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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185788
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】ダイ保持装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/67 20060101AFI20221208BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20221208BHJP
   H05K 13/02 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
H01L21/68 E
H01L21/78 Y
H05K13/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093626
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【弁理士】
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】加納 慎也
【テーマコード(参考)】
5E353
5F063
5F131
【Fターム(参考)】
5E353CC04
5E353CC12
5E353CC21
5E353CC23
5E353EE01
5E353EE71
5E353GG01
5E353HH61
5E353HH71
5E353JJ21
5E353JJ48
5E353KK01
5E353LL01
5E353LL03
5E353LL04
5E353LL06
5E353QQ01
5F063AA33
5F063DD69
5F063DD86
5F063DE11
5F063DE16
5F063DE23
5F063DE33
5F063EE21
5F131AA04
5F131BA53
5F131BA54
5F131BB03
5F131CA18
5F131DA01
5F131DA03
5F131DA34
5F131DB22
5F131DC21
5F131FA03
5F131KA14
(57)【要約】
【課題】ダイ集合体からダイを適切に保持することを課題とする。
【解決手段】ウェハにダイシングシートを貼着したものをダイシングすることで形成されるダイ集合体からダイを保持する際に用いられる保持具と、保持具を用いてダイを保持できなかった場合に、ダイのダイ集合体での位置を記憶する記憶装置と、記憶装置に記憶されたダイのダイ集合体での位置に基づいて設定された第1領域のダイを第1の保持条件に従って保持し、第1領域以外の第2領域のダイを第1の保持条件と異なる第2の保持条件に従って保持するように、保持具の作動を制御する制御装置と、を備えるダイ保持装置。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェハにダイシングシートを貼着したものをダイシングすることで形成されるダイ集合体からダイを保持する際に用いられる保持具と、
前記保持具を用いてダイを保持できなかった場合に、当該ダイの前記ダイ集合体での位置を記憶する記憶装置と、
前記記憶装置に記憶された前記ダイの前記ダイ集合体での位置に基づいて設定された第1領域のダイを第1の保持条件に従って保持し、前記第1領域以外の第2領域のダイを前記第1の保持条件と異なる第2の保持条件に従って保持するように、前記保持具の作動を制御する制御装置と、
を備えるダイ保持装置。
【請求項2】
前記記憶装置に記憶される前記ダイの前記ダイ集合体での位置を表示する表示装置を備える請求項1に記載のダイ保持装置。
【請求項3】
前記表示装置に表示された前記ダイの前記ダイ集合体での位置に基づいて作業者がユーザ操作により設定した前記第1領域のダイを前記第1の保持条件に従って保持し、前記第2領域のダイを前記第2の保持条件に従って保持するように、前記保持具の作動を制御する前記制御装置を備える請求項2に記載のダイ保持装置。
【請求項4】
前記保持具を用いてダイを保持できた場合に、当該ダイの撮像データに基づいて当該ダイの保持位置のズレ量を演算する演算装置と、
前記演算装置により演算された前記ダイの保持位置のズレ量に基づいて、前記第2の保持条件として、前記保持具によるダイの保持位置を設定する設定装置と、
を備える請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載のダイ保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェハにダイシングシートを貼着したものをダイシングすることで形成されるダイ集合体からダイを保持するダイ保持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献に記載されているように、各種作業機では、種々の部品が保持具により保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/157356号
【特許文献2】特開平11-054517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ダイ集合体からダイを適切に保持することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本明細書は、ウェハにダイシングシートを貼着したものをダイシングすることで形成されるダイ集合体からダイを保持する際に用いられる保持具と、前記保持具を用いてダイを保持できなかった場合に、当該ダイの前記ダイ集合体での位置を記憶する記憶装置と、前記記憶装置に記憶された前記ダイの前記ダイ集合体での位置に基づいて設定された第1領域のダイを第1の保持条件に従って保持し、前記第1領域以外の第2領域のダイを前記第1の保持条件と異なる第2の保持条件に従って保持するように、前記保持具の作動を制御する制御装置と、を備えるダイ保持装置を開示する。
【発明の効果】
【0006】
本開示では、保持具を用いてダイを保持できなかった場合に、当該ダイのダイ集合体での位置が記憶され、その記憶されたダイの位置に基づいて設定された第1領域のダイが第1の保持条件に従って保持され、第1領域以外の第2領域のダイが第2の保持条件に従って保持される。これにより、ダイ集合体からダイを適切に保持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】電子部品装着機を示す斜視図である。
図2】電子部品装着機を示す平面図である。
図3】ダイ供給装置を示す斜視図である。
図4】制御装置を示すブロック図である。
図5】ダイ集合体画像を示す図である。
図6】ダイ集合体画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。
【0009】
図1および図2に電子部品装着機10を示す。図1は、電子部品装着機10の斜視図であり、図2は、カバー12等を取り外した電子部品装着機10を上方からの視点において示した図である。電子部品装着機10は、回路基板に電子部品を装着するための作業機である。電子部品装着機10は、搬送装置20と、装着ヘッド移動装置(以下、「移動装置」と略す場合がある)22と、装着ヘッド24と、パーツカメラ28と、ダイ供給装置30とを備えている。なお、以下の説明において、電子部品装着機10の幅方向をX軸方向と称し、その方向に直角な水平の方向をY軸方向と称する。
【0010】
搬送装置20は、2つのコンベア装置40,42を備えている。それら2つのコンベア装置40,42は、互いに平行、かつ、X軸方向に延びるようにベース46上に配設されている。2つのコンベア装置40,42の各々は、電磁モータ(図4参照)47の駆動により回路基板をX軸方向に搬送する。また、回路基板は、所定の位置において、基板保持装置(図4参照)48によって固定的に保持される。
【0011】
移動装置22は、Y軸方向に延びる1対のY軸方向ガイドレール50と、X軸方向に延びるX軸方向ガイドレール52とを有している。そのX軸方向ガイドレール52は、1対のY軸方向ガイドレール50に上架されている。そして、X軸方向ガイドレール52は、電磁モータ(図4参照)53の駆動により、Y軸方向の任意の位置に移動する。また、X軸方向ガイドレール52は、自身の軸線に沿って移動可能にスライダ54を保持している。このスライダ54は、電磁モータ(図4参照)55の駆動により、X軸方向の任意の位置に移動する。そのスライダ54には、装着ヘッド24が取り付けられている。このような構造により、装着ヘッド24は、ベース46上の任意の位置に移動する。
【0012】
装着ヘッド24は、回路基板に対して電子部品を装着するものである。装着ヘッド24は、下端面に設けられた吸着ノズル60を有している。吸着ノズル60は、負圧エア,正圧エア通路を介して、正負圧供給装置(図4参照)62に通じている。吸着ノズル60は、負圧によって電子部品を吸着保持し、保持した電子部品を正圧によって離脱する。また、装着ヘッド24は、吸着ノズル60を昇降させるノズル昇降装置(図4参照)64を有している。そのノズル昇降装置64によって、装着ヘッド24は、保持する電子部品の上下方向の位置を変更する。
【0013】
パーツカメラ28は、コンベア装置42の隣に配設されている。パーツカメラ28は、上方を向いた状態で配設されており、装着ヘッド24の吸着ノズル60に保持された電子部品を撮像する。
【0014】
ダイ供給装置30は、ベース46のY軸方向における一端部に設けられている。詳しくは、ベース46の縁部には、凹んだ形状の収納部86が形成されており、その収納部86にダイ供給装置30の一部が収納されている。ダイ供給装置30は、図3に示すように、ダイ集合体90からダイ92を供給するものである。ダイ集合体90は、ウェハにダイシングシートを貼着したものをダイシングすることで形成される。なお、ダイ集合体90は、単に「ウェハ」と呼ばれることもあり、ダイ92は、「チップ」と呼ばれることもある。
【0015】
ダイ供給装置30は、メインフレーム100とダイ集合体収容装置102とダイ集合体保持装置104とピックアップヘッド106とピックアップヘッド移動装置(以下、「移動装置」と略す場合がある)108とダイ突上装置(図4参照)110を有している。
【0016】
メインフレーム100の上面は、概して矩形とされており、その上面に、ダイ集合体保持装置104とピックアップヘッド106と移動装置108とが配設されている。そして、メインフレーム100が収納部86に収納されることで、ダイ供給装置30がベース46に取り付けられる。
【0017】
ダイ集合体収容装置102は、メインフレーム100のY軸方向における端部に連結されており、ラック111と昇降テーブル112とを有している。ラック111は、昇降テーブル112の上に配設されており、ラック111の内部には、複数のダイ集合体90が積み重ねられた状態で収容されている。それら複数のダイ集合体90は、昇降テーブル112がテーブル昇降機構(図4参照)115によって昇降されることで、上下方向に移動する。そして、所定の高さに位置するダイ集合体90が、ダイ集合体保持装置104の上に引き出される。なお、ダイ集合体90には、6インチサイズ,8インチサイズ等、種々のサイズのダイ集合体90があり、それら種々のサイズのダイ集合体90をラック111に収容することが可能である。
【0018】
ダイ集合体保持装置104は、図2及び図3に示すように、1対のガイドレール116と保持フレーム117とを有している。1対のガイドレール116は、メインフレーム100上にY軸方向に延びるように配設されており、保持フレーム117をY軸方向に移動可能に支持している。そして、保持フレーム117は、フレーム移動機構(図4参照)118によって、ガイドレール116に沿って、Y軸方向に移動する。その保持フレーム117の上には、ダイ集合体収容装置102から引き出されたダイ集合体90が載置される。また、保持フレーム117には、固定機構119が配設されている。固定機構119は、ダイ集合体90の対向する2辺において、ダイ集合体90を固定し、保持フレーム117の上面で位置決めする。
【0019】
ピックアップヘッド106は、ダイ集合体90からダイ92をピックアップするものであり、下面に複数の吸着ノズル120が装着されている。各吸着ノズル120は、正負圧供給装置(図4参照)121に通じている。吸着ノズル120は、負圧によってダイ92を吸着保持し、保持したダイ92を正圧によって離脱する。また、ピックアップヘッド106は、上下方向に反転し、吸着ノズル120のノズル口を上方に向けることが可能である。これにより、吸着ノズル120によって吸着保持されたダイ92が、ピックアップヘッド106の上部において供給される。また、ピックアップヘッド106は、昇降装置(図4参照)122を有しており、昇降装置122の作動により、各吸着ノズル120が昇降する。
【0020】
移動装置108は、Y軸方向に延びる1対のY軸方向ガイドレール123と、X軸方向に延びるX軸方向ガイドレール124とを有している。そのX軸方向ガイドレール124は、1対のY軸方向ガイドレール123に上架されている。そして、X軸方向ガイドレール124は、電磁モータ(図4参照)125の駆動により、Y軸方向の任意の位置に移動する。また、X軸方向ガイドレール124は、自身の軸線に沿って移動可能にスライダ126を保持している。このスライダ126は、電磁モータ(図4参照)127の駆動により、X軸方向の任意の位置に移動する。そのスライダ126には、ピックアップヘッド106が取り付けられている。このような構造により、ピックアップヘッド106は、メインフレーム100上の任意の位置に移動する。
【0021】
移動装置108のX軸方向ガイドレール124の背面には、クランプ128が取り付けられている。クランプ128は、ダイ集合体収容装置102のラック111に収容されたダイ集合体90を把持する。そして、X軸方向ガイドレール124をY軸方向に移動させることで、クランプ128によって把持されたダイ集合体90は、Y軸方向に移動する。これにより、ラック111に収容されたダイ集合体90が、保持フレーム117の上に引き出される。
【0022】
ダイ突上装置110は、ダイ集合体保持装置104の保持フレーム117の下方に配設されており、突上具(図示省略)と突上具昇降装置(図4参照)150と突上具移動装置(図4参照)152とを有している。突上具は、保持フレーム117に保持されたダイ集合体90のダイ92を裏面から突き上げる。突上具昇降装置150は、その突上具を上下方向に昇降させる。突上具移動装置152は、突上具をダイ集合体90の下方の任意の位置に移動させる。これにより、ダイ突上装置110は、ピックアップヘッド106によるダイ92のピックアップをサポートする。詳しくは、ピックアップヘッド106によってピックアップされるダイ92の下方に突上具が移動させられ、その位置において、突上具が上昇される。これにより、ダイ92が持ち上げられ、その持ち上げられたダイ92が、ピックアップヘッド106の吸着ノズル120によって吸着保持される。
【0023】
また、電子部品装着機10は、図4に示すように、制御装置160を備えている。制御装置160は、コントローラ162と、複数の駆動回路164と、メモリ166とを備えている。複数の駆動回路164は、上記電磁モータ47,53,55,125,127、基板保持装置48、正負圧供給装置62,121、ノズル昇降装置64、テーブル昇降機構115、フレーム移動機構118、昇降装置122、突上具昇降装置150,突上具移動装置152に接続されている。コントローラ162は、CPU,ROM,RAM等を備え、コンピュータを主体とするものであり、複数の駆動回路164に接続されている。これにより、搬送装置20、移動装置22等の作動が、コントローラ162によって制御される。また、コントローラ162は、メモリ166にも接続されている。これにより、コントローラ162は、メモリ166に記憶されている情報を取得したり、種々の情報をメモリ166に記憶させたりすることができる。さらに、コントローラ162は、画像処理装置168にも接続されている。画像処理装置168は、パーツカメラ28により撮像された撮像データを処理するための装置である。これにより、コントローラ162は、撮像データから各種情報を取得する。
【0024】
上述した構成により、電子部品装着機10では、回路基板にダイ92を装着する装着作業が行われる。具体的には、制御装置160のコントローラ162の指令により、回路基板が作業位置まで搬送され、その位置において回路基板が固定的に保持される。また、ダイ供給装置30では、ピックアップヘッド106を用いてダイ92が供給される。
【0025】
具体的には、コントローラ162の指令により、昇降テーブル112が昇降され、ラック111に収容されている複数のダイ集合体90のうちの任意のダイ集合体90が、クランプ128と対向する位置に移動する。そして、ダイ集合体90がクランプ128により把持され、X軸方向ガイドレール124が、Y軸方向に移動する。これにより、クランプ128によって把持されたダイ集合体90が、保持フレーム117の上に引き出される。なお、ラック111から引き出されたダイ集合体90は、図2の実線で示される保持フレーム117の上に位置する。また、保持フレーム117の上に引き出されたダイ集合体90は、固定機構119により固定される。次に、ピックアップヘッド106が、ピックアップ対象のダイ92の上方に移動し、吸着ノズル120によってダイ92が吸着保持される。
【0026】
この際、ピックアップヘッド106の吸着ノズル120によって吸着保持されるダイ92の下方にダイ突上装置110が移動し、その位置において、突上具が上昇する。これにより、ダイ92が持ち上げられ、ダイシングシートから剥がされることで、吸着ノズル120によるダイ92のピックアップがサポートされる。詳しくは、ピックアップ対象のダイ92の下方に、突上具が、突上具移動装置152の作動により移動する。そして、突上具の先端が、ピックアップ対象のダイ92の下面に接触し、そのダイ92を僅かに持ち上げるまで、突上具が突上具昇降装置150の作動により上昇する。そして、突上具により僅かに持ち上げられたダイ92に向かって吸着ノズル120が下降し、そのダイ92が吸着ノズル120により吸着保持される。このように、突上ピン146によって持ち上げられたダイ92が吸着ノズル120により吸着保持されることで、ダイシングシートから剥がされる。そして、吸着ノズル120が上昇することで、吸着ノズル120によってダイ92がピックアップされる。これにより、ダイシングシートに貼着されたダイ92を適切に、吸着ノズル120によってピックアップすることができる。
【0027】
続いて、吸着ノズル120によってダイ92がピックアップされると、ピックアップヘッド106が上下方向に反転する。これにより、吸着ノズル120に吸着保持されたダイ92が、ピックアップヘッド106の上部において供給される。そして、ダイ92がピックアップヘッド106の上部において供給されると、装着ヘッド24が、ピックアップヘッド106の上方に移動し、吸着ノズル60がダイ92を吸着保持する。つまり、ピックアップヘッド106の吸着ノズル120から、装着ヘッド24の吸着ノズル60にダイ92が受け渡される。次に、装着ヘッド24の吸着ノズル60がダイ92を吸着保持すると、装着ヘッド24がパーツカメラ28の上方に移動し、吸着ノズル60が撮像される。この際、撮像データがコントローラ162により分析され、吸着ノズル60に保持されているダイ92の姿勢などが演算される。そして、装着ヘッド24が、回路基板上に移動し、吸着ノズル60に保持されているダイ92の姿勢などが補正されて、回路基板にダイ92が装着される。
【0028】
また、ダイ供給装置30では、ピックアップヘッド106を用いずに、ダイ供給装置30から直接ダイ92を供給することができる。詳しくは、ダイ集合体90がラック111から保持フレーム117上に引き出された後に、保持フレーム117をY軸方向に移動させる。これにより、ダイ集合体90は、図2の点線で示される保持フレーム117の上に位置する。そして、装着ヘッド24が、ダイ集合体90の上方に移動し、吸着ノズル60によってダイ92が吸着保持されることで、ダイ92がピックアップされる。なお、吸着ノズル60によってダイ92がピックアップされる際も、吸着ノズル120によるダイ92のピックアップ時と同様に、ダイ突上装置110によるダイ92の突き上げが行われる。そして、吸着ノズル60によりピックアップされたダイ92が、回路基板に装着される。
【0029】
ただし、吸着ノズル60,120によりダイ92が保持される際に、ダイ突上装置110によりダイ92が突き上げられて、吸着ノズル60,120によるダイ92のピックアップがサポートされるが、ダイ集合体90の特定の領域においてダイ92を吸着ノズル60,120により保持し難い場合がある。詳しくは、ダイ供給装置30にダイ集合体90がセットされる前、つまり、ダイ集合体90がダイ集合体収容装置102に収容される前に、エキスパンド工程が実行される。エキスパンド工程は、ダイ92をダイシングシートから剥がしやすくするためにダイシングシートを伸ばす工程である。この工程が実行される際に、ダイシングシートが均一に伸ばされず、ダイシングシートの特定の領域の伸びが足らない場合がある。このような場合には、そのダイシングシートの特定の領域のダイ92がダイシングシートから剥がれ難くなり、そのダイシングシートの特定の領域のダイ92を吸着ノズル60,120により保持し難い虞がある。
【0030】
そこで、そのダイシングシートの特定の領域、つまり、吸着ノズルにより保持し難い領域(以下、「第1領域」と記載する)と、第1領域以外の領域(以下、「第2領域」と記載する)との各々において、異なる保持条件に従って吸着ノズルによるダイ92の保持作業が実行される。つまり、第1領域において、第1の保持条件に従って吸着ノズルによるダイ92の保持作業が実行され、第2領域において、第1の保持条件と異なる第2の保持条件に従って吸着ノズルによるダイ92の保持作業が実行される。
【0031】
具体的には、第2の保持条件として、一般的な保持条件がユーザ操作により設定されている。例えば、吸着ノズル60,120によりダイ92が保持される際のダイ突上装置110の突上具の突き上げ量が0.1mmに設定されている。また、突上具により突き上げられたダイ92に向かって吸着ノズル60,120が下降する際の下降位置が、例えば、突き上げられた状態の突上具の先端より、ダイ92の厚み寸法に相当する距離に0.1mm加算した距離、上方の位置に設定されている。また、吸着ノズル60,120が下降位置まで下降した後に、負圧によるダイ92の吸引が行われ、吸着ノズル60,120の上昇が開始するまでの時間つまり、吸着保持に要する時間が、例えば、0.1秒に設定されている。
【0032】
一方、第1の保持条件として、第2の保持条件よりダイ92を保持する確率が高くなる条件がユーザ操作により設定されている。例えば、第1の保持条件として、突上具の突き上げ量が、第2の保持条件の0.1mmより高い0.2mmに設定されている。また、例えば、第1の保持条件として、吸着ノズル60,120の下降位置が、第2の保持条件の下降位置より0.05mm下方の位置に設定されている。また、例えば、第1の保持条件として、吸着保持に要する時間が、第2の保持条件の0.1秒より長い0.2秒に設定されている。
【0033】
そして、電子部品装着機10においてダイ92の装着作業が実行される際には、最初、第2の保持条件に従ってダイ集合体90からダイ92が吸着ノズル60,120により保持される。つまり、ダイ供給装置30においてピックアップヘッド106の吸着ノズル120が第2の保持条件に従ってダイ集合体90からダイ92を吸着保持する。そして、そのピックアップヘッド106の吸着ノズル120から装着ヘッド24の吸着ノズル60にダイ92が受け渡されて、装着ヘッドの吸着ノズル60がダイ92を保持した後に、その装着ヘッドの吸着ノズル60がパーツカメラ28により撮像される。また、ダイ供給装置30において装着ヘッド24の吸着ノズル60が第2の保持条件に従ってダイ集合体90からダイ92を吸着保持した後に、その吸着ノズル60がパーツカメラ28により撮像される。そして、撮像データに基づいて、吸着ノズル60に保持されたダイ92の姿勢などが演算されるが、その際に、吸着ノズル60によりダイ92が保持されていないと判断される場合もある。このように、吸着ノズル60によりダイ92が保持されていない理由としては、ダイ供給装置30において吸着ノズル60,120によりダイ集合体90からダイ92を保持することができなかったことが大きな要因と考えられる。つまり、ダイ92がダイシングシートから剥がれ難いために、吸着ノズル60,120によるダイ92の保持に失敗したと考えられる。このため、吸着ノズル60,120により保持することができなかったダイ92の座標位置がメモリ166に記憶される。
【0034】
つまり、ダイ供給装置30においてダイ92がダイ集合体90から保持される際に、コントローラ162は、当然、保持対象のダイ92のダイ集合体90での座標位置を認識している。このため、撮像データに基づいて、保持対象のダイ92が吸着ノズル60により保持されていないと判断された場合に、コントローラ162は、保持対象のダイ92の座標位置と、保持対象のダイ92の保持に失敗したことを示す情報とを関連付けてメモリ166に記憶させる。また、撮像データに基づいて、保持対象のダイ92が吸着ノズル60により保持されていると判断された場合にも、コントローラ162は、保持対象のダイ92の座標位置と、保持対象のダイ92の保持に成功したことを示す情報とを関連付けてメモリ166に記憶させる。そして、撮像データに基づいて吸着ノズル60によりダイ92が保持されているか否かが判断される毎に、コントローラ162は、判断されたダイ92の座標位置と、そのダイ92の保持の成否を示す情報とを関連付けてメモリ166に記憶させる。
【0035】
このように、ダイ92の座標位置と、そのダイ92の保持の成否を示す情報とが関連付けて順次、メモリ166に記憶される毎に、コントローラ162は、保持に失敗したダイ92の個数が、単位面積あたりで所定の個数に達したか否かを判断する。具体的には、例えば、単位面積として10個×10個の領域が設定されており、所定の個数として5個が設定されている場合には、10個×10個の領域で保持に失敗したダイ92の個数が5個に達したか否かを判断する。そして、保持に失敗したダイ92の個数が、単位面積あたりで所定の個数に達した場合に、コントローラ162は、電子部品装着機10の作動を停止する。また、コントローラ162は、メモリ166に記憶された情報に基づいて、図5に示す画像200をモニタ(図1参照)210に表示する。
【0036】
その画像200には、ダイ集合体90を模したダイ集合体画像212が表示されており、そのダイ集合体画像212において、保持に失敗したダイ92と保持に成功したダイ92とが、各々のダイ92と関連付けられている位置座標で表示される。また、ダイ集合体画像212には、保持に失敗したダイ92及び保持に成功したダイ92だけでなく、吸着ノズル60,120による保持作業が実行されていないダイ92、つまり、保持作業前のダイ92も表示される。そして、作業者はダイ集合体画像212を確認することで、ダイ集合体画像212での保持に失敗したダイ92の位置に基づいて、ダイ集合体90での吸着ノズルによりダイ92を保持し難い領域を推定することができる。そこで、作業者は、吸着ノズルによりダイ92を保持し難い領域、つまり、第1領域をダイ集合体画像212において設定する。
【0037】
詳しくは、保持に失敗したダイ92は、図5に示すように、ダイ集合体画像212での左下の箇所に集中している。このため、ダイ集合体画像212での左下の箇所を含む領域が吸着ノズルによりダイ92を保持し難い領域であると推定することができる。そこで、作業者は、図6に示すように、ダイ集合体画像212での保持作業前のダイ92の表示箇所において、吸着ノズルによりダイを保持し難い領域、つまり、第1領域を区画線220により設定する。なお、区画線220の範囲は、作業者が推定に基づいて任意に設定することができる。また、区画線220による第1領域の設定は、モニタ210がタッチパネルであれば、タッチパネルへの操作により設定される。また、マウス,キーボード等の入力装置を用いて、区画線220による第1領域の設定が行われてもよい。
【0038】
そして、ダイ集合体画像212において区画線220による第1領域の設定が行われ、そのダイ集合体画像212の隣に表示されているOKボタン222が操作されることで、電子部品装着機10による装着作業が再開する。この際、第1領域に設定された範囲内のダイ92の保持作業は、第1の保持条件に従って実行される。つまり、吸着ノズルによりダイを保持し難いと推定された領域のダイ92の保持作業は、先に実行されている第2の保持条件よりダイ92を保持する確率が高い保持条件に従って実行される。これにより、ダイシングシートからダイ92を剥がし難い領域のダイ92であっても、吸着ノズル60,120により保持することが可能となる。
【0039】
一方、第1領域以外の領域、つまり、第2領域のダイ92の保持作業は、第2の保持条件に従って実行される。つまり、吸着ノズルによりダイを保持し難いと推定されていない領域のダイ92の保持作業は、先に実行されている第2の保持条件に従って実行される。第2領域のダイ92は、先に第2の保持条件に従って吸着ノズル60,120により保持されたダイ92、つまり、保持に成功したダイ92と同様に、ダイシングシートから剥がされ易いと想定される。このため、第2の保持条件、つまり、一般的な保持条件に従った保持作業であっても、第2領域のダイ92を吸着ノズル60,120により適切に保持することができる。このように、第1領域のダイ92の保持作業が、第1の保持条件に従って実行され、第2領域のダイ92の保持作業が、第2の保持条件に従って実行されることで、吸着ノズルによるダイの保持確率が上昇し、生産効率も上昇する。つまり、吸着ノズルによるダイの保持失敗に起因する生産効率の低下を最小限に抑えることができる。
【0040】
なお、上記実施例において、電子部品装着機10は、ダイ保持装置の一例である。吸着ノズル60は、保持具の一例である。ダイ集合体90は、ダイ集合体の一例である。ダイ92は、ダイの一例である。ダイ突上装置110は、保持具の一例である。吸着ノズル120は、保持具の一例である。制御装置160は、制御装置の一例である。メモリ166は、記憶装置の一例である。モニタ210は、表示装置の一例である。
【0041】
また、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。具体的には、例えば、上記実施例では、第1の保持条件及び第2の保持条件として突上具の突き上げ量、吸着ノズル60,120の下降位置、吸着保持に要する時間が設定されているが、他の条件が設定されてもよい。例えば、吸着ノズルによるダイ92の保持位置の設定、吸着ノズルの上昇・下降速度等が、第1の保持条件及び第2の保持条件として設定されてもよい。
【0042】
また、上記実施例では、第1の保持条件及び第2の保持条件がユーザ操作により設定されているが、コントローラ162により自動で設定されてもよい。例えば、第2の保持条件として、吸着ノズルによるダイ92の保持位置がユーザ操作により設定されている場合に、その第2の保持条件に従って吸着ノズルによるダイ92の保持作業が成功した場合に、吸着ノズルに保持された状態のダイ92が撮像される。そして、コントローラ162において、撮像データに基づいてダイ92の保持位置のズレ量が演算される。また、コントローラ162において、保持位置のズレ量に基づいて補正された新たなダイ92の保持位置が、第1の保持条件として設定される。このように、第1の保持条件がコントローラ162により自動で設定されてもよい。
【0043】
また、上記実施例では、ダイ集合体画像212へのユーザ操作により、吸着ノズルによりダイを保持し難い領域、つまり、第1領域が設定されているが、コントローラ162により自動で設定されてもよい。例えば、第1領域の大きさが予め設定されており、コントローラ162が、保持に失敗したダイ92の座標位置の近傍となるように第1領域の位置を設定してもよい。また、保持に失敗したダイ92の発生比率等に応じて、コントローラ162が第1領域の大きさも自動で設定してもよい。このように、第1領域がコントローラ162により設定される場合は、ダイ集合体画像212をモニタ210に表示しなくてもよい。一方で、ダイ集合体画像212をモニタ210に表示して、コントローラ162により設定された第1領域を、作業者が手動で補正してもよい。
【0044】
また、上記実施例では、吸着ノズル60,120によりダイ92が保持される場合について本発明が適用されているが、チャック等の複数の爪により部品を把持する部品把持具によりダイ92が保持される場合について本発明が適用されてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10:電子部品装着機(対基板作業システム) 60:吸着ノズル(保持具) 90:ダイ集合体 92:ダイ 110:ダイ突上装置(保持具) 120:吸着ノズル(保持具) 160:制御装置 166:メモリ(記憶装置) 210:モニタ(表示装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6