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特開2022-185840頭外定位処理装置、及び頭外定位処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185840
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】頭外定位処理装置、及び頭外定位処理方法
(51)【国際特許分類】
   H04S 1/00 20060101AFI20221208BHJP
   H04S 7/00 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
H04S1/00 500
H04S7/00 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093709
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】飯山 万葉
(72)【発明者】
【氏名】藤井 優美
【テーマコード(参考)】
5D162
【Fターム(参考)】
5D162AA07
5D162BA07
5D162CA26
5D162CD07
5D162CD26
5D162DA04
5D162DA22
5D162EA05
5D162EG02
(57)【要約】
【課題】適切に頭外定位処理を行うことができる頭外定位処理装置、及び頭外定位処理方法を提供する。
【解決手段】本実施の形態にかかる頭外定位処理装置100は、頭外定位処理フィルタで処理された再生信号をユーザに向けて出力する出力ユニットと、ユーザUの生体情報を測定する生体情報センサ50と、生体情報センサでの測定結果に基づいて頭外定位処理フィルタを変更するか否かを判定する判定部60と、頭外定位処理フィルタを変更すると判定された場合に、測定結果に基づいて、処理部に設定する頭外定位処理フィルタを決定する決定部70と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭外定位処理フィルタを用いて、処理を行う処理部と、
前記頭外定位処理フィルタで処理された再生信号をユーザに向けて出力する出力ユニットと、
前記ユーザの生体情報を測定する生体情報センサと、
前記生体情報センサでの測定結果に基づいて前記頭外定位処理フィルタを変更するか否かを判定する判定部と、
前記頭外定位処理フィルタを変更すると判定された場合に、前記測定結果に基づいて、前記処理部に設定する前記頭外定位処理フィルタを決定する決定部と、を備えた頭外定位処理装置。
【請求項2】
前記頭外定位処理フィルタを用いた処理が行われていない再生信号を前記出力ユニットが出力した時の前記生体情報の測定結果に基づいて、基準値が設定され、
前記判定部は、前記頭外定位処理フィルタを用いた処理が行われた再生信号を前記出力ユニットが出力した時の前記生体情報の測定結果を前記基準値と比較し、比較結果に基づいて、前記頭外定位処理フィルタを変更するか否かを判定し、
前記決定部は、前記比較結果に基づいて、前記頭外定位処理フィルタを決定する請求項1に記載の頭外定位処理装置。
【請求項3】
前記頭外定位処理フィルタが、
スピーカから耳までの空間音響伝達特性に対応する空間音響フィルタと、
外耳道伝達特性をキャンセルする逆フィルタと、を含んでおり、
前記決定部が前記空間音響フィルタを決定する請求項1、又は2に記載の頭外定位処理装置。
【請求項4】
前記頭外定位処理フィルタの特徴量に応じて、複数の被測定者がクラスタリングされ、
1つのクラスタに属する前記被測定者の特性を代表する代表特性に基づいて、前記頭外定位処理フィルタが生成されている請求項1~3のいずれか1項に記載の頭外定位処理装置。
【請求項5】
頭外定位処理フィルタを用いて、処理を行うステップと、
前記頭外定位処理フィルタで処理された再生信号をユーザに向けて出力ユニットから出力するステップと、
前記ユーザの生体情報を測定する生体情報センサと、
前記生体情報センサでの測定結果に基づいて前記頭外定位処理フィルタを変更するか否かを判定するステップと、
前記頭外定位処理フィルタを変更すると判定された場合に、前記測定結果に基づいて、頭外定位処理フィルタに設定する前記頭外定位処理フィルタを決定するステップと、を備えた頭外定位処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、頭外定位処理装置、及び頭外定位処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
音像定位技術として、ヘッドホンを用いて受聴者の頭部の外側に音像を定位させる頭外定位技術がある。頭外定位技術では、ヘッドホンから耳までの特性(ヘッドホン特性)をキャンセルし、1つのスピーカ(モノラルスピーカ)から耳までの2本の特性(空間音響伝達特性)を与えることにより、音像を頭外に定位させている。
【0003】
ステレオスピーカの頭外定位再生においては、2チャンネル(以下、chと記載)のスピーカから発した測定信号(インパルス音等)を聴取者(リスナー)本人の耳に設置したマイクロフォン(以下、マイクとする)で収音する。そして、測定信号を収音して得られた収音信号に基づいて、処理装置がフィルタを生成する。生成したフィルタを2chのオーディオ信号に畳み込むことにより、頭外定位再生を実現することができる。
【0004】
さらに、ヘッドホンから耳までの特性をキャンセルするフィルタ(逆フィルタともいう)を生成するために、ヘッドホンから耳元乃至鼓膜までの特性(外耳道伝達関数ECTF、外耳道伝達特性とも称する)を聴取者本人の耳に設置したマイクで測定する。
【0005】
特許文献1には、フィルタを用いて頭外定位処理を行う頭外定位処理装置が開示されている。特許文献1では、ユーザの外耳道に配置した測定用マイクが、インパルス音を収音する。これにより、ヘッドホンのスピーカユニットからマイクまでの外耳道伝達特性が測定される。
【0006】
特許文献2には、生体情報及び環境情報を取得する情報取得部と、生体情報及び環境情報に応じて現在の状態を判定する状態判定部と、判定結果に応じてオーディオ信号に信号処理を行う信号処理部を備えた信号処理装置が開示されている。信号処理部は、HRTF(頭部伝達関数:Head Related Transfer Function)をオーディオ信号に付与するフィルタを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-169835号公報
【特許文献2】国際公開第2018/79846号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
頭外定位処理を行う場合、聴取者本人の耳に設置したマイクで特性を測定することが好ましい。外耳道伝達特性を測定する場合、受聴者の耳にマイク、ヘッドホン(インナーイヤーヘッドホン、いわゆるイヤホンを含む。以下同じ。)を装着した状態で、インパルス応答測定などが実施される。聴取者本人の特性を用いることで、聴取者に適したフィルタを生成することができる。
【0009】
しかしながら、ユーザ本人に対する測定(ユーザ測定)を行うことができない場合がある。例えば、ユーザがスピーカ等の音響機材や室内の音響特性が整えられたリスニングルームでの測定を行うことができない場合がある。あるいは、ユーザが耳にマイクを装着することができない場合がある。また、ユーザがマイクを適切に装着できない場合もある。
【0010】
このような場合、ユーザ以外の被測定者で測定された特性に基づいてフィルタを生成する必要がある。しかしながら、外耳道伝達特性や空間音響伝達特性は、頭部や耳介・外耳道の形状などにより変化する。そのため、ユーザ以外の第3者である被測定者の特性からユーザの特性と正確に一致するフィルタを生成することは困難である。外耳道の形状は被測定者毎に異なるため適切なフィルタを提供できないと、頭外定位処理の効果を損なうおそれがある。
【0011】
特許文献2では、生体情報及び環境情報が負の場合、ユーザがストレスを感じている状態にあるとしている。そして、制御部が音源を遠方に定位させている。しかしながら、上記のように、ユーザ以外の第3者の特性からユーザに適切なフィルタに生成することが困難である。
【0012】
本開示は上記の点に鑑みなされたものであり、適切に頭外定位処理することができる頭外定位処理装置、頭外定位処理方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本実施の形態にかかる頭外定位処理装置は、頭外定位処理フィルタを用いて、処理を行う処理部と、前記頭外定位処理フィルタで処理された再生信号をユーザに向けて出力する出力ユニットと、前記ユーザの生体情報を測定する生体情報センサと、前記生体情報センサでの測定結果に基づいて前記頭外定位処理フィルタを変更するか否かを判定する判定部と、前記頭外定位処理フィルタを変更すると判定された場合に、前記測定結果に基づいて、前記処理部に設定する前記頭外定位処理フィルタを決定する決定部と、を備えている。
【0014】
本実施の形態にかかる頭外定位処理方法は、頭外定位処理フィルタを用いて、処理を行うステップと、前記頭外定位処理フィルタで処理された再生信号をユーザに向けて出力ユニットから出力するステップと、前記ユーザの生体情報を測定する生体情報センサと、前記生体情報センサでの測定結果に基づいて前記頭外定位処理フィルタを変更するか否かを判定するステップと、前記頭外定位処理フィルタを変更すると判定された場合に、前記測定結果に基づいて、頭外定位処理フィルタに設定する前記頭外定位処理フィルタを決定するステップと、を備えている。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、適切に頭外定位処理することができる頭外定位処理装置、頭外定位処理方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施の形態に係る頭外定位処理装置を示すブロック図である。
図2】空間音響伝達特性の測定装置を示す図である。
図3】平常状態を示す基準値の設定方法を示すフローチャートである。
図4】フィルタを決定する処理例1を示すフローチャートである。
図5】フィルタを決定する処理例3を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(概要)
まず、音像定位処理の概要について説明する。ここでは、音像定位処理装置の一例である頭外定位処理について説明する。本実施形態にかかる頭外定位処理は、空間音響伝達特性と外耳道伝達特性を用いて頭外定位処理を行うものである。空間音響伝達特性は、スピーカなどの音源から外耳道入口までの伝達特性である。外耳道伝達特性は、外耳道入口から鼓膜までの伝達特性である。本実施形態では、ヘッドホンを装着した状態での外耳道伝達特性を測定し、その測定データを用いて頭外定位処理を実現している。
【0018】
本実施の形態にかかる頭外定位処理は、パーソナルコンピュータ(PC)、スマートホン、タブレット端末などのユーザ端末で実行される。ユーザ端末は、プロセッサ等の処理手段、メモリやハードディスクなどの記憶手段、液晶モニタ等の表示手段、タッチパネル、ボタン、キーボード、マウスなどの入力手段を有する情報処理装置である。ユーザ端末は、データを送受信する通信機能を有している。さらに、ユーザ端末には、ヘッドホン又はイヤホンを有する出力手段(出力ユニット)が接続される。
【0019】
高い定位効果を得るには、ユーザ本人の特性を測定して頭外定位処理フィルタを生成することが好ましい。しかしながら、ユーザ本人の特性を測定することができない場合や、測定が適切に行うことができない場合がある。そこで、本実施の形態では、ユーザ以外の被測定者の音響伝達特性(音響フィルタ)に基づいて、ユーザに適した頭外定位処理フィルタが決定されている。
【0020】
より具体的には、ユーザ以外の被測定者の音響伝達特性に基づいて、空間音響伝達特性に応じたフィルタが設定されている。例えば、ユーザ個人の空間音響伝達特性は、スピーカ等の音響機材や室内の音響特性が整えられたリスニングルームで行われることが一般的である。すなわち、ユーザがリスニングルームに行くか、ユーザの自宅などにリスニングルームを準備する必要がある。このように、ユーザ個人が音響機材やリスニングルームを準備するにはコストの面でも負担が大きく、ユーザ個人の空間音響伝達特性を適切に測定することができない場合がある。
【0021】
また、ユーザの自宅などにスピーカを設置してリスニングルームを準備した場合でも、左右非対称にスピーカが設置されている場合や、部屋の音響環境が音楽聴取に最適でない場合がある。このような場合、自宅で適切な空間音響伝達特性を測定することは頭外定位処理の効果を大きく損なうこととなる。
【0022】
一方、ユーザ個人の外耳道伝達特性の測定は、マイクユニット、及びヘッドホンを装着した状態で行われる。すなわち、ユーザがマイクユニット、及びヘッドホンを装着していれば、外耳道伝達特性を測定することができる。ユーザがリスニングルームに行く必要や、ユーザの家に大がかりなリスニングルームを準備する必要がない。また、外耳道伝達特性を測定するための測定信号の発生や、収音信号の記録などはスマートホンやPCなどのユーザ端末を用いて、行うことができる。
【0023】
このように、ユーザ個人に対して、空間音響伝達特性の測定を実施することが困難である場合がある。そこで、本実施の形態にかかる頭外定位処理システムは、ユーザ以外の被測定者の音響伝達特性に基づいて、空間音響伝達特性に応じたフィルタを決定している。具体的には、頭外定位処理装置が、頭外定位受聴時の生体情報に基づいて、空間音響伝達特性に応じたフィルタを変更するか否かが判定されている。フィルタを変更すると判定された場合、生体情報に基づいて、フィルタが決定されている。
【0024】
(頭外定位処理装置)
本実施の形態にかかる音場再生装置の一例である、頭外定位処理装置100のブロック図を図1に示す。頭外定位処理装置100は、ヘッドホン43を装着するユーザUに対して音場を再生する。そのため、頭外定位処理装置100は、LchとRchのステレオ入力信号XL、XRについて、音像定位処理を行う。LchとRchのステレオ入力信号XL、XRは、CD(Compact Disc)プレイヤーなどから出力されるアナログのオーディオ再生信号、又は、mp3(MPEG Audio Layer-3)等のデジタルオーディオデータである。さらには、DVD(Digital Versatile Disc)やストリーミング等の映像コンテンツに付帯している音声信号を再生信号としても良い。例えば、映画などの映像の音声信号を再生信号とすることができる。なお、オーディオ再生信号、又はデジタルオーディオデータをまとめて再生信号と称する。すなわち、LchとRchのステレオ入力信号XL、XRが再生信号となっている。
【0025】
なお、頭外定位処理装置100は、物理的に単一な装置に限られるものではなく、一部の処理が異なる装置で行われてもよい。例えば、一部の処理がスマートホンなどにより行われ、残りの処理がヘッドホン43に内蔵されたDSP(Digital Signal Processor)などにより行われてもよい。
【0026】
頭外定位処理装置100は、演算処理部10、逆フィルタLinvを格納するフィルタ部41、逆フィルタRinvを格納するフィルタ部42、及びヘッドホン43を備えている。さらに頭外定位処理装置100は、生体情報センサ50と判定部60と決定部70と制御部80とを備えている。演算処理部10、フィルタ部41、フィルタ部42、判定部60,決定部70、及び制御部80は、具体的には一つ又は複数のプロセッサ等により実現可能である。
【0027】
演算処理部10は、空間音響伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsを格納する畳み込み演算部11~12、21~22、及び加算器24、25を備えている。畳み込み演算部11~12、21~22は、空間音響伝達特性を用いた畳み込み処理を行う。演算処理部10には、CDプレイヤーなどからのステレオ入力信号XL、XRが入力される。演算処理部10には、空間音響伝達特性が設定されている。演算処理部10は、各chのステレオ入力信号XL、XRに対し、空間音響伝達特性のフィルタ(以下、空間音響フィルタとも称する)を畳み込む。空間音響伝達特性は被測定者の頭部や耳介で測定した頭部伝達関数HRTFでもよいし、ダミーヘッドまたは第三者の頭部伝達関数であってもよい。
【0028】
4つの空間音響伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsを1セットとしたものを空間音響伝達関数とする。畳み込み演算部11、12、21、22で畳み込みに用いられるデータが空間音響フィルタとなる。空間音響伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsを所定のフィルタ長で切り出すことで、空間音響フィルタが生成される。
【0029】
空間音響伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsのそれぞれは、インパルス応答測定などにより、事前に取得されている。例えば、被測定者が左右の耳にマイクをそれぞれ装着する。被測定者の前方に配置された左右のスピーカが、インパルス応答測定を行うための、インパルス音を左右それぞれのスピーカから出力する。そして、スピーカから出力されたインパルス音等の測定信号をマイクで収音する。マイクでの収音信号に基づいて、空間音響伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsが取得される。左スピーカと左マイクとの間の空間音響伝達特性Hls、左スピーカと右マイクとの間の空間音響伝達特性Hlo、右スピーカと左マイクとの間の空間音響伝達特性Hro、右スピーカと右マイクとの間の空間音響伝達特性Hrsが測定される。
【0030】
そして、畳み込み演算部11は、Lchのステレオ入力信号XLに対して空間音響伝達特性Hlsに応じた空間音響フィルタを畳み込む。畳み込み演算部11は、畳み込み演算データを加算器24に出力する。畳み込み演算部21は、Rchのステレオ入力信号XRに対して空間音響伝達特性Hroに応じた空間音響フィルタを畳み込む。畳み込み演算部21は、畳み込み演算データを加算器24に出力する。加算器24は2つの畳み込み演算データを加算して、フィルタ部41に出力する。
【0031】
畳み込み演算部12は、Lchのステレオ入力信号XLに対して空間音響伝達特性Hloに応じた空間音響フィルタを畳み込む。畳み込み演算部12は、畳み込み演算データを、加算器25に出力する。畳み込み演算部22は、Rchのステレオ入力信号XRに対して空間音響伝達特性Hrsに応じた空間音響フィルタを畳み込む。畳み込み演算部22は、畳み込み演算データを、加算器25に出力する。加算器25は2つの畳み込み演算データを加算して、フィルタ部42に出力する。このように、演算処理部10は、空間音響フィルタを用いて、ステレオ入力信号XL,XRに対して演算処理を行う。
【0032】
フィルタ部41、42にはヘッドホン特性(ヘッドホンの再生ユニットとマイク間の特性)をキャンセルする逆フィルタLinv、Rinvが設定されている。そして、演算処理部10での処理が施された再生信号(畳み込み演算信号)に逆フィルタLinv、Rinvを畳み込む。フィルタ部41で加算器24からのLch信号に対して、Lch側のヘッドホン特性の逆フィルタLinvを畳み込む。同様に、フィルタ部42は加算器25からのRch信号に対して、Rch側のヘッドホン特性の逆フィルタRinvを畳み込む。逆フィルタLinv、Rinvは、ヘッドホン43を装着した場合に、ヘッドホンユニットからマイクまでの特性をキャンセルする。マイクは、外耳道入口から鼓膜までの間ならばどこに配置してもよい。
【0033】
フィルタ部41は、処理されたLch信号YLをヘッドホン43の左の出力ユニット43Lに出力する。フィルタ部42は、処理されたRch信号YRをヘッドホン43の右の出力ユニット43Rに出力する。ユーザUは、ヘッドホン43を装着している。ヘッドホン43は、Lch信号YLとRch信号YR(以下、Lch信号YLとRch信号YRをまとめてステレオ信号とも称する)をユーザUに向けて出力する。これにより、ユーザUの頭外に定位された音像を再生することができる。
【0034】
このように、頭外定位処理装置100は、空間音響伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsに応じた空間音響フィルタと、ヘッドホン特性の逆フィルタLinv,Rinvを用いて、頭外定位処理を行っている。以下の説明において、空間音響伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsに応じた空間音響フィルタと、ヘッドホン特性の逆フィルタLinv,Rinvとをまとめて頭外定位処理フィルタとする。2chのステレオ再生信号の場合、頭外定位処理フィルタは、4つの空間音響フィルタと、2つの逆フィルタとから構成されている。そして、頭外定位処理装置100は、ステレオ再生信号に対して合計6個の頭外定位処理フィルタを用いて畳み込み演算処理を行うことで、頭外定位処理を実行する。
【0035】
逆フィルタLinv,Rinvはユーザ測定の測定結果に基づくものであることが好ましい。例えば,ユーザUの耳に装着されたマイクが収音した収音信号に基づいて、頭外定位フィルタが設定されている。ユーザUが左右の耳にマイクを装着する。ユーザUは、マイクの上からヘッドホン43を装着する。ユーザUがステレオマイクとヘッドホン43を装着した状態で、測定装置が、ユーザ測定を実行する。測定装置が、ヘッドホン43から出力されるインパルス音等を外耳道入口にあるマイクが収音する。測定装置が、インパルス応答測定などを行うことで、ユーザUの外耳道伝達特性を測定することができる。そして、ユーザの外耳道伝達特性をキャンセルする逆フィルタLinv,Rinvが設定される。逆フィルタLinv,Rinvの生成方法について、公知の手法を用いることができるため、詳細な説明を省略する。
【0036】
空間音響フィルタは、ユーザU以外の被測定者に対して行われた事前測定の測定結果に基づいて設定されている。具体的には、測定装置が複数の被測定者に対して事前測定を行うことで、複数の空間音響伝達特性が取得される。例えば、測定装置が、ステレオスピーカとステレオマイクを用いて、インパルス応答測定を行う。これにより、各被測定者に対して、空間音響伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsが測定される。そして、サーバ装置が複数の空間音響伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsを収集する。
【0037】
(空間音響伝達特性の測定装置)
図2を用いて、空間音響伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsを測定する測定装置200について説明する。図2は、被測定者1に対して事前測定を行うための測定構成を模式的に示す図である。
【0038】
図2に示すように、測定装置200は、ステレオスピーカ5とマイクユニット2を有している。ステレオスピーカ5が測定環境に設置されている。測定環境は、ユーザUの自宅の部屋やオーディオシステムの販売店舗やショールーム等でもよい。測定環境は、スピーカや音響の整ったリスニングルームであることが好ましい。
【0039】
本実施の形態では、測定装置200の測定処理装置201が、空間音響フィルタを適切に生成するための演算処理を行っている。測定処理装置201は、例えば、CDプレイヤー等の音楽プレイヤーなどを有している。測定処理装置201は、パーソナルコンピュータ(PC)、タブレット端末、スマートホン等であってもよい。測定処理装置201が、ネットワークを介して、サーバ装置230と接続されている。また、測定処理装置201は、サーバ装置230自体であってもよい。また、サーバ装置230は、ネットワークを介して、図1の頭外定位処理装置100とも接続されている。つまり、サーバ装置230と、測定処理装置201と、頭外定位処理装置100は互いにアクセス可能となっている。
【0040】
ステレオスピーカ5は、左スピーカ5Lと右スピーカ5Rを備えている。例えば、被測定者1の前方に左スピーカ5Lと右スピーカ5Rが設置されている。左スピーカ5Lは被測定者1に左前方に配置され、右スピーカ5Rは被測定者1の右前方に配置されている。測定処理装置201は、測定信号として、インパルス信号、TSP(Time Stretched Pulse)信号、SS(Swept-Sine)信号等を発生する。測定信号はインパルス音等の測定音を含んでいる。
【0041】
左スピーカ5Lと右スピーカ5Rは、インパルス音を出力する。以下、本実施の形態では、音源となるスピーカの数を2(ステレオスピーカ)として説明するが、測定に用いる音源の数は2に限らず、1以上であればよい。すなわち、1chのモノラル、または、5.1ch、7.1ch等の、いわゆるマルチチャンネル環境においても同様に、本実施の形態を適用することができる。例えば,左スピーカ5Lと右スピーカ5Rの中間に配置されたセンタースピーカを用いてもよい。
【0042】
マイクユニット2は、左のマイク2Lと右のマイク2Rを有するステレオマイクである。左のマイク2Lは、被測定者1の左耳9Lに設置され、右のマイク2Rは、被測定者1の右耳9Rに設置されている。具体的には、左耳9L、右耳9Rの外耳道入口から鼓膜までの位置にマイク2L、2Rを設置することが好ましい。マイク2L、2Rは、ステレオスピーカ5から出力された測定信号を収音して、収音信号を取得する。マイク2L、2Rは収音信号を測定処理装置201に出力する。被測定者1は、人でもよく、ダミーヘッドでもよい。すなわち、本実施形態において、被測定者1は人だけでなく、ダミーヘッドを含む概念である。
【0043】
上記のように、左スピーカ5L、右スピーカ5Rで出力されたインパルス音をマイク2L、2Rで収音することでインパルス応答が測定される。測定処理装置201は、インパルス応答測定により取得した収音信号をメモリなどに記憶する。これにより、左スピーカ5Lと左マイク2Lとの間の空間音響伝達特性Hls、左スピーカ5Lと右マイク2Rとの間の空間音響伝達特性Hlo、右スピーカ5Rと左マイク2Lとの間の空間音響伝達特性Hro、右スピーカ5Rと右マイク2Rとの間の空間音響伝達特性Hrsが測定される。すなわち、左スピーカ5Lから出力された測定信号を左マイク2Lが収音することで、空間音響伝達特性Hlsが取得される。左スピーカ5Lから出力された測定信号を右マイク2Rが収音することで、空間音響伝達特性Hloが取得される。右スピーカ5Rから出力された測定信号を左マイク2Lが収音することで、空間音響伝達特性Hroが取得される。右スピーカ5Rから出力された測定信号を右マイク2Rが収音することで、空間音響伝達特性Hrsが取得される。
【0044】
測定処理装置201は空間音響伝達特性の測定データを保存する。測定処理装置201は空間音響伝達特性の測定データをサーバ装置230に送信する。サーバ装置230は、特徴量抽出部231と、クラスタリング部232と、フィルタ生成部233と、記憶部234とを備えている。
【0045】
サーバ装置230は、複数の被測定者の空間音響伝達特性を収集して、記憶部234に記憶する。記憶部234が、複数人分の空間音響伝達特性のデータをデータベースとして格納する。記憶部234は、被測定者1の左右の耳と空間音響伝達特性を対応付けて記憶する。なお、図2では、1つの測定装置200のみが示されているが、複数の測定装置200が事前測定を行ってもよい。つまり、サーバ装置230は、複数の測定装置200から測定データを収集しても良い。
【0046】
特徴量抽出部231は、空間音響伝達特性の特徴量を抽出する。つまり、特徴量抽出部231は、空間音響伝達特性の特徴量ベクトルを求める。ベクトル空間中において、類似した特性は近くに配置され,類似していない特性は遠くに配置される。特徴量抽出部231は、離散フーリエ変換などにより空間音響伝達特性の周波数振幅特性を求めて、周波数振幅特性の特徴量を算出する。特徴量は周波数振幅特性の極大値、極小値などとすることができる。
【0047】
特徴量抽出部231は、被測定者1毎に特徴量を抽出してもよい。あるいは、特徴量抽出部231は、左右の耳毎に特徴量を抽出してもよい。この場合、特徴量抽出部231は、左耳に関する空間音響伝達特性Hls、Hroから特徴量ベクトルを求める。同様に、特徴量抽出部231は、右耳に関する空間音響伝達特性Hlo、Hrsから特徴量ベクトルを求める。記憶部234は特徴量ベクトルをそれぞれ記憶する。
【0048】
クラスタリング部232は、特徴量に基づいて、空間音響伝達特性をクラスタリングする。クラスタリングは、非階層型クラスタリングでもよく、階層型クラスタリングでもよい。例えば、予め設定されたk(kは2以上の整数)個のクラスタに分類するk平均法(k-means)でクラスタリング部232がデータベースに格納した空間音響伝達特性をk個に分類する。なお、クラスタリング手法はk平均法に限られるものではない。特徴量ベクトル間の距離が短い場合、空間音響伝達特性が同じクラスタに属することになる。
【0049】
1つのクラスタには、1又は複数の被測定者が属する。もちろん、左右の耳毎に特徴量を抽出した場合、被測定者1の左右の耳毎にクラスタリングが行われる。よって、一人の被測定者1の左耳と右耳が異なるクラスタに属することもあり得る。記憶部234は各クラスタに関する情報をそれぞれ記憶する。例えば、記憶部234はクラスタに属する空間音響伝達特性を記憶する。記憶部234はクラスタとそれに属する空間音響伝達特性とを対応付けて記憶する。
【0050】
フィルタ生成部233は、クラスタに属する被測定者1の空間音響伝達特性に基づいて、空間音響フィルタを生成する。例えば、フィルタ生成部233は、クラスタに属する被測定者1の空間音響伝達特性を代表する代表特性を算出する。フィルタ生成部233は、空間音響伝達特性の周波数振幅特性の平均値を代表値とすることができる。フィルタ生成部233は、複数の被測定者1又は複数の耳の空間音響伝達特性のスペクトルの平均値を周波数毎に算出する。そして、フィルタ生成部233は、スペクトルの平均値(前記各周波数における周波数振幅特性の平均値)を代表特性とする。記憶部234は、クラスタ毎の代表特性を記憶する。記憶部234はクラスタと代表特性とを対応付けて記憶する。
【0051】
フィルタ生成部233は、代表特性を逆フーリエ変換する。フィルタ生成部233は、時間領域の代表特性を所定のフィルタ長で切り出すことで、空間音響フィルタを算出する。もちろん、代表値は平均値に限らず、中央値であってもよい。あるいは、同一クラスタ中の重心に最も近いデータを代表特性としてもよい。クラスタリングに用いる特徴量は、空間音響伝達特性の周波数振幅特性に限らず、周波数振幅特性は平滑化した特性や、概形を表す包絡線情報に置き換えてもよい。また、特徴量は周波数位相特性を用いてもよい。
【0052】
フィルタ生成部233は、クラスタ毎に代表特性を算出する。フィルタ生成部233は、クラスタ毎に空間音響フィルタを生成する。したがって、フィルタ生成部233で生成される空間音響フィルタの数は、クラスタの数に対応する。つまり、フィルタ生成部233は、複数の空間音響フィルタを生成する。記憶部234はフィルタ生成部233が生成した空間音響フィルタをそれぞれ記憶する。記憶部234は、複数の空間音響フィルタを記憶する。記憶部234はクラスタ毎に空間音響フィルタを記憶する。
【0053】
後述するように、サーバ装置230は複数の空間音響フィルタの中からユーザUに適した1つを選択して、提示する。ユーザU自身の空間音響伝達特性が測定されていない場合でも、サーバ装置230は、ユーザに適切な空間音響フィルタを提示することができる。これにより、良好な音像定位効果を得ることができる。
【0054】
図1の説明に戻る。頭外定位処理装置100は、生体情報センサ50と判定部60と決定部70と制御部80を備えている。生体情報センサ50は、ユーザUの生体情報を検出する。生体情報は、例えば、脳波、脈拍数(心拍数)、血圧、又は体温である。生体情報センサ50は、脳波センサ、脈拍センサ、血圧計、体温計の少なくとも一つを有していればよい。
【0055】
例えば、生体情報センサ50は、ヘッドホン43に装着されていてもよい。出力ユニット43L、43Rのそれぞれに搭載された脳波センサを生体情報センサ50として用いることができる。もちろん、生体情報センサ50は、ヘッドホン43に装着されるものではなく、ヘッドホン43と別体となっていてもよい。
【0056】
また、生体情報センサ50は、スマートウォッチなどのウェアラブル端末に搭載されていてもよい。生体情報センサ50は、スマートホンなどのユーザ端末に搭載されているものであってもよい。例えば、スマートホンが体温計測用センサとして機能してもよい。あるいは、生体情報センサ50は脈拍計などの単体のセンサとして機能するものであってもよい。もちろん、生体情報センサ50は、ユーザUから離れた箇所に配置された構成であってもよい。
【0057】
判定部60は、生体情報センサ50によって測定された生体情報に基づいて、空間音響フィルタを変更するか否かを判定する。例えば、判定部60は、生体情報の測定結果から、ユーザUがストレス状態にあるか否かを推定する。判定部60は、ユーザUに対して平常状態よりも高いストレスがかかっている状態をストレス状態とする。そして、ユーザUがストレス状態にあると推定される場合、判定部60は、適切な空間音響フィルタを用いていないと判定する。これにより、判定部60は、空間音響フィルタを変更すると判定する。
【0058】
生体情報センサ50がアルファ波を検出する脳波センサである場合について説明する。一般的にアルファ波が少ないとストレスが高いと推定される。平常状態よりもアルファ波が少ない場合、判定部60はストレス状態であると推定する。そして、判定部60は、空間音響フィルタを変更すると判定する。平常状態よりもアルファ波が多い場合、判定部60は、ストレス状態ではないと推定する。判定部60が空間音響フィルタを変更しないと判定する。よって、演算処理部10が同じ空間音響フィルタを用いて引き続き頭外定位処理を行う。
【0059】
生体情報センサ50が心拍数(脈拍数)を検出するセンサである場合について説明する。一般的に心拍数が高いとストレスが高いと推定される。平常状態よりも心拍数が高い場合、判定部60はストレス状態と推定する。そして、判定部60は、空間音響フィルタを変更すると判定する。平常状態よりも心拍数が低い場合、判定部60は、ストレス状態ではないと推定する。判定部60が空間音響フィルタを変更しないと判定する。よって、演算処理部10が同じ空間音響フィルタを用いて引き続き頭外定位処理を行う。
【0060】
生体情報センサ50が血圧を検出する血圧計である場合も、血圧が高いほど、ストレスが高くなる。よって、同様に、血圧が平常状態よりも高い場合、判定部60は、ストレス状態にあると判定して、空間音響フィルタを変更する。血圧が平常状態よりも低い場合、判定部60は、ストレス状態にないと判定するため、空間音響フィルタを変更しない。もちろん、判定部60は、1種類の生体情報センサ50のみを用いて判定してもよく、複数種類の生体情報センサ50を用いても判定しても良い。例えば、判定部60は、脳波、心拍数、血圧の2つ以上を組み合わせて判定することができる。
【0061】
このように判定部60は、平常状態の測定結果と、頭外定位受聴時の測定結果を比較することで、ストレス状態にあるか否かを判定する。具体的には、判定部60は、平常状態での生体情報センサの測定値に応じた基準値(閾値)を格納している。判定部60は、頭外定位受聴時の測定値を基準値と比較することで、ストレス状態を推定している。平常状態を示す基準値の設定方法について、図3を用いて説明する。
【0062】
まず、頭外定位処理装置100が頭外定位処理を行わない状態で、生体情報センサ50が生体情報を測定する(S31)。つまり、頭外定位処理フィルタが畳み込まれていない再生信号をヘッドホン43がユーザUに出力する。したがって、ユーザUは頭外定位処理が行われていないステレオ入力信号XL、XRを再生信号として受聴する。ここでの再生信号はコンテンツの再生信号でもよく、専用のテスト信号でもよい。
【0063】
次に、判定部60が、生体情報の測定結果に基づいて、基準値を設定する(S32)。つまり判定部60は、頭外定位処理が行われていない再生信号を受聴したときの測定値から基準値を算出する。例えば、判定部60は、測定値に所定係数を乗じた値を基準値とする。また、判定部60は、測定値自体を基準値としても良い。頭外定位処理を行わない再生信号を受聴している状態を平常状態としているが、再生信号を出力していない状態を平常状態としても良い。つまり、ユーザUが再生信号を受聴していない状態や無音の再生信号を受聴している状態を平常状態としても良い。このようにして、基準値が設定される。
【0064】
判定部60は、頭外定位受聴時の生体情報の測定値を基準値と比較し、比較結果に基づいて,判定を行っている。判定部60が空間音響フィルタを変更すると判定した場合、決定部70は演算処理部10に設定する空間音響フィルタを決定する。例えば、決定部70は、頭外定位受聴時の生体情報に基づいて、空間音響フィルタを決定する。そして、演算処理部10が新たに決定された空間音響フィルタを用いて,処理を行う。このように、判定部60が空間音響フィルタを変更すると判定した場合、決定部70は、演算処理部10に設定されている空間音響フィルタを別のフィルタに更新する。ユーザUがよりユーザに適した空間音響フィルタを用いることができる。
【0065】
具体的には、決定部70は、生体情報の測定値と基準値との比較結果に基づいて、空間音響フィルタを決定する。決定部70は、生体情報が平常状態での測定値又は基準値に近づくような空間音響フィルタを提示する。つまり、ユーザUがストレス状態とならないような空間音響フィルタを抽出する。このようにすることで、ユーザUに適した頭外定位処理フィルタを自動で決定することができる。
【0066】
制御部80は、コンテンツが終了したか否かを判定する。そして、制御部80は、コンテンツが終了するまで、頭外定位処理を行うように演算処理部10等を制御する。
【0067】
次に、図4を用いて、本実施の形態にかかる頭外定位処理方法について説明する。まず、頭外定位処理装置100が初期フィルタを用いて頭外定位処理を行う(S41)。ここでは、決定部70がマッチングアルゴリズムにより初期フィルタを決定している。初期フィルタは、外耳道伝達特性のマッチングによって決めてもよいし、任意の固定フィルタを予め設定してもよい。固定フィルタはダミーヘッドのフィルタでもよいし、任意の第3者のフィルタでもよい。演算処理部10は、例えば、ユーザUと耳介形状が近似した被測定者やそのクラスタの空間音響フィルタを初期フィルタとして用いることができる。なお、ユーザUと被測定者の耳介形状の評価については、外耳道伝達特性を用いることができる。また、決定部70は、耳介の写真の画像から耳介形状の評価を行ってもよい。決定部70は、任意の空間音響フィルタをあらかじめ設定してもよい。
【0068】
ユーザUと被測定者1の外耳道伝達特性が予め測定されているとする。決定部70は、ユーザUと被測定者1の外耳道伝達特性を比較する。外耳道伝達特性は空間音響フィルタ(空間音響伝達特性)と共にデータベースに含まれている。決定部70は、ユーザUと外耳道伝達特性と類似する外耳道伝達特性を持つ被測定者1を抽出する。つまり、決定部70は、マッチングアルゴリズムにより、ユーザUの外耳道伝達特性と相関の高い外耳道伝達特性を持つ被測定者1を抽出する。例えば、決定部70が外耳道伝達特性の周波数振幅特性を算出する。そして、周波数振幅特性の相関値が高い被測定者1やクラスタを抽出する。被測定者1を抽出する方法は、相関に限らない。特徴ベクトル空間におけるベクトル間距離を使ってもよい。また、複数のパラメータを組み合わせて、重み付けしてもよい。
【0069】
そして、決定部70は、抽出された被測定者1の空間音響フィルタを演算処理部10に設定する。あるいは、決定部70は、抽出された被測定者1が属するクラスタの空間音響フィルタを演算処理部10に設定する。図1に示したように、頭外定位処理装置100は、空間音響フィルタと逆フィルタを用いて頭外定位処理を行う。ここで、逆フィルタは、ユーザ測定により得られたものを用いることができる。
【0070】
次に、生体情報センサ50が生体情報を測定する(S42)。生体情報センサ50は、頭外定位受聴時の生体情報を測定する。次に、判定部60がストレス状態か否かを判定する(S43)。上記のように、判定部60は、頭外定位受聴時の生体情報を基準値と比較することで、判定を行う。
【0071】
ストレス状態にないと判定された場合(S43のNO)、S47に移行する。つまり、所定時間が経過するまで、頭外定位処理装置100がフィルタを用いて頭外定位処理を行う。ユーザUが頭外定位処理された再生信号を受聴する。
【0072】
ここで所定時間は、一定時間であってもよく、変動する時間であってもよい。所定時間を一定時間とする場合、例えば、10分毎に生体情報を測定すれば良い。また、音楽再生の場合、1曲の時間を所定時間としてもよい。映像コンテンツの再生の場合、1チャプターの時間を所定時間としてもよい。この場合、再生するコンテンツや楽曲に応じて,所定時間が設定される。
【0073】
ストレス状態にあると判定された場合(S43のYES)、決定部70がフィルタを決定する(S44)。例えば、平常状態よりもアルファ波が少ない場合、判定部60がフィルタを変更すると判定する。従って、決定部70は、サーバ装置230から別の空間音響フィルタを取得する。このとき、決定部70は、生体情報に基づいて、次のフィルタを決定する。
【0074】
決定部70は、フィルタを切替える(S45)。つまり、決定部70は、サーバ装置230から取得した空間音響フィルタを演算処理部10に設定する。ここで、決定部70は空間音響伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsに対応する全てのフィルタを設定してよく、一部のフィルタを設定しても良い。例えば、決定部70は空間音響伝達特性Hls、Hloに対応する2つのフィルタのみを更新しても良い。
【0075】
切替えられた空間音響フィルタを用いて頭外定位処理装置100が音声を出力する(S46)。つまり、ユーザUが更新された空間音響フィルタを用いて、頭外定位受聴を行う。そして、S47に移行する。つまり、所定時間が経過するまで、頭外定位処理装置100がフィルタを用いて頭外定位処理を行う。ユーザUが頭外定位処理された再生信号を受聴する。
【0076】
所定時間経過後(S47)、制御部80は、コンテンツが終了したか否かを判定する(S48)。コンテンツが終了した場合(S48のYES)、頭外定位処理装置100は処理を終了する。コンテンツが終了していない場合(S48のNO)、ステップS42に戻る。頭外定位処理装置100は、コンテンツの終了まで、上記の処理を繰り返す。所定期間毎に生体情報センサ50が生体情報を測定する。そして、判定部60が定期的に測定された生体情報を、基準値と比較する。このようにすることで、判定部60が、繰り返し判定を行うことができる。よって、より適切な空間音響フィルタを提示することができる。
【0077】
S43においてストレス状態と判定された場合、ステップS45で決定部70がフィルタを更新する。ステップS45で更新された空間音響フィルタを用いた頭外定位受聴時の生体情報に基づいて、頭外定位処理装置100が同様の処理を繰り返す。これにより、ユーザUに適した空間音響フィルタを探索することができる。これにより、適切に頭外定位処理が施されたコンテンツを再生することができる。
【0078】
以下、フィルタを決定する処理の具体例について説明する。
(処理例1)
処理例1では、クラスタリング部232は階層クラスタリングにより、空間音響伝達特性をクラスタリングしている。例えば、クラスタリング部232は空間音響伝達特性を2つのクラスタCa、Cbに分割する。一方のクラスタCaに対応する空間音響フィルタをフィルタFaとし、他方のクラスタCbに対応する空間音響フィルタをフィルタFbとする。フィルタ生成部233は、一方のクラスタCaに属する空間音響伝達特性の代表特性からフィルタFaを生成する。また、フィルタ生成部233は、他方のクラスタCbに属する空間音響伝達特性の代表特性からフィルタFbを生成する。
【0079】
生体情報センサ50は、フィルタFaを用いて頭外定位処理を行い頭外受聴した時の生体情報と、フィルタFbを用いて頭外定位処理を行い頭外受聴した時の生体情報をそれぞれ測定する(図4のステップS42参照)。決定部70は、フィルタFaでの生体情報とフィルタFbでの生体情報を比較する。そして、決定部70は、平常状態に近い生体情報のフィルタを選択する。つまり、決定部70は頭外定位受聴時の生体情報と平常状態での生体情報と差分が小さい方のフィルタを選択する。ここではフィルタFaを用いた場合の生体情報が平常状態の生体情報に近いため、決定部70がフィルタFaを選択するとして説明する。
【0080】
フィルタFaを用いて頭外定位処理を行った頭外定位受聴でもストレス状態にある場合(図4のステップS43のYES)、クラスタリング部232は、クラスタCaを2分割する。例えば、クラスタリング部232はクラスタCaを2つのクラスタCa1、Ca2に分割する。フィルタ生成部233は、クラスタCa1に属する空間音響伝達特性の代表特性からフィルタFa1を生成する。また、フィルタ生成部233は、クラスタCa2に属する空間音響伝達特性の代表特性からフィルタFa2を生成する。
【0081】
生体情報センサ50は、フィルタFa1を用いて頭外定位処理した時の生体情報と、フィルタFa2を用いて頭外定位処理した時の生体情報をそれぞれ測定する(図4のステップS42参照)。決定部70は、フィルタFa1での生体情報とフィルタFa2での生体情報を比較する。そして、決定部70は、平常状態に近い生体情報のフィルタを選択する。つまり、決定部70は頭外定位受聴時の生体情報と平常状態での生体情報と差分が小さい方のフィルタを選択する。ここではフィルタFa1を用いた場合の生体情報が平常状態の生体情報に近いため、決定部70がフィルタFa1を選択するとして説明する。
【0082】
判定部60がストレス状態にないと判定するまで(図4のステップS43のNO)、決定部70は、上記の処理を繰り返し行っていく。このようにすることで、ユーザUに適した空間音響フィルタを提示することができる。決定部70はより生体情報が平常状態に近くなるまで空間音響フィルタを絞り込む。もちろん、ユーザUの意思によって処理を停止してもよい。ユーザUが聴感から頭外定位処理が適切に行われていると判断した場合、そのフィルタを用いてもよい。なお、上記の説明では、フィルタ生成部233がその都度フィルタを生成するとして説明したが、予めフィルタ生成部233がフィルタを生成しても良い。つまり、記憶部234に記憶されているそれぞれのクラスタについて、フィルタ生成部233が事前にフィルタを生成していても良い。
【0083】
(処理例2)
処理例2では、クラスタリング部232が3つ以上のクラスタに分割している場合である。ここでは、クラスタリング部232は非階層クラスタリングを用いている。例えば、クラスタリング部232は空間音響伝達特性をn(nは3以上の整数)個のクラスタC1、C2、・・・、Cnに分割する。
【0084】
クラスタC1に対応する空間音響フィルタをフィルタF1とし、クラスタC2に対応する空間音響フィルタをフィルタF2とする。同様にクラスタCnに対応する空間音響フィルタをフィルタFnとする。フィルタ生成部233は、クラスタC1に属する空間音響伝達特性の代表特性からフィルタF1を生成する。同様に、フィルタ生成部233は、クラスタC2、・・・、Cnに属する空間音響伝達特性の代表特性からフィルタF2、・・・、Cnをそれぞれ生成する。
【0085】
そして、判定部60においてストレス状態にないと判定されるまで、決定部70は、フィルタF1~Fnをランダムに提示していく。なお、フィルタの提示方法は、ランダムではなく、2分岐や総当たり方式でも良い。
【0086】
また、決定部70は、生体情報を用いて次に提示するフィルタを決定しても良い。各フィルタでの頭外定位受聴時に生体情報を比較して、決定部70が、平常状態に近いフィルタと類似するフィルタを提示してもよい。生体情報が平常状態に比較的近い場合、決定部70は現在のフィルタと類似するフィルタを抽出する。生体情報が平常状態に大きく異なる場合、決定部70は現在のフィルタと大きく異なるフィルタを提示する。
【0087】
この場合、決定部70は、2つのフィルタの類似度から次に提示するフィルタを決定することができる。決定部70は、フィルタ間の類似度を特徴量ベクトル空間における特徴ベクトル間の距離に基づいて決定すればよい。例えば、特徴量ベクトル空間において、各クラスタの代表特性間の距離を算出し、距離が近いフィルタが類似度の高いフィルタとなる。反対にベクトル間の距離が遠いフィルタが類似度の低いフィルタとなる。
【0088】
あるいはベクトル間の距離ではなく、代表特性との相関からフィルタの類似度を判定しても良い。代表特性との相関が高いフィルタが類似度の高いフィルタとなり、代表特性との相関が低いフィルタが類似度の低いフィルタとなる。生体情報が平常状態から大きく異なる場合、決定部70は、類似度の低いフィルタを提示する。生体情報が平常状態に近い場合、決定部70は、類似度の高いフィルタを提示する。このように、決定部70は、特徴量ベクトルのベクトル空間中における距離から次に提示するフィルタを決定する。
【0089】
ベクトル間の距離や相関の範囲を予め設定できてもよい。また、機械学習や強化学習などのアルゴリズムを用いて、これらの範囲を自動で学習した結果を設定してもよい。なお、処理例2では、生体情報の状態に連動してクラスタ間の距離の遠さを調整したフィルタを提示しているが、本実施形態はこの方法に限られるものではない。例えば、フィルタF1~Fnの中から生体情報が最も平常状態に近いフィルタを提示するようにしてもよい。
【0090】
(処理例3)
処理例3では、ユーザUが頭外定位受聴の定位精度を評価している。つまり、ユーザUが、頭外定位受聴したとき聴感に基づいて、点数や評価を入力している。ここでは、ユーザUが5段階評価として、1点(最低)~5点(最高)を入力している。例えば、頭外定位処理装置100は、フィルタが切り替わる毎に、ユーザUにフィルタの評価を促すためのメッセージを表示する。
【0091】
図5は処理例3のフローを示すフローチャートである。図5では、図4のフローチャートに対してユーザ評価を判定するステップS54が追加されている。換言すると、図4のステップS41~S48は、ステップS51~S53、S55~S59にそれぞれ対応している。そのため、ステップS51~S53、S55~S58については、詳細な説明を省略する。
【0092】
まず、頭外定位処理装置100が、初期フィルタで頭外定位処理を行う(S51)。生体情報センサ50が生体情報を測定する(S52)。判定部60が生体情報に基づいて、ストレス状態か否か判定する(S53)。ストレス状態と判定された場合(S53のYES)、図4と同様に決定部70がフィルタを決定する(S55)。
【0093】
ストレス状態でないと判定された場合(S53のNO)、判定部60が、ユーザ評価は良好か否かを判定する(S54)。例えば、ユーザUが聴感を1~5点の5段階で評価しているとする。ユーザUの評価が4点又は5点の場合、判定部60は、ユーザ評価が良好であると判定する。ユーザUの評価が1点~3点の場合、判定部60は、ユーザ評価が良好でないと判定する。
【0094】
ユーザ評価が良好でない場合(S54のNO)、図4と同様に決定部70がフィルタを決定する(S55)。ステップS55でフィルタが決定された後、決定部70が演算処理部10のフィルタを切替える(S56)。そして、頭外定位処理装置100が再生信号を出力する(S57)。所定時間経過(S58)するまで、頭外定位処理装置100がフィルタを用いて頭外定位処理を行う。
【0095】
制御部80は、コンテンツが終了したか否かを判定する(S59)。コンテンツが終了した場合(S59のYES)、頭外定位処理装置100は処理を終了する。コンテンツが終了していない場合(S59のNO)、ステップS52に戻る。つまり、頭外定位処理装置100は、コンテンツの終了まで、上記の処理を繰り返す。
【0096】
ユーザ評価が良好である場合(S54のYES)、ステップS58に移行する。所定時間経過(S58)、コンテンツが終了したか否かを制御部80が判定する(S59)。そして、上記の処理を繰り返す。このように判定部60は、ユーザ評価及び生体情報に基づいて、フィルタを変更するか否かの判定を行っている。処理例3では、判定部60がユーザ評価に基づいて判定を行っている。このようにすることで、より適切なフィルタを用いて頭外定位処理することができる。
【0097】
ユーザ評価が良好でない場合、決定部70は、ユーザ評価に応じて次に提示するフィルタを決定しても良い。例えば,ユーザ評価が3点の場合、比較的良好なユーザ評価が得られている。この場合、決定部70は、現在のフィルタと類似度の高いフィルタを提示する。ユーザ評価が1点の場合又は未入力の場合、悪いユーザ評価が得られている。この場合、決定部70は、現在のフィルタと類似度の低いフィルタを提示する。
【0098】
決定部70は、現在のフィルタに対する類似度から次に提示するフィルタを決定する。決定部70は、フィルタ間の類似度をフィルタから抽出された特徴量ベクトル空間における特徴ベクトル間の距離に基づいて決定すればよい。処理例2と同様に、決定部70は、特徴量ベクトルのベクトル空間中における距離から次に提示するフィルタを決定する。決定部70は、周波数特性の相関に応じて、類似度を算出しても良い。ユーザ評価が極めて低い場合、決定部70は、類似度の低いフィルタを提示する。ユーザ評価が比較的良好な場合、決定部70は、類似度の高いフィルタを提示する。
【0099】
なお、判定部60は、ストレス状態でなく、かつユーザ評価が良好の場合にフィルタを変更しないと判定したが、ストレス状態でない場合、又はユーザ評価が良好の場合にフィルタを変更しないと判定しても良い。つまり、判定部60は、ストレス状態であり、かつ、ユーザ評価が不良の場合にフィルタを変更すると判定しても良い。さらに、判定部60は、生体情報とユーザ評価の両方を含む指数を算出して,判定の基準としても良い。
【0100】
さらに、サーバ装置230は、生体情報の測定結果やユーザ評価に基づいて、機械学習を行ってもよい。つまり、生体情報の測定結果やユーザ評価に応じて、次に提示するフィルタを決定する機械学習モデルを作成しても良い。決定部70が決定したフィルタと、そのユーザ評価を格納する。そして、フィルタの周波数振幅特性の差やその時の生体情報の種類を学習して、パラメータの重み付けを変化させる。これにより、決定部70が、適したフィルタを提示するまでの時間を短縮することができる。
【0101】
上記の説明では、生体情報センサ50で測定された生体情報が平常状態に近い場合、判定部60がフィルタを変更しないと判定するものとして説明したが、本実施の形態はこれに限るものではない。例えば、生体情報センサ50で測定された生体情報が平常状態に近い場合、判定部60がフィルタを変更すると判定してもよい。
【0102】
例えば、ユーザUが興奮するようなコンテンツの再生中では、平常状態からの生体情報の変動が大きくなることが望まれる。生体情報センサ50で測定されたアルファ波が基準値よりも少ない場合、判定部60がフィルタを変更する判定する。あるいは、生体情報センサ50で測定された心拍数が基準値よりも高い場合、判定部60がフィルタを変更すると判定する。このように、判定部60がコンテンツ内容と生体情報に基づいて、変更するか否かの判定を行う。つまり、コンテンツ内容によっては、生体情報が平常状態から変動するように、決定部70がフィルタを決定する。
【0103】
なお、サーバ装置230における処理は,頭外定位処理を行う前に実行されていても良い。例えば、サーバ装置230における特徴量抽出、クラスタリング、及びフィルタ生成の処理が、頭外定位処理の前に行われていてもよい。これにより、提示する空間音響フィルタを事前に用意することができる。あるいは、サーバ装置230における少なくとも一部の処理は頭外定位処理と平行して行われてもよい。
【0104】
また、サーバ装置230の処理の少なくとも一部は、頭外定位処理装置100で行われていてもよい。例えば、決定部70が、代表特性からフィルタを生成する処理を行ってもよい。あるいは、頭外定位処理装置100の処理の少なくとも一部は、サーバ装置230で行われていてもよい。例えば、複数のフィルタの中から提示するフィルタを選択する処理は、サーバ装置230が行ってもよい。あるいは、基準値を設定する処理は、サーバ装置230が行ってもよい。この場合、生体情報センサ50が測定した生体情報をサーバ装置230に送信すれば良い。
【0105】
換言すると、頭外定位処理装置100は物理的に単一な装置に限らず、ネットワークなどを介して接続された複数の装置に分散されていても良い。換言すると,本実施の形態にかかる頭外定位処理方法は、複数の装置が分散して実施しても良い。
【0106】
上記の説明では、決定部70が4つの空間音響伝達特性Hls、Hlo、Hro、Hrsのフィルタを変更するか否かを判定したが、変更する頭外定位処理フィルタは特に限定されるものではない。例えば、決定部70は、左耳に関する空間音響伝達特性Hls、Hloのフィルタのみを変更してもよい。あるいは、決定部70は、右耳に関する空間音響伝達特性Hro、Hrsのフィルタのみを変更してもよい。
【0107】
さらには、決定部70は逆フィルタを変更してもよい。この場合、逆フィルタについてもユーザU以外の被測定者の外耳道伝達特性から生成されたものとなる。よって、ユーザ測定を省略することができる。このように、決定部70は、6つの頭外定位処理フィルタのうちの1つ以上を変更すれば良い。
【0108】
上記処理のうちの一部又は全部は、コンピュータプログラムによって実行されてもよい。上述したプログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0109】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0110】
U ユーザ
1 被測定者
2 マイクユニット
2L 左マイク
2R右マイク
5 ステレオスピーカ
5L 左スピーカ
5R 右スピーカ
10 演算処理部
11 畳み込み演算部
12 畳み込み演算部
21 畳み込み演算部
22 畳み込み演算部
24 加算器
25 加算器
41 フィルタ部
42 フィルタ部
43 ヘッドホン
50 生体情報センサ
60 判定部
70 決定部
231 特徴量抽出部
232 クラスタリング部
233 フィルタ生成部
234 記憶部
図1
図2
図3
図4
図5