(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185860
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】ベルト、定着ベルト、定着装置、及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20221208BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
G03G15/20 515
G03G15/00 552
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093752
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 智丈
(72)【発明者】
【氏名】吉川 亮平
【テーマコード(参考)】
2H033
2H171
【Fターム(参考)】
2H033AA16
2H033AA23
2H033BA11
2H033BA12
2H033BA31
2H033BA32
2H033BB03
2H033BB05
2H033BB06
2H033BB13
2H033BB14
2H033BB15
2H033BB23
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2H033BB29
2H033BB30
2H033BB33
2H033BB34
2H033BB38
2H033BE00
2H033CA07
2H171FA19
2H171FA26
2H171FA30
2H171GA09
2H171JA23
2H171JA29
2H171PA05
2H171PA08
2H171PA09
2H171PA14
2H171QA04
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2H171QA24
2H171QB01
2H171QB15
2H171QB32
2H171QB35
2H171QB52
2H171QC03
2H171QC22
2H171QC37
2H171QC38
2H171QC39
2H171QC40
2H171SA12
2H171SA22
2H171SA28
2H171SA31
2H171TA10
2H171TA15
2H171TA17
2H171UA03
2H171UA07
2H171UA10
2H171UA20
2H171XA03
(57)【要約】
【課題】熱伝導率が高く、且つ、屈曲耐久性に優れるベルトの提供。
【解決手段】樹脂と、複数の繊維状炭素が互いに絡み合ってなる集合体と、を含み、前記集合体の最大径がベルト膜厚の50%以下であるベルト。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂と、複数の繊維状炭素が互いに絡み合ってなる集合体と、を含み、
前記集合体の最大径がベルト膜厚の50%以下であるベルト。
【請求項2】
互いに絡み合っていない繊維状炭素を更に含む請求項1に記載のベルト。
【請求項3】
前記集合体の含有量Aと前記互いに絡み合っていない繊維状炭素の含有量Bとが、質量基準にて、A≧Bの関係を満たす、請求項2に記載のベルト。
【請求項4】
前記集合体の含有量Aと前記互いに絡み合っていない繊維状炭素の含有量Bとの総量に対する、前記集合体の含有量Aの比(A/(A+B))が、質量基準にて、0.50以上0.95以下である、請求項2又は請求項3に記載のベルト。
【請求項5】
前記集合体の含有量が、ベルトの全質量に対して、1質量%超え20質量%以下である、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載のベルト。
【請求項6】
前記集合体の、長軸Xに対する短軸Yの比(短軸Y/長軸X)が、1/10以上1/1以下である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のベルト。
【請求項7】
前記比(短軸Y/長軸X)が、1/10以上1/3以下である、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のベルト。
【請求項8】
前記繊維状炭素がカーボンナノチューブである、請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のベルト。
【請求項9】
樹脂と、繊維状炭素と、を含み、
熱伝導率が0.5W/m・K以上10W/m・K以下であり、
引張り伸度が5%以上40%以下である、ベルト。
【請求項10】
請求項1~請求項9のいずれか1項に記載のベルトと、前記ベルト上に設けられた弾性層及び表面層の少なくとも一方と、を有する、定着ベルト。
【請求項11】
第1回転体と、前記第1回転体の外面に接触して配置される第2回転体と、を備え、
前記第1回転体及び前記第2回転体の少なくとも一方が請求項10に記載の定着ベルトであり、
トナー像が表面に形成された記録媒体を前記第1回転体と前記第2回転体との接触部に挿通して前記トナー像を定着する定着装置。
【請求項12】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
トナーを含む現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
前記トナー像を前記記録媒体に定着する、請求項11に記載の定着装置から構成される定着手段と、
を備える画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト、定着ベルト、定着装置、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱伝導材料を含み、高い熱伝導率を有するベルトは、様々な分野で利用されている。
例えば、電子写真方式を用いた画像形成装置(複写機、ファクシミリ、プリンタ等)では、記録媒体上に形成されたトナー像を記録媒体上に定着する定着ベルトが挙げられる。
【0003】
特許文献1には、ポリイミド樹脂中に針状高熱伝導性フィラーとしてカーボンナノチューブを分散してなるポリイミドチューブが開示されている。
また、特許文献2には、カーボンナノチューブの絡み合いからなり、直径が50μm以下、高さが5μm未満で、前記高さと前記直径との比(高さ/直径)が0.1未満の集合体を含有する機能性膜が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4086979号公報
【特許文献2】特開2019-140105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、樹脂と共に、熱伝導材料として互いに絡み合っていない繊維状炭素のみを含む場合、又は、樹脂と共に、熱伝導材料として複数の繊維状炭素が互いに絡み合ってなる集合体を含み、かかる集合体の最大径がベルト膜厚の50%超である場合に比べ、熱伝導率が高く、且つ、屈曲耐久性に優れる、ベルトを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための具体的手段には、下記の態様が含まれる。
<1> 樹脂と、複数の繊維状炭素が互いに絡み合ってなる集合体と、を含み、
前記集合体の最大径がベルト膜厚の50%以下であるベルト。
<2> 互いに絡み合っていない繊維状炭素を更に含む<1>に記載のベルト。
<3> 前記集合体の含有量Aと前記互いに絡み合っていない繊維状炭素の含有量Bとが、質量基準にて、A≧Bの関係を満たす、<2>に記載のベルト。
<4> 前記集合体の含有量Aと前記互いに絡み合っていない繊維状炭素の含有量Bとの総量に対する、前記集合体の含有量Aの比(A/(A+B))が、質量基準にて、0.50以上0.95以下である、<2>又は<3>に記載のベルト。
<5> 前記集合体の含有量が、ベルトの全質量に対して、1質量%超え20質量%以下である、<1>~<4>のいずれか1つに記載のベルト。
<6> 前記集合体の、長軸Xに対する短軸Yの比(短軸Y/長軸X)が、1/10以上1/1以下である、<1>~<5>のいずれか1つに記載のベルト。
<7> 前記比(短軸Y/長軸X)が、1/10以上1/3以下である、<1>~<5>のいずれか1つに記載のベルト。
<8> 前記繊維状炭素がカーボンナノチューブである、<1>~<5>のいずれか1つに記載のベルト。
<9> 樹脂と、繊維状炭素と、を含み、
熱伝導率が0.5W/m・K以上10W/m・K以下であり、
引張り伸度が5%以上40%以下である、ベルト。
【0007】
<10> <1>~<9>のいずれか1つに記載のベルトと、前記ベルト上に設けられた弾性層及び表面層の少なくとも一方と、を有する、定着ベルト。
<11> 第1回転体と、前記第1回転体の外面に接触して配置される第2回転体と、を備え、
前記第1回転体及び前記第2回転体の少なくとも一方が<10>に記載の定着ベルトであり、
トナー像が表面に形成された記録媒体を前記第1回転体と前記第2回転体との接触部に挿通して前記トナー像を定着する定着装置。
<12> 像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
帯電した前記像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、
トナーを含む現像剤により、前記像保持体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、
前記トナー像を前記記録媒体に定着する、<11>に記載の定着装置から構成される定着手段と、
を備える画像形成装置。
【発明の効果】
【0008】
<1>に係る発明によれば、樹脂と共に、熱伝導材料として互いに絡み合っていない繊維状炭素のみを含む場合、又は、樹脂と共に、熱伝導材料として複数の繊維状炭素が互いに絡み合ってなる集合体を含み、かかる集合体の最大径がベルト膜厚の50%超である場合に比べ、熱伝導率が高く、且つ、屈曲耐久性に優れるベルトが提供される。
<2>に係る発明によれば、複数の繊維状炭素が互いに絡み合ってなる集合体を含み、互いに絡み合っていない繊維状炭素を含まない場合に比べ、熱伝導率が高いベルトが提供される。
<3>に係る発明によれば、集合体の含有量Aと互いに絡み合っていない繊維状炭素の含有量Bとが、質量基準にて、A<Bの関係を満たす場合に比べ、熱伝導率が高く、且つ、屈曲耐久性に優れるベルトが提供される。
<4>に係る発明によれば、前記比(A/(A+B))が、質量基準にて、0.50未満又は0.95超である場合に比べ、熱伝導率が高く、且つ、屈曲耐久性に優れるベルトが提供される。
<5>に係る発明によれば、集合体の含有量が、ベルトの全質量に対して、20質量%超である場合に比べ、屈曲耐久性に優れるベルトが提供される。
<6>又は<7>に係る発明によれば、集合体の前記比(短軸Y/長軸X)が、1/10未満である場合に比べ、熱伝導率が高く、且つ、屈曲耐久性に優れるベルトが提供される。
<8>に係る発明によれば、繊維状炭素がカーボンナノチューブではない場合に比べ、熱伝導率が高く、且つ、屈曲耐久性に優れるベルトが提供される。
<9>に係る発明によれば、樹脂と、繊維状炭素と、を含み、熱伝導率が0.5W/m・K未満であるか、又は、引張り伸度が5%未満である場合に比べ、熱伝導率が高く、且つ、屈曲耐久性に優れるベルトが提供される。
【0009】
<10>に係る発明によれば、樹脂と共に、熱伝導材料として互いに絡み合っていない繊維状炭素のみを含む場合、又は、樹脂と共に、熱伝導材料として複数の繊維状炭素が互いに絡み合ってなる集合体を含み、かかる集合体の最大径がベルト膜厚の50%超である場合に比べ、熱伝導率が高く、且つ、屈曲耐久性に優れるベルトを有する定着ベルトが提供される。
<11>又は<12>に係る発明によれば、樹脂と共に、熱伝導材料として互いに絡み合っていない繊維状炭素のみを含む場合、又は、樹脂と共に、熱伝導材料として複数の繊維状炭素が互いに絡み合ってなる集合体を含み、かかる集合体の最大径がベルト膜厚の50%超である場合に比べ、熱伝導率が高く、且つ、屈曲耐久性に優れるベルトを有する定着ベルトを備えた、定着装置、又は画像形成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示に係る定着ベルトの一例を示す模式断面図である。
【
図2】本開示に係る定着装置の第1実施形態の一例を示す概略構成図である。
【
図3】本開示に係る定着装置の第2実施形態の一例を示す概略構成図である。
【
図4】本開示に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0012】
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。
また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0013】
本明細書において各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
本明細書において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0014】
本明細書において、特に断りなく、単に「本開示に係るベルト」という場合は、後述する第1実施形態と第2実施形態との両方について述べるものとする。
【0015】
<ベルトの第1実施形態>
本開示に係るベルトの第1実施形態は、樹脂と、複数の繊維状炭素が互いに絡み合ってなる集合体と、を含み、集合体の最大径がベルト膜厚の50%以下であるベルトである。
以下、複数の繊維状炭素が互いに絡み合ってなる集合体を、以下、適宜、特定集合体ともいう。
【0016】
本開示に係るベルトの第1実施形態は、上記構成により、熱伝導率が高く、且つ、屈曲耐久性に優れる。その理由は、次の通り推測される。
本開示に係るベルトの第1実施形態では、樹脂と共に、複数の繊維状炭素が互いに絡み合ってなる集合体(即ち、特定集合体)を含む。この特定集合体は、繊維状炭素が絡み合った部分(即ち、繊維状炭素同士が接触している部分)を起点に放射状に熱を伝えられることから、互いに絡み合っていない繊維状炭素を含む場合と比較して、ベルトの高い熱伝導が得られるものと推測される。また、この集合体においては、複数の繊維状炭素が互いに絡み合っていると共に、絡み合った繊維状炭素間の隙間に樹脂が入り込むことから、繊維状炭素と繊維状炭素との相互密着性と、樹脂と集合体中の繊維状炭素との相互密着性との両方が高くなり、ベルトの屈曲耐久性に優れるものと推測される。
【0017】
以下、本開示に係るベルトの第1実施形態に用いられる、特定集合体及び樹脂について説明する。
【0018】
[特定集合体]
本開示に係るベルトの第1実施形態は、複数の繊維状炭素が互いに絡み合ってなる集合体(特定集合体)を含む。特定集合体は、熱伝導材料として用いられる。
そして、本開示に係るベルトの第1実施形態において、特定集合体の最大径は、集合体の最大径がベルト膜厚の50%以下である。ベルトの熱伝導率を高める観点、及び、ベルトの屈曲耐久性を高める観点から、特定集合体の最大径は、ベルト膜厚の40%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましい。一方、特定集合体の最大径は、ベルト膜厚の1%以上であることがより好ましい。
【0019】
また、ベルトの熱伝導率を高める観点、及び、ベルトの屈曲耐久性を高める観点から、特定集合体の最大径としては、0.5μm以上40μm以下であることが好ましく、1μm以上30μm以下であることがより好ましく、3μm以上20μm以下であることが更に好ましい。
【0020】
特定集合体は、複数の繊維状炭素が互いに絡み合ってなる集合体であって、ベルト膜厚に対して50質量%以下の最大径を有するものであればよく、特に形状は問われない。ベルト内の特定集合体は、例えば、球状であってもよいし、楕円球状であってもよいし、不定形状であってもよい。
【0021】
本開示に係るベルトの第1実施形態においては、ベルトの熱伝導率を高める観点、及び、ベルトの屈曲耐久性を高める観点から、特定集合体の長軸Xに対する短軸Yの比(短軸Y/長軸X)は、1/10以上1/1以下であることが好ましく、1/10以上4/5以下であることがより好ましく、1/10以上3/5以下であることが更に好ましく、1/10以上1/3以下が特に好ましい。
【0022】
特定集合体の最大径、長軸X、及び短軸Yは、以下の方法で測定する。
ミクロトームにてベルトを厚み方向に切断し、得られたベルト断面を電子顕微鏡で観察し、特定集合体の最も長い軸である長軸Xと、長軸Xと直交する方向において最も長い軸である短軸Yと、を計測する。特定集合体の計測サンプル数は10とし、10サンプル中の長軸Xの最大値を「特定集合体の最大径」とし、「長軸X」及び「短軸Y」はそれぞれ10サンプルの算術平均値とする。
【0023】
特定集合体に含まれる繊維状炭素は、長さが、1μm以上100μm以下であることが好ましく、2μm以上80μm以下であることがより好ましく、3μm以上60μm以下であることが更に好ましい。
【0024】
特定集合体に含まれる繊維状炭素は、直径が、20nm以上300nm以下であることが好ましく、25nm以上250nm以下であることがより好ましく、30nm以上200nm以下であることが更に好ましい。
【0025】
特定集合体を構成する繊維状炭素の長さ及び直径は、以下の方法で測定する。
ミクロトームにてベルトを厚み方向に切断し、得られたベルト断面を電子顕微鏡で観察し、特定集合体を構成する繊維状炭素の長さ及び直径を計測する。特定集合体の測定サンプル数は10とし、1つの特定重合体につき2本の繊維状炭素について測定を行い、「特定集合体を構成する繊維状炭素の長さ」及び「特定集合体を構成する繊維状炭素の直径」はそれぞれ20点分(10サンプル×2本)の測定値の算術平均値とする。
【0026】
特定集合体に含まれる繊維状炭素の数は、複数(即ち、2本以上)であればよく、特に限定はされない。
【0027】
特定重合体に含まれる繊維状炭素は、入手容易性、熱伝導性等の観点から、カーボンナノチューブであることが好ましい。
【0028】
本開示に係るベルトの第1実施形態において、特定集合体の含有量は、ベルトの全質量に対して、1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、2質量%以上18質量%以下であることが好ましく、2質量%以上15質量%以下であることが更に好ましく、3質量%以上15質量%以下であることが特に好ましい。
特定重合体の含有量を増やすことで、ベルトの熱伝導率を高められる。一方で、特定重合体の含有量を、ベルトの全質量に対して、20質量%以下とすると、屈曲耐久性が高められる。
【0029】
[互いに絡み合っていない繊維状炭素]
本開示に係るベルトの第1実施形態は、ベルトの熱伝導率をより高める観点から、既述の特定集合体の他、互いに絡み合っていない繊維状炭素を含むことが好ましい。
即ち、本開示に係るベルトの第1実施形態は、樹脂と、特定集合体と、互いに絡み合っていない繊維状炭素と、を含むことが好ましい。
なお、「互いに絡み合っていない繊維状炭素」とは、電子顕微鏡でのベルト断面観察において、互いに絡み合った集合体(即ち、特定集合体)に属さずに遊離している繊維状炭素、又は、1つの互いに絡み合った集合体と複数の接触点を持たない繊維状炭素のことをいう。
【0030】
互いに絡み合っていない繊維状炭素は、長さが、1μm以上1000μm以下であることが好ましく、2μm以上500μm以下であることがより好ましく、3μm以上300μm以下であることが更に好ましい。
【0031】
互いに絡み合っていない繊維状炭素は、直径が、20nm以上300nm以下であることが好ましく、25nm以上250nm以下であることがより好ましく、30nm以上200nm以下であることが更に好ましい。
【0032】
互いに絡み合っていない繊維状炭素の長さ及び直径は、以下の方法で測定する。
ミクロトームにてベルトを厚み方向に切断し、得られたベルト断面を電子顕微鏡で観察し、互いに絡み合っていない繊維状炭素の長さ及び直径を計測する。測定サンプル数は5とし、「互いに絡み合っていない繊維状炭素の長さ」及び「互いに絡み合っていない繊維状炭素の直径」はそれぞれ5サンプルの算術平均値とする。
【0033】
なお、互いに絡み合っていない繊維状炭素は、特定集合体に含まれる繊維状炭素(即ち、特定集合体を構成する繊維状炭素)と同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0034】
互いに絡み合っていない繊維状炭素は、入手容易性、熱伝導性等の観点から、カーボンナノチューブであることが好ましい。
【0035】
本開示に係るベルトの第1実施形態が互いに絡み合っていない繊維状炭素を含む場合、その含有量は、ベルトの全質量に対して、0質量%超え10質量%以下であることが好ましく、0質量%超え8質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上5質量%以下であることが更に好ましく、1質量%以上5質量%以下であることが特に好ましい。
【0036】
本開示に係るベルトの第1実施形態は、ベルトの熱伝導率を高める観点、及び、ベルトの屈曲耐久性を高める観点から、特定集合体の含有量Aと互いに絡み合っていない繊維状炭素の含有量Bとが、質量基準にて、A≧Bの関係を満たすことが好ましい。
また、本開示に係るベルトの第1実施形態は、ベルトの熱伝導率を高める観点、及び、ベルトの屈曲耐久性を高める観点から、特定集合体の含有量Aと互いに絡み合っていない繊維状炭素の含有量Bとの総量に対する、特定集合体の含有量Aの比(A/(A+B))が、質量基準にて、0.50以上0.95以下であることが好ましい。
【0037】
特定集合体の含有量A、及び、互いに絡み合っていない繊維状炭素の含有量Bは、以下の方法で測定する。
ミクロトームにてベルトを厚み方向に切断し、得られたベルト断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を画像解析することで求める。SEM写真の画像解析により、ベルト断面に占める、特定集合体の面積の総和と、互いに絡み合っていない繊維状炭素の面積の総和と、をそれぞれ求める。ここで、測定サンプル数(即ち、画像解析するSEM写真の数)は5とする。「特定集合体の含有量A」は、上記の方法で求めた「ベルト断面に占める特定集合体の面積の総和」の5サンプルの算術平均値とし、また、「互いに絡み合っていない繊維状炭素の含有量B」は、上記の方法で求めた「ベルト断面に占める互いに絡み合っていない繊維状炭素の面積の総和」の5サンプルの算術平均値とする。
そして、上記のようにして得られた「特定集合体の含有量A」及び「互いに絡み合っていない繊維状炭素の含有量B」から、比(A/(A+B))を算出する。なお、比(A/(A+B))を算出する際、特定集合体と、互いに絡み合っていない繊維状炭素と、の比重が異なる場合には、それぞれの比重を用いて含有量A及び含有量Bの補正を行えばよい。
【0038】
[樹脂]
本開示に係るベルトの第1実施形態は、樹脂を含む。
本開示に係るベルトの第1実施形態に含まれる樹脂としては、特に制限はなく、ベルトの用途に応じた樹脂を選択すればよい。
本開示に係るベルトの第1実施形態に含まれる樹脂としては、耐熱性樹脂であることが好ましい。
樹脂としては、ポリイミド、芳香族ポリアミド、サーモトロピック液晶ポリマー等の液晶材料など、高耐熱かつ高強度の耐熱性樹脂等が挙げられ、これら以外にも、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリイミドアミド等が用いられる。
これらの中でも、樹脂としては、ポリイミドが好ましい。
【0039】
本開示に係るベルトの第1実施形態は、耐熱性の観点から、耐熱性樹脂であるポリイミドが好ましい。
ポリイミドとしては、例えば、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との重合体であるポリアミック酸(ポリイミド樹脂の前駆体)のイミド化物が挙げられる。ポリイミドとして具体的には、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との等モル量を溶媒中で重合反応させてポリアミド酸の溶液として得て、そのポリアミド酸をイミド化して得られた樹脂が挙げられる。
【0040】
テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族系、及び脂肪族系いずれの化合物も挙げられるが、耐熱性の観点から、芳香族系の化合物であることが好ましい。
【0041】
芳香族系テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’-パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p-フェニレン-ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m-フェニレン-ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)-4,4’-ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)-4,4’-ジフェニルメタン二無水物等を挙げられる。
【0042】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3-ジメチル-1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5-トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6-トリカルボキシノルボナン-2-酢酸二無水物、2,3,4,5-テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロフリル)-3-メチル-3-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]-オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物;1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5-メチル-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-8-メチル-5-(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)-ナフト[1,2-c]フラン-1,3-ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。
【0043】
これらの中でも、テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族系テトラカルボン酸二無水物がよく、具体的には、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物がよく、更に、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物がよく、特に、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物がよい。
【0044】
なお、テトラカルボン酸二無水物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて併用してもよい。
また、テトラカルボン酸二無水物を2種以上組み合わせて併用する場合、芳香族テトラカルボン酸二無水物、又は脂肪族テトラカルボン酸二無水物を各々併用しても、芳香族テトラカルボン酸二無水物と脂肪族テトラカルボン酸二無水物とを組み合わせてもよい。
【0045】
一方、ジアミン化合物は、分子構造中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物である。ジアミン化合物としては、芳香族系、脂肪族系いずれの化合物も挙げられるが、芳香族系の化合物であることが好ましい。
【0046】
ジアミン化合物としては、例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、1,5-ジアミノナフタレン、3,3-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、5-アミノ-1-(4’-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン、6-アミノ-1-(4’-アミノフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,5-ジアミノ-3’-トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5-ジアミノ-4’-トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、2,7-ジアミノフルオレン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-メチレン-ビス(2-クロロアニリン)、2,2’,5,5’-テトラクロロ-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジクロロ-4,4’-ジアミノ-5,5’-ジメトキシビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)-ビフェニル、1,3’-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、4,4’-(p-フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’-(m-フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’-ビス[4-(4-アミノ-2-トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-2-トリフルオロメチル)フェノキシ]-オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン;ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;1,1-メタキシリレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4-ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ-4,7-メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]-ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミン及び脂環式ジアミン等が挙げられる。
【0047】
これらの中でも、ジアミン化合物としては、芳香族系ジアミン化合物がよく、具体的には、例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホンがよく、特に、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、p-フェニレンジアミンがよい。
【0048】
なお、ジアミン化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて併用してもよい。
また、ジアミン化合物を2種以上組み合わせて併用する場合、芳香族ジアミン化合物、又は脂肪族ジアミン化合物を各々併用しても、芳香族ジアミン化合物と脂肪族ジアミン化合物とを組み合わせてもよい。
【0049】
これらの中でも、耐熱性の観点から、ポリイミドとしては、芳香族ポリイミド(具体的には、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族ジアミン化合物との重合体であるポリアミック酸(ポリイミド樹脂の前駆体)のイミド化物)が好ましい。
そして、芳香族ポリイミドとしては、下記一般式(PI1)で表される構造単位を有するポリイミドであることがより好ましい。
【0050】
【0051】
一般式(PI1)中、RP1はフェニル基、またはビフェニル基を示し、RP2は2価の芳香族基を示す。
RP2が示す2価の芳香族基は、フェニレン基、ナフチル基、ビフェニル基、ジフェニルエーテル基等が挙げられる。2価の芳香族基としては、屈曲耐久性の観点から、フェニレン基、ビフェニル基が好ましい。
【0052】
ポリイミドの数平均分子量は、5,000以上100,000以下であることがよく、より好ましくは7,000以上50,000以下、更に好ましくは10,000以上30,000以下である。
【0053】
ポリイミドの数平均分子量は、下記測定条件のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ(GPC)法で測定される。
・カラム:東ソーTSKgelα-M(7.8mm I.D×30cm)
・溶離液:DMF(ジメチルホルムアミド)/30mMLiBr/60mMリン酸
・流速:0.6mL/min
・注入量:60μL
・検出器:RI(示差屈折率検出器)
【0054】
本開示に係るベルトの第1実施形態において、樹脂の含有量は、ベルトの全質量に対して、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、85質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上であることが特に好ましい。
【0055】
[添加剤]
本開示に係るベルトの第1実施形態は、樹脂、特定集合体、及び、互いに絡み合っていない繊維状炭素の他、充填剤、潤滑剤などの周知の添加剤を含んでもよい。
【0056】
[ベルトの形状]
本開示に係るベルトの第1実施形態の径、幅、膜厚は、用途に応じて適宜決定されればよい。
また、本開示に係るベルトは、用途選択性を高める観点、屈曲耐久性を高める観点等から、無端ベルト(シームレスベルトともいう)であることが好ましい。ここで、無端ベルトとは、ベルトの両端部が接合しており、且つ、つなぎ目が存在しないベルトをいう。
【0057】
本開示に係るベルトの膜厚は、例えば、20μm以上150μm以下が挙げられ、30μm以上120μm以下が好ましく、40μm以上100μm以下がより好ましい。
【0058】
ベルトの膜厚は、以下のようにして測定する。
即ち、測定対象のベルトについて、以下の測定位置にて膜厚を測定する。
まず、ベルトの軸方向に沿ってベルトの全幅を5mm間隔で測定する。また、ベルトの周方向の測定位置は90°おきの4ヶ所とする。
なお、ベルトの膜厚の測定には、(株)フィッシャー・インストルメンツ製の渦電流式膜厚計ISOSCOPE MP30を使用する。
【0059】
[ベルトの物性]
(熱伝導率)
本開示に係るベルトの第1実施形態は、既述の通り、高い熱伝導率を有する。
本開示に係るベルトの第1実施形態は、例えば、熱伝導率が、0.5W/m・K以上10W/m・K以下であることが好ましく、0.6W/m・K以上10W/m・K以下であることがより好ましく、0.8W/m・K以上10W/m・K以下であることが更に好ましい。
【0060】
ベルトの熱伝導率は、以下のようにして測定する。
即ち、対象のベルトから、平板状の試験片を切り出し、試験片の厚み方向の熱拡散率から熱伝導率を求める。具体的には、試験片を、熱伝導率測定装置アイフェイズ・モバイル(株式会社アイフェイズ製)のプローブに載せた後、50gfの錘を置き、マニュアルモードで、1.41V、3Hz~100Hzを10分割、測定時間2秒の条件で、熱伝導率を3回測定する。3回の測定値の算術平均値を、ベルトの熱伝導率とする。
【0061】
(引張り伸度)
本開示に係るベルトの第1実施形態は、既述の通り、屈曲耐久性に優れる。
本開示に係るベルトの第1実施形態は、例えば、引張り伸度が、5%以上40%以下であることが好ましく、7%以上40%以下であることがより好ましく、10%以上40%以下であることが更に好ましい。
【0062】
ベルトの引張り伸度は、以下のようにして測定する。
まず、対象のベルトから、くびれ幅5mmのダンベル形状の試験片を切り出す。試料片を、荷重試験機(アイコーエンジニアリング株式会社製)を用いて、10mm/分の速度で引張り試験を行い、試験開始時の試料片に対する試料片が破断したときの伸び率として引張り伸度を求める。
【0063】
<ベルトの第2実施形態>
本開示に係るベルトの第2実施形態は、樹脂と、繊維状炭素と、を含み、熱伝導率が0.5W/m・K以上10W/m・K以下であり、引張り伸度が5%以上40%以下である、ベルトである。
本開示に係るベルトの第2実施形態は、上記構成から明らかなように、熱伝導率が高く、且つ、屈曲耐久性に優れる。
【0064】
本開示に係るベルトの第2実施形態は、熱伝導率が0.6W/m・K以上10W/m・K以下であり、引張り伸度が7%以上40%以下である、ことが好ましく、熱伝導率が0.8W/m・K以上10W/m・K以下であり、引張り伸度が10%以上40%以下である、ことがより好ましい。
【0065】
本開示に係るベルトの第2実施形態は、本開示に係るベルトの第1実施形態と同様に、樹脂と、繊維状炭素としての特定集合体と、を含むことが好ましく、樹脂、特定集合体、及び、互いに絡み合っていない繊維状炭素を含むことがより好ましい。
なお、第2実施形態における、樹脂、特定集合体、及び互いに絡み合っていない繊維状炭素は、それぞれ、第1実施形態の好ましい態様と同様である。
また、本開示に係るベルトの第2実施形態においても、周知の添加剤を含んでいてもよい。
更に、本開示に係るベルトの第2実施形態の形状は、本開示に係るベルトの第1実施形態と同様に、用途に応じて適宜決定されればよい。
また、本開示に係るベルトの第2実施形態においても、用途選択性を高める観点、屈曲耐久性を高める観点等から、無端ベルト(シームレスベルトともいう)であることが好ましい。
【0066】
[製造方法]
本開示に係るベルトは、以下の方法で製造される。
即ち、本開示に係るベルトは、ベルトを構成する各成分を含む塗布液を調製し、得られた塗布液を円筒状基材上に塗布し、乾燥することで得られる。塗布液には、樹脂、特定集合体、必要に応じて用いられるその他の成分(互いに絡み合っていない繊維状炭素、添加剤等)等が含まれる。
なお、樹脂がポリイミドの場合、本開示に係るベルトは、ポリアミック酸(ポリイミド樹脂の前駆体)、特定集合体、必要に応じて用いられるその他の成分(互いに絡み合っていない繊維状炭素、添加剤等)等を含む塗布液を調製し、得られた塗布液を円筒状基材上に塗布し、焼成する(即ち、イミド化)ことで得られる。
【0067】
なお、上記の塗布液を調製する際には、特定集合体の製造を合わせて行うことが好ましい。
具体的には、樹脂と繊維状炭素とを含む前駆体液を準備し(前駆体液準備工程ともいう)、この前駆体液の系中で特定集合体を製造し(特定集合体製造工程ともいう)、樹脂と特定集合体とを含む塗布液を得る方法が挙げられる。
以下、前駆体液準備工程及び特定集合体製造工程について説明する。
【0068】
(前駆体液準備工程)
前駆体液準備工程では、まず、繊維状炭素と分散媒とを混合し、繊維状炭素が分散した分散液を調製することが好ましい。
ここで、分散媒としては、繊維状炭素は、溶解せず又は溶解し難く、且つ、樹脂は溶解しうる有機溶剤が挙げられる。例えば、樹脂として、ポリアミック酸(ポリイミド樹脂の前駆体)を用いる場合には、分散媒としては、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、
ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。
ここで、分散液中の繊維状炭素の含有量は、分散液の全質量に対して、0.1質量%以上10質量%以下(好ましくは、0.3質量%以上5質量%以下)であることが好ましい。
【0069】
得られた分散液に対しては、高圧分散処理を施すことが好ましい。高圧分散処理を施すことにより、分散液中にて繊維状炭素がほぐれ個々に単離し、更に、分散液中の繊維状炭素の長さが調製される。
ここで、高圧分散処理の条件としては、繊維状炭素が個々に単離し、繊維状炭素の長さを目的の値に調整し得る条件であればよい。例えば、高圧分散処理としては、分散液の液温を25℃以上90℃以下とし、1MPa以上100MPa以下(好ましくは、3MPa以上80MPa以下)の圧力下で行うことが好ましい。
高圧分散処理は、高圧ホモジナイザー等が用いられる。
【0070】
なお、分散液中の繊維状炭素の長さは、1μm以上100μm以下(好ましくは、3μm以上50μm以下)程度に調整されることが好ましい。
ここで、分散液中の繊維状炭素の長さは、光学顕微鏡又は電子顕微鏡での観察により測定しうる。
分散液中の繊維状炭素の長さにより特定集合体の最大径を制御することができ、具体的には、繊維状炭素が長いほど、最大径の大きな集合体を製造しうる傾向がある。
【0071】
前駆体液準備工程では、続いて、以上のようにして得られた分散液に、樹脂を添加して前駆体液を調製する。
樹脂の添加量は、分散液の全質量に対して、1質量%以上20質量%以下(好ましくは、3質量%以上15質量%以下)程度とすることが好ましい。
【0072】
(特定集合体製造工程)
特定集合体製造工程では、前駆体液準備工程にて得られた前駆体液を、プラネタリーミキサーにて撹拌することで、その系中で特定集合体を製造する。
前駆体液をプラネタリーミキサーにより撹拌することで、前駆体液中にて個々に単離していた繊維状炭素が、徐々に絡み合って塊状になり、特定集合体が製造される。
【0073】
ここで、プラネタリーミキサーによる撹拌条件としては、目的とする最大径の特定集合体が得られる条件であればよい。
例えば、撹拌条件としては、前駆体液の液温を25℃以上60℃以下とし、3分~90分間で行うことが好ましい。
撹拌条件により特定集合体の最大径を制御することができ、具体的には、プラネタリーミキサーによる撹拌時間が長いほど、最大径の大きな集合体を製造しうる傾向がある。
【0074】
特定集合体製造工程では、前駆体液に含まれる繊維状炭素の全てが特定集合体となってもよく、特定集合体と共に、一部、特定集合体を形成していない繊維状炭素(即ち、互いに絡み合っていない繊維状炭素)が残っていてもよい。
【0075】
以上のようにして、樹脂と特定集合体とを含む混合液が得られる。
得られた混合液に対し、必要に応じて、その他の成分(互いに絡み合っていない繊維状炭素、添加剤等)を添加することで、ベルトを製造する際に用いる塗布液が得られる。また、得られた混合液は、有機溶剤により希釈し、塗布液の粘度等を調節してもよい。
なお、塗布液中の固形分濃度により、特定集合体の長軸Xに対する短軸Yの比(短軸Y/長軸X)を制御することができ、具体的には、塗布液中の固形分濃度が低いほど、比(短軸Y/長軸X)の値が小さい集合体を製造しうる傾向がある。
【0076】
<定着ベルト>
本開示に係る定着ベルトは、既述の、本開示に係るベルト上に、弾性層及び表面層の少なくとも一方を有する、定着ベルトである。
即ち、本開示に係る定着ベルトは、既述の、本開示に係るベルトを、基材層とし、この上に、弾性層及び表面層の少なくとも一方を有する。
本開示に係る定着ベルトは、熱伝導率が高く、且つ、屈曲耐久性に優れる本開示に係るベルトを有することから、昇温時間の短縮、消費電力の低減、定着速度の高速化等を達成し、更に、長寿命化も図られる。
【0077】
本開示に係る定着ベルトについて、
図1を参照して、説明する。
図1は、本開示に係る定着ベルトの一例を示す概略断面図である。
図1に示す定着ベルト110は、基材層110Aと、基材層110A上に設けられた弾性層110Bと、弾性層110B上に設けられた表面層110Cと、を有している。
なお、本開示に係る定着ベルト110の層構成は、
図1に示す層構成に限定されず、基材層110Aと弾性層110Bとの間に接着層を介在させた層構成、弾性層110Bと表面層110Cとの間に接着層を介在させた層構成、弾性層110Bを有さない層構成、表面層110Cを有さない層構成、これらの層構成を組み合わせた層構成であってもよい。
【0078】
以下、本開示に係る定着ベルトの主要な構成要素について詳細に説明する。なお、符号は省略して説明する。
【0079】
(基材層)
本開示に係る定着ベルトにおいては、本開示に係るベルトが基材層として用いられる。
本開示に係る定着ベルトにおける基材層の膜厚は、熱伝導性及び屈曲耐久性等の観点から、20μm以上200μm以下であることが好ましく、30μm以上150μm以下であることがより好ましく、40μm以上120μm以下であることが特に好ましい。
【0080】
基材層の形成には、上述の、本開示に係るベルトの製造方法が適用されればよい。
【0081】
(弾性層)
本開示に係る定着ベルトは、基材層(即ち、本開示に係るベルト)上に弾性層を有することが好ましい。
弾性層は、弾性を有する層であればよく、特に限定されるものではない。
弾性層は、定着ベルトへの外周側からの加圧に対して弾性を付与する観点で設けられる層であり、記録媒体上のトナー像の凹凸に追従して、定着ベルトの表面がトナー像に密着する役割を担う。
【0082】
弾性層は、例えば、100Paの外力印加により変形させても、もとの形状に復元する弾性材料から構成されることがよい。
弾性層に用いられる弾性材料としては、例えば、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、シリコーンゴム、フッ素ゴム、フルオロシリコーンゴム等が挙げられる。弾性層の材質としては、耐熱性、熱伝導性、絶縁性等の観点から、シリコーンゴム及びフッ素ゴムが好ましく、シリコーンゴムがより好ましい。
【0083】
シリコーンゴムとしては、例えば、RTVシリコーンゴム、HTVシリコーンゴム、液状シリコーンゴムなどが挙げられ、具体的には、ポリジメチルシリコーンゴム(MQ)、メチルビニルシリコーンゴム(VMQ)、メチルフェニルシリコーンゴム(PMQ)、フルオロシリコーンゴム(FVMQ)等が挙げられる。
【0084】
シリコーンゴムとしては、架橋形態として付加反応型を主とするものが好ましい。また、シリコーンゴムは様々な種類の官能基が知られており、メチル基を有するジメチルシリコーンゴム、メチル基とフェニル基を有するメチルフェニルシリコーンゴム、ビニル基を有するビニルシリコーンゴム(ビニル基含有シリコーンゴム)等が好ましい。
また、シリコーンゴムとしては、ビニル基を有するビニルシリコーンゴムがより好ましく、ビニル基を有するオルガノポリシロキサン構造とケイ素原子に結合する水素原子(SiH)を有するハイドロジェンオルガノポリシロキサン構造とを有するシリコーンゴムが更に好ましい。
【0085】
フッ素ゴムとしては、フッ化ビニリデン系ゴム、四フッ化エチレン/プロピレン系ゴム、四フッ化エチレン/パーフルオロメチルビニルエーテルゴム、フォスファゼン系ゴム、フルオロポリエーテル等が挙げられる。
【0086】
弾性層に用いられる弾性材料は、シリコーンゴムが主成分である(つまり、弾性材料の全質量に対してシリコーンゴムを50質量%以上含む)ことが好ましい。
シリコーンゴムの含有量は、弾性層に用いられる弾性材料の全質量に対して、90質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であってもよい。
【0087】
弾性層は、弾性材料のほか、補強、耐熱、及び伝熱等を目的として、無機系の充填剤を含んでもよい。無機系の充填剤としては、公知のものが挙げられ、例えば、煙霧状シリカ、結晶性シリカ、酸化鉄、アルミナ、金属珪素等が好ましく挙げられる。
無機系の充填剤の材質としては、上記のほか炭化物(例えば、カーボンブラック、カーボンファイバ、カーボンナノチューブ等)、酸化チタン、炭化ケイ素、タルク、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、酸化マグネシウム、黒鉛、窒化ケイ素、窒化ホウ素、酸化セリウム、炭酸マグネシウム等の周知の無機フィラーが挙げられる。
これらの中でも、熱伝導性の点からは、窒化ケイ素、炭化ケイ素、黒鉛、窒化ホウ素、炭化物が好ましい。
弾性層における無機系の充填剤の含有量は、求められる熱伝導性、機械的強度等により決定されればよく、例えば、1質量%以上20質量%以下が挙げられ、3質量%以上15質量%以下が好ましく、5質量%以上10質量%以下がより好ましい。
【0088】
また、弾性層は、添加剤として、例えば、軟化剤(パラフィン系等)、加工助剤(ステアリン酸等)、老化防止剤(アミン系等)、加硫剤(硫黄、金属酸化物、過酸化物等)等が含んでいてもよい。
【0089】
弾性層の厚みは、例えば、30μm以上600μm以下であることが好ましく、100μm以上500μm以下であることがより好ましい。
【0090】
弾性層の形成は、公知の方法を適用すればよく、例えば、塗布法が適用される。
弾性層の弾性材料としてシリコーンゴムを用いる場合、例えば、まず、加熱により硬化されてシリコーンゴムとなる液状シリコーンゴムを含む弾性層形成用塗布液を調製する。次に、基材層上に弾性層形成用塗布液を塗布して塗膜を形成し、必要に応じて塗膜を加硫させることで、基材層上に弾性層を形成する。なお、塗膜の加硫において、加硫温度としては、例えば、150℃以上250℃以下が挙げられ、加硫時間としては、例えば、30分以上120分以下が挙げられる。
【0091】
(表面層)
本開示に係る定着ベルトは、基材層上又は弾性層上に表面層を有することが好ましい。
表面層は、記録媒体と接触する側の面(外周面)に、定着時に溶融状態のトナー像が固着するのを抑制する役割を担う層である。
【0092】
表面層は、例えば、耐熱性や離型性が求められる。この観点から、表面層を構成する材料には、耐熱性離型材料を用いることが好ましく、具体的には、フッ素ゴム、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、耐熱性離型材料としては、フッ素樹脂がよい。
フッ素樹脂として、具体的には、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリエチレン-テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロ三フッ化エチレン(PCTFE)、フッ化ビニル(PVF)等が挙げられる。
【0093】
表面層の弾性層側の面には表面処理を施してもよい。表面処理としては、湿式処理であっても乾式処理であってもよく、例えば、液体アンモニア処理、エキシマレーザ処理、プラズマ処理等が挙げられる。
【0094】
表面層の厚さは、10μm以上100μm以下であることが好ましく、20μm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0095】
表面層の形成は公知の方法を適用すればよく、例えば、塗布法を適用してもよい。
また、チューブ状の表面層を予め準備し、これを弾性層の外周上に被覆させることで、表面層を形成してもよい。なお、チューブ状の表面層の内面に接着剤層(例えば、エポキシ基を有するシランカップリング剤を含む接着剤層)を形成した上で、外周上に被覆させてもよい。
【0096】
本開示に係る定着ベルトの膜厚は、例えば、0.06mm以上0.90mm以下が好ましく、より好ましくは0.08mm以上0.70mm以下、更に好ましくは0.10mm以上0.60mm以下である。
【0097】
[定着ベルト部材の用途]
本開示に係る定着ベルトは、例えば、加熱ベルト、加圧ベルトのいずれにも適用される。
【0098】
<定着装置>
本開示に係る定着装置としては、種々の構成があり、例えば、第1回転体と、第1回転体の外面に接して配置される第2回転体と、を備え、トナー像が表面に形成された記録媒体を第1回転体と第2回転体との接触部に挿通してトナー像を定着する定着装置が例示できる。そして、第1回転体及び第2回転体の少なくとも一方として、本開示に係る定着ベルトが適用される。
【0099】
以下に、本開示に係る定着装置について、第1実施形態として、加熱ロールと加圧ベルトとを備えた定着装置、第2実施形態として、加熱ベルトと加熱ロールとを備えた定着装置を説明する。そして、第1及び第2実施形態において、本開示に係る定着ベルトは、加熱ベルト、及び加圧ベルトのいずれにも適用され得る。
なお、本開示に係る定着装置は、第1及び第2の実施形態に限られず、加熱ロール又は加熱ベルトと加圧ベルトとを備えた定着装置であってよい。そして、本開示に係る定着ベルトは、加熱ベルト、及び加圧ベルトのいずれにも適用され得る。
【0100】
(定着装置の第1実施形態)
定着装置の第1実施形態について
図2を参照して説明する。
図2は、定着装置の第1実施形態の一例(即ち、定着装置60)を示す概略図である。
【0101】
図2に示すように、定着装置60は、例えば、回転駆動する加熱ロール61(第1回転体の一例)と、加圧ベルト62(第2回転体の一例)と、加圧ベルト62を介して加熱ロール61を押圧する押圧パッド64(押圧部材の一例)と、を備えて構成されている。
なお、押圧パッド64は、例えば、加圧ベルト62と加熱ロール61とが相対的に加圧されていればよい。従って、加圧ベルト62側が加熱ロール61に加圧されてもよく、加熱ロール61側が加熱ロール61に加圧されてもよい。
【0102】
加熱ロール61の内部には、ハロゲンランプ66(加熱手段の一例)が配設されている。加熱手段としては、ハロゲンランプに限られず、発熱する他の発熱部材を用いてもよい。
【0103】
一方、加熱ロール61の表面には、例えば、感温素子69が接触して配置されている。この感温素子69による温度計測値に基づいて、ハロゲンランプ66の点灯が制御され、加熱ロール61の表面温度が目的とする設定温度(例えば、150℃)に維持される。
【0104】
加圧ベルト62は、例えば、内部に配置された押圧パッド64とベルト走行ガイド63とによって回転自在に支持されている。そして、挟込領域N(ニップ部)において押圧パッド64により加熱ロール61に対して押圧されて配置されている。
【0105】
押圧パッド64は、例えば、加圧ベルト62の内側において、加圧ベルト62を介して加熱ロール61に加圧される状態で配置され、加熱ロール61との間で挟込領域Nを形成している。
押圧パッド64は、例えば、幅の広い挟込領域Nを確保するための前挟込部材64aを挟込領域Nの入口側に配置し、加熱ロール61に歪みを与えるための剥離挟込部材64bを挟込領域Nの出口側に配置している。
【0106】
加圧ベルト62の内周面と押圧パッド64との摺動抵抗を小さくするために、例えば、前挟込部材64a及び剥離挟込部材64bの加圧ベルト62と接する面にシート状の摺動部材68が設けられている。そして、押圧パッド64と摺動部材68とは、金属製の保持部材65に保持されている。
なお、摺動部材68は、例えば、その摺動面が加圧ベルト62の内周面と接するように設けられており、加圧ベルト62との間に存在するオイルの保持・供給に関与する。
【0107】
保持部材65には、例えば、ベルト走行ガイド63が取り付けられ、加圧ベルト62が回転する構成となっている。
【0108】
加熱ロール61は、例えば、図示しない駆動モータにより矢印S方向に回転し、この回転に従動して加圧ベルト62は、加熱ロール61の回転方向と反対の矢印R方向へ回転する。すなわち、例えば、加熱ロール61が
図2における時計方向へ回転するのに対して、加圧ベルト62は反時計方向へ回転する。
【0109】
そして、未定着トナー像を有する用紙K(記録媒体の一例)は、例えば、定着入口ガイド56によって導かれて、挟込領域Nに搬送される。そして、用紙Kが挟込領域Nを通過する際に、用紙K上の未定着トナー像は挟込領域Nに作用する圧力と熱とによって定着される。
【0110】
定着装置60では、例えば、加熱ロール61の外周面に倣う凹形状の前挟込部材64aにより、前挟込部材64aがない構成に比して、広い挟込領域Nを確保される。
【0111】
また、定着装置60では、例えば、加熱ロール61の外周面に対し突出させて剥離挟込部材64bを配置することにより、挟込領域Nの出口領域において加熱ロール61の歪みが局所的に大きくなるように構成されている。
【0112】
このように剥離挟込部材64bを配置すれば、例えば、定着後の用紙Kは、剥離挟込領域を通過する際に、局所的に大きく形成された歪みを通過することになるので、用紙Kが加熱ロール61から剥離しやすい。
【0113】
剥離の補助手段として、例えば、加熱ロール61の挟込領域Nの下流側に、剥離部材70を配設されている。剥離部材70は、例えば、剥離爪71が加熱ロール61の回転方向と対向する向き(カウンタ方向)に加熱ロール61と近接する状態で保持部材72によって保持されている。
【0114】
(定着装置の第2実施形態)
定着装置の第2実施形態について
図3を参照して説明する。
図3は、定着装置の第2実施形態の一例(即ち、定着装置80)を示す概略図である。
【0115】
定着装置80は、
図3に示すように、例えば、加熱ベルト84(第1回転体の一例)を備える定着ベルトモジュール86と、加熱ベルト84(定着ベルトモジュール86)に押圧して配置された加圧ロール88(第2回転体の一例)とを含んで構成されている。そして、例えば、加熱ベルト84(定着ベルトモジュール86)と加圧ロール88との接触部には挟込領域N(ニップ部)が形成されている。挟込領域Nでは、用紙K(記録媒体の一例)が加圧及び加熱されトナー像が定着される。
【0116】
定着ベルトモジュール86は、例えば、無端状の加熱ベルト84と、加圧ロール88側で加熱ベルト84が巻き掛けられ、モータ(不図示)の回転力で回転駆動すると共に加熱ベルト84をその内周面から加圧ロール88側へ押し付ける加熱押圧ロール89と、加熱押圧ロール89と異なる位置で内側から加熱ベルト84を支持する支持ロール90と、を備えている。
定着ベルトモジュール86は、例えば、加熱ベルト84の外側に配置されてその周回経路を規定する支持ロール92と、加熱押圧ロール89から支持ロール90までの加熱ベルト84の姿勢を矯正する姿勢矯正ロール94と、加熱ベルト84と加圧ロール88とで形成された挟込領域Nの下流側において加熱ベルト84に内周面から張力を付与する支持ロール98と、が設けられている。
【0117】
そして、定着ベルトモジュール86は、例えば、加熱ベルト84と加熱押圧ロール89との間に、シート状の摺動部材82が介在するように設けられている。
摺動部材82は、例えば、その摺動面が加熱ベルト84の内周面と接するように設けられており、加熱ベルト84との間に存在するオイルの保持・供給に関与する。
ここで、摺動部材82は、例えば、その両端が支持部材96により支持された状態で設けられている。
【0118】
加熱押圧ロール89の内部には、例えば、ハロゲンヒータ89A(加熱手段の一例)が設けられている。
【0119】
支持ロール90は、例えば、アルミニウムで形成された円筒状ロールであり、内部にはハロゲンヒータ90A(加熱手段の一例)が配設されており、加熱ベルト84を内周面側から加熱するようになっている。
支持ロール90の両端部には、例えば、加熱ベルト84を外側に押圧するバネ部材(不図示)が配設されている。
【0120】
支持ロール92は、例えば、アルミニウムで形成された円筒状ロールであり、支持ロール92の表面には厚さ20μmのフッ素樹脂からなる離型層が形成されている。
支持ロール92の離型層は、例えば、加熱ベルト84の外周面からのトナーや紙粉が支持ロール92に堆積するのを防止するために形成されるものである。
支持ロール92の内部には、例えば、ハロゲンヒータ92A(加熱手段の一例)が配設されており、加熱ベルト84を外周面側から加熱するようになっている。
【0121】
つまり、例えば、加熱押圧ロール89と支持ロール90及び支持ロール92とによって、加熱ベルト84が加熱される構成となっている。
【0122】
姿勢矯正ロール94は、例えば、アルミニウムで形成された円柱状ロールであり、姿勢矯正ロール94の近傍には、加熱ベルト84の端部位置を測定する端部位置測定機構(不図示)が配置されている。
姿勢矯正ロール94には、例えば、端部位置測定機構の測定結果に応じて加熱ベルト84の軸方向における当り位置を変位させる軸変位機構(不図示)が配設され、加熱ベルト84の蛇行を制御するように構成されている。
【0123】
一方、加圧ロール88は、例えば、回転自在に支持されると共に、図示しないスプリング等の付勢手段によって加熱ベルト84が加熱押圧ロール89に巻き回された部位に押圧されて設けられている。これにより、定着ベルトモジュール86の加熱ベルト84(加熱押圧ロール89)が矢印S方向へ回転移動するのに伴って、加熱ベルト84(加熱押圧ロール89)に従動して加圧ロール88が矢印R方向に回転移動するようになっている。
【0124】
そして、未定着トナー像(不図示)を有する用紙Kは、矢印P方向に搬送され、定着装置80の挟込領域Nに導かれる。そして、用紙Kが挟込領域Nを通過する際に、用紙K上の未定着トナー像は、挟込領域Nに作用する圧力と熱とによって定着される。
【0125】
なお、定着装置80では、複数ある加熱手段の一例としてハロゲンヒータ(ハロゲンランプ)を適用した形態を説明したが、これに限られず、ハロゲンヒータ以外の輻射ランプ発熱体(放射線(赤外線等)を発する発熱体)、抵抗発熱体(抵抗に電流を流すことによりジュール熱を発生させる発熱体:例えばセラミック基板に抵抗を有する膜を形成して焼成させたもの等)を適用してもよい。
【0126】
[画像形成装置]
次に、本開示に係る画像形成装置について説明する。
本開示に係る画像形成装置は、像保持体と、像保持体の表面を帯電する帯電手段と、帯電した像保持体の表面に静電潜像を形成する静電潜像形成手段と、トナーを含む現像剤により、像保持体の表面に形成された静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、トナー像を記録媒体の表面に転写する転写手段と、トナー像を記録媒体に定着する定着手段と、を備える。
そして、定着手段として、本開示に係る定着装置が適用される。
【0127】
ここで、本開示に係る画像形成装置において、定着装置は、画像形成装置に着脱するようにカートリッジ化していてもよい。つまり、本開示に係る画像形成装置は、プロセスカートリッジの構成装置として、本開示に係る定着装置を備えてもよい。
【0128】
以下、本開示に係る画像形成装置について図面を参照しつつ説明する。
図4は、本開示に係る画像形成装置の構成を示した概略構成図である。
【0129】
本開示に係る画像形成装置100は、
図4に示すように、例えば、一般にタンデム型と呼ばれる中間転写方式の画像形成装置であって、電子写真方式により各色成分のトナー像が形成される複数の画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kと、各画像形成ユニット1Y、1M、1C、1Kにより形成された各色成分トナー像を中間転写ベルト15に順次転写(一次転写)させる一次転写部10と、中間転写ベルト15上に転写された重畳トナー像を記録媒体である用紙Kに一括転写(二次転写)させる二次転写部20と、二次転写された画像を用紙K上に定着させる定着装置60と、を備えている。また、画像形成装置100は、各装置(各部)の動作を制御する制御部40を有している。
【0130】
この定着装置60が既述の定着装置の第1実施形態である。なお、画像形成装置100は、既述の定着装置の第2実施形態を備える構成であってもよい。
【0131】
画像形成装置100の各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、表面に形成されるトナー像を保持する像保持体の一例として、矢印A方向に回転する感光体11を備えている。
【0132】
感光体11の周囲には、帯電手段の一例として、感光体11を帯電させる帯電器12が設けられ、潜像形成手段の一例として、感光体11上に静電潜像を書込むレーザ露光器13(図中露光ビームを符号Bmで示す)が設けられている。
【0133】
また、感光体11の周囲には、現像手段の一例として、各色成分トナーが収容されて感光体11上の静電潜像をトナーにより可視像化する現像器14が設けられ、感光体11上に形成された各色成分トナー像を一次転写部10にて中間転写ベルト15に転写する一次転写ロール16が設けられている。
【0134】
更に、感光体11の周囲には、感光体11上の残留トナーが除去される感光体クリーナ17が設けられ、帯電器12、レーザ露光器13、現像器14、一次転写ロール16及び感光体クリーナ17の電子写真用デバイスが感光体11の回転方向に沿って順次配設されている。これらの画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは、中間転写ベルト15の上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の順に、略直線状に配置されている。
【0135】
中間転写体である中間転写ベルト15は、ポリイミド又はポリアミド等の樹脂をベース層としてカーボンブラック等の帯電防止剤を適当量含有させたフィルム状の加圧ベルトで構成されている。そして、その体積抵抗率は106Ωcm以上1014Ωcm以下となるように形成されており、その厚さは、例えば、0.1mm程度に構成されている。
【0136】
中間転写ベルト15は、各種ロールによって
図4に示すB方向に目的に合わせた速度で循環駆動(回転)されている。この各種ロールとして、定速性に優れたモータ(不図示)により駆動されて中間転写ベルト15を回転させる駆動ロール31、各感光体11の配列方向に沿って略直線状に延びる中間転写ベルト15を支持する支持ロール32、中間転写ベルト15に対して張力を与えると共に中間転写ベルト15の蛇行を防止する補正ロールとして機能する張力付与ロール33、二次転写部20に設けられる背面ロール25、及び、中間転写ベルト15上の残留トナーを掻き取るクリーニング部に設けられるクリーニング背面ロール34を有している。
【0137】
一次転写部10は、中間転写ベルト15を挟んで感光体11に対向して配置される一次転写ロール16で構成されている。一次転写ロール16は、芯体と、芯体の周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層と、で構成されている。芯体は、鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層はカーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴムで形成され、体積抵抗率が107.5Ωcm以上108.5Ωcm以下のスポンジ状の円筒ロールである。
【0138】
そして、一次転写ロール16は中間転写ベルト15を挟んで感光体11に圧接配置され、更に一次転写ロール16にはトナーの帯電極性(マイナス極性とする。以下同様。)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が印加されるようになっている。これにより、各々の感光体11上のトナー像が中間転写ベルト15に順次、静電吸引され、中間転写ベルト15上において重畳されたトナー像が形成されるようになっている。
【0139】
二次転写部20は、背面ロール25と、中間転写ベルト15のトナー像保持面側に配置される二次転写ロール22と、を備えて構成されている。
【0140】
背面ロール25は、表面がカーボンを分散したEPDMとNBRのブレンドゴムのチューブ、内部はEPDMゴムで構成されている。そして、その表面抵抗率が107Ω/□以上1010Ω/□以下となるように形成され、硬度は、例えば、70°(アスカーC:高分子計器社製、以下同様。)に設定される。この背面ロール25は、中間転写ベルト15の裏面側に配置されて二次転写ロール22の対向電極を構成し、二次転写バイアスが安定的に印加される金属製の給電ロール26が接触配置されている。
【0141】
一方、二次転写ロール22は、芯体と、芯体の周囲に固着された弾性層としてのスポンジ層と、で構成されている。芯体は鉄、SUS等の金属で構成された円柱棒である。スポンジ層はカーボンブラック等の導電剤を配合したNBRとSBRとEPDMとのブレンドゴムで形成され、体積抵抗率が107.5Ωcm以上108.5Ωcm以下のスポンジ状の円筒ロールである。
【0142】
そして、二次転写ロール22は中間転写ベルト15を挟んで背面ロール25に圧接配置され、更に、二次転写ロール22は接地されて背面ロール25との間に二次転写バイアスが形成され、二次転写部20に搬送される用紙K上にトナー像を二次転写する。
【0143】
また、中間転写ベルト15の二次転写部20の下流側には、二次転写後の中間転写ベルト15上の残留トナーや紙粉を除去し、中間転写ベルト15の表面をクリーニングする中間転写ベルトクリーナ35が、中間転写ベルト15に対し接離自在に設けられている。
【0144】
なお、中間転写ベルト15、一次転写部10(一次転写ロール16)、及び二次転写部20(二次転写ロール22)が、転写手段の一例に該当する。
【0145】
一方、イエローの画像形成ユニット1Yの上流側には、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kにおける画像形成タイミングをとるための基準となる基準信号を発生する基準センサ(ホームポジションセンサ)42が配設されている。この基準センサ42は、中間転写ベルト15の裏側に設けられたマークを認識して基準信号を発生しており、この基準信号の認識に基づく制御部40からの指示により、各画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kは画像形成を開始するように構成されている。
また、黒の画像形成ユニット1Kの下流側には、画質調整を行うための画像濃度センサ43が配設されている。
【0146】
更に、本開示に係る画像形成装置では、用紙Kを搬送する搬送手段として、用紙Kを収容する用紙収容部50、この用紙収容部50に集積された用紙Kを予め定められたタイミングで取り出して搬送する給紙ロール51、給紙ロール51により繰り出された用紙Kを搬送する搬送ロール52、搬送ロール52により搬送された用紙Kを二次転写部20へと送り込む搬送ガイド53、二次転写ロール22により二次転写された後に搬送される用紙Kを定着装置60へと搬送する搬送ベルト55、及び、用紙Kを定着装置60に導く定着入口ガイド56を備えている。
【0147】
次に、本開示に係る画像形成装置の基本的な作像プロセスについて説明する。
本開示に係る画像形成装置では、図示しない画像読取装置や図示しないパーソナルコンピュータ(PC)等から出力される画像データは、図示しない画像処理装置により画像処理が施された後、画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって作像作業が実行される。
【0148】
画像処理装置では、入力された反射率データに対して、シェーディング補正、位置ズレ補正、明度/色空間変換、ガンマ補正、枠消しや色編集、移動編集等の各種画像編集等の画像処理が施される。画像処理が施された画像データは、Y、M、C、Kの4色の色材階調データに変換され、レーザ露光器13に出力される。
【0149】
レーザ露光器13では、入力された色材階調データに応じて、例えば半導体レーザから出射された露光ビームBmを画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各々の感光体11に照射している。画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの各感光体11では、帯電器12によって表面が帯電された後、このレーザ露光器13によって表面が走査露光され、静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、各々の画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kによって、Y、M、C、Kの各色のトナー像として現像される。
【0150】
画像形成ユニット1Y,1M,1C,1Kの感光体11上に形成されたトナー像は、各感光体11と中間転写ベルト15とが接触する一次転写部10において、中間転写ベルト15上に転写される。より具体的には、一次転写部10において、一次転写ロール16により中間転写ベルト15の基材に対しトナーの帯電極性(マイナス極性)と逆極性の電圧(一次転写バイアス)が付加され、トナー像を中間転写ベルト15の表面に順次重ね合わせて一次転写が行われる。
【0151】
トナー像が中間転写ベルト15の表面に順次一次転写された後、中間転写ベルト15は移動してトナー像が二次転写部20に搬送される。トナー像が二次転写部20に搬送されると、搬送手段では、トナー像が二次転写部20に搬送されるタイミングに合わせて給紙ロール51が回転し、用紙収容部50から目的とするサイズの用紙Kが供給される。給紙ロール51により供給された用紙Kは、搬送ロール52により搬送され、搬送ガイド53を経て二次転写部20に到達する。この二次転写部20に到達する前に、用紙Kは一旦停止され、トナー像が保持された中間転写ベルト15の移動タイミングに合わせて位置合わせロール(不図示)が回転することで、用紙Kの位置とトナー像の位置との位置合わせがなされる。
【0152】
二次転写部20では、中間転写ベルト15を介して、二次転写ロール22が背面ロール25に加圧される。このとき、タイミングを合わせて搬送された用紙Kは、中間転写ベルト15と二次転写ロール22との間に挟み込まれる。その際に、給電ロール26からトナーの帯電極性(マイナス極性)と同極性の電圧(二次転写バイアス)が印加されると、二次転写ロール22と背面ロール25との間に転写電界が形成される。そして、中間転写ベルト15上に保持された未定着トナー像は、二次転写ロール22と背面ロール25とによって加圧される二次転写部20において、用紙K上に一括して静電転写される。
【0153】
その後、トナー像が静電転写された用紙Kは、二次転写ロール22によって中間転写ベルト15から剥離された状態でそのまま搬送され、二次転写ロール22の用紙搬送方向下流側に設けられた搬送ベルト55へと搬送される。搬送ベルト55は、定着装置60における最適な搬送速度に合わせて、用紙Kを定着装置60まで搬送する。定着装置60に搬送された用紙K上の未定着トナー像は、定着装置60によって熱及び圧力で定着処理を受けることで用紙K上に定着される。そして定着画像が形成された用紙Kは、画像形成装置の排出部に設けられた排紙収容部(不図示)に搬送される。
【0154】
一方、用紙Kへの転写が終了した後、中間転写ベルト15上に残った残留トナーは、中間転写ベルト15の回転に伴ってクリーニング部まで搬送され、クリーニング背面ロール34及び中間転写ベルトクリーナ35によって中間転写ベルト15上から除去される。
【0155】
以上、本実施形態について説明したが、上記実施の形態に限定的に解釈されるものではなく、種々の変形、変更、改良が可能である。
【実施例0156】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0157】
<実施例1>
(基材層(シームレスベルト)の形成)
N-メチル-2-ピロリドン(NMP)と、カーボンナノチューブ(昭和電工株式会社製)と、を、質量比にて、5:95にて混合して分散液(以下、「CNT5%分散液」ともいう)を調製した。得られた分散液に対して、高圧ホモジナイザー(三丸機械工業株式会社製、HC3)にて高圧分散処理(条件:50MPaで5回)を施した。
続いて、高圧分散処理後の分散液100質量部に対して、ポリアミック酸溶液(ユニチカ社製:TX-HMM(ポリイミドワニス)、固形分濃度:18質量%、溶媒:NMP)を530質量部添加して前駆体液を調製した。得られた前駆体液(液温30℃)をプラネタリーミキサー(株式会社愛工舎製作所社製、ACM-5LVT)にて、真空引きしながら15分間攪拌した。
以上により、固形分中に、複数のカーボンナノチューブが互いに絡み合ってなる集合体(即ち、特定集合体)を、5質量%で含む塗布液を得た。
次に、得られた塗布液を、円筒状金型上に塗布して塗膜を形成し、その塗膜を380℃で焼成することで、膜厚80μmのシームレスベルト状の基材層を形成した。
【0158】
(弾性層の形成)
次に、得られた基材層の外周面に、液状シリコーンゴム(信越化学工業株式会社製、X34-1053)を塗布し、110℃で15分間加熱し、膜厚400μmの弾性層を得た。
【0159】
(表面層の形成)
次に、PFAを含む、膜厚30μmのフッ素樹脂チューブを、射出成形により成形した。
このフッ素樹脂チューブを弾性層の上に被せ、200℃で120分間加熱し、フッ素樹脂チューブからなる表面層を形成した。
【0160】
以上の工程を経て、定着ベルトを得た。
【0161】
<実施例2~3>
実施例1の基材層の形成において、前駆体液のプラネタリーミキサーによる撹拌時間を適宜変えた以外は、実施例1と同様にして、塗布液を得た。この塗布液を用いた以外は、実施例1と同様にして、膜厚80μmのシームレスベルト状の基材層を形成した。次いで、この基材層上に、実施例1と同様にして、弾性層及び表面層を形成し、定着ベルトを作製した。
【0162】
<実施例4~7>
実施例1の基材層の形成において、高圧分散処理後の分散液100質量部に対するポリアミック酸溶液の添加量を適宜変えて前駆体液を調製した以外は、実施例1と同様にして、塗布液を得た。この塗布液を用いた以外は、実施例1と同様にして、膜厚80μmのシームレスベルト状の基材層を形成した。次いで、この基材層上に、実施例1と同様にして、弾性層及び表面層を形成し、定着ベルトを作製した。
【0163】
<実施例8>
実施例1にて得られた高圧分散処理後の分散液を用い、分散液100質量部に対して、ポリアミック酸溶液(ユニチカ社製:TX-HMM(ポリイミドワニス)、固形分濃度:18質量%、溶媒:NMP)を520質量部添加して前駆体液を調製した。得られた前駆体液(液温30℃)をプラネタリーミキサー(株式会社愛工舎製作所社製、ACM-5LVT)にて、真空引きしながら15分間攪拌した。次いで、撹拌後の前駆体液に、実施例1で調製したCNT5%分散液を40質量部添加し、その後、1分間撹拌した。
以上により、固形分中に、複数のカーボンナノチューブが互いに絡み合ってなる集合体(即ち、特定集合体)を5質量%で含み、互いに絡み合っていない繊維状炭素を2質量%で含む、塗布液を得た。
得られた塗布液を用い、実施例1と同様にして、膜厚80μmのシームレスベルト状の基材層を形成した。次いで、この基材層上に、実施例1と同様にして、弾性層及び表面層を形成し、定着ベルトを作製した。
【0164】
<実施例9>
実施例8において、ポリアミック酸溶液の添加量を445質量部に変え、また、CNT5%分散液の添加量を300質量部に変えた以外は、実施例8と同様にして、塗布液を得た。この塗布液を用いた以外は、実施例1と同様にして、膜厚80μmのシームレスベルト状の基材層を形成した。次いで、この基材層上に、実施例1と同様にして、弾性層及び表面層を形成し、定着ベルトを作製した。
【0165】
<実施例10>
実施例8において、高圧分散処理後の分散液の量を99質量部に変え、ポリアミック酸溶液の添加量を528質量部に変え、更に、CNT5%分散液の添加量を1質量部に変えた以外は、実施例8と同様にして、塗布液を得た。この塗布液を用いた以外は、実施例1と同様にして、膜厚80μmのシームレスベルト状の基材層を形成した。次いで、この基材層上に、実施例1と同様にして、弾性層及び表面層を形成し、定着ベルトを作製した。
【0166】
<実施例11~12>
実施例8において得られた塗布液にNMPを適宜添加し、実施例8の塗布液に比べて固形分濃度を低めた低下させた塗布液を得た。この塗布液を用いた以外は、この塗布液を用いた以外は、実施例1と同様にして、膜厚80μmのシームレスベルト状の基材層を形成した。次いで、この基材層上に、実施例1と同様にして、弾性層及び表面層を形成し、定着ベルトを作製した。
【0167】
<実施例13~14>
実施例8のポリアミック酸溶液の固形分濃度(18質量%)に比べて、固形分濃度が高いポリアミック酸溶液を用い、実施例8の塗布液に比べて固形分濃度を高めた塗布液を得た。この塗布液を用いた以外は、この塗布液を用いた以外は、実施例1と同様にして、膜厚80μmのシームレスベルト状の基材層を形成した。次いで、この基材層上に、実施例1と同様にして、弾性層及び表面層を形成し、定着ベルトを作製した。
【0168】
<実施例15>
実施例8の基材の形成において、前駆体液のプラネタリーミキサーによる撹拌時間を変えた以外は、実施例8と同様にして塗布液を得た。この塗布液を用いた以外は、実施例1と同様にして、膜厚80μmのシームレスベルト状の基材層を形成した。次いで、この基材層上に、実施例1と同様にして、弾性層及び表面層を形成し、定着ベルトを作製した。
【0169】
<比較例1>
実施例1にて得られた高圧分散処理後の分散液を用い、分散液400質量部に対して、ポリアミック酸溶液(ユニチカ社製:TX-HMM(ポリイミドワニス))を400質量部添加して前駆体液を調製し、得られた前駆体液をプラネタリーミキサーにて1分間撹拌することで、塗布液を得た。この塗布液を用いた以外は、実施例1と同様にして、膜厚80μmのシームレスベルト状の基材層を形成した。次いで、この基材層上に、実施例1と同様にして、弾性層及び表面層を形成し、定着ベルトを作製した。
【0170】
<比較例2>
ポリアミック酸溶液(ユニチカ社製:TX-HMM(ポリイミドワニス))をそのまま塗布液として用いた以外は、実施例1と同様にして、膜厚80μmのシームレスベルト状の基材層を形成した。次いで、この基材層上に、実施例1と同様にして、弾性層及び表面層を形成し、定着ベルトを作製した。
【0171】
<比較例3>
実施例1にて得られた高圧分散処理後の分散液を用い、高圧分散処理後の分散液100質量部に対して、ポリアミック酸溶液(ユニチカ社製:TX-HMM(ポリイミドワニス)、固形分濃度:18質量%、溶媒:NMP)を530質量部添加して前駆体液を調製した。得られた前駆体液(液温30℃)をプラネタリーミキサー(株式会社愛工舎製作所社製、ACM-5LVT)にて、真空引きしながら120分間攪拌した。
以上により、複数のカーボンナノチューブが互いに絡み合ってなる集合体(即ち、特定集合体)を、5質量%で含む塗布液を得た。
次に、得られた塗布液を、円筒状金型上に塗布して塗膜を形成し、その塗膜を380℃で焼成することで、膜厚80μmのシームレスベルト状の基材層を形成した。
続いて、この基材層上に、実施例1と同様にして、弾性層及び表面層を形成し、定着ベルトを作製した。
【0172】
<熱伝導率の測定>
各例で得られた基材層の熱伝導率について、既述の方法に従って測定した。
【0173】
<引張り伸度の測定>
各例で得られた基材層の引張り伸度について、既述の方法に従って測定した。
【0174】
<屈曲耐久性の評価>
各例で得られた定着ベルトを、画像形成装置(富士ゼロックス社製:Versant 3100 Press)の定着装置に装着した。
この画像形成装置を用いて、A4用紙に10%ハーフトーン画像を連続出力した。出力枚数2万枚毎に定着ベルトを取り外し、取り出した定着ベルトの亀裂や破断の有無を目視にて確認した。
屈曲耐久性は、以下の基準で評価した。
A:30万枚まで、定着ベルトの亀裂や破断が見られなかった。
B:20万枚以上30万枚未満で、定着ベルトの亀裂や破断が見られた。
C:10万枚以上20万枚未満で、定着ベルトの亀裂や破断が見られた。
D:10万枚未満で、定着ベルトの亀裂や破断が見られた。
【0175】
【0176】
上記結果から、本実施例の定着ベルトは、比較例の定着ベルトに比べ、熱伝導率が高く、且つ、屈曲耐久性に優れることが分かる。