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特開2022-185866不定形石材の湿式乱張り構造、及び不定形石材の湿式乱張り工法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185866
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】不定形石材の湿式乱張り構造、及び不定形石材の湿式乱張り工法
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20221208BHJP
   E04F 13/14 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
E04F13/08 101H
E04F13/08 101J
E04F13/14 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093760
(22)【出願日】2021-06-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年3月19日 株式会社エクスナレッジ発行「建築知識四月号 第六三巻 通巻七九七号 80~81頁」にて公開
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆之
(72)【発明者】
【氏名】武田 力
(72)【発明者】
【氏名】木村 隆介
【テーマコード(参考)】
2E110
【Fターム(参考)】
2E110AA23
2E110AA42
2E110AB04
2E110CA03
2E110CA23
2E110DA09
2E110DA12
2E110DB14
2E110DC09
2E110DC25
2E110DD16
2E110GA33W
2E110GB02Z
2E110GB03Z
2E110GB23Z
2E110GB24Z
(57)【要約】
【課題】壁の壁面からの不定形石材の剥離を抑制しつつ、施工性を向上することを目的とする。
【解決手段】不定形石材の湿式乱張り構造は、壁10の壁面10Sに取り付けられる下地メッシュ30と、下地メッシュ30の上から壁面10Sに裏込め材50を介して張り付けられる複数の不定形石材20と、不定形石材20に設けられ、下地メッシュ30に引っ掛けられる石引き金物22と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁の壁面に取り付けられる下地メッシュと、
前記下地メッシュの上から前記壁面に裏込め材を介して張り付けられる複数の不定形石材と、
前記不定形石材に設けられ、前記下地メッシュに引っ掛けられる石引き金物と、
を備える不定形石材の湿式乱張り構造。
【請求項2】
前記壁面から突出する複数のアンカーを備え、
前記下地メッシュは、前記壁面と間隔を空けた状態で前記複数のアンカーに取り付けられる、
請求項1に記載の不定形石材の湿式乱張り構造。
【請求項3】
壁の壁面に取り付けられる下地メッシュの上から前記壁面に裏込め材を介して不定形石材を張り付けるとともに、前記不定形石材に設けられた石引き金物を前記下地メッシュに引っ掛ける、
不定形石材の湿式乱張り工法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不定形石材の湿式乱張り構造、及び不定形石材の湿式乱張り工法に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の形状、及び大きさに成形された複数の石材(以下、「定形石材」という)を、モルタル等の裏込め材を介して、壁の壁面に張り付ける湿式石張り工法が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
この種の湿式石張り工法では、壁の壁面に、水平方向に延びる複数の流し鉄筋を、上下方向に所定の間隔(ピッチ)を空けて取り付け、これらの流し鉄筋に定形石材に取り付けられた石引き金物を引っ掛ける。これにより、壁の壁面からの定形石材の剥離が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-252243号公報
【特許文献2】特開昭63-247465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の湿式石張り方法では、定形石材の高さに応じて、複数の流し鉄筋の上下方向のピッチが設定される。そのため、上記の湿式石張り工法によって、形状や大きさが異なる不定形の石材(以下、「不定形石材」という)を壁の壁面に乱張りする場合、定形石材の周囲に、石引き金物を引っ掛け可能な流し鉄筋が存在しない可能性がある。
【0006】
この対策として、例えば、流し鉄筋のピッチを狭くすることが考えられるが、この場合、流し鉄筋の本数が増加する。そのため、壁の壁面に対する流し鉄筋の取り付け作業に手間がかかり、施工性が低下する可能性がある。
【0007】
本発明は、上記の事実を考慮し、壁の壁面からの不定形石材の剥離を抑制しつつ、施工性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の不定形石材の湿式乱張り構造は、壁の壁面に取り付けられる下地メッシュと、前記下地メッシュの上から前記壁面に裏込め材を介して張り付けられる複数の不定形石材と、前記不定形石材に設けられ、前記下地メッシュに引っ掛けられる石引き金物と、を備える。
【0009】
請求項1に係る不定形石材の湿式乱張り構造によれば、壁の壁面には、下地メッシュが取り付けられる。この下地メッシュの上から複数の不定形石材が裏込め材を介して壁の壁面に張り付けられる。また、下地メッシュには、不定形石材に設けられた石引き金物が引っ掛けられる。この石引き金物によって、壁の壁面からの不定形石材の剥離が抑制される。
【0010】
また、網目が細かい下地メッシュを壁の壁面に取り付けることにより、不定形石材であっても石引き金物を下地メッシュに容易に取り付けることができる。
【0011】
さらに、本発明の下地メッシュは、面状であるため、従来の湿式石張り工法のように、流し鉄筋間隔ごとにアンカーを打設して壁面に流し鉄筋を取り付ける方法と比較して、壁の壁面に対する取り付け箇所が低減される。したがって、下地メッシュの施工性が向上する。
【0012】
このように本発明では、壁の壁面からの不定形石材の剥離を抑制しつつ、施工性を向上することができる。
【0013】
請求項2に記載の不定形石材の湿式乱張り構造は、請求項1に記載の不定形石材の湿式乱張り構造において、前記壁面から突出する複数のアンカーを備え、前記下地メッシュは、前記壁面と間隔を空けた状態で前記複数のアンカーに取り付けられる。
【0014】
請求項2に係る不定形石材の湿式乱張り構造によれば、下地メッシュは、壁の壁面と間隔を空けた状態で、当該壁面から突出する複数のアンカーに取り付けられる。
【0015】
このように下地メッシュと壁の壁面との間に間隔を空けることにより、下地メッシュに、石引き金物を引っ掛け易くなる。したがって、施工性が向上する。
【0016】
また、下地メッシュと壁の壁面との間に間隔を空けることにより、不定形石材の裏込め材の厚み中央に下地メッシュが入ることになり、裏込め材のひび割れが抑制され、不定形石材の接着性が向上するとともに、大浴場などの水場や屋外の雨がかり部において発生し易い白華現象が抑止できる。
【0017】
さらに、従来の湿式石張り工法では、各流し鉄筋が、壁の壁面から突出するアンカーに取り付けられる。そのため、複数の流し鉄筋の上下方向のピッチを狭くすると、アンカーの本数も増加し、壁の壁面に対するアンカーの取り付け作業の手間も増加する。
【0018】
これに対して本発明の下地メッシュは、面状であるため、従来の湿式石張り工法のように、流し鉄筋間隔ごとにアンカーを打設して壁面に流し鉄筋を取り付ける方法と比較して、壁の壁面に設けるアンカーの本数を削減することができる。したがって、施工性がさらに向上する。
【0019】
請求項3に記載の不定形石材の湿式乱張り工法は、壁の壁面に取り付けられる下地メッシュの上から前記壁面に裏込め材を介して不定形石材を張り付けるとともに、前記不定形石材に設けられた石引き金物を前記下地メッシュに引っ掛ける。
【0020】
請求項3に係る不定形石材の湿式乱張り工法によれば、壁の壁面に取り付けられる下地メッシュの上から壁面に裏込め材を介して不定形石材を張り付けるとともに、不定形石材に設けられた石引き金物を下地メッシュに引っ掛ける。
【0021】
この際、網目が細かい下地メッシュを壁の壁面に取り付けることにより、不定形石材であっても石引き金物を下地メッシュに容易に取り付けることができる。
【0022】
さらに、本発明の下地メッシュは、面状であるため、従来の湿式石張り工法のように、流し鉄筋間隔ごとにアンカーを打設して壁面に流し鉄筋を取り付ける方法と比較して、壁の壁面に対する取り付け箇所が低減される。したがって、下地メッシュの施工性が向上する。
【0023】
このように本発明では、壁の壁面からの不定形石材の剥離を抑制しつつ、施工性を向上することができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明によれば、壁の壁面からの不定形石材の剥離を抑制しつつ、施工性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】一実施形態に係る湿式乱張り構造によって壁の壁面に乱張りされた複数の不定形石材を示す正面図である。
図2】一実施形態に係る湿式乱張り構造によって壁の壁面に乱張りされた複数の不定形石材を示す縦断面図である。
図3図2に示される不定形石材の施工過程を示す縦断面図である。
図4図2に示される不定形石材の施工過程を示す縦断面図である。
図5】アンカーに対する下地メッシュの取り付け構造の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係る湿式乱張り構造、及び不定形石材の湿式乱張り工法について説明する。
【0027】
(不定形石材)
図1には、本実施形態に係る湿式乱張り構造によって、壁10の壁面10Sに乱張りされた複数の不定形石材20が示されている。複数の不定形石材20は、形状及び大きさが異なる不定形状(乱形状)の石材とされている。これらの不定形石材20は、例えば、天然石材や人工石材とされている。
【0028】
(下地メッシュ)
複数の不定形石材20は、下地メッシュ30の上から裏込め材50を介して壁10の壁面10Sに張り付けられている。下地メッシュ30は、ステンレスや鉄等の金属製のワイヤメッシュとされている。また、下地メッシュ30は、予め格子状に接合(溶接)された複数の縦筋30A及び横筋30Bを有している。この下地メッシュ30の網目Rの大きさは、不定形石材20よりも小さくされている。
【0029】
下地メッシュ30は、壁10の壁面10Sに沿って配置され、壁10の壁面10Sから突出する複数のアンカー12に取り付けられている。複数のアンカー12は、壁10の高さ方向及び幅方向に間隔を空けて配置されている。また、隣り合うアンカー12の間には、下地メッシュ30の複数の網目Rが配置されている。
【0030】
図2に示されるように、下地メッシュ30は、壁10の壁面10Sと間隔を空けた状態で、複数のアンカー12に取り付けられている。複数のアンカー12は、例えば、壁10の壁面10Sに打ち込まれたあと施工アンカーとされている。これらのアンカー12の突出方向の先端側に、下地メッシュ30の縦筋30A及び横筋30Bの少なくとも一方が溶接等によって接合されている。
【0031】
また、下地メッシュ30の下部は、床40から上方へ突出する複数のアンカー42に取り付けられている。複数のアンカー42は、床40に打ち込まれたあと施工アンカーとされている。また、複数のアンカー42は、壁10の幅方向に間隔を空けて配置されている。これらのアンカー42の突出方向の先端側(上端側)に、下地メッシュ30の縦筋30A及び横筋30Bの少なくとも一方が溶接等によって接合されている。
【0032】
なお、下地メッシュ30は、規格品でも良いし、特注品でも良い。
【0033】
壁10は、鉄筋コンクリート造とされており、床40から立ち上げられている。この壁10は、例えば、浴室(大浴場)の壁とされており、その壁面10Sの下部が防水層14によって防水されている。そのため、本実施形態のアンカー42は、壁10の下部ではなく、床40に設けられている。しかし、壁10の下部には、アンカー12と同様のアンカーを設け、当該アンカーに下地メッシュ30を取り付けることも可能である。
【0034】
なお、本実施形態では、壁10が浴室の壁とされているが、壁10は、浴室の壁に限らず、他の壁でも良い。また、壁10は、鉄筋コンクリート造等の湿式の壁に限らず、乾式の壁であっても良い。
【0035】
(裏込め材)
複数の不定形石材20は、下地メッシュ30の上から裏込め材50を介して壁10の壁面10Sに張り付けられている。裏込め材50は、例えば、モルタルやグラウト、セメントペーストとされる。
【0036】
裏込め材50は、下地メッシュ30の各網目Rに充填されるとともに、各不定形石材20の裏面20Aと下地メッシュ30との間に充填されている(塗り込まれている)。換言すると、裏込め材50は、複数の不定形石材20と壁10の壁面10Sとの間に、隙間なく充填されている(塗り込まれている)。また、裏込め材50は、隣り合う不定形石材20の目地Mにも充填されている。
【0037】
なお、裏込め材50には、必要に応じて混和材を添加しても良い。
【0038】
(石引き金物)
複数の不定形石材20には、石引き金物22がそれぞれ設けられている。石引き金物22は、ステンレスや鉄等の金属製の線材とされている。この石引き金物22は、例えば、不定形石材20の上端部20Uに設けられている。
【0039】
具体的には、図3に示されるように、不定形石材20の上端部20Uには、取付穴24が形成されている。この取付穴24に石引き金物22の一端側を挿入した状態で接着剤等の充填材を充填することにより、不定形石材20の上端部に石引き金物22が固定されている。
【0040】
石引き金物22の他端側は、フック状に屈曲されており、下地メッシュ30の縦筋30A、横筋30B、又は縦筋30Aと横筋30Bとの交差部に引っ掛けられている。これにより、例えば地震時に、不定形石材20が壁10の壁面10Sから剥離等することが抑制されている。また、不定形石材20には、2つの石引き金物22が設けられている。これにより、例えば地震時に、不定形石材20が壁10の壁面10Sから剥離等することがさらに抑制されている。
【0041】
なお、本実施形態では、下地メッシュ30の横筋30Bが縦筋30Aの上に配置されている。換言すると、複数の横筋30Bと壁10の壁面10Sとの間に、複数の縦筋30Aが配置されている。これにより、縦筋30Aよりも横筋30Bに石引き金物22を引っ掛け易くなっている。
【0042】
また、不定形石材20には、少なくとも1つの石引き金物22を設けることができる。また、石引き金物22は、不定形石材20の上端部に限らず、例えば、不定形石材20の側端部等に設けても良い。
【0043】
(不定形石材の湿式乱張り工法)
次に、本実施形態に係る不定形石材の湿式乱張り工法の一例について説明する。
【0044】
図3に示されるように、先ず、壁10の壁面10Sに複数のアンカー12を打ち込むとともに、床40の上面に複数のアンカー42を打ち込む。次に、下地メッシュ30を壁10の壁面10Sと間隔を空けた状態で、複数のアンカー12,42に取り付ける。
【0045】
より具体的には、下地メッシュ30の縦筋30A、横筋30B、又は縦筋30Aと横筋30Bとの交差部を、複数のアンカー12の突出方向の先端側に溶接等によって接合する。また、下地メッシュ30の下部における縦筋30A及び横筋30Bを、複数のアンカー42に溶接等によって接合する。なお、アンカー12には、接合強度の観点から、下地メッシュ30の縦筋30Aと横筋30Bとの交差部を接合することが望ましい。
【0046】
次に、壁10の壁面10Sに、下地メッシュ30の上から鏝等によって裏込め材50を、隙間なく、かつ、略均一の厚みで塗り込む。なお、壁10の壁面10Sには、接着増強剤を塗布しておくことが望ましい。
【0047】
次に、不定形石材20を下地メッシュ30上に仮置きし、隣り合う他の不定形石材20との間隔(目地M)等を調整する。この際、必要に応じて、電動工具等やハンマーによって不定形石材20の形状(外形)を調整する。
【0048】
次に、壁10の壁面10Sから不定形石材20を取り外し、不定形石材20に石引き金物22を取り付ける。具体的には、不定形石材20の上端部20Uに、図示しない電動ドリル等によって取付穴24を形成する。また、取付穴24に石引き金物22の一端側を挿入した状態で、接着剤等の充填材を充填する。この手順を繰り返すことにより、不定形石材20に複数の石引き金物22を取り付ける。
【0049】
次に、不定形石材20の裏面20Aに裏込め材50を塗り込み、図4に示されるように、下地メッシュ30上の所定値に不定形石材20の裏面20Aを張り付ける。この際、ハンマー等によって不定形石材20を叩くことにより、不定形石材20を壁10の壁面10Sに隙間なく張り付ける。また、隣り合う不定形石材20の目地Mにはみ出た裏込め材50によって、当該目地Mを塞ぐ。
【0050】
なお、隣り合う不定形石材20の目地Mを塞ぐ裏込め材50が不足する場合は、不定形石材20の上から絞り袋等によって目地Mに裏込め材50を充填する。
【0051】
次に、ペンチ等によって石引き金物22の他端側を屈曲させ、不定形石材20の周辺の下地メッシュ30の縦筋30A、横筋30B、又は縦筋30Aと横筋30Bとの交差部に引っ掛ける。この際、石引き金物22がガタ付かないように、石引き金物22の他端側を、下地メッシュ30の縦筋30A又は横筋30Bに隙間なく引っ掛ける。
【0052】
以上の手順を繰り返すことにより、壁10の壁面10Sに下地メッシュ30及び裏込め材50を介して複数の不定形石材20を乱張りする。
【0053】
なお、本実施形態に係る不定形石材の湿式乱張り工法は、上記の手順に限らず、例えば、必要に応じて手順を適宜入れ替えても良い。また、例えば、上記の手順には、他の手順を追加しても良いし、上記の手順から不要な手順を省略しても良い。
【0054】
(作用及び効果)
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0055】
本実施形態によれば、壁10の壁面10Sには、下地メッシュ30が取り付けられている。この下地メッシュ30の上から複数の不定形石材20が裏込め材50を介して壁10の壁面10Sに張り付けられている。また、下地メッシュ30には、不定形石材20に設けられた石引き金物22が引っ掛けられている。この石引き金物22によって、例えば地震時に、壁10の壁面10Sからの不定形石材20の剥離が抑制される。
【0056】
また、網目Rが細かい下地メッシュ30を壁10の壁面10Sに取り付けることにより、不定形石材20であっても石引き金物22を下地メッシュ30に容易に取り付けることができる。特に、網目Rの大きさを不定形石材20の大きさ(外形)よりも小さくすることにより、不定形石材20の石引き金物22を下地メッシュ30により確実に取り付けることができる。
【0057】
さらに、下地メッシュ30は、面状であるため、従来の湿式石張り工法のように、流し鉄筋間隔ごとにアンカーを打設して壁面に流し鉄筋を取り付ける方法と比較して、壁10の壁面10Sに対する取り付け箇所が低減される。したがって、下地メッシュ30の施工性が向上する。
【0058】
このように本実施形態では、壁10の壁面10Sからの不定形石材20の剥離を抑制しつつ、施工性を向上することができる。
【0059】
また、下地メッシュ30は、壁10の壁面10Sと間隔を空けた状態で、当該壁面10Sから突出する複数のアンカーに取り付けられている。
【0060】
このように下地メッシュ30と壁10の壁面10Sとの間に間隔を空けることにより、下地メッシュ30の縦筋30A、横筋30B、又は縦筋30Aと横筋30Bとの交差部に、石引き金物22を引っ掛け易くなる。したがって、施工性が向上する。
【0061】
また、下地メッシュ30と壁10の壁面10Sとの間に間隔を空けることにより、不定形石材20の裏込め材50の厚み中央に下地メッシュ30が入ることになり、裏込め材50のひび割れが抑制され、不定形石材20の接着性が向上するとともに、大浴場などの水場や屋外の雨がかり部において発生し易い白華現象が抑止できる。
【0062】
さらに、従来の湿式石張り工法では、各流し鉄筋が、壁の壁面から突出するアンカーに取り付けられている。そのため、複数の流し鉄筋の上下方向のピッチを狭くすると、アンカーの本数も増加し、壁の壁面に対するアンカーの取り付け作業の手間も増加する。
【0063】
これに対して本実施形態の下地メッシュ30は、面状であるため、従来の湿式石張り工法のように、流し鉄筋間隔ごとにアンカーを打設して壁面に流し鉄筋を取り付ける方法と比較して、壁10の壁面10Sに設けるアンカー12の本数を削減することができる。したがって、施工性がさらに向上する。
【0064】
(変形例)
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0065】
上記実施形態では、下地メッシュ30がアンカー12に溶接されている。しかし、アンカー12に対する下地メッシュ30の取り付け方法(接合方法)は、適宜変更可能である。例えば、図5に示される変形例では、下地メッシュ30における縦筋30Aと横筋30Bとの交差部に、アンカー12に突き当てられている。
【0066】
アンカー12には、一対のナット60が取り付けられている。一対のナット60は、下地メッシュ30の交差部の両側に配置されており、一対の座金62を介して当該交差部を両側から挟み込んでいる。これにより、下地メッシュ30がアンカー12に取り付けられている。このように一対のナット60等を用いることにより、アンカー12に下地メッシュ30を容易に取り付けることができる。
【0067】
また、上記実施形態では、下地メッシュ30が複数のアンカー12を介して壁10の壁面10Sに取り付けられている。しかし、下地メッシュ30は、アンカー12に限らず、例えば、アングル等のブラケットを介して壁10の壁面10Sに取り付けられても良い。
【0068】
また、上記実施形態では、下地メッシュ30がワイヤメッシュとされている。しかし、下地メッシュ30は、ワイヤメッシュに限らず、例えば、金網やエキスパンドメタル等であっても良い。
【0069】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0070】
10 壁
10S 壁面
12 アンカー
20 不定形石材
22 石引き金物
30 下地メッシュ
50 裏込め材

図1
図2
図3
図4
図5