(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185851
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】傘及び傘用親骨
(51)【国際特許分類】
A45B 25/02 20060101AFI20221208BHJP
B32B 5/28 20060101ALI20221208BHJP
B32B 5/02 20060101ALI20221208BHJP
B32B 1/08 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
A45B25/02 Z
B32B5/28
B32B5/02 A
B32B1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093739
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140822
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 光広
(72)【発明者】
【氏名】及川 勝広
(72)【発明者】
【氏名】井上 岳道
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA37
4F100AA37A
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4F100GB90
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00D
(57)【要約】 (修正有)
【課題】強度や軽量化に優れているだけでなく、表面に炭素繊維などの汚れが付着しにくい親骨及び当該親骨を備えた傘を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る傘において、該傘の親骨10は、繊維強化プラスチックの層13を備え、該繊維強化プラスチックの層の外表面には、凹部16と凸部17とが形成され、該凸部の高さは、5μmから100μmの範囲であるよう構成される。前記凹部と前記凸部とは、前記親骨の延伸方向に沿って各々複数形成されていてもよい。また、前記凹部と前記凸部とは、前記親骨の周方向に螺旋状に形成されていてもよい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
傘であって、
該傘の親骨は、繊維強化プラスチックの層を備え、該繊維強化プラスチックの層の外表面には、凹部と凸部とが形成され、該凸部の高さは、5μmから100μmの範囲であることを特徴とする傘。
【請求項2】
前記凹部と前記凸部とは、前記親骨の延伸方向に沿って各々複数形成されている、請求項1に記載の傘。
【請求項3】
前記凹部と前記凸部とは、前記親骨の周方向に螺旋状に形成されている、請求項1に記載の傘。
【請求項4】
前記凸部の高さは、10μmから50μmの範囲である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の傘。
【請求項5】
前記繊維強化プラスチックの繊維は、カーボン、ガラス、アラミド又はボロンのいずれかであり、該繊維強化プラスチックの樹脂は、エポキシ、フェノール、不飽和ポリエステル、PA、PC、PP、PPS、TPU、PET、PAEK又はPEEKのいずれかである、請求項1から4までのいずれか1項に記載の傘。
【請求項6】
前記繊維強化プラスチックの層は中空に形成されている、請求項1から5までのいずれか1項に記載の傘。
【請求項7】
前記繊維強化プラスチックの層中に設けられた1又は複数の斜向層、織物層又は不織布層をさらに含む、請求項1から6までのいずれか1項に記載の傘。
【請求項8】
前記繊維強化プラスチックの層上に設けられた1又は複数の斜向層、織物層又は 不織布層をさらに含む、請求項1から6までのいずれか1項に記載の傘。
【請求項9】
前記斜向層は、前記繊維強化プラスチックの繊維の方向に対して斜向している繊維を含む層である、請求項7又は8に記載の傘。
【請求項10】
前記織物層は、ガラススクリム、カーボン、ガラス、PP、ポリエステル、ナイロン、又はポリエチレンである、請求項7又は8に記載の傘。
【請求項11】
前記不織布層は、ガラススクリム、カーボン、ガラス、PP、ポリエステル、ナイロン、又はポリエチレンである、請求項7又は8に記載の傘。
【請求項12】
傘用親骨であって、繊維強化プラスチックの層を備え、該繊維強化プラスチックの層の外表面には、凹部と凸部とが形成され、該凸部の高さは、5μmから100μmの範囲であることを特徴とする傘用親骨。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傘、及び傘用構成部材、特に親骨の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、傘の構成部材である親骨の素材として、金属、プラスチック、GFRPやCFRP等様々な材料が用いられている。
【0003】
このような素材を用いた傘として、例えば、特許文献1には、支柱の上端に固定された上ロクロに親骨の一端を回転自在に片持ち支持するとともに、一端が前記親骨の中間部の支持部に回転自在に支持された受け骨の他端を昇降ロクロに回転自在に支持し、かつ、前記支柱の上下2カ所から弾性力を介して外部に露出する係止部材のそれぞれと係合する範囲で前記昇降ロクロを支柱の長手方向に移動自在にし、前記昇降ロクロの動作を前記受け骨を介して前記親骨に伝達することによって傘布を開閉する洋傘において、前記親骨は、複合材料を線材に加熱成形した後、この線材における前記支持部を含む範囲の外層に化学ニッケル層を形成し、前記化学ニッケル層の外層に電極処理によって銅層を形成し、前記銅層の外層に電極処理によってニッケル層を形成し、前記ニッケル層の外層に電極処理によってクロム層または金層を形成した洋傘が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
鉄等の十分な強度を有する金属材料によって傘の親骨を構成すると、傘全体の重量、携帯性及び操作性の点で問題があった。他方で、特許文献1に開示の洋傘においても、炭素繊維等の複合材料を加熱成形して親骨、受け骨及び支柱の何れか又は全てを構成しており、金属材料に比較して十分に軽量である上に同等以上の強度を確保できるものの、炭素繊維を使用した場合、炭素繊維が層表面から露出してしまい、これにより親骨の表面が汚れ易くなってしまう(カーボンによる汚れ)という問題があった。
【0006】
本発明の目的の一つは、強度や軽量化に優れているだけでなく、表面に炭素繊維などの汚れが付着しにくい親骨及び当該親骨を備えた傘を提供することにある。本発明のこれら以外の目的は、本明細書全体を参照することにより明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る傘において、該傘の親骨は、繊維強化プラスチックの層を備え、該繊維強化プラスチックの層の外表面には、凹部と凸部とが形成され、該凸部の高さは、5μmから100μmの範囲であるよう構成される。
【0008】
本発明の一実施形態に係る傘において、前記凹部と前記凸部とは、前記親骨の延伸方向に沿って各々複数形成されている。また、本発明の一実施形態に係る傘において、前記凹部と前記凸部とは、前記親骨の周方向に螺旋状に形成されている。
【0009】
本発明の一実施形態に係る傘において、前記凸部の高さは、10μmから50μmの範囲であるように構成される。
【0010】
本発明の一実施形態に係る傘において、前記繊維強化プラスチックの繊維は、カーボン、ガラス、アラミド又はボロンのいずれかであり、該繊維強化プラスチックの樹脂は、エポキシ、フェノール、不飽和ポリエステル、PA、PC、PP、PPS、TPU、PET、PAEK又はPEEKのいずれかである。
【0011】
本発明の一実施形態に係る傘において、前記繊維強化プラスチックの層は中空に形成されている。
【0012】
本発明の一実施形態に係る傘において、前記繊維強化プラスチックの層中に設けられた1又は複数の斜向層、織物層又は不織布層をさらに含むように構成される。
【0013】
本発明の一実施形態に係る傘において、前記繊維強化プラスチックの層上に設けられた1又は複数の斜向層、織物層又は不織布層をさらに含むように構成される。
【0014】
本発明の一実施形態に係る傘において、前記斜向層は、前記繊維強化プラスチックの繊維の方向に対して斜向している繊維を含む層である。また、本発明の一実施形態に係る傘において、前記織物層は、ガラススクリム、カーボン、ガラス、PP、ポリエステル、ナイロン、又はポリエチレンである。また、本発明の一実施形態に係る傘において、前記不織布層は、ガラススクリム、カーボン、ガラス、PP、ポリエステル、ナイロン、又はポリエチレンである。
【0015】
本発明の一実施形態に係る傘用親骨は、繊維強化プラスチックの層を備え、該繊維強化プラスチックの層の外表面には、凹部と凸部とが形成され、該凸部の高さは、5μmから100μmの範囲であるように構成される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の上記各実施形態によれば、強度や軽量化に優れているだけでなく、表面に炭素繊維などの汚れが付着しにくい親骨及び当該親骨を備えた傘を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る傘の構成を説明する図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る傘における親骨の外表面を模式的に示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る傘における親骨をその中心軸に垂直な面で切断した断面を模式的に示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る傘における親骨をその中心軸に垂直な面で切断した断面を模式的に示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る傘における親骨をその中心軸に垂直な面で切断した断面を模式的に示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る傘における親骨をその中心軸に垂直な面で切断した断面を模式的に示す図である。
【
図7】本発明の別の実施形態に係る傘における親骨をその中心軸に垂直な面で切断した断面を模式的に示す図である。
【
図8】本発明の別の実施形態に係る傘における親骨をその中心軸に垂直な面で切断した断面を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。複数の図面において共通する構素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0019】
以下に、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図1は、この発明の実施形態に係る傘の構成を示す図である。この実施形態に係る傘1は、上端に石突き2及び上ロクロ3を固定するとともに下端に握持部であるハンドル4を固定した中棒5と、上ロクロ3に一端が回転自在に片持ち支持された複数の親骨10と、一端が各親骨10の中間部の支持部6に支持された複数の受け骨7と、中棒5に外嵌して上下方向に移動自在にされるとともに受け骨7の他端を回転自在に支持する昇降ロクロ8と、を備えている。
【0020】
また、中棒5には、その上下2カ所にハジキ9、11が弾性力を介して中棒5内に退避できるようにして外部に露出しており、昇降ロクロ8は上下のハジキ9、11のそれぞれに係合する範囲で上下に移動自在にされている。なお、
図1においては、便宜上、1つの親骨10及び受け骨7のみが示されている。
【0021】
複数の親骨10に張り付けられた傘布12を閉傘状態から開く際には、昇降ロクロ8に係合している下側のハジキ11を中棒5の内部側に押圧しつつ昇降ロクロ8を上昇させる。昇降ロクロ8の上昇動作は昇降ロクロ8及び親骨10に両端が軸支された受け骨7を介して親骨10に伝達される。
【0022】
親骨10は上ロクロ3に軸支された一端を支点にして開放端である他端(露先)が中棒5から離間する方向に回転し、親骨10に張り付けられた傘布12が拡げられる。昇降ロクロ8は、上側のハジキ9に係合する位置で上昇を停止し、上側のハジキ9との係合によって開傘状態を維持する。
【0023】
傘布12を開傘状態から閉じる際には、昇降ロクロ8に係合している上側のハジキ9を中棒5の内部側に押圧しつつ昇降ロクロ8を下降させる。昇降ロクロ8の下降動作は受け骨7を介して親骨10に伝達され、親骨10は上ロクロ3に軸支された一端を支点にして露先が中骨5に接近する方向に回転し、親骨10に張り付けられた傘布12が畳まれる。昇降ロクロ8は、下側のハジキ11に係合する位置で下降を停止し、下側のハジキ11との係合によって閉傘状態を維持する。
【0024】
次に、
図2、3、4、5、6を参照して、本発明の一実施形態に係る傘1について説明する。
図3、4、5、6は、
図1に示す傘1の親骨10を同図に示すX-X断面でみたものである。
図2、3に示すように、本発明の一実施形態に係る傘1の親骨10は、繊維強化プラスチックの層13を備え、該繊維強化プラスチックの層13の外表面には、凹部16と凸部17とが形成され、該凸部17の高さは、5μmから100μmの範囲であるよう構成される。ここで、本発明の一実施形態に係る傘1において、親骨10を例に説明するが、これに限定されず、その他の構成部材(例えば、中棒5や受け骨7等)にも適用可能である(以下同様)。また、
図5(a)、6(a)は、後述する1又は複数の斜向層、織物層又は不織布層の端面が一致するように形成した場合の例を示し、
図5(b)、6(b)は、後述する1又は複数の斜向層、織物層又は不織布層の端面が一定の幅で重なり合うように形成した場合の例を示す。
【0025】
本発明の一実施形態に係る傘1によれば、強度や軽量化に優れているだけでなく、表面に水滴や汚れ(カーボンによる汚れを含む)が付着しにくい親骨及び当該親骨を備えた傘を提供することが可能となる。
【0026】
また、
図2に示すように、本発明の一実施形態に係る傘1において、当該凹部16と当該凸部17とは、親骨10の延伸方向に沿って各々複数形成されている。このようにすることで、傘と親骨の接触面積が減少し、水滴や汚れがたまり難いという技術的効果が得られる。
【0027】
また、
図2に示すように、本発明の一実施形態に係る傘1において、当該凹部16と当該凸部17とは、親骨10の周方向に螺旋状に形成されている。このようにすることで、当該凹部16と当該凸部17の段差が軸方向と周方向に連続的に形成されることとなるため、水滴や汚れがたまり難いという技術的効果が得られる。
【0028】
本発明の一実施形態に係る傘1において、当該凸部17の高さは、10μmから100μmの範囲であるように構成される。このようにすることで、傘布と親骨の間に隙間が発生し、水滴や汚れがたまり難いという技術的効果が得られる。
【0029】
ここで、本発明の一実施形態に係る傘1において、当該繊維強化プラスチックの層13に用いられる繊維は、カーボン、ガラス、アラミド又はボロンのいずれかであり、該繊維強化プラスチックの層13に用いられる樹脂は、エポキシ、フェノール、不飽和ポリエステル、PA、PC、PP、PPS、TPU、PET、PAEK又はPEEKのいずれかである。
【0030】
また、
図4に示すように、本発明の一実施形態に係る傘1において、当該繊維強化プラスチックの層13は中空に形成されている。このようにすることで、軽量な親骨が得られる。
【0031】
また、
図5に示すように、本発明の一実施形態に係る傘1において、当該繊維強化プラスチックの層13中に設けられた1又は複数の斜向層、織物層又は不織布層(図示の例では、1つの織物層14)をさらに含むように構成される。強度や軽量化に優れているだけでなく、安全性を向上させることが可能となる。より具体的には、破損時の断片によるケガのリスクが抑えられるという点で優れている。
【0032】
また、
図6に示すように、本発明の一実施形態に係る傘1において、当該親骨10は、当該繊維強化プラスチック13の層上に設けられた1又は複数の斜向層、織物層又は不織布層(図示の例では1つの織物層15)をさらに含むよう構成される。このようにして、本発明の一実施形態に係る傘1によれば、強度や軽量化に優れているだけでなく、安全性を向上させることが可能となる。より具体的には、破損時の断片が針状になり難くいという点で優れている。ここで、本発明の一実施形態に係る傘1において、当該親骨10は、当該繊維強化プラスチック13の層上に設けられた1又は複数の斜向層、織物層又は不織布層のみを含む(すなわち、該繊維強化プラスチックの層13中に設けられた1又は複数の斜向層、織物層又は不織布層を含まない)ようにすることも可能である。
【0033】
また、
図5、6に示すように、本発明の一実施形態に係る傘1において、当該繊維強化プラスチックの層13は中空に形成されている。このようにすることで、軽量化を図ることが可能となる。
【0034】
本発明の一実施形態に係る傘1において、当該斜向層は、前記繊維強化プラスチックの繊維の方向に対して斜向している繊維を含む層である。本明細書においては、斜向層という場合、便宜上、直行層(前記繊維強化プラスチックの繊維の方向に垂直又は略垂直の繊維を含む層)を含むものとする。
【0035】
本発明の一実施形態に係る傘1において、当該織物層は、ガラススクリム、カーボン、ガラス、PP、ポリエステル、ナイロン、又はポリエチレンである。このような材料を用いることで、破損時の断片が針状になり難く、また高強度化を図ることが可能となる。
【0036】
本発明の一実施形態に係る傘1において、当該不織布層は、ガラススクリム、カーボン、ガラス、PP、ポリエステル、ナイロン、又はポリエチレンである。このような材料を用いることで、破損時の断片が針状になり難く、また高強度化を図ることが可能となる。
【0037】
ここで、織物層とは、複数の繊維方向の繊維を含む層であり、軸長方向以外の一つ若しくは二つの方向(またはそれ以上の方向)に対して強度や剛性が強化することが可能な層である、また、不織布層は、様々な繊維方向を指向する繊維を含む層であり、強化の程度は織物層よりは小さいものの、全ての方向に強度や剛性を強化することが可能な層である。
【0038】
本発明の一実施形態に係る傘1において、当該繊維強化プラスチックの層13の繊維の繊維方向は、当該親骨10の延伸方向である。このようにすることで、曲げ方向の高強度化と高剛性化を図ることが可能となる。
【0039】
本発明の一実施形態に係る傘1において、当該織物層14又は織物層15の一つの方向は、当該繊維強化プラスチックの層13の繊維の繊維方向に対して斜向している。このようにすることで、針状の破壊を抑えることが可能となる。
【0040】
本発明の一実施形態に係る傘1において、当該斜向層は、0.01mmから0.2mmの厚さの層である。より望ましくは、当該傾斜層は、0.01mmから0.1mmの厚さである。その理由は、傘の親骨や中骨の製造の際、作業が安定するからである。また、本発明の一実施形態に係る傘1において、当該織物層14は、0.01mmから0.2mmの厚さの層である。より望ましくは、前記織物層は、0.01mmから0.1の厚さである。その理由は、上記と同様に、傘の親骨や中骨の製造の際、作業が安定するからである。また、本発明の一実施形態に係る傘1において、当該不織布層は、0.01mmから0.2mmの厚さの層である。より望ましくは、当該不織布層は、0.01mmから0.1mmの厚さである。その理由は、同様に、傘の親骨や中骨の製造の際、作業が安定するからである。
【0041】
本発明の一実施形態に係る傘用親骨10は、繊維強化プラスチックの層13と、該繊維強化プラスチックの層13中に設けられた1又は複数の斜向層、織物層又は不織布層と、を含むように構成される。このようにして、強度や軽量化に優れているだけでなく、安全性の向上をもたらすことが可能となる。
【0042】
従来のカーボン製ソリッド(親骨)やガラス製ソリッド(親骨)のように、軸方向の繊維のみの構成の場合、親骨が破損した際に、破壊が繊維に沿って軸方向に延伸し、その破損断片は針状になり、人体への損傷の危険が有る。一方で、本発明の一実施形態に係る傘用親骨10により、軸方向以外の繊維方向が含まれることにより、万が一破損した場合には軸方向の破損の延伸が抑えられるため、破損の断片は針状になり難いことが判った。
【0043】
次に、本発明の一実施形態に係る傘1の親骨10の製造方法について説明する。まず、ステップ1として、プリプレグを切断する(プリプレグのカット)。そして、ステップ2として、芯金を用意する。ステップ3として、仮止めレジンを塗布して仮止めを行う(仮止め)。ステップ4として、プリプレグの巻き付けを行う、ステップ5において、テーピングを行う。
【0044】
次に、ステップ6において、キュアを行う。そして、ステップ7において切断を行い、ステップ8においてテープの除去を行う。このようにして、傘1の親骨10が形成される。
【0045】
現在、傘に使用されているカーボン製、ガラス製親骨は、引き抜き成形されたものが主流である。このため、軸長方向のみに繊維が配され、破損時の断片は針状になり易い。また、引き抜き成形ではそもそも繊維方向を所望に変えることは難しく、更に周方向に繊維を配する事はできないという技術的課題があった。これに対して、シートワインディングでは、複数の繊維方向に繊維を計画的に配置することが可能となる、破損断面が針状になり難く、安全性が大幅に向上することが判っている。
【0046】
次に、
図7、8を参照して、本発明の別の実施形態に係る傘1について説明する。
図7、8は、
図1に示す傘1の親骨10を同図に示すX-X断面でみたものである。ここで、以下、本発明の別の実施形態に係る傘1に特徴的な構成について説明する。当該構成以外については、既述の本発明の一実施形態に係る傘1と共通であると理解されたい。
【0047】
まず、
図7に示すように、本発明の別の実施形態に係る傘1の親骨10は、繊維強化プラスチックの層13と、該繊維強化プラスチックの層13中に設けられた1又は複数の斜向層、織物層又は不織布層(図示の例では、1つの織物層14)と、を含み、該親骨の周方向でみて、該1又は複数の斜向層、織物層又は不織布層(図示の例では、1つの織物層14)は、その外面の該周方向の長さが、全周の場合の周方向の長さの70%以上である(図示の例は、全周の場合の周方向の長さの約70%である)よう構成される。ここで、本発明の一実施形態に係る傘1において、親骨10を例に説明するが、これに限定されず、その他の構成部材(例えば、中棒5や受け骨7等)にも適用可能である(以下同様)。
【0048】
このように、1又は複数の斜向層、織物層又は不織布層は、当該親骨の周方向において、必ずしもその全周に亘って形成する必要はなく、本実施形態においては全周の場合の周方向の長さの70%以上となるように形成することができる。このようにして、本発明の別の実施形態に係る傘によれば、破断面が針状になり難く、安全性が向上した親骨を提供することが可能となる。
【0049】
次に、
図8に示すように、本発明の別の実施形態に係る傘1の親骨10は、繊維強化プラスチックの層13と、該繊維強化プラスチックの層13中に設けられた1又は複数の斜向層、織物層又は不織布層(図示の例では、1つの織物層14)と、該繊維強化プラスチックの層上に設けられた1又は複数の斜向層、織物層又は不織布層(図示の例では、1つの織物層15)とを含み、該親骨の周方向でみて、内側又は外側の少なくともいずれかの1又は複数の斜向層、織物層又は不織布層は、その外面の該周方向の長さが、全周の場合の周方向の長さの70%以上であるように構成される。
【0050】
このように、内側又は外側の少なくともいずれかの1又は複数の斜向層、織物層又は不織布層は、当該親骨の周方向において、必ずしもその全周に亘って形成する必要はなく、本実施形態においては全周の場合の周方向の長さの70%以上となるように形成することができる。このようにして、本発明の別の実施形態に係る傘によれば、破断面が針状になり難く、安全性が向上した親骨を提供することが可能となる。
【0051】
本発明の別の実施形態に係る傘において、内側の前記1又は複数の斜向層、織物層又は不織布層と、外側の前記1又は複数の斜向層、織物層又は不織布層とは、前記親骨の周方向の40%以上において、該親骨の半径方向で重なるように形成される(図示の例では、該親骨の周方向の約70%にわたって、前記親骨の半径方向で重なるように形成されている)。このようにして、該親骨の周方向の重ならない位置においても、結果として、内側又は外側のいずれかの1又は複数の斜向層、織物層又は不織布層が形成されることとなるため、破損断面が針状になり難く、安全性を大幅に向上させることが可能となる。
【0052】
本発明の別の実施形態に係る傘において、前記親骨の周方向のいずれにおいても、内側の前記1又は複数の斜向層、織物層又は不織布層と、外側の前記1又は複数の斜向層、織物層又は不織布層とは、該親骨の半径方向で重なるように形成されるか、又は、該親骨の半径方向でいずれか一方の1又は複数の斜向層、織物層又は不織布層が形成される。このようにして、前記親骨の周方向のいずれの位置においても、該親骨の半径方向で少なくともいずれか一方の1又は複数の斜向層、織物層又は不織布層が形成されるようにすることができるため、該親骨の周方向のいずれに位置においても破損断面が針状になり難く、安全性を大幅に向上させることが可能となる。
【0053】
本明細書で説明された各構成要素の寸法、材料、及び配置は、実施形態中で明示的に説明されたものに限定されず、この各構成要素は、本発明の範囲に含まれうる任意の寸法、材料、及び配置を有するように変形することができる。また、本明細書において明示的に説明していない構成要素を、説明した実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【符号の説明】
【0054】
1 傘
2 石突き
3 上ロクロ
4 ハンドル
5 中棒
6 支持部
7 受け骨
8 昇降ロクロ
9 上側のハジキ
10 親骨
11 下側のハジキ
12 傘布
13 繊維強化プラスチックの層
14 織物層(不織布層、斜向層)
15 織物層(不織布層、斜向層)
16 凹部
17 凸部