(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185783
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】露光装置、アライメント計測方法、及び物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 9/00 20060101AFI20221208BHJP
G03F 7/20 20060101ALN20221208BHJP
【FI】
G03F9/00 H
G03F7/20 521
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093617
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100124442
【弁理士】
【氏名又は名称】黒岩 創吾
(72)【発明者】
【氏名】池本 尚司
(72)【発明者】
【氏名】川波 健太郎
【テーマコード(参考)】
2H197
【Fターム(参考)】
2H197AA09
2H197BA03
2H197BA09
2H197CA05
2H197CD12
2H197CD13
2H197DB10
2H197EA13
2H197EA19
2H197EA25
2H197EB22
2H197EB23
2H197HA03
2H197HA04
(57)【要約】
【課題】 アライメント計測の精度を向上させること。
【解決手段】 露光光で原版を照明し、前記原版のパターンを投影光学系を介して基板のショット領域を転写する露光装置であって、前記露光光とは異なる波長の非露光光を用いて、前記原版に形成された第1マーク、及び前記基板に形成された第2マークの画像を取得するアライメントスコープと、前記投影光学系に配置され、前記投影光学系の収差を補正する補正部材と、前記補正部材の位置を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記アライメントスコープが前記画像を取得する前に、前記補正部材を第1位置へと駆動させ、前記アライメントスコープが前記画像を取得した後に、前記補正部材を前記第1位置から前記第1位置とは異なる第2位置へと駆動させることを特徴とする露光装置。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
露光光で原版を照明し、前記原版のパターンを投影光学系を介して基板のショット領域を転写する露光装置であって、
前記露光光とは異なる波長の非露光光を用いて、前記原版に形成された第1マーク、及び前記基板に形成された第2マークの画像を取得するアライメントスコープと、
前記投影光学系に配置され、前記投影光学系の収差を補正する補正部材と、
前記補正部材の位置を制御する制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記アライメントスコープが前記画像を取得する前に、前記補正部材を第1位置へと駆動させ、前記アライメントスコープが前記画像を取得した後に、前記補正部材を前記第1位置から前記第1位置とは異なる第2位置へと駆動させることを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記補正部材を該補正部材の光軸方向に駆動させることを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記画像から前記原版と前記基板との相対位置情報を算出し、前記相対位置情報に基づいて、前記補正部材を駆動させながら前記ショット領域への転写を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の露光装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1位置と前記第2位置との差分に基づいて、前記ショット領域への転写を行う際に前記補正部材を駆動させる駆動量を決定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項5】
前記アライメントスコープは、前記補正部材が前記第1位置に位置する状態で前記画像を取得することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項6】
前記補正部材は、シリンドリカルレンズを含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項7】
前記補正部材は、正の曲率をもつ第1シリンドリカルレンズと負の曲率をもつ第2シリンドリカルレンズを含み、
前記制御部は、前記第1シリンドリカルレンズ及び前記第2シリンドリカルレンズのうち少なくとも一方のシリンドリカルレンズを駆動させることを特徴とする請求項6に記載の露光装置。
【請求項8】
前記補正部材は、変形可能な平行平板を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記アライメントスコープが前記画像を取得する前に、前記補正部材を前記第2位置から前記第1位置へと駆動させることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項10】
前記補正部材が前記第1位置に位置する状態で発生する前記非露光光における前記投影光学系の収差は、前記補正部材が前記第2位置に位置する状態で発生する前記非露光光における前記投影光学系の収差よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項11】
前記補正部材が前記第2位置に位置する状態で発生する前記露光光における前記投影光学系の収差は、前記補正部材が前記第1位置に位置する状態で発生する前記露光光における前記投影光学系の収差よりも小さいことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記補正部材の駆動量と、前記投影光学系の収差の発生量との関係を示すデータベースを記憶することを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項13】
前記制御部は、前記データベースに基づいて前記投影光学系のディストーションの発生量を算出することを特徴とする請求項12に記載の露光装置。
【請求項14】
前記収差は、コマ収差であることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の露光装置。
【請求項15】
露光光で原版を照明し、前記原版のパターンを投影光学系を介して基板のショット領域に転写する露光装置におけるアライメント計測方法であって、
前記投影光学系に配置され、前記投影光学系の収差を補正する補正部材を第1位置へと駆動させる第1駆動工程と、
前記露光光とは異なる波長の非露光光を用いて、前記原版に形成された第1マーク、及び前記基板に形成された第2マークの画像を取得するアライメント計測工程と、
前記補正部材を前記第1位置から前記第1位置とは異なる第2位置へと駆動させる第2駆動工程と、
を含むことを特徴とするアライメント計測方法。
【請求項16】
請求項1乃至14のいずれか1項に記載の露光装置を用いて基板を露光し、露光基板を得る露光工程と、
前記露光基板を現像し、現像基板を得る現像工程と、を含み、
前記現像基板から物品を製造することを特徴とする物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置、アライメント計測方法、及び物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスや、フラットパネルディスプレイ(FPD)などのデバイスを製造する際のフォトリソグラフィ工程において、マスクのパターンを基板に転写する露光装置が用いられている。露光装置では、マスクのパターンを基板に高い重ね合わせ精度で転写するために、マスクと基板とを高精度に位置合わせのための計測(アライメント計測)をすることが求められている。
【0003】
アライメント計測の方式の1つとして、投影光学系を介する方式によるアライメント計測が提案されている。上記の方式では、アライメント光学系が、マスクのマーク及び基板のマークを検出し、それぞれのマークの相対位置情報を取得することができる。また、アライメント計測に用いられる光は、レジストを塗布した基板に照射されるため、露光波長とは異なる波長の光が用いられる。
【0004】
投影光学系を介するアライメント計測の方式では、投影光学系の光学特性を露光波長とアライメント計測に用いられる光の波長との2波長で収差が少なくなるように光学設計をすることが望ましいが、異なる波長で収差を抑える設計は非常に困難である。そこで、アライメント計測に用いられる光の波長よりも露光波長での収差が低減するよう光学設計を行い、アライメント計測に用いられる光の波長での収差はある程度残存した状態で運用されうる。しかしながら、近年では、アライメント計測の精度の向上の要求も高まっており、投影光学系のアライメントに用いられる光の波長での残存収差についても低減する必要がある。特に、収差として、コマ収差が残存している場合には、アライメント計測結果に大きな影響を及ぼしうる。
【0005】
特許文献1には、アライメント光学系内に収差補正光学系を構成することで、アライメント計測の際に投影光学系で発生した収差を補正することができる内容が開示されている。このように、アライメント光学系に追加の部材を用いることで、露光時及びアライメント計測時の収差の両方を低減する手法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、アライメント光学系に追加の部材を用いる場合にはそのコストが余分にかかり、更にはアライメント光学系が複雑化するという点で不利である。そのため、追加の部材を用いることなくアライメント計測の精度を向上させることが望ましい。
【0008】
そこで、本発明は、アライメント計測の精度を向上させる上で有利な露光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての露光装置は、露光光で原版を照明し、前記原版のパターンを投影光学系を介して基板のショット領域を転写する露光装置であって、前記露光光とは異なる波長の非露光光を用いて、前記原版に形成された第1マーク、及び前記基板に形成された第2マークの画像を取得するアライメントスコープと、前記投影光学系に配置され、前記投影光学系の収差を補正する補正部材と、前記補正部材の位置を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記アライメントスコープが前記画像を取得する前に、前記補正部材を第1位置へと駆動させ、前記アライメントスコープが前記画像を取得した後に、前記補正部材を前記第1位置から前記第1位置とは異なる第2位置へと駆動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、アライメント計測の精度を向上させる上で有利な露光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】投影光学系の色収差の発生量を示すグラフである。
【
図4】アライメント計測の光の波長におけるコマ収差の発生量を示すグラフである。
【
図5】アライメント計測及び露光処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の好ましい実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。尚、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0013】
<第1実施形態>
本実施形態における露光装置の構成について説明する。本実施形態における露光装置は、半導体デバイスや、フラットパネルディスプレイ(FPD)などのデバイスを製造する際のリソグラフィ工程に用いられる装置である。露光装置は、原版(マスク)のパターンをレジストが塗布された基板に転写することで、基板のショット領域に潜像パターンを形成する。本実施形態では、ステップ・アンド・スキャン方式の露光装置について説明するが、これに限らず、ステップ・アンド・リピート方式等他の露光方式であっても良い。
【0014】
図1は、本実施形態における露光装置10の構成を示す概略図である。本実施形態では、基板6が載置される面をXY平面とし、XY平面に垂直な方向をZ方向として座標系を定義する。露光装置10は、マスク3を照明する照明光学系2と、マスク3を保持するマスクステージ4と、マスク3のパターンを基板6に投影する投影光学系5と、基板6を保持する基板ステージ7とを有する。また、露光装置10は、アライメントスコープ8と、露光装置10の各部を制御する制御部9とを有する。
【0015】
照明光学系2は、光源1と、不図示の光学系とを有する。光源1は、例えば、水銀ランプや発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)である。光源1から照射された光(露光光)は、不図示の光学系を介して、マスク3上に均一に照明される。
【0016】
投影光学系5は、折り曲げミラー11、14と、凹面ミラー12と、凸面ミラー13、都営光学系5における収差を補正する補正部材31、32とを有するオフナー光学系である。マスク3のパターンを通過した光は、補正部材31、折り曲げミラー11、凹面ミラー12の上部、凸面ミラー13、凹面ミラー12の下部、折り曲げミラー14の順に通過し、レジストが塗布された基板6に結像される。
図1に示す光線は、回折光のうち0次光を表している。また、マスク3と基板6は、投影光学系5を介して、光学的にほぼ共役な位置に配置され、マスク3は投影光学系5の物体面に、基板6は投影光学系の像面にそれぞれ配置される。
【0017】
アライメントスコープ8は、マスク3に形成されているアライメントマーク(第1マーク)と、基板6に形成されているアライメントマーク(第2マーク)の画像を取得し、第1マークの位置情報と、第2マークの位置情報とを取得する。以下では、第1マークの位置情報と第2マークの位置情報を取得する一連の動作をアライメント計測と称する。
【0018】
アライメントスコープ8は、第1マークを照明する照明部21と、第1マークと第2マークを検出する検出部22とを有する。アライメントスコープ8は、マスク3の上部に配置されている。照明部21は、光源1から出射される光(露光光)の波長とは異なる波長の光(非露光光)を出射する光源、及び複数の光学素子とを有する。非露光光は、露光光よりも長波長の光でありうる。検出部22は、複数の光学素子と、撮像素子等の検出器により構成されている。アライメントスコープ8は、XY平面内を駆動可能な構成となっており、制御部9により駆動が制御される。
【0019】
制御部9は、アライメントスコープ8で計測された第1マークの位置情報と第2マークの位置情報とに基づいてマスク3と基板6との相対位置情報を算出し、マスク3と基板6のショット領域との位置合わせを制御する。
【0020】
図2は、本実施形態における補正部材31、32の構成を示す図である。
図2(a)は、補正部材31を示す図である。補正部材31は、補正部材31の光軸方向に対して直交する方向(X方向)に沿って正の曲率をもつ第1シリンドリカルレンズ31aと、X方向に沿って負の曲率をもつ第2シリンドリカルレンズ31bとを有する。補正部材31は、第1シリンドリカルレンズ31aと第2シリンドリカルレンズ31bの曲率をもつ面が対向するように配置される。補正部材31は、第1シリンドリカルレンズ31aと第2シリンドリカルレンズ31bのうち、少なくとも一方のシリンドリカルレンズを補正部材31の光軸方向に沿って駆動させることで、投影光学系5における収差の発生量を変動させることができる。
【0021】
図2(b)は、補正部材32を示す図である。補正部材32は、補正部材32の光軸方向、及び補正部材31が曲率をもつ方向(X方向)に対して直交する方向(Y方向)に沿って正の曲率をもつ第3シリンドリカルレンズ32aと、Y方向に沿って負の曲率をもつ第4シリンドリカルレンズ32bとを有する。補正部材32は、第3シリンドリカルレンズ32aと第4シリンドリカルレンズ32bの曲率をもつ面が対向するように配置される。補正部材32は、シリンドリカルレンズ32aとシリンドリカルレンズ32bの少なくとも一方を補正部材31の光軸方向に沿って駆動させることで、投影光学系5における収差の発生量を変動させることができる。補正部材31、32の駆動は、制御部9により制御される。
【0022】
制御部9には、露光装置10の各部を制御するために必要なデータが記憶される。一例として、制御部9には、補正部材31、32の駆動量と収差の発生量との関係を示すデータベースが記憶される。上記のデータは、事前のシミュレーションや露光テストの結果により外部から入力されることにより、制御部9に記憶される。
【0023】
投影光学系5内の光学系の配置は、パターンを露光する露光工程で用いられる露光波長で投影光学系5における収差が低減されるように最適化されて設計される。したがって、補正部材31、32の配置は、露光波長で最適化された位置(第2位置)となるように設計される。しかしながら、補正部材31、32の配置が第2位置であるとき、アライメント計測で用いられる非露光光の波長では、投影光学系5において一定量の収差が残存してしまう。
【0024】
図3は、露光光の波長と非露光光の波長における投影光学系5の収差の発生量を示すグラフである。
図3では、画角(像高)に依らずに、露光波長で投影光学系5における収差が低減されるように最適化されている。
図3に示すように、露光波長に投影光学系5内の光学系の配置が最適化されている場合には、非露光波長では、投影光学系5における収差が低減されずに残存してしまう。
【0025】
図4は、非露光波長におけるコマ収差(C7項、C8項)の発生量を示すグラフである。C7項は、発生した波面収差をZernike級数展開したときのX方向の最大3次のコマ収差であり、C8項は、発生した波面収差をZernike級数展開したときのY方向の最大3次のコマ収差である。
【0026】
図4(a)は補正部材31、32を第2位置から一定量駆動させた時のC7項の収差発生量に関する図である。
図4(a)に示すように、C7項は補正部材31の影響により収差が発生するが、補正部材32の影響では収差は発生しない。
図4(b)は補正部材31、32を一定量駆動させた時のC8項の収差発生量に関する図である。
図4(b)に示すように、C8項は補正部材32の影響により収差が発生するが、補正部材31の影響では収差は発生しない。したがって、C7項は補正部材31を駆動することにより独立に発生させる事ができ、C8項は補正部材32を駆動することにより独立に発生させる事ができる。
【0027】
本実施形態では、アライメント計測時に補正部材31、32の少なくとも一方を第2位置から非露光波長で最適化された位置(第1位置)へと駆動させることで、アライメント計測時の収差を低減する。本実施形態において、補正部材31、32が第1位置に位置する状態で発生する非露光光における投影光学系5の収差は、補正部材31、32が第2位置に位置する状態で発生する非露光光における前記投影光学系の収差よりも小さい。また、補正部材31、32が第2位置に位置する状態で発生する露光光における投影光学系5の収差は、補正部材31、32が第1位置に位置する状態で発生する露光光における前記投影光学系の収差よりも小さい。また、本実施形態では、第1位置と第2位置との差分に基づいてアライメント補正を行うことで、補正部材31、32を駆動させたことにより生じるアライメント計測結果の差異を補正する。
【0028】
次に、
図5のフローチャートを参照して、アライメント計測及び露光処理の方法について説明する。
図5は、本実施形態におけるアライメント計測及び露光処理の手順を示すフローチャートである。以下のステップは、制御部9が各部を制御することにより実行される。
【0029】
ステップS1では、露光処理を実行するために、マスク3がマスクステージ4へと搬入され、基板6が基板ステージ7へと搬入される。ステップS2では、アライメントスコープ8がマスク3に形成されている第1マーク、及び基板6に形成されている第2マークを計測できる計測位置へと駆動される。
【0030】
ステップS3では、アライメント波長の光でコマ収差が最小となるように補正部材31、32を第1位置とは異なる位置(例えば、第2位置)から第1位置へと駆動させる(第1駆動工程)。これにより、投影光学系5は、アライメント計測時に補正部材31、32が第1位置とは異なる位置に位置する場合と比較して、投影光学系5における収差の影響が低減される。
【0031】
ステップS4では、補正部材31、32が第1位置に位置する状態で、アライメント計測が実施される(アライメント計測工程)。ステップS3において、投影光学系5のアライメント波長でのコマ収差が最小になっているため、収差の影響を受けずにアライメント計測を行うことができる。
【0032】
ステップS5では、ステップS3で駆動させた補正部材31、32の駆動量(第1位置と第2位置との差分)に基づいて、アライメント計測時と露光処理時の収差の変化量(例えば、ディストーションの変化量)を算出する。ステップS6では、ステップS4とステップS5の結果に基づいて、露光処理時のアライメント補正量(例えば、補正部材31、32の駆動量)を決定する。
【0033】
ステップS7では、ステップS3で駆動した補正部材31、32を第1位置から第2位置へと駆動させる(第2駆動工程)。ステップS8では、ステップS6で算出されたアライメント補正量に基づいて、基板ステージ7及び補正部材31、32を第2位置から駆動させ、アライメント補正を行う。ステップS9では、アライメントスコープ8を計測位置から退避させる。ステップS10では、基板6を露光する。
【0034】
以上のステップを実施することより、アライメント光学系に収差を補正する部材を追加することなく、簡易な構成でアライメント計測の精度を向上させることができる。そのため、コスト等の点で有利な露光装置を提供することができる。
【0035】
また、本実施形態では、補正部材31、32として、1対のシリンドリカルレンズの駆動により収差を補正する例について説明したが、それ以外の形状の部材が用いられても良い。例えば、補正部材31、32の少なくとも一方を、複数のアクチュエータにより変形可能な1枚の平行平板としても良い。その場合には、平行平板の変形前(第2位置)から変形後(第1位置)へと変形させるために平行平板の各点を駆動させた駆動量から、投影光学系5における収差の発生量を算出しても良い。
【0036】
<物品の製造方法の実施形態>
本発明の実施形態にかかる物品の製造方法は、例えば、フラットパネルディスプレイ(FPD)を製造するのに好適である。本実施形態の物品の製造方法は、基板上に塗布された感光剤に上記の露光装置による露光で潜像パターンを形成し、露光基板を得る工程(露光工程)と、かかる工程で潜像パターンが形成された露光基板を現像し、現像基板を得る工程(現像工程)とを含む。更に、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含む。本実施形態の物品の製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0037】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0038】
3 マスク(原版)
5 投影光学系
6 基板
8 アライメントスコープ
9 制御部
10 露光装置
31、32 補正部材