(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185780
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】膝継手、義足、回転抵抗モジュール
(51)【国際特許分類】
A61F 2/64 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
A61F2/64
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093611
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】奥田 正彦
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA07
4C097BB03
4C097BB06
4C097CC16
4C097TA06
4C097TB05
(57)【要約】
【課題】急激な膝折れを防止できる膝継手を提供する。
【解決手段】膝継手20は、大腿部側に設けられる大腿接続部22と、大腿接続部22と連結され膝軸23周りに回転可能に設けられる下腿部21と、下腿部21に対して大腿接続部22のなす膝角度θが、所定のロック角度θ
Lを超えないように大腿接続部22と下腿部21の相対的な回転を制限する膝角度制限部24と、膝角度θがロック角度θ
L以下の場合に膝軸23周りの回転に対して抵抗を付与する回転抵抗部が収容される収容空間231と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大腿部側に設けられる大腿接続部と、
前記大腿接続部と連結され膝軸周りに回転可能に設けられる下腿部と、
前記下腿部に対して前記大腿接続部のなす膝角度が、所定のロック角度を超えないように前記大腿接続部と前記下腿部の相対的な回転を制限する膝角度制限部と、
前記膝角度が前記ロック角度以下の場合に前記回転に対して抵抗を付与する回転抵抗部と、
を備える膝継手。
【請求項2】
前記回転抵抗部は、前記膝角度が前記ロック角度以下の全角度範囲において前記回転に対して抵抗を付与する、請求項1に記載の膝継手。
【請求項3】
前記回転抵抗部は、油圧によって前記回転に対して抵抗を付与する、請求項2に記載の膝継手。
【請求項4】
前記回転抵抗部は、粘性流体の粘性によって前記回転に対して抵抗を付与する、請求項2に記載の膝継手。
【請求項5】
前記回転抵抗部が前記回転に対して付与する抵抗の大きさは前記膝角度によらず一定である、請求項1から4のいずれかに記載の膝継手。
【請求項6】
前記回転抵抗部は前記回転に対して付与する抵抗の大きさを変化させる、
請求項1から4のいずれかに記載の膝継手。
【請求項7】
前記回転抵抗部は前記膝角度の増加に応じて前記回転に対して付与する抵抗を増加させる、請求項6に記載の膝継手。
【請求項8】
前記回転抵抗部は前記膝角度の増加に応じて前記回転に対して付与する抵抗を減少させる、請求項6に記載の膝継手。
【請求項9】
前記膝角度の角速度を検知する角速度検知部を更に備え、
前記回転抵抗部は、前記角速度検知部で検知された角速度に応じて、前記回転に対して付与する抵抗を変化させる、
請求項1から8のいずれかに記載の膝継手。
【請求項10】
前記回転抵抗部は、前記角速度の増加に応じて前記回転に対して付与する抵抗を増加させる、請求項9に記載の膝継手。
【請求項11】
前記回転抵抗部は、前記角速度の増加に応じて前記回転に対して付与する抵抗を減少させる、請求項9に記載の膝継手。
【請求項12】
前記大腿接続部側に一端が設けられた第1リンクおよび前記下腿部側に一端が設けられた第2リンクの他端同士が回転可能に連結されたリンク機構を更に備え、
前記膝角度制限部は、少なくとも前記膝角度が前記ロック角度の時に前記第1リンクおよび前記第2リンクの少なくともいずれかが接触する制止部材を備える、
請求項1から11のいずれかに記載の膝継手。
【請求項13】
前記制止部材は、少なくとも前記膝角度が前記ロック角度の時に前記第1リンクおよび前記第2リンクの連結部が接触する、請求項12に記載の膝継手。
【請求項14】
前記制止部材は弾性を備える弾性部材である、請求項12または13に記載の膝継手。
【請求項15】
前記制止部材の位置を変更する位置変更部を更に備える、請求項12から14のいずれかに記載の膝継手。
【請求項16】
前記第2リンクの一端は、前記下腿部に固定され、
前記第1リンクの一端は、前記大腿接続部に対して移動可能であり、前記膝角度が前記ロック角度の時に当該大腿接続部と接触して制止される、
請求項12から15のいずれかに記載の膝継手。
【請求項17】
一端が前記第1リンクに接続され、他端が前記第2リンクに接続され、前記第1リンクおよび前記第2リンクを前記膝角度が小さくなる方向に付勢するばねを更に備える、請求項12から16のいずれかに記載の膝継手。
【請求項18】
前記膝角度制限部は、
前記大腿接続部に設けられ、前記大腿接続部と一体的に回転する回転部材と、
前記下腿部に設けられ、前記膝角度が前記ロック角度の時に前記回転部材が接触する制止部材と、
を備える請求項1から11のいずれかに記載の膝継手。
【請求項19】
前記膝角度制限部が前記回転を制限するロック状態と、前記膝角度制限部が前記回転を制限しない非ロック状態を機械的に切り替える機械的切替部を更に備える、請求項1から18のいずれかに記載の膝継手。
【請求項20】
前記膝角度制限部が前記回転を制限するロック状態と、前記膝角度制限部が前記回転を制限しない非ロック状態を電気的に切り替える電気的切替部を更に備える、請求項1から18のいずれかに記載の膝継手。
【請求項21】
大腿部と、
前記大腿部側に設けられる大腿接続部と、
前記大腿接続部と連結され膝軸周りに回転可能に設けられる下腿部と、
前記下腿部に対して前記大腿接続部のなす膝角度が、所定のロック角度を超えないように前記大腿接続部と前記下腿部の相対的な回転を制限する膝角度制限部と、
前記膝角度が前記ロック角度以下の場合に前記回転に対して抵抗を付与する回転抵抗部と、
を備える義足。
【請求項22】
大腿部側に設けられる大腿接続部と、前記大腿接続部と連結され膝軸周りに回転可能に設けられる下腿部と、前記下腿部に対して前記大腿接続部のなす膝角度が、所定のロック角度を超えないように前記大腿接続部と前記下腿部の相対的な回転を制限する膝角度制限部と、を備える膝継手に着脱可能であり、
前記膝角度が前記ロック角度以下の場合に前記回転に対して抵抗を付与する、
回転抵抗モジュール。
【請求項23】
大腿部側に設けられる大腿接続部と、
前記大腿接続部と連結され膝軸周りに回転可能に設けられる下腿部と、
前記大腿接続部側に一端が設けられた第1リンクおよび前記下腿部側に一端が設けられた第2リンクの他端同士が回転可能に連結されたリンク機構と、
前記下腿部に対して前記大腿接続部のなす膝角度が所定のロック角度を超えないように前記大腿接続部と前記下腿部の相対的な回転を制限する膝角度制限部であって、少なくとも前記膝角度が前記ロック角度の時に前記第1リンクおよび前記第2リンクの少なくともいずれかが接触する弾性部材を備える膝角度制限部と、
を備える膝継手。
【請求項24】
前記弾性部材の位置を変更する位置変更部を更に備える、請求項23に記載の膝継手。
【請求項25】
前記弾性部材を交換する弾性部材交換部を更に備える、請求項23または24に記載の膝継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は膝継手に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、怪我や病気で足を失った人が装着する膝継手または義足として、大腿部と下腿部のなす膝角度が所定のロック角度を超えないようにロックするものが開示されている。ロック状態では膝継手の装着者の意図しないロック角度を超える膝折れを防止でき、非ロック状態ではロック角度を超えて膝を大きく曲げる着座動作等が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-75382号公報
【特許文献2】特開2004-167106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロック状態では膝角度がロック角度を超えないように制限されるが、膝角度がロック角度以下の状態では膝継手は自由に屈曲できる。このため、例えば大腿部と下腿部が一直線上にある膝角度が0度の状態からロック角度までの急激な膝折れが起こると、膝継手の装着者の身体のバランスが崩れて転倒を招く恐れがあった。また、転倒に至らずともロック角度までの急激な膝折れによって膝継手の装着者に大きな不安を与える恐れがあった。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、急激な膝折れを防止できる膝継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の膝継手は、大腿部側に設けられる大腿接続部と、大腿接続部と連結され膝軸周りに回転可能に設けられる下腿部と、下腿部に対して大腿接続部のなす膝角度が、所定のロック角度を超えないように大腿接続部と下腿部の相対的な回転を制限する膝角度制限部と、膝角度がロック角度以下の場合に回転に対して抵抗を付与する回転抵抗部と、を備える。
【0007】
この態様によれば、回転抵抗部が付与する抵抗によって急激な膝折れを防止できる。
【0008】
本発明の別の態様は、義足である。この義足は、大腿部と、大腿部側に設けられる大腿接続部と、大腿接続部と連結され膝軸周りに回転可能に設けられる下腿部と、下腿部に対して大腿接続部のなす膝角度が、所定のロック角度を超えないように大腿接続部と下腿部の相対的な回転を制限する膝角度制限部と、膝角度がロック角度以下の場合に回転に対して抵抗を付与する回転抵抗部と、を備える。
【0009】
本発明の更に別の態様は、回転抵抗モジュールである。この回転抵抗モジュールは、大腿部側に設けられる大腿接続部と、大腿接続部と連結され膝軸周りに回転可能に設けられる下腿部と、下腿部に対して大腿接続部のなす膝角度が、所定のロック角度を超えないように大腿接続部と下腿部の相対的な回転を制限する膝角度制限部と、を備える膝継手に着脱可能であり、膝角度がロック角度以下の場合に回転に対して抵抗を付与する。
【0010】
本発明の更に別の態様は、膝継手である。この膝継手は、大腿部側に設けられる大腿接続部と、大腿接続部と連結され膝軸周りに回転可能に設けられる下腿部と、大腿接続部側に一端が設けられた第1リンクおよび下腿部側に一端が設けられた第2リンクの他端同士が回転可能に連結されたリンク機構と、下腿部に対して大腿接続部のなす膝角度が所定のロック角度を超えないように大腿接続部と下腿部の相対的な回転を制限する膝角度制限部であって、少なくとも膝角度がロック角度の時に第1リンクおよび第2リンクの少なくともいずれかが接触する弾性部材を備える膝角度制限部と、を備える。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、急激な膝折れを防止できる膝継手を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】電子制御式の受動タイプの膝継手および義足の概略的な構成を示す。
【
図2】電子制御式の受動タイプの膝継手および義足の概略的な構成を示す。
【
図3】義足の装着者の歩行フェーズに応じた膝角度θ、もも角度Ψ、すね角度Φの遷移を簡略的に示す。
【
図5】膝継手の屈伸動作時の油の流れを示す図である。
【
図6】機械式の受動タイプの膝継手の第1の構成例を示す。
【
図7】第1の構成例の機械式の受動タイプの膝継手の屈伸動作を示す。
【
図8】機械式の受動タイプの膝継手の第2の構成例を示す。
【
図9】第2の構成例の機械式の受動タイプの膝継手の屈伸動作を示す。
【
図10】非ロック状態における膝軸の回転動作を示す。
【
図11】機械式の受動タイプの膝継手の第3の構成例を示す。
【
図12】第3の構成例の機械式の受動タイプの膝継手の屈伸動作を示す。
【
図13】弾性部材の位置によって異なるロック角度を示す。
【
図14】非ロック状態における大腿接続部の回転動作を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
義足には様々なタイプが存在し、能動タイプと受動タイプに大別される。受動タイプは更に電子制御式のものと機械式のものに分けられる。能動タイプでは、モータ等のアクチュエータによって膝や足首等の関節が能動的に屈伸駆動される。電子制御式の受動タイプでは、電子制御される油圧シリンダ等によって装着者の歩行中等の屈伸動作に応じて関節の抵抗が制御される。機械式の受動タイプでは、特許文献1のような機械的な機構によって膝角度のロック等が行われる。本発明はいずれのタイプの義足にも適用可能であるが、最初に電子制御式の受動タイプの義足について説明する。
【0015】
図1および
図2は、電子制御式の受動タイプの膝継手20および義足10の概略的な構成を示す。義足10は、大腿部としてのプラスチック製のソケット11と、ソケット11が接続される大腿接続部22と、大腿接続部22と連結され膝軸23周りに回転可能に設けられる下腿部21と、下腿部21の下端に連結される足部12を備える。ソケット11が接続される大腿接続部22と下腿部21は、その連結部に設けられる
図1の紙面に垂直な膝軸23の周りに相対的に回転することで、膝関節に相当する膝継手20を屈伸させる。また、下腿部21と足部12は弾性部材を介して連結され、非接地時や直立時等の地面からの荷重が小さい時の相対姿勢が弾性によって一定に保たれる。また、歩行時等の地面からの荷重が大きい時は弾性部材が弾性変形して地面を蹴り出す推進力を生む。
【0016】
膝継手20は、高強度のフレームによって形成される下腿部21と、大腿部としてのソケット11に接続されると共に下腿部21に対して膝軸23の周りに回転可能に連結される大腿接続部22と、膝軸23周りの回転動作すなわち膝継手20の屈伸動作を制限または補助するシリンダ30と、シリンダ30を駆動する駆動機構40を備える。
【0017】
シリンダ30の伸縮量と膝継手20の膝軸23周りの回転角度である膝角度は一対一に対応しており、シリンダ30の伸縮量を測定して膝継手20の膝角度を検出する膝角度検知部としての膝角度センサ60が、シリンダ30および大腿接続部22の近傍に設けられる。膝角度センサ60で検出された膝角度は制御部50で利用される。膝角度センサ60は、シリンダ30の伸縮量を測定可能な任意のセンサで構成できるが、例えば、シリンダ30の伸縮に伴って移動するピストンロッド34に埋設された磁石の位置を検知可能なホール素子によって構成できる。膝角度は大腿部としてのソケット11の軸と下腿部21の軸がなす角度である。例えば、
図1に示されるように、義足10の装着者が直立しており、ソケット11の軸と下腿部21の軸が一直線上にある場合の膝角度は0度である。また、義足10の装着者が着席し、下腿部21の軸が
図1の鉛直方向のままでソケット11の軸が水平方向に変わった場合の膝角度は90度になる。
【0018】
下腿部21に設けられる慣性センサ75は、下腿部21の運動を司る3軸の並進方向および/または回転方向の速度(角速度)および/または加速度(角加速度)を測定することで、下腿部21の姿勢や運動を検知する。慣性センサ75で検知される下腿部21の姿勢のうち、下腿部21の軸が鉛直線に対してなす傾斜角度であるすね角度は、膝継手20の制御において特に有用である。慣性センサ75は下腿部21の任意の場所に設置できるが、例えば、シリンダ30の外周に設置される制御基板上に制御部50と共に実装される。
【0019】
膝角度センサ60で取得される膝角度と、慣性センサ75で取得されるすね角度から、大腿部としてのソケット11の軸が鉛直線に対してなす傾斜角度であるもも角度を演算できる。すなわち、すね角度は鉛直線からの下腿部21の傾きであり、膝角度は下腿部21の軸からのソケット11の軸の傾きであるため、両者を合算することで鉛直線からのソケット11の軸の傾きであるもも角度を演算できる。なお、ソケット11または大腿接続部22に慣性センサを設けることで、もも角度を直接的に測定する構成としてもよい。
【0020】
図3は、義足10の装着者の歩行フェーズ(A)~(G)に応じた膝角度θ、もも角度Ψ、すね角度Φの遷移を簡略的に示す。歩行フェーズ(A)は初期接地(IC:Initial Contactとも呼ばれる)であり、義足10が接地する。歩行フェーズ(B)は荷重応答期(LR:Loading Responseとも呼ばれる)であり、接地した義足10によって装着者の体重が支えられる。歩行フェーズ(C)は立脚中期(MSt:Mid Stanceとも呼ばれる)~立脚終期(TSt:Terminal Stanceとも呼ばれる)であり、義足10が体重を支えた状態で装着者の重心が義足10より前方に移動する。歩行フェーズ(D)は前遊脚期(PSw:Pre-Swingとも呼ばれる)であり、続く遊脚相に遷移するために義足10で地面を蹴り出す。歩行フェーズ(E)、(F)、(G)はそれぞれ遊脚初期(ISw:Initial Swingとも呼ばれる)、遊脚中期(MSw:Mid Swingとも呼ばれる)、遊脚終期(TSw:Terminal Swingとも呼ばれる)であり、地面を離れた義足10が後方から前方に振り出される。
【0021】
もも角度Ψは鉛直線を基準としてソケット11が膝軸23周りに前方に傾斜した時を正(+Ψと図示する)とし後方に傾斜した時を負(-Ψと図示する)とする。すね角度Φは鉛直線を基準として下腿部21が膝軸23周りに前方に傾斜した時を正(+Φと図示する)とし後方に傾斜した時を負(-Φと図示する)とする。膝角度θはソケット11の軸を基準として下腿部21が膝軸周りに後方に傾斜した時を正(+θと図示する)とする。以上のように定義された膝角度θ、もも角度Ψ、すね角度Φは、常に「θ+Ψ+Φ=0」の関係式を満たす。
【0022】
図示されるように、初期接地(A)では膝角度θは略零/もも角度Ψは負/すね角度Φは正であり、荷重応答期(B)では膝角度θは略零/もも角度Ψは負/すね角度Φは正であり、立脚中・終期(C)では膝角度θは略零/もも角度Ψは正/すね角度Φは負であり、前遊脚期(D)では膝角度θは正/もも角度Ψは正/すね角度Φは負であり、遊脚初期(E)では膝角度θは正/もも角度Ψは負/すね角度Φは負であり、遊脚中期(F)では膝角度θは正/もも角度Ψは負/すね角度Φは負であり、遊脚終期(G)では膝角度θは正/もも角度Ψは負/すね角度Φは正である。
【0023】
膝角度θに着目すると、接地した義足10が装着者の体重を支える立脚相(A)~(C)では膝角度θは略零であり、立脚相(A)~(C)と遊脚相(E)~(G)の間の前遊脚期(D)で膝角度θは正の値を持ち、義足10が地面を離れて振り出される遊脚相(E)~(G)では遊脚中期(F)で極大値を取るように膝角度θは単調に増減する。
【0024】
このような膝角度θの制御すなわち膝継手20の屈曲制御は、制御部50が駆動機構40およびシリンダ30を介して行う。すなわち、立脚相(A)~(C)では、装着者の体重で膝継手20が屈曲しないように、シリンダ30の油圧抵抗を高くして膝軸23周りの回転を制限することで膝角度θを略零に維持する。前遊脚期(D)では、続く遊脚相(E)~(G)への準備として膝継手20が屈曲を始められるように、シリンダ30の油圧抵抗を徐々に低くして膝軸23周りの回転を許容することで膝角度θが正の値になる。遊脚相(E)~(G)では、地面を離れて振り出される義足10が地面に接触しないように、シリンダ30の油圧抵抗を低く維持して膝継手20の屈曲を補助する。
【0025】
図1および
図2に戻って義足10の説明を続ける。膝角度センサ60および慣性センサ75以外のセンサとして、下腿部21と足部12の間にかかる荷重を検出する荷重センサ70を下腿部21の下端に設けてもよい。荷重センサ70で検出される荷重の大きさや方向に基づいて義足10の装着者の歩行フェーズを認識できるため、膝角度センサ60および慣性センサ75に加えて荷重センサ70を膝継手20の屈曲制御に利用してもよい。一方、膝継手20の屈曲制御は膝角度センサ60および慣性センサ75だけでも行えるため、荷重センサ70を省略して膝継手20を安価に構成してもよい。また、シリンダ30内の油の温度を測定する温度センサ80がシリンダ30の外壁または内壁に取り付けられる。これらの各センサの測定情報は制御部50で利用される。
【0026】
大腿接続部22または下腿部21にはバイブレータ85が設けられる。バイブレータ85は、義足10を装着した使用者に対して振動による通知や注意喚起を行うものであり、制御部50により制御される。
【0027】
制御部50は、膝角度センサ60、荷重センサ70、慣性センサ75、温度センサ80等の各種センサの測定情報に基づいて駆動機構40を制御して、シリンダ30の伸縮動作に対する抵抗すなわち膝継手20の屈伸動作時の膝軸23の回転抵抗を制御する。制御部50には膝継手20の各部に電力を供給するバッテリー55が接続される。なお、
図2において駆動機構40、制御部50、バッテリー55は膝継手20の外部に示されるが、実際は膝継手20の構成部品として下腿部21の内部に設けられる。
【0028】
シリンダ30は、油を作動流体として抗力を発生することで膝継手20の屈伸動作を制限または補助する油圧シリンダである。シリンダ30は、ソケット11と下腿部21を回動可能に連結する膝軸23の近傍に設けられた上部支持点31と、下腿部21の一部に連結された下部支持点32によって支持され、両支持点の間で伸縮可能である。シリンダ長が小さくなる縮小工程では膝継手20が膝軸23周りで
図1の反時計回り方向に回転する屈曲動作が行われ、シリンダ長が大きくなる伸長工程では膝継手20が膝軸23周りで
図1の時計回り方向に回転する伸展動作が行われる。ここで、シリンダ長とは、シリンダ30の上部支持点31と下部支持点32との間の長さをいう。
【0029】
続いて、
図4を参照してシリンダ30および駆動機構40について説明する。シリンダ30は、シリンダチューブ33と、シリンダチューブ33の一端側(
図4の右端側)から挿入され、シリンダチューブ33の長手方向(
図4の左右方向)に沿って移動可能なピストンロッド34と、シリンダチューブ33内でピストンロッド34に固定され、シリンダチューブ33の内壁に沿って長手方向に摺動可能なピストン35を有する。シリンダチューブ33の内部は、ピストン35によって一端側(
図4の右端側)の第1キャビティ36と、他端側(
図4の左端側)の第2キャビティ37に分割される。第1キャビティ36および第2キャビティ37には、作動流体である油が充填される。
【0030】
駆動機構40は、油圧によりシリンダ30を伸縮駆動する油圧駆動機構である。駆動機構40は、シリンダ30にそれぞれ接続された伸展側油圧回路41と屈曲側油圧回路42を有する。伸展側油圧回路41および屈曲側油圧回路42は、それぞれ、一端側で第1キャビティ36と連通し、他端側で第2キャビティ37と連通する。伸展側油圧回路41は、膝軸23の回転抵抗を発生させる油の流路を開閉可能なバルブとしての伸展側バルブ43と、伸展側逆止弁44を有する。伸展側バルブ43を開状態とすることで油が伸展側油圧回路41を流通できるが、伸展側逆止弁44の作用により、油は第1キャビティ36から第2キャビティ37に向かう方向のみに流れ、その逆方向には流れない。
【0031】
屈曲側油圧回路42は、膝軸23の回転抵抗を発生させる油の流路を開閉可能なバルブとしての屈曲側バルブ45と、屈曲側逆止弁46を有する。屈曲側バルブ45を開状態とすることで油が屈曲側油圧回路42を流通できるが、屈曲側逆止弁46の作用により、油は第2キャビティ37から第1キャビティ36に向かう方向のみに流れ、その逆方向には流れない。伸展側バルブ43および屈曲側バルブ45は、制御部50によって開度が個別に制御される。各バルブの開度は全開(開度最高)と全閉(開度最低)の間で任意の値を取りうる。各バルブの全閉時は油の流れが遮断されて油圧抵抗が最大となる。また、各バルブの開度が全開に向けて高くなるにつれて、各バルブ内で油の流通可能な断面積が大きくなるため、油の流量が増加して油圧抵抗が減少する。
【0032】
図5(a)は、膝継手20の屈曲動作時の油の流れを示す。屈曲はシリンダ長が小さくなる縮小工程であり、ピストンロッド34が
図5の左方に縮退し、ピストン35が引込側に移動する。ピストン35の移動によって第2キャビティ37から押し出される油は、伸展側逆止弁44を有する伸展側油圧回路41を流通できないため、屈曲側油圧回路42を流通して第1キャビティ36に流入する。この時、屈曲側バルブ45の開度を低くすれば、油が屈曲側油圧回路42を流れにくくすることができるため、膝継手20の屈曲動作を制限できる。このように、制御部50、駆動機構40、シリンダ30は、膝継手20の屈曲動作時の膝軸23の回転に対して油圧による抵抗を付与する本発明の回転抵抗部を構成する。
【0033】
図5(b)は、膝継手20の伸展動作時の油の流れを示す。伸展はシリンダ長が大きくなる伸長工程であり、ピストンロッド34が
図5の右方に伸長し、ピストン35が押出側に移動する。ピストン35の移動によって第1キャビティ36から押し出される油は、屈曲側逆止弁46を有する屈曲側油圧回路42を流通できないため、伸展側油圧回路41を流通して第2キャビティ37に流入する。この時、伸展側バルブ43の開度を低くすれば、油が伸展側油圧回路41を流れにくくすることができるため、膝継手20の伸展動作を制限できる。このように、制御部50、駆動機構40、シリンダ30は、膝継手20の伸展動作時の膝軸23の回転に対して油圧による抵抗を付与する本発明の回転抵抗部を構成する。
【0034】
図2に戻り、義足10に設けられる各種のセンサについて補足する。
【0035】
膝角度センサ60はピストンロッド34の伸縮位置を測定する。例えば、ピストンロッド34に取り付けられた磁石の位置を、シリンダチューブ33内に設けられた磁気センサで測定する。ピストンロッド34の伸縮位置と膝継手20の膝角度または膝軸23の回転角度は一対一に対応しているため、膝角度センサ60は検出したピストンロッド34の伸縮位置を膝継手20の膝角度に変換できる。なお、ピストンロッド34の伸縮位置を膝継手20の膝角度に変換する演算は制御部50で行ってもよい。この場合の膝角度センサ60は、ピストンロッド34の伸縮位置を測定して制御部50に提供する。
【0036】
慣性センサ75は測定した各軸の速度および/または加速度に基づいて下腿部21の姿勢や運動を検知する。例えば、慣性センサ75が測定した速度/加速度の変化から義足10の装着者の歩行フェーズを認識でき、また慣性センサ75の測定値を積分することで歩行中の下腿部21の位置を追跡できるため、一歩当たりの変位量である歩幅や一歩当たりの歩行速度を求めることができる。なお、慣性センサ75の測定値を積分して位置を求める等の演算は制御部50が行う。
【0037】
荷重センサ70は、例えばひずみセンサにより構成され、下腿部21と足部12の間の足首部に設けられる。足首部に加わる荷重によってひずみセンサを構成する物体にひずみが生じるため、それを検出することで荷重を測定できる。このような荷重センサを大腿接続部22に設ければ膝関節に加わる荷重も測定できる。なお、ひずみセンサが検出したひずみを荷重に変換する演算は制御部50で行ってもよい。この場合の荷重センサ70は、検出したひずみを制御部50に提供する。また、制御部50は、荷重センサ70が測定した荷重の大きさや方向の変化から義足10の装着者の歩行フェーズを認識できるため、歩幅や歩行速度を演算によって求めることができる。
【0038】
温度センサ80は、シリンダ30の作動流体である油の温度を測定する。油の物性によって温度変化に応じて油圧抵抗が変化するため、制御部50は温度センサ80の測定温度に応じて駆動機構40を制御して所望の油圧抵抗を実現する。具体的には、油圧抵抗の各値を実現するための駆動機構40への制御データセットを温度毎に作成して制御部50に格納する。制御部50は温度センサ80の測定温度に対応する制御データセットを選択して制御に用いる。
【0039】
以上のような電子制御式の受動タイプの膝継手20において、下腿部21に対して大腿接続部22のなす膝角度θが、所定のロック角度を超えないように大腿接続部22と下腿部21の相対的な回転を制限する膝角度制限部を構成できる。
【0040】
具体的には、
図5(a)で示した膝継手20の屈曲動作時において、膝角度センサ60によって測定される膝角度θが所定のロック角度θ
Lまで増加した場合、制御部50が屈曲側バルブ45を全閉(開度最低)の状態にする。これによって屈曲側油圧回路42の油の流れが遮断されるため、ロック角度θ
Lを超える膝軸23の回転が制限される。このロック状態では膝継手20の装着者の意図しないロック角度θ
Lを超える膝折れを防止できる。なお、ロック角度θ
Lの大きさは任意に設定できるが、
図3に示したような通常の歩行を阻害しないように、典型的には10度~40度の範囲で設定するのが好ましい。
【0041】
一方、膝をロック角度θ
Lより大きく曲げる必要がある着席時等では、膝継手20の装着者の操作や慣性センサ75等の測定データに基づいて着席動作等を検知した制御部50が、膝角度θがロック角度θ
Lまで増加した場合であっても屈曲側バルブ45の開状態を維持する。これによって屈曲側油圧回路42を油が流通できるため、ロック角度θ
Lを超える膝軸23の回転が許容され、膝を大きく曲げる着席動作等が可能になる。このようなロック状態と非ロック状態の切替えは、電気的切替部としての制御部50の電子制御によって電気的に行われる。なお、
図6~13に関して後述する機械式の膝角度制限部24を
図1および2の電子制御式の膝継手20に設けることで膝角度θのロック機構を機械的に実現してもよい。
【0042】
膝角度θがロック角度θL以下の状態では膝継手20が自由に屈曲できる特許文献1に対して、本実施形態では膝角度θがロック角度θL以下の状態でも回転抵抗部を構成する屈曲側油圧回路42によって屈曲動作時の膝軸23の回転に対して抵抗が付与される。回転抵抗部が付与する抵抗によって例えばソケット11と下腿部21が一直線上にある膝角度θが0度の状態からロック角度θLまでの急激な膝折れの発生を防止できる。したがって、本実施形態によれば急激な膝折れに起因する膝継手20の装着者の転倒リスクや不安を低減できる。
【0043】
以上の回転抵抗部の構成において、屈曲側油圧回路42は膝角度θがロック角度θ
L以下の全角度範囲において膝軸23の回転に対して油圧による抵抗を付与できる。屈曲側油圧回路42が膝軸23の回転に対して付与する抵抗の大きさは、
図3の歩行フェーズや膝角度θに応じて変えるのが好ましいが、歩行フェーズや膝角度θによらず一定としてもよい。この場合、屈曲側油圧回路42における屈曲側バルブ45の開度が一定に保たれる。
【0044】
屈曲側油圧回路42は、慣性センサ75や荷重センサ70で検知できる下腿部21における荷重位置に応じて、膝軸23の回転に対して付与する抵抗の大きさを変化させてもよい。例えば、
図3において、踵付近に荷重位置がある初期接地(A)では、膝軸23の回転に対して付与する抵抗を大きくして、続く荷重応答期(B)や立脚中・終期(C)にかけて膝角度θを略零に維持する。また、爪先付近に荷重位置がある前遊脚期(D)では、膝軸23の回転に対して付与する抵抗を小さくして、続く遊脚初期(E)や遊脚中期(F)にかけて膝角度θが大きく変化できるようにする。この場合、屈曲側油圧回路42は、膝角度θが略零の立脚中・終期(C)から膝角度θが正の前遊脚期(D)にかけての膝角度θの増加に応じて、膝軸23の回転に対して付与する抵抗を減少させている。ロック角度θ
Lの直前で抵抗が最小になるため、膝折れを抑制しながら膝継手20が円滑にロック状態に移行できる。これとは逆に、屈曲側油圧回路42は膝角度θの増加に応じて膝軸23の回転に対して付与する抵抗を増加させてもよい。ロック角度θ
Lの直前で抵抗が最大になるため、急激な膝折れによる衝撃を効果的に低減できる。以上のように、屈曲側油圧回路42が膝軸23の回転に対して付与する抵抗の大きさを変化させることで、歩行フェーズに応じた歩行のしやすさと膝継手20のロックのしやすさを担保しながら急激な膝折れを防止できる。
【0045】
屈曲側油圧回路42は、膝角度センサ60が測定した膝角度θを制御部50(角速度検知部)が時間微分して得られる膝角速度に応じて、膝軸23の回転に対して付与する抵抗の大きさを変化させてもよい。例えば、
図3において、膝角速度が略零である初期接地(A)~立脚中・終期(C)では、膝軸23の回転に対して付与する抵抗を大きくして膝の屈曲を制限する。また、膝角速度が正である前遊脚期(D)~遊脚中期(F)では、膝軸23の回転に対して付与する抵抗を小さくして膝の屈曲を補助する。この場合、屈曲側油圧回路42は、膝角速度が略零の立脚中・終期(C)から膝角速度が正の前遊脚期(D)にかけての膝角速度の増加に応じて、膝軸23の回転に対して付与する抵抗を減少させている。これとは逆に、屈曲側油圧回路42は膝角速度の増加に応じて膝軸23の回転に対して付与する抵抗を増加させてもよい。
【0046】
以上、電子制御式の受動タイプの膝継手20について説明した。続いて、機械式の受動タイプの膝継手20について説明する。
【0047】
図6は、機械式の受動タイプの膝継手20の第1の構成例を示す。膝継手20は、ソケット11(不図示)が接続される大腿接続部22と、大腿接続部22と連結され膝軸23周りに回転可能に設けられる下腿部21と、大腿接続部22と下腿部21の相対的な回転を制限する膝角度制限部24を備える。膝軸23は大腿接続部22の略中央に位置し、膝軸23を軸支する軸受や膝軸23の回転に対して抵抗を付与する回転抵抗部または回転抵抗モジュールを収容可能な図示の断面が円状の収容空間231が設けられる。
【0048】
大腿接続部22と下腿部21は長尺のリンク25によって連結される。具体的には、リンク25の上端部は収容空間231の外周に設けられる大腿連結部251において大腿接続部22に固定され、リンク25の下端部は下腿部21の略中央に位置する下腿連結部252において下腿部21に固定される。なお、図示の都合上、一つのリンク25のみを示したが、紙面に垂直な方向に沿って複数のリンク25を並設してもよい。この構成において、大腿接続部22はリンク25によって下腿部21と連結された状態で膝軸23周りに回転可能である。
図6において、大腿接続部22が膝軸23周りに反時計回り方向に回転する動作が膝継手20の屈曲動作に対応し、大腿接続部22が膝軸23周りに時計回り方向に回転する動作が膝継手20の伸展動作に対応する。
【0049】
下腿部21には、リンク25の下腿連結部252を下腿部21の軸に沿って上方に付勢する伸展補助ばね211が設けられる。伸展補助ばね211はリンク25を介して大腿接続部22を時計回り方向すなわち膝継手20の伸展方向に付勢する。これによって、膝継手20の屈曲が僅かであれば伸展補助ばね211の付勢力によって伸展状態に自然に復帰できる。また、膝継手20が非ロック状態で大きく屈曲した着座等の状態から復帰する際も、伸展補助ばね211は膝継手20の伸展を補助するように働く。
【0050】
下腿部21の伸展補助ばね211の下方に設けられる足部取付穴212には、下端に足部12が設けられた取付パイプ212A(破線)が挿入される。また、大腿接続部22の上端に設けられる大腿取付部221には、大腿部としてのソケット11が取り付けられる。このように、膝継手20に対して足部12とソケット11が取り付けられることで、
図1に示したような義足10が構成される。
【0051】
図7は、膝軸23周りの回転動作すなわち膝継手20の屈伸動作の図解のために大腿接続部22と膝角度制限部24を示す。
図7(A)は、大腿接続部22の大腿取付部221の軸221Aと、図示が省略される下腿部21の軸が一直線上(
図7の鉛直線上)にある膝角度θが0度の状態を示す。
図7(B)は、下腿部21の軸の方向がそのまま(
図7の上下方向)で、大腿接続部22の大腿取付部221の軸221Aが反時計回り方向に20度屈曲した膝角度θが20度の状態を示す。
【0052】
膝角度制限部24は不図示の下腿部21に固定され、下腿部21に対して大腿接続部22のなす膝角度θが、所定のロック角度θ
Lを超えないように大腿接続部22と下腿部21の相対的な回転を制限する。図示の例ではロック角度θ
Lは20度である。したがって、膝角度制限部24が膝角度θをロック角度θ
L以下に制限するロック状態では、膝角度θは
図7(A)の0度と
図7(B)の20度の間の値を取ることができ、この範囲外の値を取ることはできない。
【0053】
膝角度θが最小(0度)の
図7(A)では、大腿接続部22の外周の伸展側(
図7の時計回り側)に設けられる伸展側接触部222が、膝角度制限部24の伸展側制止部材241に接触して制止される。伸展側接触部222と伸展側制止部材241は互いに係合する形状をしており、伸展側制止部材241の接触面に弾性材料で形成された弾性部材241Aが両者の接触による衝撃を緩和する。伸展側接触部222と伸展側制止部材241が係合した
図7(A)の状態において、大腿接続部22は伸展側制止部材241に制止されてこれ以上時計回り方向(伸展方向)に回転できない。したがって、膝角度θは
図7(A)の0度より小さくならないように制限される。
【0054】
膝角度θが最大(ロック角度θ
L=20度)の
図7(B)では、大腿接続部22の外周の屈曲側(
図7の反時計回り側)に設けられる屈曲側接触部223が、膝角度制限部24の屈曲側制止部材242に接触して制止される。大腿接続部22と一体的に回転する回転部材としての屈曲側接触部223は、膝継手20の屈曲動作に応じて反時計回り方向に進行する大腿接続部22の端面として形成され、膝角度θがロック角度θ
L=20度の時に進路上の屈曲側制止部材242に面状に接触する。屈曲側制止部材242の屈曲側制止部242Aは金属材料や弾性材料で形成される。屈曲側制止部242Aを弾性材料で形成すれば、屈曲側接触部223との接触時の衝撃を緩和できる。屈曲側接触部223と屈曲側制止部242Aが面接触した
図7(B)の状態において、大腿接続部22は屈曲側制止部材242に制止されてこれ以上反時計回り方向(屈曲方向)に回転できない。したがって、膝角度θは
図7(B)の20度より大きくならないように制限される。
【0055】
膝角度制限部24は、膝角度制限部24が膝軸23の回転を制限するロック状態と、膝角度制限部24が膝軸23の回転を制限しない非ロック状態を機械的に切り替える機械的切替部を備える。
図7には二種類の機械的切替部を併せて示すが、実際にはいずれかを設ければ十分である。
【0056】
第1の機械的切替部としてのレバー243は、膝継手20の装着者の手動操作によって、下腿部21に固定された支点243Aを中心に回転可能である。レバー243の回転操作によって、屈曲側制止部材242が膝軸23から径方向に遠ざかり、大腿接続部22の屈曲側接触部223の進路から外れる結果、大腿接続部22がロック角度θLを超えて反時計回り方向(屈曲方向)に回転できる非ロック状態に切り替わる。
【0057】
第2の機械的切替部としてのワイヤー244は、一端244Aが屈曲側制止部242Aに連結され、他端244Bを膝継手20の装着者が引っ張ることが可能である。ワイヤー244の他端244Bの引張操作によって、一端244Aに連結された屈曲側制止部242Aが引っ張られて膝軸23から径方向に遠ざかり、大腿接続部22の屈曲側接触部223の進路から外れる結果、大腿接続部22がロック角度θLを超えて反時計回り方向(屈曲方向)に回転できる非ロック状態に切り替わる。
【0058】
膝角度θがロック角度θ
L以下の状態では膝継手20が自由に屈曲できる特許文献1に対して、本構成例では回転抵抗部または回転抵抗モジュールを収容空間231に収容することで膝角度θがロック角度θ
L以下の状態でも屈曲動作時の膝軸23の回転に対して抵抗が付与される。回転抵抗部または回転抵抗モジュールが付与する抵抗によって例えば大腿接続部22の大腿取付部221の軸221Aと下腿部21の軸が一直線上にある膝角度θが0度の状態(
図7(A))からロック角度θ
L(
図7(B))までの急激な膝折れの発生を防止できる。したがって、本構成例によれば急激な膝折れに起因する膝継手20の装着者の転倒リスクや不安を低減できる。
【0059】
収容空間231に収容する回転抵抗部または回転抵抗モジュールは、膝軸23の回転に対して抵抗を付与できるものであれば種類は問わない。例えば、油圧によって膝軸23の回転に対して抵抗を付与するものでもよいし、グリースやポリマーからなる粘性流体の粘性によって膝軸23の回転に対して抵抗を付与するものでもよいし、機械的な摩擦によって膝軸23の回転に対して抵抗を付与するものでもよいし、歯車等によって膝軸23の回転を減速する減速機でもよいし、膝軸23に回転動力を与えるモータでもよい。これらの回転抵抗部を収容空間231に着脱可能な回転抵抗モジュールとして構成することで、膝継手20毎の装着者に最適な種類の回転抵抗モジュールを選択できる。また、国や地域によって回転抵抗部に含まれる媒体に対する規制が異なるため、回転抵抗部を膝継手20に後付け可能なモジュールとして構成とすることで、膝継手20を国や地域毎にカスタマイズする手間を低減できる。
【0060】
以上のような回転抵抗部または回転抵抗モジュールは膝角度θがロック角度θ
L以下の全角度範囲において膝軸23の回転に対して抵抗を付与できる。回転抵抗部または回転抵抗モジュールが膝軸23の回転に対して付与する抵抗の大きさは、
図3の歩行フェーズや膝角度θに応じて変えるのが好ましいが、歩行フェーズや膝角度θによらず一定としてもよい。
【0061】
図1~5に示される電子制御式の膝継手20と異なり、
図6~7に示される機械式の膝継手20には、膝角度センサ60、慣性センサ75、荷重センサ70等の測定データを電気的に生成するセンサは基本的に設けられない。一方で、特許文献2のように、下腿部21における荷重位置を機械的に検知する荷重位置検知機構が知られており、本実施形態の機械式の膝継手20でも利用できる。検知された荷重位置に応じて膝軸23の回転に対して付与する抵抗の大きさを変化させる例は、
図1~5の電子制御式の膝継手20に関して前述したため重複した説明を省略する。
【0062】
図8は、機械式の受動タイプの膝継手20の第2の構成例を示す。前述の構成例と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を適宜省略する。大腿接続部22と下腿部21は第1リンク25Aおよび第2リンク25Bからなるリンク機構によって連結される。第1リンク25Aの大腿接続部22側の一端(上端)は大腿連結部251において大腿接続部22に固定され、第2リンク25Bの下腿部21側の一端(下端)は下腿部21の中央より前方(
図8の右方)に位置する下腿連結部253において下腿部21に固定される。第1リンク25Aおよび第2リンク25Bの他端同士はリンク連結部254において回転可能に連結される。この構成において、大腿接続部22は第1リンク25Aおよび第2リンク25Bによって下腿部21と連結された状態で膝軸23周りに回転可能である。また、下腿部21の下腿連結部252と第2リンク25Bのリンク連結部246Aには、長尺の支持部材246の各端部が連結される。下腿連結部252を上方に付勢する伸展補助ばね211は、互いに連結される支持部材246、第2リンク25B、第1リンク25Aを介して、大腿接続部22を膝継手20の伸展方向に付勢する。
【0063】
図9は、膝軸23周りの回転動作すなわち膝継手20の屈伸動作の図解のために大腿接続部22と膝角度制限部24を示す。
図9(A)は、大腿接続部22の大腿取付部221の軸221Aと、図示が省略される下腿部21の軸が一直線上(
図9の鉛直線上)にある膝角度θが0度の状態を示す。
図9(B)は、下腿部21の軸の方向がそのまま(
図9の上下方向)で、大腿接続部22の大腿取付部221の軸221Aが反時計回り方向に20度屈曲した膝角度θが20度の状態を示す。
【0064】
膝角度制限部24は不図示の下腿部21に固定され、下腿部21に対して大腿接続部22のなす膝角度θが、所定のロック角度θ
Lを超えないように大腿接続部22と下腿部21の相対的な回転を制限する。図示の例ではロック角度θ
Lは20度である。したがって、膝角度制限部24が膝角度θをロック角度θ
L以下に制限するロック状態では、膝角度θは
図9(A)の0度と
図9(B)の20度の間の値を取ることができ、この範囲外の値を取ることはできない。
【0065】
膝角度θが最大(ロック角度θ
L=20度)の
図9(B)では、膝軸23の回転に応じて屈曲したリンク機構のリンク連結部254が、膝角度制限部24の屈曲側制止部材245に接触して制止される。
図9(A)から
図9(B)にかけて膝継手20の屈曲に応じて大腿接続部22が膝軸23周りに反時計回り方向(屈曲方向)に回転すると、レバー243の支点243Aより前方(
図9の右方)のガイド部243Bにガイドされて、リンク連結部254が屈曲側制止部材245に向かって前方に移動する。
【0066】
リンク連結部254と屈曲側制止部材245が面接触した
図9(B)の状態において、大腿接続部22は屈曲側制止部材245に制止されてこれ以上反時計回り方向(屈曲方向)に回転できない。したがって、膝角度θは
図9(B)の20度より大きくならないように制限される。
【0067】
ロック角度時にリンク連結部254が接触する屈曲側制止部材245は、接触面に弾性材料で形成されて接触による衝撃を緩和する弾性部材245Aと、弾性部材245Aの位置を変更する位置変更部245Bを備える。位置変更部245Bは先端面(
図9の左端面)に弾性部材245Aが埋め込まれたねじによって構成され、ねじを回すことで
図9の左右方向の弾性部材245Aの位置を調整できる。
図9(B)に示されるように、弾性部材245Aの位置はロック角度θ
Lを決めるため、位置変更部245Bによって膝継手20の装着者に合わせてロック角度θ
Lを変更できる。なお、以上の例では、膝角度θがロック角度θ
Lの時に第1リンク25Aおよび第2リンク25Bのリンク連結部254が屈曲側制止部材245に接触したが、リンク連結部254に限らず第1リンク25Aまたは第2リンク25Bの任意の部分が屈曲側制止部材245に接触してもよい。
【0068】
膝角度制限部24のレバー243は、
図6および7の第1の構成例と同様に、膝角度制限部24が膝軸23の回転を制限するロック状態と、膝角度制限部24が膝軸23の回転を制限しない非ロック状態を機械的に切り替える機械的切替部を構成する。
図10は、非ロック状態における膝軸23の回転動作を示す。膝角度θがロック角度θ
L=20度以上の
図10(B)~(D)に示されるように、膝継手20の装着者のレバー243の手動操作によって、リンク連結部254がレバー243の「へ」の字形状または逆「V」の字形状の内側に移動している。この状態でガイド部243Bにおける
図8および9とは反対側のガイド面がリンク連結部254をガイドするため、第1リンク25Aおよび第2リンク25Bからなるリンク機構は
図9(B)とは逆方向に屈曲する。すなわち、
図9(B)ではリンク機構が「へ」の字形状または逆「V」の字形状に屈曲していたのに対し、
図10(B)~(D)ではリンク機構が「く」の字形状または「V」の字形状に屈曲する。
図9のロック状態と異なり、
図10の非ロック状態ではリンク連結部254が屈曲側制止部材245(
図10では不図示)に接触しないため、ロック角度θ
Lを超える膝継手20の屈曲動作が可能になる。
【0069】
膝角度θがロック角度θ
L以下の状態では膝継手20が自由に屈曲できる特許文献1に対して、本構成例では回転抵抗部または回転抵抗モジュールを収容空間231に収容することで膝角度θがロック角度θ
L以下の状態でも屈曲動作時の膝軸23の回転に対して抵抗が付与される。回転抵抗部または回転抵抗モジュールが付与する抵抗によって例えば大腿接続部22の大腿取付部221の軸221Aと下腿部21の軸が一直線上にある膝角度θが0度の状態(
図9(A))からロック角度θ
L(
図9(B))までの急激な膝折れの発生を防止できる。したがって、本構成例によれば急激な膝折れに起因する膝継手20の装着者の転倒リスクや不安を低減できる。
【0070】
図11は、機械式の受動タイプの膝継手20の第3の構成例を示す。前述の構成例と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を適宜省略する。大腿接続部22と下腿部21は第1リンク25Aおよび第2リンク25Bからなるリンク機構によって連結される。第1リンク25Aの一端側(上端側)の上端部255は大腿接続部22に固定されておらず、図示の断面が円状の膝軸23の外周に接触しながら大腿接続部22に対して滑らかに移動可能である。第2リンク25Bの一端(左端)は下腿部21の中央より後方(
図11の左方)に位置する下腿連結部253において下腿部21に固定される。第1リンク25Aおよび第2リンク25Bの他端同士はリンク連結部254において回転可能に連結される。この構成において、大腿接続部22は第1リンク25Aおよび第2リンク25Bによって下腿部21と連結された状態で膝軸23周りに回転可能である。
【0071】
リンク機構には、一端(右上端)が第1リンク25Aの略中央に接続され、他端(左下端)が第2リンク25Bの下腿連結部253に接続されるばね256が設けられる。第1リンク25Aは直下に設けられるばね256から上方に付勢されるため、その上端部255が膝軸23の外周に常に押し付けられた状態になる。このように、第1リンク25Aの上端部255は膝軸23を含む大腿接続部22を時計回り方向すなわち膝継手20の伸展方向(膝角度θが小さくなる方向)に付勢する。
【0072】
図12は、膝軸23周りの回転動作すなわち膝継手20の屈伸動作の図解のために大腿接続部22と膝角度制限部24を示す。
図12(A)は、大腿接続部22の大腿取付部221の軸221Aと、図示が省略される下腿部21の軸が一直線上(
図12の鉛直線上)にある膝角度θが0度の状態を示す。
図12(B)は、下腿部21の軸の方向がそのまま(
図12の上下方向)で、大腿接続部22の大腿取付部221の軸221Aが反時計回り方向に20度屈曲した膝角度θが20度の状態を示す。
【0073】
膝角度制限部24は不図示の下腿部21に固定され、下腿部21に対して大腿接続部22のなす膝角度θが、所定のロック角度θ
Lを超えないように大腿接続部22と下腿部21の相対的な回転を制限する。図示の例ではロック角度θ
Lは20度である。したがって、膝角度制限部24が膝角度θをロック角度θ
L以下に制限するロック状態では、膝角度θは
図12(A)の0度と
図12(B)の20度の間の値を取ることができ、この範囲外の値を取ることはできない。
【0074】
膝角度θが最大(ロック角度θ
L=20度)の
図12(B)では、大腿接続部22の外周の屈曲側(
図12の反時計回り側)に設けられる屈曲側接触部223が、第1リンク25Aの上端部255に接触して制止される。大腿接続部22と一体的に回転する回転部材としての屈曲側接触部223は、膝継手20の屈曲動作に応じて反時計回り方向に進行する大腿接続部22の端面として形成され、膝角度θがロック角度θ
L=20度の時に進路上の第1リンク25Aの上端部255に面状に接触する。第1リンク25Aの上端部255の接触面には弾性材料で形成された弾性部材255Aが設けられるため、屈曲側接触部223との接触時の衝撃を緩和できる。屈曲側接触部223と第1リンク25Aの上端部255が面接触した
図12(B)の状態において、大腿接続部22は第1リンク25Aの上端部255に制止されてこれ以上反時計回り方向(屈曲方向)に回転できない。したがって、膝角度θは
図12(B)の20度より大きくならないように制限される。
【0075】
図12(A)から
図12(B)にかけて、第1リンク25Aと第2リンクBのリンク連結部254は、下腿部21において弾性材料で形成された弾性部材247Aと常に接触している。このため、
図9で示したロック角度時(
図9(B))だけリンク連結部254と接触する弾性部材245Aと比較して、弾性部材247Aはロック角度以下の全角度範囲において膝継手20の屈伸動作に伴う振動や衝撃を効果的に緩和できる。なお、
図11に示されるように、弾性部材247Aを着脱可能な弾性部材着脱部247Bが設けられる。弾性部材着脱部247Bは弾性部材247Aを下方から支持するマウント247Cの下面に先端が接触するねじによって構成され、ねじを回すことで弾性部材247Aの
図11の上下方向の位置調整や着脱を行える。このように、弾性部材着脱部247Bは、弾性部材247Aの位置を変更する位置変更部や、弾性部材247Aを交換する弾性部材交換部として機能する。
図12(B)に示されるように、弾性部材247Aの位置はロック角度θ
Lを決めるため、弾性部材着脱部247Bによって膝継手20の装着者に合わせてロック角度θ
Lを変更できる。
図13は、弾性部材247Aの位置によって異なる4通りのロック角度θ
L(左から順に、0度、20度、30度、40度)を示す。
【0076】
図14は、膝角度制限部24が膝軸23の回転を制限しない非ロック状態における大腿接続部22の回転動作を示す。左から順に、膝角度θが20度、60度、90度、120度の状態を示す。膝角度θがロック角度θ
L=20度を超える場合、不図示のレバーやワイヤー等の機械的切替手段によって第1リンク25Aが膝軸23から遠ざかる径方向に引っ張られることで、第1リンク25Aの上端部255が大腿接続部22の屈曲側接触部223の進路から外れる。この結果、大腿接続部22がロック角度θ
Lを超えて反時計回り方向(屈曲方向)に回転できる非ロック状態に切り替わる。ロック角度θ
L=20度を超える屈伸動作では、第1リンク25Aにおいて大腿接続部22と対向するガイド面257が大腿接続部22の外周面に接触しながらガイドするため、大腿接続部22は滑らかに回転できる。
【0077】
膝角度θがロック角度θ
L以下の状態では膝継手20が自由に屈曲できる特許文献1に対して、本構成例では回転抵抗部または回転抵抗モジュールを収容空間231に収容することで膝角度θがロック角度θ
L以下の状態でも屈曲動作時の膝軸23の回転に対して抵抗が付与される。回転抵抗部または回転抵抗モジュールが付与する抵抗によって例えば大腿接続部22の大腿取付部221の軸221Aと下腿部21の軸が一直線上にある膝角度θが0度の状態(
図12(A))からロック角度θ
L(
図12(B))までの急激な膝折れの発生を防止できる。したがって、本構成例によれば急激な膝折れに起因する膝継手20の装着者の転倒リスクや不安を低減できる。
【0078】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0079】
実施形態では大腿接続部22と下腿部21を備える様々な膝継手20について説明したが、膝継手20が正常に動作する限りにおいて、膝継手20の各構成要素は大腿接続部22と下腿部21のいずれに設けてもよく、大腿接続部22および下腿部21の外部に設けてもよい。すなわち、実施形態で大腿接続部22に設けられた構成要素は下腿部21や外部に設けてもよく、実施形態で下腿部21に設けられた構成要素は大腿接続部22や外部に設けてもよい。例えば、
図6~13に示した膝継手20では下腿部21に設けられていたロック状態を実現するための膝角度制限部24を、各図と同様の機構を用いて大腿接続部22に設けてもよい。
【0080】
なお、実施形態で説明した各装置の機能構成はハードウェア資源またはソフトウェア資源により、あるいはハードウェア資源とソフトウェア資源の協働により実現できる。ハードウェア資源としてプロセッサ、ROM、RAM、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてオペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【0081】
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の機能が分散して設けられているものは、当該複数の機能の一部又は全部を集約して設けても良く、逆に複数の機能が集約して設けられているものを、当該複数の機能の一部又は全部が分散するように設けることができる。機能が集約されているか分散されているかにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【符号の説明】
【0082】
10 義足、11 ソケット、20 膝継手、21 下腿部、22 大腿接続部、23 膝軸、24 膝角度制限部、25 リンク、25A 第1リンク、25B 第2リンク、30 シリンダ、40 駆動機構、42 屈曲側油圧回路、45 屈曲側バルブ、50 制御部、60 膝角度センサ、70 荷重センサ、75 慣性センサ、221 大腿取付部、222 伸展側接触部、223 屈曲側接触部、231 収容空間、241 伸展側制止部材、241A 弾性部材、242 屈曲側制止部材、242A 屈曲側制止部、243 レバー、244 ワイヤー、245 屈曲側制止部材、245A 弾性部材、245B 位置変更部、247A 弾性部材、247B 弾性部材着脱部、254 リンク連結部、255A 弾性部材。