(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185908
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】情報提供装置及び情報提供方法
(51)【国際特許分類】
G01C 21/36 20060101AFI20221208BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
G01C21/36
G08G1/16 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093824
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 和幸
(72)【発明者】
【氏名】金子 勝行
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 稔
(72)【発明者】
【氏名】落合 彬光
(72)【発明者】
【氏名】姫野 聡一郎
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129DD13
2F129DD15
2F129DD21
2F129EE02
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2F129FF02
2F129FF11
2F129FF19
2F129GG17
5H181BB04
5H181BB05
5H181CC04
5H181FF04
5H181FF14
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF32
5H181LL07
5H181LL08
(57)【要約】
【課題】自動運転車両の乗員に適切なタイミングで所定の情報を提供することができる情報提供装置を提供する。
【解決手段】非集中状態検出部22は、自動運転車両に搭乗している乗員のバイタルデータに基づいて、乗員が特定の行動に集中していない非集中状態であるか否かを検出する。報知要否判定部23は、非集中状態検出部22が、乗員が非集中状態であると検出したとき、乗員に所定の情報を報知する必要があるか否かを判定する。報知制御部30は、報知要否判定部23が、乗員に所定の情報を報知する必要があると判定したとき、スピーカ31によって発生させる聴覚情報または表示部32に表示する視覚情報によって乗員に所定の情報を報知するよう制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転車両に搭乗している乗員のバイタルデータに基づいて、前記乗員が特定の行動に集中していない非集中状態であるか否かを検出する非集中状態検出部と、
前記非集中状態検出部が、前記乗員が非集中状態であると検出したとき、前記乗員に所定の情報を報知する必要があるか否かを判定する報知要否判定部と、
前記報知要否判定部が、前記乗員に所定の情報を報知する必要があると判定したとき、スピーカによって発生させる聴覚情報または表示部に表示する視覚情報によって前記乗員に所定の情報を報知するよう制御する報知制御部と、
を備える情報提供装置。
【請求項2】
前記自動運転車両に配置されているカメラが前記乗員を撮影した撮影画像データに基づいて、前記乗員がどのような行動をしているかを検出する行動検出部をさらに備え、
前記報知制御部は、前記行動検出部によって前記乗員が特定の行動をした後に前記特定の行動を中断していることが検出され、かつ、前記報知要否判定部によって前記乗員に所定の情報を報知する必要があると判定したときに、前記聴覚情報または前記視覚情報によって前記乗員に前記所定の情報を報知する請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項3】
前記非集中状態検出部は、前記自動運転車両に搭乗している複数の乗員における乗員ごとに非集中状態であるか否かを検出し、
前記報知要否判定部は、前記乗員ごとに所定の情報を報知する必要があるか否かを判定する
請求項1または2に記載の情報提供装置。
【請求項4】
前記報知制御部は、前記複数の乗員が特定の行動に集中している状態における前記乗員ごとの特定の行動の種類に応じて、非集中状態となって所定の情報を報知する必要があると判定された乗員に対する報知の仕方を異ならせる請求項3に記載の情報提供装置。
【請求項5】
自動運転車両に搭乗している乗員のバイタルデータに基づいて、前記乗員が特定の行動に集中していない非集中状態であるか否かを検出し、
前記乗員が非集中状態であると検出されたとき、前記乗員に所定の情報を報知する必要があるか否かを判定し、
前記乗員に所定の情報を報知する必要があると判定されたとき、スピーカによって発生させる聴覚情報または表示部に表示する視覚情報によって前記乗員に所定の情報を報知する
情報提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動運転車両の乗員に所定の情報を提供する情報提供装置及び情報提供方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動運転車両が登場し始めている。将来的に自動運転車両が普及すると、自動運転車両の乗員は、あたかも自宅で生活しているのと等価な状態で目的地に到達することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動運転車両の乗員は、車両の運転状況をほとんど意識せず、読書したり、動画を鑑賞したり、食事をしたりすると考えられる。複数の乗員が搭乗している場合には、複数の乗員は車両の運転状況をほとんど意識せず、互いに会話すると考えられる。特許文献1には、自動運転車両の乗員に運転状況を通知することが記載されている。ところが、1またはそれ以上の乗員が、読書、動画鑑賞、食事、または会話をしながら、あたかも自宅で生活しているのと等価な状態で目的地まで移動する際には、乗員に不適切なタイミングで情報を提供することを避けることが望まれる。
【0005】
本発明は、自動運転車両の乗員に適切なタイミングで所定の情報を提供することができる情報提供装置及び情報提供方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、自動運転車両に搭乗している乗員のバイタルデータに基づいて、前記乗員が特定の行動に集中していない非集中状態であるか否かを検出する非集中状態検出部と、前記非集中状態検出部が、前記乗員が非集中状態であると検出したとき、前記乗員に所定の情報を報知する必要があるか否かを判定する報知要否判定部と、前記報知要否判定部が、前記乗員に所定の情報を報知する必要があると判定したとき、スピーカによって発生させる聴覚情報または表示部に表示する視覚情報によって前記乗員に所定の情報を報知するよう制御する報知制御部とを備える情報提供装置を提供する。
【0007】
本発明は、自動運転車両に搭乗している乗員のバイタルデータに基づいて、前記乗員が特定の行動に集中していない非集中状態であるか否かを検出し、前記乗員が非集中状態であると検出されたとき、前記乗員に所定の情報を報知する必要があるか否かを判定し、前記乗員に所定の情報を報知する必要があると判定されたとき、スピーカによって発生させる聴覚情報または表示部に表示する視覚情報によって前記乗員に所定の情報を報知する情報提供方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の情報提供装置及び情報提供方法によれば、自動運転車両の乗員に適切なタイミングで所定の情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態の情報提供装置を示すブロック図である。
【
図2】乗員の脳波のうちのガンマ波の一例を示す波形図である。
【
図3】第1実施形態の情報提供装置の動作、及び第1実施形態の情報提供方法で実行される処理を示すフローチャートである。
【
図4】第2実施形態の情報提供装置を示すブロック図である。
【
図5】第2実施形態の情報提供装置が備える乗員データ記憶部に記憶されている乗員データの一例を示す図である。
【
図6】第2実施形態の情報提供装置の動作、及び第2実施形態の情報提供方法で実行される処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、各実施形態の情報提供装置及び情報提供方法について、添付図面を参照して説明する。
【0011】
<第1実施形態>
図1に示すように、自動運転車両は、ナビゲーション部10、GNSS受信部15、入力部16、乗員監視部20、カメラ24、バイタルデータ受信部26、報知制御部30、スピーカ31、表示部32、自動運転制御装置40を備える。自動運転車両には、少なくとも一人の乗員が搭乗している。
【0012】
ナビゲーション部10は、地図データ記憶部11、現在地算出部12、記憶部13、経路探索部14を有する。現在地算出部12及び経路探索部14は、マイクロコンピュータまたはマイクロプロセッサで構成されていてもよい。地図データ記憶部11は例えばフラッシュメモリである。地図データ記憶部11は、地図データを固定的に記憶する記憶部であってもよいし、外部の地図提供サーバから提供された地図データを一時的に記憶する記憶部であってもよい。
【0013】
GNSS受信部15は、全地球航法衛星システム(Global Navigation Satellite System:GNSS)用の3つ以上の衛星からの電波を受信する。GNSSは、一例としてGPS(Global Positioning System)である。現在地算出部12は、GNSS受信部15が受信した3つ以上の衛星からの電波を受信したGNSS信号を用いて自動運転車両の現在地を示す位置情報を算出する。現在地算出部12は、慣性航法を用いて自動運転車両の位置情報を算出してもよいし、GNSS信号と慣性航法とを組み合わせて自動運転車両の位置情報を算出してもよい。
【0014】
乗員または任意の入力者が入力部16によって自動運転車両の目的地を入力すると、記憶部13は目的地を記憶する。記憶部13は一時記憶メモリであってもよい。記憶部13を一時記憶メモリの代わりに不揮発性メモリとし、記憶部13に自動運転車両の1またはそれ以上の目的地を記憶してもよい。乗員または任意の入力者は、経路探索部14によって新たに出発地(現在地)から目的地までの経路を探索する際に、入力部16によって記憶部13に記憶されている目的地を選択してもよい。
【0015】
経路探索部14は、地図データ、現在地、及び入力または選択された目的地に基づいて出発地から目的地までの経路を探索して保持する。自動運転制御装置40は、自動運転車両を出発地から目的地までの経路に沿って自動運転するよう制御する。
【0016】
乗員監視部20は、行動検出部21、非集中状態検出部22、報知要否判定部23を有する。乗員監視部20は、マイクロコンピュータまたはマイクロプロセッサで構成されていてもよい。乗員監視部20及び報知制御部30が、マイクロコンピュータまたはマイクロプロセッサで構成されていてもよい。少なくとも乗員監視部20及び報知制御部30は、第1実施形態の情報提供装置を構成する。
【0017】
カメラ24は車両内に配置されており、乗員を撮影する。車両内に複数のカメラ24が配置されていてもよい。1またはそれ以上のカメラ24は、車両内の乗員を撮影して、撮影画像データを行動検出部21に継続的に供給する。行動検出部21は、各乗員がどのような行動をしているかを継続的に検出して、検出結果を報知制御部30に供給する。
【0018】
乗員の特定の行動とは、例えば、読書、スマートフォン、タブレット端末、またはパーソナルコンピュータの使用、食事、会話等である。スマートフォン、タブレット端末、またはパーソナルコンピュータの使用には、動画鑑賞が含まれてもよい。スマートフォン、タブレット端末、またはパーソナルコンピュータの使用時に、行動検出部21は、指または手を頻繁に動かしている場合には動画鑑賞以外の使用、指または手をさほど動かさず、視線の変化が少ない場合は動画鑑賞での使用と判定してもよい。
【0019】
乗員は、バイタルデータ送信部25を装着している。バイタルデータ送信部25は、乗員のバイタルデータとして乗員の脳波のうちのガンマ波を検出して、デジタル値であるガンマ波検出値をバイタルデータ受信部26に送信するのがよい。バイタルデータ送信部25は、乗員の脳波のベータ波とガンマ波との検出値をバイタルデータ受信部26に送信してもよいし、ガンマ波とシータ波との検出値をバイタルデータ受信部26に送信してもよい。
【0020】
バイタルデータ送信部25は、一例として、イヤホン型のガンマ波検出デバイスを用いることができる。バイタルデータ送信部25とバイタルデータ受信部26とは、一点鎖線で示すように近距離無線通信で互いに接続されている。近距離無線通信の通信規格は、一例としてブルートゥース(登録商標)である。以下、乗員のバイタルデータとしてガンマ波を用いる場合を例とする。
【0021】
バイタルデータ受信部26は、乗員のガンマ波検出値を受信すると、ガンマ波検出値を非集中状態検出部22に供給する。非集中状態検出部22は、バイタルデータ受信部26より供給されたガンマ波検出値に基づいて、乗員が特定の行動に集中していない非集中状態であるか否かを検出する。
【0022】
例えば、読書中、スマートフォン、タブレット端末、またはパーソナルコンピュータの使用中、会話中において、行動がしばらく中断している状態で、乗員は非集中状態となることがある。乗員がしばらく何もしていない状態においても、乗員は非集中状態となることがある。スマートフォン、タブレット端末、またはパーソナルコンピュータを使用している状態は、動画鑑賞をしている状態を含む。非集中状態とは、特定の行動をした後に特定の行動をしばらく中断して特定の行動への集中が途切れている状態と、特定の行動をしない、いわゆる“ぼーっとしている”状態とを含む。非集中状態とは、意識が散漫になっている状態ということもできる。
【0023】
図2は、ガンマ波の一例を示している。ガンマ波検出値に基づいて非集中状態であるか否かを検出する場合、非集中状態検出部22は、破線で囲んでいるように、ガンマ波(ガンマ波検出値)の振幅が小さい場合に非集中状態であると判定することができる。非集中状態検出部22は、ガンマ波検出値を微分してガンマ波検出値の時間的な変化が閾値より小さい場合に非集中状態であると判定することもできる。
【0024】
報知要否判定部23は、非集中状態検出部22によって乗員が非集中状態であると検出されたとき、乗員に所定の情報を報知する必要があると判定する。なお、報知要否判定部23は、自動運転車両が、目的地に到着したか否かによって乗員に所定の情報を報知する必要があるか否かの判定を異ならせる。また、報知要否判定部23は、自動運転車両が、経路探索部14が設定した経路のどこを走行しているかによって、乗員に報知する情報を異ならせるよう制御することがあってもよい。
【0025】
上記のように、自動運転車両の乗員は、車両の運転状況をほとんど意識せず、読書したり、動画を鑑賞したり、食事をしたりするため、自動運転車両が現在どこを走行しているのかを気にすることはほとんどない。しかしながら、乗員が非集中状態である場合には、ふと、現在地を知りたくなることがある。そこで、報知要否判定部23は、乗員に所定の情報を報知する必要があると判定したとき、所定の情報の1つとして、現在地を報知するよう報知制御部30に指示する。
【0026】
報知制御部30は、現在地の報知の指示を受けて、現在地算出部12より現在地を示す位置情報を読み出し、スピーカ31によって現在地を音声(聴覚情報)によって報知したり、表示部32に現在地を示す文字(視覚情報)を表示したりする。以下、報知とは聴覚情報による報知及び視覚情報による表示の双方を含むとする。
【0027】
報知制御部30は、行動検出部21による乗員の行動の検出結果を考慮して、現在地を報知してもよい。具体的には、報知制御部30は、行動検出部21によって乗員が特定の行動をした後に特定の行動を中断して非集中状態となっていることが検出され、かつ、報知要否判定部23によって乗員に所定の情報を報知する必要があると判定したときに、現在地を報知してもよい。即ち、報知制御部30は、非集中状態検出部22によって乗員が非集中状態であることが検出された場合でも、行動検出部21による乗員の行動の検出結果に応じて、現在地を報知しないことがあってもよい。
【0028】
報知制御部30は、表示部32に現在地を示す文字を表示し、スピーカ31によって表示部32に現在地が表示されることを案内する案内音を発生させてもよい。スピーカ31及び表示部32を、複数の乗員の座席ごとに設けてもよい。車両内にスピーカ31を1つ設け、表示部32を複数の乗員の座席ごとに設けてもよい。
【0029】
ここでは、報知制御部30が、現在地の報知の指示を受けて現在地算出部12より現在地を示す位置情報を読み出すようにしている。現在地算出部12が算出した現在地を示す位置情報を常に報知制御部30に供給し、報知制御部30は、現在地の報知の指示を受けたら、スピーカ31と表示部32とのうちの少なくとも一方で現在地を報知してもよい。
【0030】
報知制御部30は、自動運転車両が、経路探索部14が設定した経路のどこを走行しているかを示す情報を経路探索部14より読み出すことができる。報知制御部30は、他の所定の情報として、目的地に到着するまでの予想時間を報知するよう制御してもよいし、出発地から目的地までの経路のうちのどの程度まで移動したかを報知するよう制御してもよい。報知制御部30は、他の所定の情報として、現在、どの地域(日本であれば、都道府県名、市名、または町名等)を走行しているかを報知するよう制御してもよい。
【0031】
以上のように、報知制御部30は、乗員が特定の行動をしていて行動が中断して非集中状態となっているとき、または乗員が特定の行動をせず非集中状態となっているときに、現在地等の情報を報知するよう制御する。第1実施形態の情報提供装置及び情報提供方法によれば、読書、動画鑑賞、食事、会話等を実施中においても妨げとなることを回避した適切なタイミングで所定の情報を乗員に提供することができる。
【0032】
図3に示すフローチャートを用いて、第1実施形態の情報提供装置の動作、及び第1実施形態の情報提供方法で実行される処理を説明する。
図3に示すフローチャートは、乗員監視部20及び報知制御部30以外のナビゲーション部10及び自動運転制御装置40における動作も含む。
【0033】
図3において、自動運転車両のパワーがオンされて処理が開始されると、乗員または任意の入力者は、ステップS1にて、自動運転車両の目的地を入力する。経路探索部14は、ステップS2にて、出発地から目的地までの経路を探索する。自動運転制御装置40は、ステップS3にて、自動運転を開始するよう自動運転車両を制御する。行動検出部21は、ステップS4にて、乗員の行動の検出を開始する。
【0034】
経路探索部14は、ステップS5にて、目的地に到着したか否かを判定する。目的地に到着していなければ(NO)、非集中状態検出部22は、ステップS6にて、いずれかの乗員が非集中状態であると検出したか否かを判定する。いずれの乗員も非集中状態であると検出しなければ(NO)、処理はステップS5に戻される。
【0035】
ステップS6にていずれかの乗員が非集中状態であると検出されれば(YES)、報知要否判定部23は、ステップS7にて、非集中状態が所定時間以上継続しているか否かを判定する。所定時間は、例えば、30秒、60秒、180秒等、適宜に設定すればよい。乗員への情報の提供の頻度を多くする場合には所定時間を比較的短く設定し、乗員の特定の行動への集中を妨げないように乗員への情報の提供の頻度を少なくする場合には所定時間を比較的長く設定すればよい。
【0036】
ステップS7にて非集中状態が所定時間以上継続していなければ(NO)、処理はステップS5に戻される。ステップS7にて非集中状態が所定時間以上継続していれば(YES)、報知要否判定部23は、ステップS8にて、同じ乗員に現在地を報知してから所定時間以上経過しているか否かを判定する。同じ乗員に現在地を報知してから所定時間以上経過していなければ(NO)、処理はステップS5に戻される。ステップS8を設けているのは、直前に乗員に現在地を報知してからさほどの時間が経過していない場合に、同じ乗員に再び現在地を報知する必要はないからである。
【0037】
ステップS8における所定時間は、例えば、5分、10分、20分等、適宜に設定すればよい。乗員が集中している場合に集中を妨げないよう、ステップS6における非集中状態が継続を判断する所定時間より長い時間を設定することが望ましい。また、一般的に、特定の行動をしている最中に非集中状態になった場合、集中状態に戻るには時間がかかるため、乗員が集中状態に入ることを妨げない意図もある。
【0038】
ステップS8にて同じ乗員に現在地を報知してから所定時間以上経過していれば(YES)、報知制御部30は、ステップS10にて、非集中状態の乗員に現在地を報知して、処理はステップS5に戻される。なお、バイタルデータまたはカメラ24から供給される撮影画像データに基づいて、乗員が眠っていると判定できるときには、ガンマ波に基づいて非集中状態であることが検出された場合でも、現在地を報知しないようにするのがよい。
【0039】
このように、ステップS6にていずれかの乗員が非集中状態であると検出され、ステップS7にて非集中状態が所定時間以上継続し、ステップS8にて同じ乗員に現在地を報知してから所定時間以上経過していれば、報知要否判定部23は、その乗員に現在地を報知するよう報知制御部30に指示する。
【0040】
一方、ステップS5にて目的地に到着していれば(YES)、報知制御部30は、ステップS12にて、乗員に目的地に到着したことを報知するようスピーカ31と表示部32とのうちの少なくとも一方を制御する。ここでは、少なくともスピーカ31で乗員に目的地に到着したことを報知するのがよい。続けて、自動運転制御装置40は、ステップS13にて、自動運転を終了するよう自動運転車両を制御して、自動運転車両は処理を終了させる。
【0041】
<第2実施形態>
図4に示す第2実施形態は、自動運転車両に複数の乗員が搭乗しているときの好ましい構成例を示している。
図4においては、
図1と共通部分の図示を省略している。ここでは、自動運転車両に5人の乗員が搭乗しているとする。
図4において、少なくとも乗員監視部20及び報知制御部30は、第2実施形態の情報提供装置を構成する。
【0042】
乗員データ記憶部27は、5人の乗員に関する乗員データを記憶している。
図5に示すように、乗員データは、乗員を特定する乗員IDに、その乗員の顔写真データと、その乗員が装着しているバイタルデータ送信部25を特定するバイタルデータ送信部ID、その乗員が所持している携帯端末を特定する携帯端末IDとを対応付けたデータである。携帯端末は携帯電話であってもよく、携帯端末IDは電話番号であってもよい。
【0043】
乗員IDが001~005である各乗員は、それぞれ、バイタルデータ送信部IDがTv001~Tv005であるバイタルデータ送信部25a~25eを装着している。乗員IDが001~005である各乗員は、それぞれ、携帯端末IDがM001~M005である携帯端末33a~33eを所持している。乗員IDが001~005である各乗員の顔写真データは、それぞれJPG001~JPG005である。バイタルデータ送信部25a~25eのいずれかを特定しないバイタルデータ送信部をバイタルデータ送信部25と称し、携帯端末33a~33eのいずれかを特定しない携帯端末を携帯端末33と称することがある。
【0044】
行動検出部21は、乗員データ記憶部27に記憶されている顔写真データを参照しながら、カメラ24から供給される撮影画像データを解析することによって各乗員の行動を検出する。非集中状態検出部22には、バイタルデータ受信部26が受信した各乗員のガンマ波検出値が供給される。非集中状態検出部22は、各乗員が非集中状態であるか否かを検出する。報知要否判定部23は、乗員ごとに、所定の情報を報知する必要があるか否かを判定する。
【0045】
報知制御部30と携帯端末33a~33eとは、一点鎖線で示すように近距離無線通信で互いに接続されている。報知制御部30は、第1実施形態と同様に、スピーカ31と表示部32とのうちの少なくとも一方で5人の乗員に現在地等の所定の情報を報知することができる。また、報知制御部30は、携帯端末33a~33eのうちの1またはそれ以上に、所定の情報を個別に報知することができる。
【0046】
例えば、報知要否判定部23が、乗員IDが001である乗員のみに所定の情報を報知する必要があると判定したとする。報知制御部30は、乗員データ記憶部27に記憶されている乗員データを参照して、乗員IDが001である乗員が所持する携帯端末IDがM001である携帯端末33aに所定の情報を報知する。
【0047】
具体的には、報知制御部30は、携帯端末33aのスピーカによって音声(聴覚情報)を発生させて乗員IDが001である乗員に所定の情報を報知することができる。また、報知制御部30は、携帯端末33aの表示部に所定の情報を示す文字(視覚情報)を表示させて、乗員IDが001である乗員に所定の情報を報知することができる。ここで、報知制御部30は、音声の発生または文字の表示と併せて、携帯端末33aのバイブレーション機能を利用して携帯端末33aを振動させてもよい。携帯端末33の振動は触覚情報である。
【0048】
次に、5人の乗員がとる特定の行動に応じて、所定の情報の提供方法を異ならせる場合の例を説明する。
【0049】
例1では、5人の乗員全員で互いに会話している。つまり、5人の乗員全員が同一行動をしている。この場合、5人の乗員のうちの一人でも非集中状態が所定時間以上継続している状態となったら、スピーカ31と表示部32とのうちの少なくとも一方で5人の乗員全員に所定の情報を報知してもよい。このとき、スピーカ31によって報知せず、表示部32のみによって報知してもよい。また、全携帯端末に同じ所定の情報を報知してもよい。
【0050】
ここで、会話は、参加者の全員によって行われる行動の一例である。このような行動の他の例としては、全員参加型のゲーム、子供を含む複数の乗員が人形または玩具等を使って遊ぶおままごと等がある。
【0051】
非集中状態が所定時間以上継続している乗員のみに対して、非集中状態が所定時間以上継続している乗員が所持する携帯端末33によって所定の情報を報知することも可能である。
【0052】
例2では、2人の乗員が互いに会話し、3人の乗員が互いに会話している。つまり、同一行動をする乗員のグループが2つある。この場合も、1人でも非集中状態が所定時間以上継続している状態となったら、スピーカ31と表示部32とのうちの少なくとも一方で5人の乗員に所定の情報を報知してもよい。なお、5人の乗員全員で互いに会話しているか、5人の乗員が分かれて会話しているかは、撮影画像データに基づいて判別することが可能である。
【0053】
表示部32が自動運転車両内に複数配置されている場合には、非集中状態が所定時間以上継続している乗員の近くの表示部32によって所定の情報を報知するのがよい。非集中状態が所定時間以上継続している乗員のみに対して、非集中状態が所定時間以上継続している乗員が所持する携帯端末33によって所定の情報を報知してもよい。非集中状態が所定時間以上継続している乗員が、同一行動をしている2人の乗員のうちの1人であったとする。この場合、2人の乗員それぞれが所持する携帯端末33によって、その2人の乗員に所定の情報を報知してもよい。
【0054】
例3では、5人の乗員全員が食事をしている。5人の乗員のうちの一人でも非集中状態が所定時間以上継続している状態となったら、スピーカ31と表示部32とのうちの少なくとも一方で5人の乗員に所定の情報を報知してもよい。このとき、スピーカ31によって報知するのがよい。ここで、食事は、複数の乗員が集まって行動するものの各乗員の行動そのものは個別に行われる行動の一例である。このような行動の他の例としては、同一の机で各乗員が個別に行う大学の課題レポートの作成、車載モニタ(表示部32またはその他の表示部)を用いた複数の乗員による映画鑑賞、複数の乗員が行うカラオケ等がある。
【0055】
例4では、5人の乗員が個別に行動している。具体的には、一例として次のとおりである。乗員IDが001である乗員が携帯電話で通話している。乗員IDが002である乗員がパーソナルコンピュータを操作している。乗員IDが003である乗員がタブレット端末で動画を鑑賞している。乗員IDが004である乗員が読書している。乗員IDが005である乗員がスマートフォンを操作している。
【0056】
このような場合には、5人の乗員のうちの非集中状態が所定時間以上継続している乗員のみに所定の情報を提供するよう、その乗員が所持する携帯端末33によって所定の情報を報知するのがよい。このようにすれば、他の乗員の特定の行動への集中を妨げることを回避することができる。
【0057】
以上のように、第2実施形態の情報提供装置においては、非集中状態検出部22は、自動運転車両に搭乗している複数の乗員における乗員ごとに非集中状態であるか否かを検出する。報知要否判定部23は、乗員ごとに所定の情報を報知する必要があるか否かを判定する。
【0058】
報知制御部30は、複数の乗員が特定の行動に集中している状態における乗員ごとの特定の行動の種類に応じて、非集中状態となって所定の情報を報知する必要があると判定された乗員に対する報知の仕方を異ならせるのがよい。行動の種類とは、読書、スマートフォン、タブレット端末、またはパーソナルコンピュータの使用、食事、会話等であり、スマートフォン、タブレット端末、またはパーソナルコンピュータの使用には、通話、動画鑑賞等が含まれる。
【0059】
複数の乗員は、個々に特定の行動に集中していることもあり、複数の乗員の全員が1つの特定の行動に集中していることもある。複数の乗員が少なくとも2つのグループに分かれて、グループごとに特定の行動に集中していることもある。報知制御部30は、このような複数の乗員の状態に応じて、所定の情報を報知する必要があると判定された乗員に対する報知の仕方を異ならせてもよい。
【0060】
第2実施形態の情報提供装置において、報知制御部30は、目的地まで所定の距離以内でなければ、または目的地に到着するまでの予想時間が所定の時間以内でなければ、複数の乗員のうちの選択された乗員のみに情報を報知するのがよい。報知制御部30は、目的地に近づき、目的地まで所定の距離以内であれば、または目的地に到着するまでの予想時間が所定の時間以内であれば、仮に報知要否判定部23が一部の乗員のみに情報を報知する必要があると判定した場合であっても、全員に情報を報知してもよい。
【0061】
携帯端末33a~33eは、各携帯端末33がどのような状態であるのか、どのように操作されているかを示すステータス情報を乗員監視部20に送信するように構成されていてもよい。携帯端末33がこのように構成されていれば、報知要否判定部23は、各乗員が各携帯端末33で通話しているのか、動画を鑑賞しているのか、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)利用のために操作しているのか等の各携帯端末33の状態を正確に取得することができる。報知要否判定部23は、各携帯端末33の状態を正確に取得した上で、情報の報知の要否を判定することが可能となる。
【0062】
図6に示すフローチャートを用いて、第2実施形態の情報提供装置の動作、及び第2実施形態の情報提供方法で実行される処理を説明する。
図6において、
図3と同一の動作または処理には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0063】
図6において、ステップS8に続けて、報知制御部30は、ステップS9にて、非集中状態の乗員と同一行動の乗員がいるか否かを判定する。報知制御部30には、行動検出部21から各乗員がどのような行動をしているかの検出結果が入力されるので、非集中状態の乗員と同一行動の乗員がいるか否かを判定することができる。非集中状態の乗員と同一行動の乗員がいなければ(NO)、報知制御部30には、ステップS10にて、非集中状態の乗員のみに現在地を報知して、処理はステップS5に戻される。この場合、各乗員に対応して設けられている表示部32によって非集中状態の乗員に現在地を報知するのがよい。
【0064】
ステップS9にて非集中状態の乗員と同一行動の乗員がいれば(YES)、報知制御部30には、ステップS10にて、非集中状態の乗員と、同一行動の乗員に現在地を報知して、処理はステップS5に戻される。
【0065】
第2実施形態の情報提供装置及び情報提供方法においては、ステップS11にて、非集中状態の乗員と同一行動を行っている集中状態の乗員にも現在地が報知される。報知すべき情報を受信しても情報を報知しない設定が選択できるように構成されていてもよい。このようにすれば、集中状態の乗員は、携帯端末33によって報知されないので、所定の行動に集中することができる。
【0066】
図4に示す構成において、バイタルデータ送信部25と携帯端末33とが一体化されていてもよい。
【0067】
本発明は以上説明した第1または第2実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。乗員が非集中状態であるか否かを検出するには少なくともガンマ波を用いるのが好適であるが、乗員の他のバイタルデータを用いて非集中状態であるか否かを検出することも可能であり、検出方法は限定されない。他のバイタルデータは、呼吸数、心拍数、皮膚電位、血圧、体温等である。
【符号の説明】
【0068】
10 ナビゲーション部
11 地図データ記憶部
12 現在地算出部
13 記憶部
14 経路探索部
15 GNSS受信部
16 入力部
20 乗員監視部
21 行動検出部
22 非集中状態検出部
23 報知要否判定部
24 カメラ
25,25a~25e バイタルデータ送信部
26 バイタルデータ受信部
27 乗員データ記憶部
30 報知制御部
31 スピーカ
32 表示部
33a~33e 携帯端末