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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185862
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】製造ラインの管理装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20221208BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G05B23/02 301Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093755
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】友定 仁
【テーマコード(参考)】
3C100
3C223
【Fターム(参考)】
3C100AA38
3C100AA57
3C100AA58
3C100BB12
3C100BB13
3C100BB15
3C100BB33
3C100CC02
3C223AA11
3C223FF45
3C223GG01
(57)【要約】
【課題】担当者の経験に関係なく製造ライン上の製造装置にトラブルが生じた場合に、その真の原因を速やかに特定することができる管理装置を提供する。
【解決手段】管理装置の制御部は、記憶部に記憶されている因果情報に基づいて、製造ライン上の複数の製造装置のうちの矯正装置に対応する矯正工程における不具合事象の第1要因の項目である「ねじれ」「たわみ」と、第1要因の影響を受ける、曲げ加工装置に対応する曲げ加工工程における不具合事象の第2要因の項目である「加圧力」「下死点位置」「硬度」「セット位置」とが、複数の加工工程に跨って関係していることを示す因果モデルを表示させる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部と、
製造ライン上にある複数の製造装置の不具合事象の複数の要因の項目を含む因果モデルを表示するための因果情報を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶されている因果情報に基づいて前記表示部に前記因果モデルを表示させる制御部と、を備え、
前記制御部は、前記複数の製造装置のうちの第1製造装置に対応する第1加工工程における不具合事象の第1要因の項目と、前記第1要因の影響を受ける、前記複数の製造装置のうちの第2製造装置に対応する第2加工工程における不具合事象の第2要因の項目とが、複数の加工工程に跨って関係していることを示す前記因果モデルを、前記表示部に表示させる、管理装置。
【請求項2】
前記記憶部は、
前記第1製造装置または前記第2製造装置の複数の制御パラメータ同士の関係を示す情報と、
前記複数の制御パラメータのうちの少なくとも一部が、前記第1要因または前記第2要因と関係していることを示す情報とを記憶し、
前記制御部は、
前記複数の制御パラメータ同士の関係と、
前記複数の制御パラメータのうちの少なくとも一部が、前記第1要因または前記第2要因と関係していることとを示す前記因果モデルを前記表示部に表示させる、請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記複数の制御パラメータのうちの第1制御パラメータが、前記第1要因または前記第2要因と関係しており、かつ、前記第1制御パラメータと関係する第2制御パラメータが、第1加工工程または前記第2加工工程における不具合事象の他の第3要因に関係していることを示す前記因果モデルを前記表示部に表示させる、請求項2に記載の管理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第1加工工程および前記第2加工工程における製造データから、前記複数の要因の間の相関度を求め、前記相関度を前記記憶部に記憶させる、請求項1から3のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記相関度を表した前記因果モデルを前記表示部に表示させる、請求項4に記載の管理装置。
【請求項6】
前記制御部は、所定値以上の前記相関度で結ばれる前記複数の要因の間の関係を強調して表示させる、請求項5に記載の管理装置。
【請求項7】
前記第2要因の入力を受け付ける入力部と、
前記因果情報に基づき、入力された前記第2加工工程における前記第2要因に影響を与える前記第1加工工程における前記第1要因に繋がる線を強調して表示させる、請求項4から6のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項8】
前記第1要因の入力を受け付ける入力部と、
前記因果情報に基づき、入力された前記第1加工工程における前記第1要因の影響を受ける前記第2加工工程における前記第2要因に繋がる線を強調して表示させる、請求項4から6のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記因果モデルとは別に、前記因果情報に含まれる前記複数の要因のうち、一部の複数の要因を抜き出した簡略化された因果モデルを表示させる、請求項1から8のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項10】
製造ライン上にある複数の製造装置のうちの第1製造装置に対応する第1加工工程における不具合事象の第1要因の項目と、前記第1要因の影響を受ける、前記複数の製造装置のうちの第2製造装置に対応する第2加工工程における不具合事象の第2要因の項目とが、複数の加工工程に跨って関係していることを示す因果情報を記憶する記憶部と、
前記第2要因の入力を受け付ける入力部と、
前記因果情報に基づき、入力された前記第2加工工程における前記第2要因に影響を与える前記第1加工工程における前記第1要因を提示する制御部と、を備える、管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造ラインの管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、要素(現象)間の因果関係をFT(Fault Tree:多分枝構造)で表してシステムの故障の原因究明を速やかに行うFTA(Fault Tree Analysis)という手法が知られて
いる。
【0003】
特許文献1には、故障現象をトップ事象として製造工程の要因を分析し因果関係を基本原因(要因)に関連させて多分枝に構成し、各基本原因に対処する管理項目をそれぞれ端末として付加した工程FTを作成して製造工程を管理することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献2】特開2002-351538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
製造ライン上の複数の工程(複数の製造装置)で生じる精度のバラツキや不良が、後工程において異常・故障(以下、トラブルと称する)となるような場合がある。例えば、前段の矯正工程で生じた矯正のバラツキが影響して、後工程の曲げ加工工程での曲げ精度のバラツキが大きくなり、製品不良となる場合である。曲げ精度のバラツキの真の原因は矯正工程にあるため、加工工程における加圧力や下死点位置、加圧時間等を調整しても、解決することはできない。
【0006】
但し、このような場合でも、熟練の担当者であれば、経験的に前段の矯正工程に真の原因があることに思い至り速やかに解決できる。しかしながら、経験の少ない担当者の場合は、真の原因を見つけるまでに多大な時間がかかったり、見つけることができなかったりする。そのため、担当者によって製造ラインの復旧までの期間に大きなばらつきがあり、生産計画を安定させることができない。
【0007】
なお、上述のような従来技術も、トラブルの原因が複数の工程間に跨って存在していることを明確に示すものではないため、経験の少ない担当者の場合、真の原因の特定に時間を要してしまう。
【0008】
本発明の一態様は、担当者の経験に関係なく製造ライン上の製造装置にトラブルが生じた場合に、その真の原因を速やかに特定することができる製造ラインの管理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一側面に係る管理装置は、表示部と、製造ライン上にある複数の製造装置の不具合事象の複数の要因の項目を含む因果モデルを表示するための因果情報を記憶する記憶部と、前記記憶部に記憶されている因果情報に基づいて前記表示部に前記因果モデルを表示させる制御部と、を備え、前記制御部は、前記複数の製造装置のうちの第1製造装置に対応する第1加工工程における不具合事象の第1要因の項目と、前記第1要因の影響を受ける、前記複数の製造装置のうちの第2製造装置に対応する第2加工工程における不具合事象の第2要因の項目とが、複数の加工工程に跨って関係
していることを示す前記因果モデルを、前記表示部に表示させる。
【0010】
上記構成によれば、第1加工工程における不具合事象の第1要因と、その影響を受ける第2加工工程における不具合事象の第2要因との関係性を示す因果モデルが表示される。つまり、トラブルの原因が複数の加工工程間に跨って存在している場合でも加工工程間での関係性が因果モデルに明示される。したがって、たとえ経験の少ない担当者であっても、因果モデルを確認することで真の原因を速やかに特定することができる。これにより、速やかに製造ラインを復旧させることができ、生産計画の安定化を図ることができる。
【0011】
上記一側面に係る管理装置において、前記記憶部は、前記第1製造装置または前記第2製造装置の複数の制御パラメータ同士の関係を示す情報と、前記複数の制御パラメータのうちの少なくとも一部が、前記第1要因または前記第2要因と関係していることを示す情報とを記憶し、前記制御部は、前記複数の制御パラメータ同士の関係と、前記複数の制御パラメータのうちの少なくとも一部が、前記第1要因または前記第2要因と関係していることとを示す前記因果モデルを前記表示部に表示させてもよい。
【0012】
上記構成によれば、各加工工程の製造装置の複数の制御パラメータ同士の関係を示す情報までを含む因果モデルが表示される。これにより、製造装置の制御パラメータを調整した場合の影響範囲を知ることができ、より速やかに製造ラインを復旧させることができる。
【0013】
上記一側面に係る管理装置において、前記制御部は、前記複数の制御パラメータのうちの第1制御パラメータが、前記第1要因または前記第2要因と関係しており、かつ、前記第1制御パラメータと関係する第2制御パラメータが、第1加工工程または前記第2加工工程における不具合事象の他の第3要因に関係していることを示す前記因果モデルを前記表示部に表示させてもよい。
【0014】
上記構成によれば、第1要因を取り除くべくある制御パラメータを変更した場合の影響が第1要因および第2要因とは別の第3要因にまで影響を及ぼす場合、その関係までを含む因果モデルが明示される。これにより、製造装置の制御パラメータを調整した場合の影響範囲をさらに詳細に知ることができ、より一層速やかに製造ラインを復旧させることができる。
【0015】
上記一側面に係る管理装置において、前記制御部は、前記第1加工工程および前記第2加工工程における製造データから、前記複数の要因の間の相関度を求め、前記相関度を前記記憶部に記憶させてもよい。
【0016】
上記構成によれば、複数の要因の間の相関度が記憶されるので、例えば、因果モデルに相関度を含めることができる。
【0017】
上記一側面に係る管理装置において、前記制御部は、前記相関度を表した前記因果モデルを前記表示部に表示させてもよい。
【0018】
上記構成によれば、相関度を表した因果モデルが表示されるので、より速やかに真の原因を特定して、製造ラインを復旧させることができる。
【0019】
上記一側面に係る管理装置において、前記制御部は、所定値以上の前記相関度で結ばれる前記複数の要因の間の関係を強調して表示させてよい。
【0020】
上記構成によれば、相関度の強い要因間が強調された因果モデルが表示されるので、よ
り速やかに真の原因を特定して、製造ラインを復旧させることができる。
【0021】
上記一側面に係る管理装置において、前記第2要因の入力を受け付ける入力部と、前記因果情報に基づき、入力された前記第2加工工程における前記第2要因に影響を与える前記第1加工工程における前記第1要因に繋がる線を強調して表示させてもよい。
【0022】
上記構成によれば、因果モデルにおいて、指定した第2要因に関連のある第1要因が強調して表示されるので、より速やかに真の原因を特定して、製造ラインを復旧させることができる。
【0023】
上記一側面に係る管理装置において、前記第1要因の入力を受け付ける入力部と、前記因果情報に基づき、入力された前記第1加工工程における前記第1要因の影響を受ける前記第2加工工程における前記第2要因に繋がる線を強調して表示させてもよい。
【0024】
上記構成によれば、因果モデルにおいて、指定した第1要因に関連のある第2要因が強調して表示されるので、後工程に影響が出る範囲を把握することができる。
【0025】
上記一側面に係る管理装置において、前記制御部は、前記因果モデルとは別に、前記因果情報に含まれる前記複数の要因のうち、一部の複数の要因を抜き出した簡略化された因果モデルを表示させてもよい。
【0026】
上記構成によれば、簡略化された因果モデルが表示されるので、加工工程間に跨った要因の関係性を俯瞰的に確認して、確認すべき規模を把握することができる。
【0027】
上記の課題を解決するために、本発明の一側面に係る管理装置は、製造ライン上にある複数の製造装置のうちの第1製造装置に対応する第1加工工程における不具合事象の第1要因の項目と、前記第1要因の影響を受ける、前記複数の製造装置のうちの第2製造装置に対応する第2加工工程における不具合事象の第2要因の項目とが、複数の加工工程に跨って関係していることを示す因果情報を記憶する記憶部と、前記第2要因の入力を受け付ける入力部と、前記因果情報に基づき、入力された前記第2加工工程における前記第2要因に影響を与える前記第1加工工程における前記第1要因を提示する制御部と、を備える。
【0028】
上記構成によれば、因果情報を用いて、第2加工工程の第2要因と関係のある第1加工工程の第2要因が表示されるので、表示される第2要因に基づいて真の原因を速やかに特定することができる。これにより、速やかに製造ラインを復旧させることができ、生産計画の安定化を図ることができる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の一態様によれば、担当者の経験に関係なく製造ライン上の製造装置にトラブルが生じた場合に、その真の原因を速やかに特定することができる製造ラインの管理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態に係る管理装置が含まれるシステムの要部構成を示す模式図である。
図2図1に示すシステムに含まれる管理装置の要部の概略構成の一例を示す機能ブロック図である。
図3図1に示すシステムに含まれる管理装置に表示される因果モデルの作成手順を示す図である。
図4図1に示すシステムに含まれる管理装置に表示される因果モデルの一例を示す図である。
図5図1に示すシステムに含まれる管理装置の表示部に表示される監視画面の一例を示す説明図である。
図6】原因を探る項目が指定され、項目間を繋ぐ矢印が強調表示された因果モデルの2層目および3層目の一例を示す図である。
図7】調整する項目が指定され、項目間が強調表示された因果モデルの一例を示す図である。
図8】第2要因である原因を探る項目の指定を受け付け、受け付けた項目の影響元となる第1要因の項目を表示する画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の一側面に係る実施の形態(以下、「本実施形態」とも表記する)について説明する。図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0032】
〔§1 適用例〕
まず、図1図2図4を用いて、製造ラインの管理装置10が適用される場面の一例について説明する。図1に示すように、管理装置10は、製造ライン上にある複数の製造装置20を管理する。図2に示すように、管理装置10は、制御部11と、記憶部12と、表示部13と、操作部14とを備え、記憶部12は、因果情報を記憶している。因果情報は、複数の製造装置20の不具合事象の複数の要因の項目を含む因果モデルを表示するための情報である。制御部11は、このような因果情報を用いて、例えば、図4に示すような因果モデルを表示部13に表示させる。
【0033】
因果モデルは、複数の製造装置20のうちの第1製造装置に対応する第1加工工程における不具合事象の第1要因の項目と、第1要因の影響を受ける、複数の製造装置20のうちの第2製造装置に対応する第2加工工程における不具合事象の第2要因の項目とが、複数の加工工程に跨って関係していることを示している。例えば、図4に示す、第1製造装置を矯正装置21、その対応する第1加工工程を矯正工程、それにおける不具合事象の第1要因を「矯正バラツキ」とする。このような第1要因の影響を受ける別の加工工程の第2要因は、例えば、図4に示す、曲げ加工装置24(第2製造装置に相当)に対応する第曲げ加工工程(第2加工工程に相当)における、「曲げバラツキ」「長さバラツキ」となる。図4に示すように、第1要因である「矯正バラツキ」と第2要因である「曲げバラツキ」「長さバラツキ」との項目は、加工工程に跨って矢印で結ばれており、関係していることが示されている。
【0034】
このような因果モデルを確認することで、製造ライン2における任意の製造装置で発生した不具合事象の要因が工程間に跨っている場合でも、経験によらず、速やかに原因を特定することが可能となる。これにより、製造ライン2を速やかに復旧させることができ、生産計画を安定させることができる。
【0035】
〔§2 構成例〕
以下、本発明に係る一実施の形態について図面に基づき説明する。製造ラインに設置された複数の製造装置を管理する管理装置を備える。
【0036】
(1.製造ライン2およびシステム1の構成)
本実施形態では、一例として、コイル部品を製造する製造ライン2の管理装置10を例示する。
【0037】
図1は、一実施形態に係る管理装置10が含まれるシステム1の要部構成を示す模式図
である。システム1は、製造ライン2上に設置された複数の製造装置20と、これら複数の製造装置を制御し、監視し、かつ管理する管理装置10と、を含む。複数の製造装置20はそれぞれ、制御装置であるPLC(Programmable Logic Controller)PLC3を介
して工場内のLANケーブル4に接続されている。
【0038】
管理装置10は、各PLC3で扱われる情報を表示するとともに、ユーザからの指示を対応するPLC3へ入力するHMI(Human Machine Interface)装置に相当する。管理
装置10はLANケーブル4を介して各製造装置20のPLC3と接続されている。
【0039】
製造ライン2上には、複数の製造装置20以外の他装置30、例えば検査装置31等が設置され、LANケーブル4を介して監視装置10と接続されていてもよい。つまり、システム1に、複数の製造装置20以外の他装置30が含まれていてもよい。また、管理装置10は、オフィスLANケーブル等を介して、オフィスのコンピュータに接続されていてもよいし、さらにインターネット等を介して外部サーバに接続されていてもよい。
【0040】
本実施形態では、一例として、複数の製造装置20は、少なくとも、矯正装置21と、搬送装置22と、カット加工装置23と、曲げ加工装置24とを含む。
【0041】
矯正装置21は、矯正工程に配置され、材料であるワイヤーについている癖を矯正する装置である。矯正装置21は、搬送されるワイヤーに対して所定の加圧力で加圧を行うことで、ワイヤーを直線化する。
【0042】
カット加工装置23は、カット加工工程に配置され、刃具を用いて矯正されたワイヤーを所定の長さにカットする装置である。カット加工装置23は、搬送されるワイヤーに対して決められたタイミングで刃具を動かし、所定の長さにカットしていく。
【0043】
搬送装置22は、搬送工程に配置され、矯正装置21およびカット加工装置23におけるワイヤーの搬送を担う装置である。搬送装置22に設定されている送り速度にてワイヤーは矯正装置21およびカット加工装置23を通過する。通過中のワイヤーに対して矯正およびカット加工が行われる。
【0044】
曲げ加工装置24は、曲げ加工工程に配置され、所定の長さにカットされたワイヤーを、金型を用いて所定の形状に曲げる装置である。曲げ加工装置24は、金型を上下動させてワイヤーを金型で挟み込んで圧を掛けることで金型の形状に沿わせて曲げる。
【0045】
このような製造ライン2は、管理装置10に表示される、製造ライン2上にある複数の製造装置20の不具合事象の複数の要因(原因)の項目を含む因果モデルを用いて管理される。製造ライン2上の複数の製造装置20の何れかの製造装置20にトラブル(異常・故障)が発生した場合、担当者は因果モデルを参照してトラブルを解決し、製造ライン2を復旧させる。本実施形態では、3層構成の因果モデルを用いる。
【0046】
(2.管理装置10)
図2は、図1に示すシステム1に含まれる管理装置10の要部の概略構成の一例を示す機能ブロック図である。図2に示すように、管理装置10は、制御部11と、記憶部12と、表示部13と、操作部14とを備えている。
【0047】
制御部11は、制御プログラムを実行することにより、表示部13を制御する。制御部11は、記憶部12に格納されている制御プログラムを、例えばRAM(Random Access Memory)等で構成される一時記憶部(不図示)に読み出して実行することにより、各種処理を実行する。操作部14は、ユーザによる各種の操作命令の入力を受け付ける。表示部
13は、制御部11の制御のもと、各種の画像を表示する。
【0048】
記憶部12は、制御部11が実行する制御プログラム、OSプログラム、これらプログラムを実行するときに読み出す各種データを記憶している。記憶部12は、製造ライン2上にある複数の製造装置20の不具合事象の複数の要因の項目を含む因果モデルを表示するための因果情報を記憶している。本実施形態では、記憶部12は、3層の因果モデルを表示するための情報を記憶している。
【0049】
制御部11は、記憶部12に記憶されている因果情報を用いて因果モデルを表示部13に表示させる。因果モデルは、複数の製造装置20のうちの第1製造装置(例えば矯正装置21)に対応する第1加工工程(例えば矯正工程)における不具合事象の第1要因(例えば、矯正バラツキ)の項目と、前記第1要因の影響を受ける、複数の製造装置20のうちの第2製造装置(例えば、曲げ加工装置24)に対応する第2加工工程(例えば、曲げ加工工程)における不具合事象の第2要因(例えば、曲げバラツキ、長さバラツキ)の項目とが、複数の加工工程に跨って関係していることを示している。
【0050】
また、本実施形態では、記憶部12は、第1製造装置(例えば、矯正装置21)または第2製造装置(例えば、曲げ加工装置24)の複数の制御パラメータ同士の関係を示す関連情報(3層目の相関図)と、複数の制御パラメータのうちの少なくとも一部が、第1要因または第2要因と関係していることを示す情報(関連情報)とを記憶している。関連情報は、因果モデルの3層目を2層目と関連付けて表示するための情報である。
【0051】
制御部11は、複数の制御パラメータ同士の関係と、複数の制御パラメータのうちの少なくとも一部が、第1要因または第2要因と関係していることを示す因果モデルを表示部13に表示させる。これにより、製造装置20の制御パラメータを調整した場合の影響範囲を知ることができ、より速やかに製造ライン2を復旧させることができる。
【0052】
さらに、制御部11は、複数の制御パラメータのうちの第1制御パラメータ(例えば、矯正装置21のたわみ量)が、第1要因(例えば、矯正装置21のたわみ)と関係しており、かつ、第1制御パラメータと関係する第2制御パラメータ(例えば、曲げ加工装置24の下死点停止時間)が、第1加工工程または第2加工工程(例えば、曲げ加工工程)における不具合事象の他の第3要因(例えば、加圧時間)に関係していることを示す因果モデルを表示部13に表示させる。これにより、製造装置20の制御パラメータを調整した場合の影響範囲をさらに詳細に知ることができ、より一層速やかに製造ライン2を復旧させることができる。
【0053】
また、制御部11は、製造ライン2の複数の製造装置20のPLC3から送信される情報を用いて監視画面を表示する。監視画面には、製造装置20ごとに、センシング情報を用いて得られる状態を示す情報がリアルタイムで表示される。
【0054】
(3.因果モデル、およびその作成手順)
図3は、図1に示すシステム1に含まれる管理装置10に表示される因果モデルの作成手順を示す図である。図4は、図1に示すシステム1に含まれる管理装置10に表示される因果モデルの一例を示す図である。図3図4用いて、因果モデル、およびその作成手順について説明する。因果モデルは、設備設計者にて作成される。
【0055】
まず、工程P1では、製造ライン2上の複数の製造装置20(矯正装置21と、搬送装置22と、カット加工装置23と、曲げ加工装置24)に関して、過去のトラブル発生時の知見(製造ライン2の熟練担当者の知見)を収集する。経験の少ない担当者の知らない、熟練担当者のみ有するノウハウ的な複数の加工工程間に跨って関係する原因を抽出する
【0056】
工程P2~P4で、複数の製造装置20のうちの第1製造装置(例えば、矯正装置21)に対応する第1加工工程(例えば、矯正工程)における不具合事象の第1要因(例えば、矯正バラツキ)の項目と、該第1要因の影響を受ける、複数の製造装置20のうちの第2製造装置(例えば、曲げ加工装置24)に対応する第2加工工程(例えば、曲げ加工工程)における不具合事象の第2要因(例えば、曲げバラツキ)の項目とが、複数の加工工程に跨って関係していることを示す因果モデルを作成する。
【0057】
本実施形態では、工程P2では、収集した知見に基づいて、製造ライン2上の各製造装置20の配置に関連付けて、各製造装置20にて不具合事象の要因となる代表的な要因の項目(以下、代表項目)を配置する。
【0058】
図4の2層目の因果モデルにおける、太線で囲っている項目が代表項目に相当する。製造装置20の代表項目は1つに限るものではなく、複数であってもよい。矯正装置21(矯正工程)には、代表項目として「矯正バラツキ」が配置されている。搬送装置22(搬送工程)には、代表項目として「搬送速度バラツキ」が配置されている。カット加工装置23(カット加工工程)には、代表項目として「長さバラツキ」と「バリ」が配置されている。曲げ加工装置24(曲げ加工工程)には、代表項目として「曲げバラツキ」と「長さバラツキ」が配置されている。なお、ここで矯正バラツキ、長さバラツキ、曲げバラツキは、矯正精度バラツキ、長さ精度バラツキ、曲げ精度バラツキである。
【0059】
工程P3では、収集した知見に基づいて、製造装置20ごとに、代表項目に関連つけて、代表項目と関連する要因の項目を配置し、製造装置20ごとのFTを作成する。影響元(もと)の要因と影響先の要因との関係が明確になるように、影響元の要因の項目は影響先の要因の項目よりも前段に配置し、影響元の要因の項目から影響先の要因の項目に向かう矢印で項目間を結ぶ。
【0060】
図4の2層目の因果モデルにおいて、矯正装置21には、「矯正バラツキ」の影響元の要因となる「加圧力」が「矯正バラツキ」の前段に配置されている。「加圧力」が影響元の要因で「矯正バラツキ」が影響先の要因であるため、「加圧力」から「矯正バラツキ」に向かう矢印で結ばれている。また、「矯正バラツキ」は、「ねじれ」「たわみ」の影響元の要因になるため、「矯正バラツキ」の後段に「ねじれ」「たわみ」が配置され、「矯正バラツキ」と矢印で結ばれている。
【0061】
搬送装置22には、「送り速度バラツキ」の影響元の要因となる「摩擦力」および「回転バラツキ」が「送り速度バラツキ」の前段に配置され、矢印で結ばれている。「摩擦力」の前段には、その影響元の要因となる「加圧力減少」および「ローラ摩耗」が配置され、矢印で結ばれている。同様に、「回転バラツキ」の前段には、その影響元の要因となる「ギヤ摩耗」および「軸偏芯」が「回転バラツキ」が配置され、矢印で結ばれている。
【0062】
カット加工装置23には、「長さバラツキ」「バリ」の影響元の要因となる「刃具ぐらつき」「刃具摩耗」が、「長さバラツキ」「バリ」の前段に配置されている。「刃具ぐらつき」「刃具摩耗」は共に「長さバラツキ」「バリ」の影響元の要因となるため、それぞれが「長さバラツキ」「バリ」の両方と矢印で結ばれている。
【0063】
曲げ加工装置24(曲げ加工工程)には、「曲げバラツキ」の影響元の要因となる「加圧時間」「金型形状」「加圧力」「下死点位置」が「曲げバラツキ」の前段に配置され、矢印で結ばれている。「金型形状」の前段には、その影響元の要因となる「摩耗変形」「金型温度」が配置され、矢印で結ばれている。ここで、「金型温度」は「摩耗変形」の影
響元の要因ともなるため、「摩耗変形」よりも前段に配置され、「摩耗変形」とも矢印で結ばれている。「金型温度」の前段には、その影響元の要因となる「連続運転」「外気温」が配置され、矢印で結ばれている。
【0064】
また、「加圧力」「下死点位置」の前段には、その影響元の要因となる「硬度」が配置され、矢印で結ばれている。「硬度」は「摩耗変形」の影響元の要因ともなるので、「摩耗変形」よりも前段に配置され、「摩耗変形」とも矢印で結ばれている。また、前述の「外気温」は「硬度」の影響元の要因ともなるので、「外気温」は「硬度」よりも前段に配置され、「硬度」とも矢印で結ばれている。
【0065】
「曲げバラツキ」は、「曲げRバラツキ」「曲げ角度バラツキ」の影響元の要因になるため、「曲げバラツキ」の後段に「曲げRバラツキ」「曲げ角度バラツキ」が配置され、「曲げバラツキ」と矢印で結ばれている。
【0066】
「長さバラツキ」は、「曲げRバラツキ」「曲げ角度バラツキ」「セット位置」「下死点位置」を影響元の要因とする。したがって、「長さバラツキ」は、「曲げRバラツキ」「曲げ角度バラツキ」「セット位置」「下死点位置」の後段に配置され、これらと矢印で結ばれている。
【0067】
工程P4では、収集した知見に基づいて、異なる製造装置20間(異なる加工工程間)で関連性のあるFTの項目同士を関連つける。具体的には、影響元の要因の項目から影響先の要因に向かう矢印で、異なる加工工程のFT間で項目同士を結ぶ。
【0068】
図4の2層目の因果モデルにおいて、矯正装置21の「加圧力」と曲げ加工装置24の「硬度」とが矢印で結ばれている。矢印は「加圧力」から「硬度」に向かっており、矯正装置21の「加圧力」が、曲げ加工装置21の「硬度」に影響を及ぼすことを示している。つまり、矯正装置21が第1製造装置に対応し、矯正工程が第1加工工程に対応し、「加圧力」がその不具合事象の第1要因に相当する。そして、曲げ加工装置24が第2製造装置に対応し、曲げ加工工程が第2加工工程に対応し、「硬度」が、第1要因(矯正工程の「加圧力」)の影響を受ける第2要因に相当する。第1要因の矯正工程の「加圧力」と第2要因の「硬度」とが、複数の加工工程に跨って関係していることが示されている。
【0069】
同様にして、曲げ加工装置21の「ねじれ」「たわみ」(第1要因)と、曲げ加工装置24の「摩耗変形」「加圧力」「下死点位置」「セット位置」およびカット加工装置23の「長さバラツキ」(第2要因)と、が結ばれている。矢印は「ねじれ」「たわみ」から出発しており、矯正装置21の「加圧力」が、曲げ加工装置24の「摩耗変形」「加圧力」「下死点位置」「セット位置」およびカット加工装置23の「長さバラツキ」の影響元の要因となることを示している。
【0070】
搬送装置22の「送り精度バラツキ」(第1要因)と矯正装置21の「矯正バラツキ」(第2要因)とが矢印で結ばれている。矢印は「送り精度バラツキ」から「矯正バラツキ」に向かっており、搬送装置22の「送り精度バラツキ」が矯正装置21の「矯正バラツキ」の影響元の要因となることを示している。
【0071】
また、カット加工装置23の「長さバラツキ」(第1要因)と曲げ加工装置24の「長さバラツキ」(第2要因)とが矢印で結ばれている。矢印はカット加工装置23の「長さバラツキ」から曲げ加工装置24の「長さバラツキ」に向かっており、カット加工装置23の「長さバラツキ」が、曲げ加工装置24の「長さバラツキ」の影響元の要因となることを示している。
【0072】
工程P5では、制御部11は、記憶部12の関連情報を用いて、複数の制御パラメータ同士の関係と、複数の制御パラメータのうちの少なくとも一部が、第1要因または第2要因と関係していることとを示す3層目を作成する。つまり、制御パラメータの相関図を各製造装置20の配置に関連付けて配置し、センシング情報の項目と該センシング情報を用いて状態を示しているFTの項目、制御情報の項目と該制御情報にて制御されるFTの項目とを関連付ける。
【0073】
具体的には、センシング情報の項目からセンシング情報を用いるFTの項目に向かう矢印で項目同士を結ぶ。制御情報については、制御する側のFTの項目から制御情報の項目に向かう矢印で項目同士を結ぶ。
【0074】
図4の3層目が、制御パラメータの相関図に相当する。制御パラメータの相関図は、製造ライン2の制御プログラムより作成することができる。3層目においては、センシング情報、制御値を含む制御パラメータが、相互関係を示す矢印で結ばれている。
【0075】
図4の例では、3層目の「ねじれ量」「たわみ量」のセンシング情報と、2層目の矯正装置21の「ねじれ」「たわみ」とが矢印で結ばれている。図4では、センシング情報の矢印を破線で示している。また、3層目の相関図の「搬送速度(実)」のセンシング情報と、2層目の搬送装置22の「送り速度バラツキ」とが矢印で結ばれている。同様にして、3層目の「外気温」と2層目の「外気温」、3層目の「下死点停止時間」と2層目の「加圧時間」、3層目の「金型温度」と2層目の「金型温度」と、3層目の「加圧力(実)」と2層目の「加圧力」と、が矢印で結ばれている。同様に、3層目の「曲げR」と2層目の「曲げRバラツキ」、3層目の「曲げ角度」と2層目の「曲げ角度ばらつき」と、が矢印で結ばれている。
【0076】
一方、図4では、制御情報の矢印を一点破線で示しており、2層目の「加圧力」と3層目の「加圧力(目標)」とが矢印で結ばれている。同様に、2層目の「下死点位置」と3層目の「下死点位置(目標)」「金型速度(目標)」とが矢印で結ばれている。
【0077】
なお、便宜上図示してはいないが、矯正装置21の「加圧力」についても曲げ加工装置23の「加圧力」と同様に、3層目からのセンシング情報を用いて状態が示され、3層目の制御情報を変えることで制御可能となっている。
【0078】
また、図4の例では、3層目の複数の制御パラメータのうちの第1制御パラメータが、2層目の第1要因または第2要因と関係しており、かつ、第1制御パラメータと関係する第2制御パラメータが、第1加工工程または前記第2加工工程における不具合事象の他の第3要因に関係していることも示されている。例えば、第1加工工程が矯正工程、第2加工工程が曲げ加工工程、第1要因が「ねじれ」、第2要因が「加圧力」であるとする。この場合、矯正装置21のたわみ量(第1制御パラメータ)は、矯正装置21の「たわみ」と関係している。さらに、該第1制御パラメータと関係する曲げ加工装置24の下死点停止時間(第2制御パラメータ)が、曲げ加工工程における加圧時間(第3要因)に関係している。これにより、製造装置20の制御パラメータを調整した場合の影響範囲をさらに詳細に知ることができ、より一層速やかに製造ライン2を復旧させることができる。
【0079】
また、図4における1層目の因果モデルは、因果情報に含まれる複数の要因のうち、一部の複数の要因を抜き出した簡略化された因果モデルである。本実施形態では、2層目の一部の項目である代表項目のみを製造ライン2上の複数の製造装置20の配置に関連付けて配置し、代表項目間の因果関係を示す矢印で結んで示している。1層目の因果モデルを確認することで、製造ライン2上の複数の製造装置20間に跨ったトラブルの原因(要因)を俯瞰的に確認して、確認すべき規模を把握することができる。
【0080】
制御部11は、このような簡略化した因果モデルを、2層目又は2層目及び3層目とは別に、因果情報に含まれる複数の要因のうち、一部の複数の要因を抜き出して表示するようにしてもよい。
【0081】
なお、本実施形態では、3層構成の因果モデルを例示したが、少なくとも2層目の因果モデルが表示される構成であればよい。
【0082】
(4.管理装置10を用いた管理)
図5は、図1に示すシステム1に含まれる管理装置10の表示部13に表示される監視画面の一例を示す説明図である。図5の例では、矯正装置21の状態を示す情報として、「加圧力」「ねじれ」「たわみ」の情報が表示されている。また、曲げ加工装置24の状態を示す情報として、「金型形状」「加圧力」「下死点」「曲げ精度」の情報が表示されている。状態は、過去のデータの分布曲線に重ねて直近のデータを表示している。図5の例では、直近のデータを星印にて示している。
【0083】
製造ライン2上の何れかの製造装置でトラブルが発生すると、担当者は、製造ライン2を停止させ、監視画面にてトラブルが発生した製造装置20の状態を確認する。ここでは、曲げ加工装置24にてトラブルが発生した場合を説明する。
【0084】
担当者は、まず、監視画面より、曲げ加工装置24の「曲げ精度」が過去のデータの平均値から大きく外れていることを確認する。次に、操作部14を操作して、表示部13に図4に示す因果モデルを表示させる。先ず、1層目の因果モデルを用いて、複数の製造装置20間に跨ったトラブルの原因を俯瞰的に確認して、確認すべき規模を把握する。
【0085】
次に、2層目の因果モデルを用いて、曲げ加工装置24の「曲げ精度」の影響元の要因となる、曲げ加工装置24内部の項目、つまり、「曲げ精度」よりも前段にあり、「曲げ精度」と矢印で結ばれている項目を確認する。データにて確認できる「金型形状」「加圧力」「下死点」等のついては監視画面で確認する。データで確認できないものは、曲げ加工装置24に出向いて確認する。
【0086】
図5に示す監視画面では、「金型形状」「下死点」に、直近のデータが分布の平均値近くに位置しているので、問題なしと判断する。この場合、「金型形状」「下死点」の影響元の要因となる項目(「摩耗変形」「金型温度」「硬度」の確認を行う必要はない。
【0087】
一方、「加圧力」は、直近のデータが分布の平均値より外れているので、「加圧力」が「曲げ精度」の影響元の要因と特定する。影響元の要因を特定すると、曲げ加工装置24の「加圧力」の調整により影響のある制御パラメータを3層目の相関図を関連付けられた線で確認し、影響の範囲を把握する。
【0088】
その後、曲げ加工装置24の「加圧力」を調整し、曲げ加工装置24を動作させて動作確認を行う。曲げ加工装置24の「加圧力」を調整しても、動作に問題がある場合は、曲げ加工装置24の「加圧力」の影響元の要因となる項目を2層目の因果モデルで確認する。2層目の因果モデルには、曲げ加工装置24の「加圧力」の影響元の要因となる項目が、他の製造装置20を含めて示されているので、矯正装置21の「ねじれ」「たわみ」が、曲げ加工装置24の「加圧力」の影響元の要因であることが確認できる。そこで、担当者は、監視画面より、矯正装置21の「ねじれ」「たわみ」の状態を確認する。
【0089】
ここで、図5に示すように、矯正装置21の「ねじれ」が過去のデータの平均値から大きく外れていることを確認すると、矯正装置21の「ねじれ」が、曲げ加工装置24の「
曲げ精度」の影響元の要因であると考える。そして、矯正装置21の「ねじれ」の影響を受けて矯正装置21の「加圧力」も過去のデータの平均値から外れていることを考慮して、矯正装置21の「加圧力」が、曲げ加工装置24で発生したトラブルの真の原因であると特定する。
【0090】
真の原因を特定すると、続いて、矯正装置21の「加圧力」を変えることで影響のある制御パラメータを3層目の相関図に関連付けられている線で確認し、影響の範囲を把握する。
【0091】
その後、矯正装置21の「加圧力」を調整し、矯正装置21、搬送装置22、カット加工装置23、曲げ加工装置24を動作させて、曲げ加工装置24の動作を確認する。動作確認後、問題無いことが確認できると、製造ライン2の動作を再開させる(復旧完了)。
【0092】
(5.管理装置10の動作)
前述したように、制御部11は、表示部13に表示した因果モデルに対して、以下に記載する付加的動作を実行するようにしてもよい。
【0093】
1)制御部11は、第1加工工程および前記第2加工工程における製造データから、複数の要因の間の相関度を求め、相関度を記憶部12に記憶させる。そして、制御部11は、相関度を表した因果モデルを表示部13に表示させる。制御部11は、所定値以上の前記相関度で結ばれる前記複数の要因の間の関係を強調して表示させる。これにより、工程間(製造装置20間)に跨ったトラブルの原因の関係性をより容易に把握できる。
【0094】
2)制御部11は、原因を探る項目の指定を受け付け、指定された項目から、該項目の原因となる別工程にある項目までを繋ぐ矢印を強調して表示する。これにより、工程間(製造装置20間)に跨ったトラブルの原因の関係性をより容易に把握できる。
【0095】
つまり、制御部11は、操作部(入力部)より第2要因の入力を受け付け、因果情報に基づき、入力された第2加工工程における第2要因に影響を与える第1加工工程における第1要因に繋がる線を強調して表示させる。これにより、より速やかに真の原因を特定して、製造ライン2を復旧させることができる。
【0096】
また、制御部11は、操作部(入力部)より第1要因の入力を受け付け、管理装置10は、第1要因の入力を受け付ける入力部と、因果情報に基づき、入力された第1加工工程における第1要因の影響を受ける第2加工工程における第2要因に繋がる線を強調して表示させる。これにより、因果モデルにおいて、指定した第1要因に関連のある第21要因が強調して表示されるので、後工程に影響が出る範囲を把握することができる。
【0097】
図6は、原因を探る項目が指定され、項目間を繋ぐ矢印が強調表示された因果モデルの2層目および3層目の一例を示す図である。図6の例では、2層目の因果モデルにおいて、第2要因に相当する曲げ加工装置24の「加圧力」が指定され、曲げ加工装置24の「加圧力」から矯正装置21の「ねじれ」「加圧力」までを結ぶ線L1上の矢印が強調表示されている。
【0098】
矯正装置21の「ねじれ」の直近のデータが「たわみ」よりも中央値から離れた状態である場合に、制御部11は相関度の高い「ねじれ」を通る矢印のラインを強調表示する。また、逆に、「たわみ」の直近のデータが「ねじれ」よりも中央値から離れた状態である場合は、相関度の高い「たわみ」を通る矢印のラインを強調表示する。
【0099】
3)制御部11は、調整する項目の指定を受け付け、指定された項目から、該項目を調
整した場合に影響がおよぶ項目までを繋ぐ矢印を強調して表示する。これにより、調整を行った場合に影響のおよぶ範囲を容易に把握できる。線で結ぶ範囲は、2層目の因果モデル内であってもよいが、3層目の相関図を含めて結ぶようにしてもよい。
【0100】
図7は、調整する項目が指定され、項目間が強調表示された因果モデルの一例を示す図である。調整する項目として矯正装置21の「加圧力」が指定されると、制御部11は、図7に示すように、2層目の因果モデルにおいて、矯正装置21の「加圧力」から曲げ加工装置24の「硬度」「下死点」「加圧力」までを結ぶ矢印L2を強調表示する。さらに、制御部11は、2層目の因果モデルにおける曲げ加工装置24の「下死点」「加圧力」から、これらを調整した場合に影響が及ぶ3層目の相関図の「下死点位置(目標)」「金型速度(目標)」「加圧力(目標)」までを結ぶ矢印L3を強調表示する。このとき、図7に示すように、調整にて影響が出る度合いが異なる場合は、度合いの大きい経路の検討・確認が先に行われるように、線を太くするなどしてもよい。
【0101】
4)制御部11は、表示部13に因果モデルを表示することに代えて、因果モデルを表示するための情報を用いて、原因を探る項目の指定を受け付け、指定された項目の原因となる別工程にある項目を表示する。
【0102】
つまり、記憶部12は、第1製造装置に対応する第1加工工程における不具合事象の第1要因の項目と、第1要因の影響を受ける、複数の製造装置のうちの第2製造装置に対応する第2加工工程における不具合事象の第2要因の項目とが、複数の加工工程に跨って関係していることを示す因果情報を記憶している。操作部(入力部)14より第2要因の入力を受け付けると、因果情報に基づき、入力された第2加工工程における第2要因に影響を与える第1加工工程における第1要因を提示する。提示の方法は、表示部13に表示する以外に、音声にて出力する方法等でもよい。
【0103】
図8は、第2要因である原因を探る項目の指定を受け付け、受け付けた項目の影響元となる第1要因の項目を表示する画面の一例を示す図である。図8に示すように、トラブルが発生した工程、例えば「曲げ加工」、トラブルの内容、例えば「曲げバラツキ」を入力する。これらが入力されると、制御部11は、記憶部12の因果情報を用いて、工程内の原因と、別工程の原因とを表示する。工程内の原因および別工程の原因は、蓄積したデータを基に、関連性の高い項目を上位に優先して表示してもよい。
【0104】
(6.主な効果)
製造ライン2における任意の製造装置で発生した不具合事象の要因が工程間に跨っている場合でも、経験によらず、因果モデルを用いて速やかに原因を特定することが可能となる。これにより、製造ライン2を速やかに復旧させることができ、生産計画を安定させることができる。
【0105】
〔ソフトウェアによる実現例〕
管理装置10(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の制御部11としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0106】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0107】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記
録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0108】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0109】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知
能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0110】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0111】
1 システム
10 管理装置
2 製造ライン
3 PLC
4 LANケーブル
10 監視装置
11 制御部
12 記憶部
13 表示部
14 操作部
20 製造装置
21 矯正装置
22 搬送装置
23 カット加工装置
24 曲げ加工装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8