直方体ボックスは直線上に連結するが、角度を付けたい部分には略扇形ボックスを連結させる。
【0012】
ボックスには突き出し部を設けるが、突き出し部には上段のボックスを載せる受け面と上段ボックスの姿勢を保持する部分を設ける。また突き出し部は対向面の中央部とそれ以外の位置に形成し、かつ対向面で互いに異なる形状とすることによってボックスを積み重ねる方向を変えることで重なり量を深く、浅く変えることができる。
複数のボックスを連結させた状態で、中央付近の一つのボックスから注水すると、切り欠きを連結させて形成した水路、および底面の水抜き穴を経由して全てのボックスに注水することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の防水装置によると、複数のボックスを組み合わせることで建物出入口の構造や浸水状況に合わせて任意の大きさの防水装置を組み立てることができる。
略扇形ボックスを使うことで防水装置を扇形に展開できるが、扇の外側から浸水の水圧を受けることでボックス同士が密着し、防水装置全体の耐圧、耐水性が高まる。
ボックスは上部から下部にかけて勾配を付けるが、樹脂材のボックスにする場合は射出成形の抜き勾配となり金型構造を簡単にして製品を安く提供できる。勾配を付けることで隣同士のボックスに隙間ができる問題は止水プレートで隙間を塞ぐことで解決している。
止水プレートはボックスより柔らかい材質で上部が狭い台形とし、寸法はボックスの規制溝に合わせるか少し大きくし、これを規制溝に沿ってボックス間に強制的に装着する。ここでボックスに水が入ると水の重量で止水プレートが規制溝と地面に圧接され止水効果を発揮する。
【0014】
ボックスは未使用時には同じ方向に積むことで深く重なるので小さく収納できるが、使用時は逆方向にボックスを積むことで突き出し部の上にボックスが乗り、上下段ボックスに十分水を溜めることができる。上段ボックスは下段ボックスの錘として水圧による浮き上がりを防止する機能と、水位が下段を超えるときは上段にも浸水防止機能を持たせることができる。
突き出し部は突き出し量を二段階にしており、その一部を上段ボックスの下部寸法に合わせた突き出し量にすることによって上段ボックスを置いたときボックスの姿勢を保持することができる。上段ボックスの姿勢が傾かないようにする効果、および下段ボックスに水が溜まったとき上段ボックスが浮力で浮かないよう抑える効果もある。
【0015】
突き出し部は対向した側面の中央部にも形成するが、ボックスを持ち運ぶときには持ち手となり水の入ったボックスや重ねたボックスを運ぶときに役立つ。
ボックスには入れる水の重量や外部から受ける水圧で大きな負荷が掛かるが、突き出し部を設けることは補強リブとしての機能も果たし、肉厚を薄く軽量化することが可能になる。
ボックスの側面のうち少なくとも一つは側面の内側と外側を平坦な面にしているが、ボックスのこの側面を水や土砂を汲み上げるバケツ代わりに使うとき作業し易い。またボックスには勾配を付けているのですくい易い構造になっている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】防水装置を構成する略直方体のメインボックスを表した外観図
【
図2】防水装置を構成する略直方体のメインボックスの内側を表した図
【
図3】防水装置を構成する略直方体のメインボックスを縦・横に連結し止水プレートを組み込んだ図
【
図4】防水装置を構成する略直方体のメインボックスを未使用時に積み重ねた状態を表した図
【
図5】防水装置を構成する略扇形のサブボックスを表した外観図
【
図6】防水装置を構成する略扇形のサブボックスの内側を表した図
【
図7】防水装置を構成する略扇形のサブボックス上段を表した外観図
【
図8】防水装置を構成する略扇形のサブボックスを縦・横に連結し止水プレートを組み込んだ図
【
図9】防水装置を構成する略扇形のサブボックスを未使用時に積み重ねた状態を表した図
【
図10】メイン・サブボックスを一段連結させた防水装置の全体構成
【
図11】メイン・サブボックスを二段連結させた防水装置の全体構成
【
図12】メイン・サブボックスを二段連結させた防水装置の全体構成、別の組み合わせ例
【
図13】防水装置を構成する略直方体のメインボックスにシート用フックを付けた外観図
【
図14】防水装置を構成する略扇形のサブボックスにシート用フックを付けた外観図
【
図15】二段連結させ防水シートを掛けた防水装置の側面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は略直方体のメインボックス1であり、複数のメインボックス1を直線上に配置することで防水装置を構成する。
図2はメインボックス1の内部構造を示す。本発明のメインボックス1は、1種類で下段と上段とに同じものを使うことができる。
メインボックス1は、側面5a、5b、5c、5dによって略直方体に形成されている。
対向する一対の側面5a、5bの上端には、切り欠き2と、切り欠き2を兼ねた連結部を形成する連結フック3とを有している。切り欠き2は側面5aの上端の一部に、連結フック3は側面5bの上端の一部に有している。切り欠き2及び連結フック3は、側面5a、5b、5c、5dの上端より低く形成され、注水するときの水路になる。連結フック3は隣のメインボックス1の切り欠き2、又は隣のサブボックス21の切り欠き22(
図5参照)に引掛けて連結する役目をする(
図10参照)。
【0018】
側面5bには突き出し部4aが形成され、側面5aには突き出し部4b、4c、4dが形成されている。突き出し部4a、4b、4c、4dは、メインボックス1内部が凸状、メインボックス1外部が凹状であり、側面5a、5bの底部から、側面5a、5bの上部までに同じ高さで形成されている。突き出し部4a、4b、4c、4dは、側面5a、5bの上端には至らない高さとしている。また、突き出し部4a、4b、4c、4dの幅は、底部が上部よりも広く形成している。
突き出し部4a、4cは、それぞれ側面5b、5aの中央部に位置させることで運ぶときの持ち手として機能する。一方の側面5bに突き出し部4aを形成し、他方の側面5aに突き出し部4b、4c、4dを形成することで、2つのメインボックス1を同じ方向として重ねると深く重なり、180度逆方向として重ねると上段のメインボックス1は突き出し部4a、4b、4c、4dまでの浅い重なりとなる。突き出し部4a、4b、4c、4dの上端は、突き出し量(高さ)を異ならせて二段に形成している。
【0019】
突き出し部4aには、第1上端面4a1と第2上端面4a2とを形成し、第1上端面4a1は第2上端面4a2より高く、第2上端面4a2は第1上端面4a1よりもメインボックス1の内方に形成している。第1上端面4a1は、上段に積まれるメインボックス1の姿勢を保持し、第2上端面4a2は上段に積まれるメインボックス1を載置する面として機能する。突き出し部4aと同様に、突き出し部4bには、第1上端面4b1と第2上端面4b2とを形成し、突き出し部4cには、第1上端面4c1と第2上端面4c2とを形成し、突き出し部4dには、第1上端面4d1と第2上端面4d2とを形成している。
第1上端面4a1、4b1、4c1、4d1は同じ高さであり、第2上端面4a2、4b2、4c2、4d2は同じ高さである。
【0020】
側面5cは、内外面を凹凸を形成しない平坦にしており、災害時には水の汲み出しや土砂をすくう作業にこの面が有効に使える。また連結フック3は水や土砂をすくうときには持ち手としても機能する。
【0021】
図2に示す水抜き穴6は、水を溜めるときはゴム栓等で蓋をし、災害が終わった後で防水装置を片付けるときは栓を抜いて容易に水抜きすることができ、メインボックス1単体で水を運んで有効活用することもできる。
【0022】
メインボックス1は、水の重量や外部からの水圧に耐えるため硬質の樹脂が適しているが、リサイクル樹脂材が活用できる。例えば学校など様々な場所で回収されている飲料キャップのポリプロピレンなどから再生することも可能であり社会貢献につながる。メインボックス1は必要な機能を果たせば硬質樹脂に限らず他の材料でも代用できる。
【0023】
図1に示す規制溝7は、メインボックス1の側面5dに、上部から下部にかけて傾斜を付けて形成しており、規制溝7によって止水プレート8を挟み込む(
図3参照)。止水プレート8は、メインボックス1より柔らかい材料が良く、ポリエチレンなど柔らかくて変形し易い材料が適している。
【0024】
図3は2つのメインボックス1a、1bを横に連結させ、上段には2つのメインボックス1c、1dを載置させた状態を示す図である。
メインボックス1aの規制溝7aとメインボックス1bの規制溝7bとの間は、上辺が狭い台形形状となり、規制溝7a、7bに沿って止水プレート8を挟む。上段のメインボックス1c、1dは、下段のメインボックス1a、1bに対して180度逆方向としてメインボックス1a、1bに載せる。上段のメインボックス1c、1dは、下段のメインボックス1a、1bの突き出し部4a、4b、4c、4dで受けている。
【0025】
図4は、3つのメインボックス1を同方向として積み重ねている。このように、メインボックス1を同方向として積み重ねる場合には、重ね合わせ量を深くでき、水を入れない未使用時は多数のメインボックス1を重ねて運ぶことが可能であり、収納スペースを小さくできる。
【0026】
図5及び
図6は略扇形のサブボックス21を表した図である。
本実施形態ではサブボックス21は、側面25a、25b、25c、25d、25eによって上面視で五角形の形状にしている。対向する一対の側面25a、25bの上端には、切り欠き22と、切り欠き22を兼ねた連結部を形成する連結フック23とを有している。切り欠き22は側面25aの上端の一部に、連結フック23は側面25bの上端の一部に有している。切り欠き22及び連結フック23は、側面25a、25b、25c、25d、25eの上端より低く形成され、注水するときの水路になる。連結フック23は隣のメインボックス1の切り欠き2、又は隣のサブボックス21の切り欠き22に引掛けて連結する役目をする(
図10参照)。
【0027】
側面25bには突き出し部24aが形成され、側面25aには突き出し部24bが形成されている。突き出し部24a、24bは、サブボックス21内部が凸状、サブボックス21外部が凹状であり、側面25a、25bの底部から、側面25a、25bの上部までに同じ高さで形成されている。突き出し部24a、24bは、側面25a、25bの上端には至らない高さとしている。また、突き出し部24a、24bの幅は、底部が上部よりも広く形成している。
突き出し部24a、24bは、それぞれ側面25b、25aの中央部に位置させることで運ぶときの持ち手として機能する。
突き出し部24a、24bによって、上段に載置する上段用サブボックス31(
図7参照)を受ける。
【0028】
本実施例では、突き出し部24a、24bの上端は、メインボックス1のように二段に形成していないが、突き出し量(高さ)を異ならせて二段に形成してもよい。なお、上段用サブボックス31は外周が五角形であり、メインボックス1より底面積が小さくなっており、型抜き勾配を小さくするなどの対応によって二段形成にしなくても姿勢の保持ができる。サブボックス21は下段専用に使う。
【0029】
図6に示す水抜き穴26は、水を溜めるときはゴム栓等で蓋をし、災害が終わった後で防水装置を片付けるときは栓を抜いて容易に水抜きすることができ、サブボックス21単体で水を運んで有効活用することもできる。
【0030】
図5に示す規制溝27は、サブボックス21の側面25c、25dに、上部から下部にかけて傾斜を付けて形成しており、規制溝27によって止水プレート8を挟み込む(
図8参照)。止水プレート8は、サブボックス21より柔らかい材料が良くポリエチレンなど柔らかくて変形し易い材料が適している。
【0031】
図7は上段用サブボックス31を表した図である。上段用サブボックス31は、側面35a、35b、35c、35d、35eによって上面視で五角形の形状にしている。上段用サブボックス31は、サブボックス21の切り欠き22と連結フック23の位置とは、切り欠き32と連結フック33の位置が逆になっている。すなわち、切り欠き32は側面35bの上端の一部に、連結フック33は側面35aの上端の一部に有している。
切り欠き32及び連結フック33は、側面35a、35b、35c、35d、35eの上端より低く形成され、注水するときの水路になる。連結フック33は隣のメインボックス1の切り欠き2、又は隣の上段用サブボックス31の切り欠き32に引掛けて連結する役目をする(
図11参照)。
【0032】
なお、図示していないが、突き出し部をサブボックス21の突き出し部24a、24bと異なる位置に形成することによって、上段用サブボックス31をサブボックス21の突き出し部24a、24bで受けることができる。サブボックス21は辺の長さが異なるので方向を変えて積み重ねることができず、上段用サブボックス31をサブボックス21とは別に用意する。
【0033】
本実施形態ではサブボックス21と上段用サブボックス31とは角度30度の扇形であり、連結させることで30度、60度、90度と角度を持たせることができる。サブボックス21と上段用サブボックス31の基本角は必ずしも30度である必要はなく他の角度で組み合わせても良い。
【0034】
図8は2つのサブボックス21a、21bを横に連結させ、上段には2つの上段用サブボックス31a、31bを連結させた図である。
連結させたサブボックス21aとサブボックス21bとの間に止水プレート8を挟むが、止水プレート8はメインボックス1で使用するものを共通で使えるように設計されている。
サブボックス21aの規制溝27aとサブボックス21bの規制溝27bとの間は、上辺が狭い台形形状となり、規制溝27a、27bに沿って止水プレート8を挟む。
【0035】
図9は、3つのサブボックス21を積み重ねており、未使用時の収納性は良い。サブボックス21同士、上段用サブボックス31同士はそれぞれ多段に重ねることができる。
【0036】
図10はメインボックス1とサブボックス21を組み合わせて一段だけで連結させている。連結フック3、23を隣接するメインボックス1の切り欠き2、およびサブボックス21の切り欠き22に引掛けることでメインボックス1を横に連結させている。この連結フック3、23と切り欠き2、22を連結させた部分が水路となり、隣接するメインボックス1およびサブボックス21へ水を流す。中央付近となるメインボックス1又はサブボックス21の一か所にホース等を入れて注水すると両側のメインボックス1及びサブボックス21へ水が流れていき、両端のメインボックス1又はサブボックス21の外側の切り欠き2、22から水がこぼれ出すと全てのメインボックス1及びサブボックス21の切り欠き2、22の下端まで注水されている。それぞれのメインボックス1及びサブボックス21の間には止水プレート8を挟んでいる。本発明では一段の連結だけでも構成することができる。浸水量が低い想定では一段構成で対策できる場合もある。
【0037】
図11は二段連結の図であり、コーナーにはサブボックス21を3個連結して90度とし、全体をコの字に配置しており比較的広い場所に使う場合に適している。
図12は60度コーナーとしてサブボックス21を2個と、両端にサブボックス21を1個ずつ配置することで、比較的小さな扇形を構成している。このようにサブボックス21の使い方によって連結の形を自由にできる。
【0038】
図12では両端の上段用サブボックス31に切り欠きカバー9を装着することを示している。切り欠きカバー9を、両端に位置する上段用サブボックス31の切り欠き32及び連結フック33に装着することにより水が両端から外に溢れることを防止し、上段に配置したメインボックス1及び上段用サブボックス31に水をフル充填できる。また切り欠きカバー9の別の目的として、メインボックス1の列の端からホースで注水した場合でも全体に水を流すことが可能になる。
図11および
図12において、メインボックス1は1種類だが、下段と上段では向きを逆にして用いている。また下段にはサブボックス21を用い、上段には上段用サブボックス31を用いる。下段ボックス同士、上段ボックス同士は連結フック3、23、33で連結しており、下段には止水プレート8を挟みこんでいる。
【0039】
作業手順は、設置する複数のボックス1、21、31を、水が入っていない状態で設置場所まで運び、下段のボックス1、21を横に並べ連結フック3、23を引掛けて連結する。全てのボックス1、21間に止水プレート8を挟む。下段のボックス1、21の水抜き穴6、26には全て栓をする。次に
図11や
図12のように二段連結する場合は、上段のボックス1、31を、下段のボックス1、21の上に載せて隣のボックス1、31に連結フック3、33を引掛ける。これで防水装置の組み立てが完了するが、これらの作業は水が無い状態で行うので力が要らず誰でもできる軽作業である。
組み上がった防水装置は建物の出入口を囲う配置になるが、防水装置の両端のボックス1、21と建物の間に若干の隙間があるため、それぞれの建物の構造に合わせて止水テープやスポンジ付きのテープなどを使って隙間を塞ぐ作業をする。また床面が土や砂利など平坦でない場合は、ボックス1、21の下にスポンジや布など柔らかい素材のシートを敷く、またはボックス1、21の底面にテープ貼りすることで床面からの浸水を防ぐことができる。止水テープやクッション素材付きテープなどは防水装置と共に提供することもできるが、使用者が設置場所に合わせて市販の汎用品を使い隙間を塞ぐことも可能である。
【0040】
以上の準備ができたら中央のボックス1、21、31からホース等で注水する。二段連結の場合は中央上段のボックス1、31から注水する。二段連結の場合、下段のボックス1、21は水抜き穴6、26に栓をして、上段のボックス1、31の水抜き穴6は栓をしないで注水する。下段のボックス1、21に水が溜まったら上段のボックス1、31の水抜き穴6に栓をする。上段のボックス1、31に水が溜まったら注水を止めて防水装置の設置が完了する。
浸水時の水位が上昇してくると下段のボックス1、21は浮力で浮き上がる可能性があるが、上段のボックス1、31は下段が浮き上がらないための錘として機能する。更に水位が下段のボックス1、21を超えることが想定される場合、上段のボックス1、31にも防水機能を付加することができる。
図11及び
図12では浸水の水位が下段のボックス1、21レベルと想定して上段のボックス1、31間は隙間が空いている。図示していないが、上段のボックス1、31の隙間を塞ぐ止水プレートを別に用意することが可能であり、上段のボックス1、31の隙間を塞ぐことで水位が下段のボックス1、21を超えても防水できる。ただしどこまでの水位に耐えられるかは建物周辺の地形や浸水の勢いによって異なる。
【0041】
水位が上段のボックス1、31まで上昇する場合の対応策として、例えばブルーシートのように市販で容易に入手できる防水シートを使用する方法がある。組み立てたボックス1、21、31全体を防水シートで覆うことにより上段のボックス1、31の隙間を埋める。
図13はメインボックス1にシート用フック10を付けた構成、
図14はサブボックス21にシート用フック10を付けた構成である。
図15はボックスを二段構成にした側面図で、防水シート11の穴をシート用フック10に掛けてボックス底面に防水シート11を敷き込んで、防水シート11を固定しながら全体を覆うことができる。防水シート11を掛けた後でボックス1、21、31の両端からホースを入れて全体に給水する。
【0042】
浸水の水が引いた後は、水抜き穴6、26の栓を外しボックス1、21、31の水を抜いてボックス1、21、31を重ね合わせ簡単に片付けることができる。ボックス1、21、31の底面には補強リブを設けているが、水抜き穴6、26の栓を抜いて水抜きする場合、ボックス1、21、31を設置したままではリブが壁になって水の抜けが悪くなる。
図16はメインボックス1の底面を示しているが、補強リブ切り欠き12のようにリブの一部を切り欠くことで水抜きを容易にしている。サブボックス21、31も同様のリブ形状にする。
またボックス1、21、31を上に持ち上げることで簡単に連結フック3、23、33を外せるので、水を入れたまま単体で運び利用することも可能である。ボックス1、21、31は未使用時には倉庫に収納できるが、プランターやバケツなどの代用として普段使いしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の防水装置を用いることで建物への浸水防止を簡易に行うことができる。
【符号の説明】
【0044】
1 メインボックス
1a メインボックス
1b メインボックス
1c メインボックス
1d メインボックス
2 切り欠き
3 連結フック
4a 突き出し部
4a1 第1上端面
4a2 第2上端面
4b 突き出し部
4b1 第1上端面
4b2 第2上端面
4c 突き出し部
4c1 第1上端面
4c2 第2上端面
4d 突き出し部
4d1 第1上端面
4d2 第2上端面
5a 側面
5b 側面
5c 側面
5d 側面
6 水抜き穴
7 規制溝
7a 規制溝
7b 規制溝
8 止水プレート
9 切り欠きカバー
10 シート用フック
11 防水シート
12 補強リブ切り欠き
21 サブボックス
21a サブボックス
21b サブボックス
22 切り欠き
23 連結フック
24a 突き出し部
24b 突き出し部
25a 側面
25b 側面
25c 側面
25d 側面
25e 側面
26 水抜き穴
27 規制溝
27a 規制溝
27b 規制溝
31 上段用サブボックス
31a 上段用サブボックス
31b 上段用サブボックス
32 切り欠き
33 連結フック
35a 側面
35b 側面
35c 側面
35d 側面
35e 側面