(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185905
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】生産設備モニタリングシステム及び生産設備モニタリング方法、並びに、印刷システム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/418 20060101AFI20221208BHJP
G06F 3/12 20060101ALI20221208BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20221208BHJP
H04N 1/00 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
G06F3/12 329
G06F3/12 303
G06F3/12 310
G06F3/12 373
G06F3/12 378
G06F3/12 385
B41J29/38 801
H04N1/00 127A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093820
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】味岡 敬
【テーマコード(参考)】
2C061
3C100
5C062
【Fターム(参考)】
2C061AP01
2C061AQ06
2C061AS02
2C061HJ08
2C061HK06
2C061HK10
2C061HN15
2C061HV09
3C100AA22
3C100AA29
3C100AA38
3C100AA57
3C100AA58
3C100BB13
3C100BB15
3C100BB33
3C100CC02
3C100EE17
5C062AA05
5C062AA13
5C062AA35
5C062AB22
5C062AB38
5C062AC04
5C062AC34
5C062AC58
5C062AC65
5C062AC69
5C062AD05
(57)【要約】
【課題】生産設備の生産性の向上を図ることができる生産設備モニタリングシステムを提供する。
【解決手段】本発明の生産設備モニタリングシステムは、生産設備100の生産性に関する情報を取得する情報取得部50と、情報取得部50が取得した特定の情報の統計結果の一つまたは複数の組み合わせを基に、ユーザーに提示するための一つまたは複数の提案項目参照テーブルを参照して、統計結果の条件を満たす提案項目を抽出する情報管理部20と、情報管理部20が抽出した提案項目を表示する表示部30と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つ以上の生産設備の生産性についてモニタリングする生産設備モニタリングシステムであって、
前記生産設備の生産性に関する情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部が取得した特定の情報の統計結果の一つまたは複数の組み合わせを基に、ユーザーに提示するための一つまたは複数の提案項目参照テーブルを参照して、前記統計結果の条件を満たす提案項目を抽出する情報管理部と、
前記情報管理部が抽出した提案項目を表示する表示部と、
を備える生産設備モニタリングシステム。
【請求項2】
前記情報管理部は、複数の範囲で層別した数値の統計処理の結果をあらかじめ保持し、各数値について生産設備ごとの変動係数を比較し、最も数値が大きい生産設備を、前記提案項目参照テーブルの抽出対象として利用する
請求項1に記載の生産設備モニタリングシステム。
【請求項3】
前記提案項目参照テーブルの各提案項目が重みを持ち、
前記情報管理部は、前記統計結果の条件が該当する提案項目に該当する重みを追加し、最も重み付けが大きな提案項目から優先度を決定して表示する
請求項1に記載の生産設備モニタリングシステム。
【請求項4】
前記情報管理部は、統計処理による全統計値のペア集計を行い、機械学習手法を適用して利用するパラメータを選択する
請求項1に記載の生産設備モニタリングシステム。
【請求項5】
前記情報管理部は、選択したパラメータを利用した提案項目に対して重み付けを増加させる
請求項4に記載の生産設備モニタリングシステム。
【請求項6】
統計処理による統計値を一覧表示し、ユーザーに提案項目を選択させることで、選択済みのパラメータに関する提案項目参照テーブルの重み付けを増加させる
請求項1~5のいずれか1項に記載の生産設備モニタリングシステム。
【請求項7】
一つ以上の生産設備の生産性についてモニタリングする生産設備モニタリング方法であって、
前記生産設備の生産性に関する情報を取得し、
取得した特定の情報の統計結果の一つまたは複数の組み合わせを基に、ユーザーに提示するための一つまたは複数の提案項目のテーブルを参照して、前記統計結果の条件を満たす提案項目を抽出し、
抽出した提案項目を表示する
生産設備モニタリング方法。
【請求項8】
一つ以上の印刷機と、
前記印刷機の生産性についてモニタリングする生産設備モニタリングと、
を備える印刷システムであって、
前記生産設備モニタリングは、
前記印刷機の生産性に関する情報を取得する情報取得部と、
前記情報取得部が取得した特定の情報の統計結果の一つまたは複数の組み合わせを基に、ユーザーに提示するための一つまたは複数の提案項目参照テーブルを参照して、前記統計結果の条件を満たす提案項目を抽出する情報管理部と、
前記情報管理部が抽出した提案項目を表示する表示部と、
を備える
印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産設備モニタリングシステム及び生産設備モニタリング方法、並びに、印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
種々の生産設備において、生産性の向上を図るためには、生産設備の工程の状況を把握することが求められる。工程の状況については、一般に普及している各種の工程モニタリングシステムによって把握することができる。生産設備の生産性に影響を及ぼす要因の一つとして、工程の状況の他に、生産設備の稼働率を挙げることができる。
【0003】
特許文献1には、生産設備の生産性に影響を及ぼす要因の一つである稼働率を算出する技術、具体的には、ジョブ実行中にエラーによる中断時間を計算し、当該中断時間については印刷の稼働率計算に含ませないことで、稼働率の算出を実行時間で計算できるようにした技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、生産設備の生産性に影響を及ぼす要因として、工程の状況や稼働率の他に、工程内の問題項目や実績の問題項目を挙げることができる。しかし、これらの非定常要因である工程内の問題項目や実績の問題項目を作業者が発見するとした場合、作業者の負荷が高く、しかも、作業者が問題を解決するためには作業者のドメイン知識(即ち、専門分野に特化した分野の知識)が必要である。その結果、生産設備の生産性の低下を招く場合がある。
【0006】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、生産設備の生産性の向上を図ることができる生産設備モニタリングシステム及び生産設備モニタリング方法、並びに、印刷システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の生産設備モニタリングシステムは、
一つ以上の生産設備の生産性についてモニタリングする生産設備モニタリングシステムであって、
生産設備の生産性に関する情報を取得する情報取得部と、
情報取得部が取得した特定の情報の統計結果の一つまたは複数の組み合わせを基に、ユーザーに提示するための一つまたは複数の提案項目参照テーブルを参照して、統計結果の条件を満たす提案項目を抽出する情報管理部と、
情報管理部が抽出した提案項目を表示する表示部と、
を備える。
【0008】
本発明による生産設備モニタリング方法は、
一つ以上の生産設備の生産性についてモニタリングする生産設備モニタリング方法であって、
生産設備の生産性に関する情報を取得し、
取得した特定の情報の統計結果の一つまたは複数の組み合わせを基に、ユーザーに提示するための一つまたは複数の提案項目のテーブルを参照して、統計結果の条件を満たす提案項目を抽出し、
抽出した提案項目を表示する。
【0009】
本発明による印刷システムは、
一つ以上の印刷機、及び、印刷機の生産性についてモニタリングする生産設備モニタリングを備える印刷システムであって、
生産設備モニタリングは、
印刷機の生産性に関する情報を取得する情報取得部と、
情報取得部が取得した特定の情報の統計結果の一つまたは複数の組み合わせを基に、ユーザーに提示するための一つまたは複数の提案項目参照テーブルを参照して、統計結果の条件を満たす提案項目を抽出する情報管理部と、
情報管理部が抽出した提案項目を表示する表示部と、
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、生産設備の非定常要因を特定し、非定常要因に対しての工程改善のヒント(改善行動)を作業者(ユーザー)に提示することで、作業者の負担を軽減できるとともに、作業者のドメイン知識が不要となるために、生産設備の生産性の向上を図ることができる。
【0011】
尚、上記した以外の課題、構成、及び、効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の技術が適用される印刷システムの一例を示す概略構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る生産設備モニタリングシステムの構成の概略を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る生産設備モニタリング方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図4】生産設備が印刷機の場合における情報取得部の構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】生産設備が印刷機の場合において、特徴項目から複数の提案項目が参照できる提案項目参照テーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態(実施形態)について、添付図面を参照して説明する。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能又は構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0014】
<印刷システム>
本明細書では、本発明の技術(生産設備モニタリングシステムあるいは生産設備モニタリング方法)が適用される印刷システムを例に挙げて説明することとする。印刷システムは、生産設備の一例である印刷機を一台または複数台配置することによって構築される。印刷システムは、例えば、カタログやチラシ等を大量に印刷する印刷会社で用いられる。本明細書では、生産設備として、印刷機を例に挙げて説明するが、生産設備としては、印刷機に限られるものではない。
【0015】
[印刷システムの構成例]
図1は、本発明の技術が適用される印刷システム(即ち、本発明の印刷システム)の一例を示す概略構成図である。
【0016】
図1に示すように、本適用例に係る印刷システム1は、印刷部10、情報管理部20、及び、表示部30から構成されている。印刷部10と情報管理部20と表示部30とは、インターネットやローカルエリアネットワーク等のネットワーク網40を介して通信可能となっている。
【0017】
印刷部10は、複数台(N台)の印刷機11(11-1~11-n)から構成されている。ここでは、印刷機11として、複数台の印刷機11-1~11-nを有する場合を例示しているが、複数台に限られるものではなく、一台であってもよい。印刷機11(11-1~11-n)としては、周知の構成の印刷機(画像形成装置)を用いることができる。
【0018】
印刷機11(11-1~11-n)は、例えば、電子写真方式の画像形成装置であって、様々な種類の記録材に対して、カタログやチラシ等の画像の形成が可能な装置である。この印刷機11(11-1~11-n)において、画像の形成が可能な記録材は、シート状のものであって、普通紙、厚紙、薄紙、和紙、特殊紙等の様々な材質、坪量、厚み、及び、サイズを有するものである。
【0019】
情報管理部20は、情報収取用サーバ21、生産情報データベース22、及び、情報解析用サーバ23から構成されている。情報管理部20は、例えば、クラウドを介してN台の印刷機11-1~11-nをまとめて管理する。尚、ここでは、情報管理部20について、クラウドを介してN台の印刷機11-1~11-nをまとめて管理するとしているが、N台の印刷機11-1~11-nのそれぞれに情報管理部20を配置する構成を採ることもできる。情報収取用サーバ21、生産情報データベース22、及び、情報解析用サーバ23の詳細については後述する。
【0020】
表示部30は、例えば、パーソナルコンピュータのディスプレイ31からなり、情報管理部20で管理されたN台の印刷機11-1~11-nについての情報を表示する。尚、ここでは、表示部30について、一台のパーソナルコンピュータのディスプレイ31を用いるとしているが、印刷機11-1~11-nのそれぞれにモニター(ディスプレイ)が装備されている場合は、当該モニターを表示部30として用いる構成とすることもできる。
【0021】
上記の構成の印刷システム1において、生産設備の一例としての印刷機11(11-1~11-n)の生産性に影響を及ぼす要因として、工程内の問題項目や実績の問題項目を挙げることができる。しかし、工程内の問題項目や実績の問題項目を作業者(オペレータ)が発見するとした場合、作業者の負荷が高く、しかも、問題を解決するための作業者のドメイン知識が必要であるため、生産設備の生産性の低下を招く場合がある。
【0022】
このような状況、即ち、作業者(オペレータ)の負荷を抑え、作業者のドメイン知識を必要とせず、生産性の向上を図るべくなされたのが、以下に説明する本発明の実施形態に係る生産設備モニタリングシステム及び生産設備モニタリング方法である。
【0023】
<本発明の実施形態に係る生産設備モニタリングシステム>
図2は、本発明の実施形態に係る生産設備モニタリングシステムの構成の概略を示すブロック図である。以下に説明する本実施形態に係る生産設備モニタリングシステムは、印刷機などの生産設備について、その工程改善のヒントをユーザー(作業者/オペレータ)に提示する機能を持っている。
【0024】
図2には、説明の簡略化のために、一つの生産設備を備えるシステム構成を図示しているが、生産設備としては、一つ以上であればよい。また、生産設備として、例えば、先述した印刷機11(11-1~11-n)を例示することができるが、印刷機11(11-1~11-n)に限られるものではない。
【0025】
本実施形態に係る生産設備モニタリングシステムは、生産設備100、情報管理部20、及び、表示部30を備える構成となっている。生産設備100、情報管理部20、及び、表示部30は、先述した印刷システム1の印刷部10、情報管理部20、及び、表示部30に相当する。
【0026】
生産設備100には、当該生産設備100の生産性に関する情報を取得する情報取得部50が備えられている。情報取得部50は、複数のセンサー51-1~51-m、制御部52、及び、ネットワークインターフェース(I/F)53を有する構成となっている。
【0027】
複数のセンサー51-1~51-mは、生産設備100の生産性に関する種々の情報を取得する。制御部52は、ここでの図示を省略したCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、及び、ROM(Read Only Memory)等によって構成され、ROMに格納されている処理プログラムに従って、生産設備100の生産性に関する情報を取得する制御を行う。ネットワークインターフェース53は、制御部52から出力される情報を、ネットワーク網40を介して情報管理部20に送信する。
【0028】
生産設備100の生産性に関する情報としては、稼働ログやエラーログ等の情報、より具体的には、例えば、生産性、稼働時間、エラー種類とそれぞれのエラー回数等の情報を例示することができる。
【0029】
情報管理部20は、複数の範囲で層別した数値の統計処理の結果をあらかじめ保持し、各数値について生産設備ごとの変動係数を比較し、最も数値が大きい生産設備を、後述する提案項目参照テーブルの抽出対象として利用する構成となっている。この構成により、提案項目参照テーブルから提案項目(例えば、文章)を取り出す際に、どの生産設備に適したものかを判別することができる。
【0030】
具体的には、情報管理部20は、情報収取用サーバ21、生産情報データベース22、及び、情報解析用サーバ23から構成されており、例えば、クラウドを介して生産設備100を管理する。尚、ここでは、情報管理部20について、クラウドを介して生産設備100を管理するとしているが、生産設備100内に情報管理部20を配置する構成とすることもできる。
【0031】
情報収取用サーバ21は、生産設備100において、情報取得部50が取得した生産設備100の生産性に関する情報を収集する。生産情報データベース22は、情報収取用サーバ21が収集した生産設備100の生産性に関する情報を保存する。情報解析用サーバ23は、生産情報データベース22に保存されている生産設備100の生産性に関する情報を解析し、特定の情報の統計結果の一つまたは複数の組み合わせを基に、ユーザー(オペレータ)に示すための一つまたは複数の提案項目参照テーブルを参照して、統計結果の条件を満たす提案項目を抽出し、表示部30に対して出力する。提案項目参照テーブルの具体例については後述する。
【0032】
表示部30は、例えば、パーソナルコンピュータのディスプレイ31からなり、情報解析用サーバ23から供給される、統計結果の条件を満たす提案項目を文書にて表示し、ユーザー(オペレータ)に対して提供(提示)する。
【0033】
<本発明の実施形態に係る生産設備モニタリング方法>
続いて、上記の構成の生産設備モニタリングシステムにおいて実行される、本発明の実施形態に係る生産設備モニタリング方法について具体的に説明する。この生産設備モニタリング方法の処理は、情報解析用サーバ23において、当該情報解析用サーバ23を構成するCPUによる制御の下に実行される、生産設備100の生産性に関する情報の解析処理である。
【0034】
図3は、本発明の実施形態に係る生産設備モニタリング方法の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0035】
生産設備100の生産性に関する情報の解析処理に当たって、情報解析用サーバ23を構成するCPU(以下、単に「CPU」と記述する)は、まず、情報収取用サーバ21が収集し、生産情報データベース22に保存されている生産設備100の生産性に関する情報についてのデータを取得する(ステップS11)。
【0036】
次に、CPUは、製品単位、時間帯、日、週、月、機体別などの層別し(ステップS12)、次いで、平均、分散、変動係数、最大、最小など統計処理(統計計算)を行い(ステップS13)。具体的には、ステップS12及びステップS13では、統計処理として、複数の範囲で層別した数値の統計処理をあらかじめ一時記憶部またはデータベースに入れ、各数値について生産設備ごとの変動係数を比較し、最も値が大きい生産設備を、提案項目参照テーブルの抽出対象として利用する処理が行われる。
【0037】
次に、CPUは、相関係数、特徴量抽出、分布の外れ値など、統計処理による全統計値のペア集計を行い、機械学習手法を適用して利用するパラメータを選択し(ステップS14)、次いで、特徴項目をリストアップし(ステップS15)、特徴項目に対応した提案項目の重み付けを加算する(ステップS16)。
【0038】
次に、CPUは、重み付けの加算結果を基に、重みが大きいものから順番に提案項目を文書にて表示部30に表示させる(ステップS17)。この提案項目の表示により、工程改善のヒントをユーザー(作業者/オペレータ)に提示することができる。以上により、生産設備100の生産性に関する情報の解析処理についての一連の処理を終了する。
【0039】
上述したように、本実施形態に係る生産設備モニタリングシステムあるいは生産設備モニタリング方法によれば、生産設備の非定常要因を特定し、非定常要因に対しての工程改善のヒント(改善行動)を、提案項目としてユーザー(作業者/オペレータ)に文書にて提示することができる。このようにして、工程改善のヒントをユーザーに提示することにより、ユーザーの負担を軽減できるとともに、ユーザーのドメイン知識が不要となるために、生産設備の生産性の向上を図ることができる。
【0040】
また、統計処理による全統計値のペア集計を行い、機械学習手法を適用して利用するパラメータを選択することにより、提案項目(例えば、文章)を取り出す際に、改善すべきパラメータとしてより効果の高い提案項目を判別することができる。
【0041】
<生産設備が印刷機の場合の例>
ここで、生産設備100が先述した印刷機11の場合を例に挙げて説明する。
図4は、生産設備100が印刷機11の場合における情報取得部50の構成の一例を示すブロック図である。
【0042】
印刷機11の内部には、測定器として、トレイフルセンサー51-11、トレイエンプティセンサー51-12、ジャム検出センサー51-13、温度センサー51-14、及び、湿度センサー51-15などの各種センサーが装備されている。尚、ここで例示した各種センサーは一例であって、これらのセンサーに限られものではなく、さらには、他のセンサーを装備してもよい。
【0043】
トレイフルセンサー51-11は、排紙トレイに積載された用紙が積載可能枚数に達したことを検知し、その検知結果を制御部52に知らせる。トレイエンプティセンサー51-12は、給紙トレイが空になったことを検知し、その検知結果を制御部52に知らせる。ジャム検出センサー51-13は、用紙の搬送経路においてペーパージャムが発生したことを検知し、その検知結果を制御部52に知らせる。温度センサー51-14は、印刷機11の内部温度を検知し、その検知結果を制御部52に知らせる。湿度センサー51-15は、印刷機11の内部湿度を検知し、その検知結果を制御部52に知らせる。
【0044】
制御部52は、トレイフルセンサー51-11、トレイエンプティセンサー51-12、ジャム検出センサー51-13、温度センサー51-14、及び、湿度センサー51-15などの検知結果に基づいて、印刷機11の生産性に関する情報を取得する制御を行う。具体的には、制御部52は、トレイフルセンサー51-11の検知結果に基づいて、排紙トレイがいっぱいになっているトレイフル状態にあることを知り、トレイエンプティセンサー51-12の検知結果に基づいて、給紙トレイが空のペーパーエンプティ状態にあることを知る。
【0045】
制御部52は、さらに、ジャム検出センサー51-13の検知結果に基づいて、用紙の搬送経路においてペーパージャムが発生した状態にあることを知り、温度センサー51-14及び湿度センサー51-15の検知結果に基づいて、印刷機11の内部の温度及び湿度の状態を知る。印刷機11の内部の温湿度などの周辺環境は、用紙の搬送経路におけるペーパージャムの発生に影響を及ぼす場合がある。
【0046】
[提案項目参照テーブルの具体例]
ここで、生産設備100が印刷機11の場合において、情報解析用サーバ23がユーザー(オペレータ)に対して提案する提案項目を抽出する際に参照する提案項目参照テーブルの具体例について説明する。尚、複数台の印刷機11-1~11-nが配置された現場においては、一人のオペレータが数台(一例として、2~3台)の印刷機を単位として管理することになる。
【0047】
図5は、生産設備が印刷機の場合において、特徴項目から複数の提案項目が参照できる提案項目参照テーブルの一例を示す図である。
図5に示した提案項目参照テーブルでは、例えば、データ項目、層別、付随条件、提案重み、及び、提案項目が示されている。データ項目は、印刷機11の稼働ログデータから特定される、以下に例示する印刷機の非定常要因である。
【0048】
非定常要因であるデータ項目としては、排紙トレイがいっぱいになっているトレイフル(回数)、給紙トレイが空のペーパーエンプティ(回数)、及び、ペーパージャム(回数)を例示することができる。層別としては、機体別や時間を挙げることができる。時間には、時間帯、日付、曜日が含まれる。付随条件としては、ジョブ枚数や時間帯(例えば、11時台や17時台)を挙げることができる。提案重みとしては、ここでは一例として、1/10/100/1000を挙げている。
【0049】
図5に示した提案項目参照テーブルから明らかなように、提案項目参照テーブルの各項目が重みを持ち、条件が該当する提案内容が該当重みを追加される。情報解析用サーバ23は、印刷機のオペレータ(作業者)に対して提示する提案項目を抽出するに際に、
図5に示した提案項目参照テーブルを参照し、最も重み付けが大きな提案項目から優先度を決定し、表示部30に表示する。
【0050】
情報解析用サーバ23は、統計処理による全統計値のペア集計を行い、機械学習手法を適用して利用するパラメータを選択し、選択したパラメータを利用した提案項目に対して重み付けを増加させる。これにより、さらに重要度の高い提案項目を優先させることができる。
【0051】
以下に、印刷機の非定常要因を特定し、一つまたは複数の提案項目参照テーブルを参照して、非定常要因についての改善行動をユーザー(作業者/オペレータ)に提示する提案項目の一例について説明する。
【0052】
・データ項目がペーパートレイフル(回数)、層別が機体別の場合の提案項目
提案重みが100では、(type00-001)作業者の確認頻度を高める。提案重みが1では、(type00-002)モニタリングアプリケーションの画面設定を変更する。提案重みが100では、(type01-001)一度にペーパートレイ(排紙トレイ)からすべての紙を運び出す。提案重みが1000では、(type00-999)他のオペレータの動きを参考にする。
【0053】
・データ項目がペーパートレイフル(回数)、層別が機体別、付随条件がジョブ枚数の場合の提案項目
提案重みが10では、(type00-001)作業者の確認頻度を高める。提案重みが1では、(type00-002)モニタリングアプリケーションの画面設定を変更する。提案重みが10では、(type01-001)一度にペーパートレイ(排紙トレイ)からすべての紙を運び出す。提案重みが100では、(type01-002)大型ペーパートレイを選択する。提案重みが100では、(type01-003)ペーパートレイの自動選択をONにする。
【0054】
・データ項目がペーパートレイフル(回数)、層別が時間の場合の提案項目
提案重みが1では、(type00-001)作業者の確認頻度を高める。提案重みが1では、(type00-002)モニタリングアプリケーションの画面設定を変更する。提案重みが100では、(type00-003)該当時刻後のオペレータ行動を確認する。提案重みが1000では、(type00-999)他の時間帯の動きを参考にする。
【0055】
・データ項目がペーパートレイフル(回数)、層別が時間、付随条件が時間帯11時台の場合の提案項目(因みに、11時台は、昼休み前で気の緩みやすい時間帯)
提案重みが1では、(type00-001)作業者の確認頻度を高める。提案重みが1では、(type00-002)モニタリングアプリケーションの画面設定を変更する。提案重みが100では、(type00-003)該当時刻後のオペレータ行動を確認する。
【0056】
・データ項目がペーパートレイフル(回数)、層別が時間、付随条件が時間帯17時台の場合の提案項目(因みに、17時台は、勤務終了前で気の緩みやすい時間帯)
提案重みが1では、(type00-001)作業者の確認頻度を高める。提案重みが1では、(type00-002)モニタリングアプリケーションの画面設定を変更する。提案重みが100では、(type00-003)該当時刻後のオペレータ行動を確認する。
【0057】
・データ項目がペーパーエンプティ(回数)、層別が機体別、付随条件がジョブ枚数の場合の提案項目
提案重みが10では、(type00-001)作業者の確認頻度を高める。提案重みが1では、(type00-002)モニタリングアプリケーションの画面設定を変更する。提案重みが100では、(type00-999)他のオペレータの動きを参考にする。
【0058】
・データ項目がペーパーエンプティ(回数)、層別が機体別の場合の提案項目
提案重みが100では、(type00-001)作業者の確認頻度を高める。提案重みが1では、(type00-002)モニタリングアプリケーションの画面設定を変更する。提案重みが100では、(type02-001)給紙トレイへ十分な量の紙を入れる。
【0059】
・データ項目がペーパージャム(回数)、層別が機体別の場合の提案項目
提案重みが100では、(type03-001)用紙設定を確認する、(type03-002)除電機能を強化する、(type03-003)温湿度など周辺環境を確認する、あるいは、(type03-004)定着温度を変更する。
【0060】
・データ項目がペーパージャム(回数)、層別が時間の場合の提案項目
提案重みが100では、(type03-001)用紙設定を確認する、(type03-002)除電機能を強化する、(type03-003)温湿度など周辺環境を確認する、あるいは、(type03-004)定着温度を変更する。
【0061】
上述したように、一つまたは複数の提案項目参照テーブルを参照することにより、印刷機の特徴項目である非定常要因から複数の提案項目を抽出することができる。例えば、ペーパートレイフルの回数が、特定の印刷機の特定の曜日に多かった場合、提案項目参照テーブル内では、データ項目がペーパートレイフル(回数)かつ層別が機体別と、データ項目がペーパートレイフル(回数)かつ層別が時間別に相当するため、提案項目参照テーブル中のtype00-001、type00-002、type01-001, type 00-999、type00-003, type00-999が提案項目に該当する。そして、該当する4件の提案項目を表示部30に表示する。これにより、表示部30に表示した提案項目を、非定常要因についての改善行動としてユーザー(作業者/オペレータ)に提案することができる。また、重み付けを単純加算で実施するならば、type00-999が優先表示される。
【0062】
以上説明したように、生産設備の一例である印刷機において、ペーパートレイフル、ペーパーエンプティ、ペーパーシャムなどの印刷機の非定常要因を特定し、非定常要因に対しての工程改善のヒント(改善行動)を、提案項目としてユーザー(作業者/オペレータ)に文書にて提示することができる。このようにして、工程改善のヒントをユーザーに提示することにより、ユーザーの負担を軽減できるとともに、ドメイン知識が不要となるため、生産設備の生産性の向上を図ることができる。
【0063】
<変形例>
尚、本発明は上述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の要旨を逸脱しない限り、その他種々の応用例、変形例を取り得ることは勿論である。例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するためにシステムの構成を詳細かつ具体的に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【0064】
また、上述した実施形態では、生産設備として印刷機を例に挙げて説明したが、生産設備としては、印刷機に限られるものではなく、印刷機の他に、後処理加工機などを例示することができる。後処理加工機は、印刷機で印刷されて出力される用紙に対して、パンチ穴を形成する処理、ステープルを付す処理、マーキング画像を形成する処理、用紙を断裁(切断)する処理などを行う加工機である。
【0065】
また、上述した実施形態では、情報管理部20による制御の下に、印刷機の非定常要因を特定し、非定常要因に対しての工程改善のヒントを、提案項目としてユーザーにて提示するとしたが、統計処理による統計値を一覧表示し、ユーザーに提案項目を選択させることで、選択済みのパラメータに関する提案項目参照テーブルの重み付けを増加させるようにすることもできる。
【符号の説明】
【0066】
1…印刷システム、10…印刷部、11(11-1~11-n)…印刷機、20…情報管理部、21…情報収取用サーバ、22…生産情報データベース、23…情報解析用サーバ、30…表示部、31…パーソナルコンピュータのディスプレイ、50…情報取得部、51-1~51-m…複数のセンサー、51-11…トレイフルセンサー、51-12…トレイエンプティセンサー、51-13…ジャム検出センサー、51-14…温度センサー、51-15…湿度センサー、52…制御部、53…ネットワークインターフェース(I/F)、100…生産設備