(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185917
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】フレキシブル基板
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20221208BHJP
H05K 3/46 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
H05K1/02 B
H05K3/46 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093846
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】松丸 幸平
【テーマコード(参考)】
5E316
5E338
【Fターム(参考)】
5E316AA02
5E316AA12
5E316AA35
5E316AA38
5E316BB02
5E316BB04
5E316BB06
5E316CC02
5E316CC08
5E316CC32
5E316CC34
5E316CC38
5E316CC39
5E316DD12
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5E316FF07
5E316HH11
5E316HH23
5E338AA03
5E338AA12
5E338BB13
5E338BB25
5E338BB54
5E338BB63
5E338CC01
5E338CC06
5E338EE21
(57)【要約】
【課題】曲げ特性に優れ、かつ軽量であるフレキシブル基板を提供する。
【解決手段】フレキシブル基板10は、1または複数の絶縁基材11と、絶縁基材11の少なくとも一方の面に形成された導体層12と、を有する積層体1を備える。積層体1は、ループ状に折り返された折曲げ部15と、折曲げ部15の一方および他方の端部からそれぞれ延出する非曲げ領域17,18と、を有する。折曲げ部15の少なくとも一つの導体層12は、アルミニウムを含む金属で形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または複数の絶縁基材と、前記絶縁基材の少なくとも一方の面に形成された導体層と、を有する積層体を備え、
前記積層体は、
ループ状に折り返された折曲げ部と、
前記折曲げ部の一方および他方の端部からそれぞれ延出する非曲げ領域と、を有し、
前記折曲げ部の少なくとも一つの前記導体層は、アルミニウムを含む金属で形成されている、
フレキシブル基板。
【請求項2】
前記非曲げ領域において前記積層体が備える前記導体層の数は、前記折曲げ部における前記導体層の数より多い、
請求項1記載のフレキシブル基板。
【請求項3】
前記折曲げ部は、複数の前記導体層を備え、
複数の前記導体層は、前記絶縁基材を介して隣り合う2つの前記導体層を含み、
2つの前記導体層のうち一方がグランドプレーン層であり、他方が信号線路であり、
少なくとも前記グランドプレーン層は、前記アルミニウムを含む金属で形成されている、請求項1または2に記載のフレキシブル基板。
【請求項4】
前記グランドプレーン層は、前記信号線路に対して前記折曲げ部の外周側に位置する、請求項3に記載のフレキシブル基板。
【請求項5】
前記折曲げ部の前記絶縁基材は、熱可塑性樹脂で形成されている、請求項1~4のうちいずれか1項に記載のフレキシブル基板。
【請求項6】
前記絶縁基材の誘電正接は、5×10-3以下である、請求項1~5のうちいずれか1項に記載のフレキシブル基板。
【請求項7】
複数の前記絶縁基材のうち隣り合う前記絶縁基材は、接着層を介して接合されている、請求項1~6のうちいずれか1項に記載のフレキシブル基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル基板に関する。
【背景技術】
【0002】
フレキシブル基板は、例えば、高周波信号によって無線通信を行う無線通信機器に用いることができる。フレキシブル基板には、例えば、マイクロストリップ伝送線路、ストリップ伝送線路などが採用される。これらの伝送線路では、信号線路となる導体層に加えて、グランドプレーン層となる導体層が必要となる。
【0003】
フレキシブル基板は、一部が曲げられた形態で使用されることがある(例えば、特許文献1を参照)。フレキシブル基板を用いた無線通信機器は、車両、ドローンなどの移動体に搭載されることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のフレキシブル基板は、必要な導体層の数が多いため柔軟性が低く、曲げ特性の点で劣る場合がある。そのため、好ましい曲げ形態を得るのが難しくなることがある。また、前述のフレキシブル基板は、導体層の数および面積が大きいため重量が大きくなりやすい。無線通信機器は移動体に搭載される可能性があるため、フレキシブル基板には、軽量化が求められる。
【0006】
本発明の一態様は、曲げ特性に優れ、かつ軽量であるフレキシブル基板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、1または複数の絶縁基材と、前記絶縁基材の少なくとも一方の面に形成された導体層と、を有する積層体を備え、前記積層体は、ループ状に折り返された折曲げ部と、前記折曲げ部の一方および他方の端部からそれぞれ延出する非曲げ領域と、を有し、前記折曲げ部の少なくとも一つの前記導体層は、アルミニウムを含む金属で形成されている、フレキシブル基板を提供する。
【0008】
前記構成によれば、折曲げ部の導体層のうち少なくとも一つは、アルミニウム含有金属で形成されている。アルミニウム含有金属は、他の金属に比べて柔軟性が高く、曲げ変形しやすい特性を有する。そのため、折曲げ部において、目的に応じた曲げ形態が容易に得られる。
アルミニウム含有金属は軽量である。前記構成によれば、アルミニウム含有金属を用いることにより、軽量化を図ることができる。
よって、折曲げ部における曲げ特性に優れ、かつ軽量であるフレキシブル基板を実現できる。
【0009】
前記非曲げ領域において前記積層体が備える前記導体層の数は、前記折曲げ部における前記導体層の数より多いことが好ましい。
【0010】
前記折曲げ部は、複数の前記導体層を備え、複数の前記導体層は、前記絶縁基材を介して隣り合う2つの前記導体層を含み、2つの前記導体層のうち一方がグランドプレーン層であり、他方が信号線路であり、少なくとも前記グランドプレーン層は、前記アルミニウムを含む金属で形成されていることが好ましい。
【0011】
前記グランドプレーン層は、前記信号線路に対して前記折曲げ部の外周側に位置することが好ましい。
【0012】
前記折曲げ部の前記絶縁基材は、熱可塑性樹脂で形成されていることが好ましい。
【0013】
前記絶縁基材の誘電正接は、5×10-3以下であることが好ましい。
【0014】
複数の前記絶縁基材のうち隣り合う前記絶縁基材は、接着層を介して接合されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、曲げ特性に優れ、かつ軽量であるフレキシブル基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態のフレキシブル基板の模式的な断面図である。
【
図3】第2実施形態のフレキシブル基板の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[フレキシブル基板](第1実施形態)
図1は、第1実施形態のフレキシブル基板10の模式的な断面図である。
図2は、
図1のI-I断面図である。
図1において、X方向、Y方向およびZ方向は、以下のように定義される。Z方向は、折曲げ部15の延在方向である。Z方向は、
図1において紙面に直交する方向である。Y方向は、非曲げ領域17,18における積層体1の厚さ方向である。X方向は、Y方向およびZ方向に直交する方向である。-X方向は、
図1における左方向である。+X方向は、
図1における右方向である。
【0018】
図1に示すように、フレキシブル基板10は、積層体1を備える。積層体1は、折曲げ部15と、非曲げ領域17,18とを有する。
折曲げ部15は、積層体1がループ状に折り返された箇所である。折曲げ部15は、+X方向に凸となる湾曲凸状とされている。折曲げ部15の少なくとも一部は、例えば、Z方向から見て円弧状、楕円弧状、放物線状、双曲線状などであってよい。本実施形態では、折曲げ部15は、Z方向から見て半円形状とされている。「ループ状」は、例えば、半周以上の周回形状(部分環状)をいう。
【0019】
非曲げ領域17,18のうち第1非曲げ領域17は、折曲げ部15の一方の端部15aから-X方向に直線状に延出する。非曲げ領域17,18のうち第2非曲げ領域18は、折曲げ部15の他方の端部15bから-X方向に直線状に延出する。
【0020】
第1非曲げ領域17と第2非曲げ領域18とは、積層体1が折曲げ部15で180°に折り返されることによって、互いに平行に、向かい合って配置されている。第1非曲げ領域17と第2非曲げ領域18とは、間隔をおいて配置されている。第1非曲げ領域17と第2非曲げ領域18とは、Y方向から見て、少なくとも一部が重なる。非曲げ領域17,18は、向かい合って配置されるため、対向領域17,18ともいう。
【0021】
積層体1は、
図1において、半円形状の折曲げ部15と、向かい合う非曲げ領域17,18とを有するU字形状とされている。折曲げ部15は、第1非曲げ領域17と第2非曲げ領域18との間に介在する。
折曲げ部15の内側には、折曲げ部15を支える柱状(例えば、円柱状)の規制体(図示略)が設けられていてもよい。規制体を用いる場合には、折曲げ部15の形状を安定的に維持することができる。
【0022】
非曲げ領域17,18は、3つの層状の絶縁基材11と、4つの導体層12とを備える。3つの絶縁基材11をそれぞれ第1絶縁基材11A、第2絶縁基材11B、および第3絶縁基材11Cという。4つの導体層12をそれぞれ第1導体層12A、第2導体層12B、第3導体層12C、および第4導体層12Dという。フレキシブル基板10は、複数の導体層12を備えているため、多層基板である。
【0023】
非曲げ領域17,18は、第1導体層12Aと、第1絶縁基材11Aと、第2導体層12Bと、第2絶縁基材11Bと、第3導体層12Cと、第3絶縁基材11Cと、第4導体層12Dとが、この順に積層されて構成されている。
図1において、第1非曲げ領域17の第1導体層12Aは、第1絶縁基材11Aの上面に形成されている。第2導体層12Bは、第2絶縁基材11Bの上面に形成されている。第3導体層12Cは、第3絶縁基材11Cの上面に形成されている。第4導体層12Dは、第3絶縁基材11Cの下面に形成されている。
【0024】
非曲げ領域は、Z方向から見て直線状でなくてもよい。すなわち、非曲げ領域は、折曲げ部と比べて曲率が小さければ、湾曲していてもよい。「非曲げ」は、曲がっていないことではなく、折曲げ部と比べて曲げが小さいことを意味する。
【0025】
折曲げ部15は、第1導体層12A、第1絶縁基材11A、第3絶縁基材11Cおよび第4導体層12Dを備えていない点で、非曲げ領域17,18と異なる。折曲げ部15は、第2導体層12Bと、第2絶縁基材11Bと、第3導体層12Cとが、この順に積層されて構成されている。折曲げ部15は、第2導体層12Bを外周側にして湾曲している。第2導体層12Bと第3導体層12Cとは、折曲げ部15の厚さ方向に、第2絶縁基材11Bを介して隣り合う。
【0026】
絶縁基材11は、誘電体である絶縁性材料で構成される。絶縁基材11の構成材料としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが挙げられる。
【0027】
熱可塑性樹脂は、折曲げ部15の柔軟性を高め、折曲げ部15の曲げ特性を良好にすることができる。熱可塑性樹脂としては、液晶ポリマー(LCP)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、環状ポリオレフィン(COP)などが挙げられる。熱可塑性樹脂は、弾性率に温度依存性がある。そのため、熱可塑性樹脂は、温度上昇に伴って弾性率が低下する。例えば、液晶ポリマーの弾性率は、25℃では5×109Paであるが、100℃では2×109Paである。そのため、熱可塑性樹脂を絶縁基材11に用いると、フレキシブル基板10の製造にあたり、加熱により折曲げ部15への曲げ付与が容易となる。
【0028】
絶縁基材11の誘電正接(tanδ)は、5×10-3以下であると、誘電損失が小さくなるため、導体層12による高周波信号の伝送における伝送損失を低くできる。熱可塑性樹脂は、誘電正接が低い。例えば、液晶ポリマーの誘電正接は、3.5×10-3である。よって、熱可塑性樹脂を絶縁基材11に用いれば、フレキシブル基板10を用いた無線通信機器において高利得が得られる。
【0029】
熱硬化性樹脂としては、ポリイミド(PI)、ポリフェニレンエーテル(PPE)などが挙げられる。
絶縁基材11の厚さは、例えば、25~100μmであってよい。
フレキシブル基板10は、可撓性を有する。フレキシブル基板は、フレキシブルプリント配線板ともいう。
【0030】
導体層12は、金属などの導電性材料で構成される。折曲げ部15に形成された導体層12のうち少なくとも一つは、アルミニウムを含む金属(アルミニウム含有金属)で構成される。すなわち、折曲げ部15の第2導体層12Bと第3導体層12Cのうち少なくとも一方は、アルミニウム含有金属で構成される。第2導体層12Bと第3導体層12Cとは、両方がアルミニウム含有金属で構成されていてもよいし、一方のみがアルミニウム含有金属で構成されていてもよい。
【0031】
アルミニウム含有金属としては、アルミニウム(純アルミニウム)、アルミニウム合金がある。アルミニウム合金としては、Al-Si合金、Al-Si-Cu合金などがある。導体層12は、例えば、アルミニウム箔などの金属箔により形成される。導体層12の形成方法は特に限定されない。導体層12は、スパッタなどにより形成してもよい。アルミニウム含有金属におけるアルミニウムの含有率は、50%(質量%または原子%)を越えることが好ましい。
【0032】
アルミニウム含有金属は、他の金属に比べて柔軟性が高く、硬度が低い。そのため、曲げ変形しやすい特性を有する。例えば、銅のブリネル硬さ35HBに対して、アルミニウムのブリネル硬さは15HBである。
【0033】
複数の導体層12のうち一部の導体層12のみがアルミニウム含有金属で形成されている場合には、他の導体層12は、アルミニウム以外の金属、例えば、銅、銀、金などを含む導電性材料で構成される。他の導体層12は、例えば、銅箔などの金属箔により形成される。
【0034】
導体層12は、高周波信号の伝送用に設計されている。
図2に示すように、本実施形態では、折曲げ部15における第2導体層12Bおよび第3導体層12Cは、マイクロストリップ線路を構成する。第2導体層12Bは、グランドプレーン層である。第3導体層12Cは、高周波信号の伝送用の配線(信号線路)を形成する。
【0035】
グランドプレーン層(第2導体層12B)は、信号線路(第3導体層12C)に比べて幅(Z方向の寸法)が大きい。そのため、グランドプレーン層(第2導体層12B)は、信号線路(第3導体層12C)に比べて面積が大きい。
マイクロストリップ線路を採用すると、特性インピーダンスの整合が容易となる。よって、電力の反射を抑え、伝送損失を小さくできる。
【0036】
グランドプレーン層(第2導体層12B)は、信号線路(第3導体層12C)に対して折曲げ部15の外周側に位置する。そのため、グランドプレーン層の曲げ径は比較的大きくなる。導体層は、面積が大きいほど曲げ付与の際の抵抗が大きくなるが、フレキシブル基板10では、面積の大きいグランドプレーン層の曲げ径を大きくできるため、折曲げ部15を形成する際に折り曲げやすくできる。よって、フレキシブル基板10の製造が容易となる。
【0037】
グランドプレーン層と信号線路のうち、少なくともグランドプレーン層(第2導体層12B)は、アルミニウム含有金属で形成されていることが望ましい。グランドプレーン層は面積が大きいため、アルミニウム含有金属の使用による軽量化の効果は高い。アルミニウム含有金属は銅に比べて電気抵抗が大きいが、グランドプレーン層は面積が大きいため、導体損失は低く抑えられる。
信号線路である第2導体層12Bは、銅によって形成してもよい。銅は電気抵抗が小さいため、導体損失を小さくすることができる。信号線路は面積が小さいため、重量増大を抑えることができる。
【0038】
高周波信号の信号周波数は、例えば、10GHz以上とすることができる。これにより、無線通信機器における通信速度を高めることができる。
本実施形態において、折曲げ部15の導体層12はマイクロストリップ線路を構成するが、折曲げ部の導体層は、層数を3以上としてストリップ線路を構成してもよい。
【0039】
第1導体層12Aおよび第4導体層12Dは、少なくとも一方がアルミニウム含有金属で形成されていてもよい。第1導体層12Aおよび第4導体層12Dは、ともに、アルミニウム以外の金属(例えば、銅)で形成されていてもよい。
【0040】
第1導体層12Aと第2導体層12Bとは、貫通配線13(第1貫通配線13A)によって電気的に接続されている。第3導体層12Cと第4導体層12Dとは、貫通配線13(第2貫通配線13B)によって電気的に接続されている。貫通配線13は、絶縁基材11の一方の面から他方の面にかけて、絶縁基材11を貫通して形成されている。
【0041】
非曲げ領域17,18および折曲げ部15の最外面(
図1において、第1非曲げ領域17の上面、第2非曲げ領域18の下面、および折曲げ部15の導体層12B側)には、被覆層(図示略)を形成してもよい。被覆層は、導体層12の少なくとも一部を覆う。被覆層は、例えば、ポリイミド、ポリエステル、液晶ポリマーなどの絶縁性材料で構成される。被覆層は、絶縁基材11と同じ材料で形成されていてもよい。被覆層は、いわゆる「カバーレイ」である。被覆層は、非曲げ領域17,18および折曲げ部15の最内面(
図1において、第1非曲げ領域17の下面、第2非曲げ領域18の上面、および折曲げ部15の導体層12C側)にも形成することができる。
【0042】
非曲げ領域17,18は、4つの導体層12(12A~12D)を備える。折曲げ部15は、2つの導体層12(12B,12C)を備える。そのため、非曲げ領域17,18において積層体1が備える導体層12の数は、折曲げ部15における導体層12の数より多い。
【0043】
フレキシブル基板10は、例えば、無線通信機器に使用することができる。無線通信機器は、例えば、ミリ波等の高周波信号を用いて無線通信を行うことができる。
【0044】
図1に示す形態のフレキシブル基板10は、次のようにして作製できる。
第1導体層12Aと、第1絶縁基材11Aと、第2導体層12Bと、第2絶縁基材11Bと、第3導体層12Cと、第3絶縁基材11Cと、第4導体層12Dとを備える積層体を用意する。
【0045】
この積層体から、折曲げ部15に相当する領域(折曲げ部相当領域)において、第1導体層12A、第1絶縁基材11A、第3絶縁基材11Cおよび第4導体層12Dを除去する。これにより、折曲げ部相当領域は、第2導体層12B、第2絶縁基材11B、および第3導体層12Cを備えた構成となる。
【0046】
この積層体を、折曲げ部相当領域において180°に折り返す。絶縁基材11に熱可塑性樹脂を用いる場合には、折曲げ部15に曲げを付与する際に、折曲げ部相当領域を加熱してもよい。加熱により、折曲げ部相当領域への曲げ付与が容易となる。
以上の工程を経て、
図1に示すフレキシブル基板10を得る。
【0047】
[第1実施形態のフレキシブル基板が奏する効果]
フレキシブル基板10では、折曲げ部15の導体層12(第2導体層12Bおよび第3導体層12C)のうち少なくとも一つは、アルミニウム含有金属で形成されている。アルミニウム含有金属は、他の金属に比べて柔軟性が高く、曲げ変形しやすい特性を有する。そのため、折曲げ部15において、目的に応じた曲げ形態が容易に得られる。
【0048】
アルミニウム含有金属は軽量である。例えば、銅の比重が8.5g/cm3であるのに対し、アルミニウムの比重は2.7g/cm3である。フレキシブル基板10は、アルミニウム含有金属を用いるため、軽量化を図ることができる。
よって、折曲げ部15における曲げ特性に優れ、かつ軽量であるフレキシブル基板10を実現できる。
【0049】
フレキシブル基板10では、折曲げ部15における導体層12の数が少ないため、折曲げ部15を薄く形成することができる。そのため、折曲げ部15に生じる応力を小さくできる。よって、折曲げ部15は破損しにくい。
フレキシブル基板10は、非曲げ領域17,18において導体層12の数が多いため、多機能化を図るうえで有利となる。例えば、高周波用ICなどの部品を非曲げ領域17,18に実装するのが容易となる。
【0050】
熱可塑性樹脂は、比較的柔軟性が高く、曲げ変形しやすい特性を有する。そのため、フレキシブル基板10では、折曲げ部15の絶縁基材11が熱可塑性樹脂で形成されていると、折曲げ部15の柔軟性を高めることができる。よって、折曲げ部15において目的に応じた曲げ形態が容易に得られる。
【0051】
熱可塑性樹脂は誘電正接(tanδ)が低い。そのため、絶縁基材11の構成材料として熱可塑性樹脂を用いれば、誘電損失が小さくなり、導体層12による高周波信号の伝送における伝送損失を低くできる。よって、フレキシブル基板10を用いた無線通信機器において高利得を実現できる。
【0052】
[フレキシブル基板](第2実施形態)
図3は、第2実施形態のフレキシブル基板110の模式的な断面図である。他の実施形態と共通の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。
【0053】
図3に示すように、フレキシブル基板110は、積層体101を備える。積層体101は、折曲げ部15と、非曲げ領域117,118とを有する。
【0054】
非曲げ領域117,118は、3つの層状の絶縁基材11と、4つの導体層12と、2つの接着層14と、を備える。2つの接着層14をそれぞれ第1接着層14Aおよび第2接着層14Bという。
非曲げ領域117,118は、第1導体層12Aと、第1絶縁基材11Aと、第1接着層14Aと、第2導体層12Bと、第2絶縁基材11Bと、第3導体層12Cと、第2接着層14Bと、第3絶縁基材11Cと、第4導体層12Dとが、この順に積層されて構成されている。
フレキシブル基板110は、接着層14を備える点で、第1実施形態のフレキシブル基板10と異なる。
【0055】
接着層14は、例えば、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤などの接着剤で形成されている。接着層14は、例えば、接着剤で形成された接着シートを用いて作製することができる。
第1絶縁基材11Aと第2絶縁基材11Bとは、第1接着層14Aを介して接合されている。第2絶縁基材11Bと第3絶縁基材11Cとは、第2接着層14Bを介して接合されている。
【0056】
[第2実施形態のフレキシブル基板が奏する効果]
フレキシブル基板110では、折曲げ部15の導体層12(第2導体層12Bおよび第3導体層12C)のうち少なくとも一つは、アルミニウム含有金属で形成されている。アルミニウム含有金属は、他の金属に比べて柔軟性が高く、曲げ変形しやすい特性を有する。そのため、折曲げ部15において、目的に応じた曲げ形態が容易に得られる。
フレキシブル基板110は、アルミニウム含有金属を用いるため、軽量化を図ることができる。
よって、折曲げ部15における曲げ特性に優れ、かつ軽量であるフレキシブル基板110を実現できる。
【0057】
フレキシブル基板110では、折曲げ部15における導体層12の数が少ないため、折曲げ部15を薄く形成することができる。そのため、折曲げ部15に生じる応力を小さくできる。よって、折曲げ部15は破損しにくい。
フレキシブル基板110は、非曲げ領域117,118において導体層12の数が多いため、多機能化を図るうえで有利となる。例えば、高周波用ICなどの部品を非曲げ領域117,118に実装するのが容易となる。
【0058】
熱可塑性樹脂は、比較的柔軟性が高く、曲げ変形しやすい特性を有する。そのため、フレキシブル基板110では、折曲げ部15の絶縁基材11が熱可塑性樹脂で形成されていると、折曲げ部15の柔軟性を高めることができる。よって、折曲げ部15において目的に応じた曲げ形態が容易に得られる。
【0059】
熱可塑性樹脂は誘電正接(tanδ)が低い。そのため、絶縁基材11の構成材料として熱可塑性樹脂を用いれば、誘電損失が小さくなり、導体層12による高周波信号の伝送における伝送損失を低くできる。よって、フレキシブル基板110を用いた無線通信機器において高利得を実現できる。
【0060】
フレキシブル基板110は、接着層14を備えるため、隣り合う絶縁基材11を強固に接合できる。接着層14を用いて隣り合う絶縁基材11を接合できるため、フレキシブル基板110の製造が容易となる。
【0061】
以上、本発明のフレキシブル基板について説明してきたが、本発明は前記の例に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
図1に示すフレキシブル基板10は、4つの導体層12を備えるが、導体層の数は特に限定されない。導体層の数は、1または複数(2以上の任意の数)であってよい。非曲げ領域における導体層の数は、例えば、6,8,10などであってもよい。折曲げ部における導体層の数は、2に限らず、3以上であってもよい。折曲げ部では、グランドプレーン層である第1導体層と、信号線路である第2導体層と、グランドプレーン層である第3導体層とを備えたストリップ線路が形成されてもよい。
【0062】
図1に示すフレキシブル基板10は、3つの絶縁基材11を備えるが、絶縁基材の数は特に限定されない。絶縁基材の数は、1または複数(2以上の任意の数)であってよい。
【0063】
図1に示すフレキシブル基板10における非曲げ領域17は、導体層12Bと絶縁基材11Bと導体層12Cとを有する3層構造の積層体(中央積層体という)を有する。非曲げ領域17は、中央積層体の上に絶縁基材11Aおよび導体層12Aが設けられ、中央積層体の下に絶縁基材11Cおよび導体層12Dが設けられている。そのため、非曲げ領域17は、上下対称の構造(すなわち、厚さ方向に対称な構造)を有する。非曲げ領域18も同様の上下対称の構造を有する。非曲げ領域は、上下対称の構造でなくてもよい。例えば、中央積層体の上に形成される導体層の数と、中央積層体の下に形成される導体層の数とは異なっていてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1,101…積層体、10,110…フレキシブル基板、11…絶縁基材、11A…第1絶縁基材、11B…第2絶縁基材、11C…第3絶縁基材、12…導体層、12A…第1導体層、12B…第2導体層、12C…第3導体層、12D…第4導体層、14…接着層、14A…第1接着層、14B…第2接着層、15…折曲げ部、15a…一方の端部、15b…他方の端部、17,117…第1非曲げ領域(非曲げ領域)、18,118…第2非曲げ領域(非曲げ領域)。