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  • 特開-回転電機 図1
  • 特開-回転電機 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185845
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
H02K9/19 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093727
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】大石 貴彦
【テーマコード(参考)】
5H609
【Fターム(参考)】
5H609BB01
5H609PP02
5H609PP05
5H609PP06
5H609PP09
5H609QQ05
5H609QQ13
5H609QQ16
5H609QQ20
5H609QQ21
5H609RR27
5H609RR43
5H609RR46
5H609RR48
5H609RR50
5H609RR51
5H609RR67
5H609SS20
5H609SS21
(57)【要約】
【課題】従来よりも低コストでコイルエンドの温度分布の偏りを抑制できる回転電機の冷却構造を提供する。
【解決手段】回転電機は、ロータと、コイルが巻回されたステータとを収容するハウジングと、ハウジング内でハウジングの上側からオイルを散布してコイルのコイルエンドを冷却するオイル散布部と、コイルエンドに散布されたオイルをハウジング内で貯留するオイルパン部と、オイルパン部からオイルを吸い出すオイルポンプと、オイルパン部から吸い出されたオイルを冷却するオイルクーラと、オイルクーラで冷却されたオイルをオイル散布部に供給する油路と、を備える。コイルエンドの一部は、オイルパン部に貯留されたオイルに浸される。油路は、オイルクーラで冷却されたオイルの一部をオイルパン部に戻す還流路を有する。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータと、コイルが巻回されたステータとを収容するハウジングと、
前記ハウジング内で前記ハウジングの上側からオイルを散布して前記コイルのコイルエンドを冷却するオイル散布部と、
前記コイルエンドに散布された前記オイルを前記ハウジング内で貯留するオイルパン部と、
前記オイルパン部から前記オイルを吸い出すオイルポンプと、
前記オイルパン部から吸い出された前記オイルを冷却するオイルクーラと、
前記オイルクーラで冷却されたオイルを前記オイル散布部に供給する油路と、を備え、
前記コイルエンドの一部は、前記オイルパン部に貯留された前記オイルに浸され、
前記油路は、前記オイルクーラで冷却されたオイルの一部を前記オイルパン部に戻す還流路を有する
ことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
前記オイルパン部のオイル温度を検出する温度検出部と、
前記還流路のオイルの流量を変化させる流量制御部をさらに備え、
前記流量制御部は、前記オイル温度が閾値未満のときに、前記オイル温度が閾値以上のときよりも前記還流路のオイルの流量を低下させる
請求項1に記載の回転電機。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機の冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ステータコアに巻回されたコイルの冷却効率を高めるために、ステータのコイルエンド部に冷却油を接触させて冷却する回転電機が知られている。
【0003】
この種の回転電機では、オイルパンに貯留されているオイルをポンプで吸い上げてオイルクーラで冷却する。そして、冷却後のオイルは、回転電機の軸方向端部からコイルエンドに向けて下向きに噴射される。その後、オイルはコイルエンドから熱を奪い、コイルエンドの周方向に沿って下側に流れてオイルパンに戻る(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
例えば、特許文献2には、ラジエータを通過した冷媒によってインバータのパワー半導体とオイルパンのオイルを冷却する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-135968号公報
【特許文献2】特開2008-92927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の回転電機において、コイルエンドの下側はオイルパンに貯留されたオイルに浸される。そして、オイルパンに貯留されるオイルの温度は、コイルエンドとの熱交換によりオイルクーラの出口部分と比べて高温となる。そのため、上記の回転電機では、コイルエンドの上側と下側で冷却にむらが生じてしまう。
【0007】
例えば、特許文献2のように、冷媒を循環させてオイルパンのオイルを冷却すれば、コイルエンド下側の冷却効果を改善できる。しかし、上記の場合、オイルの配管とは別に冷媒の配管をオイルパンの近傍に配置する必要が生じるので、回転電機の製造コストが増加してしまう。
【0008】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであって、従来よりも低コストでコイルエンドの温度分布の偏りを抑制できる回転電機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る回転電機は、ロータと、コイルが巻回されたステータとを収容するハウジングと、ハウジング内でハウジングの上側からオイルを散布してコイルのコイルエンドを冷却するオイル散布部と、コイルエンドに散布されたオイルをハウジング内で貯留するオイルパン部と、オイルパン部からオイルを吸い出すオイルポンプと、オイルパン部から吸い出されたオイルを冷却するオイルクーラと、オイルクーラで冷却されたオイルをオイル散布部に供給する油路と、を備える。コイルエンドの一部は、オイルパン部に貯留されたオイルに浸される。油路は、オイルクーラで冷却されたオイルの一部をオイルパン部に戻す還流路を有する。
【0010】
上記の回転電機は、オイルパン部のオイル温度を検出する温度検出部と、還流路のオイルの流量を変化させる流量制御部をさらに備えていてもよく、流量制御部は、オイル温度が閾値未満のときに、オイル温度が閾値以上のときよりも還流路のオイルの流量を低下さてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様の回転電機によれば、従来よりも低コストでコイルエンドの温度分布の偏りを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態の回転電機の一例を示す縦断面図である。
図2】本実施形態における回転電機の冷却構造を模式的に示す図である。
図3】比較例での回転電機の冷却構造を模式的に示す図である。
図4】本実施形態の変形例における回転電機の冷却構造を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
実施形態では説明を分かり易くするため、本発明の主要部以外の構造や要素については、簡略化または省略して説明する。また、図面において、同じ要素には同じ符号を付す。なお、図面に示す各要素の形状、寸法などは模式的に示したもので、実際の形状、寸法などを示すものではない。
【0014】
図1は、本実施形態の回転電機の一例を示す縦断面図である。図2は、本実施形態における回転電機の冷却構造を模式的に示す図である。本実施形態の回転電機1は、インナーロータ型モータであって、ロータ2と、ステータ3と、ハウジング4とを備える。
【0015】
ロータ2は、例えば磁石埋込型または表面磁石型のロータである。ロータ2の中心には、回転軸AXに沿って鉄心を貫通するようにシャフト5が嵌入されている。なお、以下の説明では、回転軸AXを中心とする周方向を単に周方向と称し、回転軸AXを中心とする径方向を単に径方向と称する。
【0016】
ステータ3は、円筒状のステータコアを有し、僅かなエアギャップを隔ててロータ2の外周に同心状に配置される。ステータ3の内周には軸方向に沿って複数のスロット(不図示)が形成され、スロットにはコイルが巻回されている。コイルのコイルエンド部6は、ステータ3の軸方向両端においてそれぞれステータ3から張り出し、周方向に環状をなしている。
【0017】
回転電機1においては、コイルの電流制御によりステータ3の磁界を順番に切り替えることで、ロータ2の磁界との吸引力または反発力が生じる。これにより、ロータ2およびシャフト5が回転し、回転電機1が駆動する。このとき、通電によってコイルは発熱する。
【0018】
ハウジング4は、軸方向の一方側および他方側が開口した円筒状の空間を有する筐体である。ハウジング4の円筒状の空間内には、ロータ2およびステータ3が配置される。例えば、ステータ3はハウジング4の内周に嵌合され、ハウジング4はステータ3の外周面を覆うように取り付けられる。
【0019】
また、ハウジング4の一方側および他方側には、軸受7を有する蓋体4a,4bがそれぞれ取り付けられ、ハウジング4の両側の開口は蓋体4a,4bにより塞がれる。ハウジング4の底面近傍は、ハウジング4内で後述のオイルを貯留するオイルパン部8として機能する。なお、ハウジング4と各蓋体4a,4bはいずれも鋳造で製造される。
【0020】
なお、シャフト5は、蓋体4a,4bの軸受7により回転可能に軸支される。シャフト5の一方側(負荷側)は、蓋体4aを貫通して回転電機1の外側に突出している。
【0021】
また、本実施形態の回転電機1は、コイルエンド部6を油冷するための油冷部を有する。油冷部は、オイルポンプ11と、オイルクーラ12と、吐出油路13とを有する。
【0022】
オイルポンプ11は、図2に示すように、ハウジング4のオイルパン部8と連通する第1油路14と、オイルクーラ12に接続される第2油路15に接続される。オイルポンプ11は、ハウジング4のオイルパン部8に貯留されたオイルを吸い出してオイルクーラ12に送出する機能を担う。
【0023】
オイルクーラ12は、不図示の冷媒路と、冷媒路に隣接する冷却流路とを有している。オイルクーラ12の冷媒路には、外部から送られてくるクーラント等の冷媒が通る。第2油路15からオイルクーラ12内に流入したオイルは、冷却流路を流れる過程で冷媒路の冷媒との熱交換によって冷却される。なお、オイルクーラ12の冷却流路の出口側は、第3油路16に接続されている。
【0024】
第3油路16は、オイルクーラ12で冷却されたオイルが流れる油路であり、途中で2方向に分岐する。分岐した一方の油路16aはハウジング4に設けられた吐出油路13に接続され、冷却されたオイルの一部を吐出油路13に導く。また、分岐した他方の油路16bはオイルパン部8に接続され、冷却されたオイルの一部をオイルパン部8に戻す還流路として機能する。
【0025】
吐出油路13は、図1に示すように、ステータ3よりも図1中上側に配置され、軸方向に沿ってハウジング4内を延びている。また、ハウジング4の一方側および他方側における吐出油路13の両端部には、コイルエンド部6に冷却油を散布するシャワーヘッド17がそれぞれ取り付けられている。
【0026】
ここで、シャワーヘッド17はオイル散布部の一例である。また、油路16aと吐出油路13は、オイルクーラ12で冷却されたオイルをオイル散布部に供給する油路の一例であり、油路16bは、オイルクーラ12で冷却されたオイルの一部をオイルパン部8に戻す還流路の一例である。
【0027】
第3油路16から吐出油路13に流入したオイルは、吐出油路13の両端に向けて流れる。吐出油路13からハウジング4の一方側に流れる冷却油は、一方側のシャワーヘッド17を通過して一方側のコイルエンド部6に上側から散布される。同様に、吐出油路13からハウジング4の他方側に流れる冷却油は、他方側のシャワーヘッド17を通過して他方側のコイルエンド部6に上側から散布される。これにより、コイルエンド部6に接触したオイルが熱を奪うことで、コイルエンド部6が冷却される。
【0028】
そして、シャワーヘッド17を経て上側から散布されるオイルは、ハウジング4の底面近傍のオイルパン部8に貯留される。また、コイルエンド部6の下側は、オイルパン部8のオイルに浸されることでオイルと熱交換を行う。また、オイルパン部8のオイルは、オイルポンプ11の駆動によってオイルクーラ12に向けて再び送出される。
【0029】
ここで、本実施形態の第3油路16は途中で分岐し、分岐した油路16bはオイルパン部8に接続される還流路を構成する。これにより、オイルクーラ12で冷却されたオイルの一部は、オイルパン部8に還流されてオイルパン部8のオイルを冷却する。
【0030】
以下、図3に示す比較例と対比しつつ、本実施形態の回転電機1の作用について説明する。図3の比較例の回転電機1aは、第3油路16が吐出油路13にのみ接続され、還流路がない点で図2に示す本実施形態の構成と相違する。
【0031】
比較例のオイルパン部8には、コイルエンド部6との熱交換後のオイルが貯留される。コイルエンド部6の下側は、オイルクーラ12を通過したオイルと比べて高温のオイルに浸されるので、オイルクーラ12を通過したオイルと接触するコイルエンド部6の上側と比べて冷却効果が低くなる。そのため、比較例の場合には、コイルエンド部6の上側と下側で温度のむらが生じて回転電機1aのコイル温度も上昇しやすくなる。
【0032】
一方、図2の本実施形態の構成では、オイルクーラ12で冷却されたオイルの一部は、還流路(16b)からオイルパン部8に還流される。そして、本実施形態のオイルパン部8では、熱交換後のオイルに冷却されたオイルが合流するため、比較例の回転電機1aと比べてオイルパン部8に貯留されるオイルの温度が低下する。したがって、本実施形態では、オイルパン部8のオイルによってコイルエンド部6の下側もよく冷却されるので、比較例と比べてコイルエンド部6の温度むらが抑制され、回転電機1のコイル温度も上昇しにくくなる。換言すれば、本実施形態の回転電機1は、比較例の回転電機1aよりもコイル温度の上昇に起因する異常の発生を抑制できる。
【0033】
また、本実施形態の構成では、オイルパン部8でのオイル温度が低くなるので、比較例と比べて熱によるオイルの劣化も抑制される。
【0034】
また、本実施形態の構成では、オイルクーラ12で冷却されたオイルの一部をオイルパン部8に還流させてオイルを冷却するので、オイルパン部8を冷媒等で冷却する配管等を別途設けなくてもよい。そのため、オイルパンの近傍に冷媒の配管を配置する構成と比べると、回転電機の製造コストを抑制できる。
【0035】
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の改良並びに設計の変更を行ってもよい。
【0036】
上記実施形態では、回転電機の一例としてモータの構成例を説明したが、本発明の回転電機は、油冷型の発電機に適用することも可能である。
【0037】
また、上記実施形態の変形例として、オイルパン部8のオイル温度に応じて還流路16bから還流させるオイルの流量を制御してもよい。図4は、本実施形態の変形例における回転電機の冷却構造を模式的に示す図である。なお、以下の変形例の説明では、上記実施形態と同様の構成には同じ符号を付して重複説明を省略する。
【0038】
図4に示す変形例のオイルパン部8には、オイルパン部8のオイルの温度を検知する温度検知部18が配置される。温度検知部18は、例えばサーミスタなどで構成される。また、還流路16bには、還流路16bのオイル流量を変化させる流量制御部19が設けられている。流量制御部19は、例えば弁で構成される。また、流量制御部19は、温度検知部18からオイルの温度情報を受けて例えば以下のように動作する。
【0039】
オイルパン部8のオイル温度が閾値以上となる第1の状態において、流量制御部19は、還流路16bのオイル流量を第1の流量とする。この第1の状態では、オイルパン部8のオイルの温度は、上記実施形態と同様に、オイルクーラ12から還流路16bを介して還流するオイルにより低下しやすくなる。
【0040】
一方、オイルパン部8のオイル温度が閾値未満となる第2の状態において、流量制御部19は、還流路16bのオイル流量を第1の流量よりも少ない第2の流量とする。第2の状態での流量制御部19は、還流路16bのオイルの流れを遮断してもよい。この第2の状態では、第1の状態と比べて還流路16bのオイル流量が低下するが、油路16aおよび吐出油路13では第1の状態よりもオイル流量が多くなる。このように、変形例の構成によれば、オイルパン部8のオイル温度が比較的低く、オイルパン部8のオイルを冷却しなくてもよい第2の状態では、コイルエンドの上側を効率的に冷却することが可能となる。なお、変形例の流量制御部19は、オイルの温度に応じて還流路16bのオイルの流量を3段階以上変化させてもよい。
【0041】
加えて、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0042】
1…回転電機、2…ロータ、3…ステータ、4…ハウジング、5…シャフト、6…コイルエンド部、8…オイルパン部、11…オイルポンプ、12…オイルクーラ、13…吐出油路、16b…還流路、17…シャワーヘッド、18…温度検知部、19…流量制御部

図1
図2
図3
図4