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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185889
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】通信システム及び通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 12/062 20210101AFI20221208BHJP
   H04W 4/48 20180101ALI20221208BHJP
   H04W 84/10 20090101ALI20221208BHJP
   H04W 88/06 20090101ALI20221208BHJP
【FI】
H04W12/062
H04W4/48
H04W84/10 110
H04W88/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093792
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】平田 凌士
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正樹
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA23
5K067AA34
5K067BB03
5K067EE04
5K067EE10
5K067EE35
5K067HH36
(57)【要約】
【課題】システム構成を簡素化できる通信システム及び通信方法を提供する。
【解決手段】操作対象2には、端末1を操作対象2の通信機10と無線通信させて端末1を認証し、その認証結果に基づいて操作対象2の作動を制御する認証システム3が設けられている。通信システム27は、この認証システム3において、端末1及び通信機10の通信を実行させる。通信機10は、端末1の認証機能を有する第1通信機11と、認証機能とは別の機能を有する第2通信機26との両方を用いて、操作対象2の通信エリアを形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末を操作対象の通信機と無線通信させて前記端末を認証し、その認証結果に基づいて前記操作対象の作動を制御する認証機能に使用される通信システムであって、
前記通信機は、前記端末の認証機能を有する第1通信機と、前記認証機能とは別の機能を有する第2通信機との両方を用いて、前記操作対象の通信エリアを形成する通信システム。
【請求項2】
前記第1通信機及び前記第2通信機と前記端末との間の通信は、近距離無線通信であり、
前記第2通信機は、近距離無線通信の機能を予め有した装置である
請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記認証機能は、前記端末及び前記通信機の間の通信によって、前記操作対象に対する前記端末の位置を判定する位置判定機能を備え、
前記位置判定機能は、
前記第1通信機及び前記第2通信機の少なくとも一方と前記端末との間で通信される電波の強度に係る特性値を測定する測定部と、
前記測定部によって測定された前記特性値を用いて、前記操作対象に対する前記端末の位置を判定する判定部とを備えている
請求項1又は請求項2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記測定部は、前記端末に設けられている
請求項3に記載の通信システム。
【請求項5】
前記判定部は、前記操作対象に設けられ、
前記判定部は、前記端末及び前記第1通信機の間の通信の際に測定された前記特性値と、前記端末及び前記第2通信機の間の通信の際に測定された前記特性値とを取得し、これら前記特性値に基づき、前記操作対象に対する前記端末の位置を判定する
請求項3に記載の通信システム。
【請求項6】
ユーザの近くに位置する前記通信機と前記端末との位置関係が、直に通信接続の状態に移行できない場所に位置した関係をとる場合、他の前記通信機を介して電波のリレーを実行させることにより、ユーザの近くの前記通信機と前記端末とを通信させる中継部を備えている
請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項7】
前記端末及び前記通信機が通信接続の状態に移行した場合に、前記端末が近くに存在しない他の前記通信機に対して、通信接続の状態となった前記通信機から通信接続完了通知を出力して、他の前記通信機に事前動作を実行させる事前処理部を備えている
請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項8】
前記操作対象は、車両であり、
前記第2通信機は、前記車両の電源がIGオフとなっていても、通信を実行可能な電力が供給されている
請求項1~請求項7のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項9】
端末を操作対象の通信機と無線通信させて前記端末を認証し、その認証結果に基づいて前記操作対象の作動を制御する認証機能に使用される通信方法であって、
前記通信機は、前記端末の認証機能を有する第1通信機と、前記認証機能とは別の機能を有する第2通信機との両方を用いて、前記操作対象の通信エリアを形成する通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、端末と操作対象とを通信させる通信システム及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高機能携帯電話等の端末をキーとして車両を作動させる認証システムが周知である(特許文献1等参照)。この認証システムの場合、例えば、車両に複数のアンテナを設けて、車両側の周囲全域や車内を通信エリアとして設定し、これらアンテナと端末との間の通信によって、端末を認証する。端末の認証後、例えば、車両ドアの施解錠やエンジンの始動が許可又は実行される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-100994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述の認証システムの場合、車両に複数のアンテナを設置する必要があるので、アンテナの搭載位置を検討したり、アンテナの部品点数が増加したりするなどの懸念があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決する通信システムは、端末を操作対象の通信機と無線通信させて前記端末を認証し、その認証結果に基づいて前記操作対象の作動を制御する認証機能に使用される構成であって、前記通信機は、前記端末の認証機能を有する第1通信機と、前記認証機能とは別の機能を有する第2通信機との両方を用いて、前記操作対象の通信エリアを形成する。
【0006】
前記課題を解決する通信方法は、端末を操作対象の通信機と無線通信させて前記端末を認証し、その認証結果に基づいて前記操作対象の作動を制御する認証機能に使用される方法であって、前記通信機は、前記端末の認証機能を有する第1通信機と、前記認証機能とは別の機能を有する第2通信機との両方を用いて、前記操作対象の通信エリアを形成する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、システム構成を簡素化できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の通信システムの構成図。
図2】通信機のアドバタイズ送信の動作を示す模式図。
図3】特性値の測定の概要を示す模式図。
図4】端末の認証の手順図。
図5】第2実施形態の通信システムの概略構成図。
図6】第3実施形態の通信システムの概略構成図。
図7】第4実施形態の通信システムの概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、通信システム及び通信方法の第1実施形態を説明する。
図1に示すように、端末1の操作対象2は、ユーザ認証を行って操作対象2の作動を制御する認証機能(認証システム3)を備えている。認証システム3は、例えば、近距離無線通信によって端末1を認証して操作対象2の制御機器4を作動させるデジタルキーシステム5であることが好ましい。このように、認証システム3は、操作対象2の専用キーである電子キーではなく、端末1によって操作対象2を操作できるシステムである。
【0010】
操作対象2は、例えば、車両6であることが好ましい。車両6は、ユーザが所有する個人車両でもよいし、或いは1台を複数人で共用するシェアリングカーのいずれでもよい。
端末1は、例えば、主として電話機能を有する多機能端末であって、高機能携帯電話などがある。デジタルキーシステム5は、認証に必要な鍵情報Dkを外部(例えば、サーバなど)から端末1にダウンロードして、端末1で操作対象2を操作可能にする。端末1は、外部から鍵情報Dkが登録されることによって、操作対象2のキー、すなわちデジタルキー7となる。
【0011】
近距離無線通信は、PAN(Personal Area Network:パーソナルエリアネットワーク)通信、又は、近接無線通信のいずれでもよい。パーソナルエリアネットワーク通信には、例えばブルートゥース(Bluetooth:登録商標)通信、UWB(Ultra Wide Band)通信、Wi-Fi(登録商標)通信などがある。また、ブルートゥース通信は、BLE(Bluetooth Low Energy)であることが好ましい。近接無線通信は、RFIDの一種として、例えば、NFC(Near Field Communication)などがある。
【0012】
認証システム3は、近距離無線通信を通じた端末1の認証を実行する通信機10(以降、第1通信機11と記す)を備えている。第1通信機11は、端末1と近距離無線通信を実行するアンテナ12と、端末1を認証する認証部13とを備えている。認証部13は、アンテナ12を介して端末1と近距離無線通信を実行して、端末1を認証する。第1通信機11は、例えば、出荷前に予め車両6に搭載された製品でもよいし、或いは、車両6に後付け可能な用品でもよい。
【0013】
端末1(デジタルキー7)は、端末1の作動を制御する端末制御部15と、ネットワーク通信を実行するネットワークモジュール16と、近距離無線通信を実行する通信モジュール17と、データの記憶が可能なメモリ18と、端末1の操作に用いる操作部19と、画面を表示する表示部20とを備えている。端末1は、通信モジュール17を介して、通信機10と近距離無線通信を実行する。表示部20は、例えば、タッチパネルであることが好ましい。
【0014】
端末1(デジタルキー7)は、端末1を操作対象2のキーとして作動させる際に必要なアプリケーション21がメモリ18に登録されている。アプリケーション21は、例えば、外部の媒体(例えば、サーバなど)などからネットワーク通信を通じて取得されて、メモリ18に書き込み保存される。デジタルキー7にアプリケーション21を登録することにより、端末1への鍵情報Dkのダウンロードや、端末1での操作対象2の操作が可能となる。
【0015】
デジタルキー7は、近距離無線通信による認証で使用される鍵情報Dkがメモリ18に登録されている。デジタルキー7は、例えば、サーバからのダウンロード、マスターキーからの無線による取得、コード情報の画像読み取りなどの各種方式によって、鍵情報Dkをダウンロードすることが好ましい。鍵情報Dkは、外部からデジタルキー7にダウンロードされてもよいし、出荷時に予め書き込まれていてもよい。認証部13(第1通信機11)は、デジタルキー7に登録された鍵情報Dkの認証によって、操作対象2の利用可否を判定する。
【0016】
操作対象2は、第1通信機11の認証部13の認証結果に基づき制御機器4を制御するコントローラ22を備えている。コントローラ22は、操作対象2に設けられた通信線23を介して制御機器4と接続されている。通信線23は、例えば、CAN(Controller Area Network)、又はLIN(Local Interconnect Network)であることが好ましい。制御機器4は、例えば、車両ドアの施解錠を切り換えるドアロック装置、ステアリングホイールの操作をロック可能なステアリングロック装置、エンジンを制御するエンジン制御装置などがある。コントローラ22は、認証部13の認証結果に基づき、これら制御機器4を作動させる。
【0017】
認証システム3は、第1通信機11とは別の通信機10である第2通信機26を用いて操作対象2の通信エリアを形成する機能(通信システム27)を備えている。本例の場合、第2通信機26は、認証機能とは別の機能を有する装置である。第2通信機26は、近距離無線通信の機能を予め有した装置である。通信システム27は、端末1の認証機能を有する第1通信機11と、認証機能とは別の機能を有する第2通信機26との両方を用いて、操作対象2の通信エリアを形成する。
【0018】
第2通信機26は、操作対象2に複数設けられている。第2通信機26は、通信機本体28と、近距離無線通信を実行するアンテナ29とを備えている。第2通信機26は、例えば、近距離無線通信機能を備えたカーナビゲーション装置、近距離無線通信機能を備えたスピーカ装置、近距離無線通信機能を備えた後部モニタ装置などが挙げられる。これら第2通信機26は、例えば、通信線23を介して相互接続されている。また、第2通信機26は、例えば、操作対象2が車両6の場合、車両6の電源(車両電源)がIGオフとなっていても、通信を実行可能な電力が供給されている。これにより、第2通信機26は、車両6のエンジンが停止していても、近距離無線通信を実行可能となっている。
【0019】
認証機能(認証システム3)は、操作対象2に対する端末1の位置を判定する位置判定機能(位置判定システム32)を備えている。本例の場合、位置判定システム32は、端末1の認証機能を有する第1通信機11のみならず、他の通信機10(第2通信機26)も利用して、端末1の位置を判定する機能である。コントローラ22は、認証機能(認証システム3)の認証結果と、位置判定機能(位置判定システム32)の位置判定結果とに基づき、制御機器4の作動を制御する。
【0020】
位置判定システム32は、端末1と通信機10(第1通信機11及び第2通信機26の少なくとも一方)との間で通信される電波の強度に係る特性値Kを測定する測定部33を備えている。本例の場合、測定部33は、特性値Kの特性が端末1で実行される場合、端末1(端末制御部15)に設けられている。特性値Kは、例えば、電波の受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indicator)や、電波出力強度などが挙げられる。測定部33は、端末1及び通信機10の間で通信される電波であれば、どのタイミングで送信される電波を使用して測定を実行してもよい。
【0021】
位置判定システム32は、測定部33によって測定された特性値Kを用いて端末1の位置を判定する判定部34を備えている。本例の場合、判定部34は、端末1(端末制御部15)に設けられている。判定部34は、特性値Kを用いて、操作対象2に対する端末1の位置を判定する。具体的には、車両6に対して、端末1が運転席側車外、助手席側車外、及び車内のいずれに位置するのかを判定することが好ましい。
【0022】
通信機10は、車体のどの位置に搭載されているかの位置データDpを、位置判定システム32に予め登録しておくことが好ましい。位置データDpは、例えば、通信機10のIDと、設置位置の情報とを含む。本例の場合、位置判定を端末1で行うのであれば、端末1(メモリ18)に位置データDpが登録されることが好ましい。例えば、第1通信機11が車内前部、第2通信機26aが運転席寄り車体端部、第2通信機26bが助手席寄り車体端部、第2通信機26cが車内後部に配置される旨の位置データDpが予め登録される。判定部34は、特性値K及び位置データDpを基に、端末1の位置を判定する。
【0023】
次に、本実施形態の通信システム27及び認証方法の作用について説明する。
図2に示すように、ユーザが車両6を利用する例として、例えば、駐車状態の車両6にユーザが近づいて、乗車する場合を挙げる。なお、駐車状態とは、例えば、車両6のエンジンが停止状態、かつ車両6のドアが施錠状態をいう。
【0024】
第1通信機11のアンテナ12と第2通信機26のアンテナ29とからは、周囲に端末1が存在するか否かを確認するためにアドバタイズが定期送信される。アドバタイズは、例えば、ブルートゥース通信の場合、通信のスレーブから送信される電波である。第1通信機11及び第2通信機26は、例えば、車両電源がオフ(IGオフ)の状態をとっていても、車載バッテリの電力に基づいて、アドバタイズの定期送信を実行することが好ましい。近距離無線通信の電波は、広範囲に伝搬する。よって、端末1が車両6にある程度近づけば、第1通信機11及び第2通信機26のアドバタイズは、端末1に受信される。
【0025】
図4に、第1通信機11から送信されたアドバタイズを端末1(デジタルキー7)が受信して、端末1が第1通信機11の認証部13によって認証される際の手順を図示する。
ステップ101において、第1通信機11は、自機の通信に係る情報を知らせるアドバタイズを、周期的に繰り返し送信する。なお、アドバタイズは、例えば、パケットデータの一種であって、第1通信機11から常時、定期的に送信されている。
【0026】
ステップ102において、端末1は、第1通信機11から送信されるアドバタイズを受信すると、スキャン処理を実行する。なお、端末1は、例えば、アドバタイズを受信したときの受信信号強度が規定値以上となった場合に、スキャン処理を開始することが好ましい。このとき、端末1は、スキャン処理後、近距離無線通信の詳細に係る提供の要求として、接続要求を第1通信機11に送信する。
【0027】
ステップ103において、端末1及び第1通信機11は、以上のやり取りを遂行すると、近距離無線通信が接続された状態、すなわち通信接続の状態に移行する。
ステップ104において、端末1及び第1通信機11は、近距離無線通信が通信接続の状態に移行すると、端末1の認証を実行する。本例の場合、例えば、端末1は、第1通信機11からの要求に応答して、メモリ18に登録されている鍵情報Dkを、近距離無線通信によって第1通信機11に送信する。第1通信機11が鍵情報Dkを受信すると、認証部13は、鍵情報Dkの認証を実行する。本例の場合、認証部13は、鍵情報Dkを正しく復号できるなどして、鍵情報Dkの認証が成立に移行した場合、例えば、車両6の利用許可相当の記録(シェアリングの場合は、予約時間など)、以降の近距離無線通信で使用するセッション鍵、端末1の固有のIDである端末IDなどを取得することができる。一方、認証部13は、鍵情報Dkが正しくなければ、処理を強制終了して、車両6の使用を許可しない。
【0028】
ステップ105において、端末1及び第1通信機11は、鍵情報Dkが認証された場合、認証成立を認識した認証完了状態となる。認証完了状態とは、端末1及び第1通信機11の双方が互いに共通のセッション鍵や端末IDを知る状態をいう。認証部13は、この認証結果S1をコントローラ22に通知する。以上により、端末1の認証が済む。
【0029】
ステップ106において、端末1及び第1通信機11は、認証完了状態に移行後、近距離無線通信の確立が維持されているか否かの確認の通信を実行する。本例の場合、端末1及び第1通信機11の各々は、所定の周期の間隔(コネクションインターバル)で周期電波を送信し、この周期電波に対する応答を受信できるか否かを確認することにより、通信確立が維持されているか否かを監視する。すなわち、端末1が所定の周期間隔で周期電波を送信し、この周期電波に対する応答を受信できれば、通信確立が維持されていると判断し、同様の処理を第1通信機11も実行する。
【0030】
端末1は、自身が送信する周期電波に対する応答を第1通信機11から受信できなくなると、通信を切断する。また、第1通信機11は、自身が送信する周期電波に対する応答を端末1から受信できなくなると、通信を切断する。
【0031】
端末1は、アドバタイズを受信した第2通信機26との間においても、第1通信機11と同様の処理を実行する。なお、本例の場合、第2通信機26に認証機能が設けられていないので、端末1及び第2通信機26の通信では、認証は実行されない。よって、通信接続の状態に移行すると、コネクションインターバルの周期通信が実行され、通信確立が維持されているか否かが監視される。
【0032】
図3に示すように、端末1が認証された後、車両6に対する端末1の位置の判定が実行される。本例の場合、測定部33は、第1通信機11及び第2通信機26の各々との通信において、通信する電波の強度に係る特性値Kを測定する。図3の例では、端末1及び第1通信機11の間で通信される電波の特性値K1が測定され、運転席側の第2通信機26a及び端末1の間で通信される電波の特性値K2が測定され、助手席側の第2通信機26b及び端末1の間で通信される電波の特性値K3が測定され、車内の第2通信機26c及び端末1の間で通信される電波の測定値K4が測定される。
【0033】
判定部34は、測定部33によって測定された特性値Kと、メモリ18に登録された位置データDpとに基づき、操作対象2に対する端末1の位置を判定する。特性値Kが受信信号強度(例えば、RSSI)の場合、判定部34は、受信信号強度の大小関係に基づき、操作対象2に対する端末1の位置を判定する。例えば、端末1が車外に位置する場合、第2通信機26a、26cの受信信号強度が高くなり、車内の第1通信機11及び第2通信機26bの受信信号強度が低くなる。本例の判定部34は、このような受信信号強度の大小傾向を検出した場合、端末1が車外に位置すると判定する。端末1が車内に位置する場合も、同様の考え方により判定される。また、判定部34は、端末1が車外或いは車内に位置するのかを判定することが好ましく、更には車外において、運転席側又は助手席側のいずれに位置するのかを判定することが好ましい。
【0034】
なお、位置判定は、例えば、電波が複数回送信されるのであれば、電波ごとに特性値Kを演算し、この複数の特性値Kから求めた演算値を基に位置判定を実行してもよい。演算値は、例えば、平均値、加重平均、算術平均、相乗平均、調和平均など、種々のパラメータが挙げられる。さらに、位置判定に用いる電波は、端末1及び第1通信機11(第2通信機26)の間でやり取りされる電波であれば、どのタイミングで送信される電波を使用してもよい。
【0035】
判定部34は、端末1の位置判定結果S2(図1参照)を、通信接続の状態にある第1通信機11に対し、近距離無線通信によって送信する。位置判定結果S2は、例えば、コネクションインターバルの間隔で周期送信される電波に乗せて、端末1から第1通信機11に送信されることが好ましい。第1通信機11は、端末1から受信した位置判定結果S2をコントローラ22に出力する。なお、位置判定結果S2は、第2通信機26を経由して、コントローラ22に通知されてもよい。
【0036】
コントローラ22は、取得した認証結果S1及び位置判定結果S2に基づいて、制御機器4の作動を制御する。コントローラ22は、端末1の認証が成立しつつ、端末1が車外に位置すると判定されている場合、車両6のドア施解錠を許可する。このため、ユーザによってドアの施解錠操作が実行された場合、ドアの施解錠の作動が実行される。なお、運転席側車外に端末1が位置すると判定された場合には、運転席ドアの施解錠が許可され、助手席側車外に端末1が位置すると判定された場合には、助手席ドアの施解錠が許可されることが好ましい。
【0037】
ドアの解錠操作は、例えば、デジタルキー7を使用した形式や、車外ドアハンドルのノブをタッチ操作する形式が挙げられる。デジタルキー7を使用した形式は、例えば、デジタルキー7の表示部20に解錠ボタンを表示し、この解錠ボタンをタッチ操作することなどが挙げられる。ドアの施錠操作は、例えば、デジタルキー7を使用した形式や、車外ドアハンドルのロックボタンを操作する形式が挙げられる。デジタルキー7を使用した形式は、例えば、デジタルキー7の表示部20に施錠ボタンを表示し、この施錠ボタンをタッチ操作することなどが挙げられる。
【0038】
コントローラ22は、端末1の認証が成立しつつ、端末1が車内に位置すると判定されている場合、車両6の電源遷移操作を許可する。このため、例えば、運転席のブレーキペダルが踏み込まれた状態で、運転席のエンジンスイッチがプッシュ操作されると、エンジンが始動される。よって、車両6をスタートさせて、目的地への走行が可能となる。
【0039】
上記実施形態の通信システム27及び通信方法によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1-1)認証機能(認証システム3)は、端末1を操作対象2の通信機10と無線通信させて端末1を認証し、その認証結果に基づいて操作対象2の作動を制御する機能である。本例の通信システム27は、この認証機能に使用される。通信機10は、端末1の認証機能を有する第1通信機11と、認証機能とは別の機能を有する第2通信機26との両方を用いて、操作対象2の通信エリアを形成する。
【0040】
本例の構成によれば、操作対象2に予め設けられている第2通信機26を、通信システム27の通信機10としても利用する。このため、通信システム27に新たな通信機10を設ける必要がないので、通信機10の個数を少なく抑えることが可能となる。よって、システム構成を簡素化することができる。
【0041】
(1-2)第1通信機11及び第2通信機26と端末1との間の通信は、近距離無線通信である。第2通信機26は、近距離無線通信の機能を予め有した装置である。この構成によれば、近距離無線通信として、例えば、ブルートゥースなどの汎用的な通信を使用することができる。
【0042】
(1-3)認証機能(認証システム3)は、端末1及び通信機10の間の通信によって、操作対象2に対する端末1の位置を判定する位置判定機能(位置判定システム32)を備えている。位置判定機能の測定部33は、第1通信機11及び第2通信機26の少なくとも一方と端末1との間で通信される電波の強度に係る特性値Kを測定する。位置判定機能の判定部34は、測定部33によって測定された特性値Kを用いて、操作対象2に対する端末1の位置を判定する。この構成によれば、位置判定機能を通信システム27に設ける場合であっても、新たな通信機10を用意する必要がない。
【0043】
(1-4)測定部33は、端末1に設けられている。この構成によれば、例えば、端末1に予め特性値Kの測定機能が設けられていれば、これを利用して電波の特性値Kを測定することができる。
【0044】
(1-5)操作対象2は、車両6である。第2通信機26は、車両6の電源がIGオフとなっていても、通信を実行可能な電力が供給されている。この構成によれば、車両6に搭載する通信機10の個数を少なく抑えることが可能となる。よって、車両6の構成簡素化や部品コスト削減に寄与する。
【0045】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を説明する。なお、第2実施形態は、第1実施形態に記載した端末1の位置判定を、操作対象2で実行するようにした実施例である。よって、第1実施形態と同一部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ詳述する。
【0046】
図5に示すように、第1通信機11及び第2通信機26は、互いに通信可能に構成されている。位置判定を操作対象2で実行する場合、判定部34が操作対象2に設けられる。具体的には、例えば、第1通信機11で位置判定を実行するとした場合、第1通信機11に第2通信機26が各々接続されるとともに、第1通信機11に判定部34が設けられている。なお、第1通信機11及び第2通信機26の通信は、有線又は無線のいずれの形式を用いてもよい。
【0047】
判定部34は、端末1及び第1通信機11の間の通信の際に測定された特性値Kと、端末1及び第2通信機26の間の通信の際に測定された特性値Kとを取得し、これら特性値Kに基づき、操作対象2に対する端末1の位置を判定する。第1通信機11で位置判定を実行する場合、第1通信機11は、端末1及び第2通信機26の間の通信で測定された特性値Kを、有線又は無線によって第2通信機26から収集する。そして、判定部34は、第2通信機26から収集した特性値Kと、端末1及び第1通信機11の通信の際に測定された特性値Kとを用いて、端末1の位置を判定する。
【0048】
上記実施形態の構成によれば、第1実施形態に記載の効果に加え、以下の効果を得ることができる。
(2-1)判定部34は、操作対象2に設けられている。判定部34は、端末1及び第1通信機11の間の通信の際に測定された特性値Kと、端末1及び第2通信機26の間の通信の際に測定された特性値Kとを取得する。判定部34は、これら特性値Kに基づき、操作対象2に対する端末1の位置を判定する。この構成によれば、端末1の位置判定を操作対象2で実行することが可能となるので、位置判定の処理を端末1に実施させずに済む。
【0049】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態を説明する。なお、第3実施形態も、第1及び第2実施形態と異なる部分についてのみ詳述する。
【0050】
図6に示すように、通信システム27は、ユーザの近傍に位置する通信機10と端末1との位置関係が遠い場合に、電波をリレーして通信を実行させるリレー機能を備えている。本例の場合、通信機10は、リレー機能を実現する中継部41を有する。中継部41は、電波のリレーに関わる通信機10に設けられている。中継部41は、ユーザの近傍に位置する通信機10と端末1との位置関係が、直に通信接続の状態に移行できない場所に位置した関係をとる場合、他の通信機10を介して電波のリレーを実行することにより、ユーザ近傍の通信機10と端末1とを通信させる。
【0051】
ここで、図6に示す通り、ユーザが車内の第2通信機26cを作動させたい場合を例に挙げる。なお、同図の例の場合、ユーザが操作入力を実行した第2通信機26cと、その隣の第2通信機26aとが通信接続の状態に移行でき、その第2通信機26aと、車外の端末1とが通信接続の状態に移行できるものとする。
【0052】
第2通信機26cに所定の入力操作が実行された場合、第2通信機26cは、通信接続の状態となっている隣の第2通信機26aに対し、第2通信機26cで操作入力があった旨を通知する操作要求通知St1を、近距離無線通信によって送信する。第2通信機26aの中継部41は、受信した操作要求通知St1を、通信接続の状態となっている端末1に近距離無線通信によって送信する。
【0053】
端末1は、第2通信機26aから操作要求通知St1を受信すると、認証完了状態をとっていれば、操作を許可する旨の通知である操作許可通知St2を、近距離無線通信によって第2通信機26aに送信する。第2通信機26aの中継部41は、端末1から操作許可通知St2を受信すると、これを第2通信機26cに送信する。第2通信機26cは、操作許可通知St2を受信すると、作動が許可された状態となる。これにより、ユーザが作動させたい第2通信機26cに対して端末1が遠くに位置していたとしても、第2通信機26cをユーザの要求通りに作動させることが可能となる。
【0054】
上記実施形態の構成によれば、第1及び第2実施形態に記載の効果に加え、以下の効果を得ることができる。
(3-1)通信システム27の中継部41は、ユーザの近くに位置する通信機10と端末1との位置関係が、直に通信接続の状態に移行できない場所に位置した関係をとる場合、他の通信機10を介して電波のリレーを実行させることにより、ユーザの近くの通信機10と端末1とを通信させる。本例は、通信機10の群が構築する通信エリアを広くとって端末1の存在を監視し、端末1が通信エリア内に入ったときに、通信確立したものとは別の所定の通信機10を作動させるものである。この構成によれば、通信をリレー形式で実行することが可能となるので、本来よりも広い範囲を通信エリアとしてカバーすることが可能となる。よって、制御の多バリエーション化に寄与する。
【0055】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態を説明する。なお、第4実施形態も、第1~第3実施形態と異なる部分についてのみ詳述する。
【0056】
図7に示すように、通信システム27は、通信機10同士の通信を利用して所定の通信機10を作動させるウェルカム機能を備えている。本例の場合、通信システム27は、ウェルカム機能を実現する事前処理部43を備えている。事前処理部43は、端末1及び通信機10が通信接続の状態に移行した場合に、端末1から離れた場所に位置する他の通信機10に対して通信接続完了通知St3を出力して、他の通信機10に事前動作を実行させる。事前動作は、例えば、電源を投入する状態として、所定の操作が検出された場合に直ちに起動可能とする動作であることが好ましい。
【0057】
ここで、図7に示す通り、ユーザの端末1が第2通信機26bと通信接続の状態となった場合を例に挙げる。第2通信機26bの事前処理部43は、端末1及び第2通信機26bが通信接続の状態に移行すると、通信接続完了の通知を、近距離無線通信によって他の通信機10(本例は、第1通信機11、及び第2通信機26a、26c)に送信する。通信接続完了通知St3は、例えば、第2通信機26bのIDと、事前処理を開始させる旨のコマンドとを含む通知であることが好ましい。
【0058】
第1通信機11、及び第2通信機26a、26cは、第2通信機26bから送信された通信接続完了通知St3を受信すると、事前処理を実行する。これにより、第1通信機11、第2通信機26a、26cの各々において、例えば、作動開始の準備状態としておくことが可能となるので、端末1が第1通信機11や第2通信機26a、26cに対し、例えば、作動の操作を実行した場合に、操作に応じた処理を直ちに実行することが可能となる。よって、ユーザの意図に沿った速やかな作動を各通信機10に実行させることが可能となる。
【0059】
上記実施形態の構成によれば、第1~第3実施形態に記載の効果に加え、以下の効果を得ることができる。
(4-1)通信システム27の事前処理部43は、端末1及び通信機10が通信接続の状態に移行した場合に、端末1が近くに存在しない他の通信機10に対して、通信接続の状態となった通信機10から通信接続完了通知St3を出力して、他の通信機10に事前動作を実行させる。本例は、通信機10の群が構築する通信エリアを広くとって端末1の存在を監視し、端末1がエリア内に入ったときに、通信確立したものとは別の所定の通信機10に作動を準備させるものである。この構成によれば、端末1から遠い位置に存在する通信機10であっても、端末1と通信接続の状態となった通信機10から通信接続完了通知St3を他の通信機10に出力して、他の通信機10を作動の待機状態としておくことが可能となる。よって、他の通信機10の作動をタイムラグなくスムーズに開始させることができる。
【0060】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・各実施形態において、第2通信機26は、車外に配置された部材、及び車内に配置された部材のどちらでもよい。
【0061】
・各実施形態において、認証システム3は、デジタルキーシステム5に限定されず、例えば、スマートシステムなどの他システムに変更してもよい。
・各実施形態において、第1通信機11や認証部13は、コントローラ22に組み込まれた構成としてもよい。
【0062】
・各実施形態において、端末1で測定された電波の特性値Kを通信機10に送信して、位置判定を操作対象2で実行してもよい。
・各実施形態において、通信システム27は、位置判定機能が省略されてもよく、例えば、認証機能のみで使用されるシステムとしてもよい。
【0063】
・各実施形態において、端末1は、例えば、主としてキー機能を有する電子キーとしてもよい。
・各実施形態において、操作対象2は、車両6に限定されず、他の装置やシステムに変更してもよい。
【0064】
・各実施形態において、測定部33、判定部34、中継部41、及び事前処理部43の各々は、[1]コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサによって構成されてもよいし、[2]そのようなプロセッサと、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する特定用途向け集積回路(ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路との組み合わせによって構成されてもよい。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード、又は指令を格納している。メモリ(コンピュータ可読媒体)は、汎用、又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。或いは、上記プロセッサを含むコンピュータに代えて、各種処理の全てを実行する1つ以上の専用のハードウェア回路によって構成された処理回路が用いられてもよい。
【0065】
・各実施形態において、測定部33、判定部34、中継部41、及び事前処理部43の各々は、独立したプロセッサから構成されてもよいし、機能の一部分が共用のプロセッサから構築されてもよい。このように、測定部33、判定部34、中継部41、及び事前処理部43は、独立した機能ブロックに限らず、1つの機能ブロックから構成されてもよいし、一部分が共用された機能ブロックから構成されてもよい。
【0066】
・各実施形態において、本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0067】
1…端末、2…操作対象、3…認証システム、6…車両、10…通信機、11…第1通信機、26…第2通信機、27…通信システム、32…位置判定システム、33…測定部、34…判定部、41…中継部、43…事前処理部、K…特性値。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7