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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185830
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】トレッド用ゴム組成物及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/06 20060101AFI20221208BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20221208BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20221208BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20221208BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20221208BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20221208BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
C08L9/06
C08L7/00
C08K3/36
C08K3/04
C08K3/22
C08L9/00
B60C1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093697
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 祐美
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA02
3D131AA03
3D131BA18
3D131BB01
3D131BB03
3D131BB06
3D131BB09
3D131BC12
3D131BC19
3D131BC51
4J002AC01W
4J002AC06W
4J002AC08X
4J002DA017
4J002DE078
4J002DJ016
4J002FD016
4J002FD017
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能に優れたトレッド用ゴム組成物、及びこれを用いたタイヤを提供する。
【解決手段】イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分と、シリカと、カーボンブラックと、樹脂成分と、マグネシウム化合物とを含み、下記式(1)~(2)を満たすトレッド用ゴム組成物。
(1)イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエンゴムの合計含有量>樹脂成分の含有量
(2)シリカの含有量>カーボンブラックの含有量
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分と、シリカと、カーボンブラックと、樹脂成分と、マグネシウム化合物とを含み、
下記式(1)~(2)を満たすトレッド用ゴム組成物。
(1)イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエンゴムの合計含有量>樹脂成分の含有量
(2)シリカの含有量>カーボンブラックの含有量
【請求項2】
下記式(3)を満たす請求項1記載のトレッド用ゴム組成物。
(3)樹脂成分の含有量>オイルの含有量
【請求項3】
ゴム成分100質量部中のイソプレンゴムの含有量、ゴム成分100質量部に対するシリカ及びカーボンブラックの合計含有量が下記式(4)を満たす請求項1又は2記載のトレッド用ゴム組成物。
(4)(シリカ及びカーボンブラックの合計含有量)/イソプレン系ゴムの含有量<20
【請求項4】
ゴム成分100質量部に対する樹脂成分及びマグネシウム化合物の含有量が下記式(5)を満たす請求項1~3のいずれかに記載のトレッド用ゴム組成物。
(5)樹脂成分の含有量/マグネシウム化合物の含有量<20
【請求項5】
スチレンブタジエンゴムは、スチレン含有量が30質量%以下である請求項1~4のいずれかに記載のトレッド用ゴム組成物。
【請求項6】
ゴム成分100質量部に対する樹脂成分の含有量が20質量部以上、マグネシウム化合物の含有量が2~30質量部である請求項1~5のいずれかに記載のトレッド用ゴム組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれかに記載のゴム組成物を用いたトレッドを有するタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド用ゴム組成物及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ゴム成分、フィラー等の各成分を混練してゴム組成物を作製し、該ゴム組成物をトレッド等の各種タイヤ部材に成形、加硫することでタイヤが製造されるが、タイヤにはウェットグリップ性能等のタイヤ性能が要求されると同時に、製造工程での良好な加工性も求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、前記課題を解決し、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能に優れたトレッド用ゴム組成物、及びこれを用いたタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分と、シリカと、カーボンブラックと、樹脂成分と、マグネシウム化合物とを含み、下記式(1)~(2)を満たすトレッド用ゴム組成物に関する。
(1)イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエンゴムの合計含有量>樹脂成分の含有量
(2)シリカの含有量>カーボンブラックの含有量
【0005】
前記ゴム組成物は、下記式(3)を満たすことが好ましい。
(3)樹脂成分の含有量>オイルの含有量
【0006】
前記ゴム組成物は、ゴム成分100質量部中のイソプレンゴムの含有量、ゴム成分100質量部に対するシリカ及びカーボンブラックの合計含有量が下記式(4)を満たすことが好ましい。
(4)(シリカ及びカーボンブラックの合計含有量)/イソプレン系ゴムの含有量<20
【0007】
前記ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対する樹脂成分及びマグネシウム化合物の含有量が下記式(5)を満たすことが好ましい。
(5)樹脂成分の含有量/マグネシウム化合物の含有量<20
【0008】
前記ゴム組成物において、スチレンブタジエンゴムは、スチレン含有量が30質量%以下であることが好ましい。
【0009】
前記ゴム組成物は、ゴム成分100質量部に対する樹脂成分の含有量が20質量部以上、マグネシウム化合物の含有量が2~30質量部であることが好ましい。
【0010】
本発明はまた、前記ゴム組成物を用いたトレッドを有するタイヤに関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分と、シリカと、カーボンブラックと、樹脂成分と、マグネシウム化合物とを含み、前記式(1)~(2)を満たすトレッド用ゴム組成物であるので、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能を改善できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分と、シリカと、カーボンブラックと、樹脂成分と、マグネシウム化合物とを含み、かつ前記式(1)~(2)を満たすトレッド用ゴム組成物である。これにより、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能を改善できる。
【0013】
このような作用効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
ウェットグリップ性能向上の為、シリカの含有量>カーボンブラックの含有量を満たすことが考えられるが、イソプレン系ゴム及びスチレン-ブタジエンゴムを含むゴム組成物の場合には、シリカがイソプレン系ゴム相へ分散しやすくなる為、ウェットグリップ性能の向上効果が低減することが懸念される。そこで、樹脂成分を用いて混合時にシリカ表面が樹脂に覆われることでスチレン-ブタジエンゴム相へ分配されやすくすることにより、ウェットグリップ性能の向上を図ることができると考えられる。
その際、樹脂成分よりもイソプレン系ゴム及びスチレン-ブタジエンゴムの総量を多くすることで、過剰量の樹脂成分が発生することを抑制し、系内でのシリカ、樹脂成分を分散させやすくすることが可能となると考えられる。
同時に本発明ではマグネシウム化合物を添加することにより、混合時、成形時に樹脂成分由来の粘着を低下させることができるため、混合時にシリカ、樹脂成分の良好な分散状態が得られやすくなると共に、加工性も向上させることができる。
さらに、マグネシウム化合物は表面に若干ながらOH基があり、そのため、わずかながらゴム表面に親水性が付与され、ウェット路面に吸着させやすくなると共に、樹脂成分による路面への粘着も同時に発現し、ウェットグリップ性能が相乗的に向上すると考えられる。
従って、以上の作用機能の発揮により、タイヤにおけるウェットグリップ性能と、製造工程における加工性との総合性能が顕著に改善されると推察される。
【0014】
このように、本発明は、イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分と、シリカと、カーボンブラックと、樹脂成分と、マグネシウム化合物とを含むゴム組成物において、式(1)「イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエンゴムの合計含有量>樹脂成分の含有量」、式(2)「シリカの含有量>カーボンブラックの含有量」を満たすトレッド用ゴム組成物の構成にすることにより、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能の改善という課題(目的)を解決するものである。すなわち、前記式(1)、(2)のパラメータは課題(目的)を規定したものではなく、本願の課題は、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能の改善であり、そのための解決手段として当該パラメータを満たす構成とした発明である。
【0015】
前記ゴム組成物は、イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエンゴム(SBR)の合計含有量(ゴム成分100質量部中のイソプレン系ゴム及びSBRの合計含有量(質量部))、樹脂成分の含有量(ゴム成分100質量部に対する樹脂成分の含有量(質量部))が、下記式(1)を満たす。
(1)イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエンゴムの合計含有量>樹脂成分の含有量
【0016】
前記ゴム組成物において、イソプレン系ゴム及びSBRの合計含有量(ゴム成分100質量部中のイソプレン系ゴム及びSBRの合計含有量(質量部))-樹脂成分の含有量(ゴム成分100質量部に対する樹脂成分の含有量(質量部))は、10質量部以上が好ましく、30質量部以上がより好ましく、45質量部以上が更に好ましい。上限は、80質量部以下が好ましく、70質量部以下がより好ましく、65質量部以下が更に好ましい。上記範囲内にすることで、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能が改善される傾向がある。
【0017】
前記ゴム組成物は、シリカの含有量(ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量(質量部))、カーボンブラックの含有量(ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量(質量部))が、下記式(2)を満たす。
(2)シリカの含有量>カーボンブラックの含有量
【0018】
前記ゴム組成物において、シリカの含有量(ゴム成分100質量部に対するシリカの含有量(質量部))-カーボンブラックの含有量(ゴム成分100質量部に対するカーボンブラックの含有量(質量部))は、20質量部以上が好ましく、40質量部以上がより好ましく、50質量部以上が更に好ましい。上限は、150質量部以下が好ましく、100質量部以下がより好ましく、80質量部以下が更に好ましい。上記範囲内にすることで、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能が改善される傾向がある。
【0019】
(ゴム成分)
前記ゴム組成物は、イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエンゴム(SBR)を含有するゴム成分を含む。
【0020】
イソプレン系ゴムとしては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、改質NR、変性NR、変性IR等が挙げられる。NRとしては、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20等、ゴム工業において一般的なものを使用できる。IRとしては、特に限定されず、例えば、IR2200等、ゴム工業において一般的なものを使用できる。改質NRとしては、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)等、変性NRとしては、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等、変性IRとしては、エポキシ化イソプレンゴム、水素添加イソプレンゴム、グラフト化イソプレンゴム等、が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
ゴム成分100質量%中のイソプレン系ゴムの含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である。上限は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。上記範囲内にすることで、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能が改善される傾向がある。
【0022】
SBRとしては特に限定されず、例えば、乳化重合スチレンブタジエンゴム(E-SBR)、溶液重合スチレンブタジエンゴム(S-SBR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
SBRは、非変性SBRでもよいし、変性SBRでもよい。
変性SBRとしては、シリカ等の充填剤と相互作用する官能基を有するSBRであればよく、例えば、SBRの少なくとも一方の末端を、上記官能基を有する化合物(変性剤)で変性された末端変性SBR(末端に上記官能基を有する末端変性SBR)や、主鎖に上記官能基を有する主鎖変性SBRや、主鎖及び末端に上記官能基を有する主鎖末端変性SBR(例えば、主鎖に上記官能基を有し、少なくとも一方の末端を上記変性剤で変性された主鎖末端変性SBR)や、分子中に2個以上のエポキシ基を有する多官能化合物により変性(カップリング)され、水酸基やエポキシ基が導入された末端変性SBR等が挙げられる。
【0024】
上記官能基としては、例えば、アミノ基、アミド基、シリル基、アルコキシシリル基、イソシアネート基、イミノ基、イミダゾール基、ウレア基、エーテル基、カルボニル基、オキシカルボニル基、メルカプト基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、アンモニウム基、イミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、カルボキシル基、ニトリル基、ピリジル基、アルコキシ基、水酸基、オキシ基、エポキシ基等が挙げられる。なお、これらの官能基は、置換基を有していてもよい。なかでも、アミノ基(好ましくはアミノ基が有する水素原子が炭素数1~6のアルキル基に置換されたアミノ基)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシ基)、アルコキシシリル基(好ましくは炭素数1~6のアルコキシシリル基)が好ましい。
【0025】
SBRとしては、例えば、住友化学(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等により製造・販売されているSBRを使用できる。
【0026】
SBRのスチレン含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上である。該スチレン含有量は、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは25質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。上記範囲内にすることで、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能が改善される傾向がある。特に、スチレン含有量が大きくなると、SBRのゴムの硬度が高くなり、加工性が悪くなるが、スチレン含有量を30質量%以下にすることで、ゴムが柔らかく、良好な加工性が得られる傾向があり、例えば、スチレン含有量5~15質量%の低スチレン含有量のSBRを好適に使用できる。
なお、本明細書において、スチレン含有量は、H-NMR測定によって測定できる。
【0027】
SBRのビニル結合量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上である。該ビニル結合量は、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。上記範囲内にすることで、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能が改善される傾向がある。
なお、本明細書において、ビニル結合量(1,2-結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0028】
ゴム組成物がSBRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のSBRの含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、更に好ましくは80質量%以上である。上限は、好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは92質量%以下である。上記範囲内にすることで、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能が改善される傾向がある。
【0029】
イソプレン系ゴム、SBR以外に使用可能なゴム成分としては、例えば、他のジエン系ゴムを使用できる。他のジエン系ゴムとしては、ブタジエンゴム(BR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)などが挙げられる。また、ブチル系ゴム、フッ素ゴムなども挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、BR好ましい。
【0030】
BRは特に限定されず、例えば、高シス含量のハイシスBR、シンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR、希土類系触媒を用いて合成したBR(希土類BR)等を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、耐摩耗性が向上するという理由から、シス含量が90質量%以上のハイシスBRが好ましい。
【0031】
また、BRは、非変性BRでもよいし、変性BRでもよい。変性BRとしては、変性SBRと同様の官能基が導入された変性BRが挙げられる。変性BRを用いることは、氷上制動性能、低発熱性、ミクロE低下に有利である。
【0032】
BRとしては、例えば、宇部興産(株)、JSR(株)、旭化成(株)、日本ゼオン(株)等の製品を使用できる。
【0033】
ゴム組成物がBRを含有する場合、ゴム成分100質量%中のBRの含有量は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上である。上限は、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。上記範囲内にすることで、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能が改善される傾向がある。
【0034】
(フィラー)
ゴム組成物は、フィラー(充填剤)として、シリカ、カーボンブラックを含む。
【0035】
シリカとしては、乾式法シリカ(無水シリカ)、湿式法シリカ(含水シリカ)などが挙げられる。なかでも、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。市販品としては、デグッサ社、ローディア社、東ソー・シリカ(株)、ソルベイジャパン(株)、(株)トクヤマ等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0036】
ゴム組成物において、シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは25質量部以上、より好ましくは40質量部以上、更に好ましくは50質量部以上である。該含有量の上限は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下、更に好ましくは100質量部以下である。上記範囲内にすることで、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能が改善される傾向がある。
【0037】
シリカの窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは50m/g以上、より好ましくは100m/g以上、更に好ましくは150m/g以上である。また、シリカのNSAの上限は特に限定されないが、好ましくは350m/g以下、より好ましくは250m/g以下、更に好ましくは200m/g以下である。上記範囲内にすることで、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能が改善される傾向がある。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037-93に準じてBET法で測定される値である。
【0038】
カーボンブラックとしては、特に限定されないが、N134、N110、N220、N234、N219、N339、N330、N326、N351、N550、N762等が挙げられる。市販品としては、旭カーボン(株)、キャボットジャパン(株)、東海カーボン(株)、三菱化学(株)、ライオン(株)、新日化カーボン(株)、コロンビアカーボン社等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
ゴム組成物において、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは5質量部以上である。また、上記含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。上記範囲内にすることで、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能が改善される傾向がある。
【0040】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、50m/g以上が好ましく、70m/g以上がより好ましく、90m/g以上が更に好ましい。また、上記NSAは、200m/g以下が好ましく、150m/g以下がより好ましく、130m/g以下が更に好ましい。上記範囲内にすることで、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能が改善される傾向がある。なお、カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、JIS K6217-2:2001によって求められる。
【0041】
ゴム組成物は、シリカ、カーボンブラック以外のフィラーを含んでもよい。他のフィラーとしては特に限定されず、ゴム分野で公知の材料を使用でき、例えば、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレイ、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、マイカなどが挙げられる。
【0042】
ゴム組成物において、フィラーの含有量(フィラ-の合計含有量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは60質量部以上、より好ましくは70質量部以上、更に好ましくは75質量部以上、特に好ましくは80質量部以上である。また、上限は、好ましくは150質量部未満、より好ましくは130質量部未満、更に好ましくは100質量部未満である。上記範囲内にすることで、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能が改善される傾向がある。
【0043】
(シランカップリング剤)
ゴム組成物は、更にシランカップリング剤を含むことが好ましい。
シランカップリング剤としては、特に限定されず、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)トリスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリエトキシシリルブチル)ジスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)ジスルフィド、ビス(4-トリメトキシシリルブチル)ジスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、などのスルフィド系、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、Momentive社製のNXT、NXT-Zなどのメルカプト系、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどのビニル系、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ系、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、などのグリシドキシ系、3-ニトロプロピルトリメトキシシラン、3-ニトロプロピルトリエトキシシランなどのニトロ系、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-クロロプロピルトリエトキシシランなどのクロロ系などがあげられる。市販品としては、デグッサ社、Momentive社、信越シリコーン(株)、東京化成工業(株)、アヅマックス(株)、東レ・ダウコーニング(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
ゴム組成物において、シランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、3質量部以上が好ましく、6質量部以上がより好ましい。また、上記含有量は、20質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましい。上記範囲内にすることで、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能が改善される傾向がある。
【0045】
(樹脂成分)
前記ゴム組成物は、樹脂成分を含む。
樹脂成分は、常温(25℃)で液体状態の液状樹脂、常温(25℃)で固体状態の固体樹脂のいずれでもよいが、固体樹脂が好適である。
【0046】
固体樹脂としては、例えば、常温(25℃)で固体状態の石油樹脂、テルペン系樹脂、芳香族ビニル重合体、クマロンインデン樹脂、クマロン樹脂、インデン樹脂、フェノール樹脂、ロジン樹脂、アクリル系樹脂などが挙げられる。また、上記樹脂成分は、水添されていてもよい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能の観点から、石油樹脂、テルペン系樹脂、芳香族ビニル重合体が好ましい。
【0047】
ゴム組成物において、ゴム成分100質量部に対する上記樹脂成分の含有量は、好ましくは20質量部以上、より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは35質量部以上、特に好ましくは40質量部以上である。上限は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは60質量部以下である。上記範囲内にすることで、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能が改善される傾向がある。
【0048】
上記樹脂成分の軟化点は、80℃以上が好ましく、85℃以上がより好ましく、87℃以上が更に好ましい。上限は、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、110℃以下が更に好ましい。上記範囲内にすることで、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能が改善される傾向がある。
なお、上記樹脂成分の軟化点は、JIS K6220-1:2001に規定される軟化点を環球式軟化点測定装置で測定し、球が降下した温度である。
【0049】
上記石油樹脂としては、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂などが挙げられる。また、これらの水素添加物で使用可能である。
【0050】
前記ゴム組成物において、ゴム成分100質量部に対する石油樹脂の含有量は、好ましくは20質量部以上、より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは35質量部以上、特に好ましくは40質量部以上である。上限は、好ましくは100質量部以下、より好ましくは80質量部以下、更に好ましくは60質量部以下である。上記範囲内にすることで、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能が改善される傾向がある。
【0051】
上記テルペン系樹脂は、テルペンを構成単位として含むポリマーであり。例えば、テルペン化合物を重合して得られるポリテルペン樹脂、テルペン化合物と芳香族化合物とを重合して得られる芳香族変性テルペン樹脂などが挙げられる。また、これらの水素添加物も使用できる。
【0052】
上記ポリテルペン樹脂は、テルペン化合物を重合して得られる樹脂である。該テルペン化合物は、(Cの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C1016)、セスキテルペン(C1524)、ジテルペン(C2032)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物であり、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオールなどが挙げられる。
【0053】
上記ポリテルペン樹脂としては、上述したテルペン化合物を原料とするピネン樹脂、リモネン樹脂、ジペンテン樹脂、ピネン/リモネン樹脂などが挙げられる。なかでも、ピネン樹脂が好ましい。ピネン樹脂は、通常、異性体の関係にあるα-ピネン及びβ-ピネンの両方を含んでいるが、含有する成分の違いにより、β-ピネンを主成分とするβ-ピネン樹脂と、α-ピネンを主成分とするα-ピネン樹脂とに分類される。
【0054】
上記芳香族変性テルペン樹脂としては、上記テルペン化合物及びフェノール系化合物を原料とするテルペンフェノール樹脂や、上記テルペン化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンスチレン樹脂などが挙げられる。また、上記テルペン化合物、フェノール系化合物及びスチレン系化合物を原料とするテルペンフェノールスチレン樹脂も使用できる。なお、フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、ビスフェノールA、クレゾール、キシレノールなどが挙げられる。また、スチレン系化合物としては、スチレン、α-メチルスチレンなどが挙げられる。
なお、前記ゴム組成物において、ゴム成分100質量部に対するポリテルペン樹脂の含有量は、20~100質量部が好ましい。
【0055】
上記芳香族ビニル重合体は、芳香族ビニルモノマーを構成単位として含むポリマーである。例えば、α-メチルスチレン及び/又はスチレンを重合して得られる樹脂が挙げられ、具体的には、スチレンの単独重合体(スチレン樹脂)、α-メチルスチレンの単独重合体(α-メチルスチレン樹脂)、α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体、スチレンと他のモノマーの共重合体などが挙げられる。
【0056】
上記クマロンインデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロン及びインデンを含む樹脂である。クマロン、インデン以外に骨格に含まれるモノマー成分としては、スチレン、α-メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエンなどが挙げられる。なお、前記ゴム組成物において、ゴム成分100質量部に対するクマロンインデン樹脂の含有量は、20~100質量部が好ましい。
【0057】
上記クマロン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、クマロンを含む樹脂である。なお、前記ゴム組成物において、ゴム成分100質量部に対するクマロン樹脂の含有量は、20~100質量部が好ましい。
【0058】
上記インデン樹脂は、樹脂の骨格(主鎖)を構成する主なモノマー成分として、インデンを含む樹脂である。なお、前記ゴム組成物において、ゴム成分100質量部に対するインデン樹脂の含有量は、20~100質量部が好ましい。
【0059】
上記フェノール樹脂としては、例えば、フェノールと、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラールなどのアルデヒド類とを酸又はアルカリ触媒で反応させることにより得られるポリマー等の公知のものを使用できる。なかでも、酸触媒で反応させることにより得られるもの(ノボラック型フェノール樹脂など)が好ましい。なお、前記ゴム組成物において、ゴム成分100質量部に対するフェノール樹脂の含有量は、20~100質量部が好ましい。
【0060】
上記ロジン樹脂としては、天然ロジン、重合ロジン、変性ロジン、これらのエステル化合物、これらの水素添加物に代表されるロジン系樹脂等が挙げられる。なお、前記ゴム組成物において、ゴム成分100質量部に対するロジン樹脂の含有量は、20~100質量部が好ましい。
【0061】
上記アクリル系樹脂は、アクリル系モノマーを構成単位として含むポリマーである。例えば、カルボキシル基を有し、芳香族ビニルモノマー成分とアクリル系モノマー成分とを共重合して得られる、スチレンアクリル樹脂等のスチレンアクリル系樹脂などが挙げられる。なかでも、無溶剤型カルボキシル基含有スチレンアクリル系樹脂を好適に使用できる。
【0062】
上記無溶剤型カルボキシル基含有スチレンアクリル系樹脂とは、副原料となる重合開始剤、連鎖移動剤、有機溶媒などを極力使用せずに、高温連続重合法(高温連続塊重合法)(米国特許第4,414,370号明細書、特開昭59-6207号公報、特公平5-58005号公報、特開平1-313522号公報、米国特許第5,010,166号明細書、東亜合成研究年報TREND2000第3号p42-45等に記載の方法)により合成された(メタ)アクリル系樹脂(重合体)である。なお、本明細書において、(メタ)アクリルは、メタクリル及びアクリルを意味する。
【0063】
上記アクリル系樹脂を構成するアクリル系モノマー成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸や、(メタ)アクリル酸エステル(2エチルヘキシルアクリレート等のアルキルエステル、アリールエステル、アラルキルエステルなど)、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド誘導体などの(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸及びメタクリル酸の総称である。
【0064】
上記アクリル系樹脂を構成する芳香族ビニルモノマー成分としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、トリビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどの芳香族ビニルが挙げられる。
【0065】
また、上記アクリル系樹脂を構成するモノマー成分として、(メタ)アクリル酸や(メタ)アクリル酸誘導体、芳香族ビニルと共に、他のモノマー成分を使用してもよい。なお、前記ゴム組成物において、ゴム成分100質量部に対するアクリル系樹脂の含有量は、20~100質量部が好ましい。
【0066】
(液体可塑剤)
ゴム組成物には、液体可塑剤を配合してもよい。液体可塑剤とは、常温(25℃)で液体状態の可塑剤であり、例えば、オイル、液状樹脂、液状ジエン系ポリマーなどが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0067】
ゴム組成物が液体可塑剤を含む場合、その含有量(総量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。上限は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。上記範囲内にすることで、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能が改善される傾向がある。
【0068】
オイルとしては、例えば、プロセスオイル、植物油、又はその混合物が挙げられる。プロセスオイルとしては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイルなどを用いることができる。植物油としては、ひまし油、綿実油、あまに油、なたね油、大豆油、パーム油、やし油、落花生油、ロジン、パインオイル、パインタール、トール油、コーン油、こめ油、べに花油、ごま油、オリーブ油、ひまわり油、パーム核油、椿油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、桐油等が挙げられる。市販品としては、出光興産(株)、三共油化工業(株)、(株)ジャパンエナジー、オリソイ社、H&R社、豊国製油(株)、昭和シェル石油(株)、富士興産(株)、日清オイリオグループ(株)等の製品を使用できる。なかでも、プロセスオイル(パラフィン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル等)、植物油が好ましい。
【0069】
ゴム組成物がオイルを含む場合、その含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。上限は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。上記範囲内にすることで、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能が改善される傾向がある。
【0070】
液状樹脂としては、25℃で液体状態のテルペン系樹脂(テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂を含む)、ロジン樹脂、スチレン系樹脂、C5系樹脂、C9系樹脂、C5/C9系樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPD)樹脂、クマロンインデン系樹脂(クマロン、インデン単体樹脂を含む)、フェノール樹脂、オレフィン系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0071】
ゴム組成物が液状樹脂を含む場合、その含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。上限は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。上記範囲内にすることで、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能が改善される傾向がある。
【0072】
液状ジエン系ポリマーとしては、25℃で液体状態の液状スチレンブタジエン共重合体(液状SBR)、液状ブタジエン重合体(液状BR)、液状イソプレン重合体(液状IR)、液状スチレンイソプレン共重合体(液状SIR)、液状スチレンブタジエンスチレンブロック共重合体(液状SBSブロックポリマー)、液状スチレンイソプレンスチレンブロック共重合体(液状SISブロックポリマー)、液状ファルネセン重合体、液状ファルネセンブタジエン共重合体等が挙げられる。これらは、末端や主鎖が極性基で変性されていても構わない。
【0073】
ゴム組成物が液状ジエン系ポリマーを含む場合、その含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは3質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。上限は、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。上記範囲内にすることで、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能が改善される傾向がある。
【0074】
上記樹脂成分、液体可塑剤は、例えば、丸善石油化学(株)、住友ベークライト(株)、ヤスハラケミカル(株)、東ソー(株)、Rutgers Chemicals社、BASF社、アリゾナケミカル社、日塗化学(株)、(株)日本触媒、ENEOS(株)、荒川化学工業(株)、田岡化学工業等の製品を使用できる。
【0075】
(マグネシウム化合物)
前記ゴム組成物は、マグネシウム化合物を含む。
マグネシウム化合物とは、マグネシウムを含有する化合物であり、例えば、酸化マグネシウムを好適に使用できる。マグネシウム化合物は1種類を単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0076】
前記ゴム組成物において、マグネシウム化合物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましくは4質量部以上であり、また、好ましくは30質量部以下、より好ましくは25質量部以下、更に好ましくは20質量部以下である。上記範囲内にすることで、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能が改善される傾向がある。
【0077】
マグネシウム化合物の窒素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは100m/g以上、より好ましくは115m/g以上であり、また、好ましくは250m/g以下、より好ましくは225m/g以下、更に好ましくは200m/g以下である。上記範囲内にすることで、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能が改善される傾向がある。
なお、上記酸化マグネシウムのNSAは、JIS Z8830:2013に準拠してBET法で測定される値である。
【0078】
マグネシウム化合物の見かけ比重は、好ましくは0.50g/ml以下、より好ましくは0.45g/ml以下、更に好ましくは0.40g/ml以下であり、また、好ましくは0.05g/ml以上、より好ましくは0.15g/ml以上である。上記範囲内にすることで、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能が改善される傾向がある。
なお、上記酸化マグネシウムの見かけ比重は、50mlメスシリンダーに見かけ容積で30ml量り取り、その質量から算出して求めた値である。
【0079】
マグネシウム化合物のd50は、好ましくは10.0μm以下、好ましくは7.0μm以下、より好ましくは6.0μm以下、更に好ましくは5.0μm以下であり、また、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上である。上記範囲内にすることで、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能が改善される傾向がある。
なお、上記酸化マグネシウムのd50は、レーザー回折散乱法によって得られた質量基準の粒度分布曲線における積算値50%の粒子径である。
【0080】
なお、酸化マグネシウム化合物の含有量、NSA、見かけ比重、d50も前記と同様の範囲が望ましい。
【0081】
酸化マグネシウム等のマグネシウム化合物の市販品としては、協和化学工業(株)、富士フイルム和光純薬(株)、キシダ化学(株)等の製品を使用できる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0082】
(他の材料)
ゴム組成物は、耐クラック性、耐オゾン性等の観点から、老化防止剤を含有することが好ましい。
【0083】
老化防止剤としては特に限定されないが、フェニル-α-ナフチルアミン等のナフチルアミン系老化防止剤;オクチル化ジフェニルアミン、4,4’-ビス(α,α’-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系老化防止剤;N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等のp-フェニレンジアミン系老化防止剤;2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物等のキノリン系老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のモノフェノール系老化防止剤;テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のビス、トリス、ポリフェノール系老化防止剤などが挙げられる。なかでも、p-フェニレンジアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤が好ましく、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合物がより好ましい。市販品としては、例えば、精工化学(株)、住友化学(株)、大内新興化学工業(株)、フレクシス社等の製品を使用できる。
【0084】
ゴム組成物において、老化防止剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上である。該含有量は、好ましくは7.0質量部以下、より好ましくは4.0質量部以下である。
【0085】
ゴム組成物は、ステアリン酸を含むことが好ましい。ゴム組成物において、ステアリン酸の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは0.5~5質量部である。
【0086】
なお、ステアリン酸としては、従来公知のものを使用でき、例えば、日油(株)、花王(株)、富士フイルム和光純薬(株)、千葉脂肪酸(株)等の製品を使用できる。
【0087】
ゴム組成物は、酸化亜鉛を含むことが好ましい。ゴム組成物において、酸化亜鉛の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは1~5質量部である。
【0088】
なお、酸化亜鉛としては、従来公知のものを使用でき、例えば、三井金属鉱業(株)、東邦亜鉛(株)、ハクスイテック(株)、正同化学工業(株)、堺化学工業(株)等の製品を使用できる。
【0089】
ゴム組成物には、ワックスを配合してもよい。ゴム組成物において、ワックスの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5~10質量部、より好ましくは1~5質量部である。
【0090】
ワックスとしては特に限定されず、石油系ワックス、天然系ワックスなどが挙げられ、また、複数のワックスを精製又は化学処理した合成ワックスも使用可能である。これらのワックスは、単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0091】
石油系ワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。天然系ワックスとしては、石油外資源由来のワックスであれば特に限定されず、例えば、キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ライスワックス、ホホバろうなどの植物系ワックス;ミツロウ、ラノリン、鯨ろうなどの動物系ワックス;オゾケライト、セレシン、ペトロラクタムなどの鉱物系ワックス;及びこれらの精製物などが挙げられる。市販品としては、例えば、大内新興化学工業(株)、日本精蝋(株)、精工化学(株)等の製品を使用できる。
【0092】
ゴム組成物には、ポリマー鎖に適度な架橋鎖を形成し、良好な性能を付与するという点で、硫黄を配合することが好ましい。
【0093】
ゴム組成物において、硫黄の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.3質量部以上、更に好ましくは0.5質量部以上である。該含有量は、好ましくは4.0質量部以下、より好ましくは3.0質量部以下、更に好ましくは2.0質量部以下である。
【0094】
硫黄としては、ゴム工業において一般的に用いられる粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄、可溶性硫黄などが挙げられる。市販品としては、鶴見化学工業(株)、軽井沢硫黄(株)、四国化成工業(株)、フレクシス社、日本乾溜工業(株)、細井化学工業(株)等の製品を使用できる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0095】
ゴム組成物は、加硫促進剤を含むことが好ましい。
ゴム組成物において、加硫促進剤の含有量は特に制限はなく、要望する加硫速度や架橋密度に合わせて自由に決定すれば良いが、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは2.0質量部以上、より好ましくは3.0質量部以上、更に好ましくは3.5質量部以上である。上限は、好ましくは8.0質量部以下、より好ましくは6.0質量部以下、更に好ましくは5.0質量部以下である。
【0096】
加硫促進剤の種類は特に制限はなく、通常用いられているものを使用可能である。加硫促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT-N)等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤を挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、スルフェンアミド系、グアニジン系、ベンゾチアゾール系加硫促進剤が好ましい。
【0097】
ゴム組成物には、前記成分以外にも、タイヤ工業において一般的に用いられている配合剤、例えば、離型剤等の材料を適宜配合してもよい。
【0098】
前記ゴム組成物は、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能の観点から、樹脂成分の含有量(ゴム成分100質量部に対する樹脂成分の含有量(質量部))、オイルの含有量(ゴム成分100質量部に対するオイルの含有量(質量部))が、下記式(3)を満たすことが好ましい。
(3)樹脂成分の含有量>オイルの含有量
【0099】
このような作用効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
ゴム中にオイルが多いと混練時のスリップを引き起こしやすく、充填剤が分散不良を起こす傾向がある。一方、液体のオイルよりも固体である樹脂成分を多く添加することで、ゴムの粘着性が上がり、スリップ防止になる。従って、オイルに比べて樹脂成分を多量に配合することで、加工性が向上し、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能が改善されると推察される。
【0100】
前記ゴム組成物において、樹脂成分の含有量(ゴム成分100質量部に対する樹脂成分の含有量(質量部))-オイルの含有量(ゴム成分100質量部に対するオイルの含有量(質量部))は、10質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、30質量部以上が更に好ましい。上限は、70質量部以下が好ましく、55質量部以下がより好ましく、45質量部以下が更に好ましい。上記範囲内にすることで、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能が改善される傾向がある。
【0101】
前記ゴム組成物は、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能の観点から、イソプレンゴムの含有量(ゴム成分100質量部中のイソプレンゴムの含有量(質量部))、シリカ及びカーボンブラックの合計含有量(ゴム成分100質量部に対するシリカ及びカーボンブラックの合計含有量(質量部))が、下記式(4)を満たすことが好ましい。
(4)(シリカ及びカーボンブラックの合計含有量)/イソプレン系ゴムの含有量<20
【0102】
このような作用効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
イソプレン系ゴムの含有量に対するシリカ及びカーボンブラックの総量を20未満とすることで、混合時に発熱を抑制しやすくなり、加工性が良化する。同時にゴム中にシリカ、カーボンブラックが分散されやすくなり、ウェットグリップ性能がさらに向上しやすくなると考えられる。従って、シリカ、カーボンブラックの充填剤量を多量にすることで、加工性が向上し、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能が改善されると推察される。
【0103】
前記ゴム組成物において、(シリカ及びカーボンブラックの合計含有量)/イソプレン系ゴムの含有量は、19以下が好ましく、18以下がより好ましく、17以下が更に好ましい。下限は、10以上が好ましく、12以上がより好ましく、14以上が更に好ましい。上記範囲内にすることで、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能が改善される傾向がある。
【0104】
前記ゴム組成物は、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能の観点から、樹脂成分の含有量(ゴム成分100質量部に対する樹脂成分の含有量(質量部))、マグネシウム化合物の含有量(ゴム成分100質量部に対するマグネシウム化合物の含有量(質量部))が、下記式(5)を満たすことが好ましい。
(5)樹脂成分の含有量/マグネシウム化合物の含有量<20
【0105】
このような作用効果が得られるメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。
樹脂成分の含有量とマグネシウム化合物の含有量との比率が式(5)の関係を満たすことで、混合時の樹脂成分による密着を抑制でき、分散を良好なものとすると同時に、加工性も向上させることが可能になると考えられる。従って、マグネシウム化合物を少量とし、SBRを少量とすることで、加工性が向上し、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能が改善されると推察される。
【0106】
前記ゴム組成物において、樹脂成分の含有量/マグネシウム化合物の含有量は、15以下が好ましく、10以下がより好ましく、9以下が更に好ましく、8以下が特に好ましい。上限は、2以上が好ましく、3以上がより好ましく、4以上が更に好ましい。上記範囲内にすることで、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能が改善される傾向がある。
【0107】
ゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法などにより製造できる。
【0108】
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の添加剤を混練するベース練り工程では、混練温度は、通常50~200℃、好ましくは80~190℃であり、混練時間は、通常30秒~30分、好ましくは1分~30分である。加硫剤、加硫促進剤を混練する仕上げ練り工程では、混練温度は、通常100℃以下、好ましくは室温~80℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を混練した組成物は、通常、プレス加硫などの加硫処理が施される。加硫温度としては、通常120~200℃、好ましくは140~180℃である。
【0109】
ゴム組成物は、トレッド(キャップトレッド)に使用される。
【0110】
タイヤは、ゴム組成物を用いて通常の方法により製造される。すなわち、上記成分を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でトレッド(キャップトレッド)の形状に合わせて押し出し加工し、他のタイヤ部材とともに、タイヤ成型機上にて通常の方法で成形することにより、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧することで、タイヤが得られる。
【0111】
タイヤとしては、空気入りタイヤ、非空気入りタイヤなどが挙げられる。なかでも、空気入りタイヤが好ましい。タイヤは、乗用車用タイヤ、大型乗用車用、大型SUV用タイヤ、トラック、バスなどの重荷重用タイヤ、ライトトラック用タイヤ、二輪自動車用タイヤ、レース用タイヤ(高性能タイヤ)などに使用可能である。なかでも、乗用車用タイヤ、レース用タイヤ(高性能タイヤ)に好適に使用できる。
【実施例0112】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0113】
実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
SBR1:Versalis社製のEuroprene SOL R C2525(スチレン含有量25質量%)
SBR2:JSR(株)製のSL574(S-SBR、スチレン含有量15質量%)
NR:TSR20
BR:宇部興産(株)製のBR150B(シス含量97質量%)
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイヤブラックN220(NSA115m/g)
シリカ:エボニックデグッサ社製のウラトシルVN3(NSA175m/g)
樹脂成分1:ENEOS(株)製のT-REZ PR801(水添DCPD/C9、軟化点87~93℃)
樹脂成分2:Arizona chemical社製のSylvatraxx 4401(α-メチルスチレン系樹脂(α-メチルスチレンとスチレンとの共重合体)、軟化点85℃)
オイル:H&R社製のVIVATEC500(TDAEオイル)
シランカップリング剤:エボニックデグッサ社製のSi69(ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
酸化マグネシウム1:協和化学工業(株)製のキョーワマグ150(見かけ比重0.36g/ml、d50:4.46μm、NSA:145m/g)
酸化マグネシウム2:協和化学工業(株)製のキョーワマグ150MF(酸化マグネシウム、見かけ比重0.23g/ml、d50:0.72μm、NSA:119m/g)
老化防止剤:住友化学(株)製のアンチゲン6C(N-(1,3-ジメチルブチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン)
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックN
ステアリン酸:日油(株)製のビーズステアリン酸つばき
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤1:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤2:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’-ジフェニルグアニジン)
【0114】
〔実施例及び比較例〕
各表に示す配合処方に従い、(株)神戸製鋼所製の1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の薬品を150℃の条件下で5分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、オープンロールを用いて、80℃の条件下で5分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
得られた未加硫ゴム組成物を170℃の条件下で10分間プレス加硫して加硫ゴム組成物を得た。
【0115】
以下の方法により、作製された未加硫ゴム組成物、加硫ゴム組成物を評価した。結果を表1に示した。なお、表1、2、3、4、5の基準比較例は、それぞれ比較例1-1、2-1、3-1、4-1、5-1とした。
【0116】
<ウェットグリップ性能>
(株)上島製作所製フラットベルト式摩耗試験機(FR5010型)を用いてウェットグリップ性能を評価した。各加硫ゴム組成物の幅20mm、直径100mmの円筒形のゴム試験片をサンプルとして用い、速度20km/時間、荷重4kgf、路面温度20℃の条件で、路面に対するサンプルのスリップ率を0~70%まで変化させ、その際に検出される摩擦係数の最大値を読みとった。そして、下記計算式により測定結果を指数表示した。
指数が大きいほどウェットグリップ性能に優れる。
(ウェットグリップ性能指数)=(各配合の摩擦係数の最大値)/(基準比較例の摩擦係数の最大値)×100
【0117】
<加工性(タック指数)>
タックメーターにより80℃時の各サンプルシート(各未加硫ゴム組成物)のタック値を測定した。各配合のタック値について、基準比較例のタック値を100とし、下記式により指数化した。指数が大きいほど、密着度合(タック値)が低減され、加工性が優れていることを表す。
(タック指数)=基準比較例のタック値/各配合のタック値×100
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】
【0120】
【表3】
【0121】
【表4】
【0122】
【表5】
【0123】
各表より、イソプレン系ゴム及びスチレンブタジエンゴムを含有するゴム成分と、シリカと、カーボンブラックと、樹脂成分と、マグネシウム化合物とを含み、かつ前記式(1)~(2)を満たす実施例は、ウェットグリップ性能及び加工性の総合性能(ウェットグリップ性能、加工性(タック指数)の2つの指数の総和で表す)が顕著に改善された。