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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185784
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】記録素子基板および温度検知装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20221208BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
B41J2/14 611
B41J2/14 201
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093618
(22)【出願日】2021-06-03
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】菅野 英雄
(72)【発明者】
【氏名】平山 信之
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EB07
2C056EB30
2C056EB40
2C056EC07
2C056EC37
2C056EC38
2C056FA03
2C056HA05
2C057AF61
2C057AL25
2C057AM22
2C057AR04
2C057AR05
2C057BA04
2C057BA13
(57)【要約】
【課題】S/Nを高くでき、温度検知素子の端子電圧を正確に読み出すことを可能とする。
【解決手段】記録素子基板は、液体を吐出するための熱エネルギーを発生する複数の記録素子と、複数の記録素子の各々に対応して設けられた複数の温度検知素子702を備え、温度検知素子702の一つを選択的に通電させて温度情報を読み出す温度検知素子回路と、を有する。温度検知素子回路は、第1の電圧振幅の選択信号lvに基づいて第1の電圧振幅より大きい第2の電圧振幅を有する選択信号hvを出力する電圧変換回路502と、温度検知素子702毎に設けられ、該温度検知素子702を選択する選択スイッチ701と、温度検知素子702毎に設けられ、選択スイッチ701が選択した温度検知素子702の一方の端子電圧を読み出すための第1の読み出しスイッチ704と、を備える。選択スイッチ701および第1の読み出しスイッチ704を、選択信号hvを用いて駆動する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出するための熱エネルギーを発生する複数の記録素子と、
前記複数の記録素子の各々に対応して設けられた複数の温度検知素子を備え、該温度検知素子の一つを選択的に通電させて温度情報を読み出す温度検知素子回路と、を有し、
前記温度検知素子回路は、
第1の電圧振幅の入力信号に基づいて前記第1の電圧振幅よりも大きい第2の電圧振幅を有する選択信号を出力する信号処理部と、
前記温度検知素子毎に設けられ、該温度検知素子を選択する選択スイッチと、
前記温度検知素子毎に設けられ、前記選択スイッチが選択した温度検知素子の一方の端子電圧を読み出すための第1の読み出しスイッチと、を備え、
前記選択スイッチおよび前記第1の読み出しスイッチを、前記選択信号を用いて駆動することを特徴とする記録素子基板。
【請求項2】
前記温度検知素子回路は、前記温度検知素子毎に設けられ、前記選択スイッチが選択した温度検知素子の他方の端子電圧を読み出すための第2の読み出しスイッチを備え、該第2の読み出しスイッチを、前記第1の電圧振幅の入力信号を用いて駆動することを特徴とする、請求項1に記載の記録素子基板。
【請求項3】
前記第2の読み出しスイッチの耐圧が、前記第1の読み出しスイッチの耐圧よりも低いことを特徴とする、請求項2に記載の記録素子基板。
【請求項4】
前記選択信号が共通の配線を介して前記選択スイッチおよび前記第1の読み出しスイッチに供給されることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の記録素子基板。
【請求項5】
前記温度検知素子回路は、前記温度検知素子毎に設けられ、前記選択スイッチが選択した温度検知素子の他方の端子電圧を読み出すための第2の読み出しスイッチを備え、該第2の読み出しスイッチを、前記選択信号を用いて駆動することを特徴とする、請求項1に記載の記録素子基板。
【請求項6】
前記選択信号が共通の配線を介して前記選択スイッチ、前記第1の読み出しスイッチおよび前記第2の読み出しスイッチに供給されることを特徴とする、請求項5に記載の記録素子基板。
【請求項7】
定電流を前記温度検知素子に印加する電流源を有し、
前記温度検知素子の一端は、前記選択スイッチを介して前記電流源に電気的に接続されるとともに、前記第1の読み出しスイッチに接続されており、前記第2の電圧振幅が、前記電流源を動作させるための電源電圧と同じ値であることを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の記録素子基板。
【請求項8】
前記温度検知素子の他端が、抵抗を介して前記定電流のリターン先である配線に接続されていることを特徴とする、請求項7に記載の記録素子基板。
【請求項9】
前記信号処理部は、
前記温度検知素子を選択するための選択データに基づいて前記第1の電圧振幅を有する選択信号を出力するデコーダと、
前記デコーダが出力した前記第1の電圧振幅を有する選択信号を前記第2の電圧振幅を有する選択信号に変換する電圧変換回路と、を有することを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の記録素子基板。
【請求項10】
前記信号処理部は、
前記温度検知素子を選択するための前記第1の電圧振幅を有する選択データを前記第2の電圧振幅を有する選択データに変換する電圧変換回路と、
前記電圧変換回路が出力した前記第2の電圧振幅を有する選択データに基づいて前記第2の電圧振幅を有する選択信号を出力するデコーダと、を有することを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の記録素子基板。
【請求項11】
前記複数の記録素子の一つを選択的に通電させる記録素子回路を有し、該記録素子回路は、前記記録素子を選択するスイッチと、該スイッチをオン/オフするスイッチ駆動回路と、を有し、該スイッチ駆動回路に供給される電源電圧と前記電圧変換回路に供給される電源電圧が共通であることを特徴とする、請求項9または10に記載の記録素子基板。
【請求項12】
前記温度検知素子が前記記録素子の近傍に配置されていることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の記録素子基板。
【請求項13】
温度検知素子と、
定電流を前記温度検知素子に印加する電流源と、
ゲート端子以外の2つの端子のうち一方の端子が前記温度検知素子の一端に接続され、他方の端子が前記電流源に接続され、選択信号が該ゲート端子に供給される第1のMOSトランジスタと、
ゲート端子以外の2つの端子のうち一方の端子が前記温度検知素子の一端と前記第1のMOSトランジスタの前記一方の端子とを接続するラインに接続され、前記選択信号が該ゲート端子に供給される第2のMOSトランジスタと、を有し、
前記第2のMOSトランジスタの前記ゲート端子と前記一方の端子との間のしきい値電圧を前記ゲート端子に印加された電圧から差し引いた値が、前記定電流が前記第1のMOSトランジスタを介して前記温度検知素子に印加されたときの前記温度検知素子の一端に生じる端子電圧の値よりも大きくなるように、前記選択信号の電圧振幅値を増幅することを特徴とする温度検知装置。
【請求項14】
前記選択信号の電圧振幅値が前記電流源を動作させるための電源電圧の値であることを特徴とする、請求項13に記載の温度検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度検知素子を備えた記録素子基板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、記録素子の温度を検知可能な記録素子基板が記載されている。この記録素子基板は、複数の記録素子の各々に対応して設けられた複数の温度検知素子を備える。温度検知素子毎に、温度検知素子を選択するための選択スイッチと、選択スイッチが選択した温度検知素子の端子電圧を読み出すための読み出しスイッチとが設けられている。温度検知素子の両端の端子電圧を温度検知信号(温度情報)として読み出す。温度検知信号に基づいて、吐出不良の記録素子を判定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5474136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
温度検知素子の端子電圧を大きくすることで、温度検知信号のS/Nを高くでき、その結果、吐出不良の判定精度を向上することができる。温度検知素子の端子電圧を大きくするには、電源電圧を高くして、定電流を温度検知素子に供給する電流源の動作範囲を大きくすることが必要である。この場合、電流源の動作範囲の拡大に合わせて、選択スイッチや読み出しスイッチの制御電圧を増幅しなければ、温度検知素子の端子電圧を正確に読み出すことができない場合がある。特許文献1には、そのような選択スイッチや読み出しスイッチの制御電圧の増幅については記載されていない。
【0005】
本発明の目的は、S/Nを高くでき、温度検知素子の端子電圧を正確に読み出すことを可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様によれば、液体を吐出するための熱エネルギーを発生する複数の記録素子と、前記複数の記録素子の各々に対応して設けられた複数の温度検知素子を備え、該温度検知素子の一つを選択的に通電させて温度情報を読み出す温度検知素子回路と、を有し、前記温度検知素子回路は、第1の電圧振幅の入力信号に基づいて前記第1の電圧振幅よりも大きい第2の電圧振幅を有する選択信号を出力する信号処理部と、前記温度検知素子毎に設けられ、該温度検知素子を選択する選択スイッチと、前記温度検知素子毎に設けられ、前記選択スイッチが選択した温度検知素子の一方の端子電圧を読み出すための第1の読み出しスイッチと、を備え、前記選択スイッチおよび前記第1の読み出しスイッチを、前記選択信号を用いて駆動することを特徴とする記録素子基板が提供される。
本発明の別の態様によれば、温度検知素子と、定電流を前記温度検知素子に印加する電流源と、ゲート端子以外の2つの端子のうち一方の端子が前記温度検知素子の一端に接続され、他方の端子が前記電流源に接続され、選択信号が該ゲート端子に供給される第1のMOSトランジスタと、ゲート端子以外の2つの端子のうち一方の端子が前記温度検知素子の一端と前記第1のMOSトランジスタの前記一方の端子とを接続するラインに接続され、前記選択信号が該ゲート端子に供給される第2のMOSトランジスタと、を有し、前記第2のMOSトランジスタの前記ゲート端子と前記一方の端子との間のしきい値電圧を前記ゲート端子に印加された電圧から差し引いた値が、前記定電流が前記第1のMOSトランジスタを介して前記温度検知素子に印加されたときの前記温度検知素子の一端に生じる端子電圧の値よりも大きくなるように、前記選択信号の電圧振幅値を増幅することを特徴とする温度検知装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、温度検知信号(温度情報)のS/Nを高くでき、温度検知素子の端子電圧を正確に読み出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1の実施形態による記録素子基板の構成を模式的に示す図である。
図2】記録素子基板と制御装置および電源装置との間の配線を説明するための図である。
図3】記録素子基板の構成を示す回路図である。
図4】記録素子回路の構成を説明するための図である。
図5】温度検知素子回路の構成を示すブロック図である。
図6】1セグメント分の電圧変換回路の構成を示す回路図である。
図7】1セグメント分の温度検知素子のセグメント回路の構成を示す回路図である。
図8】記録素子基板の動作を説明するためのタイミング図である。
図9】温度検知素子回路の動作電圧範囲を説明するための図である。
図10】比較例の温度検知素子回路の動作電圧範囲を説明するための図である。
図11】記録素子のセグメント回路と温度検知素子のセグメント回路との共通給電の構成を示すブロック図である。
図12】本発明の第2の実施形態による記録素子基板の構成を説明するための図である。
図13】本発明の第3の実施形態による記録素子基板の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。但し、実施形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の範囲をそれらに限定する趣旨のものではない。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態による記録素子基板101の構成を模式的に示す図である。図1(a)は、記録素子基板101を吐出口104側から見たときの外観図である。図1(b)は、図1(a)のA-A線に沿った記録素子基板101の断面を模式的に示す断面図である。
図1(a)に示すように、流路形成部材103がシリコン基板102上に設けられている。流路形成部材103は、感光樹脂等からなり、インク等の液体を吐出する複数の吐出口104を有する。シリコン基板102の上面には、外部の配線と電気的に接続される複数の端子105が形成されている。ここでは、吐出口104が一列に設けられているが、吐出口104の数や列数は適宜に変更可能である。
【0011】
図1(b)に示すように、液体を吐出するための熱エネルギーを発生する記録素子112と温度検知素子111とが、吐出口104と対向する領域に設けられている。具体的には、絶縁膜106、配線層107および層間絶縁膜108がこの順番でシリコン基板102上に積層されている。配線層107は、アルミニウム等からなる配線107a~107dを含む。温度検知素子111が、層間絶縁膜108上に形成されている。温度検知素子111は、チタン、および窒化チタン積層膜等からなる薄膜抵抗体である。
タングステン等からなる導電プラグ114a、114bが、層間絶縁膜108を貫通するように設けられている。温度検知素子111の一端は、導電プラグ114aを介して配線107aに電気的に接続され、温度検知素子111の他端は、導電プラグ114bを介して配線107bに電気的に接続されている。
【0012】
温度検知素子111が形成された層間絶縁膜108上に、層間絶縁膜109が積層されている。記録素子112が、層間絶縁膜109上に形成されている。記録素子112は、タンタル窒化珪素膜等からなる発熱抵抗体である。タングステン等からなる導電プラグ115a、115bが、層間絶縁膜108および層間絶縁膜109を貫通するように設けられている。記録素子112の一端は、導電プラグ115aを介して配線107cに電気的に接続され、記録素子112の他端は、導電プラグ115bを介して配線107dに電気的に接続されている。
記録素子112が形成された層間絶縁膜109上に、シリコン窒化膜などの保護膜110が積層され、さらに、保護膜110上にタンタルなどの耐キャビテーション膜113が形成されている。なお、温度検知素子111は層間絶縁膜109を介して記録素子112の直下に配設けられているが、この構造に限定されない。温度検知素子111は、記録素子112と同じ層に形成されてもよく、層間絶縁膜を介して記録素子112の直上に設けられてもよい。
【0013】
図2は、記録素子基板101と制御装置201および電源装置300との間の配線を説明するための図である。図2(a)は、記録素子基板101と制御装置201との間の結線図である。図2(b)は、記録素子基板101と電源装置300との間の結線図である。
図2(a)に示すように、記録装置は、記録素子基板101を制御する制御装置201を有する。制御装置201は、記録素子基板101の吐出動作を制御するための信号(印刷制御や印刷情報、吐出検査の制御情報を含む)を生成する。例えば、制御装置201は、ブロック信号LT、転送クロック信号CLK、制御情報のシリアルデータ信号D、判定データのシリアルデータ信号Doおよび転送クロック信号CLK2を出力する。ここで、ブロック信号LTは、複数の記録素子112をブロック単位に時分割駆動するためのブロック時間を刻む。転送クロック信号CLK2は、シリアルデータ信号Doを転送するためのクロック信号である。
【0014】
図2(b)に示すように、記録装置は、電力を記録素子基板101に供給する電源装置300を有する。電源装置300は、電源301、電源302および電源303を有する。電源装置300は、電圧VH(24V)、電圧VHT(5V)、電圧VDD(3.3V)を記録素子基板101に供給する。電源装置300と記録素子基板101の間には、VH、VHTおよびVDDの他に、VHに対応するグランドGNDHと、VDDおよびVHTのそれぞれに対応するグランドVSSが設けられている。VH、VHTおよびVDDは正側の電源電圧と呼ぶことができ、VSSは負側の電源電圧と呼ぶことができる。
【0015】
図3は、記録素子基板101の構成を示す回路図である。記録素子基板101は、データ入力回路304、記録素子回路305、温度検知素子回路306、電流源307および検査回路308を有する。ここでは、記録素子回路305は一列に配置された複数の記録素子112を含み、温度検知素子回路306は記録素子112の各々に対応する温度検知素子111を含む。例えば、温度検知素子111は記録素子112の近傍に配置される。
電源301は、電源電圧VDDを記録素子基板101に供給する。電源302は、電源電圧VHTを記録素子基板101に供給する。電源303は、電源電圧VHを記録素子基板101に供給する。電源電圧VDDおよび電源電圧VHTを用いて温度検知素子回路306を駆動する。電源電圧VH、電源電圧VDDおよび電源電圧VHTを用いて記録素子回路305を駆動する。電源電圧VHTを用いて電流源307を駆動する。電流源307は、定電流Isを温度検知素子回路306に供給する。
【0016】
データ入力回路304は、制御装置201によって生成されたブロック信号LT、転送クロック信号CLK1およびシリアルデータ信号Dを受信する。データ入力回路304は、データを展開して記録素子基板101の諸回路に信号を送出する。例えば、データ入力回路304は、信号l_lt、clk_h、d_h、heを記録素子回路305に供給する。記録素子回路305は、信号l_lt、clk_h、d_h、heに従って時分割駆動する。ここで、信号l_ltは、ブロック信号LTの後縁のところから所定のパルス幅で生成された内部回路用のラッチ信号である。信号clk_hは、転送クロック信号CLK1に相当する。信号d_hは、時分割駆動のデータ(シリアルデータ)を送るためのものである。信号heは、記録素子112を駆動する印加信号である。
データ入力回路304は、信号l_lt、clk_s、d_sを温度検知素子回路306および検査回路308に供給する。信号l_lt、clk_s、d_sはそれぞれ、ラッチ信号、転送クロック信号、シリアルデータである。これらラッチ信号l_lt、転送クロック信号clk_sおよびシリアルデータd_sはそれぞれ、ラッチ信号l_lt、転送クロック信号clk_hおよびシリアルデータd_hに対応する。
【0017】
温度検知素子回路306は、複数の温度検知素子111の一つを選択的に通電させて温度情報を読み出す。温度検知素子回路306では、ラッチ信号l_lt、転送クロック信号clk_sおよびシリアルデータd_sに基づき、温度検知素子111が選択され、その選択された温度検知素子111が電流源307に接続される。そして、温度検知素子111の両端の端子電圧Va、Vbが検査回路308に出力される。端子電圧Vaは、温度検知素子111の一方の端子(高電位側の端子)に生じる電圧であり、端子電圧Vbは、温度検知素子111の他方の端子(低電位側の端子)に生じる電圧である。
検査回路308では、ラッチ信号l_lt、転送クロック信号clk_sおよびシリアルデータd_sに基づき、検査条件を調整するためのパラメータが設定され、検査のタイミングが決定される。また、検査回路308は、温度検知素子111の両端の端子電圧va、vbを通して入力される温度波形を受ける。そして、検査回路308は、信号処理と判定処理を実行し、判定データをブロック時間LT毎にシリアル転送クロックCLK2に同期したシリアル判定データDoとして出力する。
【0018】
図4は、記録素子回路305の構成を説明するための図である。図4(a)は、記録素子回路305の構成を示すブロック図である。図4(b)は、1セグメント分の記録素子のセグメント回路802を示す回路図である。図4中、記録素子402は、図1(b)に示した記録素子112に対応する。
図4(a)に示すように、記録素子回路305は、セグメントseg0~seg511を有する。セグメントseg0~seg511は、512個の記録素子402が1列に設けられた構成に対応し、各セグメントは、記録素子402および駆動スイッチ403を有する。記録素子402の一方の端子は、電源電圧VHの共通配線である電源線401aに接続されている。記録素子402の他方の端子は、駆動スイッチ403の一方の端子に接続されている。駆動スイッチ403の他方の端子は、グランドGNDHの共通配線であるグランド線401bに接続されている。グランド線401bは、電源電圧VHのリターン先である。
【0019】
記録素子回路305は、セグメントseg0~seg511の駆動スイッチ403を駆動するためのスイッチ駆動回路404および記録素子選択回路405を有する。スイッチ駆動回路404および記録素子選択回路405はそれぞれ、電源電圧VDDの電源線およびグランドVSSのグランド線に接続されている。スイッチ駆動回路404はさらに、電源電圧VHTの電源線に接続されている。
記録素子選択回路405は、シフトレジスタとデコーダとで構成されている。記録素子選択回路405は、ラッチ信号l_lt、転送クロック信号clk_h、シリアルデータd_hおよび印加信号heを受けて、時分割駆動のための行信号と列信号を生成する。記録素子選択回路405は、行信号と列信号との論理積(AND)をとったオン/オフ信号enを出力する。オン/オフ信号enの電圧振幅は、電源電圧VDDの電圧値に対応する。
【0020】
スイッチ駆動回路404は、記録素子選択回路405が出力したオン/オフ信号enの電圧振幅を増幅する。具体的には、スイッチ駆動回路404は、電圧振幅値が電源電圧VDDに相当する小振幅のオン/オフ信号enを電圧振幅値が電源電圧VHTに相当する大振幅の駆動信号hに変換する。駆動信号hは、セグメントseg0~seg511に対応する駆動信号h0~h511を含む。駆動信号h0に従い、セグメントseg0の駆動スイッチ403がオン/オフ制御される。同様に、駆動信号h1~h511に従い、セグメントseg1~seg511の駆動スイッチ403がオン/オフ制御される。
【0021】
図4(b)に示す記録素子のセグメント回路802において、スイッチ駆動回路404は、電源電圧VDDを用いて動作するインバータと電源電圧VHTを用いて動作するインバータで構成されている。スイッチ駆動回路404は、オン/オフ信号enを昇圧した駆動信号hを出力する。駆動スイッチ403は、MOS(Metal-Oxide Semiconductor)トランジスタ403aからなる。MOSトランジスタ403aのドレイン端子は、記録素子402に接続されている。MOSトランジスタ403aのソース端子は、グランドGNDHのグランド線に接続されている。スイッチ駆動回路404が出力した駆動信号hが、MOSトランジスタ403aのゲート端子に供給される。MOSトランジスタ403aは、駆動信号hに従ってオン/オフ制御される。
【0022】
図5は、温度検知素子回路306の構成を示すブロック図である。温度検知素子回路306は、シフトレジスタ501、電圧変換回路502、デコーダ503および温度検知素子のセグメント回路504を有する。シフトレジスタ501とデコーダ503は、電源電圧VDDが印加され、小振幅の入出力信号を処理する。ここでは、電源電圧VDDは3.3Vである。シフトレジスタ501は、データ入力回路304からのラッチ信号l_lt、転送クロック信号clk_sおよびシリアルデータd_sを通じて、温度検知素子111の選択情報を取り込み、9ビットの選択データa0~a8を出力する。デコーダ503は、選択データa0~a8を受けて温度検知素子回路を選択するための選択信号lv0~lv511を出力する。温度検知素子回路306は、温度検知装置と呼ぶことができる。電圧変換回路502およびデコーダ503は、信号処理部と呼ぶことができる。
【0023】
電圧変換回路502は、電源電圧VDDと電源電圧VHTが印加されて動作し、電圧振幅値が電源電圧VDDに相当する小振幅の入力信号を電圧振幅値が電源電圧VHTに相当する大振幅の信号に変換する。ここでは、電源電圧VDDは3.3Vであり、電源電圧VHTは5Vである。電圧変換回路502は、電圧振幅値が3.3Vの選択信号lv0~lv511を受けて、電圧振幅値が5Vの選択信号hv0~hv511を出力する。なお、電源電圧VHTは、記録素子回路305内のスイッチ駆動回路404に印加されているものと同じである。
【0024】
温度検知素子のセグメント回路504は、記録素子回路305のセグメントseg0~seg511に対応する512個のセグメントを有し、各セグメントには、記録素子402に対応して温度検知素子111が設けられている。セグメント回路504は、電源電圧VHTが印加されて動作し、デコーダ503から選択信号lv0~lv511を受信するとともに、電圧変換回路502から選択信号hv0~hv511を受信する。セグメント回路504では、選択信号lv0~lv511および選択信号hv0~hv511に従って、512個のセグメント中の1セグメントが選択され、配線を通して温度検知素子111に定電流Isが給電される。同時に、温度検知素子111の両端の端子電圧va、vbが配線を介して出力される。
【0025】
図6は、1セグメント分の電圧変換回路502の構成を示す回路図である。電圧変換回路502は、電源電圧VDDを用いて動作する前段部600と、電源電圧VHTを用いて動作する昇圧部601を有する。
前段部600は、電源電圧VDDが印加される2つのインバータからなり、各インバータはPMOSトランジスタとNMOSトランジスタとで構成されている。前段のインバータが選択信号lvの反転信号を生成する。反転信号は、後段のインバータに入力されるとともに、昇圧部601に入力される。反転信号は、後段のインバータにて再び反転された後、昇圧部601に入力される。
昇圧部601は、複数のPMOSトランジスタと複数のNMOSトランジスタとで構成されている。昇圧部601は、左右対称の反転回路で構成されているが、前段部600とは異なり、電源電圧VHTの端子側にPMOSトランジスタが直列に接続されている。各PMOSトランジスタのゲートには、対向する反転回路の出力が接続されている。このため、片方の回路の出力が“H”(5V)のときは、対向するPMOSトランジスタのゲートが5Vとなり、その回路の出力が“L”(0V)になる。回路の出力が“L”(0V)になると、対向するPMOSトランジスタのゲートが0Vになり、PMOSトランジスタがONして、その回路の出力が“H”(5V)になる。このような動作により、電源電圧VHTの振幅値を有する選択信号hvが生成される。
【0026】
図7は、1セグメント分の温度検知素子のセグメント回路504の構成を示す回路図である。温度検知素子のセグメント回路504は、セグメントseg0~seg511を有し、各セグメントは、選択スイッチ701、温度検知素子702、第1の読み出しスイッチ704、第2の読み出しスイッチ705および抵抗703を有する。温度検知素子702は、図1(b)に示した温度検知素子111に対応する。選択スイッチ701、第1の読み出しスイッチ704および第2の読み出しスイッチ705はいずれも、NMOSトランジスタからなる。
【0027】
選択スイッチ701のドレイン端子は、定電流Isの共通配線505-1に接続されている。選択スイッチ701のソース端子は、温度検知素子702の一方の端子に接続されている。第1の読み出しスイッチ704のソース端子は、選択スイッチ701のソース端子と温度検知素子702の一方の端子とを接続するラインに接続されている。第1の読み出しスイッチ704のドレイン端子は、端子電圧vaを読み出すための共通配線504-2に接続されている。
温度検知素子702の他方の端子は、動作点を定める抵抗703を介してグランドVSSのグランド線504-4に接続されている。グランド線504-4は、定電流Isのリターン先である。第2の読み出しスイッチ705のソース端子は、温度検知素子702の他方の端子と抵抗703とを接続するラインに接続されている。第2の読み出しスイッチ705のドレイン端子は、端子電圧vbを読み出すための共通配線504-3に接続されている。
【0028】
セグメントseg0において、選択信号hv0が選択スイッチ701および第1の読み出しスイッチ704の各々のゲート端子に供給され、選択信号lv0が第2の読み出しスイッチ705のゲート端子に供給される。選択スイッチ701および第1の読み出しスイッチ704は、選択信号hv0に従ってオン/オフ制御される。第2の読み出しスイッチ705は、選択信号lv0に従ってオン/オフ制御される。
セグメントseg1~seg511も、セグメントseg0と同様の接続構造を有する。セグメントseg1~seg511おいて、選択スイッチ701および第1の読み出しスイッチ704は選択信号hv1~hv511に従ってオン/オフ制御され、第2の読み出しスイッチ705は選択信号lv1~lv511に従ってオン/オフ制御される。
【0029】
次に、図3に示した記録素子基板101における温度検知素子の選択から判定データを出力するまでの動作を説明する。
図8は、記録素子基板101の動作を説明するためのタイミング図である。図8に示すように、ブロック1の期間に、データ入力回路304が、温度検知素子の選択情報1101を検出し、転送クロック信号clk_s(1102)およびシリアルデータd_s(1103)を出力する。温度検知素子回路306と検査回路308へデータが転送される。温度検知素子回路306内のシフトレジスタ501に選択情報1101が取り込まれる。
【0030】
ブロック2の期間に、ラッチ信号l_lt(1105)に従って、温度検知素子回路306で取り込まれた選択情報1101がラッチされ、選択データa0~a8(1106)が出力される。これを受けてデコーダ503から、seg0の選択信号lv(1108)が出力されるともに、電圧変換された選択信号hv(1108)が出力される。図8中、符号1108は、選択信号lvおよび選択信号hvの両方のタイミングを示す。
一方で、図8には示されていないが、温度検知素子に対応した記録素子の選択データが与えられて、記録素子が選択される。seg0の記録素子が選択されると、その選択された記録素子に印加信号heのパルス(1104)が印加され、対応するseg0の温度検知素子の温度波形(1109)が得られる。検査回路308が、温度波形を受けて、正常吐出か否かを判定し、その判定データを保持する。この間、次の温度検知素子の選択情報が転送される。
ブロック3の期間に、ラッチ信号l_ltのタイミングで、保持されていた判定データ(1111)がシリアル判定データDoのデータ線に出力され、転送クロック信号CLK2(1110)に同期して転送される。ブロック3以降、同様の処理が繰り返される。
【0031】
次に、温度検知素子回路306の動作電圧範囲について説明する。
図9は、温度検知素子回路306の動作電圧範囲を説明するための図である。図9(a)は、1セグメント分の温度検知素子のセグメント回路801の構成を示すブロック図である。図9(b)は、定電流Isに対する温度検知素子のセグメント回路801の各部の電圧の関係を示すグラフである。図9(c)は、電流源307の出力電圧の降下を示す特性図である。図9(d)は、選択スイッチ701のオン抵抗特性を示す特性図である。
【0032】
図9(a)に示すセグメント回路801において、電圧振幅値が3.3Vの選択信号lvが、電圧変換回路502および第2の読み出しスイッチ705のゲート端子に供給される。電圧変換回路502は、選択信号lvを電圧振幅値が5Vの選択信号hvに変換する。選択信号hvは、選択スイッチ701および第1の読み出しスイッチ704の各々のゲート端子に供給される。選択スイッチ701および第1の読み出しスイッチ704は選択信号hvに従って駆動され、第2の読み出しスイッチ705は選択信号lvに従って駆動される。セグメント回路801は、図5に示したセグメント回路504の各セグメントを構成する。
電流源307は、電源電圧VHT(5V)を用いて動作する。電流源307は、選択スイッチ701を介して定電流Isを温度検知素子702の一方の端子に供給する。選択スイッチ701がオンされると、定電流Isが温度検知素子702を流れる。第1の読み出しスイッチ704がオンされると、温度検知素子702の一方の端子の端子電圧vaが出力される。第2の読み出しスイッチ705がオンされると、温度検知素子702の他方の端子の端子電圧vbが出力される。
【0033】
図9(b)に示すように、選択スイッチ701のドレイン電圧v1、温度検知素子702の一方の端子側の電圧v2(端子電圧va)と他方の端子側の電圧v3(端子電圧vb)は、定電流Isの増加にともなって上昇する。温度検知素子702の端子間電圧(v2-v3)が温度情報である。ここで、電流源307は、図9(c)に示す出力特性を有し、2.7mAに対して0.9Vの電圧降下を生じる(Δvは出力電圧降下を示す)。選択スイッチ701は、図9(d)に示すオン抵抗特性(電圧v2の範囲0~3Vに対してオン抵抗ronの範囲60~200Ω)を有する。温度検知素子702の抵抗値は1kΩ、動作点用の抵抗703の抵抗値は100Ωである。
電流源307の出力特性によれば、定電流範囲は最大約2.7mAであり、この時、電圧v2は最大3Vになる。これに対し、第1の読み出しスイッチ704のゲートとソースとの間のしきい値電圧vthは0.6Vである。選択信号hv(=vg1)が5Vの時、第1の読み出しスイッチ704の読み出し範囲A1は4.4V(=vg1-vth=5V-0.6V)以下になる。この場合、温度検知素子回路306は、読み出し範囲A1>v2範囲の関係で動作するので、正しい温度情報を読み出すことができる。
【0034】
一方、第2の読み出しスイッチ705のゲートとソースとの間のしきい値電圧vthは0.6Vである。選択信号lv(=vg2)が3.3Vの時、第2の読み出しスイッチ705の読み出し範囲A2は2.7V(=vg2-vth=3.3V-0.6V)以下になる。この場合、温度検知素子回路306は、読み出し範囲A2>v3範囲の関係で動作するので、正しい温度情報を読み出すことができる。なお、第1の読み出しスイッチ704のしきい値電圧Vthは、第2の読み出しスイッチ705のしきい値電圧Vthより少し大きくなるが、ここでは説明を簡単にするために、両しきいち電圧Vthを同じ値(0.6V)として表現した。
【0035】
(比較例)
次に、比較例の温度検知素子回路の動作電圧範囲について説明する。
図10は、比較例の温度検知素子回路の動作電圧範囲を説明するための図である。図10(a)は、1セグメント分の温度検知素子のセグメント回路と電圧変換回路を示すブロック図である。図10(b)は、定電流Isに対するセグメント回路の各部の電圧の関係を示すグラフである。
図10(a)に示すセグメント回路は、選択スイッチ1201、温度検知素子702、第1の読み出しスイッチ1204、第2の読み出しスイッチ1205および抵抗703を有する。電流源307、温度検知素子702および抵抗703は、図9(a)に示したものと同じである。選択スイッチ1201、第1の読み出しスイッチ1204および第2の読み出しスイッチ1205はいずれも、NMOSトランジスタからなる。
【0036】
選択スイッチ1201のドレイン端子は電流源307に接続され、ソース端子は温度検知素子702の一方の端子に接続されている。第1の読み出しスイッチ1204のソース端子は、選択スイッチ1201のソース端子と温度検知素子702の一方の端子とを接続するラインに接続されている。第2の読み出しスイッチ1205のソース端子は、温度検知素子702の他方の端子と抵抗703とを接続するラインに接続されている。
電圧振幅値が3.3Vの選択信号lvが、電圧変換回路1202と第1の読み出しスイッチ1204および第2の読み出しスイッチ1205の各ゲート端子に供給される。電圧変換回路1202は、選択信号lvを電圧振幅値が5Vの選択信号hvに変換する。選択信号hvは、選択スイッチ1201のゲート端子に供給される。選択スイッチ1201は選択信号hvに従って駆動され、第1の読み出しスイッチ1204および第2の読み出しスイッチ1205は選択信号lvに従って駆動される。
【0037】
図10(b)に示すように、選択スイッチ1201のドレイン電圧v1、温度検知素子702の一方の端子側の電圧v2(端子電圧va)と他方の端子側の電圧v3(端子電圧vb)は、定電流Isの増加にともなって上昇する。ここで、図10(b)のグラフにおいても、図9(b)のグラフの説明で記載した条件が用いられている。
電流源307の定電流範囲は最大約2.7mAであり、この時、電圧v2は最大3Vになる。第1の読み出しスイッチ1204および第2の読み出しスイッチ1205はいずれも、ゲートとソースとの間のしきい値電圧vthが0.6Vである。選択信号lv(=vg2)が3.3Vの時、読み出し範囲Aは2.7V(=vg2-vth=3.3V-0.6V)以下になる。この場合、温度検知素子回路は、読み出し範囲A<v2範囲の関係で動作するので、温度情報を正しく読み出すことはできない。
【0038】
上述のように、本実施形態の記録素子基板101によれば、電源電圧を高くして電流源307の動作範囲を広げた場合に、電圧変換回路502で昇圧した選択信号hvを用いて、選択スイッチ701だけでなく、第1の読み出しスイッチ704を駆動する。これにより、選択スイッチ701の電圧降下を抑えるとともに、第1の読み出しスイッチ704の入力電圧範囲を、電源電圧VHTの電圧範囲内で動作する温度検知素子702の動作電圧範囲に対応させることができる。よって、温度検知信号(温度情報)のS/Nを高くでき、かつ、広がった温度検知電圧範囲に対応して温度検知素子702の端子電圧を正確に読み出すことができる。その結果、吐出不良の判定精度を向上することができる。
【0039】
なお、本実施形態の記録素子基板101において、選択スイッチ701と高電位側の第1の読み出しスイッチ704には高耐圧素子を使用するが、低電位側の第2の読み出しスイッチ705には低耐圧素子を使用できる。高耐圧素子に比べて、低耐圧素子の素子サイズは小さい。例えば、MOSトランジスタの場合、耐圧を高めるためには縦方向(深さ方向)の対策と横方向(面積方向)の対策がある。基本的には、電界強度を下げる必要があるため、横方向の対策の場合、濃度を低くした層を設けることとともに、ソースとドレイン間の距離を離す必要がある。このため、高耐圧のMOSトランジスタは、低耐圧のMOSトランジスタに比べて面積が増える。読み出し回路全体の面積を考えたとき、低電位側の第2の読み出しスイッチ705を小型化できるので、面積の増加を抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態の記録素子基板101において、図4(b)に示した記録素子のセグメント回路802と図9(a)に示した温度検知素子のセグメント回路801に対して、電源電圧VHTと電源電圧VDDをそれぞれ共通に給電してもよい。
図11は、記録素子のセグメント回路802と温度検知素子のセグメント回路801との共通給電の構成を示すブロック図である。図11に示すように、電源電圧VDDが共通の電源線を介してセグメント回路802のスイッチ駆動回路404とセグメント回路801の電圧変換回路502とに供給される。また、電源電圧VHTが共通の電源線を介してセグメント回路802のスイッチ駆動回路404とセグメント回路801の電圧変換回路502および電流源307とに供給される。換言すると、スイッチ駆動回路404の電源電圧と電圧変換回路502の電源電圧は共通である。このように記録素子のセグメント回路802と温度検知素子のセグメント回路801とで電源電圧VDDおよび電源電圧VHTを共通化することで、回路レイアウトを効率化でき、省スペース化を図ることができる。
【0041】
(第2の実施形態)
図12は、本発明の第2の実施形態による記録素子基板の構成を説明するための図である。図12(a)は、1セグメント分の温度検知素子のセグメント回路901の構成を示すブロック図である。図12(b)は、セグメント回路901に適用される温度検知素子回路903の構成を示すブロック図である。
図12(a)に示すセグメント回路901は、第2の読み出しスイッチ705に代えて第2の読み出しスイッチ902を有する点が、図9(a)に示したセグメント回路901と異なる。第2の読み出しスイッチ902は、NMOSトランジスタからなる。第2の読み出しスイッチ902のソース端子は、温度検知素子702の他方の端子と抵抗703とを接続するラインに接続されている。なお、図12(a)には示されていないが、第2の読み出しスイッチ902のドレイン端子は、端子電圧vbを読み出すための共通配線504-3(図7参照)に接続されている。セグメント回路901は、図5に示したセグメント回路504の各セグメントを構成する。ただし、この場合、デコーダ503は、選択信号lv0~lv511を電圧変換回路502に供給するが、セグメント回路504には供給しない。
【0042】
図12(a)に示すセグメント回路901において、電圧変換回路502は、電圧振幅値が3.3Vの小振幅の選択信号lvを電圧振幅値が5Vの大振幅の選択信号hvに変換する。選択信号hvは、選択スイッチ701、第1の読み出しスイッチ704および第2の読み出しスイッチ902の各々のゲート端子に供給される。選択スイッチ701がオンされると、定電流Isが温度検知素子702を流れる。第1の読み出しスイッチ704がオンされると、温度検知素子702の一方の端子の端子電圧vaが出力される。第2の読み出しスイッチ902がオンされると、温度検知素子702の他方の端子の端子電圧vbが出力される。
本実施形態の記録素子基板によれば、第1の実施形態と同様、温度検知信号(温度情報)のS/Nを高くでき、温度検知素子702の端子電圧を正確に読み出すことができる。なお、第2の読み出しスイッチ902に高耐圧素子を用いるため、第1の実施形態と比較して素子サイズが少し大きくなる。しかし、選択スイッチ701、第1の読み出しスイッチ704および第2の読み出しスイッチ902に対して、選択信号hvを共通の配線で供給できるので、配線スペースを削減できる。よって、素子サイズの増加と配線スペースの削減とが相殺されて、読み出し回路全体の面積の増大を抑制することができる。
【0043】
また、本実施形態の記録素子基板において、図12(b)に示す温度検知素子回路903を用いることもできる。温度検知素子回路903は、シフトレジスタ501、電圧変換回路904、デコーダ905および温度検知素子のセグメント回路907を有する。シフトレジスタ501は、図5に示したものと同じである。温度検知素子回路903は、温度検知装置と呼ぶことができる。電圧変換回路904およびデコーダ905は、信号処理部と呼ぶことができる。
電圧変換回路904は、電源電圧VDDと電源電圧VHTが印加されて動作し、電圧振幅値が電源電圧VDDに相当する小振幅の入力信号を電圧振幅値が電源電圧VHTに相当する大振幅の信号に変換する。ここでは、電源電圧VDDは3.3Vであり、電源電圧VHTは5Vである。電圧変換回路904は、電圧振幅値が3.3Vの選択データa0~a8を受けて、電圧振幅値が5Vの選択データb0~b8を出力する。
【0044】
デコーダ905は、高耐圧素子からなり、電源電圧VHTが印加されて動作する。デコーダ905は、選択データb0~b8を受け、電圧振幅値が5Vの選択信号hv0~hv511を出力する。
温度検知素子のセグメント回路907は、図5に示したセグメント回路504と同様、512個のセグメントを有するが、各セグメントは、図12(a)に示したセグメント回路901からなる。セグメント回路907では、選択信号hv0~hv511に従って、512個のセグメント中の1セグメントが選択され、配線を通して温度検知素子702に定電流Isが給電される。同時に、温度検知素子702の両端の端子電圧va、vbが配線を介して出力される。
【0045】
上記の温度検知素子回路903によっても、温度検知信号(温度情報)のS/Nを高くでき、温度検知素子702の端子電圧を正確に読み出すことができる。なお、デコーダ905を高耐圧素子で構成する必要があるため、温度検知素子回路306と比較して、デコーダ905の素子サイズが少し大きくなる。しかし、電圧変換回路904をデコーダ905の前段に配置することで信号線数を削減することができ、電圧変換回路904の回路規模を小さくすることが可能である。よって、素子サイズの増加と回路規模の削減とが相殺されて、回路全体の面積の増大を抑制することができる。
【0046】
(第3の実施形態)
図13は、本発明の第3の実施形態による記録素子基板の構成を説明するための図である。図13には、1セグメント分の温度検知素子のセグメント回路1001の構成が示されている。セグメント回路1001は、図9(a)に示したセグメント回路901の構成から第2の読み出しスイッチ705を削除したものである。セグメント回路1001は、図5に示したセグメント回路504の各セグメントを構成する。ただし、この場合、デコーダ503は、選択信号lv0~lv511を電圧変換回路502に供給するが、セグメント回路504には供給しない。
上記のセグメント回路1001では、選択スイッチ701がオンされると、定電流Isが温度検知素子702を流れる。第1の読み出しスイッチ704がオンされると、温度検知素子702の一方の端子(高電位側の端子)の端子電圧が温度情報として出力される。
【0047】
本実施形態の記録素子基板においても、温度検知信号(温度情報)のS/Nを高くでき、温度検知素子702の端子電圧を正確に読み出すことができる。なお、図9(a)に示したセグメント回路901と比較して、セグメント位置に応じてVSSの配線抵抗の影響を受けるが、配線抵抗値を十分に小さくすることで、セグメント回路901と同等の検知精度を得ることができる。また、セグメント回路1001の回路構成は、セグメント回路901よりも簡単化されているので、回路レイアウトを効率化でき、省スペース化を図ることができる。
【0048】
以上説明した各実施形態の記録素子基板において、選択スイッチ、第1の読み出しスイッチおよび第2の読み出しスイッチに関し、ドレイン端子とソース端子の接続関係を逆にしてもよい。この場合は、上述した説明において、「ドレイン端子」および「ソース端子」をそれぞれ「ソース端子」および「ドレイン端子」と読み替えることで説明することができる。
【0049】
本発明の別の実施形態による温度検知装置は、温度検知素子と、定電流を前記温度検知素子に印加する電流源と、第1のMOSトランジスタと、第2のMOSトランジスタを有する。第1のMOSトランジスタは、ゲート端子以外の2つの端子のうち一方の端子が温度検知素子の一端に接続され、他方の端子が電流源に接続され、選択信号が該ゲート端子に供給される。第2のMOSトランジスタは、ゲート端子以外の2つの端子のうち一方の端子が温度検知素子の一端と第1のMOSトランジスタの一方の端子とを接続するラインに接続され、上記選択信号が該ゲート端子に供給される。第1および第2のMOSトランジスタにおいて、ゲート端子以外の2つの端子は、ドレイン端子とソース端子である。第2のMOSトランジスタのゲート端子と一方の端子との間のしきい値電圧をV1、ゲート端子に印加される電圧をV2とする。ここで、温度検知素子の一端は、高電位側の端子である。例えば、一方の端子がドレイン端子である場合、しきい値電圧V1は、ゲートとドレインの間のしきい値電圧である。しきい値電圧V1から印加電圧V2を引いた値が、定電流が第1のMOSトランジスタを介して温度検知素子に印加されたときの温度検知素子の一端に生じる端子電圧の値よりも大きくなるように、上記選択信号の電圧振幅値を増幅する。この選択信号の電圧振幅値は、電流源を動作させるための電源電圧の値であってもよい。
【0050】
本実施形態の温度検知装置においても、電源電圧を高くして電流源の動作範囲を広げた場合に、第2のMOSトランジスタの入力電圧範囲を、電源電圧の電圧範囲内で動作する温度検知素子の動作電圧範囲に対応させることができる。加えて、第1のMOSトランジスタの電圧降下を抑えることができる。よって、温度検知信号(温度情報)のS/Nを高くでき、温度検知素子の端子電圧を正確に読み出すことができる。
【符号の説明】
【0051】
101 録素子基板
306 温度検知素子回路
502 電圧変換回路
701 選択スイッチ
702 温度検知素子
704 第1の読み出しスイッチ
705 第2の読み出しスイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13