(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185820
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】アルミニウム顔料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09C 1/64 20060101AFI20221208BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20221208BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20221208BHJP
C09D 11/037 20140101ALI20221208BHJP
【FI】
C09C1/64
C09D201/00
C09D7/61
C09D11/037
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093679
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】駒木根 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】杉本 篤俊
【テーマコード(参考)】
4J037
4J038
4J039
【Fターム(参考)】
4J037AA05
4J037DD07
4J037EE29
4J037EE50
4J037FF09
4J037FF23
4J038HA066
4J038KA08
4J038NA01
4J038NA25
4J039BA06
4J039BA13
4J039BE01
4J039EA44
(57)【要約】
【課題】正反射領域での輝度が極めて高く、高いFF性を兼ね備えた、金属調のメタリック意匠を実現可能な、アルミニウム顔料を提供する。
【解決手段】XPS分析(X線光電子分光法)によって測定したときに、下記の式(1)で計算されるAL3+比が1.6以下であることを特徴とするアルミニウム顔料。
AL3+比=(A/B) (1)
(上記の式中、Aは、アルミニウム顔料の粒子表面のAl3+の元素モル濃度を表し、Bは、アルミニウム顔料の粒子表面の金属アルミニウムの元素モル濃度を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
XPS分析(X線光電子分光法)によって測定したときに、下記の式(1)で計算されるAL3+比が1.6以下であることを特徴とするアルミニウム顔料。
AL3+比=(A/B) (1)
(上記の式中、Aは、アルミニウム顔料の粒子表面のAl3+の元素モル濃度を表し、Bは、アルミニウム顔料の粒子表面の金属アルミニウムの元素モル濃度を表す。)
【請求項2】
比表面積(SSA)(単位:m2/g)が2≦SSA≦25の範囲にあり、かつ、前記AL3+比/SSAが0.07以上であることを特徴とする請求項1に記載のアルミニウム顔料。
【請求項3】
前記アルミニウム顔料表面の平均粗さRaが1~20nmである、請求項1または2に記載のアルミニウム顔料。
【請求項4】
請求項1乃至3記載のアルミニウム顔料の製造方法であって、原料金属アルミニウム粉を摩砕する工程を含み、前記摩砕する工程は、原料金属アルミニウム粉を、媒体撹拌ミル又はボールミルを具備する磨砕装置により行うアルミニウム顔料の製造方法。
【請求項5】
前記磨砕する工程は、媒体撹拌ミル又はボールミル内の酸素濃度が5~18%の範囲内である、請求項4に記載のアルミニウム顔料の製造方法。
【請求項6】
前記磨砕する工程で得られたスラリーをろ過する工程、及び、前記ろ過する工程で得られたスラリーを溶媒と混合する工程を含む、請求項4または5に記載のアルミニウム顔料の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のアルミニウム顔料を含む塗料組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の塗料組成物を含有する塗膜。
【請求項9】
請求項8に記載の塗膜を有する物品。
【請求項10】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載のアルミニウム顔料を含むインキ組成物。
【請求項11】
請求項10に記載のインキ組成物を含む印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム顔料、アルミニウム顔料の製造方法、アルミニウム顔料を含む塗料組成物、塗膜、当該塗膜を有する物品、インキ組成物、及び印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、アルミニウム顔料は、他の顔料にない独特なメタリック感と、下地に対する優れた隠蔽力を併せ持つ顔料として、各種分野において多用されている。
特にクロム調の意匠が求められる分野においては、アルミニウム顔料が好んで使われているが、この分野においても緻密感、輝度、光沢等の意匠の向上を図り、優れた外観特性を実現することが求められている。
上述したような優れた外観特性を実現する方法としては、アルミニウム顔料の粒子の微粒子化、表面平滑化、薄膜化が挙げられる。アルミニウム顔料の粒子を微粒子化及び薄膜化すると、緻密感の向上に効果があることが知られている。
【0003】
特許文献1では、原料アルミニウム粉末の磨砕時間を長くすることで、アルミニウム粒子を薄膜化し、金属光沢に優れる外観を有するアルミニウム顔料が開示されている。
【0004】
特許文献2、特許文献3においては、所定の薄膜アルミニウム顔料についての開示がなされており、アルミニウム粒子の厚さ分布(相対的幅Δhの範囲)やアスペクト比を特定することにより、分散性等の作業性の向上を図っている。
また、特許文献4においては、金属蒸着法によるアルミニウム顔料の製造方法についての開示がなされており、当該製造方法においては、粉砕機を用いた機械加工によるアルミニウム顔料とは全く異なる製造方法を採用し、アルミニウム粒子膜厚を薄く、かつ単一厚みに設定し、平滑性についても非常に優れているものが得られ、緻密感、高輝度、高光沢を得ることを可能としている。
【0005】
しかしながら、アルミニウム顔料の粒子を微粒子化及び薄膜化するには長い工程及び時間を要し、その際にアルミニウム表面が酸化、酸化アルミニウム(Al3+)層が形成されアルミニウム表面の反射が抑制されて、輝度低下や明度の低下が発生してしまう問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-82258号公報
【特許文献2】特開2014-159583号公報
【特許文献3】国際公開第2004/087816号パンフレット
【特許文献4】特表2002-528639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術に対してアルミニウム表面の酸化、Al3+層の形成を抑制することで、塗膜にした際、特許文献1~3に記載されているアルミニウム顔料より優れた金属光沢が得られるアルミニウム顔料を提供すること、すなわち塗料組成物もしくはインキ組成物等、その塗料等の塗膜にしたときの光輝性などの光学特性に優れたアルミニウム顔料を提供することを目的とする。更に、本発明は、当該アルミニウム顔料の製造方法、当該アルミニウム顔料を含む塗料組成物、当該塗料組成物を含む塗膜、当該塗膜を有する物品、当該アルミニウム顔料を含むインキ組成物、及び当該インキ組成物を含む印刷物に関する。
なお、アルミニウム顔料の金属光沢は、塗膜にしたときの光輝性として評価することも可能である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、製造後のアルミニウム顔料をXPS解析して検出される酸化アルミニウム(Al3+)と金属アルミニウムの比を一定の割合とすることによって、薄い酸化膜層(不働態化)、すなわち最小限の厚さにすることで優れた金属光沢を有するアルミニウム顔料が得られることを見出した。さらなる検討の結果、原料金属アルミニウム粉を摩砕する工程の因子を見直し、媒体撹拌ミル又はボールミル(BM)内の酸素濃度を制御すること、及び、摩砕助剤をよりアルミニウムを酸化しにくいものに調整することが重要であることを発見し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は下記のとおりである。
〔1〕
XPS分析(X線光電子分光法)によって測定したときに、下記の式(1)で計算されるAL3+比が1.6以下であることを特徴とするアルミニウム顔料。
AL3+比=(A/B) (1)
(上記の式中、Aは、アルミニウム顔料の粒子表面のAl3+の元素モル濃度を表し、Bは、アルミニウム顔料の粒子表面の金属アルミニウムの元素モル濃度を表す。)
〔2〕
比表面積(SSA)(単位:m2/g)が2≦SSA≦25の範囲にあり、かつ、前記AL3+比/SSAが0.07以上であることを特徴とする〔1〕に記載のアルミニウム顔料。
〔3〕
前記アルミニウム顔料表面の平均粗さRaが1~20nmである、〔1〕または〔2〕に記載のアルミニウム顔料。
〔4〕
〔1〕乃至〔3〕記載のアルミニウム顔料の製造方法であって、原料金属アルミニウム粉を摩砕する工程を含み、前記摩砕する工程は、原料金属アルミニウム粉を、媒体撹拌ミル又はボールミルを具備する磨砕装置により行うアルミニウム顔料の製造方法。
〔5〕
前記磨砕する工程は、媒体撹拌ミル又はボールミル内の酸素濃度が5~18%の範囲内である、〔4〕に記載のアルミニウム顔料の製造方法。
〔6〕
前記磨砕する工程で得られたスラリーをろ過する工程、及び、前記ろ過する工程で得られたスラリーを溶媒と混合する工程を含む、〔4〕または〔5〕に記載のアルミニウム顔料の製造方法。
【0010】
〔7〕
〔1〕乃至〔3〕のいずれかに記載のアルミニウム顔料を含む塗料組成物。
〔8〕
〔7〕に記載の塗料組成物を含有する塗膜。
〔9〕
〔8〕に記載の塗膜を有する物品。
〔10〕
〔1〕乃至〔3〕のいずれかに記載のアルミニウム顔料を含むインキ組成物。
〔11〕
〔10〕に記載のインキ組成物を含む印刷物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、塗膜にしたときに従来の薄膜化技術で製造されたアルミニウム顔料より優れた金属光沢が得られるアルミニウム顔料を提供することができる。光輝性や金属光沢に優れた金属顔料を得ることができる。また、本発明は、塗料組成物もしくはインキ組成物等、その塗料等の塗膜にしたときの光輝性や隠蔽性などの光学特性に優れたアルミニウム顔料を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明のアルミニウム顔料(実施例1で製造されたアルミニウム顔料)のXPSグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について、特にその好ましい態様を中心に、詳細に説明する。
【0014】
〔アルミニウム顔料〕
本発明のアルミニウム顔料は、下記のものである。
XPS分析(X線光電子分光法)によって測定したときに、下記の式(1)で計算されるAL3+比が1.6以下であることを特徴とするアルミニウム顔料。
AL3+比=(A/B) (1)
(上記の式中、Aは、アルミニウム顔料の粒子表面のAl3+の元素モル濃度を表し、Bは、アルミニウム顔料の粒子表面の金属アルミニウムの元素モル濃度を表す。)
【0015】
本発明のアルミニウム顔料の粒子表面には、酸化アルミニウム層(Al2O3)が存在する。これらの酸化物で形成される層の組成は、XPSにより相対元素濃度を測定することにより確認することができる。
XPSとは、高真空下でX線により固体表面を励起し、表面より放出される光電子を測定する分析法である。本分析法により、表面近傍数nmに存在する元素の酸化状態や濃度に関する情報が得られ、酸化アルミニウムとして存在するアルミニウム(以降Al3+とする)の相対濃度を特定できる。
【0016】
<XPS分析法>
本発明では、酸化アルミニウムで表面の一部または全部を被覆された金属アルミニウム粒子表面(アルミニウム顔料の粒子表面)における相対元素濃度を測定する。
【0017】
上記Al3+濃度(AL3+比)は、以下の条件で測定することができる。
測定装置(XPS分析装置):アルバックファイ Versa probe II
励起源:mono.AlKα 20kV×5mA 100W
分析サイズ:100μmφ×1.4mm 100μmφのX線ビームを1.4mm幅で振動
光電子取り出し角:45°
取り込み領域
Survey scan:0~1100eV
Narrow scan:Al 2p、Si 2p、O 1s、C 1s
パスエネルギー
Survey scan:117.4eV
Narrow scan:46.95eV
【0018】
本発明のアルミニウム顔料は、その粒子表面の金属アルミニウムに対するAl3+の相対元素モル濃度(「AL3+比」)をXPSによって測定したときに、Al3+の元素モル濃度が金属アルミニウムに対して1.6以下である。値はAl3+の元素モル濃度をA、金属アルミニウムの元素モル濃度をBとしたときに、(AL3+比=(A/B))の式から算出できる。この値が1.6を上回る場合、Al3+層が厚いことによる色調の低下(FF値、IV値の低下)が確認される。好ましくは、AL3+比は、1.5以下である。
【0019】
以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜変形して実施できる。
【0020】
<比表面積(SSA)>
本実施形態のアルミニウム顔料は、意匠(色調)発現の観点から、前記AL3+比/比表面積(SSA・m2/g)の比が0.18以下が好ましく0.08以下である事がさらに好ましい。アルミニウム顔料は比表面積(SSA・m2/g)が大きくなるほど意匠向上しやすい特徴があり前記AL3+比との比率を意匠レベルの指標とした。
【0021】
粒子の比表面積(SSA・m2/g)は、比表面積測定装置を用いて測定することができる。
【0022】
本実施形態のアルミニウム顔料の比表面積は2≦SSA≦25であることが好ましい。本実施形態のアルミニウム顔料(例えば、リーフィングアルミニウム顔料)の比表面積(SSA・m2/g)は前記数値範囲内であることが好ましく、最終的に目的とする意匠性に合わせて選択すればよい。比表面積SSAが2以上であることにより、本実施形態のリーフィングアルミニウム顔料を用いた塗膜中で粒子が下地を覆い隠し、反射面積を増加させることができ、色調が明るく、輝度も高くでき好ましい。
また、比表面積SSAが25以下であることにより、粒子の破損による輝度低下が無く、緻密感があるメタリック塗膜を得ることができ好ましい。
本実施形態のアルミニウム顔料粒子の比表面積(SSA・m2/g)は3≦SSA≦25であることがより好ましく、更により好ましくは5≦SSA≦25であり、一層より好ましくは10≦SSA≦20以下である。
アルミニウム顔料の比表面積(SSA・m2/g)は、後述するアルミニウム顔料の製造方法の実施形態において、原料アトマイズドアルミニウム粉を、ボールミルを用いて磨砕する工程で、原料アトマイズドアルミニウム粉の粒子径、磨砕ボールの1個あたりの質量、磨砕装置の回転数を適宜調整することにより制御することができる。
【0023】
<平均粗さRa>
本実施形態のアルミニウム顔料の粒子の表面の平均粗さRaは、アルミニウム顔料の粒子の表面の平滑性を示す指標であり、原子間力顕微鏡等を含むSPM(Scanning Probe Microscope)により測定することができる。
本実施形態のアルミニウム顔料においては、粒子の平均粗さRaが1~20nmであることが好ましい。平均粗さRaが20nm以下であることにより粒子表面の平滑性が高いために、光の正反射光量が高くなり、より高い輝度感が得られる。また、平均粗さRaが1nm以上であることにより、本実施形態のアルミニウム顔料を製造するために必要な磨砕時間が極端に長くならず、生産性に優れる。このRaは、2~12nmがより好ましく、2~10nmが更により好ましく、2~8nmがさらに一層好ましい。
【0024】
〔アルミニウム顔料の製造方法〕
上述した本実施形態のアルミニウム顔料の製造方法について以下に説明する。
本発明のアルミニウム顔料の製造方法は、原料金属アルミニウム粉を摩砕する工程を含み、前記摩砕する工程は、原料金属アルミニウム粉を、媒体撹拌ミル又はボールミルを具備する磨砕装置により行うアルミニウム顔料の製造方法である。
<磨砕する工程>
本実施形態のアルミニウム顔料の製造方法は、アトマイズドアルミニウム粉(原料金属アルミニウム粉)を、媒体撹拌ミル又はボールミルを具備する磨砕装置により磨砕する工程を有することができる。原料となるアトマイズドアルミニウム粉の粒径を大きくすること、磨砕ボールの1個当たりの質量を小さくすること、磨砕装置の回転速度を小さくすること、等の条件を適宜調整し、組み合わせることにより、上述した粒子の比表面積(SSA・m2/g)、FF性(後述する、輝度を示すパラメーター)を大きくすることができる。
前記操作を行うことに加え比表面積(SSA・m2/g)、FF性を本実施形態の範囲に調整すること、及び生産性を良好とすることも加味し、磨砕条件を決定する。
【0025】
本実施形態のアルミニウム顔料において、アルミニウム顔料粒子の比表面積は、3≦SSA≦25の範囲であることが好ましく、それを得るための好ましい磨砕条件は、原料として、好ましくは粒径1.5~5.0μm、より好ましくは粒径1.0~3.0μmのアトマイズドアルミニウム粉を用い、磨砕装置で使用する磨砕ボールの1個当たりの質量を、好ましくは0.08~11.00mg、より好ましくは0.08~9.00mgとし、磨砕装置の回転速度を臨界回転数(Nc)に対して33%~78%、より好ましくは36%~57%とする条件を組み合わせる。
上述した方法により磨砕ボールから受けるアルミニウム粒子に加わる衝撃力を調整し、かつアルミニウム粒子の比表面積(SSA・m2/g)、を3≦SSA≦25の範囲としかつFF性を1.6以上に調整することが好ましい。
【0026】
<磨砕ボール>
ボールミル等で使用する磨砕ボールの比重は、前記平面粒子の割合を大きくすることを容易とする観点及びアルミニウム粒子の表面平滑性を高くする観点から、8以下であることが好ましく、7.5以下であることがより好ましく、7以下であることがさらに好ましい。なお、磨砕ボールの比重は、磨砕溶剤の比重より大きいことが好ましい。磨砕ボールの比重が磨砕溶剤の比重より大きいことにより、磨砕ボールが溶剤に浮いてしまうことが防止でき、磨砕ボール同士のずり応力が十分に得られ、磨砕が十分に進行する傾向にある。
【0027】
本実施形態のアルミニウム顔料の製造方法で使用する磨砕ボールとしては、ステンレスボール、ジルコニアボール、ガラスボール等の表面平滑性が高いものが、アルミニウム粒子の表面平滑性の調整及び磨砕ボールの耐久性の観点から好ましい。一方で、表面平滑性の低い、鋼球、アルミナボール等は、アルミニウム粒子の表面平滑性の調整及び磨砕ボールの耐久性の観点から好ましくない。このため、例えば、ステンレスボールの場合、機械的研磨及び化学的研磨により表面平滑性を高めたものを用いることが好ましい。
【0028】
磨砕ボールの1個当たりの質量は、上述したように、0.08~11.00mgであることが好ましい。質量が0.08mg/個以上の磨砕ボールを用いることにより、磨砕ボールが個々の運動をせず集団又は塊状で運動するために磨砕ボール同士のずり応力が低下して磨砕が進行しなくなる現象、いわゆるグループモーションの発生を防止することができる。
また、質量が11.00mg/個以下の磨砕ボールを用いることにより、アルミニウム粉末に過大な衝撃力が加わることを防止し、反り、歪み、クラック等の発生を防止することができる。
また、磨砕ボール(粉砕メディア)の直径は、特に限定されないが、例えば、2.0mm以下が好ましく、1.2mm以下が更に好ましい
また、ボールミルの代わりに媒体撹拌ミルも、上記と同様に使用することができる。媒体撹拌ミルとしては、例えば、スクリュー型(塔式)、撹拌槽型、流通管型、アニュラー(環状)型などのものを使用することができる。
【0029】
<原料金属アルミニウム粉>
原料となるアトマイズドアルミニウム粉(金属アルミニウム粉)としては、アルミニウム以外の不純物の少ない物が好ましい。アトマイズドアルミウム粉の純度は、好ましくは99.5%以上であり、より好ましくは99.7%以上であり、さらに好ましくは99.8%以上である。アトマイズドアルミニウム粉は、ミネラルスピリット等の溶剤を少量含有することがある。
【0030】
原料となるアトマイズドアルミニウム粉の平均粒子径は、1.5~5.0μmが好ましく、1.0~4.0μmがより好ましい。アトマイズドアルミニウム粉が1.0μm以上の平均粒子径であることにより、磨砕加工時に粒子に加わるエネルギーが過大とならず、粒子の反り、歪みを防止でき、粒子形状を良好に保つことができ好ましい。また、アトマイズドアルミニウム粉が5.0μm以下の平均粒子径であることにより、その磨砕加工品の粒子の平均粒子径を15μm以下に調整することができ、本実施形態のアルミニウム顔料を好適に得られる傾向にある。
原料となるアトマイズドアルミニウム粉の形状としては、球状粉、涙滴状粉のようなものが好ましい。これらを用いることにより、磨砕時のアルミニウム顔料の形状が崩れにくくなる傾向がある。一方において、針状粉や不定形粉は、磨砕時のアルミニウム顔料の形状が崩れやすいため好ましくない。
【0031】
<磨砕溶剤>
ボールミルを具備する磨砕装置により、本実施形態のアルミニウム顔料を製造する際には、磨砕溶剤を用いることが好ましい。
磨砕溶剤の種類としては、以下に限定されるものではないが、例えば、従来から使用されているミネラルスピリット、ソルベントナフサ等の炭化水素系溶剤や、アルコール系、エーテル系、ケトン系、エステル系等の低粘度の溶剤が挙げられる。また、高純度オレイン酸などの溶剤を挙げることもできる。しかし、粗オレイン酸(低純度オレイン酸)やステアリン酸では、AL3+比が高くなってしまうこともある。
アトマイズドアルミニウム粉の磨砕条件としては、アトマイズドアルミニウム粉のアルミニウムの質量に対する磨砕溶剤の体積が1.5~16.0倍であることが好ましく、2.0~12.0倍がより好ましい。アトマイズドアルミニウム粉のアルミニウムの質量に対する磨砕溶剤の体積が1.5倍以上であることで、アトマイズドアルミニウム粉の長時間磨砕に伴う、反り、歪み、クラック等を防止することができ好ましい。
また、アトマイズドアルミニウム粉のアルミニウムの質量に対する磨砕溶剤の体積が、16.0倍以下であることで、磨砕時のミル内の均一性が向上し、アトマイズドアルミニウム粉が磨砕メディアと効率良く接触し、磨砕が好適に進行する傾向にある。
【0032】
磨砕溶剤の体積に対する磨砕ボールの体積(磨砕ボールの体積/磨砕溶剤の体積)は、0.5~3.5倍であることが好ましく、0.8~2.5倍であることがより好ましい。磨砕溶剤の体積に対する磨砕ボールの体積が0.5倍以上であることにより、磨砕時のミル内の均一性が向上し、磨砕が好適に進行する傾向にある。
また、磨砕溶剤の体積に対する磨砕ボールの体積が3.5倍以下であることにより、ミル内の磨砕ボールの比率が好適な範囲となり、ボールの積層が高くなりすぎないことで、磨砕応力による粒子の反り、歪み、クラック等の形状劣化の問題が防止され、輝度の低下や散乱光が強くなることを防止することができ好ましい。
【0033】
アトマイズドアルミニウム粉の磨砕に用いるボールミルは、直径が0.6mφ~2.4mφであることが好ましく、0.8mφ~2.0mφであればより好ましい。
直径が0.6mφ以上のボールミルを用いることにより、磨砕ボールの積層が低くなりすぎず、磨砕加工時のアルミニウム粒子に加わる圧力が好適な範囲となり、磨砕が好適に進行する傾向にある。
また、直径が2.4mφ以下のボールミルを用いることで、磨砕ボールの積層が高くなりすぎず、ボールの重みによる、粒子の反り、歪み、クラック等の形状劣化の問題が防止され、輝度の低下や散乱光が強くなることを防止することができ好ましい。
【0034】
アトマイズドアルミニウム粉の磨砕の際のボールミルの回転速度は、上述したように、臨界回転数(Nc)に対して33%~78%とすることが好ましく、36%~57%とすることがより好ましい。回転速度/臨界回転数の比が33%以上であることにより、ボールミル内のアルミスラリーやボール運動の均一性が保たれ好ましい。
また、回転速度/臨界回転数の比が78%以下であることにより、磨砕ボールが掻き上げられたり、自重で落下したりする挙動が防止され、磨砕ボールから受けるアルミニウム粒子に加わる衝撃力が高くなりすぎず、粒子の反り、歪み、クラック等の形状劣化の問題が防止され好ましい。
【0035】
<酸素濃度>
アトマイズドアルミニウム粉の磨砕の際の媒体撹拌ミル又はボールミル内の酸素濃度は、5~18%であることが好ましい。通常酸素濃度ではアルミを酸化させる要素が多くAl3+が多くなりやすく、酸素濃度を管理することでAl3+を抑制し意匠低下問題が防止され、好ましい。
【0036】
なお、本実施形態のアルミニウム顔料は、上述したアトマイズドアルミニウム粉を磨砕する工程を有する製造方法以外にも、真空蒸着法によって製造することもできる。
【0037】
<ろ過する工程>
本発明のアルミニウム顔料の製造方法は、前記磨砕する工程で得られたスラリーをろ過する工程を含むことができる。
ろ過は、例えば、通常の振動篩やフィルターによって行うことができる。ろ過する工程により、前記磨砕する工程で得られたスラリー中に存在する粗大アルミニウム粒子を除去することができる。
【0038】
<溶媒と混合する工程>
本発明のアルミニウム顔料の製造方法は、前記ろ過する工程で得られたスラリーを溶媒と混合する工程を含むことができる。
当該溶媒は、上記で説明した磨砕溶剤と同じものを使用することができる。混合は、例えば、通常の混合手段によって行うことができる。溶媒と混合する工程により、塗料組成物を製造するのに適した加熱残分を含有するアルミニウム顔料を製造することができる。
【0039】
〔塗料組成物〕
本実施形態の塗料組成物は、上述した本実施形態のリーフィングアルミニウム顔料を含む。本実施形態の塗料組成物は、リーフィングアルミニウム顔料に加え、マイカや着色顔料等を併用することができる。また、本実施形態の塗料組成物には、各種樹脂や、酸化防止剤、光安定剤、重合禁止剤、界面活性剤等の各種の添加剤を併用してもよい。
本実施形態の塗料組成物は、リーフィングアルミニウム顔料と、その他必要に応じて各種の材料を混合することにより製造することができる。本実施形態の塗料組成物は、メタリック塗料として用いることができる。
【0040】
〔塗膜、当該塗膜を有する物品〕
本実施形態の塗膜は、上述した本実施形態のリーフィングアルミニウム顔料を含み、上述した塗料組成物を所定の基材に塗布することにより形成することができる。
前記基材としては各種の物品を選択することができ、当該選択された物品により目的とするものに本実施形態の塗膜を形成することができる。
当該物品としては、以下に限定されるものではないが、例えば、自動車ボディ、自動車内装用部品、家電、携帯電話機、スマートホン、PC、タブレット、カメラ、テレビ等の光学機器等が挙げられる。
塗膜の形成方法としては、特に限定されるものではなく、目的とする物品に応じて適宜従来公知の方法を適用することができる。
【0041】
〔インキ組成物、印刷物〕
本実施形態のインキ組成物は、上述した本実施形態のリーフィングアルミニウム顔料を含む。
本実施形態のインキ組成物は、上述したリーフィングアルミニウム顔料に加え、所定の着色顔料、溶剤等を併用することができる。また、本実施形態のインキ組成物には、各種樹脂や、酸化防止剤、光安定剤、重合禁止剤、界面活性剤等の各種の添加剤を併用してもよい。本実施形態のインキ組成物は、リーフィングアルミニウム顔料と、その他必要に応じて各種の材料を混合することにより製造することができ、メタリックインキとして用いることができる。
また、本実施形態の印刷物は、上述した本実施形態のリーフィングアルミニウム顔料を含み、上述したインキ組成物を用いて印刷を行うことにより形成することができる。印刷物としては、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷等で塗膜を形成するインキ印刷物が挙げられる。
【0042】
〔その他の用途〕
その他、本実施形態のリーフィングアルミニウム顔料は、樹脂等と混練して、耐水性のバインダー、フィラーとして用いることもできる。
【実施例0043】
以下、実施例及び比較例を示して本実施形態をより詳しく説明する。本実施形態は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例中で示した各種物性の測定方法は以下の通りである。
【0044】
〔(I)アルミニウム顔料の粒子表面のアルミニウム(金属)の元素モル濃度(B)に対するAl
3+の元素モル濃度(A)の比(AL
3+比=(A/B))〕
((1)測定試料の作製) ステンレスビーカーにアルミペースト顔料(アルミニウム顔料)3gを計量し、50mlの石油ベンジンを入れて60℃ウオーターバス上で1HR加温した。
その後、ガラスフィルター(1G4)を使用して吸引ろ過を実施して、試料をパウダー化して測定試料を得た。
((2)AL
3+比の測定)
測定装置(XPS分析装置):アルバックファイ Versa probe IIを用いて下記条件で測定した。
励起源:mono.AlKα 20kV×5mA 100W
分析サイズ:100μmφ×1.4mm 100μmφのX線ビームを1.4mm幅で振動
光電子取り出し角:45°
得られた測定値からアルミニウム(金属)に対するAl
3+の比(AL
3+比)を算出し測定値とした。(
図1参照。
図1においては、測定試料の実データのチャートA、及び、当該実データを金属アルミニウムに対応するものとAl
3+に対応するものとに分離したそれぞれのチャートC及びDを、示す。アルミニウム顔料の粒子表面のアルミニウム(金属)の元素モル濃度(B)は、当該金属アルミニウムに対応するチャート(
図1の「金属」のチャートC)の積分値に対応し、Al
3+の元素モル濃度(A)は、Al
3+に対応するチャート(
図1の「酸化物(水酸化物)」のチャートD)の積分値に対応する。
図1において、「合成関数」のチャートBは、バックグラウンドEで較正したものを表す。)
【0045】
〔(II)アルミニウム顔料の比表面積(SSA・m2/g)〕
((1)測定試料の作製) ステンレスビーカーにアルミペースト顔料(アルミニウム顔料)3gを計量し、50mlの石油ベンジンを入れて60℃ウオーターバス上で1HR加温した。
その後、ガラスフィルター(1G4)を使用して吸引ろ過を実施して、試料をパウダー化して測定試料を得た。
((2)比表面積(SSA)の測定)
試料を測定セルに計量、島津製作所製 フローソーブにて比表面積(SSA・m2/g)を測定、この数値を比表面積(SSA)とした。
【0046】
〔(III)塗膜のFF性(輝度、光輝性)、隠蔽性〕
((1)塗装板の作製)
後述する実施例及び比較例で得られたアルミニウム顔料を使用して、下記の組成でメタリックベース塗料を作製した。
なお、この測定で用いる塗料系は顔料に対する濡れ性が高いために、リーフィングアルミニウム顔料もノンリーフィング挙動を示し、アルミニウム顔料は塗膜内に均一に分散する。
アルミニウム顔料:5.0g
シンナー:13.0g
(関西ペイント株式会社製、商品名「アクリディック2000GL」)
アクリル樹脂:97.0g
(関西ペイント株式会社製、商品名「アクリディック2000」)
次に、3milアプリケーターを用いて前記メタリックベース塗料をPETフィルムに塗装し、常温にて30分乾燥し、メタリックベース塗装板を得た。
((2)輝度、FF性の測定)
FF性は、変角測色計(スガ試験機株式会社製)を用いて評価した。
入射角を45度とし、前記評価用の塗装板の塗膜表面で反射する鏡面反射領域の光を除いた、正反射光に近い受光角15度(L15)と底色に近い受光角60度(L60)を測定。この比(L15/L60)をFF性とした。
FF性はアルミニウム顔料からの輝度(光輝性)を示すパラメーターであり、測定値が大きいほど反射光強度が高く、優れていると判断した。
((3)隠蔽性の判定)
・隠蔽性
上記作製塗料をPETシートに塗布した塗膜を目視で判定した。
また判定基準について弊社基準グレードをベースに隠蔽性有無を判断した。
(基準グレードは実施例2と3の中間相当の隠蔽性)
◎:基準グレードに対して非常に高い隠蔽性を有する。
〇:基準グレードに対して高い隠蔽性を有する。
△:基準グレードに対して隠蔽性は低い。
【0047】
〔(IV)粒子の表面の平均粗さ:Ra〕
アルミニウム顔料の粒子の表面の平均粗さRaは下記の方法で測定した。
((1)前処理)
後述する実施例、比較例で得られたアルミニウム顔料は、ミネラルスピリットとの混合物のため、洗浄処理を実施した。アルミニウムペースト(アルミニウム顔料)100mgをスクリュー管に採取し、トルエン5mLを添加した。
ハンドシェイクで数10秒間振盪して分散させ、遠心分離を実施した。上澄みを除去して再度トルエン5mLを添加して同様に分散及び遠心分離を実施した。沈殿したAlペースト(アルミニウム顔料)少量(数mg程度)を採取し、トルエン5mLに分散させ、1cm角のシリコンウエハに滴下し、風乾した。
((2)測定用画像の取得)
粒子の表面の平均粗さRaの測定は、以下の条件で実施した。4μm角の視野を確保できる粒子を選択して、下記の条件により、測定用の画像を取得した。
装置:Bruker AXS製 Dimension Icon
測定モード:Tapping mode
プローブ:NCH型Si単結晶プローブ(k=040N/m typ)
測定視野:4μm角/ 12pixel
((3)解析及び粒子の表面の平均粗さRaの算出)
解析は装置付属の解析ソフトを使用して実施した。一次の傾き補正を行った後、粗さ解析機能を用いてRaを算出した。
ソフトウェア:Nanoscope Analysis(装置付属の解析ソフト)
測定後の補正:一次の傾き補正
粗さ計測:Ra(自動算出)
【0048】
〔(V)塗膜のIV値〕
関西ペイント株式会社製のレーザー式メタリック感測定装置アルコープLMR-200を用いて評価した。光学的条件は、入射角45度のレーザー光源と受光角0度と-35度に受光器をもつ。測定値としては、レーザーの反射光のうち、塗膜表面で反射する鏡面反射領域の光を除いて最大光強度が得られる受光角-35度でIV値を求めた。IV値は塗膜からの正反射光強度に比例するパラメーターであり、光輝度の大小を表す。
【0049】
〔(VI)塗膜の貯蔵安定性〕
[評価1 貯蔵安定性評価]
アルミペースト100g(有姿)を塗料缶に採取し、一定の温度で加温。
(例 50℃×91日)
加温前後のアルミペーストを、上記「(III)塗膜のFF性(輝度、光輝性)、隠蔽性」の(1)の手法で塗装板を作製し、隠蔽性保持力を貯蔵安定性の評価基準とした。
〇:ほぼ同等の隠蔽性を保持
×:隠蔽性低下
【0050】
〔(VII)塗膜の色調評価〕
・IV値
関西ペイント株式会社製のレーザー式メタリック感測定装置アルコープLMR-200を用いて評価した。光学的条件は、入射角45度のレーザー光源と受光角0度と-35度に受光器をもつ。測定値としては、レーザーの反射光のうち、塗膜表面で反射する鏡面反射領域の光を除いて最大光強度が得られる受光角-35度でIV値を求めた。IV値は塗膜からの正反射光強度に比例するパラメーターであり、光輝度の大小を表す。
・F/F性
SUGA試験器社製、変角測色計(VC-1)を用いて評価した。
光学的条件は、入射角45度のレーザー光源と受光角10度と60度にて受光させ、測定値としてはそのL値の比率をF/F値としている。IV値同様に値は塗膜からの正反射光強度に比例するパラメーターであり、光輝度の大小を表す。
上記測定方法から下記基準にて色調低下度合いを判断した。
・IV値320未満
・F/F値1.65未満
【0051】
〔実施例1〕
ボールミル内酸素濃度15%で、原料アトマイズドアルミニウム粉(平均粒子径:2μ~4μm)ミネラルスピリット及び、摩砕助剤として高純度オレイン酸(純度99%以上)からなる配合物、及び、直径0.7mmの粉砕メディア(磨砕ボール)を、ボールミル内に充填して、磨砕する工程を実施した。摩砕時間を約100時間(HR)とし、得られるアルミニウム顔料の比表面積が約20.0m2/gになるように、調整した。磨砕終了後、ミル内のスラリーをミネラルスピリットで洗い出し、400メッシュの振動篩にかけ、通過したスラリーをフィルターで濾過、濃縮し、加熱残分(不揮発分)80質量%のケーキを得た。得られたケーキを縦型ミキサー内に移し、所定量のミネラルスピリットを加え、20分間混合し、加熱残分74質量%のアルミニウム顔料を得た。得られたアルミニウム顔料について、アルミニウム(金属)に対するAl3+の比(AL3+比)、輝度(FF性)及び貯蔵安定性等の評価を行った。
得られたアルミニウム顔料の物性を表1Aに、摩砕条件を表1Bに、評価結果を表1Cに示す。
【0052】
〔実施例2〕
摩砕時間を約60HRとし比表面積を約9.0m2/gに調整した。
その他の条件は、実施例1と同様の操作を行い、アルミニウム顔料を作製し、実施例1と同様の評価を行った。
【0053】
〔実施例3〕
摩砕時間を約30HRとし比表面積を約5.0m2/gに調整した。BM(ボールミル)内酸素濃度を18%とした。その他の条件は、実施例1と同様の操作を行い、アルミニウム顔料を作製し、実施例1と同様の評価を行った。
【0054】
〔実施例4〕
摩砕時間を約150HRとし比表面積を約25.0m2/gに調整した。BM内酸素濃度を18%とした。その他の条件は、実施例1と同様の操作を行い、アルミニウム顔料を作製し、実施例1と同様の評価を行った。
【0055】
〔比較例1〕
摩砕時間を約150HRとし比表面積を約30.0m2/gに調整した。BM内酸素濃度を20%、摩砕助剤を粗オレイン酸(低純度オレイン酸:純度約90%)とした。その他の条件は、実施例1と同様の操作を行い、アルミニウム顔料を作製し、実施例1と同様の評価を行った。
【0056】
〔比較例2〕
摩砕時間を約45HRとし比表面積を約7.0m2/gに調整した。BM内酸素濃度を4%、摩砕助剤を粗オレイン酸とした。その他の条件は、実施例1と同様の操作を行い、アルミニウム顔料を作製し、実施例1と同様の評価を行った。
【0057】
〔比較例3〕
摩砕時間を約35HRとし比表面積を約5.0m2/gに調整した。BM内酸素濃度を20%、摩砕助剤をステアリン酸とした。その他の条件は、実施例1と同様の操作を行い、アルミニウム顔料を作製し、実施例1と同様の評価を行った。
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
本発明のアルミニウム顔料は、輝度、光沢、及び貯蔵安定性等のいずれの評価も優れており、塗膜は優れた金属調の意匠等の特性を示すことが分かった。
本発明のアルミニウム顔料は、高級感を求められる工業製品分野、例えば自動車、情報家電、化粧品容器、光学機器等、或いは高反射率が求められるランプ反射板分野、また、オフセット印刷、スクリーン印刷等の高級印刷インキ分野において産業上の利用可能性を有している。