(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185804
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】洗濯乾燥機
(51)【国際特許分類】
D06F 39/12 20060101AFI20221208BHJP
D06F 25/00 20060101ALI20221208BHJP
D06F 37/26 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
D06F39/12 C
D06F25/00 A
D06F37/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093653
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 重幸
(72)【発明者】
【氏名】今成 正雄
(72)【発明者】
【氏名】川村 圭三
(72)【発明者】
【氏名】松井 康博
(72)【発明者】
【氏名】山本 哲也
【テーマコード(参考)】
3B165
【Fターム(参考)】
3B165AA02
3B165AA05
3B165AB22
3B165AB30
3B165AB33
3B165AE04
3B165AE07
3B165AE12
3B165BA42
3B165BA55
3B165BA82
3B165CA01
3B165CA11
3B165CB01
3B165CB12
3B165CB31
3B165CB55
3B165CB59
3B165CC02
3B165CD05
3B165CD15
3B165DW03
3B165DW05
3B165EW01
3B165GA02
3B165GA12
3B165GA25
3B165GH02
3B165JM02
(57)【要約】
【課題】
本発明は、乾燥運転開始直後における除湿能力を向上することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、内部に液体を貯留可能な外槽2と、外槽2内に回転可能に支持され、洗濯物を収容するドラム3と、ドラム3に空気を送風する送風ファン20と、送風ファン20が送風する空気を加熱するヒータ22とを備える。外槽2の外周には内部に水を貯留する水容器40を備える。水容器40は乾燥工程の開始前までに水で満たすようにした。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に液体を貯留可能な外槽と、前記外槽内に回転可能に支持され、洗濯物を収容するドラムと、前記外槽もしくは前記ドラムに空気を送風する送風手段と、前記送風手段が送風する空気を加熱する加熱手段とを備えた洗濯乾燥機であって、
前記外槽の外周には内部に水を貯留する水容器を備え、
前記水容器は乾燥工程の開始前までに水で満たすようにしたことを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項2】
請求項1において、
前記水容器は脱水工程の開始前までに水で満たすようにしたことを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記水容器は、前記外槽の全周に配置したことを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項4】
請求項1又は2において、
前記水容器は、前記外槽の一部に配置したことを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項5】
請求項1又は2において、
前記水容器には、水道水を供給する水容器給水弁と、前記水容器内の水を排水する水容器排水弁を備えたことを特徴とする洗濯乾燥機。
【請求項6】
請求項1又は2において、
前記外槽と前記水容器を接続する送水管に配置されたポンプとを備え、
すすぎ工程終了後、排水工程前に前記ポンプを駆動させ前記外槽の水を前記水容器に送水することを特徴とする洗濯乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類等の洗濯を行う洗濯機及び洗濯から乾燥まで一貫して行う洗濯乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
洗濯から乾燥までを連続して行える洗濯乾燥機による衣類の乾燥は、温風加熱除湿方式とヒートポンプ方式がある。
【0003】
温風加熱除湿方式は、ヒータで加熱した空気を衣類に吹き付けて、衣類から水分を吸収する。湿気を含んだ空気は、所定の空間で低温面に接触して冷却され、凝縮して除湿される。そして、除湿された空気を再び加熱し、高温となった空気を衣類に吹き付ける。これらの動作は繰返し実行される。
【0004】
ヒートポンプ方式は、圧縮機、凝縮器、膨張弁、蒸発器を冷媒配管で接続して冷凍サイクルを構成する。圧縮機から出た高温・高圧の冷媒は凝縮器に送られ、凝縮器から出た冷媒は膨張弁で低温・低圧の冷媒となり、蒸発器に送られる。蒸発器から出た冷媒は、再び圧縮機に送られる。
【0005】
凝縮器では空気が加熱され、加熱した空気を衣類に吹き付けて、衣類から水分を吸収する。湿気を含んだ空気は、蒸発器で冷却され、凝縮して除湿される。除湿された空気は、再び凝縮器に送られ、加熱される。これらの動作は繰返し実行される。
【0006】
上記の通り、空気を除湿するためには、空気の露点温度よりも低い低温面を構成する必要がある。
【0007】
洗濯乾燥機では、洗濯時に水道水を用いるが、この水道水は比較的低温であるので、湿気を含んだ空気の除湿に利用することができる。水道水を用いた水冷除湿方式として、例えば特許文献1に記載の技術がある。
【0008】
特許文献1では、水槽の内部に洗濯物を収容する回転槽を備えている。回転槽は、多数の透孔を有する内槽と、内槽の外周側に配置した外槽によって構成されている。回転槽は駆動モータによって回転する。洗濯時には、外槽に水を溜めて駆動モータによって洗濯が実行される。脱水時には、内槽に形成された多数の透孔を通して水が外槽に放出される。脱水終了後、乾燥運転に移行する。乾燥運転では、ヒータと送風機を運転させ、高温の空気を衣類に吹き付ける。また、乾燥運転開始後、給水弁を開いて水槽と回転槽(外槽)との間に水を供給する。回転槽の外槽は、水によって冷却される。湿気を含んだ空気は、外槽によって冷却され、凝縮して除湿される。
【0009】
上記のように、特許文献1では、水槽と回転槽(外槽)との間に溜めた水を除湿に利用するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
乾燥運転においては、乾燥運転開始直後に空気が湿気を多く含むため、乾燥運転開始直後に除湿能力を高めることが好ましい。
【0012】
特許文献1では、除湿に利用する水は、乾燥運転開始後、給水弁を開いて水槽と回転槽(外槽)との間に注水するようにしているので、水槽と回転槽(外槽)との間に所定の水が溜まるまで、除湿能力を発揮することができない。そのため、乾燥運転直後における除湿能力が低下し、乾燥時間が延びてしまい、必要以上に電力を消費するといった課題があった。
【0013】
本発明の目的は、上記課題を解決し、乾燥運転開始直後における除湿能力を向上することができる洗濯乾燥機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明は、内部に液体を貯留可能な外槽と、前記外槽内に回転可能に支持され、洗濯物を収容するドラムと、前記外槽もしくは前記ドラムに空気を送風する送風ファンと、前記送風手段が送風する空気を加熱する加熱手段とを備えた洗濯乾燥機であって、前記外槽の外周には内部に水を貯留する水容器を備え、前記水容器は乾燥工程の開始前までに水で満たすようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、乾燥運転開始直後における除湿能力を向上することができる洗濯乾燥機を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施例1に係るドラム式洗濯乾燥機の外観斜視図である。
【
図2】本発明の実施例1に係るドラム式洗濯乾燥機100の内部構成を示す模式図である。
【
図4】本発明の実施例1に係る洗濯から乾燥までの動作を示すフロー図である。
【
図5】本発明の実施例1に係る水容器の有無による除湿効果を比較した図である。
【
図6】実施例1の他の例に係る洗濯から乾燥までの動作を示すフロー図である。
【
図7】本発明の実施例2に係るドラム式洗濯乾燥機100の内部構成を示す模式図である。
【
図9】本発明の実施例3に係るドラム式洗濯乾燥機100の内部構成を示す模式図である。
【
図10】本発明の実施例3に係る洗濯から乾燥までの動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施例について添付の図面を参照しつつ説明する。同様の構成要素には同様の符号を付し、同様の説明は繰り返さない。
【0018】
本発明の各種の構成要素は必ずしも個々に独立した存在である必要はなく、一の構成要素が複数の部材から成ること、複数の構成要素が一の部材から成ること、或る構成要素が別の構成要素の一部であること、或る構成要素の一部と他の構成要素の一部とが重複すること、などを許容する。
【実施例0019】
図1は、本発明の実施例1に係るドラム式洗濯乾燥機の外観斜視図である。ユーザは、対象の衣類等を、筐体1前面に設けられたドア9を開けドラム3内に入れ、洗剤や柔軟剤の投入口11に入れ、操作面10を操作し、洗濯のみや乾燥までなどの必要な運転操作を行う。
【0020】
ドラム式洗濯乾燥機100の外郭を構成する筐体1の内部には、衣類を収容するステンレス製のドラム3(内槽)と、ドラム3の外周に配置された外槽2(
図2)が備えられている。筐体1の前面には、ドラム3の開放部を覆うガラス製のドア9が備えられている。ドア9の端部にはヒンジ91が備えられており、ドア9を開閉可能に支持している。外槽2の内部に液体を貯留可能となっている。ドラム3は外槽2内に回転可能に支持されている。
【0021】
筐体1とドア9との間には、柔軟なゴム製のベローズ12が備えられており、ドア9を閉状態にした際には、ベローズの弾性変形によりドアが密着し内部から筐体外部への漏水や湿気の漏れを防止できる構成となっている。
【0022】
ドラム3の円筒部壁面には、複数の小孔3aが形成されており、水はこの小孔3aを通過する。特に、洗濯とすすぎ後に実行されるドラム3の高速脱水時においては、衣類は遠心力によりドラム3の円筒内面に押さえ付けられ、衣類に含まれた水分はドラム3に形成された複数の小孔3aを通過して外槽2に至る脱水が行われる。
【0023】
また、ドラム内には回転に合わせ衣類を上方まで一時的に掻き揚げる複数個の突起状のリフター(図示せず)を備える。この突起により、洗濯、すすぎ、乾燥時に回転するドラム3により衣類の攪拌が行われる。
【0024】
図2は、本発明の実施例1に係るドラム式洗濯乾燥機100の内部構成を示す模式図である。
図2では、ドラム式洗濯乾燥機100の筐体1から前面パネルを取り外した正面図を示している。
図3は、
図2のIII-III線断面図である。
【0025】
筐体1の内部には、衣類を内部に収容するドラム3と、ドラム3の外周に所定の間隙をもって配置された同心円状の外槽2を備えている。なお、ドラム3は、外槽2の奥側底部にインサートされた軸受を介したシャフトにより片持ち支持される。シャフト端部はドラム底部中心に結合される。シャフトの他方端部は、モータ31に直接結合されるか、シャフトに取り付けたプーリとベルトを介してモータに連結される。
【0026】
外槽2の外周には、外槽2の全周を覆うように配置された水容器40が備えられている。水容器40は内部に水を貯留する。水容器40と外槽2との間には、複数のリブ41が備えられており、水容器40と外槽2が所定の間隙を保つようにしている。
【0027】
水容器40の下部には、防振のための複数本のサスペンション6が備えられている。また、水容器40の上部には、防振用の複数本の吊ばね61が備えられている。複数本の吊ばね61は、筐体1と水容器40との間に配置され、筐体1から水容器40を吊下げるようにしている。
【0028】
筐体1の下部には、外槽2と連通する排水管28と、排水管28の途中に備えられ、外槽2に溜まった水を排水するための排水弁44が備えられている。
【0029】
水容器40には、水容器40と外槽2との間隙に水を給水する水容器給水系42となる水容器給水弁421と、水容器40と外槽2との間隙に溜まった水を排水する水容器排水系43となる水容器排水弁431を備えている。水容器40は、外槽2と同一の樹脂材料、或いは異質材で一体形成しても良く、また複数の材料を組み合わせて構成してもよい。複数の材料を組み合わせる場合には、連結部を溶接・溶着したり、連結部にシール材を配置すると良い。
【0030】
水容器40と外槽2との間に溜まった水は、外槽2の外周面と接触しているので、外槽2を冷却する。すなわち、水容器40と外槽2との間に水が溜まると、外槽2は水で冷却され、除湿面として機能する。
【0031】
乾燥工程の主要部品である乾燥ユニットは、外槽2もしくはドラム3に空気を送風する送風ファン20(送風手段)と、送風ファン20が送風する空気を加熱するヒータ22(加熱手段)で構成される。ヒータ22は、送風ファン20の下流側に配置されている。また、乾燥ユニットには、ドラム3に臨んだ吹出しノズル26が備えられており、乾燥ユニットからの温風を吹出しノズル26を介してドラム3若しくは外槽2に吹き出す。
【0032】
外槽2の背面には、ドラム3から連通可能な位置に水冷除湿ダクト51が設けられる。水冷除湿ダクト51の上部には冷却水弁521を設けた冷却給水系52を備える。ドラム3内の衣類から水分を吸収し、湿気を含んだ空気は、水冷除湿ダクト51を通過する際に凝縮し、除湿される。
【0033】
次に、
図4を用いて本発明における洗いから乾燥工程までの動作を説明する。
図4は、本発明の実施例1に係る洗濯から乾燥までの動作を示すフロー図である。実施例1のドラム式洗濯乾燥機100では、洗い、すすぎ、乾燥といった3段階の工程を実行する。以下のフローは、図示しない制御装置で実行される。
【0034】
図4において、使用者は電源ボタンをONし、洗濯コースを選択する(ステップS1)。洗濯コースを選択後、ドラム3を回転させ、布量をセンシングし(ステップS2)、洗剤量、運転時間を算出する(ステップS3)。ステップS3で算出された洗剤量に基づき、外槽2に所定量の洗剤を投入する(ステップS4)。
【0035】
実施例1では、ドラム式洗濯乾燥機100の洗剤容器に予め洗剤が注入され、この洗剤容器から外槽2に洗剤を投入する洗剤自動投入装置を備えたものを想定しているが、外槽2への洗剤投入は手動で行うようにしても良い。
【0036】
外槽2へ洗剤投入後、外槽2への給水を行う給水工程を開始する(ステップS5)。外槽2への給水が所定量に達した後、洗剤溶かし工程(ステップS6)、前洗い工程(ステップS7)を実行し、本洗い工程を実行する(ステップS8)。
【0037】
所定時間本洗い工程を実行した後、洗い工程に使用した水を排水する排水工程を実行し(ステップS9)、排水完了後、脱水工程を実行する(ステップS10)。
【0038】
所定時間脱水工程を実行した後、再び外槽への給水を行う給水工程を開始する(ステップS11)。
【0039】
外槽2への給水が所定量に達した後、すすぎ1工程を実行する(ステップS12)。所定時間すすぎ1工程を実行した後、すすぎ1工程に使用した水を排水する排水工程を実行し(ステップS13)、排水完了後、脱水工程を実行する(ステップS14)。
【0040】
所定時間脱水工程を実行した後、再び外槽への給水を行う給水工程を開始する(ステップS15)。
【0041】
外槽2への給水が所定量に達した後、すすぎ2工程を実行する(ステップS16)。所定時間すすぎ2工程を実行した後、すすぎ2工程に使用した水を排水する排水工程を実行し(ステップS17)、排水完了後、脱水工程を実行する(ステップS18)。
【0042】
乾燥工程前の脱水工程においては、衣類からできる限り脱水するように、ドラム3はモータ31により高速で回転させられる(高速脱水)。なお、高速脱水にあたっては、安全に動作できる高速脱水回転数を決定するため、予め定めた低回転数で衣類の偏りによるアンバランス量を確認する操作が行われる。アンバランス量は図示しないセンサによって検知される。センサによってアンバランスが検知された場合は、ドラム3の回転を停止してドラム円筒面に張り付いた衣類が重力作用でドラム内の下部に落下することで衣類の配置を変える。そして、また低回転でドラムを回転させアンバランスを確認する操作が行われる。アンバランスが改善されるまでこの操作を数回繰り返す。アンバランスが最高回転数を安全に回転できないと判断される場合は所定の最高回転数以下の回転数で高速脱水が行われる。
【0043】
所定時間、高速脱水による脱水工程を実行した後、乾燥工程を実行する(ステップS19)。
【0044】
以上の工程が洗いから乾燥までの流れとなるが、実施例1では上記工程に加え、水容器40に注水する水容器注水工程(ステップS20)を備えている。
【0045】
実施例1では、乾燥工程開始前までに水容器40への注水が完了し、水容器40を水で満たすようにしている。最終のすすぎとなるすすぎ2工程(ステップS16)が終了し、排水工程(ステップS17)に移行すると、水容器給水弁421を開き、水容器40内に水道水を供給する水容器注水工程を実行する(ステップS20)。そして、乾燥工程開始前までに水容器注水工程を完了させる。水容器給水弁421を開き、水容器40内に水道水を供給している状態では、水容器排水弁431は閉じておく。水容器40内は必ずしも満水にする必要はなく、所定量給水できた段階で水容器給水弁421を閉じる。実施例1では、最終脱水工程(ステップS18)の前までに水容器40への注水を完了させている。
【0046】
乾燥工程終了後、水容器排水弁431を開いて、水容器40内の水を排水する水容器排水工程を実行する(ステップS21)。
【0047】
乾燥工程においては、送風ファン20及びヒータ22を動作し、ヒータ22で加熱された空気がドラム3内の衣類に吹き付けられる。加熱した空気は衣類から水分を吸収し、湿気を含んだ空気は、ドラム3の小孔3aを通過し、ドラム3と外槽2との間の空間に流れる。外槽2は水容器40に供給された水によって冷却されているので、外槽2に接触した空気は凝縮し、除湿される。さらに、ドラム3と外槽2との間の空間に流れた空気は、外槽2背面に設けた水冷除湿ダクト51の入口に導かれる。
【0048】
水冷除湿ダクト51内では、冷却水弁521を開くことにより、冷却給水系52により上方から水道水が所定流量で流下している。上昇する空気流との対向流の直接接触熱交換で空気の潜熱分が冷却水側に受け渡され空気中の水分が少なくなる(除湿)。このような一連の動作が乾燥工程中は繰り返され、衣類からの蒸発と、空気の除湿により衣類の乾燥が行われる。乾燥工程の終盤では、所定箇所に設けた温度や湿度センサからの検知値が、予め定められた所定の衣類の乾燥率に達すると乾燥を終了する。
【0049】
乾燥工程初期は、衣類が含む水分が多く蒸発によって高温高湿の空気が上記の経路を循環することになる。高湿の空気は、その温度と等しい露点温度以下の流路内の壁面各所で凝縮する。例えば、外槽2の内面も露点温度以下であれば凝縮することなる。
【0050】
実施例1では、水冷除湿を行う水冷除湿ダクト51、冷却給水系52に加え、水容器40を備えている。外槽2と水容器40の間に給水した水の熱容量分により外槽2の温度上昇が遅れる。その結果、乾燥工程中に露点温度以下になる時間が長時間になるため外槽2内面が除湿面として作用する。先に示した水冷除湿ダクト51のみでは伝熱面積が不足している場合など、外槽2内面が除湿面として効果的に作用する。水容器40に給水した水の温度が乾燥工程の時間に伴って上昇すると外槽2壁面も温度が上昇し除湿量は減るが熱容量分の時間分は広い面を除湿面として作用できるため効果的な除湿・乾燥を行うことができる。
【0051】
さらに実施例1では、乾燥運転開始時においては水容器40に水が溜まっており、外槽2が冷却されているので、乾燥運転開始時における除湿能力を向上することができる。
【0052】
上記した現象を
図5のグラフで説明する。
図5は、本発明の実施例1に係る水容器の有無による除湿効果を比較した図である。
図5では、横軸が時間を示し、縦軸が温度を示している。
【0053】
乾燥工程が開始すると、ヒータにより時間の経過と共に外槽内の空気温度が上昇する。また、外槽内の空気温度の上昇に伴い、外槽2の温度も上昇する。外槽2の温度は、水容器40の有無に関わらず、上昇する。しかし、水容器40がある場合、水容器40が無い場合に比べ、外槽2の温度上昇が遅れる。すなわち、同じ時間で見た場合、水容器40がありは水容器40なしに比べて温度が低く、この温度差が除湿能力の差となる。換言すると、水容器40がありは水容器40なしに比べて除湿能力が高い。さらに、水容器40がありは水容器40なしに比べて外槽2の温度上昇が遅れるので、除湿時間を長くできる。さらにまた、実施例1では、乾燥運転開始時においては水容器40に水が溜まっており、外槽2が冷却されているので、乾燥運転開始時における除湿能力を向上することができる。そして、実施例1では、乾燥時間の短縮が図れ、消費電力量の低減を図ることができる。
【0054】
図4に示した工程では、最終脱水工程(ステップS18)開始前までに水容器40への注水を完了させ、水容器40を水で満たすようにしている。これは、以下の理由がある。
【0055】
一般的な振動系では高速脱水時は可動部の質量が大きいと振動が少ない。水容器40に予め給水した水道水の質量によって、ドラム3と外槽2、また水容器40の全体の質量が大きくなり、振動が少なく安定した所定回転数の高速脱水起動ができる。その結果、前述したアンバランスを検知して衣類の偏りを修正する動作回数が低減でき、洗濯から乾燥までの時間を短縮できる。さらに、設定した最高の脱水回転数で回転できるので衣類の脱水率が高まり乾燥時間の短縮にも繋がる。
【0056】
さらにまた、可動部の質量を増加させるため既存の洗濯乾燥機では一般的に鉄製やコンクリート製のカウンタウエイトを予め外槽2に取り付けることが行われる。その場合、洗濯乾燥機本体の重量が重く、梱包や運搬、設置時に影響を与える。一方、実施例1によれば、運転時の高速脱水前までに水容器40内に給水することにより、脱水時の振動を抑制でき、移動や運搬、設置時は軽量な洗濯乾燥機を提供することができる。
【0057】
なお、水容器40への注水工程は、
図6のようにしても良い。
図6は、実施例1の他の例に係る洗濯から乾燥までの動作を示すフロー図である。
【0058】
図6では、水容器40への注水工程を本洗い工程の排水工程後に実行するようにしている。すなわち、
図6では、脱水工程開始前までに水容器40への注水工程を完了させ、水容器40を水で満たすようにしている。脱水工程は、本洗い工程の後、すすぎ1工程の後、すすぎ2工程の後の3回実行するが、
図6では最初の脱水工程開始時には水容器40への注水が完了しているので、3回実行される脱水時の振動を抑制することができる。
【0059】
実施例1では、すすぎを2回(すすぎ1、すすぎ2)実行するようにしているが、すすぎは1回であっても構わない。
さらにまた、空気の流れと関係するが、内部を循環する空気の顕熱分の移動を極力抑制することで温度の低下を防ぐことで所定の加熱量でありながら効率的な蒸発を促進できる。