(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185802
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】冷蔵庫
(51)【国際特許分類】
F25D 21/06 20060101AFI20221208BHJP
F25D 19/00 20060101ALI20221208BHJP
F28F 1/12 20060101ALI20221208BHJP
F28F 1/00 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
F25D21/06 J
F25D19/00 520F
F28F1/12 G
F28F1/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093649
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】額賀 晴樹
(72)【発明者】
【氏名】河井 良二
(72)【発明者】
【氏名】岡留 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 真也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 遵自
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 祐理
【テーマコード(参考)】
3L046
【Fターム(参考)】
3L046AA01
3L046AA03
3L046AA06
3L046BA04
3L046BA06
3L046CA17
(57)【要約】
【課題】冷蔵用蒸発器の除霜効率を向上させ、省エネルギー性能の高い冷蔵庫を提供する。
【解決手段】内箱と外箱との間に断熱材が設けられた断熱箱体と、前記断熱箱体内に形成される冷蔵温度帯室と、前記冷蔵温度帯室を冷却する冷蔵用蒸発器と、前記冷蔵用蒸発器で冷却された冷気を前記冷蔵温度帯室へ送風する送風機と、冷媒を圧縮する圧縮機と、を備え、前記圧縮機が停止した状態で前記送風機が動作することにより前記冷蔵用蒸発器を除霜する冷蔵庫であって、前記圧縮機の停止中に、前記冷蔵用蒸発器内の液冷媒が重力で排出される。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内箱と外箱との間に断熱材が設けられた断熱箱体と、前記断熱箱体内に形成される冷蔵温度帯室と、前記冷蔵温度帯室を冷却する冷蔵用蒸発器と、前記冷蔵用蒸発器で冷却された冷気を前記冷蔵温度帯室へ送風する送風機と、冷媒を圧縮する圧縮機と、を備え、
前記圧縮機が停止した状態で前記送風機が動作することにより前記冷蔵用蒸発器を除霜する冷蔵庫であって、
前記圧縮機の停止中に、前記冷蔵用蒸発器内の液冷媒が重力で排出される冷蔵庫。
【請求項2】
請求項1に記載の冷蔵庫において、
前記冷蔵用蒸発器を構成する伝熱管は、前記伝熱管内の液冷媒が重力で下り続けるよう連続的に傾斜して配置されている冷蔵庫。
【請求項3】
請求項1に記載の冷蔵庫において、
前記冷蔵用蒸発器に対して下方に直列で接続され、前記冷蔵用蒸発器から排出された液冷媒を貯留する貯留部を有する冷蔵庫。
【請求項4】
請求項3に記載の冷蔵庫において、
前記断熱箱体内に形成される冷凍温度帯室と、前記冷凍温度帯室を冷却する冷凍用蒸発器と、前記冷凍用蒸発器で冷却された冷気を前記冷凍温度帯室へ送風する送風機と、をさらに備え、
前記冷凍用蒸発器が前記貯留部である冷蔵庫。
【請求項5】
請求項1に記載の冷蔵庫において、
前記断熱箱体内に形成される冷凍温度帯室と、前記冷凍温度帯室を冷却する冷凍用蒸発器と、前記冷凍用蒸発器で冷却された冷気を前記冷凍温度帯室へ送風する送風機と、をさらに備え、
前記冷凍用蒸発器を構成する伝熱管は、前記内箱と前記冷凍温度帯室との間の空間に配置され、
前記冷蔵用蒸発器を構成する伝熱管は、前記内箱と前記外箱との間の発泡断熱材内に配置される冷蔵庫。
【請求項6】
請求項5に記載の冷蔵庫において、
前記冷凍用蒸発器を構成する伝熱管は、内面が溝付きであり、
前記冷蔵用蒸発器を構成する伝熱管は、内面が平滑である冷蔵庫。
【請求項7】
請求項1に記載の冷蔵庫において、
前記冷蔵用蒸発器を構成する伝熱管は、前記内箱と接触し、前記内箱の前記冷蔵温度帯室側に設けられた冷却面を介して前記冷蔵温度帯室を冷却する冷蔵庫。
【請求項8】
請求項7に記載の冷蔵庫において、
前記冷却面には、樹脂製のフィンが設けられている冷蔵庫。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫に関する。
【背景技術】
【0002】
冷蔵庫は、貯蔵室を有する断熱箱体と、貯蔵室を開閉する断熱扉と、を備え、圧縮機、凝縮器、減圧手段、蒸発器から構成される冷凍サイクルによって、貯蔵室内の空気を冷却する。また、冷却器には霜が成長するために、定期的に除霜運転が実施される。
【0003】
このような冷蔵庫の除霜運転時には、蒸発器内部の液冷媒量を制御することで、除霜のための熱負荷を小さくして、除霜効率を高めていた。例えば、特許文献1には、『冷凍室と、該冷凍室を冷却する冷凍用蒸発器と、前記冷凍室の下部に設けた冷蔵室と、該冷蔵室を冷却する冷蔵用蒸発器と、を備え、圧縮機と、放熱器と、減圧手段と、前記冷蔵用蒸発器と、前記冷凍用蒸発器と、が冷媒配管で接続され、前記冷蔵用蒸発器と前記冷凍用蒸発器が直列に接続された冷凍サイクルを備える冷蔵庫において、前記冷蔵用蒸発器と前記冷凍用蒸発器を接続する配管に、前記圧縮機停止時における冷媒循環を抑制する冷媒循環抑制手段を設ける』と記載されている。
【0004】
特許文献2には、『冷蔵庫において除霜する際には、三方弁によって除霜する側の蒸発器への冷媒流路を閉じて圧縮機を運転することにより、除霜する側の蒸発器内の冷媒を回収し、冷媒回収後に圧縮機を停止して、除霜ヒータにより該蒸発器の除霜を行う』と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-204874号公報
【特許文献2】特開2002―71262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された冷蔵庫では、圧縮機停止中における蒸発器間の熱輸送を抑制し、省エネルギー性能を向上している。しかしながら、特許文献1記載の冷蔵庫では、頻繁な除霜運転が必要な冷蔵室の除霜運転開始時に、冷蔵用蒸発器内には液冷媒が残留しており、霜を融解させるためには液冷媒を蒸発させるエネルギーが必要となるという課題があった。
【0007】
特許文献2に開示された冷蔵庫では、冷媒回収によって除霜する蒸発器内の冷媒量を減少させることにより、除霜効率を向上させている。しかしながら、特許文献2記載の冷蔵庫では、冷媒回収のために圧縮機を数分間ほど運転させる必要があり、省エネルギー性能が低下するという課題があった。
【0008】
本発明の目的は、冷蔵用蒸発器の除霜効率を向上させ、省エネルギー性能の高い冷蔵庫を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために、本発明は、内箱と外箱との間に断熱材が設けられた断熱箱体と、前記断熱箱体内に形成される冷蔵温度帯室と、前記冷蔵温度帯室を冷却する冷蔵用蒸発器と、前記冷蔵用蒸発器で冷却された冷気を前記冷蔵温度帯室へ送風する送風機と、冷媒を圧縮する圧縮機と、を備え、前記圧縮機が停止した状態で前記送風機が動作することにより前記冷蔵用蒸発器を除霜する冷蔵庫であって、前記圧縮機の停止中に、前記冷蔵用蒸発器内の液冷媒が重力で排出されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、圧縮機の動力なしで冷蔵用蒸発器内の液冷媒を減少させられるため、冷蔵用蒸発器の除霜効率が向上し、省エネルギー性能の高い冷蔵庫が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図3】実施例1に係る冷蔵庫の冷凍サイクルの構成図である。
【
図4】実施例1に係る冷蔵庫の冷凍用蒸発器の斜視図である。
【
図5】実施例1に係る冷蔵庫の冷蔵用蒸発器の側面図である。
【
図6】実施例1に係る冷蔵庫の第二蒸発器の冷却面の斜視図である。
【
図7】実施例1に係る冷蔵庫の蒸発器の伝熱管の断面図である。
【
図8】実施例1に係る冷蔵庫の冷凍サイクル部品を正面からみた配置図である。
【
図9】実施例2に係る冷蔵庫の冷凍サイクルの構成図である。
【
図10】実施例2に係る冷蔵庫の冷凍サイクル部品を正面からみた配置図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
【実施例0013】
本発明の実施例1に係る冷蔵庫1について、
図1から
図8を用いて説明する。
【0014】
図1は、実施例1に係る冷蔵庫の正面図である。
図1に示すように、本実施例の冷蔵庫1は、上方から冷蔵室2、左右に併設された製氷室3と上段冷凍室4、下段冷凍室5、野菜室6の順番で構成されている。製氷室3,上段冷凍室4及び下段冷凍室5は、貯蔵室内の温度が、基本的に冷凍温度帯(0℃未満)の例えば平均的に-18℃程度となっている。冷蔵室2及び野菜室6は、貯蔵室内の温度が、冷蔵温度帯(0℃以上)となっており、例えば冷蔵室2は平均的に4℃程度、野菜室6は平均的に7℃程度である。
【0015】
冷蔵室2は、左右に分割され観音開きする回転式の冷蔵室ドア2aを備え、製氷室3,上段冷凍室4,下段冷凍室5,野菜室6は、それぞれ引き出し式の製氷室ドア3a,上段冷凍室ドア4a,下段冷凍室ドア5a,野菜室ドア6aを備えている。また、これら複数のドアの内部材料はウレタンで構成されている。
【0016】
図2は、
図1のA-A断面図である。冷蔵庫1の庫外と庫内は、外箱9aと内箱9bとの間に発泡断熱材(例えば発泡ウレタン)を充填して形成される断熱箱体9によって隔てられている。また、外箱9aと内箱9bとの間には、発泡断熱材に加えて複数の真空断熱材10が実装され、高断熱化が図られている。ここで、真空断熱材10は、グラスウールやウレタン等の芯材を、外包材で包んで構成される。
【0017】
各貯蔵室は断熱仕切壁11a,11b,11c,11dによって隔てられている。また、断熱仕切壁11a,11b,11c,11dの前方には仕切りカバー12が備わっている。冷蔵室ドア2aの庫内側には複数のドアポケット13が、冷蔵室2には複数段の棚14が、それぞれ設けられており、複数の貯蔵スペースに区画されている。
【0018】
上段冷凍室4,下段冷凍室5及び野菜室6には、それぞれの前方に備えたドアと一体に移動する収納容器4b,5b,6bがそれぞれ設けられており、ドアを手前側に引き出すことにより、収納容器4b,5b,6bも引き出せるようになっている。製氷室3(図示なし)にもドアと一体に移動する収納容器が設けられ、ドアを手前側に引き出すことにより、収納容器3bも引き出せる。
【0019】
断熱仕切壁11aの上方には、冷蔵室2の温度帯よりも低めに設定された氷温室8を備えている。氷温室8は、例えば第二蒸発器15bと第二送風機16bの制御、及び断熱仕切壁11a内に設けたヒータ(図示せず)により、冷蔵温度帯の例えば約0~4℃にするモードと冷凍温度帯の例えば約-3~0℃にするモードに切換えられる。
【0020】
第一蒸発器15a(冷凍用蒸発器)は、下段冷凍室5の背面側に設けてあり、冷凍温度帯室である製氷室3,上段冷凍室4及び下段冷凍室5の他、冷蔵温度帯室である野菜室6や必要に応じて冷蔵室2の冷却を行う。第一蒸発器15aの上方に設けられた第一送風機16aは、第一蒸発器15aと熱交換した冷気を、冷蔵室冷気ダクト17,冷凍室冷気ダクト18,野菜室冷気ダクト(図示なし)を介して、冷蔵室2,製氷室3,上段冷凍室4,下段冷凍室5,野菜室6へ送風する。本実施例では、第一送風機16aの形態はプロペラファンとして、軸方向に効率的に冷気を送風している。なお、以下では、製氷室3,上段冷凍室4,下段冷凍室5を、まとめて冷凍温度帯室7と呼ぶことにする。
【0021】
冷蔵室2への冷気の送風は、冷蔵室ダンパ20の開閉により制御される。冷蔵室ダンパ20にはバッフルプレート21を備えており、バッフルプレート21はモータ駆動によって開閉角度が調整され、送風量を調整している。冷蔵室2に送られた空気は第一蒸発器15aの下方に戻ることで連続的に冷却することができる。なお、冷蔵室2には第二蒸発器15bを備えているため、第二蒸発器15bで冷蔵室2の冷却を賄えないような熱負荷が大きい場合に、冷蔵室ダンパ20が開き、冷蔵室2の冷却が促進される。
【0022】
野菜室6への冷気の送風は、野菜室ダンパ(図示なし)の開閉により制御される。野菜室ダンパにはバッフルプレート(図示なし)を備えており、バッフルプレートはモータ駆動によって開閉角度が調整され、送風量を調整している。野菜室6に送られた空気は第一蒸発器15aの下方に戻ることで連続的に冷却することができる。
【0023】
第一蒸発器15aの下方にはラジアントヒータ22を設けている。第一蒸発器15aの表面に霜が成長し、風路が狭まった場合は、ラジアントヒータ22を動作させることで除霜している。
【0024】
第二蒸発器15b(冷蔵用蒸発器)は、冷蔵室2の背面側に設けてあり、冷蔵温度帯室である冷蔵室2の冷却を行う。第二蒸発器15bの下方に設けられた第二送風機16bは、第二蒸発器15bと熱交換した冷気を、冷蔵室冷気ダクト17を介して冷蔵室2へ送風する。本実施例では、第二送風機16bの形態は遠心ファンとして、周方向(主に上側)に効率的に冷気を送風している。
【0025】
ここで、第一蒸発器15aと熱交換した冷気は、基本的に冷凍温度帯室を冷却するため低温となっており、低温化に伴い湿度も低い。しかし、本実施例の冷蔵室2は、熱負荷が大きくない場合、第二蒸発器15bによって冷却される。すなわち、第一蒸発器15aと熱交換した低湿の冷気が冷蔵室2に直接流入しないので、冷蔵室2を高湿の状態に保つことが可能である。
【0026】
第二蒸発器15bの冷却面33で成長した霜は、第二蒸発器15bに冷媒を流さずに第二送風機16bを動作させることで、ヒータなどの加熱源を用いずに除霜できる。また、第二蒸発器15bの除霜運転時に冷蔵室2に送風される空気は0℃前後(霜の温度)となるため、除霜と同時に冷蔵室2を冷却できる。すなわち、本実施例では、圧縮機25が停止中に冷蔵室2の除霜運転と冷却運転が同時に実施されるため、ヒータなどの加熱源を用いた一般的な除霜に比べて消費電力が低い。したがって、冷蔵室2の除霜運転が頻繁に入る場合であっても、省エネルギー性能を損ないにくくなっている。さらに、圧縮機25を停止した状態でも冷蔵室2を冷却できるため、冷蔵室2内の非定常な温度変動を抑えることが可能であり、例えば0~2度のチルド温度帯に制御が可能となる。また、融解した霜を利用して冷蔵室2を高湿化できる。以下、圧縮機25が停止した状態で第二送風機16bを動作することにより冷蔵室2の除霜と冷却を行う運転を、オフサイクル運転とする。
【0027】
冷蔵庫1の上壁背面側には制御基板23が配置されており、制御基板23に記憶された制御手段に従って、圧縮機25,第一送風機16a及び第二送風機16bのON/OFFや回転数の制御、冷蔵室ダンパ20の開閉制御が実施される。
【0028】
冷蔵庫1の下方に設けられた機械室24内には、圧縮機25の他に第一放熱器26a(
図2中に図示なし)と庫外送風機27(
図2中に図示なし)が配置されている。
【0029】
図3は、実施例1に係る冷蔵庫の冷凍サイクルの構成図である。
図3に示すように、本実施例の冷蔵庫1は、冷媒を圧縮する圧縮機25と、冷媒の放熱を行う放熱手段である第一放熱器26a及び第二放熱器26bと、冷媒を減圧させる減圧手段であるキャピラリチューブ28と、冷媒と庫内の空気を熱交換させて庫内の熱を吸熱する第一蒸発器15a及び第二蒸発器15bと、を備えている。また、冷蔵庫1は、冷凍サイクル中の水分を除去するドライヤ29と、液冷媒が圧縮機25に流入するのを防止する気液分離器30と、をさらに備え、これらを冷媒配管31により接続することで冷凍サイクルを構成している。
【0030】
第一放熱器26aは、庫外送風機27によって庫外空気を吸引するため、第二放熱器26bに比べて放熱効率が高い構成となっている。なお、本実施例の冷蔵庫1は、冷媒にイソブタンを用いている。また、本実施例の圧縮機25はインバータを備えて回転速度を変えることができる。
図3に示す冷凍サイクルでは、減圧手段としてはキャピラリチューブを一例にして挙げているが、膨張弁や膨張弁とキャピラリチューブを組み合わせたものでも良い。
【0031】
図4は、実施例1に係る冷蔵庫の第一蒸発器の斜視図である。
図4に示すように、第一蒸発器15aは、クロスフィンチューブ式熱交換器であり、複数枚のアルミニウム製のフィン34を、複数回に曲げられた伝熱管32が貫くように構成されている。また、伝熱管32の冷媒出口側には、気液分離器30を備えている。この第一蒸発器15aは、内箱9bと冷凍温度帯室7との間の空間に配置される。
【0032】
図5は、実施例1に係る冷蔵庫の第二蒸発器の側面図である。
図5に示すように、第二蒸発器15bは、伝熱管32と、冷却面33と、で構成されており、第二蒸発器15bの伝熱管32は、断熱箱体9の壁面内部に実装される。伝熱管32は、複数回に曲げられており、外箱9aと内箱9bとの間の発泡断熱材内に配置され、内箱9bの背面側と接触している。さらに、内箱9bの冷蔵室2側には冷却面33が接着剤等により固定されており、伝熱管32が冷却面33を介して冷蔵室2を冷却する。このように、第二蒸発器15bの伝熱管32を断熱箱体9の壁面内部に実装することで、冷却システムを小型化して、食品収納容積を拡大している。また、第二蒸発器15bの背面には真空断熱材10を備え、庫外側からの吸熱を抑制している。
【0033】
図6は、実施例1に係る冷蔵庫の第二蒸発器の冷却面の斜視図である。
図6に示すように、冷却面33にはフィン34が設けられているため、伝熱面積が拡大し、冷蔵室2の冷却効率が向上することにより、冷蔵庫1の省エネルギー性能が高められている。フィン34は冷気の流れに平行になるように形成されているので、風路抵抗の増加を抑制できる。また、フィン34の材料は樹脂材料とすることで、フィン34の材料を金属とした場合に比べて、冷却面温度が高くなるため、第二蒸発器15bでの着霜量が抑えられて、オフサイクル運転時間を短縮できる。また、着霜量を抑えることで、冷蔵室2の除湿が抑えられて、冷蔵室2を高湿に保つことができる。さらに、冷気温度が高くなることで、冷蔵食品が凍結するリスクを低減できる。同様の理由により、冷却面33についても樹脂製とすることが望ましい。ただし、冷却面33やフィン34の熱伝導率は、内箱9bよりは高いものとする。なお、本実施例では、着霜量の抑制のために冷却面33やフィン34を樹脂製としたが、冷蔵室2の冷却性能を優先させたい場合にはこれらをアルミニウム等の金属製とすることも可能である。
【0034】
以上、
図5及び
図6を用いて説明したように、第一蒸発器15aは、冷却効率を高めやすいクロスフィンチューブ型の構成として、第二蒸発器15bは、霜の成長を抑えるため伝熱管32を断熱箱体9の壁面内部に実装するとともに冷却面33等を熱伝導率の低い樹脂材料としている。すなわち、第一蒸発器15a側では、空気と冷媒の温度差が小さく(約5℃程度)、霜の成長速度が遅いため、霜成長の抑制よりも冷却効率の向上を優先している。一方で、第二蒸発器15b側では、空気と冷媒の温度差が大きく(約25℃)、霜の成長速度が早いため、冷却効率よりも霜の成長を抑えることを優先している。このように、各蒸発器の特性を考慮することで、冷蔵庫1の省エネルギー性能が高められている。
【0035】
図7は、実施例1に係る冷蔵庫の蒸発器の伝熱管の断面図であり、aは第一蒸発器15aの伝熱管の断面図、bは第二蒸発器15bの伝熱管の断面図、をそれぞれ示している。
図7に示すように、第一蒸発器15aの伝熱管32の内面は溝付きとし、冷媒側の伝熱面積を増大させることで、伝熱管32の温度が冷媒温度に極力近い温度になるようにして、冷却効率を高めている。一方で、第二蒸発器15bの伝熱管32の内面は平滑として、伝熱管32の温度が冷媒温度よりも高い温度になるようにして、着霜量を抑え、除霜時間を短縮している。このように、第一蒸発器15a側では、空気と冷媒の温度差が小さく(約5℃程度)、霜の成長速度が遅いため、冷媒と伝熱管32の温度差を極力小さくして冷却効率を高めやすい構成としている。一方で、第二蒸発器15b側では、空気と冷媒の温度差が大きく(約25℃)、霜の成長速度が早いため、冷媒と伝熱管32の温度差を極力大きくして、霜の成長を抑えるような構成としている。
【0036】
図8は、実施例1に係る冷蔵庫の冷凍サイクル部品を正面からみた配置図である。
図8に示すように、圧縮機25と第一放熱器26aは機械室24に、第二放熱器26bは冷蔵庫1の側面に、第一蒸発器15aは冷凍温度帯室7(の背面側)に、第二蒸発器15bは冷蔵室2(の背面側)に、それぞれ備えられる。また、第二蒸発器15bと第一蒸発器15aとをつなぐ冷媒配管31が、第二蒸発器15bから下方へ延びるように配置されている。さらに、第二蒸発器15bの伝熱管32は、単調に下降するように構成される。
【0037】
ここでは、圧縮機25の駆動中、第二蒸発器15bの伝熱管32を鉛直方向上方から鉛直方向下方へ液冷媒が流れる場合を想定し、伝熱管32が単調に「下降する」と表現した。しかし、圧縮機25の駆動中、第二蒸発器15bの伝熱管32を鉛直方向下方から鉛直方向上方へ液冷媒が流れる場合には、伝熱管32が単調に「上昇する」とも解釈できる。いずれにしても、第二蒸発器15bの伝熱管32は、圧縮機25の停止中、伝熱管32内の液冷媒が重力で下り続けるよう連続的に傾斜して配置されていれば良い。したがって、部分的に水平や上る傾斜が僅かに存在しても、液冷媒が重力で排出されるものであれば、許容される。
【0038】
これにより、オフサイクル運転中に、第二蒸発器15b内の液冷媒が重力によって減少するため、霜を融解させるための熱負荷が小さくなり、冷蔵室2の除霜効率(オフサイクル運転の効率)を向上できる。また、第二蒸発器15bの霜が融解されて水分を含む空気が、冷蔵室2へ供給されるので、冷蔵室2を高湿化して、冷蔵食品の鮮度を向上できる。
【0039】
図8に示すように、第二蒸発器15bは、第一蒸発器15aよりも上に設けることで、オフサイクル運転中に第一蒸発器15aから第二蒸発器15bに液冷媒が流れることを抑制し、熱負荷の増大を抑制して除霜効率(オフサイクル運転の効率)を高めている。さらに、本実施例では、第二蒸発器15bから下方へ延びる冷媒配管31によって、第二蒸発器15bと第一蒸発器15aとが直列で接続されているので、第一蒸発器15aが、第二蒸発器15bから流れ落ちた液冷媒を溜めるタンク(貯留部)の役割を果たす。このため、第二蒸発器15bの伝熱管32から液冷媒が確実に排出されることになり、結果的に除霜効率のさらなる向上に繋がる。なお、液冷媒を溜めるタンクとしては、伝熱管32よりも断面積の大きいものであれば第一蒸発器15a以外でも良く、例えば、第二蒸発器15bより低い位置に別途設けるヘッダなどであっても良い。
【0040】
本実施例では、第一蒸発器15aだけでなく、冷蔵室2に第二蒸発器15bを設けている。これにより、第一蒸発器15aだけを実装した場合に比べて、第一蒸発器15aの着霜量が低減されて、冷凍温度帯室7の除霜運転時間を低減し、冷蔵庫1の省エネルギー性能を向上できる。なお、本実施例では第二蒸発器15bに霜が成長してオフサイクル運転により霜を融解させるが、オフサイクル運転による消費電力量の増加に比べて、冷凍温度帯室7の除霜時間の短縮の方が影響は大きく、冷蔵庫1の消費電力量を低減できる。
【0041】
また、本実施例のように、第一蒸発器15aと第二蒸発器15bを直列に接続することで、並列に接続する場合に比べてキャピラリチューブ28の数を2本から1本に低減し、冷媒流路を分岐させる弁や、冷媒の逆流を抑制するための逆止弁などの部品も不要となる。その結果、冷蔵庫1を安価に製造できると共に、冷凍サイクル構造が簡易であるために製造不良の割合を下げることができる。さらに、本実施例では、冷媒は第二蒸発器15bを通過後に第一蒸発器15aと気液分離器30を通過するように構成し、気液分離器30を冷凍室冷気ダクト18内に実装している。このように構成することで、気液分離器30を断熱箱体9の壁面内部に実装せずに済むため、断熱箱体9の薄型化と除霜効率の向上の両立が可能である。
【0042】
同様に、冷媒上流側を第二蒸発器15bとし、冷媒下流側を第一蒸発器15aとすることで、第二蒸発器15bよりも第一蒸発器15aの冷媒温度が伝熱管内の圧力損失によって下がる。さらに、冷媒下流側の方が液冷媒の量が少なくなる(渇き度が高くなる)ことで、冷媒側の熱伝達率が向上する。したがって、第一蒸発器15a側では、空気と冷媒の温度差を極力大きくして冷却効率を高めやすい構成となり、第二蒸発器15b側では、空気と冷媒の温度差を極力小さくして霜の成長を抑えやすい除霜効率の高い構成となる。
以上が本実施例の形態である。なお、本発明は、前述した形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。さらに、実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。