(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185848
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】散布機
(51)【国際特許分類】
A01C 15/00 20060101AFI20221208BHJP
A01M 9/00 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
A01C15/00 A
A01M9/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093733
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000100469
【氏名又は名称】みのる産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】平松 彩冬
(72)【発明者】
【氏名】本荘 陽一
【テーマコード(参考)】
2B052
2B121
【Fターム(参考)】
2B052BC04
2B052BC08
2B052DB07
2B052EA02
2B052EB08
2B121CB09
2B121EA26
(57)【要約】
【課題】散布機において、非吐出時における被散布物の貯留部から供給路への被散布物の漏れを抑制できる技術を提供する。
【解決手段】この散布機は、空間を上下に仕切る仕切り板61と、仕切り板61の下面に隣接するスライド可能な板状のシャッター62と、シャッター62の下方に配置される蓋71とを有する。仕切り板61は上下方向に貫通する第1供給孔を有し、シャッター62は第1供給孔の開口面積を可変である。蓋は、第1供給孔をシャッター62の下方から覆う閉鎖位置と、第1供給孔を開放する開放位置とに切り替え動作可能である。これにより、被散布物の非吐出時に仕切り板が上下の空間を仕切る構造に隙間が生じにくい。したがって、仕切り板の上の空間に収容された被散布物が下方へと漏れ出すのが抑制される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場に被散布物を供給する散布機であって、
前記被散布物を収容し、下方に開口するホッパーと、
前記ホッパーから前記被散布物を吐出する繰り出し部と、
を有し、
前記繰り出し部は、
前記ホッパーの内部と連通する空間と、前記供給パイプと連通する空間とを上下に仕切る仕切り板と、
前記仕切り板の下面に隣接し、前記仕切り板に対してスライド可能に取り付けられた板状のシャッターと、
前記シャッターの下方に配置される蓋と、
を有し、
前記仕切り板は、上下方向に貫通する第1供給孔を有し、
前記シャッターは、スライドすることにより前記第1供給孔の開口面積を可変であり、
前記蓋は、その上面が前記第1供給孔を前記シャッターの下方から覆う閉鎖位置と、前記第1供給孔を開放する開放位置とに切り替え動作可能である、散布機。
【請求項2】
請求項1に記載の散布機であって、
上端部の上開口から下端部の下開口に向かって延びる供給パイプ
をさらに有し、
前記上開口には、前記ホッパーから前記第1供給孔を介して落下する被散布物が供給される、散布機。
【請求項3】
請求項2に記載の散布機であって、
前記供給パイプを2つ有し、
前記繰り出し部は、前記蓋を2つ有し、
前記仕切り板は、前記第1供給孔を2つ有し、
2つの前記蓋は、それぞれ独立して動作する、散布機。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の散布機であって、
前記繰り出し部は、
回動軸を中心として回動し、所望の位置で固定可能な開度調整板と
前記回動軸とともに回動する、歯車と、
をさらに有し、
前記シャッターは、前記供給孔と重ならない部分に、
スライド方向に梯子状に並ぶ複数の穴または凹みを備えるラック構造
を有し、
前記歯車が前記ラック構造と噛み合い、前記歯車の回動に従って前記シャッターがスライドする、散布機。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の散布機であって、
前記第1供給孔は、前記シャッターのスライド方向に直交する幅方向の長さが一定でない、散布機。
【請求項6】
請求項5に記載の散布機であって、
前記シャッターがスライド方向一方側に移動するにつれて前記第1供給孔の開口面積が小さくなり、
前記第1供給孔は、スライド方向一方側における幅方向の長さが、スライド方向他方側における幅方向の長さよりも小さい、散布機。
【請求項7】
請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の散布機であって、
前記蓋の前記上面は、可撓性部材である、散布機。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の散布機であって、
前記蓋は、前記閉位置において、弾性部材によって前記仕切り板および前記シャッターへ向かう方向へと付勢される、散布機。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の散布機であって、
前記ホッパーおよび前記繰り出し部を搭載し、前方へと走行する走行部と、
前記走行部から延びるハンドルと、
前記繰り出し部へ動力を伝達させるコントロールケーブルと、
前記コントロールケーブルから出力された往復運動力を前記蓋の開閉動力へと変換する開閉機構と、
をさらに有し、
前記コントロールケーブルは、
前記ハンドルに備えられた切替レバーから動力が入力される入力端部と、
前記開閉機構へ往復運動力を出力する出力端部と、
を有する、散布機。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載の散布機であって、
前記繰り出し部は、
前記シャッターの下面に隣接して配置される支持板
をさらに有し、
前記支持板は、
少なくとも前記供給孔と上下方向に重なる領域において上下に貫通する第2供給孔
を有し、
前記蓋が前記閉位置に配置されると、前記蓋の上面が、前記支持板の下面の前記第2供給孔の縁部に接触する、散布機。
【請求項11】
請求項10に記載の散布機であって、
前記支持板は、
前記第2供給孔を2つ有するとともに、
上下方向に貫通する排出孔をさらに有し、
前記排出孔は、前記シャッターのスライド方向に直交する幅方向において、2つの前記第2供給孔の間に位置する、散布機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散布機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場を走行する走行部を有する散布機が知られている。散布機は、圃場で成育している作物に対して肥料を供給するために施肥機として用いられたり、農薬を散布する農薬散布機として用いられたりする。走行部を有する散布機については、例えば、特許文献1に記載された施肥機が挙げられる。走行部を有する施肥機では、エンジン等の駆動部を用いて施肥機を自走させることにより、走行スピードを上げ、作業者の負担を大きく減らすことができる。このような走行式の施肥機では、作業者が手元で操作することにより、肥料の吐出制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の施肥機では、
図4に示すように、下方に開口した供給口511,512をシャッター531,532を揺動させて開閉することにより、肥料の吐出制御を行っている。この施肥機では、ホッパー51から供給路への供給口511,512の側壁が、繰り出し部53の筐体の内壁となっている。このため、シャッター531,532が筐体の内壁と接触しないようにするために、シャッター531,532が供給口511,512を閉鎖する閉状態においても、供給口511,512の側部に僅かにシャッター531,532に覆われない隙間が生じる。
【0005】
特許文献1に記載の施肥機での散布対象の肥料が当該隙間より大きな粒状である場合、特に問題がない。しかしながら、同様の構造の散布機において、細粒状の肥料や農薬を散布しようとすると、当該隙間を介して、ホッパー51から肥料が供給路へと漏れ出る虞がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、散布機において、非吐出時における被散布物の貯留部から供給路への被散布物の漏れを抑制できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本願の第1発明は、圃場に被散布物を供給する散布機であって、前記被散布物を収容し、下方に開口するホッパーと、前記ホッパーから前記被散布物を吐出する繰り出し部と、を有し、前記繰り出し部は、前記ホッパーの内部と連通する空間と、前記供給パイプと連通する空間とを上下に仕切る仕切り板と、前記仕切り板の下面に隣接し、前記仕切り板に対してスライド可能に取り付けられた板状のシャッターと、前記シャッターの下方に配置される蓋と、を有し、前記仕切り板は、上下方向に貫通する第1供給孔を有し、前記シャッターは、スライドすることにより前記第1供給孔の開口面積を可変であり、前記蓋は、その上面が前記第1供給孔を前記シャッターの下方から覆う閉鎖位置と、前記第1供給孔を開放する開放位置とに切り替え動作可能である。
【0008】
本願の第2発明は、第1発明の散布機であって、上端部の上開口から下端部の下開口に向かって延びる供給パイプをさらに有し、前記上開口には、前記ホッパーから前記第1供給孔を介して落下する被散布物が供給される。
【0009】
本願の第3発明は、第2発明の散布機であって、前記供給パイプを2つ有し、前記繰り出し部は、前記蓋を2つ有し、前記仕切り板は、前記第1供給孔を2つ有し、2つの前記蓋は、それぞれ独立して動作する。
【0010】
本願の第4発明は、第1発明ないし第3発明のいずれかの散布機であって、前記繰り出し部は、回動軸を中心として回動し、所望の位置で固定可能な開度調整板と、前記回動軸とともに回動する、歯車と、をさらに有し、前記シャッターは、前記供給孔と重ならない部分に、スライド方向に梯子状に並ぶ複数の穴または凹みを備えるラック構造を有し、前記歯車が前記ラック構造と噛み合い、前記歯車の回動に従って前記シャッターがスライドする。
【0011】
本願の第5発明は、第1発明ないし第4発明のいずれかの散布機であって、前記第1供給孔は、前記シャッターのスライド方向に直交する幅方向の長さが一定でない。
【0012】
本願の第6発明は、第5発明の散布機であって、前記シャッターがスライド方向一方側に移動するにつれて前記第1供給孔の開口面積が小さくなり、前記第1供給孔は、スライド方向一方側における幅方向の長さが、スライド方向他方側における幅方向の長さよりも小さい。
【0013】
本願の第7発明は、第1発明ないし第6発明のいずれかの散布機であって、前記蓋の前記上面は、可撓性部材である。
【0014】
本願の第8発明は、第1発明ないし第7発明のいずれかの散布機であって、前記蓋は、前記閉位置において、弾性部材によって前記仕切り板および前記シャッターへ向かう方向へと付勢される。
【0015】
本願の第9発明は、第1発明ないし第8発明のいずれかの散布機であって、前記ホッパーおよび前記繰り出し部を搭載し、前方へと走行する走行部と、前記走行部から延びるハンドルと、前記繰り出し部へ動力を伝達させるコントロールケーブルと、前記コントロールケーブルから出力された往復運動力を前記蓋の開閉動力へと変換する開閉機構と、をさらに有し、前記コントロールケーブルは、前記ハンドルに備えられた切替レバーから動力が入力される入力端部と、前記開閉機構へ往復運動力を出力する出力端部と、を有する。
【0016】
本願の第10発明は、第1発明ないし第9発明のいずれかの散布機であって、前記繰り出し部は、前記シャッターの下面に隣接して配置される支持板をさらに有し、前記支持板は、少なくとも前記供給孔と上下方向に重なる領域において上下に貫通する第2供給孔
を有し、前記蓋が前記閉位置に配置されると、前記蓋の上面が、前記支持板の下面の前記第2供給孔の縁部に接触する。
【0017】
本願の第11発明は、第10発明の散布機であって、前記支持板は、前記第2供給孔を2つ有するとともに、上下方向に貫通する排出孔をさらに有し、前記排出孔は、前記シャッターのスライド方向に直交する幅方向において、2つの前記第2供給孔の間に位置する。
【発明の効果】
【0018】
本願の第1発明から第11発明によれば、仕切り板に設けられた第1供給孔の開度を、シャッターにより調整できる。これにより、仕切り板が上下の空間を仕切る構造に隙間が生じにくい。したがって、被散布物の非吐出時に、仕切り板の上の空間に収容された被散布物が下方へと漏れ出すのが抑制される。
【0019】
特に、本願の第3発明によれば、2つの供給パイプの供給対象となる2カ所に対して、いずれか一方のみに散布を行ったり、異なるタイミングで散布を行ったりすることができる。
【0020】
特に、本願の第5発明によれば、シャッターのスライド移動の距離に対する第1供給孔の開口面積の変化量を位置によって変えることができる。
【0021】
特に、本願の第6発明によれば、第1供給孔の開口面積が小さい範囲において開口面積の変化を小さくし、第1供給孔の開口面積が大きい範囲において開口面積の変化を大きくできる。これにより、粉状、細粒状、大きな粒状といった様々な形状の被散布物に対して、部品変更を行うことなく適切な散布量で散布を行いやすい。
【0022】
特に、本願の第7発明、第8発明または第10発明によれば、蓋が第1供給孔の出口に密着するため、第1供給孔を介して被散布物が漏れるのが抑制される。
【0023】
特に、本願の第11発明によれば、仕切り板と支持板との間に被散布物が詰まるのが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図2】一実施形態に係る繰り出し部の右側面図である。
【
図3】一実施形態に係る繰り出し部の左側面図である。
【
図4】一実施形態に係る繰り出し部の断面図である。
【
図5】一実施形態に係る繰り出し部の断面図である。
【
図6】一実施形態に係る繰り出し部の内部機構の分解斜視図である。
【
図7】一実施形態に係る繰り出し部の内部機構を下方から見た斜視図である。
【
図8】一実施形態に係る吐出量制御部の各部の平面図である。
【
図9】一実施形態に係る吐出量制御部の動作の様子を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、本願では、散布機の進行方向を「前方向」、散布機の進行方向と逆の方向を「後方向」とそれぞれ称する。また、本願では、前後方向に直交する水平方向を左右方向とする。また、本願では、散布機の使用時(走行時)の姿勢に従って上下方向を定義する。
【0026】
<1.第1実施形態>
<1-1.散布機全体の構成>
まず、散布機1の全体の構成について説明する。
図1は、散布機1の斜視図である。この散布機1は、圃場に粒状の肥料や農薬などの被散布物を供給する装置である。この散布機1は2条用の散布機であって、2つの畝の間を走行させつつ左右の畝に肥料や農薬を播くことができる。
【0027】
図1に示すように、散布機1は、本体部10、走行部2、駆動部3、ハンドル4、散布部5、および、動力伝達部9を有する。
【0028】
本体部10は、走行部2の上に載置され、駆動部3、ハンドル4および散布部5を支持する枠体である。本体部10は、後輪21の上部に取り付けられる支持台11と、支持台11の前方から上方へ延びる柱部12と、柱部12の上部において散布部5を載置する載置台13と、支持台11の後方においてハンドル4が取り付けられるハンドル固定部14とを有する。
【0029】
走行部2は、起動輪である後輪21と、遊動輪である前輪22と、後輪21と前輪22とを囲むクローラーベルト23とを有する。後輪21、前輪22およびクローラーベルト23により、所謂クローラー(無限軌道)である接地部が構成される。なお、走行部2で圃場に接触する接地部は、クローラーに代えて車輪であってもよい。
【0030】
本実施形態では、走行部2にクローラーを用いることにより、走行部2に車輪を用いる場合と比べて、走行部2の圃場に対する接地面積が大きくなる。これにより、圃場が柔らかい場合であっても、散布機1が圃場に沈み込みにくい。したがって、散布機1の走行性能が向上するとともに、散布作業における作業者の負担を軽減できる。
【0031】
駆動部3は、回転動力を出力する。具体的には、駆動部3は、燃料タンクを備えたエンジンである。本実施形態では、駆動部3は、走行部2の右側の上方に配置される。駆動部3から出力された回転動力は、スプロケットおよびローラーチェーン等の動力伝達機構を介して後輪21へと伝達される。なお、本実施形態において駆動部3はエンジンであるが、駆動部3はモータ等の他の駆動機構であってもよい。
【0032】
ハンドル4は、左右それぞれに、グリップ41、アーム42および切替レバー43,44を有する。グリップ41は、走行部2、駆動部3および散布部5よりも後方に配置される。アーム42はそれぞれ、本体部10のハンドル固定部14とグリップ41とを繋ぐ。アーム42は、ハンドル固定部14から後方かつ上方へ延びる。切替レバー43,44はそれぞれ、グリップ41の周囲に固定される。2つの切替レバー43,44のうち、右側に配置されるものを第1切替レバー43、左側に配置されるものを第2切替レバー44と称する。
【0033】
切替レバー43,44はそれぞれ、入状態と切状態とに切替可能である。具体的には、切替レバー43,44はそれぞれ、グリップ41の下方に配置された把持レバー451と、把持レバー451のさらに下方に配置された吐出レバー452とを有する。散布機1の使用者は、圃場の走行時には基本的に、グリップ41と把持レバー451とを握り込んで散布機1の操作を行う。把持レバー451のみが握り込まれた状態において、切替レバー43,44は切状態となる。一方、被散布物の吐出を行いたい場合、さらに吐出レバー452を握り込む。把持レバー451と吐出レバー452との両方が握り込まれた状態において、切替レバー43,44は入状態となる。
【0034】
散布部5は、ホッパー51と、繰り出し部52と、供給パイプ53,54とを有する。散布部5は、本体部10の載置台13に固定されている。なお、2つの供給パイプ53,54のうち、右側に配置されるものを第1供給パイプ53、左側に配置されるものを第2供給パイプと称する。
【0035】
ホッパー51は、肥料や農薬などの被散布物を収容する容器である。ホッパー51は、繰り出し部52上に載置される。ホッパー51の下部は、下方に向かうにつれてすぼむ。すなわち、ホッパー51の下部は、下方に向かうにつれて断面積が小さくなる。そして、ホッパー51は、その下端部に、繰り出し部52と接続される開口510(
図4参照)を有する。ホッパー51内に収容された被散布物は、重力によって開口510から繰り出し部52へと供給される。
【0036】
繰り出し部52は、ホッパー51から供給される被散布物を、設定されたタイミングおよび量で2つの供給パイプ53,54へと繰り出す。繰り出し部52の筐体520は、上部にホッパー51の開口510と接続する供給口521(
図4参照)を有する。また、筐体520は、その底部に、筐体520の内部と下方の空間とを連通する排出口522,523(
図2~
図5参照)を有する。
【0037】
排出口522,523は、上方から下方へ向かってすぼむ漏斗状の部位と、当該漏斗状の部位の下端部から斜め下方へ向かう円筒状の部位とを有する。排出口522,523の円筒状の部位は、供給パイプ53,54とそれぞれ接続する。なお、2つの排出口522,523のうち、第1供給パイプ53と接続されるのもを第1排出口522、第2供給パイプ54と接続されるものを第2排出口523と称する。
【0038】
排出口522,523の漏斗状の部位の上端部は、それぞれ、後述する供給通路600の下方に配置される。これにより、供給通路600から落下してくる被散布物を集めて供給パイプ53,54へと送り出すことができる。
【0039】
ハンドル4の第1切替レバー43が入状態になると、繰り出し部52は第1排出口522から被散布物を第1供給パイプ53へと吐出する。これにより、第1供給パイプ53を介して右側の畝に対して被散布物が吐出される。また、第2切替レバー44が入状態になると、繰り出し部52は第2排出口523から被散布物を第2供給パイプ54へと吐出する。これにより、第2供給パイプ54を介して左側の畝に対して被散布物が吐出される。
【0040】
なお、繰り出し部52の詳細な構成については、後述する。
【0041】
供給パイプ53,54は、ホッパー51から繰り出し部52を介して供給された被散布物を、左右の畝に対して輸送するための供給路である。第1供給パイプ53は、繰り出し部52から右方向かつ下方へと延びる。これにより、第1供給パイプ53は、繰り出し部52から供給された被散布物を右側の畝へと吐出することができる。第2供給パイプ54は、繰り出し部52から左方向かつ下方へと延びる。これにより、第2供給パイプ54は、繰り出し部52から供給された被散布物を左側の畝へと吐出することができる。
【0042】
供給パイプ53,54はそれぞれ、可撓パイプ551と、円筒パイプ552と、ガイド部553と、支持アーム554とを有する。
【0043】
可撓パイプ551の一端は、繰り出し部52の排出口522,523のいずれかに接続される。具体的には、可撓パイプ551の一端に第1排出口522または第2排出口523が挿入され、一部が重なった状態で固定される。また、可撓パイプ551の他端は、円筒パイプ552の一端と接続される。具体的には、円筒パイプ552の一端に可撓パイプ551の他端が挿入され、一部が重なった状態で固定される。
【0044】
ガイド部553は、円筒パイプ552の先端に配置される。ガイド部553は、円筒パイプ552の先端部の前側と、外側と、後側とにおいてそれぞれ下方へ向かって板状に延びる断面コ字状の部材である。円筒パイプ552内を落下してきた被散布物は、ガイド部553によって円筒パイプ552の先端部の真下に供給される。したがって、所望の位置に被散布物を供給できる。
【0045】
支持アーム554は、円筒パイプ552を支持する部材である。支持アーム554の一端は本体部10に対して固定される。支持アーム554の他端は、円筒パイプ552を保持する。支持アーム554は、本体部10に対する角度を変更することができる。これにより、円筒パイプ552の角度を変更することができる。また、支持アーム554は、円筒パイプ552の保持位置を変更できる。このため、可撓パイプ551と円筒パイプ552との重なり長さを調整して、供給パイプ53,54全体の長さを変更できる。このように、供給パイプ53,54全体の角度および長さを変更することにより、被散布物の供給高さおよび供給位置を調節できる。
【0046】
動力伝達部9は、第1コントロールケーブル91と、第2コントロールケーブル92と、第3コントロールケーブル93と、図示しない動力変換機構とを含む。なお、
図1中、第1コントロールケーブル91および第2コントロールケーブル92は、入力端付近のみが図示されている。また、
図1中、第3コントロールケーブル93は、出力端付近のみが図示されている。3つのコントロールケーブル91,92,93はそれぞれ、インナーケーブルと、インナーケーブルを被覆するアウターケーシングとから構成される。インナーケーブルは、アウターケーシングの内部において長手方向に移動可能である。コントロールケーブル91,92,93のアウターケーシングはそれぞれ、散布機1の車体の各部に固定される。
【0047】
第1コントロールケーブル91は、第1切替レバー43から入力される往復運動力を繰り出し部52の後述する第1回動板722に伝達する。具体的には、第1コントロールケーブル91の入力端が第1切替レバー43に接続され、出力端が第1回動板722に接続される。そして、第1切替レバー43が入状態の場合、第1コントロールケーブル91の入力端に引張力は入力されない。一方、第1切替レバー43が切状態の場合、第1コントロールケーブル91の入力端に引張力が入力される。
【0048】
第2コントロールケーブル92は、第2切替レバー44から入力される往復運動力を繰り出し部52の後述する第2回動板742に伝達する。具体的には、第2コントロールケーブル92の入力端が第2切替レバー44に接続され、出力端が第2回動板742に接続される。そして、第2切替レバー44が入状態の場合、第2コントロールケーブル92の入力端に引張力は入力されない。一方、第2切替レバー44が切状態の場合、第2コントロールケーブル92の入力端に引張力が入力される。
【0049】
また、第3コントロールケーブル93には、動力変換機構から入力される往復運動力を繰り出し部52の後述するアジテータ機構80に伝達する。具体的には、第3コントロールケーブル93の入力端には、走行部2の後輪21の回転運動に応じた往復運動力が入力される。動力変換機構は、例えば、後輪21のシャフトとともに回転するカムと、カムフォロワとから構成される。なお、第3コントロールケーブル93に入力される動力は、走行部2から入力されるものでなくてもよい。例えば、駆動部3の出力した回転動力や、別個に設けられたモータ等から出力される回転動力を往復運動力に変換したものであってもよい。
【0050】
なお、本実施形態では、動力伝達部9として3つのコントロールケーブル91,92,93を用いたが、コントロールケーブル以外の動力伝達手段を用いてもよい。往復運動力を伝達する手段として、コントロールケーブルに代えて、板材を使用したロッド等の他の手段を用いてもよい。
【0051】
<1-2.繰り出し部の構成>
次に、繰り出し部52の構成について、
図2~
図9を参照しつつ説明する。
図2は、繰り出し部52の右側面図である。
図3は、繰り出し部52の左側面図である。
図4は、繰り出し部52を左側から見た縦断面図である。
図5は、仕切り板61の第1仕切り部611の上面に沿う断面における繰り出し部52の断面図である。
図6は、繰り出し部52の内部機構の分解斜視図である。
図7は、繰り出し部52の内部機構を下方から見た斜視図である。なお、
図7では、蓋71,73のうち弾性部材712,732のみが図示されている。
図8は、開度調整部60の仕切り板61の第1仕切り部611と、シャッター62およびシャッター保持板63と、支持板64とのスライド方向の位置を合わせた分解平面図である。
図9は、第1仕切り部611と、シャッター62およびシャッター保持板63と、支持板64とが重なった状態の平面図である。
【0052】
繰り出し部52は、開度調整部60、開閉部70、およびアジテータ機構80を有する。
【0053】
開度調整部60は、後述する供給通路600の開度を調整するための機構である。
図4および
図6に示すように、開度調整部60は、仕切り板61、シャッター62、シャッター保持板63、支持板64、ガイド板65、開度調整板66、回動軸67、および歯車68を有する。
【0054】
仕切り板61は、繰り出し部52の筐体520の内部空間を上下に仕切る。具体的には、仕切り板61は、筐体520の内部空間を、ホッパー51の内部と連通する第1空間S1と、供給パイプ53,54と連通する第2空間S2とに仕切る。散布機1の使用時には、仕切り板61よりも上の第1空間S1は、ホッパー51の開口510から供給口521を介して供給された被散布物で満たされる。
【0055】
図4および
図6に示すように、仕切り板61は、第1仕切り部611と、一枚の板材を曲げて形成される第2仕切り部612および固定部613とを有する。第1仕切り部611は、シャッター62および支持板64と平行に配置される。第1仕切り部611は、一端が筐体520に固定され、他端に向かうにつれて後方かつ下方へ向かう。第2仕切り部612は、第1仕切り部611の他端から上方に延びる。固定部613は、第2仕切り部612の上端部から後方かつ上方へ向かう。固定部613の上端部は筐体520に固定される。
【0056】
シャッター62は仕切り板61に対してスライド可能に取り付けられた板状の部材である。シャッター62は、第1仕切り部611に平行な平面上において、第1仕切り部611の長手方向にスライド移動が可能である。すなわち、シャッター62は、前方かつ上方へ向かう向きと、後方かつ下方へ向かう向きとに移動が可能である。ここで、シャッター62がスライド移動する方向をスライド方向、スライド方向に対して直交する方向を幅方向と称する。なお、本実施形態において幅方向は左右方向と一致する。また、スライド方向のうち、後方かつ下方に向かう向きをスライド方向一方側、前方かつ上方に向かう向きをスライド方向他方側と称する。
【0057】
シャッター保持板63は、シャッター62を、仕切り板61の下面に沿ってスライド可能に支持する。シャッター62およびシャッター保持板63は、仕切り板61の第1仕切り部611の下面に隣接し、第1仕切り部611と平行に配置される。
【0058】
シャッター保持板63は、シャッター62の幅方向の両端およびスライド方向一方側の端部を囲むコ字状かつ板状の部材である。具体的には、シャッター保持板63は、シャッター62の幅方向の両端を保持する2つ側方保持部631と、2つの側方保持部631のスライド方向他方側の端部を幅方向に繋ぐ下側保持部632とを有する。
【0059】
下側保持部632は、シャッター62のスライド方向一方側への移動を規制する。これにより、シャッター62が重力によってスライド方向他方側へ移動した場合でもシャッター62を所定の位置に保持することができる。
【0060】
支持板64は、シャッター62の下面に隣接して配置される。本実施形態では、仕切り板61、シャッター保持板63および支持板64は、ブラインドリベットによって固定される。シャッター62は、仕切り板61、シャッター保持板63および支持板64によって囲まれた空間の内部に配置される。
【0061】
仕切り版61の第1仕切り部611、側方保持部631および支持板64によって構成される幅方向両端の断面コ字状の部位が、シャッター62の幅方向の両端が挿入され、シャッター62がスライド移動するためのレールの役割を果たす。
【0062】
ここで、仕切り板61、シャッター62および支持板64によって形成される被散布物の供給通路600について、
図8および
図9を参照しつつ説明する。供給通路600は、第1空間S1と第2空間S2とを連通する連通口である。
【0063】
図8に示すように、仕切り板61の第1仕切り部611には、上下方向に貫通する第1供給孔601が2つ設けられる。2つの第1供給孔601は、左右に並んで配置される。また、支持板64には、上下方向に貫通する第2供給孔602が2つ設けられる。第2供給孔602はそれぞれ、少なくとも第1供給孔601と上下方向に重なる領域をカバーする。すなわち、上下方向に見て第2供給孔602は、第1供給孔601と同じ、もしくは、第1供給孔601よりも広い範囲を占める。なお、シャッター保持板63は、第1供給孔601および第2供給孔602とは上下方向に重ならない。
【0064】
第1供給孔601および第2供給孔602によって供給通路600が形成される。なお、2つの供給通路600のうち、右側に配置されるものを第1供給通路603、左側に配置される物を第2供給通路604と称する。また、この供給通路600の開度は、シャッター62のスライド方向の位置により調整される。シャッター62がスライド方向一方側に移動するにつれて第1供給孔601の開口面積が小さくなり、すなわち供給通路600の開口面積が小さくなる。なお、第2供給孔602は第1供給孔601よりも大きいため、供給通路600の開口面積は、全開時には第1供給孔601の開口面積と等しい。このため、供給通路600の開口面積は、第1供給孔601をシャッター62がどの程度塞ぐかによって決まる。
【0065】
第1供給孔601は、第1仕切り部611のスライド方向一方側の端部付近に配置される。すなわち、仕切り板61のうち、最も下方に配置される位置に配置される。これにより、第1空間S1に供給された被散布物が、効率良く供給通路600へ向かう。
【0066】
シャッター62が最もスライド方向一方側に配置される第1位置P1に配置された場合、シャッター62のスライド方向一方側端部は、第1供給孔601よりもスライド方向一方側に配置される。このため、シャッター62が第1位置P1に配置された場合、シャッター62は第1供給孔601をすべて覆う。このとき、供給通路600の開度は最小となり、供給通路600は閉鎖される。
【0067】
シャッター62が最もスライド方向他方側に配置される第2位置P2に配置された場合、シャッター62のスライド方向一方側端部は、第1供給孔601よりもスライド方向他方側に配置される。このため、シャッター62が第2位置P2に配置された場合、シャッター62は第1供給孔601と重ならない。このとき、供給通路600の開度は最大となり、供給通路600は第1供給孔601と同じ大きさとなる。
【0068】
シャッター62が第1位置P1と第2位置P2の間の第3位置P3に配置された場合、シャッター62のスライド方向一方側端部は、第1供給孔601のスライド方向の途中に配置される。このため、シャッター62が第3位置P3に配置された場合、シャッター62は第1供給孔601の一部の範囲を覆う。
【0069】
シャッター62が第3位置P3よりもスライド方向一方側に配置されると、シャッター62が第1供給孔601を覆う面積が大きくなる。すなわち、供給通路600の開度が小さくなる。また、シャッター62が第3位置P3よりもスライド方向他方側に配置されると、シャッター62が第1供給孔601を覆う面積が小さくなる。すなわち、供給通路600の開度が大きくなる。このように、シャッタ-62のスライド方向の位置を調整することにより、供給通路600の開度を調整することができる。
【0070】
ガイド板65、開度調整板66、回動軸67および歯車68は、シャッター62のスライド方向の位置を変更するための機構である。
図2に示すように、ガイド板65は、筐体520の右側面に固定される。開度調整板66は、ガイド板65に沿って配置される。開度調整板66は、筐体520および開度調整板66に対して回動可能に取り付けられる。
【0071】
回動軸67は、筐体520の内外において左右方向に延びる円柱状のシャフトである。回動軸67の左側の端部は、筐体520の左側面に回動可能に取り付けられる。回動軸67の右側の端部は、筐体520の右側面を貫通して、筐体520の右側へ突出する。回動軸67の右側の端部には、開度調整板66が固定される。このため、開度調整板66が回動すると、回動軸67は開度調整板66に伴って回動する。歯車68は、筐体520の内部において、回動軸67の周囲に固定される。すなわち、歯車68は、回動軸67の回動に伴って回動する。
【0072】
ここで、
図6および
図8に示すように、シャッター62は、幅方向中央に、スライド方向に配置されたラック構造621を有する。ラック構造621は、スライド方向に梯子状に並ぶ複数の穴を有する。なお、本実施形態において、ラック構造621は、シャッター62を上下に貫通する複数の穴により構成されるが、複数の穴に代えて、下面側に設けられる複数の凹みにより構成されてもよい。
【0073】
また、支持板64は、幅方向中央に、上下に貫通する窓641を有する。窓641は、第2供給孔602よりもスライド方向他方側に配置される。シャッター62が第1位置P1にある場合と、第2位置P2にある場合とのいずれの場合においても、下方から見て、窓641を介してシャッター62のラック構造621の複数の穴の少なくとも一部が露出する。
【0074】
歯車68は、窓641を介してシャッター62のラック構造621の複数の穴に噛み合う。ラック構造621の複数の穴と歯車68とは、ラック-ピニオン構造を構成する。歯車の位置は固定されているため、歯車68が回動すると、ラック構造621を有するシャッター62がスライド移動する。このように、回動軸67の回動に従って、歯車68を介してシャッター62がスライド移動する。
【0075】
図2に示すように、ガイド板65は、回動軸67を中心とした半円状の板である。ガイド板65の円弧状の縁部には、複数の切り込み651が設けられる。開度調整板66は、ガイド板65の切り込み651に嵌まる嵌合部661を有する。作業者は、開度調整板66を回動させて、供給通路600が所望の開度となるように切り込み651を選択し、その切り込み651に開度調整板66の嵌合部661を嵌め込む。これにより、開度調整板66および回動軸67を所望の位置に回動させて、シャッター62のスライド方向の位置を所望の位置に配置することができる。すなわち、筐体520の外部から筐体520内のシャッター62の位置を変更し、供給通路600の開度を調整することができる。
【0076】
図4、
図6および
図7に示すように、開閉部70は、第1蓋71、第1開閉機構72、第2蓋73および第2開閉機構74を有する。
【0077】
第1蓋71は、第1供給通路603を下方から開閉する。
図6および
図7に示すように、第1蓋71は、第1供給通路603の下方に配置される。
図4および
図6に示すように、第1蓋71は、板状部材711と、弾性部材712とを有する。第1開閉機構72は、第1蓋71を閉鎖位置と開放位置とに切替動作させるための機構である。
図2に示すように、第1開閉機構72は、第1軸721と、第1回動板722と、第1ばね723とを有する。
【0078】
第1蓋71の板状部材711は、基端部が第1軸721に固定される。板状部材711は、側方(左右方向)から見てコ字状に曲げられた板材である。板状部材711の先端側の面は、基端側の面よりも上方に配置され、弾性部材712に覆われる。すなわち、第1蓋71の上面は、可撓性部材である弾性部材712となっている。
【0079】
第1蓋71は、第1軸721の回動に伴って、閉鎖位置と開放位置との間で移動する。なお、
図4、
図6および
図7に示す第1蓋71および第2蓋73の位置はいずれも開放位置である。第1蓋71が閉鎖位置に配置された場合、第1蓋71の上面は、支持板64の下面に接触する。具体的には、閉鎖位置において、第1蓋71の上面は支持板64の下面のうち、少なくとも右側の第2供給孔602の縁部と接触する。これにより、閉鎖位置において、第1蓋71は第1供給通路603の下端部を完全に覆う。その結果、第1蓋71が閉鎖位置に配置されると、第1供給通路603からの被散布物の供給が停止する。
【0080】
第1蓋71の上面は、上述の通り可撓性を有する弾性部材712となっている。さらに、第1蓋71は、コ字状の板バネ構造を有しているため、閉鎖位置において弾性部材7172は支持板64の下面へ向かって付勢されている。このため、第1蓋71の上面は支持板64の下面に密着するため、第1供給通路603から被散布物が漏れるのが抑制される。
【0081】
なお、仮に、支持板64が備えられていない場合、供給通路600の下端部は、シャッター62の端辺と、仕切り板61の第1供給孔601の下面側の縁部とに囲まれて構成される。この場合、供給通路600の下端部において、シャッター62の下面と仕切り板61の下面とに段差ができる。このため、蓋71,73の上面が供給通路600の下端部に密着しにくい。これに対し、シャッター62の下側に支持板64が備えられていると、供給通路600の下端部は、支持板64の第2供給孔602の縁部の下面で構成される。このため、供給通路600の下端部に段差がない。このため、蓋71,73が供給通路600をより密着して閉鎖することができる。したがって、供給通路600から被散布物が漏れ出るのがさらに抑制される。
【0082】
第1軸721は、左右方向に延びる円柱状の軸である。第1軸721の右側の端部は、筐体520の右側面から外側へ突出する。第1回動板722は、筐体520の右側面に沿って配置される。第1軸721の右側の端部は、第1回動板722と固定される。これにより、第1軸721は、第1回動板722の動きに従って回動する。
【0083】
第1軸721の左側の端部は、筐体520の内部において、支持板64の下方に配置される。第1軸721の左側の端部付近には、第1蓋71の板状部材711の基端部が固定される。これにより、第1回動板722が回動すると、第1軸721とともに、第1蓋71が第1軸721を中心として回動する。
【0084】
第1ばね723の一端は載置台13に対して固定される。第1ばね723の他端は第1回動板722に固定される。また、第1回動板722には、
図2中に示した実線矢印の基端部に第1コントロールケーブル91の出力端が接続される。第1ばね723は、第1コントロールケーブル91の引張方向と逆の方向に回動させる方向へ第1回動板722を付勢する。
【0085】
第1切替レバー43が入状態の場合、第1コントロールケーブル91の入力端に第1切替レバー43から引張力が入力されず、第1コントロールケーブル91の出力端から第1回動板722には、第1回動板722を回動させる力は入力されない。このとき、第1ばね723は最も収縮する位置で第1回動板722が安定し、第1蓋71は開放状態となる。
【0086】
第1切替レバー43が切状態になると、第1コントロールケーブル91の入力端に第1切替レバー43から引張力が入力される。これにより、第1コントロールケーブル91の出力端から第1回動板722に、
図2中に示した実線矢印の方向の引張力が入力され、第1回動板722は破線矢印の方向に回転する。その結果、第1回動板722とともに第1軸721および第1蓋71が
図4、
図6および
図7中に破線矢印で示す方向に回転し、第1蓋71が閉鎖位置に配置される。このとき、第1ばね723は、伸張状態となるため、第1蓋71を開放位置へ戻す方向へ第1回動板722を付勢する。これにより、第1切替レバー43が入状態となり、第1コントロールケーブル91からの引張力が停止されると、第1ばね723の収縮により第1蓋71が素早く開放状態になる。
【0087】
第2蓋73は、第2供給通路604を下方から開閉する。
図6および
図7に示すように、第2蓋73は、第2供給通路604の下方に配置される。第2蓋73の構造は第1蓋71と同様であるため、説明を省略する。
【0088】
第2開閉機構74は、第2蓋73を閉鎖位置と開放位置とに切替動作させるための機構である。
図3に示すように、第2開閉機構74は、第2軸741と、第2回動板742と、第2ばね743とを有する。
【0089】
第2軸741は、左右方向に伸びる円柱状の軸である。第2軸741の左側の端部は、筐体520の左側面から外側へ突出する。第2回動板742は、筐体520の左側面に沿って配置される。第2軸741の左側の端部は、第2回動板742と固定される。これにより、第2軸741は、第2回動板742の動きに従って回動する。
【0090】
第2軸741の右側の端部は、筐体520の内部において、支持板64の下方に配置される。第2軸741の左側の端部付近には、第2蓋73の基端部が固定される。これにより、第2回動板742が回動すると、第2軸741とともに、第2蓋73が第2軸741を中心として回動する。
【0091】
第2蓋73は、第2軸741の回動に伴って、閉鎖位置と開放位置との間で移動する。第2蓋73が閉鎖位置に配置された場合、第2蓋73の上面は、支持板64の下面に接触する。具体的には、閉鎖位置において、第2蓋72の上面は支持板64の下面のうち、少なくとも左側の第2供給孔602の縁部と接触する。これにより、閉鎖位置において、第2蓋72は第2供給通路604の下端部を完全に覆う。その結果、第2蓋72が閉鎖位置に配置されると、第2供給通路604からの被散布物の供給が停止する。
【0092】
第2ばね743の一端は載置台13に対して固定される。第2ばね743の他端は第2回動板742に固定される。また、第2回動板742には、
図3中に示した実戦矢印の基端部に第2コントロールケーブル92の出力端が接続される。第2ばね743は、第2コントロールケーブル92の引張方向と逆の方向に回動させる方向へ第2回動板742を付勢する。
【0093】
第2切替レバー44が入状態の場合、第2コントロールケーブル92の入力端に第2切替レバー44から引張力が入力されず、第2コントロールケーブル92の出力端から第2回動板742には、第2回動板742を回動させる力は入力されない。このとき、第2ばね743は最も収縮する位置で第2回動板742が安定し、第2蓋73は開放状態となる。
【0094】
第2切替レバー44が切状態になると、第2コントロールケーブル92の入力端に第2切替レバー44から引張力が入力される。これにより、第2コントロールケーブル92の出力端から第2回動板742に、
図3中に示した実践矢印の方向の引張力が入力され、第2回動板742は破線矢印の方向に回転する。その結果、第2回動板742とともに第2軸741および第2蓋73が
図6および
図7に破線矢印で示す方向に回転し、第2蓋73が閉鎖位置に配置される。このとき、第2ばね743は、伸長状態となるため、第2蓋73を開放状態へ戻す方向へ第2回動板742を普請する。これにより、第2切替レバー44が入状態となり、第2コントロールケーブル92からの引張力が停止されると、第2ばね743の収縮により第2蓋73が素早く開放状態になる。
【0095】
このように、2つの供給パイプ53,54への被散布物の供給のオン/オフを行う蓋71,73が、それぞれ独立して動作する。これにより、供給対象となる左右2条の畝に対して、いずれか1条のみに散布を行ったり、異なるタイミングで散布を行ったりすることができる。
【0096】
図3、
図6および
図7に示すように、アジテータ機構80は、揺動軸81、2つのアジテータ82、揺動板83、および第3ばね84を有する。
【0097】
揺動軸81は、左右方向に伸びる円柱状の軸である。揺動軸81の左側の端部は、筐体520の左側面から外側へ突出する。揺動軸81の右側の端部は、筐体520の右側面の内壁に回動可能に支持される。
【0098】
アジテータ82は、一端が揺動軸81に固定された棒状の部材である。アジテータ82は、揺動軸81の揺動に従って、揺動軸81を中心として回動することにより、第1空間S1内に収容された被散布物を攪拌する。これにより、第1空間S1内の被散布物が供給通路600を介して下方へと排出されやすくなる。
【0099】
揺動板83は、筐体520の左側面に沿って配置される。揺動軸81の左側の端部は、揺動板83と固定される。これにより、揺動軸81は、揺動板83の動きに従って回動する。
【0100】
第3ばね84の一端は載置台13に対して固定される。第3ばね84の他端は揺動板83に固定される。また、揺動板83には、
図3中に示した2点鎖線矢印の基端部に第3コントロールケーブル93の出力端が接続される。第3ばね84は、第3コントロールケーブル93の引張方向と逆の方向に回動させる方向へ揺動板83を付勢する。
【0101】
走行部2から第3コントロールケーブル93の入力端に往復運動力が入力されると、コントロールケーブル93の出力端から引張方向の力と張力の解放とが交互に出力される。コントロールケーブル93の出力端から引張方向の力が入力されると、揺動板83が揺動軸81を中心として左側から見て(
図3の視野において)時計回りに回転し、第3ばね84は伸張する。一方、コントロールケーブル93の出力端からの張力が解放されると、第3ばねが収縮する力によって揺動板83が揺動軸81を中心として左側から見て反時計回りに回転する。このように、走行部2から入力される往復運動力によって、揺動板83および揺動軸81とともに、2つのアジテータ82が揺動する。これにより、第1空間S1内の被散布物が攪拌される。
【0102】
本実施形態では、2つのアジテータ82がそれぞれ2つの供給通路600の上方に配置される。これにより、各供給通路600への被散布物の供給がよりスムーズになる。
【0103】
上述のように、この散布機1では、仕切り板61に設けられた第1供給孔601の開度を、シャッター62により調整することにより、供給通路600の開口面積を調整できる。そして、供給通路600を蓋71,73によって閉鎖/開放することにより、被散布物の吐出/非吐出を制御する。このような構成により、非吐出時に第1空間S1と第2空間S2とを仕切る構造に隙間が生じにくい。したがって、第1空間S1に収容された被散布物が下方へと漏れ出すのが抑制される。
【0104】
また、この散布機1では、被散布物の散布量の調整を、散布作業中に動作する部品でなく、散布作業中には固定されるシャッター62により行っている。これにより、作業中の散布機1の揺れ等の作業環境による影響や、各部品の組み立て精度による動作量の不安定性が、散布量に影響しにくい。すなわち、この散布機1では、従来の散布機と比較して散布量が安定しやすい。
【0105】
続いて、供給通路600を形成する、仕切り板61、シャッター62、シャッター保持板63および支持板64の形状の細部について説明する。
【0106】
図5、
図8および
図9に示すように、第1供給孔601の形状は真四角ではない。すなわち、第1供給孔601は、シャッター62のスライド方向に直交する幅方向の長さが一定ではない。具体的には、第1供給孔601は、スライド方向一方側における幅方向の長さが、スライド方向他方側における幅方向の長さよりも小さい。
【0107】
これにより、シャッター62が位置P1に近く、供給通路600の開口面積が小さい範囲において、シャッター62のスライド移動の距離に対する供給通路600の開口面積の変化量が比較的小さい。散布対象の被散布物が細粒状や粉状である場合には、少しの開口面積の変化で供給通路600からの吐出量が大きく変化する。このため、この散布機1のように、供給通路600の開口面積が小さい範囲において、供給通路600の開口面積を少しずつ変更できることは大変有用である。
【0108】
一方、比較的大きな粒状の被散布物の場合、供給通路600からの供給量を変更するためには、供給通路600の開口面積を比較的大きく変更させる必要がある。そこで、この散布機1では、供給通路600の開口面積が大きい範囲において、シャッター62のスライド移動の距離に対する供給通路600の開口面積の変化量を比較的大きくしている。このようにすることで、粉状、細粒状、大きな粒状といった様々な形状の被散布物に対して、部品変更を行うことなく適切な散布量で散布を行うことができる。
【0109】
図6および
図8に示すように、支持板64は、2つの第2供給孔602の間に配置された排出孔642を有する。排出孔642は、支持板64を上下方向に貫通する。排出孔642のスライド方向一方側の端部は、シャッター62の第1位置P1におけるスライド方向一方側の端部と重なる位置、あるいは当該位置に近い位置に配置される。
【0110】
シャッター62がスライド方向他方側に移動すると、シャッター62のスライド方向一方側において、仕切り板61と支持板64の間には空間が生じる。このため、第1供給孔601から落下してきた被散布物が、支持板64の2つの第2供給孔602の間の部位に溜まる。その状態においてシャッター62がスライド方向一方側へ移動してくると、溜まった被散布物がシャッター62のスライド方向一方側端部によってスライド方向一方側へと押される。このとき、排出孔642が無い場合、シャッター保持板63との間に被散布物が詰まってしまう虞がある。支持板64が排出孔642を有していることにより、シャッター62のスライド方向一方側端部によって押された被散布物が排出孔642から下方へと落下する。その結果、仕切り板61と支持板64の間の空間に被散布物が詰まるのが抑制される。
【0111】
<2.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0112】
上記の実施形態の散布機は、左右2条分の畝に対して散布を行う散布機であったが、本発明の散布機は、2条用に限られない。例えば、1条用、4条用、および、8条用の散布機に、本発明を適用してもよい。
【0113】
また、上記の実施形態の散布機は、作業者が歩行しながら散布を行う歩行型自走式散布機であったが、本発明はこれに限られない。作業者が乗用可能な乗用型自走式散布機であってもよい。
【0114】
また、散布機の細部の構成については、本願の各図に示された形状と、相違していてもよい。また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0115】
1 散布機
2 走行部
5 散布部
43 第1切替レバー
44 第2切替レバー
51 ホッパー
52 繰り出し部
53 第1供給パイプ
54 第2供給パイプ
61 仕切り板
62 シャッター
64 支持板
66 開度調整板
67 回動軸
68 歯車
71 第1蓋
73 第2蓋
91 第1コントロールケーブル
92 第2コントロールケーブル
172 弾性部材
510 開口
600 供給通路
601 第1供給孔
602 第2供給孔
621 ラック構造
642 排出孔
712 弾性部材