(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185764
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】電子機器用フイルムおよびプリント回路基板
(51)【国際特許分類】
C08F 32/04 20060101AFI20221208BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20221208BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
C08F32/04
H05K1/03 610H
C08J5/18 CER
C08J5/18 CEZ
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093585
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】前岨 晋一
(72)【発明者】
【氏名】和泉 篤士
【テーマコード(参考)】
4F071
4J100
【Fターム(参考)】
4F071AA39
4F071AA39X
4F071AA69
4F071AA69X
4F071AA86
4F071AF40
4F071AF62Y
4F071AH13
4F071BA02
4F071BB02
4F071BC01
4J100AR11P
4J100AR11Q
4J100AR16Q
4J100BC04Q
4J100DA25
4J100DA55
4J100JA43
4J100JA44
(57)【要約】 (修正有)
【課題】誘電率および誘電正接が従来の材料より低く、かつ耐熱性に優れる電子機器用フイルムを提供する。
【解決手段】本発明に係る電子機器用フイルムは、式(1)で表される化合物を含み、広角X線散乱プロファイルにおいて、散乱ベクトルqが2nm
-1以上8nm
-1以下の第一領域、および10nm
-1以上20nm
-1以下の第二領域に、各々少なくとも一つのピークを有することを特徴とする。なお、式中、R
1およびR
2、またはR
3およびR
4は、水素原子、および、置換もしくは無置換の炭素数1~30の炭化水素基からなる群からそれぞれ独立に選択されるいずれかであるか、または、共同してアルキリデン基を形成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物を含み、
広角X線散乱プロファイルにおいて、散乱ベクトルqが2nm
-1以上8nm
-1以下の第一領域、および10nm
-1以上20nm
-1以下の第二領域に、各々少なくとも一つのピークを有する電子機器用フイルム。
【化1】
式中、
R
1およびR
2は、水素原子、および、置換もしくは無置換の炭素数1~30の炭化水素基、からなる群からそれぞれ独立に選択されるいずれかであるか、または、共同してアルキリデン基を形成し、
R
3およびR
4は、水素原子、および、置換もしくは無置換の炭素数1~30の炭化水素基、からなる群からそれぞれ独立に選択されるいずれかであるか、または、共同してアルキリデン基を形成する。
【請求項2】
前記化合物は、式(1)においてR1、R2、R3、およびR4がいずれも水素原子であるモノマー単位を含む請求項1に記載の電子機器用フイルム。
【請求項3】
前記化合物は、
式(1)においてR2、R3、およびR4がいずれも水素原子であり、R1が、炭素数20以下の、アルキル基、アルケニル基、およびシクロアルキル基からなる群から選択されるいずれかであるモノマー単位、ならびに、
式(1)においてR3およびR4がいずれも水素原子であり、R1およびR2が共同して炭素数20以下のアルキリデン基を形成するモノマー単位、から選択されるいずれかのモノマー単位を含む請求項1または2に記載の電子機器用フイルム。
【請求項4】
前記第一領域に、二つ以上のピークを有する請求項1~3のいずれか一項に記載の電子機器用フイルム。
【請求項5】
前記化合物は、式(2)で表される共重合体であり、
m/(n+m)は、0.05以上0.99以下である請求項1~4のいずれか一項に記載の電子機器用フイルム。
【化2】
【請求項6】
式(1)で表される前記化合物の、JIS K 7244:1998に従い、昇温速度5℃/分、周波数1Hzの条件の動的粘弾性測定により測定したガラス転移点は、260℃以上である請求項1~5のいずれか一項に記載の電子機器用フイルム。
【請求項7】
式(1)で表される前記化合物の、引張荷重10mN、温度範囲25~250℃、および昇温速度5℃/分、の条件の熱機械分析における、50~100℃の傾きとして特定される線膨張係数は、100ppm以下である請求項1~6のいずれか一項に記載の電子機器用フイルム。
【請求項8】
式(1)で表される前記化合物の、JIS C 2565-1992に従って周波数10GHzにおいて測定した比誘電率は、3.0以下である請求項1~7のいずれか一項に記載の電子機器用フイルム。
【請求項9】
式(1)で表される前記化合物の、JIS C 2565-1992に従って周波数10GHzにおいて測定した誘電正接は、0.003以下である請求項1~8のいずれか一項に記載の電子機器用フイルム。
【請求項10】
式(1)で表される前記化合物の含有量は、重量比率で40%以上である請求項1~9のいずれか一項に記載の電子機器用フイルム。
【請求項11】
比誘電率が10以下であるフィラーをさらに含み、
前記フィラーの含有量は、重量比率で50%以下である請求項1~10のいずれか一項記載の電子機器用フイルム。
【請求項12】
フイルム状に形成された主材料と、前記主材料中に分散している式(1)で表される前記化合物と、を含む請求項1~9のいずれか一項に記載の電子機器用フイルム。
【請求項13】
前記主材料中に分散している粒子を有し、
前記粒子は、前記化合物を含む請求項12に記載の電子機器用フイルム。
【請求項14】
金属に対する接着性を有する接着層と、前記接着層を少なくとも部分的に覆う絶縁層と、を備え、
前記主材料は、金属に対する接着性を有する材料であり、
前記接着層において、式(1)で表される前記化合物が前記主材料中に分散している請求項12または13に記載の電子機器用フイルム。
【請求項15】
金属に対する接着性を有する接着層と、前記接着層を少なくとも部分的に覆う絶縁層と、を備え、
前記主材料は、絶縁性を有する材料であり、
前記絶縁層において、式(1)で表される前記化合物が前記主材料中に分散している請求項12または13に記載の電子機器用フイルム。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の電子機器用フイルムを含むプリント回路基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器用フイルムおよびプリント回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波デバイスなどの用途にプリント回路基板が汎用されている。プリント回路基板は、典型的には、絶縁性の基板材料と、銅箔と、被覆材料とが積層された平板状の構造を有し、基板材料および被覆材料は主として樹脂材料によって構成されている。かかるプリント回路基板を電子機器に実装する際には、種々の素子とプリント基板上に設けられた配線(銅箔)とが、はんだ付けなどの方法により結線される。
【0003】
上記のように実装段階においてはんだ付けが行われる場合、プリント回路基板は一時的に高温(たとえば250℃)に晒される。そのため、プリント回路基板に使用される樹脂材料には、一定以上の耐熱性が求められる。また、プリント回路基板が高周波デバイスに適用される場合においては、基板材料および被覆材料として用いられる樹脂材料の電気特性によって、デバイスの通信性能が左右される。具体的には、樹脂材料の誘電率および誘電正接が低いほど、通信性能が向上しやすい。このような耐熱性および電気特性を満たしうる材料として、たとえば液晶ポリマーが使用されている(特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-65061号公報
【特許文献2】国際公開第2020/179443号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、高速通信への要求が高まる中で、液晶ポリマーの電気特性では、高周波デバイス向けのプリント回路基板としての要求性能を満たさない場合があった。
【0006】
そこで、誘電率および誘電正接が従来の材料より低く、かつ耐熱性に優れる電子機器用フイルムの実現が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電子機器用フイルムは、式(1)で表される化合物を含み、広角X線散乱プロファイルにおいて、散乱ベクトルqが2nm
-1以上8nm
-1以下の第一領域、および10nm
-1以上20nm
-1以下の第二領域に、各々少なくとも一つのピークを有することを特徴とする。なお、式中、R
1およびR
2は、水素原子、および、置換もしくは無置換の炭素数1~30の炭化水素基、からなる群からそれぞれ独立に選択されるいずれかであるか、または、共同してアルキリデン基を形成し、R
3およびR
4は、水素原子、および、置換もしくは無置換の炭素数1~30の炭化水素基、からなる群からそれぞれ独立に選択されるいずれかであるか、または、共同してアルキリデン基を形成する。
【化1】
【0008】
また、本発明に係るプリント回路基板は、上記の電子機器用フイルムを含むことを特徴とする。
【0009】
式(1)で表される化合物は、ポリノルボルネン骨格に由来する低い誘電率および低い誘電正接を発現する。また、上記の広角X線散乱プロファイルは、従来のポリノルボルネンに比べてポリノルボルネン骨格が密に充填されていることを示しており、これによって式(1)で表される化合物はポリノルボルネンを含む従来の材料に比べて高い耐熱性を発現する。式(1)で表される化合物のこれらの性質によって、誘電率および誘電正接が従来の材料より低く、かつ耐熱性に優れる電子機器用フイルム、およびこれを含むプリント回路基板が実現される。
【0010】
式(1)で表される化合物は、従来知られているポリノルボルネンと同等の線膨張を有し、かつ従来知られているポリノルボルネンに比べて低いヤング率を有する。これらの性質により、柔軟性および耐屈曲性に優れる電子機器用フイルム、およびこれを含むプリント回路基板を提供しうる。
【0011】
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
【0012】
本発明に係る電子機器用フイルムは、一態様として、前記化合物は、式(1)においてR1、R2、R3、およびR4がいずれも水素原子であるモノマー単位を含むことが好ましい。
【0013】
この構成によれば、比較的入手しやすい無置換のノルボルネンを原料として、本発明に係る電子機器用フイルムを提供しうる。
【0014】
本発明に係る電子機器用フイルムは、一態様として、前記化合物は、式(1)においてR2、R3、およびR4がいずれも水素原子であり、R1が、炭素数20以下の、アルキル基、アルケニル基、およびシクロアルキル基からなる群から選択されるいずれかであるモノマー単位、ならびに、式(1)においてR3およびR4がいずれも水素原子であり、R1およびR2が共同して炭素数20以下のアルキリデン基を形成するモノマー単位、から選択されるいずれかのモノマー単位を含むことが好ましい。
【0015】
この構成によれば、電子機器用フイルムの耐熱性、柔軟性および耐屈曲性が、プリント回路基板に特に適した水準になりやすい。
【0016】
本発明に係る電子機器用フイルムは、一態様として、前記第一領域に、少なくとも二つ以上のピークを有することが好ましい。
【0017】
この構成によれば、耐熱性に特に優れる電子機器用フイルムを提供しうる。
【0018】
本発明に係る電子機器用フイルムは、一態様として、前記化合物は、式(2)で表される共重合体であり、m/(n+m)は、0.05以上1.0以下であることが好ましい。
【化2】
【0019】
この構成によれば、電子機器用フイルムの耐熱性、柔軟性および耐屈曲性が、プリント回路基板に特に適した水準になりやすい。
【0020】
本発明に係る電子機器用フイルムは、一態様として、式(1)で表される前記化合物の、JIS K 7244:1998に従い、昇温速度5℃/分、周波数1Hzの条件の動的粘弾性測定により測定したガラス転移点は、260℃以上であることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、電子機器用フイルムの耐熱性が、プリント回路基板に特に適した水準になりやすい。
【0022】
本発明に係る電子機器用フイルムは、一態様として、式(1)で表される前記化合物の、引張荷重10mN、温度範囲25~250℃、および昇温速度5℃/分、の条件の熱機械分析における、50~100℃の傾きとして特定される線膨張係数は、100ppm以下であることが好ましい。
【0023】
この構成によれば、本発明に係る電子機器用フイルムを銅箔と接着させた場合に、フイルムと銅箔との剥離が抑制される。
【0024】
本発明に係る電子機器用フイルムは、一態様として、式(1)で表される前記化合物の、JIS C 2565-1992に従って周波数10GHzにおいて測定した比誘電率は、3.0以下であることが好ましい。
【0025】
この構成によれば、本発明に係る電子機器用フイルムを高周波デバイス向けに好適に用いうる。
【0026】
本発明に係る電子機器用フイルムは、一態様として、式(1)で表される前記化合物の、JIS C 2565-1992に従って周波数10GHzにおいて測定した誘電正接は、0.003以下であることが好ましい。
【0027】
この構成によれば、本発明に係る電子機器用フイルムを高周波デバイス向けに好適に用いうる。
【0028】
本発明に係る電子機器用フイルムは、一態様として、式(1)で表される前記化合物の含有量は、重量比率で40%以上であることが好ましい。
【0029】
この構成によれば、電子機器用フイルムの機械特性および電気特性に、式(1)で表される化合物の特性を強く反映でき、電子機器向けに好ましい特性を発現しやすい。
【0030】
本発明に係る電子機器用フイルムは、一態様として、比誘電率が10以下であるフィラーをさらに含み、前記フィラーの含有量は、重量比率で50%以下であることが好ましい。
【0031】
この構成によれば、フィラーを添加してフイルムの物性(たとえば線膨張率)を改善することと、式(1)で表される化合物の特性を維持することとを両立しうる。
【0032】
本発明に係る電子機器用フイルムは、一態様として、フイルム状に形成された主材料と、前記主材料中に分散している式(1)で表される前記化合物と、を含むことが好ましい。
【0033】
この構成によれば、従来の電子機器用フイルムの構成を大きく変更することなく、式(1)で表される化合物の特性を反映できる。
【0034】
本発明に係る電子機器用フイルムは、一態様として、前記主材料中に分散している粒子を有し、前記粒子は、前記化合物を含むことが好ましい。
【0035】
この構成によれば、式(1)で表される化合物を主材料中に分散させやすい。
【0036】
本発明に係る電子機器用フイルムは、一態様として、金属に対する接着性を有する接着層と、前記接着層を少なくとも部分的に覆う絶縁層と、を備え、前記主材料は、金属に対する接着性を有する材料であり、前記接着層において、式(1)で表される前記化合物が前記主材料中に分散していることが好ましい。
【0037】
この構成によれば、従来、電気特性と接着性との両立が困難だった接着層に対して、式(1)で表される化合物の電気特性を反映して、接着層の誘電率および誘電正接を低減しうる。これによって、フイルム全体の誘電率および誘電正接が低減されうる。
【0038】
本発明に係る電子機器用フイルムは、一態様として、金属に対する接着性を有する接着層と、前記接着層を少なくとも部分的に覆う絶縁層と、を備え、前記主材料は、絶縁性を有する材料であり、前記絶縁層において、式(1)で表される前記化合物が前記主材料中に分散していることが好ましい。
【0039】
この構成によれば、絶縁層と接着層とを有する既存の電子機器用フイルムの基本的な設計を変更せず、または最低限の変更にて、絶縁層の電気特性を改善しうる。
【0040】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】電子機器用フイルムの広角X線散乱プロファイルの第一の例である。
【
図2】電子機器用フイルムの広角X線散乱プロファイルの第二の例である。
【
図3】プリント回路基板の構造を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
〔第一の実施形態〕
本発明に係る電子機器用フイルムの第一の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0043】
(式(1)で表される化合物の構造)
本実施形態に係る電子機器用フイルムは、式(1)で表される化合物を含む。
【化3】
【0044】
式(1)において、R1およびR2は、水素原子、および、置換もしくは無置換の炭素数1~30の炭化水素基、からなる群からそれぞれ独立に選択されるいずれかであるか、または、共同してアルキリデン基を形成し、R3およびR4は、水素原子、および、置換もしくは無置換の炭素数1~30の炭化水素基、からなる群からそれぞれ独立に選択されるいずれかであるか、または、共同してアルキリデン基を形成する。したがって、式(1)で表される化合物は、ポリノルボルネン骨格を有する単独重合体または共重合体である。なお、ポリノルボルネン骨格の両末端には重合開始剤に由来する末端官能基が存在するが、式(1)では省略されている。
【0045】
式(1)で表される化合物は、式(1)においてR1、R2、R3、およびR4がいずれも水素原子であるモノマー単位を含むことが好ましい。このモノマー単位は、すなわち無置換ノルボルネン単位である。
【0046】
式(1)で表される化合物は、R2、R3、およびR4がいずれも水素原子であり、R1が、アルキル基、アルケニル基、およびシクロアルキル基からなる群から選択されるいずれかであるモノマー単位、ならびに、式(1)においてR3およびR4がいずれも水素原子であり、R1およびR2が共同してアルキリデン基を形成するモノマー単位、から選択されるいずれかのモノマー単位を含むことが好ましい。これらのモノマー単位は、すなわち置換ノルボルネン単位である。なお、上記のアルキル基、アルケニル基、およびシクロアルキル基、ならびにアルキリデン基は、炭素数20以下であることが好ましい。
【0047】
上記のアルキル基は特に限定されず、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基など、またはより鎖長が長いアルキル基でありうる。ただし、アルキル基の炭素数は、4以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましい。また、アルキル基の炭素数は、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、8以下であることがさらに好ましい。
【0048】
上記のアルケニル基は特に限定されず、アリル基、ビニル基、エチニル基、プロペニル基、ブテニル基など、またはより鎖長が長いアルケニル基でありうる。なお、炭素数が3以上のアルケニル基において、二重結合の位置および数は限定されない。ただし、アルケニル基の炭素数は、2以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましい。また、アルケニル基の炭素数は、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、8以下であることがさらに好ましい。
【0049】
上記のシクロアルキル基は特に限定されず、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基など、またはより炭素数が多いシクロアルキル基でありうる。ただし、シクロアルキル基の炭素数は、4以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましい。また、シクロアルキル基の炭素数は、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、8以下であることがさらに好ましい。
【0050】
上記のアルキリデン基は特に限定されず、エチリデン基、プロピリデン基、ブチリデン基など、またはより鎖長が長いアルキリデン基でありうる。ただし、アルキリデン基の炭素数は、2以上であることが好ましく、6以上であることがより好ましい。また、アルキリデン基の炭素数は、20以下であることが好ましく、10以下であることがより好ましく、8以下であることがさらに好ましい。
【0051】
式(1)で表される化合物は、たとえば以下の式(2)で表される共重合体でありうる。式(2)で表される共重合体は、二種類のモノマー単位を含む。第一のモノマー単位は、上記の無置換ノルボルネン単位であり、第二のモノマー単位は、上記の置換ノルボルネン単位である。式(2)で表される共重合体は、第一のモノマー単位と第二のモノマー単位とをn:mのモル比で含む。
【化4】
【0052】
式(1)で表される化合物が式(2)で表される共重合体である場合、第一のモノマー単位(無置換ノルボルネン単位)と第二のモノマー単位(置換ノルボルネン単位)との比率は特に限定されず、したがって式(2)のnとmとの組合せは任意である。nとmとの組合せは、m/(n+m)が、0.05以上(置換ノルボルネン単位が5モル%以上)であることが好ましく、0.1以上であることがより好ましい。また、nとmとの組合せは、m/(n+m)が、0.99以下であることが好ましく、0.8以下であることがより好ましく、0.5以下であることがさらに好ましく、0.3以下であることが特に好ましい。
【0053】
(式(1)で表される化合物の物性)
本実施形態に係る電子機器用フイルムにおいて、式(1)で表される化合物の、JIS K 7244:1998に従い、昇温速度5℃/分、周波数1Hzの条件の動的粘弾性測定(DMA:Dynamic Mechanical Analysis)により測定したガラス転移点が、260℃以上であることが好ましい。式(1)で表される化合物のガラス転移点が260℃以上であると、電子機器用途において要求される水準の耐熱性を達成しやすい。たとえば、本実施形態に係る電子機器用フイルムが電子基板に用いられる場合、当該基板上で行われるはんだ付けに耐えうる耐熱性が要求される。式(1)で表される化合物のガラス転移点は、300℃以上であることがより好ましい。
【0054】
本実施形態に係る電子機器用フイルムにおいて、式(1)で表される化合物の、引張荷重10mN、温度範囲25~250℃、および昇温速度5℃/分、の条件の熱機械分析(TMA:Thermal Mechanical Analysis)における、50~100℃の傾きとして特定される線膨張係数が、100ppm以下であることが好ましい。式(1)で表される化合物の線膨張係数が100ppm以下であると、電子機器用フイルムの線膨張係数が銅箔の線膨張係数に近い値になるため、銅箔と貼り合わせて用いる用途(たとえばプリント回路基板の基板材料および被覆材料)に好適に用いうる。式(1)で表される化合物の線膨張係数は、40ppm以下であることがより好ましい。また、当該線膨張係数の下限は特に限定されないが、10ppm以上でありうる。なお、熱機械分析は、たとえばTMA7100(日立ハイテクサイエンス社製)を用いて実施されうる。
【0055】
本実施形態に係る電子機器用フイルムにおいて、式(1)で表される化合物の、JIS C 2565-1992に従って周波数10GHzにおいて測定した比誘電率が、3.0以下であることが好ましい。式(1)で表される化合物の比誘電率が3.0以下であると、本実施形態に係る電子機器用フイルムを用いた高周波デバイスにおいて信号の伝送が速くなるので、高速通信用の電子機器に特に好適に使用できる。式(1)で表される化合物の比誘電率は、2.5以下であることがより好ましい。
【0056】
本実施形態に係る電子機器用フイルムにおいて、式(1)で表される化合物の、JIS C 2565-1992に従って周波数10GHzにおいて測定した誘電正接が、0.003以下であることが好ましい。式(1)で表される化合物の誘電正接が0.003以下であると、本実施形態に係る電子機器用フイルムを用いた高周波デバイスにおいて信号の損失が抑制されるので、高速通信用の電子機器に特に好適に使用できる。式(1)で表される化合物の誘電正接は、0.002以下であることがより好ましい。
【0057】
〔電子機器用フイルムを構成する他の成分〕
本実施形態に係る電子機器用フイルムは、式(1)で表される化合物の他の成分を含みうる。各成分の含有量は特に限定されないが、式(1)で表される化合物の含有量が重量比率で40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。また、式(1)で表される化合物の含有量が重量比率で95%以下であることが好ましく、90%以下であることがより好ましい。
【0058】
本実施形態に係る電子機器用フイルムは、比誘電率が10以下であるフィラーを含むことが好ましい。この場合、当該フィラーの含有量は、重量比率で50%以下であることが好ましい。かかるフィラーとしては、低誘電シリカ、アルミナなどが例示されるが、これらに限定されない。
【0059】
本実施形態に係る電子機器用フイルムは、公知の添加剤を含んでいてもよい。かかる添加剤としては、可塑剤、酸化防止剤、難燃剤、安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、撥水材、撥油材などが例示されるが、これらに限定されない。
【0060】
(電子機器用フイルムの物性)
本実施形態に係る電子機器用フイルムについて、SPring8(公益財団法人 高輝度光科学研究センター)に設置された試験装置「BL03XUビームラインX線散乱計測システム」を用い、検出器「Pilatus 1M」、カメラ距離0.3m、X線照射時間5s、積算回数1回として、波長0.1nmのX線をフィルムサンプル表面に対して垂直に入射し、広角X線散乱(WAXS)プロファイルを測定した。測定された広角X線散乱プロファイルについて、散乱ベクトルqが2nm
-1以上8nm
-1以下の第一領域、および10nm
-1以上20nm
-1以下の第二領域の範囲における散乱パターンを評価した。なお、散乱ベクトルqは、以下の式(3)で与えられる。ここで、λは測定に用いるX線の波長であり、2θは散乱角である。
【数1】
【0061】
本実施形態に係る電子機器用フイルムの散乱ベクトルqは、第一領域の範囲に少なくとも一つのピークを有する。なお、本実施形態に係る電子機器用フイルムの散乱ベクトルqは、第一領域および第二領域の各範囲に、各々少なくとも一つずつのピークを有することが好ましい。また、第一領域の範囲に少なくとも二つのピークを有することが好ましい。
【0062】
第一領域のピークは、式(1)で表される化合物の結晶性を有する部分に由来する。したがって、第一領域に現れるピークの位置、強度、および数は、式(1)で表される化合物の結晶構造により変化する。かかる結晶構造は、置換基R1、R2、R3、およびR4の種類、式(1)で表される化合物が共重合体である場合は各モノマー単位のモル比率(たとえば式(2)で表される共重合体における比率m/(n+m))、式(1)で表される化合物の製造方法などの要素に左右されうる。
【0063】
第二領域のピークは、式(1)で表される化合物の結晶性を有さない部分(非晶成分)に由来する。
【0064】
図1および
図2は、本実施形態に係る電子機器用フイルムの広角X線散乱プロファイルの例である。
図1は、第一領域に二つのピークを有する例であり、散乱ベクトルqが3.5付近および7.0付近(第一領域)、ならびに13.5付近(第二領域)にピークが存在する。また、
図2は、第一領域に一つのピークを有する例であり、散乱ベクトルqが7.0付近(第一領域)、および13.5付近(第二領域)にピークが存在する。
【0065】
本実施形態に係る電子機器用フイルムは、引張荷重10mN、温度範囲25~250℃、および昇温速度5℃/分、の条件の熱機械分析における、50~100℃の傾きとして特定される線膨張係数が、40ppm以下であることが好ましい。電子機器用フイルムの線膨張係数が30ppm以下であると、銅箔と貼り合わせて用いる用途(たとえばプリント回路基板の基板材料および被覆材料)に好適に使用できる。電子機器用フイルムの線膨張係数は、25ppm以下であることがより好ましい。また、当該線膨張係数の下限は特に限定されないが、たとえば10ppm以上でありうる。なお、熱機械分析は、たとえばTMA7100(日立ハイテクサイエンス社製)を用いて実施されうる。
【0066】
本実施形態に係る電子機器用フイルムは、JIS C 2565-1992に従って周波数10GHzにおいて測定した比誘電率が、3.0以下であることが好ましい。電子機器用フイルムの比誘電率が3.0以下であると、高速通信用の電子機器に特に好適に使用できる。電子機器用フイルムの比誘電率は、2.5以下であることがより好ましい。式(1)で表される化合物は当分野において従来用いられている物質に比べて比誘電率が低いため、電子機器フイルムとして好適な比誘電率を実現しやすい。
【0067】
本実施形態に係る電子機器用フイルムは、JIS C 2565-1992に従って周波数10GHzにおいて測定した誘電正接が、0.003以下であることが好ましい。電子機器用フイルムの誘電正接が0.003以下であると、高速通信用の電子機器に特に好適に使用できる。電子機器用フイルムの誘電正接は、0.002以下であることがより好ましい。式(1)で表される化合物は当分野において従来用いられている物質に比べて誘電正接が低いため、電子機器フイルムとして好適な誘電正接を実現しやすい。
【0068】
本実施形態に係る電子機器用フイルムは、JIS K 7127:1999に従って測定したヤング率が、0.5GPa以上であることが好ましい。電子機器用フイルムのヤング率が0.5GPa以上であると、電子機器用フイルムの耐屈曲性が高くなるため、プリント基板用途に特に好適に使用できる。電子機器用フイルムのヤング率は、1.0GPa以上であることがより好ましい。なお、電子機器用フイルムのヤング率の上限は特に限定されないが、たとえば10GPa以下でありうる。
【0069】
本実施形態に係る電子機器用フイルムは、JIS K 7127:1999に従って測定した破断伸びが、3%以上であることが好ましい。電子機器用フイルムの破断伸びが3%以上であると、電子機器用フイルムの耐屈曲性が高くなるため、プリント基板用途に特に好適に使用できる。電子機器用フイルムの破断伸びは、5%以上であることがより好ましい。なお、電子機器用フイルムの破断伸びの上限は特に限定されないが、たとえば50%以下でありうる。
【0070】
(電子機器用フイルムの製造方法)
本実施形態に係る電子機器用フイルムを製造する方法としては、公知のフイルム製造方法を適用しうる。
【0071】
第一の例として、本実施形態に係る電子機器用フイルムを、キャスト成形によって製造しうる。この場合、式(1)で表される化合物と、その他の材料(たとえば比誘電率が10以下であるフィラー)とを溶媒中に混合した混合溶液を調製し、当該混合溶液を塗布したのちに塗布面を乾燥させることで、本実施形態に係る電子機器用フイルムが得られる。この製造方法に用いうる溶媒としては、トルエン、デカンなどが例示される。
【0072】
なお、ここで用いられるその他の材料の比誘電率を特定する方法は、当該材料の比誘電率を測定する方法として公知の方法が用いられる。たとえば、その他の材料が電気絶縁用セラミック材料(シリカ、チタニア、ジルコニアなど)である場合は、当該材料の比誘電率は、JIS C 2141-1992に従って特定されうる。
【0073】
第二の例として、本実施形態に係る電子機器用フイルムを、押出成形によって製造しうる。この場合、公知の押出機を用いて式(1)で表される化合物をフイルム状に成形することで、本実施形態に係る電子機器用フイルムが得られる。このとき、式(1)で表される化合物を融点以上に加熱する必要があり、かかる加熱温度はたとえば280~350℃でありうる。なお、フィラーなどの材料は、押出機において、溶融状態の式(1)で表される化合物に添加されうる。
【0074】
(電子機器用フイルムの用途)
本実施形態に係る電子機器用フイルムは、たとえば、当該電子機器用フイルムを含むプリント回路基板1に使用されうる。
図3にはプリント回路基板1の構造を示す概略断面図を示している。プリント回路基板1は、基板材料2、銅箔3、および被覆材料4を有し、基板材料2および被覆材料4が本実施形態に係る電子機器用フイルムにより構成されている。
【0075】
プリント回路基板1を製造するときは、基板材料2(電子機器用フイルム)、銅箔3、および被覆材料4(電子機器用フイルム)をこの順で重ねた状態で熱プレスする。これによって、電子機器用フイルム(基板材料2および被覆材料4)と銅箔3とが熱融着する。
【0076】
また、電子機器用フイルム(基板材料2および被覆材料4)と銅箔3との間に接着層を介在させてもよい。かかる接着層としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、変性ポリイミド樹脂などを用いうる。接着層を設ける場合、熱プレスの温度を下げるなど、電子機器用フイルムと銅箔3とを接着する工程の条件を穏やかにする変更が許容される。
【0077】
なお、基板材料2および被覆材料4の一方のみが本実施形態に係る電子機器用フイルムにより構成されていてもよい。この場合、基板材料2および被覆材料4の他方は、プリント回路基板用材料として公知の従来の材料が使用されうる。
【0078】
〔第二の実施形態〕
次に、本発明に係る電子機器用フイルムの第二の実施形態について説明する。なお、第一の実施形態と共通する事項については、説明を簡略化または省略する。
【0079】
本実施形態に係る電子機器用フイルムは、式(1)で表される化合物を含む。この点について、第一の実施形態と同様である。
【化5】
【0080】
なお、置換基R1、R2、R3、およびR4に係る諸条件、式(1)で表される化合物が共重合体である場合における各モノマー単位のモル比率、ならびに式(1)で表される化合物の好ましい物性について、第一の実施形態と同様である。
【0081】
本実施形態に係る電子機器用フイルムは、フイルム状に形成された主材料と、式(1)で表される化合物と、を含み、当該化合物は主材料中に分散している。
【0082】
この構成により、本実施形態に係る電子機器用フイルムは、主材料に起因する物性(機械特性、耐熱性、接着性、絶縁性など)とともに、式(1)で表される化合物の添加によって主材料より改善された電気的特性(主材料より低い誘電率および誘電正接)を発現する。電子機器用フイルムとしての物性は、第一の実施形態と同様である。
【0083】
式(1)で表される化合物は、たとえば、式(1)で表される化合物を含む粒子として、主材料中に分散されうる。この場合、当該粒子の粒子径は、たとえば0.05~5μmでありうる。かかる粒子は、たとえば溶融法などによって製造されうる。
【0084】
本実施形態に係る電子機器用フイルムは、金属に対する接着性を有する接着層と、当該接着層を少なくとも部分的に覆う絶縁層と、を備えることが好ましい。
【0085】
一実施形態では、主材料として、たとえばエポキシ樹脂、ポリイミド、変性ポリイミドなどの、金属に対する接着性を有する材料を用いうる。この場合、主材料を含む層は、接着層として機能する。すなわち、接着層において式(1)で表される化合物が主材料中に分散している。
【0086】
一実施形態では、主材料として、たとえばポリイミド、変性ポリイミド、液晶ポリマーなどの、絶縁性を有する材料を用いうる。この場合、主材料を含む層は、絶縁層として機能する。すなわち、絶縁層において式(1)で表される化合物が主材料中に分散している。なお、絶縁性を有する材料とは、電気絶縁材料として通常用いられる材料である限りにおいて特に限定されないが、たとえば、JIS K6911-1995の方法により測定した体積抵抗率が1×1013Ω・m以上の材料でありうる。
【0087】
主材料をフイルム状に形成する方法は特に限定されず、たとえばキャスト法、溶融押出法などの方法でありうる。ただし、主材料中に式(1)で表される化合物を含む粒子、またはワニスを分散させたのちに、フイルム状に形成することが好ましい。
【0088】
本実施形態に係る電子機器用フイルムは、たとえば、当該電子機器用フイルムを含むプリント回路基板に使用されうる。
【0089】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係る電子機器用フイルムのその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0090】
上記の実施形態では、本実施形態に係る電子機器用フイルムを、プリント回路基板1に使用する例について説明した。しかし、本発明に係る電子機器用フイルムの用途はプリント回路基板に限定されず、たとえば、カバーレイフィルム、ボンディングシートなどの電子機器周辺部材でありうる。
【0091】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【実施例0092】
以下では、実施例を示して本発明をさらに説明する。ただし、以下の実施例は本発明を限定しない。なお、各実施例において特記していない事項は、上記の実施形態の通りである。
【0093】
〔実施例1〕
式(1)で表される化合物として、R1がn-ヘキシル基であり、R2、R3、およびR4がいずれも水素原子であるモノマー単位の単独重合体を含む電子機器用フイルムを作成した。当該電子機器用フイルムの広角X線散乱プロファイルは、第一領域に二つのピーク(q=3.9,6.9)を有し、第二領域に一つのピーク(q=13.6)を有する。
【0094】
〔実施例2〕
式(1)で表される化合物として、R1がn-ヘキシル基であり、R2が水素原子であり、m/(n+m)が0.2である式(2)で表される共重合体を含む電子機器用フイルムを作成した。当該電子機器用フイルムの広角X線散乱プロファイルは、第一領域に一つのピーク(q=7.0)を有し、第二領域に一つのピーク(q=13.4)を有する。
【0095】
〔実施例3〕
式(1)で表される化合物として、R1がn-ヘキシル基であり、R2が水素原子であり、m/(n+m)が0.1である式(2)で表される共重合体を含む電子機器用フイルムを作成した。当該電子機器用フイルムの広角X線散乱プロファイルは、第一領域に一つのピーク(q=7.2)を有し、第二領域に一つのピーク(q=13.4)を有する。
【0096】
〔実施例4〕
式(1)で表される化合物として、R1がn-ヘキシル基であり、R2が水素原子であり、m/(n+m)が0.05である式(2)で表される共重合体を含む電子機器用フイルムを作成した。当該電子機器用フイルムの広角X線散乱プロファイルは、第一領域に一つのピーク(q=7.4)を有し、第二領域に一つのピーク(q=13.4)を有する。
【0097】
〔実施例5〕
式(1)で表される化合物として、R1がn-ブチル基であり、R2が水素原子であり、m/(n+m)が0.2である式(2)で表される共重合体を含む電子機器用フイルムを作成した。当該電子機器用フイルムの広角X線散乱プロファイルは、第一領域に一つのピーク(q=7.0)を有し、第二領域に一つのピーク(q=13.5)を有する。
【0098】
〔実施例6〕
式(1)で表される化合物として、R1がn-ブチル基であり、R2が水素原子であり、m/(n+m)が0.05である式(2)で表される共重合体を含む電子機器用フイルムを作成した。当該電子機器用フイルムの広角X線散乱プロファイルは、第一領域に一つのピーク(q=7.2)を有し、第二領域に一つのピーク(q=13.5)を有する。
【0099】
〔実施例7〕
式(1)で表される化合物として、R1がビニル基であり、R2が水素原子であり、m/(n+m)が0.1である式(2)で表される共重合体を含む電子機器用フイルムを作成した。当該電子機器用フイルムの広角X線散乱プロファイルは、第一領域に一つのピーク(q=7.3)を有し、第二領域に一つのピーク(q=13.4)を有する。
【0100】
〔実施例8〕
式(1)で表される化合物として、R1がシクロヘキシル基であり、R2が水素原子であり、m/(n+m)が0.1である式(2)で表される共重合体を含む電子機器用フイルムを作成した。当該電子機器用フイルムの広角X線散乱プロファイルは、第一領域に一つのピーク(q=7.2)を有し、第二領域に一つのピーク(q=13.4)を有する。
【0101】
〔実施例9〕
式(1)で表される化合物として、R1およびR2が共同してエチリデン基を形成し、m/(n+m)が0.1である式(2)で表される共重合体を含む電子機器用フイルムを作成した。当該電子機器用フイルムの広角X線散乱プロファイルは、第一領域に一つのピーク(q=7.3)を有し、第二領域に一つのピーク(q=13.4)を有する。
【0102】
〔各実施例の評価〕
実施例1~9の電子機器用フイルムについて、ガラス転移点、線膨張係数、比誘電率(10GHz)、および誘電正接(10GHz)を測定した。評価結果を表1および表2に示す。いずれの実施例も、電子機器用フイルムとして良好な耐熱性および電気特性を発現しうる物性を示した。
【0103】
【0104】