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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185880
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】切削インサート
(51)【国際特許分類】
   B23B 27/18 20060101AFI20221208BHJP
   B23B 27/04 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
B23B27/18
B23B27/04
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093779
(22)【出願日】2021-06-03
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000221144
【氏名又は名称】株式会社タンガロイ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 泰岳
(72)【発明者】
【氏名】佐治 龍一
【テーマコード(参考)】
3C046
【Fターム(参考)】
3C046AA00
3C046GG00
(57)【要約】
【課題】焼結体と基体の接合面における接合材の軟化を抑制し、接合強度を向上し、なおかつ焼結体を小型化できる切削インサートを提供する。
【解決手段】切削インサート10は、切れ刃を有する焼結体20と、先端に焼結体20がろう材Aにより接合された基体21と、を備える。焼結体20は、先端側に面する正面40と、正面40に接続され、当該正面40との間の接続稜線41に切れ刃50が形成される上面42と、上面42に対向する底面43と、正面40に対向する背面44と、2つの側面45、46と、を有している。焼結体20と基体21は、焼結体20の底面43と背面44を含む接合面70で接合されている。側面視で、接合面70は、先端側が低く後方側が高くなるような階段形状を有している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削インサートであって、
切れ刃を有する焼結体と、
先端に前記焼結体が接合材により接合された基体と、を備え、
前記焼結体は、
先端側に面する正面と、
当該正面に接続され、当該正面との間の接続稜線に切れ刃が形成される上面と、
前記上面に対向する底面と、
前記正面に対向する背面と、
前記正面、前記上面、前記底面及び前記背面に接続される2つの側面と、を有し、
前記焼結体と前記基体は、前記焼結体の底面と背面を含む接合面で接合され、
側面視で、前記接合面は、先端側が低く後方側が高くなるような階段形状を有している、切削インサート。
【請求項2】
前記接合面は、先端側から後方に向かって延設される複数の接合平面と、上方に向かって延設される複数の接合立面と有し、
前記接合平面と前記接合立面が先端側から後方に向かって交互に配置されている、請求項1に記載の切削インサート。
【請求項3】
側面視で、前記接合平面は、先端側に対し後方側が低くなるように傾斜している、請求項2に記載の切削インサート。
【請求項4】
前記複数の接合平面のうちの先端側の第1の接合平面が、それより後方の第2の接合平面に対し前後方向に同等の長さ、或いは前記第2の接合平面よりも長い長さを有する、請求項2又は3に記載の切削インサート。
【請求項5】
前記複数の接合平面のうちの後方の第2の接合平面が、それより先端側の第1の接合平面よりも長い長さを有する、請求項2又は3に記載の切削インサート。
【請求項6】
前記接合面は、前記接合平面と前記接合立面を接続する接合中間面を有し、
側面視で、前記接合中間面は、上に凸に湾曲している、請求項2~5のいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項7】
側面視で、前記焼結体の前記正面における高さは、前記背面における高さの110%以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項8】
側面視で、前記接合面は、前記階段形状の後方に、下に凸の突形状をさらに有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の切削インサート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削インサートに関する。
【背景技術】
【0002】
高硬度材加工を行う例えば溝入れ用の切削インサートは、切れ刃となるCBN焼結体などの焼結体がベースインサート(基体)にろう材により接合されて構成されている。このろう付けでは、略直方体状の焼結体のうち2面(底面と背面)が基体とろう付けされるのが一般的である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-167805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のろう付け方法では、高速、高送り、高切込み、DRY加工などの高負荷条件の加工時に、焼結体の切れ刃部分の高温の熱がろう材に伝わり、ろう材が軟化する可能性がある。この場合、基体から焼結体がはがれて、焼結体が欠損する恐れがある。
【0005】
また、上述の切削インサートでは、高負荷条件の加工時に、ろう付け部分に大きな負荷がかかり、焼結体の欠損を招く恐れがある。このため、ろう付け強度の向上が望まれている。
【0006】
また、上述の切削インサートでは、焼結体が高価であるため、焼結体の材料の使用量が多いほど、切削インサートが高価になる。そのため、焼結体の小型化が望まれている。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、焼結体と基体の接合面におけるろう材などの接合材の軟化を抑制し、接合強度を向上し、なおかつ焼結体を小型化できる切削インサートを提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る切削インサートは、切れ刃を有する焼結体と、先端に前記焼結体が接合材により接合された基体と、を備え、前記焼結体は、先端側に面する正面と、当該正面に接続され、当該正面との間の接続稜線に切れ刃が形成される上面と、前記上面に対向する底面と、前記正面に対向する背面と、前記正面、前記上面、前記底面及び前記背面に接続される2つの側面と、を有し、前記焼結体と前記基体は、前記焼結体の底面と背面を含む接合面で接合され、側面視で、前記接合面は、先端側が低く後方側が高くなるような階段形状を有している。
【0009】
上記態様によれば、焼結体と基体との間の接合面が階段形状を有するので、切れ刃の切削により比較的高温となる接合面の先端側(焼結体の正面側の接合材)が切れ刃から離れる。このため、接合面の接合材が熱により軟化することを抑制することができる。また、焼結体と基体の接合面の接合面積が大きくなり、接合強度を向上することができる。さらに接合面の後方側が焼結体の上面に近くなり、背面側の焼結体が薄くなるため、その分焼結体を小型化することができる。
【0010】
上記態様において、前記接合面は、先端側から後方に向かって延設される複数の接合平面と、上方に向かって延設される複数の接合立面と有し、前記接合平面と前記接合立面が先端側から後方に向かって交互に配置されているようにしてもよい。
【0011】
上記態様において、側面視で、前記接合平面は、先端側に対し後方側が低くなるように傾斜していてもよい。
【0012】
上記態様において、前記複数の接合平面のうちの先端側の第1の接合平面が、それより後方の第2の接合平面に対し前後方向に同等の長さ、或いは前記第2の接合平面よりも長い長さを有するようにしてもよい。
【0013】
上記態様において、前記複数の接合平面のうちの後方の第2の接合平面が、それより先端側の第1の接合平面よりも長い長さを有するようにしてもよい。
【0014】
上記態様において、前記接合面は、前記接合平面と前記接合立面を接続する接合中間面を有し、側面視で、前記接合中間面は、上に凸に湾曲していてもよい。
【0015】
上記態様において、側面視で、前記焼結体の前記正面における高さは、前記背面における高さの110%以上であってもよい。
【0016】
上記態様において、側面視で、前記接合面は、前記階段形状の後方に、下に凸の突形状をさらに有するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施の形態に係る切削工具の一例を示す斜視図である。
図2】本実施の形態に係る切削インサートの斜視図である。
図3】切削インサートの先端部の拡大図である。
図4】切削インサートの先端部の側面図である。
図5】切削インサートの先端部の上面図である。
図6】切削インサートの先端部の正面図である。
図7】焼結体の斜視図である。
図8】基体の先端の斜視図である。
図9】第2の接合平面が第1の接合平面よりも長い場合の切削インサートの先端部の側面図である。
図10】接合面が下に凸の突形状を有する場合の切削インサートの先端部の側面図である。
図11】接合面の後端面が波形状に形成された場合の切削インサートの先端部の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0019】
図1は、本実施の形態に係る切削インサート10を保持した切削工具1の一例を示す斜視図である。
【0020】
切削工具1は、例えば溝入れ加工用の工具である。切削工具1は、切削インサート10と、切削インサート10を保持して固定する工具本体11を備えている。切削工具1は、ねじ12を締めることによって切削インサート10を工具本体11に固定することができる。
【0021】
工具本体11は、細長形状を有し、その先端に切削インサート10を保持している。なお、工具本体11の構造や形状はこれに限られない。
【0022】
図2は、本実施の形態に係る切削インサート10の斜視図であり、図3は、切削インサート10の先端部の拡大図である。図4は、切削インサート10の先端部の側面図であり、図5は、切削インサート10の先端部の上面図であり、図6は、切削インサート10の先端部の正面図である。なお、本明細書において、切削インサート10の長手方向の切れ刃がある側を「先端側」とし、その反対側を「後方側」とする。また、切削インサート10の長手方向を「前後方向X」とし、その前後方向Xと直角をなし切削インサート10の後述の上面42と平行な方向を「左右方向Y」とする。切削インサート10の上面42に対し垂直な方向を「上下方向Z」とする。
【0023】
図2に示すように切削インサート10は、全体で細長の略直方体形状を有している。切削インサート10は、切れ刃を有する焼結体20と、焼結体20が接合された基体21を備えている。焼結体20は、接合材としてのろう材Aによって基体21に接合されている。
【0024】
基体21は、前後方向Xに長い細長形状を有し、その先端21aに焼結体20が接合されている。
【0025】
焼結体20は、例えばCBN(立方晶窒化ホウ素)焼結体やダイヤモンド焼結体などである。図3に示すように焼結体20は、底に段部がある略6面体の立体形状を有している。焼結体20は、例えば先端側に面する正面40と、当該正面40に接続され、当該正面40との間で接続稜線41を形成する上面42と、上面42に対向する底面43と、正面40に対向する背面44と、正面40、上面42、底面43及び背面44に接続される、互いに対向する2つの側面45、46と、を有している。
【0026】
正面40は、図6に示す正面視で略方形形状を有している。図4に示すように側面視で、正面40は、上下方向Zに対し、上面42から底面43に近づく(下方に行く)につれて次第に後方に後退するように傾斜している。
【0027】
上面42は、図5に示す上面視で略方形形状を有している。上面42と正面40との間には、直線状の接続稜線41が形成され、接続稜線41が切れ刃50となっている。切れ刃50は、上面視で両端付近が後方側に後退するようにわずかに湾曲している。また、上面42はすくい面となる。上面42は、先端から後方に向かって次第に左右方向Yの幅が狭くなっている。
【0028】
図3に示すように側面45、46は、上面42との間に接続稜線60を形成し、この接続稜線60は横切れ刃61にもなる。側面45、46は、図6に示す正面視で、上下方向Zに対し、上面42から底面43に近づく(下方に行く)につれて次第に左右方向Yの中央に近づくように傾斜している。
【0029】
図4に示すように焼結体20は、底面43と背面44において基体21と接合し、その部分で接合面70を構成している。
【0030】
底面43と背面44は、図4に示す側面視で、先端側が低く後方側が高くなるような階段形状を構成している。底面43は、例えば図4及び図7に示すように第1の平面80と、第1の立面81と、中間面82と、第2の平面83を先端側から後方側に向かってこの順で有している。第1の平面80と第1の立面81、第1の立面81と中間面82、中間面82と第2の平面83は、それぞれ互いに接続されている。底面43の第2の平面83は、背面44に接続されている。
【0031】
図7に示すように第1の平面80と、第1の立面81及び第2の平面83は、それぞれ左右方向Yに長い長方形状を有している。図4に示すように第1の平面80と第2の平面83は、先端側に対し後方側が低くなるように傾斜している。すなわち、第1の平面80と第2の平面83は、上面42に対し角度を有している。中間面82は、上面42側に円弧状に凹むように湾曲している。第1の立面81は、上下方向Zに対し、上方に近づくにつれて背面44側に近づくようにわずかに傾斜している。
【0032】
図7に示すように背面44は、左右方向Yに長い長方形状を有している。背面44は、図4ではわかりにくいが、上下方向Zに対し、下方に近づくにつれて正面40側に近づくようにわずかに傾斜している。また、背面44は、上面42に対し垂直な面であってもよい。
【0033】
図8に示すように基体21の先端21aは、焼結体20を載せて接合する上面21bを有している。上面21bは、焼結体20の底面43及び背面44の階段形状に対応する、先端側が低く後方側が高くなるような階段形状を有している。
【0034】
基体21の上面21bは、第1の平面90と、第1の立面91と、中間面92と、第2の平面93と、第2の立面94を先端側から後方側に向かってこの順で有している。第1の平面90と第1の立面91、第1の立面91と中間面92、中間面92と第2の平面93、第2の平面93と第2の立面94は、それぞれ互いに接続されている。
【0035】
第1の平面90と、第1の立面91と、第2の平面93及び第2の立面94は、それぞれ左右方向Yに長い長方形状を有している。第1の平面90と第2の平面93は、先端側に対し後方側が低くなるように傾斜している。中間面92は、上方に円弧状に凸に湾曲している。第1の立面91及び第2の立面94は、上下方向Zに対し、上方に近づくにつれて後退するようにわずかに傾斜している。
【0036】
焼結体20と基体21と間の接合面70は、図7及び図8の焼結体20の第1の平面80と基体21の第1の平面90、焼結体20の第1の立面81と基体21の第1の立面91、焼結体20の中間面82と基体21の中間面92、焼結体20の第2の平面83と基体21の第2の平面93、焼結体20の背面44と基体21の第2の立面94が、ろう材Aを介して互いに合わさることで構成されている。
【0037】
すなわち、接合面70は、先端側が低く後方側が高くなるような階段形状を有し、図4に示す側面視で、先端側から後方に向かって延設する第1の接合平面100と、第1の接合平面100に接続され、上方に向かって延設される第1の接合立面101と、第1の接合立面101に接続された接合中間面102と、接合中間面102に接続され、先端側から後方に向かって延設される第2の接合平面103と、第2の接合平面103に接続され、上方に向かって延設される第2の接合立面104を有している。なお、本明細書において、「階段形状」とは、2つ以上のステップ(接合平面)を有する形状をいう。
【0038】
第1の接合平面100及び第2の接合平面103は、先端側に対し後方側が低くなるように傾斜している。例えば第1の接合平面100は、第2の接合平面103に対し前後方向Xに同等の長さ、或いは第2の接合平面103よりも長い長さを有している。
【0039】
接合中間面102は、上方に凸の円弧状に湾曲している。第1の接合立面101及び第2の接合立面104は、上下方向Zに対し、上方に近づくにつれて後部に近づくようにわずかに傾斜している。
【0040】
焼結体20の正面40における高さH1は、背面44における高さH2の110%以上であり、好ましくは120%以上400%以下、さらに好ましくは150%以上300%以下である。
【0041】
本実施の形態によれば、焼結体20と基体21との間の接合面70が階段形状を有するので、切れ刃50の切削により比較的高温となる接合面70の先端側(焼結体20の正面40側のろう材A)が切れ刃50から離れる。このため、接合面70のろう材Aが熱により軟化することを抑制することができる。特に、突切り・溝入れ加工においては、正面の切れ刃50が、最も加工温度が高温になる箇所であり、接合面70の先端側が切れ刃50から離れることで、接合面70のろう材Aの軟化を効果的に抑制することができる。また、焼結体20と基体21の接合面70の接合面積が大きくなり、ろう付け強度を向上することができる。よって、基体21からの焼結体20の欠損を抑制することができる。さらに接合面70の後方側が焼結体20の上面42に近くなり、背面44側の焼結体20が薄くなるため、その分焼結体20の材料の使用量を減らし焼結体20を小型化することができる。これにより切削インサート10のコストを低減することができる。
【0042】
加え、例えば、階段形状のない接合では、接合平面のろう付け面積が主に効き、接合立面は補助的にしか効かない。しかし、階段形状を有することで、接合立面の一部が接合平面と同様なろう付け面積として効く。すなわち、H1の厚さで段状の接合面を直線へ引き延ばしたような焼結体の体積に対して、前後方向Xの面積の一部を上下方向Zに変換できる焼結体20の方が大幅に前後方向Xの寸法を削減でき、体積を削減できる。
【0043】
接合面70の第1の接合平面100及び第2の接合平面103は、先端側に対し後方側が低くなるように傾斜しているので、焼結体20と基体21の接合面70の接合面積がさらに大きくなり、ろう付け強度を向上することができる。また、焼結体20と基体21がかみ合いやすくなるため、その点でもろう付け強度を向上することができる。
【0044】
先端側の第1の接合平面100が、後方の第2の接合平面103に対し前後方向Xに同等の長さを有する、或いは第2の接合平面103よりも長い長さを有している。これにより、切削時に大きな負荷がかかる先端側の第1の接合平面100の接合面積が大きくなり、ろう付け強度を向上することができる。
【0045】
側面視で、接合中間面102は、上に凸に湾曲しているので、焼結体20と基体21の接合面70の接合面積がさらに大きくなり、ろう付け強度を向上することができる。
【0046】
焼結体20の正面40における高さH1は、背面44における高さH2の110%以上であるため、接合面70の後方側が焼結体20の上面42に十分に近くなり、その分焼結体20が十分に薄くなるため、焼結体20をより小型化することができる。
【0047】
上記実施の形態において、先端側の第1の接合平面100が後方の第2の接合平面103よりも長かったが、図9に示すように後方の第2の接合平面103が、先端側の第1の接合平面100よりも長くてもよい。かかる場合、焼結体20と基体21の接合面70の接合面積を大きくすることができ、この結果、ろう付け強度を向上することができる。なお、この場合、第2の接合平面103は、第1の接合平面100の1.5倍以上長くてもよい。
【0048】
また、図10に示すように側面視で、接合面70は、階段形状の後方に、下に凸の突形状をさらに有するものであってもよい。かかる場合、接合面70は、第1の接合平面100、第1の接合立面101、接合中間面102及び第2の接合平面103からなる階段形状部150を有し、その後方に第2の接合立面160、第3の接合平面161及び第3の接合立面162からなる突起形状部151を有するようにしてもよい。かかる例によれば、焼結体20と基体21の接合面70の接合面積をさらに大きくすることができ、この結果、ろう付け強度を向上することができる。また、焼結体20と基体21がかみ合うため、その点でもろう付け強度を向上することができる。
【0049】
図11に示すように上面視で、接合面70の後端面である第2の接合立面104は波形状に形成されていてもよい。この場合、例えば焼結体20の背面44と基体21の第2の立面94が波形状に形成されている。かかる例によれば、焼結体20と基体21の接合面70の接合面積をさらに大きくすることができ、この結果、ろう付け強度を向上することができる。
【0050】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0051】
以上の実施の形態において、接合面70は、側面視で階段形状を有していれば、他の形状であってもよい。第1の接合平面100及び第2の接合平面103は、傾斜しておらず、上面42に対し水平であってもよい。第1の接合立面101及び第2の接合立面104は、上面42に対し垂直であってもよい。接合中間面102は、円弧状に湾曲していなくてもよい。また接合中間面102はなくてもよく、第1の接合立面101と第2の接合平面103が直接接続されていてもよい。
【0052】
接合面70の階段形状のステップの数(接合平面の数)は、上記実施の形態のような2つに限られず、3つ以上であってもよい。焼結体20及び基体21の形状は、上記実施の形態のものに限られない。
【0053】
上記実施の形態で記載した切削インサート10は、溝入れ加工用に限られず、外径加工、端面加工、倣い加工、内径加工等に使用するものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、溝入れ加工と横送り加工の両方の切り屑処理性が高い切削インサート及び切削工具を提供する際に有用である。
【符号の説明】
【0055】
1 切削工具
10 切削インサート
20 焼結体
21 基体
40 正面
42 上面
43 底面
44 背面
45、46 側面
50 切れ刃
70 接合面
A ろう材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2021-10-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削インサートであって、
切れ刃を有する焼結体と、
先端に前記焼結体が接合材により接合された基体と、を備え、
前記焼結体は、
先端側に面する正面と、
当該正面に接続され、当該正面との間の接続稜線に切れ刃が形成される上面と、
前記上面に対向する底面と、
前記正面に対向する背面と、
前記正面、前記上面、前記底面及び前記背面に接続される2つの側面と、を有し、
前記焼結体と前記基体は、前記焼結体の底面と背面を含む接合面で接合され、
側面視で、前記接合面は、先端側が低く後方側が高くなるような階段形状を有し、
前記接合面は、先端側から後方に向かって延設される複数の接合平面と、上方に向かって延設される複数の接合立面と有し、
前記接合平面と前記接合立面が先端側から後方に向かって交互に配置されている、切削インサート。
【請求項2】
側面視で、前記接合平面は、先端側に対し後方側が低くなるように傾斜している、請求項1に記載の切削インサート。
【請求項3】
前記複数の接合平面のうちの先端側の第1の接合平面が、それより後方の第2の接合平面に対し前後方向に同等の長さ、或いは前記第2の接合平面よりも長い長さを有する、請求項1又は2に記載の切削インサート。
【請求項4】
前記複数の接合平面のうちの後方の第2の接合平面が、それより先端側の第1の接合平面よりも長い長さを有する、請求項1又は2に記載の切削インサート。
【請求項5】
前記接合面は、前記接合平面と前記接合立面を接続する接合中間面を有し、
側面視で、前記接合中間面は、上に凸に湾曲している、請求項1~4のいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項6】
側面視で、前記焼結体の前記正面における高さは、前記背面における高さの110%以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の切削インサート。
【請求項7】
側面視で、前記接合面は、前記階段形状の後方に、下に凸の突形状をさらに有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の切削インサート。