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特開2022-185869画像記録装置、制御方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185869
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】画像記録装置、制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
B41J2/01
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093763
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 純一
(72)【発明者】
【氏名】溝口 慶範
(72)【発明者】
【氏名】山田 顕季
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA06
2C056EB13
2C056EB27
2C056EB36
2C056EC07
2C056EC12
2C056EC35
2C056EC41
2C056EC75
2C056HA58
(57)【要約】      (修正有)
【課題】カセットごとの搬送位置のばらつきを考慮して画像を記録することが可能な画像記録装置を提供すること
【解決手段】画像記録装置は記録材を付与するための複数の記録素子が、記録媒体が搬送される搬送方向と交差する配列方向に並べられた記録手段と、記録手段によって画像を記録するための記録媒体を保持する複数のカセットとを備え、複数のカセットのそれぞれについて、配列方向における、給紙された記録媒体の記録位置のずれに関する位置情報を取得し、少なくとも1つの記録素子を含む記録素子群それぞれについて、記録材の付与量のばらつきに関する補正情報を取得し、複数のカセットの中から、給紙元となるカセットを選択し、切り替え前のカセットおよび切り替え候補のカセットの位置情報と、補正情報と、に基づいて、記録媒体の単位領域に対して付与される記録材の量を補正し、画像の記録の際に、給紙元のカセットを選択されたカセットに切り替える。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録材を付与するための複数の記録素子が、記録媒体が搬送される搬送方向と交差する配列方向に並べられた記録手段と、
前記記録手段によって画像を記録するための記録媒体を保持する複数のカセットと、
前記複数のカセットのそれぞれについて、前記搬送方向に対して交差する方向における、給紙された記録媒体の記録位置のずれに関する位置情報を取得する第1取得手段と、
少なくとも1つの記録素子を含む記録素子群それぞれについて、記録材の付与量のばらつきに関する補正情報を取得する第2取得手段と、
前記複数のカセットの中から、給紙元となるカセットを選択する選択手段と、
前記第2取得手段により取得された前記補正情報に基づいて、記録媒体の単位領域に対して付与される記録材の量を補正する補正手段と、
画像の記録の際に、給紙元のカセットを前記選択手段により選択されたカセットに切り替える切り替え手段と、
を備え、
前記補正手段は、切り替え前のカセットおよび切り替え候補のカセットの前記位置情報と、前記補正情報と、に基づいて、記録材の量を補正することを特徴とする画像記録装置。
【請求項2】
前記補正手段は、切り替え候補の複数のカセットの前記位置情報に基づいて記録材の量を補正する補正量を決定することを特徴とする請求項1に記載の画像記録装置。
【請求項3】
前記補正手段は、前記配列方向において隣接する記録素子について、前記補正手段による記録材の補正量の変化が所定の閾値より大きくなる変化点を特定し、
給紙元のカセットを切り替えた場合に生じる付与量の差分であって、前記変化点に隣接する領域に対する付与量の差分を小さくするように前記補正量を決定することを特徴とする請求項1または2に記載の画像記録装置。
【請求項4】
前記補正手段は、画像の記録指示に応じて記録材の付与量を補正することを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の画像記録装置。
【請求項5】
前記複数のカセットのそれぞれについて保持される記録媒体の量を取得する第3取得手段をさらに有し、
前記補正手段は、切り替え前のカセットに保持される量と前記画像の記録指示に基づいて特定された記録に必要な量とに基づいて、記録材の付与量を補正することを特徴とする請求項4に記載の画像記録装置。
【請求項6】
前記補正手段は、切り替え前のカセットに保持される記録媒体の量が前記画像の記録指示に基づいて特定された記録に必要な量よりも多い場合、切り替え候補のカセットの前記位置情報に基づかずに、記録材の付与量を補正することを特徴とする請求項5に記載の画像記録装置。
【請求項7】
前記補正情報を記憶する記憶手段をさらに備えることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の画像記録装置。
【請求項8】
前記記録手段を用いて記録されたパターンを読み取った結果に基づいて前記補正情報を生成する生成手段を更に備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の画像記録装置。
【請求項9】
前記複数の記録素子は、記録材としてインクを吐出する吐出素子であることを特徴とする請求項1から8の何れか1項に記載の画像記録装置。
【請求項10】
記録材を付与するための複数の記録素子が、記録媒体が搬送される搬送方向と交差する配列方向に並べられた記録手段と、
前記記録手段によって画像を記録するための記録媒体を保持する複数のカセットと、
を備える画像記録装置のカセット切り替え方法であって、
前記複数のカセットのそれぞれについて、前記搬送方向に対して交差する方向における、給紙された記録媒体の記録位置のずれに関する位置情報を取得する第1取得工程と、
少なくとも1つの記録素子を含む記録素子群のそれぞれについて、記録材の付与量のばらつきに関する補正情報を取得する第2取得工程と、
前記複数のカセットの中から、給紙元となるカセットを選択する選択工程と、
前記第2取得工程において取得された前記補正情報に基づいて、記録媒体の単位領域に対して付与される記録材の量を補正する補正工程と、
画像の記録の際に、給紙元のカセットを前記選択工程において選択されたカセットに切り替える切り替え工程と、
を備え、
前記補正工程において、切り替え前のカセットおよび切り替え候補のカセットの前記位置情報と、前記補正情報と、記録材の量を補正することを特徴とする制御方法。
【請求項11】
請求項10に記載の制御方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のカセットを備える画像記録装置、制御方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット方式などの画像記録装置が知られている。図1に示す画像記録装置は、記録ヘッド8を備え、それぞれインクを吐出する吐出口が配列されている。この記録ヘッドの下を記録媒体Sが搬送ローラ7によって搬送され、吐出口からインクが吐出することにより記録される。このようなインクジェット方式の画像記録装置では、インクを吐出する吐出口の製造時のバラつきによって、記録媒体上に吐出されるインク量が変わる。これにより出力された記録物に濃度ムラを生じる。この濃度ムラを補正するような画像処理を行う方法が提案されている。
【0003】
特許文献1には、以下のような技術が記載されている。記録ヘッドの各吐出口からインクを吐出させて記録媒体に形成したパターンに基づいて演算された各吐出口の濃度特性を補正するための補正データを求める。各吐出口に対応したアドレスに記憶する補正RAMと、各吐出口に対応して順次入力される画像データに対応したアドレスを発生するカウンタを保持する。カウンタによって発生されるアドレスを補正RAMに入力し、補正RAMに記憶された各吐出口の補正データに基づいて、各吐出口に対応して順次入力される画像データを補正することが記載されている。これにより、吐出口の特性を含めた総合的な濃度補正を行うことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1-129667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数のカセットを保持し、記録媒体をセットすることができる記録装置が知られている。また、カセットの記録媒体がなくなった場合、カセットを切り替えて記録することができる。これをオートカセットチェンジ機能と呼ぶ。
【0006】
一方、複数のカセットのそれぞれについて、搬送される記録媒体の位置にばらつきが生じるため、記録媒体上に所望の画像が記録されない可能性がある。
【0007】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、カセットごとの搬送位置のばらつきを考慮して画像を記録することが可能な画像記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明に係る画像記録装置は、
記録材を付与するための複数の記録素子が、記録媒体が搬送される搬送方向と交差する配列方向に並べられた記録手段と、
前記記録手段によって画像を記録するための記録媒体を保持する複数のカセットと、
前記複数のカセットのそれぞれについて、前記搬送方向に対して交差する方向における、給紙された記録媒体の記録位置のずれに関する位置情報を取得する第1取得手段と、
少なくとも1つの記録素子を含む記録素子群それぞれについて、記録材の付与量のばらつきに関する補正情報を取得する第2取得手段と、
前記複数のカセットの中から、給紙元となるカセットを選択する選択手段と、
前記第2取得手段により取得された前記補正情報に基づいて、記録媒体の単位領域に対して付与される記録材の量を補正する補正手段と、
画像の記録の際に、給紙元のカセットを前記選択手段により選択されたカセットに切り替える切り替え手段と、
を備え、
前記補正手段は、切り替え前のカセットおよび切り替え候補のカセットの前記位置情報と、前記補正情報と、に基づいて、記録材の量を補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、カセットごとの搬送位置のばらつきを考慮し、ユーザの所望の画像を記録可能な画像記録装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係るインクジェット方式の画像記録装置を模式的に示す図
図2】本実施形態に係る記録システムを示す図
図3】本実施形態に係る画像記録装置が実行する画像処理の構成を示すブロック図
図4】(a)および(b)は、吐出量が等しい記録ヘッドのドット配置パターンを説明する図
図5】(a)および(b)は、吐出量が異なる記録ヘッドのドット配置パターンを説明する図
図6】(a)および(b)は、図5の記録ヘッドにHS処理を行ったドット配置パターンを説明する図
図7】オートカセットチェンジ機能のフローチャート
図8】カセット毎の記録媒体の位置情報に応じて記録位置を変更することを示す模式図
図9】記録ヘッドと補正情報と記録媒体との関係を示す図
図10】(a)~(c)は補正情報を生成する際のフローチャート
図11】オートカセットチェンジが発生した際の課題を説明する模式図
図12】オートカセットチェンジを考慮した補正をした際の効果を説明する模式図
図13】複数カセットが異方向にズレており、かつ複数回のオートカセットチェンジを考慮した補正をした際の効果を説明する模式図
図14A】複数カセットが同方向にズレており、かつ複数回のオートカセットチェンジを考慮した補正をした際の効果を説明する模式図
図14B】複数カセットが同方向にズレており、かつ複数回のオートカセットチェンジを考慮した補正をした際の効果を説明する模式図
図15】補正情報を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る本発明を限定するものではなく、また本実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0012】
<第1実施形態>
以下より、第1の実施形態について説明する。なお、以下の記載は画像記録装置(プリンタ)本体内部の画像処理を想定して説明を行うが、あくまで実施形態の1つの形態を例として示したものであり、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
尚、本実施形態では、記録材としてインクを吐出する、いわゆるインクジェット方式の画像記録装置について説明するが、これに限られない。記録材を付与する方法はインクジェット方式に限られず、記録素子は吐出素子でなくてもよい。また、記録媒体として用紙を用いて説明するが、これに限られない。
【0014】
本実施形態に係る画像記録装置は、給紙のための複数のカセットを有する。ここで、複数のカセットを保持する画像記録装置1のそれぞれのカセットにおいて、メカ精度のばらつきが生じる場合がある。カセットには色々なサイズの記録媒体が設定できるようになっており、各記録媒体を設定した際に記録媒体のサイズを規定位置に合わせるガイドが存在する。そのガイドは記録媒体の裁断ばらつきなどを考慮して多少の余裕を持たせていることや、製造の際のばらつきによって、誤差が生じる。具体的には、図1に示すy方向に数mmの単位のズレが生じる。このため、記録物の左右の余白量などに偏りが発生したり、記録媒体からはみ出して記録されてしまうことがある。
【0015】
これを防ぐため、カセット毎に記録媒体位置の調整値を設定する機能がある。この調整値を以下、記録媒体の位置調整値と呼ぶ。位置調整値は、予め既定したメカ精度のばらつきなどを考慮した記録媒体の中心位置に対して、y方向にずれている量とする。この位置調整値を考量して記録データを記録する吐出口位置を変更することで記録領域のy方向のズレを補正することができる。
【0016】
ここで、前述したように、吐出されるインク量のばらつきを補正するための濃度ムラ補正を行う必要があり、一定の吐出口群単位に濃度ムラ補正を行う。そのため、吐出口の位置と画像データ上で吐出した位置を合わせる必要がある。
【0017】
記録するカセットが予め決まっている場合は、カセットのばらつきを考慮し、濃度ムラ補正データを生成することが可能である。ただし、前述したように画像記録装置には濃度ムラ補正を行った後の量子化済みデータで保持される。このため、オートカセットチェンジ機能が動作し、記録中にカセットが変更された場合には、切り替え前のカセットでの位置ズレを考慮して濃度補正された記録データが記録されることになる。このため、切り替え前のカセットと、切り替え後のカセットの記録媒体の位置のずれによっては、吐出口位置と濃度ムラを補正するための画像データ上での位置との関係がずれることで正しく補正が行われず、記録物の品質が低下する。以下、切り替え前のカセットと切り替え後のカセットの記録媒体の位置のずれを考慮して画像を記録する記録装置について説明する。
【0018】
(インクジェット記録装置の説明)
図1(a)は、本実施形態に係るインクジェット方式の画像記録装置1(以下、記録装置1)の内部構成図である。図1(a)において、x方向(紙面水平方向)は記録媒体の搬送方向、y方向(紙面垂直方向)は後述する記録ヘッド8において吐出口が配列する配列方向であり記録媒体の搬送方向に対して垂直方向、z方向は鉛直方向を示す。なお、本実施形態に係る記録装置1は、配列方向が搬送方向に対して垂直であるものとして説明を行うが、交差する方向であればよい。
【0019】
記録装置1は、記録部2とスキャナ部3を備える複合機であり、記録動作と読取動作に関する様々な処理を、記録部2とスキャナ部3とで個別にあるいは連動して実行することができる。スキャナ部3は、ADF(オートドキュメントフィーダ)とFBS(フラットベッドスキャナ)を備えており、ADFで自動給紙される原稿の読み取りと、ユーザによってFBSの原稿台に置かれた原稿の読み取り(スキャン)を行うことができる。なお、本実施形態に係る記録装置1は記録部2とスキャナ部3を併せ持った複合機であるものとして説明を行うが、スキャナ部3を備えなくてもよい。
【0020】
記録部2において、筐体4の鉛直方向下方の底部には、記録媒体(カットシートなどの用紙)Sを収容するための第1カセット5Aと第2カセット5B(以下、区別せずにカセット5と称する場合がある)とが着脱可能に設置されている。第1カセット5AにはA4サイズまでの比較的小さな記録媒体が、第2カセット5BにはA3サイズまでの比較的大きな記録媒体が、平積みに収容されている様子を示している。本実施形態では第1カセット5A、第2カセット5BともにA4サイズの記録媒体が収容されているものとする。
【0021】
本実施形態では給紙を行うカセット数は2であるものとして説明するが、3以上である構成としてもよい。第1カセット5A近傍には、収容されている記録媒体を1枚ずつ分離して給送するための第1給送ユニット6Aが設けられている。同様に、第2カセット5B近傍には、第2給送ユニット6Bが設けられている。記録動作が行われる際にはいずれか一方のカセットを給紙元として記録媒体Sが給送され、給送された記録媒体に記録ヘッド8から画像の記録が行われる。
【0022】
搬送ローラ7、排出ローラ12、ピンチローラ7a、拍車7b、ガイド18、インナーガイド19およびフラッパ11は、記録媒体Sを所定の方向に導くための搬送機構である。搬送ローラ7は、記録ヘッド8の上流側に配され、不図示の搬送モータによって駆動される駆動ローラである。ピンチローラ7aは、搬送ローラ7と共に記録媒体Sをニップして回転する従動ローラである。排出ローラ12は、記録ヘッド8の下流側に配され、不図示の搬送モータによって駆動される駆動ローラである。拍車7bは、排出ローラ12と共に記録媒体Sを挟持して搬送する。
【0023】
ガイド18は、記録媒体Sの搬送経路に設けられ、記録媒体Sを所定の方向に案内する。インナーガイド19は、y方向に延在する部材で湾曲した側面を有し、当該側面に沿って記録媒体Sを案内する。フラッパ11は、両面記録動作の際に、記録媒体Sが搬送される方向を切り替えるための部材である。排出トレイ13は、記録動作が完了し排出ローラ12によって排出された記録媒体Sを積載保持するためのトレイである。
【0024】
続いて、記録ヘッド8及び、記録媒体Sとの位置関係を図1(b)に示す。記録ヘッド8のそれぞれには、記録媒体Sの幅に対応した同じ種類のインクを吐出する複数の吐出口(記録素子)が配列した吐出口列が、1200dpiのピッチでx方向(所定方向)に配列されている。記録ヘッド8は、それぞれブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクを吐出する記録ヘッドである。これら複数種類のインクを吐出する記録ヘッド8が、図1のようにx方向に沿って並列することにより、本実施形態の記録ヘッドが形成されている。すなわち、本実施形態に係る記録ヘッド8は、吐出口が記録媒体の搬送方向に対して交差する方向に配置されたラインヘッドである。
【0025】
記録媒体Sは、搬送ローラ7(および他の不図示のローラ)がモータの駆動力によって回転することにより、図1のx方向に搬送される。記録媒体Sが搬送される間に、記録ヘッド8の複数の吐出口からは、記録媒体Sの搬送速度に対応した周波数で、記録データに従った吐出動作が行われる。これにより、各色のドットが記録データに対応して所定の解像度で記録され、記録媒体Sの1ページ分の画像が形成される。
【0026】
なお、本実施形態はインク色毎に記録ヘッドを備える例を用いているが、1つの記録ヘッドから複数色のインクを吐出する形態であってもよい。さらに、1つの吐出基板上に複数色のインクに対応した吐出口列を配列した形態であってもよい。
【0027】
記録ヘッド8が待機位置にあるとき、記録ヘッド8の吐出口面8aは、図1のようにキャップユニット10によってキャップされている。記録動作を行う際は、後述する記録コントローラ202によって、吐出口面8aがプラテン9と対向するように記録ヘッド8の向きが変更される。プラテン9は、y方向に延在する平板によって構成され、記録ヘッド8によって記録動作が行われる記録媒体Sを背面から支持する。
【0028】
インクタンクユニット14は、記録ヘッド8へ供給される4色のインクをそれぞれ貯留する。インク供給ユニット15は、インクタンクユニット14と記録ヘッド8を接続する流路の途中に設けられ、記録ヘッド8内のインクの圧力及び流量を適切な範囲に調整する。本実施形態では循環型のインク供給系を採用しており、インク供給ユニット15は記録ヘッド8へ供給されるインクの圧力と記録ヘッド8から回収されるインクの流量を適切な範囲に調整する。
【0029】
メンテナンスユニット16は、キャップユニット10とワイピングユニット17を備え、所定のタイミングにこれらを作動させて、記録ヘッド8に対するメンテナンス動作を行う。
【0030】
図2は、記録装置1の制御構成を示すブロック図である。記録装置1の制御構成は、主に記録部2を統括する記録エンジンユニット200と、スキャナ部3を制御するスキャナエンジンユニット300と、記録装置1全体を制御するコントローラユニット100によって構成されている。
【0031】
記録エンジンユニット200の各種機構は、コントローラユニット100のメインコントローラ101の指示に従って記録エンジンインタフェース(I/F)105を介して制御される。スキャナエンジンユニット300の各種機構は、スキャナエンジンI/F109を介してコントローラユニット100のメインコントローラ101によって制御される。以下に制御構成の詳細について説明する。
【0032】
コントローラユニット100において、CPUにより構成されるメインコントローラ101は、ROM107に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM106をワークエリアとしながら記録装置1全体を制御する。例えば、ホストI/F102またはワイヤレスI/F103を介してホスト装置400からジョブが入力データとして入力されると、メインコントローラ101は入力データをRAM106に保存する。その後、入力データを解析し、ジョブ処理に必要なジョブ属性およびページ処理に必要なページ属性をRAM106に保存する。
【0033】
メインコントローラ101の指示に従って、記録カセット選択部110はRAM106に保存されたジョブ属性やページ属性と、同様にRAM106に保存されたカセット5A、5Bの記録媒体情報を参照して記録可能なカセットを1つ以上選択する。第1カセット5Aと第2カセット5Bの記録媒体情報は、記録媒体のサイズ、タイプ、残量といったものであり、カセットに備えられたセンサによって検出した値がRAM106に保存される。なお、ユーザが後述の操作パネル104を介して再設定することも可能である。
【0034】
量子化データ生成部111は記録カセット選択部110によって選択されたカセットに対応した量子化データを生成するため、画像処理部108にデータの量子化を要求する。画像処理部108はラスタ画像化処理、補正処理、量子化処理によって量子化データを生成する。補正処理では、記録媒体の位置調整値を利用する。位置調整値とは、記録ヘッド8と平行方向に記録媒体位置のずれ量を設定し、吐出口に対する量子化データの生成位置を調整し、記録位置を調整するための位置情報であり、第1カセット5Aと第2カセット5Bは、それぞれ位置調整値を持つ。位置調整値は工場から出荷される際に設定されRAM106に保存される。なお、ユーザが後述の操作パネル104を介して位置調整値を再設定することも可能である。
【0035】
画像処理部108は生成したラスタ画像の各画素に対して、量子化データ生成部111から指示受けた給紙元のカセットの位置調整値を参照して記録ヘッド8での記録位置を特定し、各吐出口に対する記録位置の補正処理を行う。画像処理部108は、補正後のラスタ画像を量子化して量子化データを生成し、スプールデータとしてRAM106に保存する。
【0036】
メインコントローラ101は、量子化データ生成後、ジョブのデータをRAM106から削除する。メインコントローラ101は記録エンジンI/F105を介して、第1カセット5Aと第2カセット5Bに格納された記録媒体に関する情報を取得し、記録を行うカセットを決定する。続いて、メインコントローラ101は、記録に必要な各種パラメータと決定したカセットに対応した量子化データを記録エンジンユニット200へ送信する。各種のパラメータはRAM106に保存した、記録媒体のサイズや記録媒体の位置調整値といった、ジョブ属性やページ属性の一部を含む。
【0037】
なお、記録装置1は無線通信や有線通信を介してホスト装置400から量子化データを取得しても良いし、記録装置1に接続された外部記憶装置(USBメモリ等)から量子化データを取得しても良い。無線通信や有線通信に利用される通信方式は限定されない。例えば、無線通信に利用される通信方式として、Wi-Fi(Wireless Fidelity)(登録商標)やBluetooth(登録商標)が適用可能である。また、有線通信に利用される通信方式としては、USB(Universal Serial Bus)等が適用可能である。また、例えばホスト装置400から読取コマンドが入力されると、メインコントローラ101は、スキャナエンジンI/F109を介してこのコマンドをスキャナ部3に送信する。
【0038】
操作パネル104は、ユーザが記録装置1に対して入出力を行うための入出力インタフェースである。ユーザは、操作パネル104を介してコピーやスキャン等の動作を指示したり、記録モードを設定したり、記録装置1の情報を認識したりすることができる。
【0039】
記録エンジンユニット200において、CPUにより構成される記録コントローラ202は、ROM203に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM204をワークエリアとしながら、記録部2が備える各種機構を制御する。コントローラI/F201を介して各種コマンドや画像データが受信されると、記録コントローラ202は、これを一旦RAM204に保存する。記録ヘッド8が記録動作に利用できるように、記録コントローラ202は画像処理コントローラ205に、保存した量子化データを記録データへ変換させる。記録データが生成されると、記録コントローラ202は、ヘッドI/F206を介して記録ヘッド8に記録データに基づく記録動作を実行させる。この際、記録コントローラ202は、搬送制御部207を介して図1に示す給送ユニット6A、6B、搬送ローラ7、排出ローラ12、フラッパ11を駆動して、記録媒体Sを搬送する。記録コントローラ202の指示に従って、記録媒体Sの搬送動作に連動して記録ヘッド8による記録動作が実行され、記録処理が行われる。
【0040】
ヘッドキャリッジ制御部208は、記録装置1のメンテナンス状態や記録状態といった動作状態に応じて記録ヘッド8の向きや位置を変更する。インク供給制御部209は、記録ヘッド8へ供給されるインクの圧力が適切な範囲に収まるように、インク供給ユニット15を制御する。メンテナンス制御部210は、記録ヘッド8に対するメンテナンス動作を行う際に、メンテナンスユニット16におけるキャップユニット10やワイピングユニット17の動作を制御する。
【0041】
スキャナエンジンユニット300においては、メインコントローラ101が、ROM107に記憶されているプログラムや各種パラメータに従って、RAM106をワークエリアとしながら、スキャナコントローラ302のハードウェアリソースを制御する。これにより、スキャナ部3が備える各種機構は制御される。例えば、コントローラI/F301を介してメインコントローラ101がスキャナコントローラ302内のハードウェアリソースを制御することにより、ユーザによってADFに搭載された原稿を、搬送制御部304を介して搬送し、センサ305によって読み取る。そして、スキャナコントローラ302は読み取った画像データをRAM303に保存する。なお、記録コントローラ202は、上述のように取得された画像データを記録データに変換することで、記録ヘッド8に、スキャナコントローラ302で読み取った画像データに基づく記録動作を実行させることが可能である。
【0042】
なお、本実施形態の記録装置1あるいはホスト装置400の1以上の機能を実現するために記録装置1のメインコントローラ101、記録コントローラ202、スキャナコントローラ302またはホスト装置400のコンピュータがプログラムを実行しても良い。例えば、ネットワークや各種記憶媒体を介して記録装置1またはホスト装置400にプログラムが提供され、それらに備えられたコンピュータ(CPUやMPU等)がプログラムを読み出して機能を実行してもよい。或いは各種エレメントにプログラムを実行させるようにしてもよい。また、このプログラムは、1つのコンピュータで実行されても、複数のコンピュータの連動により実行されてもよい。加えて、上述した処理の全てをソフトウェアで実現する必要はなく、処理の一部または全部をASIC等のハードウェアで実現するようにしてもよい。さらには、1つのCPUで全ての処理を行う形態に限らず、複数のCPUが適宜連携をしながら処理を行う形態としてもよいし、いずれかの処理を1つのCPUが実行し、その他の処理を複数のCPUが連携しながら処理を行う形態としてもよい。
【0043】
なおオフィスなどのビジネスシーンにおいて、複数人が同時に画像記録装置を使用する場合がある。また、機密保持の観点で画像記録装置にセキュリティカード等をかざすことで記録を開始するシステムがある。このようなシステムにおいては、画像記録装置内に多くの記録データを保持しておく必要がある。RGBのデータ形式で記録物の画像データを保持すると、容量が多くなるため、多くのRAMやHDDのメモリ容量を持つ必要があり、コストが増大する。そのため、記録装置1は記録データを量子化した量子化済みデータを保持することで、少ないメモリ容量で多くの記録データを保持できる。量子化済みデータとは、記録ヘッドで記録するための色変換などの画像処理を施した後に量子化処理されたデータを表す。
【0044】
(全体フロー概要説明)
続いて、図3を参照して記録装置1が実行する記録処理の全体処理について説明する。図3に示す処理は、記録装置1のメインコントローラ101が実行するものとして説明するが、上述したように、1つ以上の処理がメインコントローラ101以外の処理を行ってもよい。また、メインコントローラ101はホスト装置400から入力画像データを受け取った際に図3に示す処理が開始される。
【0045】
なお、入力する画像データは、本実施形態では、モニタの表現色であるsRGB等の色空間座標中の色座標(R,G,B)を示すデータである。
【0046】
S3001において、メインコントローラ101は、各8ビットのR、G、Bの入力画像データを、マトリクス演算処理や三次元LUTを用いた処理等の既知の手法によって、画像記録装置の色再現域の画像データ(R',G',B')に変換する。本実施形態では、三次元ルックアップテーブル(3D LUT)を用い、これに補間演算を併用して変換処理を行う。
【0047】
続いて、S3002において、メインコントローラ101は、S3001で処理されたR',G',B'の各8ビットの画像データを画像記録装置で用いるインクの色信号データによる画像データに変換する。本実施形態ではブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクを用いることから、RGB信号の画像データは、K、C、M、Yの各8ビットの色信号からなる画像データに変換される。この色変換も、上述の入力色変換処理部と同様、三次元ルックアップテーブルに補間演算を併用して行う。なお、他の変換手法として、上述と同様、マトリクス演算処理等の手法を用いることもできる。また、インクの数はK、C、M、Yの4色を例に挙げたが、S3002のインク色変換において、濃度の薄いライトシアン(Lc)やライトマゼンタ(Lm)やグレー(Gy)のインクなど、その他のインクを追加してもよい。
【0048】
続いて、S3003において、メインコントローラ101はTRC(Tone Reproduction Curve)処理を行う。S3003では、S3002で処理された各8ビットのインク色信号から成る画像データに対して処理を行う。ここでは、インク色毎に後述するS3007で記録されるドットの数を調整するための補正を行う。記録媒体に記録されるドット数と、そのドット数で実現される記録媒体上の光学濃度とは線形関係にないため、関係を線形にすべく各8ビットの画像データを補正して記録媒体に記録されるドット数を調整する。入力データに対する出力データに変換する方法として、1次元のルックアップテーブル(LUT)がある。本実施形態では、TRC処理部の補正パラメータとしてLUTを用いて説明する。
【0049】
続いて、S3004で、メインコントローラ101はヘッドシェーディング(以下、HS)処理を行う。HS処理では、インク色信号の画像データを入力して、インク色ごとにそれぞれ8ビットデータを、記録ヘッド8を構成する各吐出口の吐出量(付与量)に応じたインク色信号の画像データに変換する処理を行う。入力データに対する出力データに変換する方法として、1次元のルックアップテーブル(LUT)がある。本実施形態では、HS処理部の補正パラメータとしてLUTを用いて説明する。
【0050】
続いて、S3005でメインコントローラ101は量子化処理を行う。量子化処理では、メインコントローラ101はS3004で処理された各8ビット256値のインク色の画像データに対して量子化処理を行い、記録「1」または非記録「0」を表す1ビットの2値データを生成する。量子化処理の出力は、記録媒体の単位面積あたりのインク滴の数または吐出回数としてもよく、記録「1」または非記録「0」の1ビットの2値データに限定されるものではない。本実施形態では、2値データの場合を用いて説明する。量子化方法には、誤差拡散法やディザ法があるが、他の任意の量子化方法を適用することができる。
【0051】
続いて、画像処理されたデータを保持し、記録するまでのS3006~S3008の処理について説明する。
【0052】
S3006において、メインコントローラ101はエンコード処理として、S3005で処理された2値データをエンコードし、より多くのデータを画像記録装置内で保持できるようデータ圧縮する。2値データの圧縮方法としてJBIG圧縮など任意の公知の圧縮技術を適用することができる。
【0053】
S3007において、メインコントローラ101はスプール処理を行う。S3007では、S3006で圧縮処理された圧縮済みの画像データをスプールする。記録命令によって、メインコントローラ101は圧縮済みの画像データを読み出し、後述するS3008の処理に使用する。
【0054】
S3008では、メインコントローラ101はデコード処理として、圧縮済みの画像データの圧縮を元の2値データに変換する。2値データは色毎に制御され、既定の記録ヘッドのそれぞれの色の吐出口に対し、記録「1」または非記録「0」のデータとして送られ、記録される。
【0055】
以上の処理ののち、2値データに基づいて記録ヘッド8からインクの吐出を行い、記録処理を行う。
【0056】
(HS処理3004)
続いて、複数の吐出口間の吐出特性のばらつきに起因する濃度ムラを補正するためのHS処理について、図4から図6を参照して詳細を説明する。
【0057】
図4(a)、図4(b)は、吐出基板上の各吐出口において、吐出量が全て同じ場合の記録ヘッドと、そこからと出されたインクによって表現されるドット配置パターンについて説明する図である。
【0058】
図4(a)の401は、第1のインクであるKインクを吐出する記録ヘッドの吐出口列を示している。同図では、説明および図示の簡略化のため、記録ヘッドにおける吐出口列のうち、8つの吐出口のみが示されている。
【0059】
図4(b)は、図4(a)の吐出口列401を用いて、記録媒体402に記録された50%デューティのベタ画像の記録状態を示す図である。すなわち、100%デューティに比べて、2つに1つの割合でインクドットが吐出されるモデルである。記録媒体402において、図4(a)の左側の4吐出口4011を用いて記録される領域を第1エリア4021、右側の4吐出口4012で記録される領域を第2エリア4022と称する。第1エリア4021および第2エリア4022は、記録素子から記録材が付与される単位領域の一例である。なお、本図では、個々の吐出口の大きさとそれぞれの吐出口によって記録されるドットの大きさを、等しい大きさで示しているが、これは説明上両者の対応をとるためであって、実際にこれらの大きさが等しいわけではない。また、各吐出口からの吐出量は吐出口径以外の原因によっても異なる場合があるため、必ずしも吐出口径が異なるとは限らないが、本図では、吐出量が大きい吐出口を大きな円で示して説明する。
【0060】
吐出口列401の8つの吐出口40111~40114、40121~40124は、全て標準的な量のインクを標準的な方向に吐出可能であり、記録媒体402には同じ大きさのドットが一定の間隔で記録される。一方、図5(a)、図5(b)は、吐出基板上の各吐出口において、吐出量が吐出基板ごとに異なる場合の記録ヘッドと、そこから吐出されたインクによって表現されるドット配置パターンを表す図である。図5(a)は各記録ヘッドの吐出口を示す図であり、図5(b)は、図5(a)に示す吐出口を用いて、記録媒体402に記録された50%デューティのベタ画像の記録状態を示す図である。
【0061】
ここで、吐出口列401の8つの吐出口のうち、図中左側の4つの吐出口40111~40114は標準の吐出量、右側の4つの吐出口40121~40124は標準よりも多い吐出量であるとする。この吐出口列401のように吐出量にばらつきのある記録ヘッドを用いる場合、記録媒体402上に同じ色の画像を記録したとしても、領域によって異なる濃度になる場合がある。本図の場合、図中左側に示された4つの吐出口を用いて記録される領域(第1エリア4021)では、濃度が標準なベタ画像が記録される。一方、図中右側に示された4つ吐出口を用いて記録される領域(第2エリア4022)では、それぞれのドットが大きいため、第1エリア4021に比べて濃度が高いベタ画像が記録される。つまり、第1エリア4021と第2エリア4022とで、ベタの濃度が異なってしまう場合がある。
【0062】
このような吐出特性を有する記録ヘッドを用いる場合に、HS処理による画像データの補正が行われる。画像データの補正について図6(a)、図6(b)を参照して説明する。
【0063】
図6(a)に示す吐出口列401の吐出口のうち、右側の4つの吐出口40121~40124を一つの吐出口群(記録素子群)とし、それに対応する画像データに対して、濃度が低減するように補正が行われる。具体的には、右側の4吐出口40121~40124が記録するドットの数が、左側の4吐出口40111~40114が記録するドットの数よりも少なくなるように、ドットの記録「1」或いは非記録「0」を定めるドットデータ(2値データ)が生成される。
【0064】
図6(b)は、右側の4つの吐出口40121~40124でインクを50%デューティで記録するベタ画像の画像データに対し、HS処理を行った後に、記録媒体402に記録される画像を説明するための図である。図において、40211は吐出口40111により記録されたドット、40221は吐出口40121により記録されたドットを示している。
【0065】
例として、右側の4つの吐出口40121~10124から吐出されたドットの記録媒体上での面積が、左側の4つの吐出口40111~40114から吐出されたドットの記録媒体上での面積の2倍であると仮定する。この場合、前述のHS処理によって、右側の4つの吐出口40121~40124からの吐出回数を、左側の4つの吐出口40111~40114からの吐出回数の約1/2とする。すなわち、右側の4つの吐出口40121~40124からの吐出回数を2ドットから1ドットに減らすことで、記録媒体402に対する被覆面積をほぼ同等にすることができる。
【0066】
このように、HS処理では、記録媒体上の領域毎に検出される濃度がほぼ一様になるように、各吐出口群の各領域に記録されるドット数を1次元のルックアップテーブルを用いて画像データを調整する。この1次元ルックアップテーブルをHS補正テーブル(補正情報)と呼ぶことにする。
【0067】
なお、実際には、被覆面積と記録媒体上の領域ごとに検出される濃度は必ずしも比例関係になっていないが、本実施形態では、2倍の被覆面積のドットの数を1/2とする例を用いて説明する。
【0068】
以上述べたように、HS処理では、第1エリア4021における被覆面積の和が第2エリア4022の被覆面積の和となるように、記録されるドットの数が調整される。よって、第1エリア4021の光吸収特性によって観察される濃度が、第2エリア4022の光吸収特性によって観察される濃度と等しければ、両方のエリアの濃度はほぼ同色に見える。
【0069】
なお、このような吐出特性のばらつきは、例えば大、中、小の3段階のドットによって記録を行う4値の記録装置など、ドットの大きさを変更できる多値の記録装置においても生じることがある。従って、2値の記録装置に限らず3値以上の多値記録装置にも同様に適用することができる。
【0070】
(オートカセットチェンジ(ACC)機能)
続いて、図7のフローチャートを参照し、カセットが2つある場合のACCの処理手順を説明する。図7の処理は、メインコントローラ101が記録すべき画像データを受け付けた場合に処理が開始される(S701)。
【0071】
処理を開始すると、メインコントローラ101は図3で説明したように画像処理を実行し(S702)、圧縮されたデータをスプール(S703)する。
【0072】
続いて、メインコントローラ101は、記録命令を受けると、圧縮されていたデータをデコードし、カセットC1から記録媒体が給紙され記録を開始(S704)する。
【0073】
ここで、一度に記録する記録データ群を記録ジョブと呼ぶことにする。例えば、5ページのPDFデータや1ページのデータを5部記録などの場合、5ページ分のデータが1記録ジョブとして本体内で管理される。記録ジョブは、ユーザが使用するパソコンのような外部の情報処理装置からの記録指示に含まれる。
【0074】
S705では、記録ジョブの残枚数をAとし、カセットC1の記録媒体がなくなるかどうかを確認しながら、記録が継続される(S705、S706、S707、S705')。カセットC1の記録媒体がなくならないうちに記録ジョブの残枚数A=0になれば、当然のことながら記録終了となる。記録ジョブの残枚数A>0の状態で、カセットC1の記録媒体の残量が0になってしまった場合、すなわちカセットC1から記録媒体がなくなってしまった場合(S707でNo)には、カセットC2から記録媒体を給送して記録を開始する(S708)。
【0075】
カセットC2から給送して記録媒体に記録する場合にも、カセットC1の場合と同様の処理を行う(S709、S709'、S710、S711)。記録ジョブ残枚数Aが残っているにも関わらず、カセットC2の記録媒体の残量も0になった場合には、エラーを表示(S712)して図7の処理を終了する。図7の例では、カセットが2つの場合について説明したが、カセットが3つ以上ある場合であっても、セットされている記録媒体が同じサイズであれば、同様に次のカセットに切り替えて記録を継続することができる。
【0076】
このような複数のカセットを保持する画像記録装置のそれぞれのカセットにおいて、メカ精度のばらつきが生じる。カセットには色々なサイズの記録媒体が設定できるようになっており、各記録媒体を設定した際に記録媒体のサイズを規定位置に合わせるガイドが存在する。そのガイドは記録媒体の裁断ばらつきなどを考慮して多少の余裕を持たせていることや、製造の際のばらつきによって、誤差が生じる。具体的には、図1に示すy方向に数mmの単位でズレが生じる。その結果、フチあり記録をした際には、このカセットのばらつきにより、左右端の余白量が異なってしまい、成果物に影響を与える場合がある。記録媒体をはみ出して記録してしまい、記録物の情報欠落はもちろんのこと、フチなし記録に対応していない画像記録装置の場合には装置を汚してしまい、故障を引き起こす可能性もある。
【0077】
また、カセット毎にばらつきは異なるため、記録ヘッド8に対する記録媒体の位置がカセット毎に変わってしまう。これを防ぐため、カセット毎の記録媒体の位置の調整値を設定する機能がある。この調整値を以下、位置調整値と呼ぶ。この位置調整値は、予め既定したメカ精度のばらつきなどを考慮した記録媒体の中心位置に対して、y方向にずれている量とする。この位置調整値を考量して記録データを記録する吐出口位置を変更することでズレを防ぐことができる。
【0078】
図8の模式図を使って記録媒体位置の調整について説明する。カセット5Aから給紙された記録媒体を801とし、カセット5Bから給紙された記録媒体を802とする。それぞれの記録媒体に記録される領域を803、余白量を804として記載する。カセット5Aの位置調整値を805、カセット5Bの位置調整値を806とする。
【0079】
本実施形態では、カセットの位置調整値が左端を原点にしてプラス方向になるよう記載するが、原点はヘッドの中心でもよく、その場合プラスとマイナスの値が存在する。
【0080】
カセット5Aの位置調整値805がy=9mmとすると、位置調整値805と余白量804とを加算したy方向の位置に対応する記録ヘッド8の吐出口群807からインクが吐出され、記録される。
【0081】
また、カセット5Bに位置調整値806がy=3mmとすると、記録媒体位置はカセット5Aの記録媒体801に比べてy方向に-6mmずれた位置で記録媒体が搬送されるため、記録ヘッド8の吐出口群808で記録されるように制御する。
【0082】
これによって、各カセットの位置調整値をカセット毎に保持しておき、記録の際はカセットの位置調整値を考慮して記録する吐出口を調整することで余白量が同じになるように記録することが可能である。
【0083】
図3で説明した画像処理のS3004において、吐出口位置と画像位置を合わせて処理する必要がある。そのため、HS処理する際にはこの位置調整値を考慮して、記録される吐出口と画像の画素位置の関係を計算し、適用する補正情報を選択して処理する必要がある。
【0084】
図9に記録ヘッドと補正情報との関係を示す。記録ヘッド8の吐出口は予め既定の吐出口数で吐出口群(記録素子群)とされ、図9の901のように区切られる。それぞれの吐出口群ごとに、N個の補正情報902が設定される。記録される画像データ903を画像処理する際には、位置調整値904や余白量905を考慮して記録領域にあった補正情報を適用する必要がある。
【0085】
次に、図10(a)を参照して、補正情報を生成する処理について説明する。図10(a)の処理によって、予めすべての吐出口に対して補正情報が生成される。本図に示すプログラムは、コントローラユニット100のROM107に記憶されており、生成された補正情報もROM107に記憶される。
【0086】
S1001では、全吐出口が記録されるように、全吐出口に一様な一次色の階調パターンを各インク色で記録媒体に記録する。続いて、記録物をスキャナ等の光学センサで読み取ることで濃度を取得し、予め既定の吐出口数で吐出口群とされた領域毎に対し、階調特性を得ることができる(S1002)。
【0087】
その階調特性からそれぞれの領域毎に補正情報(補正テーブル)を生成する(S1003)。生成方法については、予め用意した階調特性と吐出量が紐づけられたテーブル等を用いて吐出量を推定し、吐出量の目標値に合わせるようにしても良いし、吐出量は推定せずに、既定の階調特性に合わせるようにしてもよい。
【0088】
ここで、図3で説明したように、HS処理がスプール前に行われることにより、ACCが発生した場合には、切り替え後カセットの位置調整値を考慮したHS補正は行われない。そのため、吐出口とHS補正との関係にズレが生じることで誤補正が発生し、濃度ムラが発生してしまう。
【0089】
図11を参照し、ACCが発生することにより、HS補正と吐出口との関係に不整合が生じ、誤補正が発生する場合の一例を説明する。図11の上部には吐出量が少ない吐出口群と吐出量の多い吐出口群を保持した記録ヘッド8を図示している。記録ヘッド8に記載の円1つが複数の吐出口群を表しており、本実施形態では1つの円を16吐出口で説明する。
【0090】
1101にはHS補正前の紙面上の濃度を示している。ACCで切り替えが発生する前の記録媒体位置に対し、中心を境に、右は、吐出量が多いインク滴で記録されるエリア、左は、吐出量が少ないインク滴で記録されるエリアであり、右側は濃度が高く、左側は濃度が低いことを表している。また、補正ターゲットを吐出量の中心とし、点線で表している。
【0091】
1102にはHS補正後の紙面上の濃度を示している。矢印で補正情報に基づいて決定される補正量を示し、矢印が上向きであれば吐出量を増加し、下向きであれば吐出量を減少するように補正する。32吐出口単位に一つのテーブルが適用され、ターゲットの濃度になるように、吐出量の多い右側は吐出発数を減らし、吐出量の少ない左側は吐出発数を増やすように調整することで実現している。
【0092】
なお、S3004で実行されるHS処理が実行されることで、補正情報は、1102に示すように、記録領域に対する吐出量の補正量として適用される。これによって、カセットを切り替える前は、位置調整値と対応した吐出口の位置に基づいて、記録領域に対する吐出量の補正量が適用される。ここで、カセットを切り替えて位置調整値が変化した場合、吐出口の位置がy方向における記録領域の位置に対して変化する。このため、記録領域に対する吐出量の補正量が吐出口と対応しなくなり、誤補正が発生する。
【0093】
次に、図15に補正情報の例を示す。図15の横軸に入力値、縦軸に出力値を表している。吐出量が大きい領域に関しては、吐出量の指令値(入力値)に対して実際に測定される濃度値(出力値)が小さくなるような補正情報を用意することで吐出発数を少なくすることができる。一方で、吐出量が小さい領域に関しては、入力値に対して出力値が大きくなるような補正情報を用意することで吐出発数を多くすることができる。これらの傾きをコントロールすることで、吐出発数をコントロールし、濃度を調整する。図11のおいては、矢印が長くなればなるほど、入力値に対して期待される濃度の測定値(吐出量中心)の傾きを1とした場合に、傾きの差が大きくなる。したがって、後述する図10(a)~図10(c)のS1003における補正情報の作成においては、S1001のHSパターンの記録の指令値と、S1002で読み取った実際の濃度の測定値から、ある吐出口について吐出量を判定することができる。また、指令値と測定値とを取得することで、図15に示すような補正情報を作成するための吐出口ごとの入力値に対する出力値の傾きを計算することができる。
【0094】
1103にはACCが発生した際の紙面上の濃度を示す。前述したように、既に切り替え前のカセットの位置調整値を考慮して、HS補正は行われており、カセット切り替え後の位置調整値は考慮してHS補正は行われない。しかしながら、カセット切り替え後の位置調整値を考慮して記録する吐出口は変更される。そのため、11031に示すように、画像に対して補正情報の補正量と補正方向は変わらないため、吐出量が少ない吐出口群に対して、吐出発数を減らす補正がかかる。このように、吐出量を増加すべき吐出口群に対して、吐出量を減少させたり、吐出量を減少すべき吐出口群に対して吐出量を増加させるような補正が誤補正である。誤補正を行うことでそのエリアの濃度が他のエリアと大きく変化し、濃度ムラが発生する。
【0095】
そこで、本実施形態に係る記録装置は予め吐出量差の大きい変化点を検知し、その変化点と切り替え前カセットの記録媒体の位置調整値と切り替え後カセットの記録媒体の位置調整値から算出される領域の補正量を低減する。これにより、補正情報の補正量の違いによって生じる画質の低下を抑制する。下記にその方法について説明する。
【0096】
図10(b)は、吐出量差の大きい変化点と替え前カセットの位置調整値と切り替え後の位置調整値を用いて補正情報を生成するフローを示す。
【0097】
まず、通常の補正情報の生成と同様にHSパターンを記録する(S1001)。図10(b)のS1001は、図10(a)のS1001と同様のため説明を省略する。その後、切り替え前カセットの位置調整値及び切り替え候補のカセットの位置調整値を取得(S1004、S1005)し、位置調整値の差分情報Xを取得(S1006)する。例えば、切り替え前カセットの位置調整値が9mmであり、切り替え後カセットの位置調整値が3mmである場合、切り替え前カセットに対して、-6mmという差分情報となる。
【0098】
次に図10(a)を参照して説明したように、HSパターンの読み取り、補正情報の生成を行う(S1002、S1003)。基本的に補正情報は記録ヘッド8の全幅に対して生成される。
【0099】
この時に、図11に示す濃度が大きく変わる変化点を特定する。この変化点は、隣接する単位領域の補正情報のそれぞれにおいて、濃度変化が大きく変わる点である。HSパターンを読み取った際のデータから検出しても良いし、ROMに格納された補正情報の補正量から検出しても良い。また、複数の吐出口が配列されたものを一つのチップとし、複数のチップを列に配置してラインヘッドとしているものもある。その場合、チップ間で吐出量のばらつきが大きくなりやすいため、そのチップの境界を予め変化点として保持しておいてもよい。図11図12の例では、点線によって区切られたy方向における位置が、変化点である。この変化点を境に、吐出量が大きい吐出口と、吐出量が小さい吐出口が隣接する場合に濃度が大きく変わるため、HSの補正量が大きく変わるということになる。
【0100】
隣接する単位領域の補正情報の補正量の差が大きければ大きいほど、オートカセットチェンジ機能によって、補正する領域がずれてしまった場合に誤補正が発生し、画質が低下する可能性がある。このため、複数の吐出口群において隣接する領域の濃度の差分値が所定の閾値以上の場合には、変化点及び切り替え前カセットと切り替え後の記録媒体の位置調整値の差分値を用いてHS補正を行う必要がある。
【0101】
図12は、本実施形態に係る画像記録装置の処理の結果の一例を表した模式図である。図10(b)のS1006で取得した切り替え前のカセットの記録媒体の調整位置の差分情報とS1007で取得した差分値情報とを用いて、補正情報を再作成(S1008)し、処理した結果が、1202に記載されている。
【0102】
なお、S1008で補正情報を再生成するとしているが、S1003で生成した補正情報は保持しておくことが望ましい。これは、同じサイズの記録媒体を入れるカセットの組み合わせを変えた際などにおいて切り替え前カセットと切り替え後カセットの関係や組み合わせが変わる可能性があるためである。切り替え前カセットと切り替え後カセットとの関係や組み合わせが変わるたびにHSパターンの記録、読み取りといった動作をするのは煩雑になる。このため、S1003で生成した補正情報を保持しておくことで、上記のようなサイズの異なる記録媒体の入れ替え等発生した場合に、S1008を再実行することで、切り替え前後のカセットの関係や組み合わせが変わった場合に対応することができる。
【0103】
図12の例では、切り替え前後のカセットの記録媒体の位置で破線の変化点からy方向で6mmずれることを想定しているため、切り替え前のカセットの補正情報において、変化点から-6mmの領域では補正を行わないよう、補正量が0に設定される。
【0104】
こうすることで、切り替え前のカセットで補正情報を適用すると、図11の1102と図12の1202とを比較して、全ての吐出口からの吐出量が均一になるようには補正されない。しかしながら、オートカセットチェンジが発生した場合、図12の1203に示すように、図11の1103と比べて隣接領域との濃度差分を小さくすることができる。
【0105】
一般的に、色差と知覚される色差の関係は下記のようになることが知られている。
【0106】
【表1】
【0107】

例えば、図11図12で示す吐出量小と吐出量大の吐出口から吐出した際の記録媒体上の濃度の差分値がターゲットに対して、それぞれΔEで=1.6とする。この場合、吐出量が小さい領域と大きい領域との濃度差(ΔE)はΔE=3.2となり、目視で知覚可能な濃度ムラとして認識される。
【0108】
図11に1103でオートカセットチェンジが発生した場合には、吐出量小の吐出口に対して、吐出発数を減らすため、ΔE=1.6下げるような補正がかかるため、隣接領域との濃度差はΔE=3.2となり、濃度ムラとして認識される。
【0109】
一方、図12の1202では、HS補正量を半分にしているため、ΔE=1.6の濃度差が残ってしまうことになるが、上記の表のように隣接比較でわずかに感じられるレベルである。また、1203でも補正を行わない領域を設けたことで、吐出量小の吐出口に対して、吐出発数を減らすことがなくなる。この結果ΔE=1.6となる。ΔE=1.6は隣接比較でわずかに感じられるレベルである。
【0110】
本実施形態では、図10(b)のS1108で補正情報を再作成した際に、変化点に対応する補正情報の補正量を0にした。しかしながら、補正量を予め生成されている補正情報の補正量よりも小さくしてもよい。これによっても、従来の場合と比較して切り替え後カセットの濃度ムラは軽減される。
【0111】
このように、本実施形態に係る画像記録装置は、吐出口列において吐出量の変化量が大きい変化点と、切り替え前後のカセットから給送される記録媒体の位置調整値の差分とに基づいて、カセットの切り替え前後の記録媒体上の変化点の位置変化を特定する。そして、記録媒体上での変化点の位置変化に対応する補正情報の補正量を弱めるまたは0にすることで、切り替え前後の最大濃度差を小さくする。これによって、視認される濃度ムラを減らすことができる。
【0112】
(変形例)
第1実施形態では、補正情報の生成時に濃度の変化点と切り替え前後のカセットの記録媒体の位置調整値とを考慮して補正情報を生成することで画像の品質の低下を防ぐ処理について説明した。変形例として、HS処理時にオートカセットチェンジを考慮して、図10(c)を用いて補正情報を生成する方法を記載する。
【0113】
オートカセットチェンジが発生するのは基本的には同じサイズであれば行われることを説明した。カセットC1~C4のように複数カセットある場合には、同じサイズの記録媒体が複数入っていることも考えられるし、カセットC1とC3に同じサイズの記録媒体、カセットC2、C4は別のサイズの記録媒体がセットされているということも考えられる。また、途中で各カセットにおいて記録媒体のサイズを変更される場合もある。この場合、補正情報の生成時に切り替え後カセットを想定することは難しい。
【0114】
そのため、HS補正処理時に想定される切り替え後カセットに対して、記録媒体の位置調整値を考慮して補正情報を変換することでカセットの切り替え前後で画像品質の低下が発生することを防ぐ。
【0115】
図10(c)のS1009において、複数枚の記録ページが一つの群なった記録指示(記録ジョブ)を受信する。
【0116】
S1004~S1008は第1実施形態と同じであるが、補正情報は予め生成されているため、HSパターンの記録や読み取りは行わない。
【0117】
S1008で補正情報を再生成としているが、第1実施形態でも説明したように、元の補正情報を直接上書きはせず、保持しておく。
【0118】
また、第1実施形態で説明した濃度の変化点は補正応報ルを生成する際に、吐出口の位置に対して決定するため、HS補正時に補正情報を変更する際にもその位置が変わることはない。このため、切り替え前カセットの記録媒体の位置調整値と切り替え後のカセット位置をその都度算出し、前述した濃度の変化点と共に第1実施形態と同様にして、補正情報の中から補正量を変更する領域を決定する。変更する領域では、予め生成されている補正情報の補正量よりも小さくなるように、再度生成される。一度決めた切り替え前カセットと切り替え後カセットの関係が変わらない限り、画像処理の都度、補正情報を再作成する必要はない。
【0119】
<第2実施形態>
第2実施形態では、切り替え候補のカセットが二つ以上ある場合に二回以上オートカセットチェンジ機能が発生することを考慮して補正情報を生成する場合について説明する。切り替え候補のカセットが二つ以上ある場合、それぞれの切り替え候補のカセットに記録媒体の位置調整値が設定されている。そのため、切り替え前カセットに対して切り替え候補のカセットそれぞれが記録媒体の位置調整値を考慮して補正情報を生成する必要がある。
【0120】
本実施形態では、切り替え候補のカセットが二つある場合に、切り替え前カセットに対して切り替え候補のカセットが異なる方向にズレている場合と同じ方向にずれている場合の補正情報の生成方法を説明する。
【0121】
まず図13を用いて、切り替え候補のカセットが二つある場合に、切り替え前のカセットに対して複数の切り替え候補のカセットがy方向で異なる方向にずれている場合について説明する。
【0122】
1301は切り替え前カセットから給紙された記録媒体の記録ヘッド8に対する記録媒体位置を示す。1302は切り替え候補のカセットC1から給送された記録媒体の記録媒体位置を示し、1303は切り替え候補のカセットC2から給送された記録媒体の記録媒体位置を示す。ここでは、切り替え前のカセットの記録媒体の位置調整値が9mmであり、切り替え候補のカセットC1の記録媒体の位置調整値が3mm、切り替え候補のカセットC2の記録媒体の位置調整値を21mmであるものとして説明を行う。
【0123】
1304はHS補正を行う前の切り替え前のカセットの記録媒体位置に対応する記録領域における吐出量からの吐出量を表している。点線の右側は吐出量が大きいためベタの濃度は高くなり、左側は吐出量が小さいため濃度が低くなる。吐出量中心の吐出口で吐出された際の濃度をターゲット濃度として補正情報を生成し、HS補正処理を行うことで濃度ムラを抑制する。
【0124】
ここでは、吐出量大で形成される領域とターゲット濃度との差をΔE=2.0 、吐出量小で形成される領域とターゲット濃度の差をΔE=2.0とする。吐出量大で形成される領域と吐出量小で形成される領域の差はΔE=4.0となる。
【0125】
1305は、切り替え前カセットと切り替え候補のカセットC1、切り替え前カセットと切り替え候補のカセットC2の記録媒体の位置調整値と第1実施形態で説明した濃度の変化点を考慮して生成した記録情報を表している。第1実施形態で説明したように、オートカセットチェンジを考慮した補正情報の生成のタイミングは記録情報の生成時でも、HS補正処理時でもよい。
【0126】
切り替え前カセットと切り替え候補のカセットC1の記録媒体の位置調整値と濃度の変化点を考慮して再生成した補正情報は破線から右側の一つ目の矢印で表されている。ここではオートカセットチェンジを考慮しない領域の補正量に対し、補正量を半分の量にしている。
【0127】
切り替え前カセットと切り替え候補のカセットC2の記録媒体の位置調整値と濃度の変化点を考慮して再生成した補正情報は点線から左側の二つの矢印で表されている。ここでもオートカセットチェンジを考慮しない領域の補正量に対し、補正量を半分の量にしている。これにより、切り替え前のカセットで記録された際の濃度ムラは最大でΔE=2.0に抑えることができる。
【0128】
1306は、切り替え候補のカセットC1に切り替わった際に記録される際の濃度を示している。6mm左にズレるため、点線の左6mmの領域で誤補正が発生するが、予めそれを考慮して補正情報を生成しているため、誤補正の量は半分の量に抑えられる。そのため、濃度ムラは最大隣接でΔE=3.0に抑えることができている。
【0129】
1307は、切り替え候補のカセットC2に切り替わった際に記録される際の濃度を示している。12mm右にズレるため、点線の右12mmの領域で誤補正が発生するが、1306と同様に予めそれを考慮して補正情報を生成しているため、誤補正の量は半分の量に抑えられる。そのため、この場合でも最大濃度差はΔE=3.0に抑えることができている。
【0130】
次に図14Aおよび図14Bを用いて、切り替え候補のカセットが二つある場合に、切り替え前のカセットに対して二つの切り替え候補のカセットがy方向で同じ方向にずれている場合について説明する。図14Aにおける1401に切り替え前カセットの記録ヘッド8に対する記録媒体位置を示している。1402には切り替え候補のカセットのC1の記録媒体位置を示し、1403には切り替え候補のカセットC2の記録媒体位置を示す。
【0131】
ここでは、切り替え前カセットの記録媒体の位置調整値が9mmであり、切り替え候補のカセットC1の記録媒体の位置調整値が12mm、切り替え候補のカセットC2の記録媒体の位置調整値を15mmとする。
【0132】
1404にHS補正処理前の切り替え前カセットに対応する記録領域における吐出口からの吐出量を表しており、図13で説明した1304と同様として説明する。
【0133】
1405は、切り替え前カセットと切り替え候補のカセットC1、切り替え前カセットと切り替え候補のカセットC2の記録媒体の位置調整値と第1実施形態で説明した濃度の変化点を考慮して生成した補正情報を表している。
【0134】
切り替え前カセットと切り替え候補のカセットC1の記録媒体の位置調整値と濃度の変化点を考慮して再生成した補正情報は点線から左側の一つ目の矢印で表されている。ここではオートカセットチェンジを考慮しない領域の補正量に対し、補正量を半分の量にしている。切り替え前カセットと切り替え候補のカセットC2の記録媒体の位置調整値と濃度の変化点を考慮して再生成した補正情報は点線から左側の二つの矢印で表されている。ここでもオートカセットチェンジを考慮しない領域の補正量に対し、補正量を半分の量にしている。このため、切り替え前カセットと切り替え候補カセットのそれぞれの位置調整値のズレの方向が同方向の場合には、位置調整値のズレが大きいほうのみを考慮すればよい。これによって、切り替え前のカセットで記録された際の隣接する記録領域の最大濃度差をΔE = 1.0に抑えることができる。
【0135】
しかしながら、この方法の場合、切り替え候補のカセットの中で記録媒体の位置調整値が小さいカセットC1で記録した場合に、濃度ムラが生じてしまう。一方、1407の切り替え候補のカセットC2で記録した場合、の濃度に示されるように最大濃度差をΔE=3.0に抑えることができる。一方、1406の切り替え候補のカセットC1で印字した場合、最大濃度差がΔE=4.0になる。
【0136】
切り替え前カセットに対して、ずれが小さい切り替え候補のカセットは、ずれが大きい切り替え候補のカセットの補正量を考慮したことにより、オートカセットチェンジの影響を受けない領域の補正量が小さくなり、隣接する領域の濃度差が付きやすくなる。
【0137】
そのため、図14Bのように大きいズレのカセットの補正量の低減率よりも小さいズレのカセットの補正量の低減率を大きくすることで解決できる。
【0138】
1408は上記を考慮して切り替え前カセットと切り替え候補のカセットC1、切り替え前カセットと切り替え候補のカセットC2の記録媒体の位置調整値と第1実施形態で説明した濃度の変化点を考慮して生成した補正情報を表している。
【0139】
図14Aの1405で変化点から一つ目の矢印が記載されていた切り替え候補のカセットC1の記録媒体位置を考慮した領域は1408では補正しない。
【0140】
更に左の矢印は切り替え候補のカセットC2を考慮した領域は図14Aの1405と同様にオートカセットチェンジを考慮しない領域の補正量に対し、補正量を半分の量にしている。これによって、切り替え前のカセットで記録された際の最大濃度差をΔE = 2.0に抑えることができる。
【0141】
1409の切り替え候補のカセットC1で記録した場合、最大濃度差がΔE=2.5となる。1410の切り替え候補のカセットC2で記録した場合、最大濃度差がΔE=2.0となり、どのカセットで記録した場合にも最大濃度差を小さくすることができ、人が視認した場合に濃度ムラを目立たなくすることができ、画質の低下を防ぐことができる。
【0142】
このように、切り替え候補のカセットが二つ以上ある場合に二回以上オートカセットチェンジ機能が発生することを考慮して補正情報を生成することで、オートカセットチェンジが発生した場合でもムラの発生を軽減することが可能である。
【0143】
<第3実施形態>
第3実施形態では、切り替え前のカセットと切り替え候補のカセットで補正量の重みづけを変える方法について説明する。
【0144】
第1実施形態および第2実施形態では切り替え前カセットと切り替え候補のカセットとから給送された記録媒体に記録した場合に発生する濃度ムラの程度が同じになるような補正方法について説明した。本実施形態では、スプールされている枚数と切り替え前カセットの記録媒体の残量を考慮し、補正情報の補正量の重みづけを行う。切り替え前カセットと切り替え候補のカセットの濃度ムラの程度を補正量に重みづけする方法について説明する。
【0145】
オートカセットチェンジを考慮した領域の補正量の低減率を切り替え前カセットと切り替え候補のカセットの濃度ムラがおおよそ均等になるようにした際の重みづけαを1とする。一方、オートカセットチェンジを考慮した領域の切り替え前カセットの記録領域における濃度ムラが完全に補正されるようにした際の重みづけを0とする。この場合、切り替え候補のカセットの補正量の低減率R2は切り替え前のカセットの補正量の低減率R1を使用して下記のような式で表すことができる。
R2= R1 × α ...(式1)
切り替え前カセットの記録媒体残量が100枚であり、既にスプールされている画像が記録媒体10枚分の場合に10枚の記録ジョブが入力されたとする。その場合、オートカセットが発生する確率は低い。そのため、オートカセットチェンジを考慮したHS補正領域に対し、重みづけαを0とする。そうすることで、切り替え候補のカセットの補正量の低減率R2は0となり、オートカセットチェンジを考慮しない領域と同じ量の補正量の補正処理を行うことができる。
【0146】
一方、切り替え前カセットの記録媒体の残量が100枚であり、既にスプールされている画像が記録媒体90枚分の場合に30枚の記録ジョブが入力されたとする。その場合、オートカセットチェンジが発生する可能性が高い。このため、αを1とし、オートカセットチェンジを考慮した補正量の低減率で補正情報を再生成して処理を行う。これによって、切り替え前後で発生する濃度ムラの差を低減することができる。
【0147】
また、途中で記録媒体が補給されることを考慮して、α=0.9などとしても良いし、記録媒体の残量数の検知精度により、実際にはばらつきが20枚程度あるとすると、120枚の可能性もあるため、α=0.8などとしても良い。
【0148】
このように、記録媒体の残量検知の確からしさによる記録媒体残量や記録媒体の補充などを考慮し、αを0~1の間で適用的に変動させることでより良質な記録物を提供することができる。
【0149】
<その他の実施形態>
上述した実施形態では、濃度補正量の変化点を特定し、変化点の位置に基づいて補正量を決定する例について説明した。しかしながら、補正量の決定においては、カセット切り替え前後の記録媒体の位置調整値と、補正情報とに基づいて補正量を決定すればよく、変化点を特定しなくてもよい。例えば、切り替え前後の記録媒体の位置調整値ごとに、補正情報に基づいて、カセット切り替え後で濃度差分が最小になる補正量の情報を特定し、カセット切り替え前後の補正量の情報の平均値から補正量を決定してもよい。あるいは、カセット切り替え前後で吐出量の補正量の符号(吐出量の増減)が切り替わる場合に、符号が切り替わる領域においては補正量を小さくするよう補正量を決定してもよい。これによって、カセット切り替えによって吐出量が大きい吐出口に対して吐出量を増やすよう誤補正したり、吐出量が小さい吐出口に対して吐出量を減らすよう誤補正することを防ぐことができる。
【0150】
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0151】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0152】
1:画像記録装置、5A、5B:カセット、8:記録ヘッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15