(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185870
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】光源制御装置、リソグラフィ装置、および物品製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20221208BHJP
H05B 47/20 20200101ALI20221208BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G03F7/20 521
H05B47/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093764
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康平
【テーマコード(参考)】
2H197
3K273
【Fターム(参考)】
2H197AA05
2H197BA02
2H197BA04
2H197BA10
2H197CA01
2H197CA05
2H197CA20
2H197CD02
2H197CD12
2H197CD13
2H197DC01
2H197DC12
2H197HA03
3K273PA02
3K273QA24
3K273QA36
3K273QA37
3K273SA08
3K273SA09
3K273SA35
3K273SA49
3K273SA50
3K273SA53
3K273SA60
3K273TA15
3K273TA28
3K273TA40
3K273UA22
3K273UA25
(57)【要約】
【課題】光源と該光源を駆動する駆動部との接触状態を判定することに関して、コストの点で有利な構成を提供する。
【解決手段】光源を制御する光源制御装置が提供される。該光源制御装置は、前記光源を駆動する駆動部と、前記駆動部の出力の電気特性を検出する検出部と、前記検出部により検出された前記電気特性に基づいて前記駆動部を制御する制御部とを有する。前記制御部は、前記電気特性の時間推移を示すトレンドデータを作成し、前記トレンドデータに基づいて、前記電気特性が所定の安定範囲を超えるタイミングを予測する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源を制御する光源制御装置であって、
前記光源を駆動する駆動部と、
前記駆動部の出力の電気特性を検出する検出部と、
前記検出部により検出された前記電気特性に基づいて前記駆動部を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、前記電気特性の時間推移を示すトレンドデータを作成し、前記トレンドデータに基づいて、前記電気特性が所定の安定範囲を超えるタイミングを予測する、ことを特徴とする光源制御装置。
【請求項2】
前記予測されたタイミングを、前記光源と前記駆動部との接続不良が生じるタイミングとして報知する報知部を更に有する、ことを特徴とする請求項1に記載の光源制御装置。
【請求項3】
前記トレンドデータは、前記電気特性の移動平均処理により作成される、ことを特徴とする請求項1または2に記載の光源制御装置。
【請求項4】
前記トレンドデータは、前記電気特性のフィルタ処理により作成される、ことを特徴とする請求項1または2に記載の光源制御装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記光源に印加される電力が一定になるように制御する定電力制御を行う、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の光源制御装置。
【請求項6】
前記電気特性は、前記駆動部の出力抵抗、出力電圧、出力電流のうちのいずれかである、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の光源制御装置。
【請求項7】
前記電気特性の推定正常範囲を求めるためのモデルを機械学習によって生成する、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の光源制御装置。
【請求項8】
前記制御部は、前記電気特性が前記モデルに基づいて求められた前記推定正常範囲を超えた後に前記検出部により検出された前記電気特性のトレンドデータを作成し、該トレンドデータに基づいて、前記電気特性が前記安定範囲を超えるタイミングを予測する、ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の光源制御装置。
【請求項9】
基板にパターンを形成するリソグラフィ装置であって、
請求項1から8のいずれか1項に記載の光源制御装置を有し、
前記光源制御装置によって制御される光源からの光を用いて前記基板上を露光することにより前記基板にパターンを形成する、ことを特徴とするリソグラフィ装置。
【請求項10】
請求項9に記載のリソグラフィ装置を用いて基板にパターンを形成する工程と、
前記パターンが形成された基板を加工する工程と、
を有し、前記加工された基板から物品を製造することを特徴とする物品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源制御装置、リソグラフィ装置、および物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスなどの製造工程(リソグラフィ工程)で用いられる装置の1つとして、基板を露光する露光装置がある。露光装置は、マスクに形成されたパターンの像を投影光学系を介して基板上の感光材(レジスト)に投影することにより、マスクのパターンを基板上の感光材に転写する。露光装置では、例えば波長365nmの光(i線)を用いて基板(感光材)を露光する場合、水銀ランプが光源として使用される。
【0003】
水銀ランプの点灯制御を実施するために、露光装置には点灯装置(光源制御装置)が搭載されている。点灯装置は、水銀ランプの電気特性値(電力、電圧、電流)を任意の値に設定し、水銀ランプの点灯状態を制御する。点灯装置は、電気特性値をリアルタイムで計測している。点灯装置は、水銀ランプを駆動する光源駆動回路(駆動部)を備え、光源駆動回路と水銀ランプとは、ケーブル、コネクタ、ねじ等の要素によって接続される。
【0004】
水銀ランプ点灯時、電流値は100[A]以上になるものが多く存在する。ところで、回路中の損失[W]は、抵抗[Ω]×電流[A]×電流[A]で示されることが基礎的なこととして知られており、これらは主に熱として消費される。つまり、前述のような高い電流値を想定した場合、光源駆動回路中に存在する微小抵抗の変動であっても、異常損失、つまり異常発熱に繋がり、点灯装置に致命的なダメージを与えてしまう可能性がある。
【0005】
前述した、ケーブル、コネクタ、ねじ等の要素は光源駆動回路中の微小抵抗成分になりうるため、高い電流値の光源駆動回路下において、これらに起因する抵抗値は厳密に管理される必要がある。例えば、特許文献1には、光源駆動回路とは別に、光源制御装置と光源の接続状態を監視するための専用の電気回路を構成することが記載されている。この電気回路は、コネクタ部の接続に緩みが生じたことによる電気的特性の変化を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された構成では、光源駆動回路と光源との接続状態を監視するための専用の電気回路が必要となり、コスト増につながる。また、水銀ランプのようなイグニッション時に超高圧(30kV~)がかかるような構成においては、絶縁距離の確保など、別の課題も生じうる。そのため、点灯装置で計測している電気特性値から接触状態が判定されることが望ましい。
【0008】
本発明は、光源と該光源を駆動する駆動部との接触状態を判定することに関して、コストの点で有利な構成を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面によれば、光源を制御する光源制御装置であって、前記光源を駆動する駆動部と、前記駆動部の出力の電気特性を検出する検出部と、前記検出部により検出された前記電気特性に基づいて前記駆動部を制御する制御部と、を有し、前記制御部は、前記電気特性の時間推移を示すトレンドデータを作成し、前記トレンドデータに基づいて、前記電気特性が所定の安定範囲を超えるタイミングを予測する、ことを特徴とする光源制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光源と該光源を駆動する駆動部との接触状態を判定することに関して、コストの点で有利な構成を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】光源と駆動部とがネジで締結された部分を示す図。
【
図3】光源と駆動部との接続構成の具体例を示す図。
【
図7】機械学習を用いたトレンドデータの作成について説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0013】
<第1実施形態>
図1を参照して、第1実施形態に係る光源装置1について説明する。光源装置1は、光を必要とする装置に対して光を供給する装置である。光源装置1は、例えば、光源制御装置2と、光源3とを含みうる。光源3は、水銀ランプ、LED等で構成されうるが、これらに限定されない。光源制御装置2は、光源3の点灯を制御する。したがって、光源制御装置2は点灯装置と呼ばれてもよい。光源制御装置2と光源3との接続部分10は両者をつなぐ伝送路を含みうる。光源制御装置2は、制御部4と、駆動部5と、計測点6a、6bと、検出部15とを含みうる。制御部4は、定電力モード、定電圧モード、定電力モードの3つの動作モードを有し、指定された設定値及び動作モードに応じて駆動部5を制御する。検出部15は、計測点6a、6bでの駆動部5の出力の電気特性を検出する。電気特性は、駆動部5の出力電圧8、出力電流9、またはこれらから計算される出力抵抗の少なくともいずれかでありうる。計測点6a、6bで計測された電気特性を、「計測値」という。計測値は、電圧および/または電流を直接計測して得られた値であってもよいし、分圧あるいは分流がされた箇所での計測によって得られ得た値であってもよい。検出部15により検出された電気特性、すなわち計測点6a、6bで計測された電圧8および/または電流9は、制御部4にフィードバックされる。制御部4は、入力された計測値をディジタル値に変換するA/D変換器等を含みうる。
【0014】
定電力モードの場合、制御部4は、フィードバックされる電圧8および電流9に基づき、光源3に印加される電力が一定の目標値になるように駆動部5を制御する定電力制御を行う。定電圧モードの場合、制御部4は、フィードバックされる電圧8に基づき、光源3に印加される電圧が一定の目標値になるように駆動部5を制御する。定電流モードの場合、制御部4は、フィードバックされる電流9に基づき、光源3に印加される電流が一定の目標値になるように駆動部5を制御する。このように、制御4は、動作モードに応じた計測値と目標値との差に応じて駆動部5を制御する。
【0015】
光源3を駆動する駆動部5は、MOS-FETなどの素子によって構成されており、電気回路としてハーフブリッジやフルブリッジなどの回路構成を含みうる。したがって、駆動部5は、光源駆動回路と呼ばれてもよい。また、駆動部5は、水銀ランプなどの放電管ランプを駆動する場合においては、始動時に必要な超高電圧の生成に必要なイグナイタ回路なども含みうる。
【0016】
駆動部5の出力は、接続部分10を介して、光源3に接続される。接続部分10は、ケーブルや導電部材(真鍮など)等の伝送路を含みうる。なお、水銀ランプなどの放電管ランプを駆動する場合には、伝送路の途中にイグナイタ回路が含まれてもよい。
【0017】
接続部分10では、光源制御装置2の出力端子である接続点7a、7bと、光源3の入力端子である接続点7c、7dとが接続される。
図1に示された例では、接続点は4点であるが、この数に限定はない。接続点7a~7dにおける伝送路の接続は、コネクタやネジによる締結、はんだ付け等によって行われうる。前述のように、駆動部5の出力(電圧8および/または電流9)は、伝送路10、光源3を介して、制御部4にフィードバックされる。
【0018】
また、光源制御装置2は、光源3と駆動部5との接続不良が生じるタイミングをユーザに報知する報知部16を更に有しうる。報知部16は、ディスプレイおよび/またはスピーカを含みうる。
【0019】
光源装置1の構成は概ね以上のとおりであり、所望の光を外部装置などに供給する。なお、光源装置1は、
図1で示した構成に加え、PWM生成回路、電力制御回路、AC入力電源の整流回路、外部装置とのインタフェース等を含んでいてもよい。
【0020】
光源3が高出力のものである場合、駆動部5から出力される電力も高出力でありうる。水銀ランプのような高出力光源の場合、駆動部5から出力される電力の総量は数kWに及ぶこともあり、駆動部5から出力される電流も100[A]を超えることも少なくない。そのような場合、接続点7a~7dにおいて、半挿しや緩みなどによって接続状態が不安定になると、その部分の接触抵抗の増大の影響を受けて異常発熱が発生しうる。このため、接続点7a~7dにおける接続状態は厳密に管理される必要がある。
【0021】
図2には、駆動部5と光源3とが接続部分10においてネジ11aおよび11bによる締結によって電気的に接続された例が示されている。光源3は、ピックテールケーブルによって電極が引き出されているタイプ、導電部材によって電極が引き出されているタイプ等でありうるが、それらに限定はされない。
【0022】
図3は、ネジ11aおよび11bの周辺に関して詳細に示した図である。導電部材12は接続部10側の部材であり、導電部材13は光源3側の部材である。導電部材12、導電部材13は、ケーブルや真鍮などの導電部材でありうるが、それらに限定はされない。導電部材12と導電部材13とがネジによる締結などで接続される場合、締結トルクなどが厳密に管理され、その接触抵抗値を、許容可能な発熱量から算出される接触抵抗値以下となるような接続手法がとられる。このようにして接続状態が管理されることにより、光源装置1の運用中、安定した接続状態が保証されうる。すなわち、光源制御装置2における電力、電圧、電流の計測値は長期的には変動することなく、
図4に示すように安定的に推移する。なお、抵抗値[Ω]はそのときの電圧値/電流値からを算出することもでき、この抵抗値は接続部分10の伝送路と光源3との合成抵抗値と考えることができる。
【0023】
厳密には、各計測値は多少のばらつきが生じうる。その原因の1つとして、ランプ点灯直後に接続部分10の接続点7a~7bや光源3からの熱によって抵抗値が変化し、点灯直後にドリフトが生じることが挙げられる。よって、光源3の点灯直後は電力、電圧、電流の各値はモニタせず、安定待ち時間を設けることも考えられる。ただし、安定待ちの要否は、測定したい信号レベルのS/Nから判断されるべきであり、本実施形態においては、安定待ち時間を設けることは必須ではない。また、他の原因として、駆動部5やAC電源のリプル成分などが回り込むことが挙げられる。よって、光源3の点灯直後は、電力、電圧、電流の各値を計測値として直接採用するのではなく、移動平均のような平均化手法によって平均化された計測値を採用するようにしてもよい。ただし、このような平均化の要否も、前述の安定待ちと同様、測定したい信号レベルのS/Nから判断されるべきであり、平均化を採用することは必須ではない。
【0024】
本実施形態では、制御部4は、電気特性の時間推移を示すトレンドデータを作成する。トレンドデータは、電気特性の移動平均処理によって作成されうる。あるいは、トレンドデータは、電気特性のローパスフィルタ処理等のフィルタ処理によって作成されてもよい。
図4に示す計測値の時間推移例は、上述の安定待ちおよび平均化が取り入れられた場合の計測値の時間推移例であり、これにより、光源制御装置2の電力、電圧、電流の各値の推移データが所望の精度で計測されているものとする。なお、本実施形態では、定電力制御における例を記載している。定電力制御のかわりに定電圧制御または定電流制御が採用されてもよい。
【0025】
光源装置1の使用中に、ネジの締結緩みなどにより、駆動部5と光源3との接続の不安定さが増すと、接続部分10における伝送路中の抵抗値が変化し、計測値の推移が変化する可能性がある。変化のパターンとしては、
図5に示すような計測値のシフト現象や、
図6に示すような計測値のドリフト現象がありうる。シフト現象は、
図3で示したネジ11a、11bのうちネジ11aが破断しネジ11bによる片持ち状態になった場合等に生じうる。この場合、導電部材12と導電部材13の接触面が急激に減少して抵抗値が上昇することがシフト現象の原因として想定される。
【0026】
ドリフト現象は、光源3の点灯時の発熱と、ネジ11a、11bと導電部材12、13との線膨張差によりネジ11a、11bによる締結が緩み、導電部材12、13の接触面が徐々に減少して抵抗値が上昇することにより生じうる。抵抗値の上昇によって発熱量が増え、締結部材の線膨張差によって片方が延びることによって締結の緩みが増えていき、最終的には初期値に対して大きく異なる抵抗値を示すことになる。これらの現象による抵抗値の上昇は異常発熱につながり、光源装置1の故障に繋がりうるため、接続異常を早期に検知する必要がある。
【0027】
以下では、接続異常の検知方法を説明する。定電力制御において、接続異常の検知に用いる計測値には、電圧値、電流値、抵抗値のいずれを用いてもよいが、ここでは一例として、抵抗値を用いることとする。
【0028】
計測値を所定の閾値と比較し、計測値がその閾値を超えたら異常と判定する単純な方法では、光源3および接続部分10の個体差等の影響を受け判定精度を高めることは難しい。また、駆動部5(光源駆動回路)は一般に低インピーダンスで構成されているため、その抵抗値もバラつきが大きいことが予想される。
【0029】
そこで、本実施形態では、計測値(電気特性)が、下限値と上限値とで規定される所定の安定範囲を超えた場合に、異常と判定する。上限値および下限値は、光源装置1の完成後に決定することにより、上述したバラつきへの対応が可能である。安定範囲は、光源3および接続部分10の特性から十分に考察されるべきである。
【0030】
以下では、
図3で示したネジ締結の構成、および光源3として水銀ランプを使用する例を前提として議論する。したがって、以下での具体的な数値はその前提の下での例示の数値にすぎない。
図3の構成において、接続部分10における伝送路と光源3との合成抵抗値は、例えば数百[mΩ]でありうる。計測値(抵抗値)に対する十分な平均化処理がなされている場合には、計測値のトレンドは安定範囲内で安定していることが考えられる。つまり、正常状態においては変化のトレンドは形成されていない。短期的な変動は生じている可能性はあるが、そのレンジは数[mΩ]程度であり、安定範囲内で安定して推移しうる。ネジ11a、11bのいずれかが破断し締結に緩みが生じると、
図5に示すような抵抗値シフトが生じる。破断の規模によって、抵抗値シフトの大きさは異なることが想定されるが、例えば10[mΩ]程度の抵抗値の変動により抵抗値は安定範囲を超え、異常と判定されうる。抵抗値シフトは、比較的短期の間に発生することが予想される。
【0031】
線膨張差などによってネジ11a、11bの締結に徐々に緩みが生じていく場合、
図6に示すような計測値ドリフトが形成される。シフトと同様に、例えば10[mΩ]程度のドリフトにより抵抗値は安定範囲を超え、異常と判定されうる。抵抗値ドリフトは、比較的長期にわたって計測値が変化していくことが予想される。
【0032】
このように本実施形態では、制御部4は、計測値のトレンドデータが安定範囲を超えたときに異常(接続不良)と判定するが、作成されたトレンドデータに基づいて電気特性が安定範囲を超えるタイミングを予測することも可能である。例えば、制御部4は、一次関数または二次関数でフィッティングするなどにより、トレンドデータの関数近似が行われる。制御部4は、トレンドデータの近似関数に基づいて、所定範囲を超えるタイミングを予測する。
【0033】
以上のように、本実施形態によれば、駆動部5の出力の電気特性の時間推移を示すトレンドデータが作成され、該トレンドデータに基づいて、電気特性が安定範囲を超えるタイミングが予測される。これにより、光源3と駆動部5との接続不良が生じるタイミングをいち早くユーザに知らせることが可能になる。結果として、異常発熱などの発生を未然に防げることが可能となり、光源制御装置への重篤なダメージを防止することが可能となる。
【0034】
また、本実施形態の構成によれば、光源3と駆動部5との接続状態を監視するための専用の電気回路を構成する必要はない。したがって、本実施形態によれば、光源3と駆動部5との接触状態を判定することに関して、コストの点で有利な構成が提供される。
【0035】
<第2実施形態>
第2実施形態では、機械学習を用いた接続状態の異常の検出について説明する。例えば、制御部4は、計測が行われる都度、学習用の接続部の画像を(例えば撮像により)取得し、該画像と、計測値(ここでは抵抗値)と、その計測が行われた時刻とを関連付けてメモリに記憶していき、これを学習データとする。学習データは多いほど望ましく、学習データには接続異常時のデータも十分に含まれるものとする。その後、例えば取得された各画像を画像処理または目視で接続異常を判断し、接続異常時の画像に対する計測値および時刻の情報が作成される。制御部4は、作成された情報に基づいて、電気特性の推定正常範囲を求めるためのモデルを機械学習によって生成する。機械学習は、例えば線形回帰モデルを用いた学習でありうる。ただし、機械学習のアルゴリズムに限定はなく、機械学習は、光源ON時間や環境温度等の成分による影響を考慮した主成分分析モデルを用いた学習、リアルタイム性を考慮したナイーブベイズを用いた学習であってもよい。
【0036】
図7は、計測値の推移と、モデルに基づいて求められた推定正常範囲との関係を示している。推定正常範囲は、例えば、第1実施形態で説明した所定の安定範囲内で該安定範囲より狭い範囲として求められる。接続状態が正常である間は、計測値は推定正常範囲内で安定に推移するため、計測値のシフトまたはドリフトは生じず、計測値は推定正常範囲を超えない。しかし時間の経過に伴い、計測値のシフトまたはドリフトが生じ、計測値が学習によって得られた推定正常範囲を超え、異常状態に遷移する。制御部4は、異常状態に遷移した後に検出された計測値のトレンドデータを作成する。トレンドデータは、上述したように、移動平均やフィルタ処理により作成される。更に、最小二乗法による関数フィッティング等の近似手法や、機械学習アルゴリズムを用いた生成手法等を用いて、作成されたトレンドデータの関数近似が行われる。制御部4は、関数近似により得られた関数に基づいて、所定範囲を超えるタイミングを予測する。このときのトレンドデータには、安定時の計測値は含まれず、シフトやドリフト時のトレンドのみが含まれているため、より正確かつ迅速に安定範囲を超えるタイミングを予測することができる。制御部4は、閾値幅を超える時刻が予測されたことに応じてそれをユーザに通知するようにしてもよい。これにより、より早期に接続不良が生じうることをユーザに知らせることが可能になる。
【0037】
なお、上述の実施形態では、機械学習は制御部4において実行されるものとして説明したが、機械学習は外部の機械学習装置によって実行されてもよい。
【0038】
以上に示した、第1実施形態、第2実施形態によって、光源の異常発熱などの発生を未然に防ぐことが可能となり、光源制御装置への重篤なダメージを防止することが可能となる。
【0039】
<第3実施形態>
以下の実施形態では、上述した光源装置が適用されるリソグラフィ装置に関して説明する。リソグラフィ装置は、基板上にパターンを形成する装置であり、リソグラフィ装置の例として、露光装置およびインプリント装置を挙げることができる。露光装置は、例えば、感光剤が塗布された基板に投影光学系を介して原版のパターンを投影することによって原版のパターンに対応する潜像パターンを感光剤に形成する。インプリント装置は、例えば、基板の上に配置されたインプリント材に原版(モールド)を接触させた状態でインプリント材を照明して硬化させることによってインプリント材を原版のパターンに対応するパターンに成形する。
【0040】
図8は、光源装置を備えたリソグラフィ装置の1つである露光装置の構成を示すブロック図である。この露光装置は、光源装置1と、照明光学系200と、レチクルRを保持するレチクルステージRSと、投影光学系300と、基板であるウエハWを保持するウエハステージWSと、制御部400とを含む。
【0041】
照明光学系200は、不図示のレンズ、ミラー、オプティカルインテグレータ、絞り等を含み、これらによって光源装置1からの光を調整し、被照明領域であるレチクルRを照明する。レチクルRは、ウエハW上に転写されるべきパターン(例えば回路パターン)が形成された、例えば石英ガラス製の原版(マスク)である。レチクルステージRSは、レチクルRを保持して移動可能であり、不図示のリニアモータ等の駆動機構によって駆動される。投影光学系300は、レチクルRを通過した光を所定の倍率でウエハW上に投影する。ウエハWは、表面上にフォトレジスト(感光性材料)が塗布された、例えば単結晶シリコンからなる基板である。ウエハステージWSは、不図示のウエハチャックを介してウエハWを保持して移動可能であり、不図示のリニアモータ等の駆動機構によって駆動される。
【0042】
制御部400は、例えば、CPU401、メモリ402、表示部403を含むコンピュータ装置によって構成され、露光装置の各部を統括的に制御して、レチクルRに形成されたパターンをウエハWに転写する露光処理を実行する。本実施形態では、制御部400が上述した光源制御装置2における制御部4として機能してもよい。このように構成された露光装置において、第1実施形態と同様に、駆動部5の出力の電気特性の時間推移を示すトレンドデータが作成され、該トレンドデータに基づいて、電気特性が安定範囲を超えるタイミングが予測される。これにより、光源3と駆動部5との接続不良が生じるタイミングをいち早くユーザに知らせることが可能になる。
【0043】
<物品製造方法の実施形態>
本発明の実施形態における物品製造方法は、例えば、半導体デバイス等のマイクロデバイスや微細構造を有する素子等の物品を製造するのに好適である。本実施形態の物品製造方法は、上記のリソグラフィ装置(露光装置やインプリント装置、描画装置など)を用いて基板に原版のパターンを形成する形成工程と、該形成工程でパターンが形成された基板を加工する加工工程とを含みうる。更に、かかる物品製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含みうる。本実施形態の物品製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0044】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0045】
1:光源装置、2:光源制御装置、3:光源、4:制御部、5:駆動部、10:接続部分、15:検出部