(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185854
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】過渡電圧保護デバイス
(51)【国際特許分類】
H01T 1/20 20060101AFI20221208BHJP
H01T 2/02 20060101ALI20221208BHJP
H01T 4/04 20060101ALI20221208BHJP
H01T 4/10 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
H01T1/20 F
H01T2/02 F
H01T4/04 F
H01T4/10 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093742
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】今井 悠介
(72)【発明者】
【氏名】早津 匡人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 尚義
(72)【発明者】
【氏名】簗田 壮司
(57)【要約】
【課題】高ESD耐量及び長寿命化を両立することができる過渡電圧保護デバイスを提供する。
【解決手段】
過渡電圧保護デバイス1は、素体2と、素体2内に設けられた空洞部Sと、素体2内に設けられた一対の内部電極5,6と、内部電極5,6と接続された外部電極3,4と、を備える。内部電極5,6は、第一方向D1に沿って延在している共に、第一方向D1に交差する第二方向D2において互いに対向している。空洞部Sは、第二方向D2において内部電極5,6間に位置しているギャップ領域Sgを含む。先端部5b,6bの少なくとも一方は、素体2のみと接している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素体と、
前記素体内に設けられた空洞部と、
前記素体内に設けられた一対の内部電極と、
前記一対の内部電極と接続された一対の外部電極と、を備え、
前記一対の内部電極は、第一方向に沿って延在している共に、前記第一方向に交差する第二方向において互いに対向しており、
前記空洞部は、前記第二方向において前記一対の内部電極間に位置しているギャップ領域を含み、
前記一対の内部電極の少なくとも一方の先端部は、前記素体のみと接している、
過渡電圧保護デバイス。
【請求項2】
前記一対の内部電極のそれぞれの先端部は、前記素体のみと接している、
請求項1に記載の過渡電圧保護デバイス。
【請求項3】
前記一対の内部電極の少なくとも一方は、前記空洞部における前記ギャップ領域以外の領域に臨む部分を有している、
請求項1又は2に記載の過渡電圧保護デバイス。
【請求項4】
前記素体内に設けられた放電補助部を更に備え、
前記放電補助部は、前記一対の内部電極に接していると共に、前記一対の内部電極を互いに接続している、
請求項1~3のいずれか一項に記載の過渡電圧保護デバイス。
【請求項5】
前記放電補助部は、前記ギャップ領域に臨んでいる、
請求項4に記載の過渡電圧保護デバイス。
【請求項6】
前記一対の内部電極のそれぞれは、前記ギャップ領域に臨む側縁と、前記側縁と隣り合い、前記放電補助部に接している第一面と、を有している、
請求項4又は5に記載の過渡電圧保護デバイス。
【請求項7】
前記一対の内部電極のそれぞれは、前記側縁と隣り合うと共に、前記第一面と対向している第二面を更に有し、
前記第二面は、前記空洞部に臨んでいる、
請求項6に記載の過渡電圧保護デバイス。
【請求項8】
前記一対の外部電極は、前記第一方向において互いに対向するように前記素体に配置されている、
請求項1~7のいずれか一項に記載の過渡電圧保護デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、過渡電圧保護デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、セラミック多層基板と、セラミック多層基板内に設けられた空洞部と、空洞部内において互いに対向して配置された一対の放電電極と、一対の放電電極と接続された一対の外部電極と、を備えるESD(Electro-Static Discharge)保護デバイスが記載されている。このESD保護デバイスでは、空洞部により放電が生じ易いので、高ESD耐量を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のESD保護デバイスでは、放電電極の先端部に電界が集中するため、放電電極の先端部が劣化し易い。よって、ESD保護デバイスの長寿命化を図ることができない。
【0005】
本開示の一態様は、高ESD耐量及び長寿命化を図ることができる過渡電圧保護デバイスを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る過渡電圧保護デバイスは、素体と、素体内に設けられた空洞部と、素体内に設けられた一対の内部電極と、一対の内部電極と接続された一対の外部電極と、を備える。一対の内部電極は、第一方向に沿って延在している共に、第一方向に交差する第二方向において互いに対向している。空洞部は、第二方向において一対の内部電極間に位置しているギャップ領域を含む。一対の内部電極の少なくとも一方の先端部は、素体のみと接している。
【0007】
上記過渡電圧保護デバイスでは、空洞部のギャップ領域が、互いに対向している一対の内部電極間に位置している。このため、一対の内部電極間で放電を容易に生じさせることができる。一対の内部電極の少なくとも一方の先端部は、素体のみと接している。このため、一対の内部電極の少なくとも一方の先端部における放電が抑制される結果、この先端部の劣化が抑制される。よって、高ESD耐量及び長寿命化を図ることができる。
【0008】
一対の内部電極のそれぞれの先端部は、素体のみと接していてもよい。この場合、長寿命化を更に図ることができる。
【0009】
一対の内部電極の少なくとも一方は、空洞部におけるギャップ領域以外の領域に臨む部分を有していてもよい。この場合、一対の内部電極間で放電を更に容易に生じさせることができるので、高ESD耐量を更に図ることができる。
【0010】
上記過渡電圧保護デバイスは、素体内に設けられた放電補助部を更に備え、放電補助部は、一対の内部電極に接していると共に、一対の内部電極を互いに接続していてもよい。この場合、一対の内部電極間で放電を確実に生じさせることができる。よって、高ESD耐量を確実に実現できる。
【0011】
放電補助部は、ギャップ領域に臨んでいてもよい。この場合、放電補助部がギャップ領域に臨んでいる部分を有しているので、一対の内部電極間で放電を更に確実に生じさせることができる。よって、高ESD耐量を更に確実に実現できる。
【0012】
一対の内部電極のそれぞれは、ギャップ領域に臨む側縁と、側縁と隣り合い、放電補助部に接している第一面と、を有していてもよい。この場合、内部電極において、ギャップ領域に臨む側縁と、放電補助部に接している第一面とが互いに隣り合っているので、一対の内部電極間で放電を更に確実に生じさせることができる。よって、高ESD耐量を更に確実に実現できる。
【0013】
一対の内部電極のそれぞれは、側縁と隣り合うと共に、第一面と対向している第二面を更に有し、第二面は、空洞部に臨んでいてもよい。この場合、一対の内部電極間で放電を更に容易に生じさせることができるので、高ESD耐量を一層確実に実現できる。
【0014】
一対の外部電極は、第一方向において互いに対向するように素体に配置されていてもよい。この場合、一対の外部電極を素体の第一方向の両端に配置することができるので、一対の外部電極間で短絡が生じることを抑制できる。
【発明の効果】
【0015】
本開示の一態様によれば、高ESD耐量及び長寿命化を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施形態に係る過渡電圧保護デバイスを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の過渡電圧保護デバイスの展開斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1の過渡電圧保護デバイスを積層方向から見た透視図である。
【
図5】
図5は、第一変形例に係る過渡電圧保護デバイスを積層方向から見た透視図である。
【
図6】
図6は、第二変形例に係る過渡電圧保護デバイスを積層方向から見た透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0018】
図1~
図4に示される本実施形態に係る過渡電圧保護デバイス1は、図示しない電子機器に実装され、ESDなどの過渡電圧から電子機器を保護する電子部品である。保護対象の電子機器は、例えば、回路基板又は電子部品である。過渡電圧保護デバイス1は、素体2と、一対の外部電極3,4と、一対の内部電極5,6と、放電補助部7と、空洞部Sとを備える。内部電極5,6は、放電するように構成された放電電極である。内部電極5,6は、放電補助部7及び空洞部Sと共に、過渡電圧サプレッサを構成している。過渡電圧サプレッサは、過渡電圧吸収性能を有する。
【0019】
素体2は、直方体形状を呈している。直方体形状には、例えば、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状が含まれる。素体2は、外表面として、互いに対向している一対の端面2a,2bと、互いに対向している一対の側面2c,2dと、互いに対向している一対の側面2e,2fと、を有している。四つの側面2c,2d,2e,2fは、それぞれ端面2a及び端面2bと隣り合うと共に、端面2aと端面2bとを接続するように、端面2a,2bの対向方向に延在している。四つの側面2c,2d,2e,2fのうちの一側面は、保護対象の電子機器と対向する実装面として規定されている。
【0020】
本実施形態では、端面2a,2bの対向方向を第一方向D1、側面2e,2fの対向方向を第二方向D2、側面2c,2dの対向方向を第三方向D3とする。第一方向D1は、素体2の長さ方向であり、第二方向D2は、素体2の幅方向であり、第三方向D3は、素体2の高さ方向である。素体2の長さ(素体2の第一方向D1の長さ)は、例えば、0.6mm以上2.0mm以下である。素体2の幅(素体2の第二方向D2の長さ)は、例えば、0.3mm以上1.2mm以下である。素体2の高さ(素体2の第三方向D3の長さ)は、例えば、0.3mm以上1.2mm以下である。
【0021】
素体2は、第三方向D3において積層された複数の絶縁体層10を有している。本実施形態では、素体2は、複数の絶縁体層10が積層されて構成されている。各絶縁体層10は、矩形板状を呈している。各絶縁体層10は、電気絶縁性を有する絶縁体であり、絶縁体グリーンシートの焼結体から構成される。実際の素体2では、各絶縁体層10は、その間の境界が視認できない程度に一体化されている。
【0022】
絶縁体層10は、Fe2O3、NiO、CuO、ZnO、MgO、SiO2、TiO2、MnCO3、SrCO3、CaCO3、BaCO3、Al2O3、ZrO2、B2O3などのセラミック材料によって構成される。絶縁体層10は、単独のセラミック材料によって構成されてもよいし、二種類以上のセラミック材料を混合させることによって構成されてもよい。絶縁体層10は、ガラスを含有していてもよい。絶縁体層10は、低温焼結を可能とするために酸化銅(CuO、Cu2O)を含有していてもよい。
【0023】
外部電極3,4は、素体2の外表面に設けられている。外部電極3,4は、第一方向D1において互いに対向するように素体2に配置されている。外部電極3,4は、素体2の第一方向D1の両端部に設けられている。外部電極3,4は、第一方向D1において互いに離間している。
【0024】
外部電極3は、端面2aに設けられ、内部電極5と接続されている。外部電極3は、端面2aを覆うと共に、その一部が側面2c,2d,2e,2f上に回り込むように形成されている。外部電極3は、端面2aの全面と、側面2c,2d,2e,2fの端面2a側の端部とに設けられている。
【0025】
外部電極4は、端面2bに設けられ、内部電極6と接続されている。外部電極4は、端面2bを覆うと共に、その一部が側面2c,2d,2e,2f上に回り込むように形成されている。外部電極4は、端面2bの全面と、側面2c,2d,2e,2fの端面2b側の端部とに設けられている。
【0026】
内部電極5,6は、互いに離間して素体2内に設けられている。内部電極5,6は、第一方向D1に沿って延在している。内部電極5,6は、第二方向D2において間隔をあけて並んでいる。内部電極5,6は、後述のギャップ領域Sgを介し、第二方向D2において互いに対向している。内部電極5は、側面2e寄りに配置されている。内部電極6は、側面2f寄りに配置されている。内部電極5,6は、第三方向D3において同じ高さ位置(すなわち、同じ積層位置)に配置されている。内部電極5,6は、互いに同じ絶縁体層10上に配置されている。内部電極5,6は、積層方向(第三方向D3)の略中央に設けられている。
【0027】
内部電極5,6は、平面視で(すなわち、第三方向D3から見て)、第一方向D1を長手方向とする矩形状を呈している。内部電極5,6は、例えば、互いに同じ形状を呈している。内部電極5,6の長さ(内部電極5,6の第一方向D1の長さ)は、例えば、0.5mm以上1.6mm以下である。内部電極5,6の幅(内部電極5,6の第二方向D2の長さ)は、例えば、0.1mm以上0.5mm以下である。内部電極5,6の厚さ(内部電極5,6の第三方向D3の長さ)は、例えば、3μm以上20μm以下である。
【0028】
内部電極5は、外部電極3と接続された接続端(接続端面)5aと、外部電極3と反対側に位置している先端部5bとを有している。接続端5aは、端面2aに露出している。先端部5bは、端面2bから離間している。先端部5bは、内部電極5の延在方向(第一方向D1)において所定の長さを有する部分である。先端部5bは、内部電極5の先端(先端面)だけでなく、先端と隣り合う部分も含んでいる。先端部5bは、素体2に埋め込まれ、素体2のみと接している。先端部5bは、素体2から露出しないように、素体2に覆われている。先端部5bは、第一方向D1だけでなく、第一方向D1に交差する方向においても素体2と接している。第三方向D3から見て、先端部5bは外部電極4から離間し、外部電極4と重なっていない。
【0029】
内部電極5は、内部電極6と対向している側縁(側面)5cと、側縁5cと対向している側縁(側面)5dと、放電補助部7に接している第一面5eと、第一面5eと対向している第二面5fとを有している。側縁5cは、後述のギャップ領域Sgに臨んでいる部分を有している。第二面5fは、空洞部Sにおけるギャップ領域Sg以外の領域に臨んでいる部分を有している。側縁5cは、第一面5e及び第二面5fのそれぞれと隣り合っている。内部電極5は、端面2b及び側面2c,2d,2e,2fから離間して設けられている。
【0030】
内部電極6は、外部電極4と接続された接続端(接続端面)6aと、外部電極4と反対側に位置している先端部6bとを有している。接続端6aは、端面2bに露出している。先端部6bは、端面2aから離間している。先端部6bは、内部電極6の延在方向(第一方向D1)において所定の長さを有する部分である。先端部6bは、内部電極6の先端(先端面)だけでなく、先端と隣り合う部分も含んでいる。先端部6bは、素体2に埋め込まれ、素体2のみと接している。先端部6bは、素体2から露出しないように、素体2に覆われている。先端部6bは、第一方向D1だけでなく、第一方向D1に交差する方向においても素体2と接している。第三方向D3から見て、先端部6bは外部電極3から離間し、外部電極3と重なっていない。
【0031】
内部電極6は、内部電極5の側縁5cと対向している側縁(側面)6cと、側縁6cと対向している側縁(側面)6dと、放電補助部7に接している第一面6eと、第一面6eと対向している第二面6fとを有している。側縁6cは、後述のギャップ領域Sgに臨んでいる部分を有している。第二面6fは、空洞部Sにおけるギャップ領域Sg以外の領域に臨んでいる部分を有している。側縁6cは、第一面6e及び第二面6fのそれぞれと隣り合っている。内部電極6は、端面2a及び側面2c,2d,2e,2fから離間して設けられている。
【0032】
外部電極3,4及び内部電極5,6は、例えば、Ag、Pd、Au、Pt、Cu、Ni、Al、Mo、又は、Wを含有する導体材料によって構成される。外部電極3,4及び内部電極5,6は、例えば、Ag/Pd合金、Ag/Cu合金、Ag/Au合金、又は、Ag/Pt合金によって構成されていてもよい。外部電極3,4及び内部電極5,6は、互いに同じ材料によって構成されていてもよいし、互いに異なる材料によって構成されていてもよい。
【0033】
外部電極3,4は、例えば、上記導電材料を含む導体ペーストを素体2の外表面に付与した後、導体ペーストを焼き付けることにより形成される。外部電極3,4は、めっき層を有していてもよい。内部電極5,6は、例えば、上記導電材料を含む導体ペーストを印刷により絶縁体グリーンシート上に付与した後、絶縁体グリーンシートと共に導体ペーストを焼成することにより形成される。
【0034】
放電補助部7は、素体2内に設けられている。放電補助部7は、平面視で(すなわち、第三方向D3から見て)、第一方向D1を長手方向とする矩形状を呈している。放電補助部7の長さ(放電補助部7の第一方向D1の長さ)は、例えば、0.4mm以上1.5mm以下である。放電補助部7の幅(放電補助部7の第二方向D2の長さ)は、例えば、0.15mm以上0.95mm以下である。放電補助部の厚さ(放電補助部の第三方向D3の長さ)は、例えば、3μm以上20μm以下である。
【0035】
放電補助部7は、素体2から露出しないように、素体2の外表面から離間して設けられている。放電補助部7は、内部電極5,6に接していると共に、内部電極5,6を互いに接続している。放電補助部7の第二方向D2の一端は、内部電極5の第二方向D2の一端と一致している。放電補助部7の第二方向D2の他端は、内部電極6の第二方向D2の他端と一致している。放電補助部7は、内部電極5,6から露出し、ギャップ領域Sgに臨んでいる。
【0036】
放電補助部7は、第一部分7a、第二部分7b、及び第三部分7cを含んでいる。第一部分7aは、内部電極5に覆われ、第一面5eに接している。第二部分7bは、内部電極6に覆われ、第一面6eに接している。第三部分7cは、第二方向D2に延在し、第一部分7aと第二部分7bとを互いに接続している。第三部分7cは、内部電極5,6から露出し、ギャップ領域Sgに臨んでいる領域を有している。
【0037】
放電補助部7は、絶縁体及び金属粒子を含んでいる。絶縁体は、例えば、セラミック材料により構成されている。セラミック材料としては、例えば、Fe2O3、NiO、CuO、ZnO、MgO、SiO2、TiO2、MnCO3、SrCO3、CaCO3、BaCO3、Al2O3、ZrO2、又はB2O3が挙げられる。放電補助部7は、これらのセラミック材料のうちの一種類のみを含んでもよいし、二種類以上を混合させて含んでもよい。金属粒子は、例えば、Ag、Pd、Au、Pt、Ag/Pd合金、Ag/Cu合金、Ag/Au合金、又は、Ag/Pt合金により構成されている。放電補助部7は、RuO2などの半導体粒子を含んでもよい。放電補助部7は、ガラスを含んでもよい。
【0038】
放電補助部7は、例えば、上記セラミック材料及び金属粒子等を含むスラリーを印刷により絶縁体グリーンシート上に付与した後、絶縁体グリーンシートと共にスラリーを焼成することにより形成される。
【0039】
空洞部Sは、素体2内に設けられている。空洞部Sは、第二方向D2において内部電極5,6間に位置しているギャップ領域Sgを含んでいる。ギャップ領域Sgの幅(ギャップ領域Sgの第二方向D2の長さ)、すなわち、内部電極5,6の間隔は、例えば、10μm以上70μm以下である。空洞部Sは、素体2の外表面から離間して設けられている。空洞部Sを画成する面は、内部電極5の側縁5c及び第二面5fと、内部電極6の側縁6c及び第二面6fと、放電補助部7の第三部分7cにおける内部電極5,6から露出した面とを含んでいる。
【0040】
第三方向D3から見て、空洞部Sは、放電補助部7の外縁の内側に位置している。放電補助部7は、第一方向D1及び第二方向D2のそれぞれにおいて、空洞部Sよりも長い。空洞部Sは、例えば、有機溶剤及び有機バインダを含む有機ラッカーを印刷により絶縁体グリーンシート上に付与した後、絶縁体グリーンシートと共に有機ラッカーを焼成することにより、有機ラッカーが焼失して形成される。
【0041】
以上説明したように、過渡電圧保護デバイス1では、空洞部Sのギャップ領域Sgが、互いに対向している内部電極5,6間に位置している。このため、内部電極5,6間で放電を容易に生じさせることができる。内部電極5,6の先端部5b,6bのそれぞれが素体2に埋め込まれ、素体2のみと接している。このため、先端部5b,6bにおける放電が抑制される結果、先端部5b,6bの劣化が抑制される。よって、過渡電圧保護デバイス1は、高ESD耐量及び長寿命化を両立することができる。過渡電圧保護デバイス1では、長手方向に沿って延在する側縁5c,6cが対向しているので、放電する部分の長さを長くすることができる。よって、高ESD耐量を更に図ることができる。
【0042】
放電補助部7は、内部電極5,6に接していると共に、内部電極5,6を互いに接続している。このため、内部電極5,6間で放電を確実に生じさせることができる。よって、高ESD耐量を確実に実現できる。
【0043】
放電補助部7は、内部電極5,6から露出し、ギャップ領域Sgに臨んでいる第三部分7cを有しているので、内部電極5,6間で放電を更に確実に生じさせることができる。よって、高ESD耐量を更に確実に実現できる。
【0044】
内部電極5,6において、ギャップ領域Sgに臨む側縁5c,6cと、放電補助部7と接している第一面5e,6eとが互いに隣り合っているので、内部電極5,6間で放電を更に確実に生じさせることができる。よって、高ESD耐量を更に確実に実現できる。
【0045】
内部電極5,6の第二面5f,6fは、空洞部Sに臨んでいるので、第二面5f,6fでも放電が生じ易い。したがって、内部電極5,6間で放電を更に容易に生じさせることができる。よって、高ESD耐量を一層確実に実現できる。
【0046】
外部電極3,4は、第一方向D1において互いに対向するように素体2に配置されている。つまり、外部電極3,4は、素体2の第一方向D1の両端部に配置されるので、外部電極3,4を互いに離間させることができる。よって、外部電極3,4間で短絡が生じることを抑制できる。
【0047】
本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0048】
図5に示されるように、第一変形例に係る過渡電圧保護デバイス1Aでは、第三方向D3から見て、放電補助部7Aが第二方向D2において内部電極5,6の外側まで延在している点で、過渡電圧保護デバイス1(
図3参照)と相違している。すなわち、放電補助部7Aは、第一部分7aと、第二部分7bと、第三部分7cとに加え、第二方向D2に沿って第一部分7aの外側に延在する部分と、第二方向D2に沿って第二部分7bの外側に延在する部分とを有している。放電補助部7Aは、第二方向D2において放電補助部7(
図3参照)よりも長い。
【0049】
過渡電圧保護デバイス1Aにおいても、ギャップ領域Sgが内部電極5,6間に位置していると共に、内部電極5,6の先端部5b,6bが素体2のみと接しているので、高ESD耐量及び長寿命化を両立することができる。過渡電圧保護デバイス1Aでは、第三方向D3から見て、放電補助部7Aが第二方向D2において内部電極5,6の外側まで延在しているが、放電補助部7Aが第二方向D2において内部電極5,6の内側に位置していてもよい。すなわち、第三方向D3から見て、放電補助部7の第二方向D2の一端は、内部電極5の第二方向D2の一端より内側に位置していてもよい。放電補助部7の第二方向D2の他端は、内部電極6の第二方向D2の他端より内側に位置していてもよい。
【0050】
図6及び
図7に示されるように、第二変形例に係る過渡電圧保護デバイス1Bでは、第三方向D3から見て、空洞部SBが第二方向D2において、内部電極5,6及び放電補助部7の外側まで延在している点で、過渡電圧保護デバイス1(
図3参照)と相違している。空洞部SBは、第二方向D2において空洞部S(
図3参照)よりも長い。過渡電圧保護デバイス1Bにおいても、ギャップ領域Sgが内部電極5,6間に位置していると共に、内部電極5,6の先端部5b,6bが素体2のみと接しているので、高ESD耐量及び長寿命化を両立することができる。
【0051】
過渡電圧保護デバイス1Bでは、第三方向D3から見て、空洞部SBは、第二方向D2ではなく、第一方向D1において放電補助部7の外側まで延在していてもよい。第三方向D3ラ見て、空洞部SBは、第一方向D1及び第二方向D2のそれぞれにおいて、放電補助部7の外側まで延在していてもよい。
【0052】
過渡電圧保護デバイス1,1A,1Bでは、先端部5b,6bの少なくとも一方が素体2のみと接していればよい。過渡電圧保護デバイス1,1A,1Bでは、少なくとも側縁5c,6cがギャップ領域Sgに臨んでいる部分を有していればよく、内部電極5,6は、空洞部S,SBにおけるギャップ領域Sg以外の領域に臨んでいる部分を有していなくてもよい。空洞部S,SBは、ギャップ領域Sg以外の領域を有さなくてもよい。内部電極5,6の少なくとも一方が、空洞部S,SBにおけるギャップ領域Sg以外の領域に臨んでいる部分を有していてもよい。
【0053】
過渡電圧保護デバイス1,1A,1Bでは、内部電極5,6は互いに同形状を呈しているが、互いに異なる形状を呈していてもよい。過渡電圧保護デバイス1,1A,1Bでは、内部電極5,6は、全体的に第一方向D1に沿って延在しているが、例えば、湾曲又は屈曲し、第一方向D1に沿わない部分を含んでいてもよい。
【0054】
過渡電圧保護デバイス1,1A,1Bでは、内部電極5,6、放電補助部7,7A、及び空洞部S,SBは、積層方向(第三方向D3)の略中央に設けられているが、積層方向の中央より側面2c側又は側面2d側に設けられていてもよい。
【0055】
上記実施形態及び変形例は、適宜組み合わせられてもよい。例えば、過渡電圧保護デバイス1Aにおいて、空洞部Sの代わりに空洞部SBが設けられてもよい。この場合、第三方向D3から見て、放電補助部7Aの第二方向D2の両端は、空洞部SBの第二方向D2の両端と一致していてもよいし、空洞部SBの第二方向D2の両端の外側に位置していてもよいし、空洞部SBの第二方向D2の両端の内側に位置していてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1,1A,1B…過渡電圧保護デバイス、2…素体、3,4…外部電極、5,6…内部電極、5b,6b…先端部、5c,6c…側縁、5e,6e…第一面、5f,6f…第二面、7,7A…放電補助部、D1…第一方向、D2…第二方向、S,SB…空洞部、Sg…ギャップ領域。