IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 岩川 浩二の特許一覧

<>
  • 特開-フェイスシールド 図1
  • 特開-フェイスシールド 図2
  • 特開-フェイスシールド 図3
  • 特開-フェイスシールド 図4
  • 特開-フェイスシールド 図5
  • 特開-フェイスシールド 図6
  • 特開-フェイスシールド 図7
  • 特開-フェイスシールド 図8
  • 特開-フェイスシールド 図9
  • 特開-フェイスシールド 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185792
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】フェイスシールド
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20221208BHJP
   A62B 18/02 20060101ALI20221208BHJP
   A42B 3/20 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A62B18/02 A
A42B3/20
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093632
(22)【出願日】2021-06-03
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-11-05
(71)【出願人】
【識別番号】314007371
【氏名又は名称】岩川 浩二
(74)【代理人】
【識別番号】100096080
【弁理士】
【氏名又は名称】井内 龍二
(74)【代理人】
【識別番号】100194098
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 一
(72)【発明者】
【氏名】岩川 浩二
【テーマコード(参考)】
2E185
3B107
【Fターム(参考)】
2E185AA06
2E185BA08
2E185CC36
3B107DA08
(57)【要約】
【課題】特に飲食の場面で着用した際に、着用者の手を煩わせることなくスムーズに飲食を行うことができ、しかも飛沫の飛散防止対策の実効性を高めることができるフェイスシールドを提供すること。
【解決手段】着用者の顔の前面を覆うように装着されるフェイスシールド10であって、着用者の頭部に装着する頭部装着部11と、頭部装着部11の左右両側部に、頭部装着部11に対して相対回動可能に取り付けられる回動枠部20と、回動枠部20の前方側に取り付けられる透明板30と、回動枠部20における頭部装着部11との相対回動の回動中心Aよりも後方側に取り付けられる回動バランス調整部40とを備え、回動バランス調整部40が、頭部装着部11と回動枠部20との相対回動時に、回動枠部20の傾き姿勢を保持するように調整する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の顔の前面を覆うように装着されるフェイスシールドであって、
前記着用者の頭部に装着する頭部装着部と、
該頭部装着部の左右両側部に、該頭部装着部に対して相対回動可能に取り付けられる回動枠部と、
該回動枠部の前方側に取り付けられる透明板と、
前記回動枠部における前記頭部装着部との相対回動の回動中心よりも後方側に取り付けられる回動バランス調整部とを備え、
該回動バランス調整部が、前記頭部装着部と前記回動枠部との相対回動時に、前記回動枠部の傾き姿勢を保持するためのものであることを特徴とするフェイスシールド。
【請求項2】
前記回動バランス調整部が、着脱可能な複数の重り部材を含んで構成されていることを特徴とする請求項1記載のフェイスシールド。
【請求項3】
前記回動バランス調整部が、前記回動枠部に沿ってスライド位置調整可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1記載のフェイスシールド。
【請求項4】
前記回動枠部が、回動固定具を介して前記頭部装着部に対して着脱可能に構成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれかの項に記載のフェイスシールド。
【請求項5】
前記頭部装着部が、前記頭部に被せる帽子式、前記頭部に巻装されるバンド式、前記頭部を弾性的に挟持する挟持枠式、又はメガネフレーム式であることを特徴とする請求項1~4のいずれかの項に記載のフェイスシールド。
【請求項6】
前記透明板が、前記着用者の頭部との間に所定の空隙が確保されるように取り付けられ、
前記空隙に配置される排気手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1~5のいずれかの項に記載のフェイスシールド。
【請求項7】
前記排気手段が、飛沫を捕捉可能なフィルタ部材を装着可能に構成されていることを特徴とする請求項6記載のフェイスシールド。
【請求項8】
前記排気手段が、前記頭部装着部に対して着脱可能に構成されていることを特徴とする請求項6又は請求項7記載のフェイスシールド。
【請求項9】
前記頭部装着部が前記回動中心を中心にして上方向に回動した場合に、前記頭部装着部とともに前記回動枠部を上方向に回動させるように、前記回動枠部又は前記透明板を支持する支持部をさらに備えていることを特徴とする請求項1~8のいずれかの項に記載のフェイスシールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフェイスシールドに関し、より詳細には、着用者の顔の前面を覆うように装着されるフェイスシールドに関する。
【背景技術】
【0002】
感染性物質や粉塵などが顔に飛散してくることを防止するための個人用防護具の一種として、着用者の顔の前面を透明板で覆うフェイスシールドが知られている。
昨今の新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の蔓延の状況下、相手からの飛沫を防ぐ他、着用者自身の飛沫の飛散を防止するために、フェイスシールド等の着用が要請される場面が増えてきている。
【0003】
従来から一般的に知られているフェイスシールドは、透明板が顔の前面に略垂直に近い角度で固定されている固定式のものである。透明板が固定式のフェイスシールドは、医療現場などでは不都合なく使用することができる一方、昨今の飛沫感染防止対策が強く要請されている飲食の場面において、透明板が固定式のフェイスシールドを着用した場合、飲食物を口に運ぶ際に透明板が邪魔となって、スムーズに飲食を行うことができない。
【0004】
係る課題を解決するためのフェイスシールド(フェイスガードともいう)が下記の特許文献1~5に開示されている。
特許文献1、2に開示されたフェイスシールドは、頭部に巻装されるベルト部材(ゴム帯、固定ベルト部)に透明板(シールド板ともいう)が上下に回動可能に取り付けられた構成となっている。
また、特許文献3、4、5に開示されたフェイスシールドは、メガネ型のフレーム(装着具)に透明板が上下に回動可能に取り付けられた構成となっている。
上記特許文献1~5に開示されたフェイスシールドによれば、例えば、飲食の場面において、飲食物などを口に運ぶ前に、透明板を上方に持ち上げた状態にしておけば、口元に飲食のためのスペースを確保することができ、スムーズに飲食を行うことが可能となる。
【0005】
[発明が解決しようとする課題]
しかしながら、上記特許文献1~5に開示されたフェイスシールドを着用していても、前記透明板を上方に持ち上げた状態のまま飲食を続けると、飛沫感染を防止する効果を得ることができない。そのため、飛沫感染を防止する効果を得るためには、飲食物を口に運ぶ度に、前記透明板を手で上げ下げするという煩雑な操作が必要となり、非常に煩わしいという課題があった。また、前記透明板を上げ下げする度に、該透明板を手で触れなければならず、該透明板が汚染されやすくなるという課題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3228105号公報
【特許文献2】実用新案登録第3227908号公報
【特許文献3】実用新案登録第3231603号公報
【特許文献4】実用新案登録第3231039号公報
【特許文献5】実用新案登録第3230499号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段及びその効果】
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、特に飲食の場面で着用した際に、着用者の手を煩わせることなくスムーズに飲食を行うことができ、しかも飛沫の飛散防止対策の実効性を高めることができるフェイスシールドを提供することを目的としている。
【0008】
すなわち本発明に係るフェイスシールド(1)は、着用者の顔の前面を覆うように装着されるフェイスシールドであって、
前記着用者の頭部に装着する頭部装着部と、
該頭部装着部の左右両側部に、該頭部装着部に対して相対回動可能に取り付けられる回動枠部と、
該回動枠部の前方側に取り付けられる透明板と、
前記回動枠部における前記頭部装着部との相対回動の回動中心よりも後方側に取り付けられる回動バランス調整部とを備え、
該回動バランス調整部が、前記頭部装着部と前記回動枠部との相対回動時に、前記回動枠部の傾き姿勢を保持するためのものであることを特徴としている。
【0009】
上記フェイスシールド(1)によれば、前記頭部装着部の左右両側部に前記回動枠部が前記頭部装着部に対して相対回動可能に取り付けられ、前記回動枠部の前方側に前記透明板が取り付けられ、前記回動枠部における前記頭部装着部との相対回動の回動中心よりも後方側に前記回動バランス調整部が取り付けられている。
係る構成により、前記回動中心を中心として前記頭部装着部を上下方向に回動させた場合に、前記回動バランス調整部の作用により、前記回動枠部及び前記透明板が、その傾き姿勢を保持する方向に相対回動することとなる。
【0010】
したがって、前記頭部装着部を頭部に装着した前記着用者が、飲食時に箸などで飲食物を口に運ぶ際に正面を向いた状態から斜め下を向くと、前記着用者の顔の下向き動作に合わせて前記頭部装着部が下方向に回動する一方、前記回動枠部は、前記回動バランス調整部の作用により、その傾き姿勢が正面を向いたときの状態に保持される。そのため、顔を下に向けた前記着用者の口元と前記透明板との間のスペースが広がって、前記着用者は飲食物を口にスムーズに運ぶことができる。
【0011】
また、前記着用者が、飲食物を口に運び終わった後、斜め下を向いた状態から正面を向くと、前記着用者の顔の上向き動作に合わせて前記頭部装着部が上方向に回動する一方、前記回動枠部は、前記バランス調整部の作用により、その傾き姿勢が正面を向いたときの状態に保持され、前記着用者の顔の正面が前記透明板で覆われた状態に戻る。
したがって、特に飲食の場面で着用した際に、前記着用者の手を煩わせることなく、すなわち、飲食物を口に運ぶ毎に前記透明板を手で上げ下げする必要もなく、スムーズに飲食を行うことができる。しかも前記着用者が正面を向いたときには、顔の正面に前記透明板が配置されている状態に戻っているので、会話等による飛沫の飛散を防ぐことができ、飛沫の飛散防止対策の実効性を高めることが可能となり、飲食等の場面での使い勝手の良さと感染防止対策とが両立されたフェイスシールドを実現できる。
【0012】
また本発明に係るフェイスシールド(2)は、上記フェイスシールド(1)において、
前記回動バランス調整部が、着脱可能な複数の重り部材を含んで構成されていることを特徴としている。
【0013】
上記フェイスシールド(2)によれば、前記回動バランス調整部が、着脱可能な複数の重り部材を含んで構成されているので、前記複数の重り部材の装着数を調整することにより、前記回動中心を中心とする前記回動枠部の傾き加減が調整されて、着用時における前記透明板の角度を調整することができる。
【0014】
また本発明に係るフェイスシールド(3)は、上記フェイスシールド(1)において、
前記回動バランス調整部が、前記回動枠部に沿ってスライド位置調整可能に取り付けられていることを特徴としている。
【0015】
上記フェイスシールド(3)によれば、前記回動バランス調整部が、前記回動枠部に沿ってスライド位置調整可能に取り付けられているので、前記回動バランス調整部をスライドさせて、その位置を調整することにより、前記回動中心を中心とする前記回動枠部の傾き加減が調整されて、着用時における前記透明板の角度を調整することができる。
【0016】
また本発明に係るフェイスシールド(4)は、上記フェイスシールド(1)~(3)のいずれかにおいて、前記回動枠部が、回動固定具を介して前記頭部装着部に対して着脱可能に構成されていることを特徴としている。
【0017】
上記フェイスシールド(4)によれば、前記回動枠部が、回動固定具を介して前記頭部装着部に対して着脱可能に構成されているので、前記頭部装着部に対する前記回動枠部の取付け位置調整が可能となり、また前記頭部装着部や前記回動枠部の交換が容易にできる。
【0018】
また本発明に係るフェイスシールド(5)は、上記フェイスシールド(1)~(4)のいずれかにおいて、前記頭部装着部が、前記頭部に被せる帽子式、前記頭部に巻装されるバンド式、前記頭部を弾性的に挟持する挟持枠式、又はメガネフレーム式であることを特徴としている。
【0019】
上記フェイスシールド(5)によれば、前記頭部装着部が、前記帽子式又は前記バンド式である場合、頭部に装着したときの安定性を高めることができ、また、前記頭部装着部が、前記挟持枠式又は前記メガネフレーム式である場合、頭部に装着するときの抵抗感を減らすことができる。
【0020】
また本発明に係るフェイスシールド(6)は、上記フェイスシールド(1)~(5)のいずれかにおいて、
前記透明板が、前記着用者の頭部との間に所定の空隙が確保されるように取り付けられ、
前記空隙に配置される排気手段をさらに備えていることを特徴としている。
【0021】
上記フェイスシールド(6)によれば、前記排気手段により、前記着用者の顔面と前記透明板との間の空気の滞留を防ぎ、空気の入れ替えを促進することができる。また、前記透明板が、前記着用者の呼気で曇る現象などを防止することができる。
【0022】
また本発明に係るフェイスシールド(7)は、上記フェイスシールド(6)において、
前記排気手段が、飛沫を捕捉可能なフィルタ部材を装着可能に構成されていることを特徴としている。
【0023】
上記フェイスシールド(7)によれば、前記フィルタ部材により前記飛沫が捕捉されることとなり、前記飛沫の飛散を阻止することができ、前記飛沫の飛散防止対策の効果を一層高めることができる。
【0024】
また本発明に係るフェイスシールド(8)は、上記フェイスシールド(1)~(5)のいずれかにおいて、前記排気手段が、前記頭部装着部に対して、又は前記着用者の頭部に対して着脱可能に構成されているものであることを特徴としている。
【0025】
上記フェイスシールド(8)によれば、前記排気手段が、前記頭部装着部に対して、又は前記着用者の頭部に対して着脱可能に構成されているので、使用する場面や前記着用者の要望等に応じて、前記排気手段を適宜装着することができる。
【0026】
また本発明に係るフェイスシールド(9)は、上記フェイスシールド(1)~(5)のいずれかにおいて、
前記頭部装着部が前記回動中心を中心にして上方向に回動した場合に、前記頭部装着部とともに前記回動枠部を上方向に回動させるように、前記回動枠部又は前記透明板を支持する支持部をさらに備えていることを特徴としている。
【0027】
上記フェイスシールド(9)によれば、前記支持部を備えているので、前記頭部装着部が前記回動中心を中心にして上方向に回動した場合には、前記頭部装着部とともに前記回動枠部を上方向に回動させるように、前記支持部により前記回動枠部又は前記透明板が支持される。したがって、前記着用者が顔を大きく上に向けた場合であっても、前記着用者の顔(特に、鼻や口)と、前記透明板とが接触することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施の形態(1)に係るフェイスシールドを模式的に示す斜視図である。
図2】実施の形態(1)に係るフェイスシールドの使用状態を模式的に示す図であり、着用者が正面を向いているときの状態を示す図である。
図3】実施の形態(1)に係るフェイスシールドの使用状態を模式的に示す図であり、着用者が斜め下を向いているときの状態を示す図である。
図4】実施の形態(2)に係るフェイスシールドを模式的に示す斜視図である。
図5】実施の形態(2)に係るフェイスシールドの使用状態を模式的に示す図であり、着用者が斜め上を向いているときの状態を示す図である。
図6】別の実施の形態に係るフェイスシールドの使用状態を模式的に示す図であり、(a)は、着用者が正面を向いているときの状態、(b)は、着用者が斜め上を向いているときの状態を示す図である。
図7】実施の形態(3)に係るフェイスシールドを模式的に示す斜視図である。
図8】別の実施の形態に係るフェイスシールドを模式的に示す斜視図である。
図9】別の実施の形態に係るフェイスシールドを模式的に示す斜視図である。
図10】別の実施の形態に係るフェイスシールドを模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係るフェイスシールドの実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0030】
図1は、実施の形態(1)に係るフェイスシールドを模式的に示す斜視図である。
図2は、実施の形態(1)に係るフェイスシールドの使用状態を模式的に示す図であり、着用者が正面を向いているときの状態を示す図である。
【0031】
フェイスシールド10は、着用者1(図2参照)の顔の前面を覆うように装着されるものである。フェイスシールド10は、着用者1の頭部に装着する頭部装着部11と、頭部装着部11の左右両側部に、頭部装着部11に対して相対回動可能に取り付けられる回動枠部20と、回動枠部20の前方側に取り付けられる透明板30と、回動枠部20における頭部装着部11との相対回動の回動中心Aよりも後方側に取り付けられる回動バランス調整部40とを含んで構成されている。
【0032】
頭部装着部11は、ここでは頭部に被せる帽子式(キャップ式)の形態を有しており、前部に鍔部11aを備えている。鍔部11aの大きさは、着用時に透明板30に接触しない大きさに設定されている。なお、頭部装着部11は鍔部11aを備えていない形態であってもよい。
【0033】
回動枠部20は、頭部装着部11の左右両側部と前部とを囲う三方枠形状、換言すれば、平面視略U字形状に変形可能なものであり、例えば、可撓性を有するプラスチック製の帯状板で構成されている。回動枠部20の材料としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)などが挙げられるが、これらに限定されない。なお、別の実施の形態では、回動枠部20がアルミニウムやチタンなどの金属製の部材で構成されてもよい。
【0034】
回動枠部20の側面中央付近には、頭部装着部11の左右両側部に、頭部装着部11に対して相対回動可能に取り付けるための回動固定具21が取り付けられている。
回動固定具21は、頭部装着部11に着脱可能に取り付けるためのクリップ部21aと、回動枠部20を回動可能に支持する回動支持部21bとを備えている。回動固定具21は、樹脂製の他、金属製でもよいが、軽量化の観点から樹脂製であることが好ましい。
【0035】
クリップ部21aの形態は、頭部装着部11の縁に確実に挟着可能な形態であればよく、例えば、目玉クリップ式、洗濯ばさみ(ピンチ)式、スライドクリップ式、フィッシュクリップ式など各種の挟持形態のものが採用され得る。なお、市販されているクリップを用いてもよく、この場合は、コストを抑えることができる。また、クリップ部21aは、複数個のクリップで構成されてもよい。
また、回動支持部21bは、例えば、回動枠部20に形成された軸孔20aに挿通される軸部21baと、軸部21baを支持する軸支持部21bbとを備え、軸支持部21bbとクリップ部21aとが一体化された形態となっている。
【0036】
なお、回動固定具21は、頭部装着部11に着脱可能に構成されたものに限定されず、頭部装着部11の左右両側部に固定された形態のもの、例えば、クリップ部21aを備えていない形態、すなわち、回動支持部21bのみで構成されてもよい。また、回動枠部20の側面後方端部には、回動バランス調整部40を取り付けるための取付部20bが設けられている。取付部20bは、例えば、取付孔を含んで構成されている。
【0037】
回動バランス調整部40は、回動中心Aを中心とする頭部装着部11と回動枠部20との相対回動時に、回動枠部20の傾き姿勢、換言すれば、透明板30の傾き姿勢を一定のつり合った状態に保持するように調整するためのものである。
回動バランス調整部40は、例えば、回動枠部20の取付部20bに取り付けられる締結具41と、締結具41に挿着する重り部材42とを含んで構成されている。締結具41は、例えば、ねじ締結を行うボルト部材とナット部材とを含んで構成されているが、重り部材42を取付部20bに取り付け可能な各種の留め具が採用され得る。重り部材42は、例えば、前記ボルト部材に挿着される座金状をした複数のリング部材で構成されている。これらリング部材の取付け枚数を調整することにより、着用時における着用者1の顔に対する透明板30の傾き姿勢が適切に保持された状態となっている。
【0038】
なお、回動バランス調整部40は、上記形態に限定されるものではなく、別の実施の形態では、回動枠部20の取付部20bに、磁力や粘着力で貼着される形態のもの、例えば、1つ以上の磁石、又は磁石シートなどで構成してもよいし、取付部20bに挟着される形態のもの、例えば、重り付きクリップなどで構成してもよい。また、重り部材42の形状は、リング形状に限定されるものではなく、全体の意匠性等を考慮して、種々の形状のものが採用され得る。
また、回動枠部20は、上記した三方枠形状の他、頭部装着部11の左右両側部を囲う二方枠形状のもの(換言すれば、2本の帯状枠部材)で構成されてもよいし、リング枠形状で構成されてもよい。
【0039】
回動枠部20の前方側に取り付けられる透明板30は、可撓性を有する透明なプラスチックシートで構成されており、例えば、着用者1の顔の前面(額から下顎まで)を覆う大きさを備えている。前記プラスチックシートの素材としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)などが挙げられるが、透明な可撓性を有するシートを形成できるものであれば、特に限定されない。透明板30の厚さは、軽量化及び耐久性等の観点から、0.2~0.5mm程度のものが好ましい。また、透明板30の表裏面に抗菌・抗ウイルス加工(例えば、コーティング処理等)、又は防曇加工などが施されてもよい。
【0040】
透明板30の回動枠部20への取付形態は特に限定されない。該取付形態は、例えば、スナップボタン式やホック式のように嵌合可能な取付形態としてもよいし、接着剤や粘着テープなどで固着する形態としてもよいし、透明板30の上部に回動枠部20を挿通できる細幅のスリットを複数箇所に形成しておき、これらスリットに回動枠部20を挿通する取付形態としてもよい。
【0041】
フェイスシールド10によれば、頭部装着部11の左右両側部に回動枠部20が回動固定具21により頭部装着部11に対して相対回動可能に取り付けられ、回動枠部20の前方側に透明板30が取り付けられ、回動枠部20における頭部装着部11との相対回動の回動中心Aよりも後方側に回動バランス調整部40が取り付けられている。
係る構成により、回動中心Aを中心として頭部装着部11を上下方向に回動させた場合に、回動バランス調整部40のバランス調整作用により、回動枠部20及び透明板30が、その傾き姿勢を保持する方向に相対回動するように構成されている。
【0042】
次に実施の形態(1)に係るフェイスシールド10の着用時の動きを説明する。ここでは、飲食時等において、着用者1が正面を向いている状態(例えば、会話をしている状態)から着用者1が斜め下を向いている状態(例えば、飲食物を口に運んでいる状態)に移るときの動きについて説明する。
【0043】
図2は、実施の形態(1)に係るフェイスシールド10を着用した着用者1が正面を向いているときの状態を模式的に示す図である。図3は、実施の形態(1)に係るフェイスシールド10を着用した着用者1が斜め下を向いているときの状態を模式的に示す図である。
【0044】
図2に示す、着用者1が正面を向いているときの状態では、回動バランス調整部40のバランス調整作用により、着用者1の顔の前面が透明板30により覆われた状態となるように、回動枠部20の傾き姿勢が所定の状態で保持されている状態(換言すれば、つり合っている状態)となっている。なお、所定の状態は、回動バランス調整部40の重り部材42の調整により微調整することが可能となっている。
【0045】
そして、図2に示す状態から、飲食物又はその容器を口に運ぶために、着用者1が斜め下に顔を向けると、図3に示す状態へと変化する。
図3に示すように、頭部装着部11を頭部に装着した着用者1が、正面を向いた状態から斜め下を向くと、着用者1の顔の下向き動作に合わせて頭部装着部11が回動中心Aを中心に下方向に回動する一方、回動枠部20は、回動バランス調整部40のバランス調整作用により、その傾き姿勢が正面を向いたときの状態のままつり合った状態で保持される。
そのため、顔を下に向けた着用者1の口元と透明板30との間のスペースが広がる。したがって、着用者1は、広がったスペースを利用して、飲食物等を口にスムーズに運ぶことが可能となる。
【0046】
また、着用者1が、飲食物等を口に運び終わった後、図3に示す、斜め下を向いた状態から顔を上げて正面を向くと、着用者1の顔の上向き動作に合わせて頭部装着部11が回動中心Aを中心に上方向に回動する。一方で回動枠部20は、回動バランス調整部40のバランス調整作用により、その傾き姿勢が正面を向いたときの状態のままつり合った状態で保持されて、図2に示す、着用者1の顔の正面が透明板30で覆われた状態に戻るようになっている。
【0047】
上記実施の形態(1)に係るフェイスシールド10によれば、特に飲食の場面で着用した際に、着用者1の手を煩わせることなく、すなわち、飲食物等を口に運ぶ毎に透明板30を手で上げ下げする必要もなく、スムーズに飲食を行うことができる。しかも着用者1が正面を向いたときには、顔の正面に透明板30が配置されている状態に戻っているので、会話等による飛沫の飛散を防ぐことができ、飛沫の飛散防止対策の実効性を高めることが可能となる。したがって、飲食等の場面での使い勝手の良さと感染防止対策とが両立されたフェイスシールドを実現できる。
【0048】
また、実施の形態(1)に係るフェイスシールド10によれば、回動バランス調整部40が、着脱可能な複数の重り部材42を含んで構成されているので、複数の重り部材42の装着数を調整することにより、回動中心Aを中心とする回動枠部20の傾き加減が調整されて、着用時に透明板30が顔の正面に位置するように、透明板30の取付角度を適切に調整することができる。
【0049】
なお、実施の形態(1)に係るフェイスシールド10では、回動バランス調整部40が、締結具41と複数の重り部材42とを含んで構成されているが、回動バランス調整部40の構成はこの形態に限定されない。
別の実施の形態では、例えば、回動バランス調整部が、回動枠部20の取付部20bに、回動枠部20に沿ってスライド位置調整可能に取り付けられている構成としてもよい。例えば、回動枠部20における回動中心Aよりも後方側に、例えば、段付き溝などを含むスライド溝を前後方向に形成しておき、該スライド溝に重り部材42をスライド可能に配設した構成などが採用され得る。
係る構成によれば、前記回動バランス調整部をスライドさせて、その位置を調整することにより、上記した回動バランス調整部40の作用と同様に、回動中心Aを中心とする回動枠部20の傾き加減が調整されて、着用時に透明板30が顔の正面に位置するように、透明板30の取付角度を適切に調整することができる。
【0050】
また、フェイスシールド10によれば、クリップ部21aを備えた回動固定具21によって、回動枠部20が、頭部装着部11に対して着脱可能に構成されているので、頭部装着部11に対する回動枠部20の取付け位置調整が可能となり、また頭部装着部11や回動枠部20等の交換が容易に行えることとなる。
【0051】
図4は、実施の形態(2)に係るフェイスシールドを模式的に示す斜視図である。
図5は、実施の形態(2)に係るフェイスシールドの使用状態を模式的に示す図であり、着用者が斜め上を向いているときの状態を示す図である。
なお、回動枠部20に設けられた支持部50以外の構成は、上記した実施の形態(1)に係るフェイスシールド10と同一であるので、同一機能を有する構成部品には同一符号を付し、ここではその説明を省略する。
【0052】
実施の形態(2)に係るフェイスシールド10Aでは、回動枠部20の前方内側面から略水平方向に支持部50が略三日月状に延設されている。支持部50は、着用時において、頭部装着部11の鍔部11aの上方に位置する形態となっている。
支持部50は、図5に示すように、頭部装着部11が回動中心Aを中心にして上方向に大きく回動した場合に、鍔部11aに係止された状態で、頭部装着部11とともに回動枠部20を上方向に回動させるように、回動枠部20及びそれと一体化された透明板30を支持するための部材である。なお、支持部50の形状は、略三日月状に限定されるものではなく、鍔部11aに係止可能な形状であれば特に限定されない。
【0053】
上記実施の形態(2)に係るフェイスシールド10Aによれば、実施の形態(1)に係るフェイスシールド10と同様の効果が得られるとともに、支持部50をさらに備えているので、頭部装着部11が回動中心Aを中心にして上方向に大きく回動した場合には、頭部装着部11とともに回動枠部20を上方向に回動させるように、支持部50により回動枠部20及びそれと一体化された透明板30が支持される。
したがって、着用者1が顔を大きく上に向けた場合であっても、着用者1の顔(特に、鼻や口)と、透明板30とが接触することを防止できる。
【0054】
なお、実施の形態(2)に係るフェイスシールド10Aでは、支持部50が回動枠部20の前方内側面から略水平方向に延設されているが、別の実施の形態では、支持部50が透明板30の内側面から略水平方向に延設された形態であってもよい。
【0055】
また、頭部装着部11に鍔部11aが設けられていない場合には、例えば、回動固定具21に支持部50に相当する構成が設けられてもよい。
図6は、別の実施の形態に係るフェイスシールドの使用状態を模式的に示す図であり、(a)は、着用者が正面を向いているときの状態を示す図、(b)は、着用者が斜め上を向いているときの状態を示す図である。
図6に示すフェイスシールド10Bでは、頭部装着部11の回動に合わせて、回動中心Aを中心に回動する回動固定具21Aに支持部21cが装備されている。支持部21cは、回動支持部21bから前方側に延設され、回動枠部20の下辺を支持可能な形態(例えば、支持片)を備えている。
係る構成によれば、図6(a)、(b)に示すように、頭部装着部11が回動中心Aを中心にして上方向に所定角度以上回動した場合に、回動固定具21Aの支持部21cが、回動枠部20の下辺を支持して、頭部装着部11とともに回動枠部20が上方向に回動することとなり、上記したフェイスシールド10Aと同様に、着用者1が顔を大きく上に向けた場合であっても、着用者1の顔(特に、鼻や口)と、透明板30とが接触することを防止できる。もちろん、実施の形態(1)に係るフェイスシールド10と同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0056】
図7は、実施の形態(3)に係るフェイスシールドを模式的に示す斜視図である。
なお、頭部装着部11Aに設けられた小型の排気ファン(排気手段)60以外の構成は、実施の形態(1)に係るフェイスシールド10と同一であるため、同一機能を有する構成部品には同一符号を付し、ここではその説明を省略する。
【0057】
実施の形態(3)に係るフェイスシールド10Cでは、透明板30と頭部装着部11Aとの間に確保された空隙に、電池駆動式の小型の排気ファン60が設けられている。排気ファン60は、左右に配置された2つの回転翼部61と、これら回転翼部61が取り付けられるファン取付部62とを備え、鍔部に相当する形状をしたファン取付部62が頭部装着部11Aと一体化されている。なお、ファン取付部62には、回転翼部61を駆動させるための電池(図示せず)が配設されている。なお、回転翼部61の配設個数は、2つに限定されるものではなく、1つでもよいし、3つ以上でもよいが、軽量化、静音化の観点から少ない方がよい。また、回転翼部61の上下面には、飛沫を捕捉可能なフィルタ部材63が装着可能となっている。
【0058】
上記実施の形態(3)に係るフェイスシールド10Cによれば、透明板30が、着用者1の頭部との間に所定の空隙が確保されるように取り付けられ、該空隙に配置される排気ファン60をさらに備えているので、排気ファン60により、着用者1の顔面と透明板30との間の空気の滞留を防ぎ、空気の入れ替えを促進することができる。また、透明板30が、着用者の呼気で曇る現象などを防止することができる。
【0059】
また、排気ファン60の回転翼部61には、飛沫を捕捉可能なフィルタ部材63が装着可能となっているので、フィルタ部材63により着用者の飛沫が捕捉されることとなり、前記飛沫の飛散を阻止することができ、前記飛沫の飛散防止対策の効果を一層高めることができる。
【0060】
なお、上記実施の形態(3)に係るフェイスシールド10Cでは、排気ファン60が、頭部装着部11Aと一体化されている形態(すなわち、ファン付き帽子式)であったが、別の実施の形態では、排気ファン60が、頭部装着部11Aに対して着脱可能に構成されてもよい。例えば、排気ファン60のファン取付部62と頭部装着部11Aとに面ファスナーが取り付けられ、排気ファン60と頭部装着部11Aとが着脱可能に構成されてもよい。
また、頭部装着部11Aと、排気ファン60とが別々のものとして構成され、別々に着用者1の頭部に装着する構成としてもよい。この場合、例えば、排気ファン60が、着用者1の側頭部に装着可能な略C型形状をしたC型装着部(ファン取付部62に相当する)と、該C型装着部の開放端に取り付けられた2つの回転翼部61とを備えている構成としてもよい。
【0061】
係る構成によれば、排気ファン60が、頭部装着部11Aに対して、又は着用者1の頭部に対して着脱可能に構成されているので、使用する場面や着用者1の要望等に応じて、排気ファン60を適宜装着することができる。
【0062】
なお、上記実施の形態(1)、(2)に係るフェイスシールド10、10A等では、頭部装着部11が、帽子式のもので構成されていたが、頭部装着部11の形態はこれに限定されるものではない。
別の実施の形態では、図8に示すように、フェイスシールド10Dを構成する頭部装着部11Bが、頭部に巻装されるバンド式(例えば、ゴムバンド式、長さ調整可能なバンド式)のもので構成されてもよい。なお、上記した実施の形態(3)に係るフェイスシールド10Cにおいて、帽子式の頭部装着部11Aに代えて、バンド式の頭部装着部11Bで構成してもよい。
【0063】
さらに別の実施の形態では、図9に示すように、フェイスシールド10Eを構成する頭部装着部11Cが、頭部を弾性的に挟持する挟持枠式(例えば、カチューシャ式)のもので構成されてもよい。なお、別の実施の形態では、頭部装着部がバンド式と挟持枠式とを組み合わせた形態のもので構成されてもよい。
また、さらに別の実施の形態では、図10に示すように、フェイスシールド10Fを構成する頭部装着部11Dが、メガネフレーム式のもので構成されてもよい。メガネフレーム式の頭部装着部11Dの場合、回動枠部20の回動固定具21をテンプル部11bに取り付けやすくするために、テンプル部11bに、回動固定具21を取り付けるための取付部11cが形成されてもよい。
【0064】
上記した別の実施の形態では、実施の形態(1)に係るフェイスシールド10と同様の効果が得られるとともに、バンド式の頭部装着部11Bである場合、着用者1の頭部に装着したときの安定性を高めることができ、また、挟持枠式の頭部装着部11C、又はメガネフレーム式の頭部装着部11Dである場合、着用者1が頭部に装着するときの抵抗感を減らすことができる。
【0065】
本発明に係るフェイスシールドは、上記した実施の形態に係るフェイスシールドに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内、すなわち同一の作用効果を発揮できる形状及び寸法の範囲内で適宜変更することができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0066】
1 着用者
10、10A、10B、10C、10D、10E、10F フェイスシールド
11、11A、11B、11C、11D 頭部装着部
11a 鍔部
11b テンプル部
11c 取付部
20 回動枠部
20a 軸孔
20b 取付部
21、21A 回動固定具
21a クリップ部
21b 回動支持部
21ba 軸部
21bb 軸支持部
21c 支持部
30 透明板
40 回動バランス調整部
41 締結具
42 重り部材
50 支持部
60 排気ファン
61 回転翼部
62 ファン取付部
63 フィルタ部材
A 回動中心
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10