(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185918
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】貯湯式給湯装置
(51)【国際特許分類】
F24H 15/212 20220101AFI20221208BHJP
F24H 15/196 20220101ALI20221208BHJP
【FI】
F24H1/18 302L
F24H1/18 302T
F24H1/00 602G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093848
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古谷野 杏奈
【テーマコード(参考)】
3L024
3L122
【Fターム(参考)】
3L024CC05
3L024DD03
3L024DD23
3L024DD27
3L024DD36
3L024EE02
3L024EE09
3L024GG03
3L024GG04
3L024GG05
3L024GG06
3L024GG07
3L024GG12
3L024GG22
3L024GG25
3L024GG50
3L122AA02
3L122AA23
3L122AA63
3L122AA64
3L122AA65
3L122AA73
3L122AB22
3L122AB26
3L122BA23
3L122BA26
3L122BA44
3L122BB03
3L122BB13
3L122BB14
3L122BD12
3L122BD13
3L122BD14
3L122CA14
3L122DA01
3L122DA15
3L122DA21
3L122DA32
3L122DA35
3L122EA01
3L122EA44
3L122EA50
3L122EA52
(57)【要約】
【課題】エネルギー効率を高くする上で有利になる貯湯式給湯装置を提供する。
【解決手段】貯湯式給湯装置は、貯湯タンクと、貯湯タンクから取り出された水を加熱する加熱手段と、加熱手段から流出した湯を貯湯タンクに流入させる沸き上げ運転を制御する制御手段とを備える。沸き上げ運転として、通常沸き上げ運転と、加熱手段から流出する湯の温度である沸き上げ温度が通常沸き上げ運転よりも高い運転である高温沸き上げ運転とを実行可能である。太陽光発電装置の発電電力のうちの余剰電力を利用した沸き上げ運転である余剰電力沸き上げ運転において、まず通常沸き上げ運転を実行し、通常沸き上げ運転の実行後に高温沸き上げ運転を実行する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯湯タンクと、
前記貯湯タンクから取り出された水を加熱する加熱手段と、
前記加熱手段から流出した湯を前記貯湯タンクに流入させる沸き上げ運転を制御する制御手段と、
を備え、
前記沸き上げ運転として、通常沸き上げ運転と、前記加熱手段から流出する湯の温度である沸き上げ温度が前記通常沸き上げ運転よりも高い運転である高温沸き上げ運転とを実行可能であり、
太陽光発電装置の発電電力のうちの余剰電力を利用した前記沸き上げ運転である余剰電力沸き上げ運転において、まず前記通常沸き上げ運転を実行し、前記通常沸き上げ運転の実行後に前記高温沸き上げ運転を実行する貯湯式給湯装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記加熱手段の加熱能力を調整可能であり、
前記余剰電力沸き上げ運転の実行中に前記余剰電力の変化に応じて前記加熱能力を変化させる請求項1に記載の貯湯式給湯装置。
【請求項3】
前記貯湯タンクは、下部取出口と、前記下部取出口よりも上位にある中間部取出口とを有し、
前記通常沸き上げ運転のときには、前記下部取出口から取り出された水を前記加熱手段により加熱し、
前記高温沸き上げ運転のときには、前記中間部取出口から取り出された水を前記加熱手段により加熱する請求項1または請求項2に記載の貯湯式給湯装置。
【請求項4】
前記余剰電力沸き上げ運転において、前記太陽光発電装置の発電量が一日のピークを過ぎた後、または、余剰電力量が一日のピークを過ぎた後に、前記通常沸き上げ運転から前記高温沸き上げ運転に切り替える請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の貯湯式給湯装置。
【請求項5】
一日に前記余剰電力沸き上げ運転を実行する時間のうち、前記通常沸き上げ運転を実行する時間が、前記高温沸き上げ運転を実行する時間よりも長い請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の貯湯式給湯装置。
【請求項6】
前記余剰電力が基準に満たず、かつ、前記貯湯タンク内の蓄熱量が目標値に満たない場合に、前記余剰電力沸き上げ運転に代えて、商用電力を利用した前記沸き上げ運転である商用電力昼間沸き上げ運転を実行し、
前記商用電力昼間沸き上げ運転において、まず前記通常沸き上げ運転を実行し、前記通常沸き上げ運転の実行後に前記高温沸き上げ運転を実行する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の貯湯式給湯装置。
【請求項7】
浴槽からの浴槽水と、熱媒体との間で熱を交換する風呂熱交換器を備え、
前記高温沸き上げ運転により前記貯湯タンク内に貯えられた湯である高温水を前記熱媒体として前記風呂熱交換器に供給する追焚動作を実行する請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の貯湯式給湯装置。
【請求項8】
前記追焚動作よりも前に給湯需要が発生したときに、前記高温水を使用せずに、前記通常沸き上げ運転により前記貯湯タンク内に貯えられた湯である中温水を用いて給湯する請求項7に記載の貯湯式給湯装置。
【請求項9】
夜間に商用電力を利用して前記沸き上げ運転を行うときの前記沸き上げ温度は、前記高温沸き上げ運転の前記沸き上げ温度よりも低い請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の貯湯式給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、貯湯式給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電装置により発電された電力のうちの余剰電力によって沸き上げ運転を行うことのできる貯湯式給湯装置が知られている。下記特許文献1に開示された貯湯式給湯装置は、余剰電力によって沸き上げ運転を行うときの沸き上げ温度を、夜間に商用電力を用いて沸き上げ運転を行うときの沸き上げ温度よりも高くするように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
沸き上げ温度が高いほど、ヒートポンプユニットのCOPすなわち成績係数が低くなる。また、沸き上げ温度が高いほど、ヒートポンプユニットを出た湯が貯湯タンクに戻るまでの間に配管から散逸して失われる熱のロスが多くなる。また、沸き上げ温度が高いほど、湯が貯湯タンクに貯留されている間に散逸して失われる熱のロスが多くなる。これらのことから、余剰電力による沸き上げ運転のときの沸き上げ温度を高くすると、エネルギー効率が高くなりにくいという課題がある。
【0005】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされたもので、エネルギー効率を高くする上で有利になる貯湯式給湯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る貯湯式給湯装置は、貯湯タンクと、貯湯タンクから取り出された水を加熱する加熱手段と、加熱手段から流出した湯を貯湯タンクに流入させる沸き上げ運転を制御する制御手段と、を備え、沸き上げ運転として、通常沸き上げ運転と、加熱手段から流出する湯の温度である沸き上げ温度が通常沸き上げ運転よりも高い運転である高温沸き上げ運転とを実行可能であり、太陽光発電装置の発電電力のうちの余剰電力を利用した沸き上げ運転である余剰電力沸き上げ運転において、まず通常沸き上げ運転を実行し、通常沸き上げ運転の実行後に高温沸き上げ運転を実行するものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、エネルギー効率を高くする上で有利になる貯湯式給湯装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1による貯湯式給湯装置を示す図である。
【
図2】実施の形態1による貯湯式給湯装置の制御装置の構成の一例を示す図である。
【
図3】一日のうちの、PV発電量、給湯機消費電力量、及び宅内消費電力量の変動の例を示す図である。
【
図4】高温沸き上げ運転のときの状態を模式的に示す図である。
【
図5】レジオネラ属菌と水温との関係を示す図である。
【
図6】実施の形態1による貯湯式給湯装置が余剰電力沸き上げ運転を行うときに制御装置が実行する処理の例を示すフローチャートである。
【
図7】昼間の沸き上げ運転の開始から終了までの貯湯タンク内の温度分布の変化の例を示す図である。
【
図8】実施の形態1による貯湯式給湯装置のヒートポンプ回路のモリエル線図である。
【
図9】一日のうちの、PV発電量、給湯機消費電力量、及び宅内消費電力量の変動の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。各図において共通または対応する要素には、同一の符号を付して、説明を簡略化または省略する。以下の説明において、「水」、「湯」、または「湯水」との記載は、原則として、液体の水を意味し、冷水から熱湯までが含まれうるものとする。
【0010】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1による貯湯式給湯装置1の構成を示す図である。
図1に示すように、本実施の形態の貯湯式給湯装置1は、ヒートポンプユニット2と、貯湯タンク3と、沸き上げ回路4とを備える。ヒートポンプユニット2は、水を加熱する加熱手段の例である。貯湯タンク3は、図示しない断熱材により覆われている。
【0011】
貯湯タンク3の内部では、温度に応じた水の密度の差によって、上側が高温で下側が低温になる温度成層が形成される。貯湯タンク3の容量は、特に限定されないが、例えば、200Lから600Lの範囲内にあってもよい。
【0012】
本実施の形態における貯湯タンク3は、単一の容器を有する。変形例として、貯湯タンク3は、複数の容器が管を介して直列に接続された構造を有するものでもよい。その複数の容器においては、温度成層の上位側すなわち高温側の容器の下部が、当該容器に対して温度成層の下位側すなわち低温側の容器の上部に対して、管により連通する。以下の説明において、貯湯タンク3の上部、中間部、下部について記載するが、複数の容器が直列に接続された構造を有する貯湯タンク3の場合には、上部、中間部、下部とは、複数の容器からなる全体においての階層を意味する。
【0013】
貯湯タンク3の下部には、例えば上水道のような水源から供給される水が流入する。これにより、貯湯タンク3内は満水状態に維持される。水源から供給された水を以下「低温水」と称する場合がある。
【0014】
貯湯タンク3は、上部口3cと、下部取出口3dと、中間部取出口3eとを備える。中間部取出口3eは、下部取出口3dよりも上位にあり、上部口3cよりも下位にある。本実施の形態では、貯湯タンク3の上部に上部口3cがあり、貯湯タンク3の下部に下部取出口3dがあり、貯湯タンク3の上部と下部との間の中間部に中間部取出口3eがある。
【0015】
沸き上げ回路4は、往き水路6と、戻り水路7と、循環ポンプ8とを有する。往き水路6は、貯湯タンク3の下部取出口3dまたは中間部取出口3eをヒートポンプユニット2の入水口につなぐ。戻り水路7は、ヒートポンプユニット2の出湯口を貯湯タンク3の上部口3cにつなぐ。図示の例では、往き水路6に循環ポンプ8が設けられている。図示の例に代えて、戻り水路7に循環ポンプ8が設けられていてもよい。
【0016】
複数の貯湯温度センサ5が貯湯タンク3に取り付けられている。複数の貯湯温度センサ5は、互いに異なる高さの位置に配置されている。複数の貯湯温度センサ5のそれぞれは、貯湯タンク3内の水温を検知する。複数の貯湯温度センサ5は、貯湯タンク3内に形成される温度成層の温度分布を検出する温度分布検出手段に相当する。以下の説明では、貯湯タンク3内に形成される温度成層の温度分布を「貯湯温度分布」と称する。また、貯湯タンク3内の蓄熱量を「貯湯量」と称する場合がある。貯湯量は、例えば、ジュールまたはカロリーを単位として表されてもよいし、所定温度(例えば42℃)の湯に換算した場合の湯の体積[L]を単位として表されてもよい。
【0017】
貯湯式給湯装置1は、制御装置10をさらに備える。制御装置10は、貯湯式給湯装置1の動作を制御する制御手段に相当する。制御装置10は、沸き上げ運転を制御する。なお、本開示では、図示の例のように単一の制御装置10により貯湯式給湯装置1の動作が制御される構成に限定されるものではなく、複数の制御装置が連携することで貯湯式給湯装置1の動作を制御する構成にしてもよい。
【0018】
沸き上げ運転は、例えば、以下のような動作となる。制御装置10は、ヒートポンプユニット2及び循環ポンプ8を作動させる。貯湯タンク3の下部取出口3dから流出した水が、往き水路6を通って、ヒートポンプユニット2に流入する。ヒートポンプユニット2で加熱された湯は、戻り水路7を通って、上部口3cから貯湯タンク3に流入する。
【0019】
本実施の形態では、沸き上げ運転のときにヒートポンプユニット2から流出する湯の温度を「沸き上げ温度」と称する。また、沸き上げ回路4を流れる水の体積流量を以下「沸き上げ流量」と称する。制御装置10は、図示しない流量センサにより沸き上げ流量を検知してもよい。あるいは、制御装置10は、循環ポンプ8の回転数と沸き上げ流量との相関関係を記憶しておき、循環ポンプ8の回転数から沸き上げ流量を算出してもよい。
【0020】
本実施の形態における貯湯式給湯装置1は、貯湯タンク3及び循環ポンプ8等を備えた貯湯ユニット9と、ヒートポンプユニット2とが別体となった構成を有する。貯湯ユニット9と、ヒートポンプユニット2との間は、ヒートポンプ入水配管18と、ヒートポンプ出湯配管19と、電気ケーブル(図示省略)とを介して接続されている。貯湯ユニット9は、宅内の浴室にある浴槽81を有する浴槽ユニット80に対して、浴槽往き配管82及び浴槽戻り配管83を介して接続されている。貯湯ユニット9内には、後述する複数の弁がさらに備えられている。
【0021】
貯湯式給湯装置1は、リモコン11をさらに備える。制御装置10とリモコン11との間は、有線通信または無線通信により、双方向に通信可能である。リモコン11と制御装置10とがネットワークを介して通信可能でもよい。リモコン11は、ユーザーインターフェースの例である。リモコン11は、例えば、情報を表示する液晶パネル等の表示部と、ユーザーが操作する操作部とを有していてもよい。リモコン11は、表示部及び操作部の両方の機能を有するタッチスクリーンを備えてもよい。ユーザー等の人間は、リモコン11を操作することで、貯湯式給湯装置1を遠隔操作したり、各種の設定などを行ったりすることが可能である。例えば、リモコン11には、ユーザーが給湯温度を設定できる機能と、浴槽81へ出湯する湯の温度及び量を設定できる機能と、浴槽水の追焚温度を設定できる機能等とが設けられていてもよい。
【0022】
リモコン11の表示部は、ユーザー等の人間に情報を報知する報知手段としての機能を有する。リモコン11は、例えば台所、リビング、浴室などの壁に設置されたものでもよい。異なる場所に複数のリモコン11が設置されてもよい。リモコン11のほかに、宅内に設置されたスマートスピーカあるいはテレビなどがユーザーインターフェースとして利用できるように構成されていてもよいし、例えばスマートフォンのような携帯端末がユーザーインターフェースとして利用できるように構成されていてもよい。原則として、以下の説明では、リモコン11と、他のユーザーインターフェースとを総称して、単に「リモコン11」と記載する。すなわち、以下の説明において、リモコン11を用いる処理は、他のユーザーインターフェースによる処理に代替可能である。
【0023】
ユーザーは、リモコン11を操作して、例えば40℃前後のお湯を浴槽81に貯めることができる。浴槽81は、浴槽戻り配管83及び浴槽往き配管82を介して、貯湯ユニット9内の風呂熱交換器12と接続されている。風呂熱交換器12は、浴槽81からの湯水すなわち浴槽水と、熱媒体との間で熱を交換する。
【0024】
浴槽81は、排水栓84を有している。時間が経過し、浴室内に風呂熱が放熱され、浴槽81内の湯温が低下した場合は、貯湯タンク3の上部から取り出された湯を熱媒体として風呂熱交換器12に供給し、当該熱媒体により、浴槽81からの湯水を風呂熱交換器12にて加熱する追焚動作が可能である。
【0025】
ヒートポンプユニット2は、圧縮機13と、冷媒-水熱交換器14と、膨張弁15と、室外熱交換器16と、室外熱交換器ファン17とを備えている。これらの各機器の駆動は、制御装置10により制御される。圧縮機13の吸入側は、室外熱交換器16に接続している。圧縮機13の吐出側は、冷媒-水熱交換器14に接続している。制御装置10は、例えばインバーター制御により、圧縮機13の回転数を可変に制御してもよい。ヒートポンプユニット2の冷媒回路内を循環する冷媒には、例えば、R32、フルオロカーボンまたは二酸化炭素等を用いることができる。
【0026】
制御装置10が圧縮機13の回転周波数を変化させることで、冷媒流量を調整し、ヒートポンプユニット2の加熱能力を制御してもよい。ヒートポンプユニット2の加熱能力とは、単位時間当たりにヒートポンプユニット2が水に与える熱量に相当する。制御装置10は、沸き上げ運転の度に、最適な目標加熱能力の値を算出してもよい。
【0027】
室外熱交換器16は、冷媒と、室外熱交換器ファン17から送られる空気とを熱交換させ、空気の熱により気液状態の冷媒を蒸発させる熱交換器である。室外熱交換器16の冷媒入口側は、膨張弁15に接続されている。室外熱交換器16の冷媒出口側は、圧縮機13に接続されている。
【0028】
冷媒-水熱交換器14は、貯湯タンク3内の湯水を加熱するためのものである。ヒートポンプ入水配管18は、貯湯ユニット9内の三方弁28のcポートを冷媒-水熱交換器14の水入口に接続する。貯湯ユニット9内のヒートポンプ入水配管18の途中に循環ポンプ8が接続されている。ヒートポンプ出湯配管19は、冷媒-水熱交換器14の湯出口を、貯湯ユニット9内の四方弁20のbポートに接続する。
【0029】
冷媒-水熱交換器14には、圧縮機13、室外熱交換器16及び膨張弁15により構成されるヒートポンプ回路が接続されている。冷媒-水熱交換器14には、ヒートポンプ回路の冷媒と、貯湯タンク3から供給された湯水とが、互いに逆方向に流れる対向流となって流れる。冷媒-水熱交換器14は、ヒートポンプ回路の冷媒と、貯湯タンク3から供給された湯水とを熱交換し、目標沸き上げ温度(例えば、45℃~90℃)まで湯水を加熱する。
【0030】
室外熱交換器ファン17は、室外熱交換器16の前面に配置され、室外熱交換器16に空気を送り込み、空気と冷媒との熱交換を促進させる。室外熱交換器ファン17の回転数は制御装置10が決定する。
【0031】
貯湯ユニット9は、浴槽循環ポンプ22と、台所または洗面所の蛇口あるいは浴室のシャワーのような給湯先へ給湯するための外部配管(図示省略)が接続される給湯端23と、上水道のような水源からの水を供給する外部給水配管(図示省略)が接続される給水端24とをさらに備えている。貯湯ユニット9内で、給水配管27は、給水端24を三方弁29のaポートに接続している。給水配管27から分岐したタンク給水配管31が貯湯タンク3の最下部3bに接続されている。配管32は、貯湯タンク3の最下部3bにある下部取出口3dを三方弁28のaポートに接続している。
【0032】
貯湯タンク3の最上部3aにある上部口3cに、送湯配管26の一端が接続されている。送湯配管26の他端は、給湯配管25に連通する。貯湯タンク3は、沸き上げ回路4と、給湯回路と、湯張り回路と、追焚回路とに接続されている。各回路の構成は後述する。
【0033】
前述したように、沸き上げ運転のときには、循環ポンプ8により、沸き上げ回路4に湯水を循環させることができる。また、本実施の形態では、浴槽81の追焚動作のときに、循環ポンプ8により、貯湯タンク3内の湯を風呂熱交換器12へ循環させることができる。追焚動作のときには、循環ポンプ8が作動すると、貯湯タンク3内の湯水が、温水導入配管33及び温水導出配管34を介して、風呂熱交換器12に循環する。
【0034】
風呂熱交換器12は、浴槽81の湯水を加熱するもので、管型または板型等の熱交換器で構成される。管型の熱交換器には、例えばスパイラル式熱交換器がある。板型の熱交換器には、例えばプレート式熱交換器がある。風呂熱交換器12は、温水導入配管33により貯湯タンク3の上部と接続されている。風呂熱交換器12は、温水導出配管34により三方弁28のbポートに接続されている。風呂熱交換器12には、浴槽循環ポンプ22により浴槽81の湯水が循環する浴槽循環回路が接続されている。追焚動作のときに、風呂熱交換器12は、浴槽循環回路を循環する浴槽81の湯水と、貯湯タンク3内の上部から温水導入配管33を通って導かれた高温水とを熱交換させることで、浴槽81の湯水を加熱して、浴槽81の湯水の保温あるいは昇温を行う。
【0035】
浴槽循環ポンプ22は、浴槽戻り配管83の途中に接続されている。浴槽81の湯水は、浴槽水とも呼ばれる。追焚動作時に、浴槽循環ポンプ22は、浴槽水を浴槽戻り配管83及び浴槽往き配管82を介して風呂熱交換器12と浴槽81との間で循環させる。
【0036】
風呂給湯混合弁35及び一般給湯混合弁36のそれぞれは、第一入口、第二入口、及び出口を有する。給湯配管25の下流側は、二つに分岐して、風呂給湯混合弁35及び一般給湯混合弁36のそれぞれの第一入口に連通している。風呂給湯混合弁35の出口は、湯張り配管37を介して、浴槽往き配管82に接続されている。一般給湯混合弁36の出口は、一般給湯配管39を介して、給湯端23に接続されている。
【0037】
三方弁28は、入口となるaポート及びbポートと、出口となるcポートとを有する流路切替手段である。三方弁28は、a-c、b-cの2つの経路の間で流路切替可能に構成されている。
【0038】
三方弁29は、入口となるaポート及びbポートと、出口となるcポートとを有する流路切替手段である。三方弁29は、a-c、b-cの2つの経路の間で流路切替可能に構成されている。三方弁29のbポートは、中温水配管40を介して、中間部取出口3eに接続されている。三方弁29のcポートには、給水配管41の上流端が接続されている。給水配管41の下流側は、二つに分岐して、風呂給湯混合弁35及び一般給湯混合弁36のそれぞれの第二入口に連通している。
【0039】
三方弁29をa-cにすると、給水端24からの低温水が給水配管27及び給水配管41を通って、風呂給湯混合弁35及び一般給湯混合弁36のそれぞれの第二入口に流入可能となる。三方弁29をb-cにすると、貯湯タンク3内の中温水が、中間部取出口3e、中温水配管40、及び給水配管41を通って、風呂給湯混合弁35及び一般給湯混合弁36のそれぞれの第二入口に流入可能となる。また、三方弁29は、給水配管27からの低温水と、中温水配管40からの中温水との混合比を調整できるように構成されていてもよい。
【0040】
風呂給湯混合弁35は、弁の開度を変更することで、給湯配管25からの高温水と、給水配管41からの低温水または中温水との混合比を調整し、湯張り温度を制御するものである。湯張り開閉弁38は、湯張り配管37上に設けられ、開閉により、浴槽81への湯張りの開始と停止とを切り替えるものである。
【0041】
一般給湯混合弁36は、弁の開度を変更することで、給湯配管25からの高温水と、給水配管41からの低温水または中温水との混合比を調整し、給湯端23からの出湯温度を制御するものである。
【0042】
中温水配管40の途中の位置に、温水導出配管42の一端が接続されている。温水導出配管42の他端は、温水導出配管34の途中の位置に接続されている。
【0043】
四方弁20は、入口となるaポート及びbポートと、出口となるcポート及びdポートとを有する流路切替手段である。四方弁20は、a-c、a-d、b-c、b-dの4つの経路の間で流路切替可能に構成されている。四方弁30は、入口となるaポートと、出口となるbポート、cポート、及びdポートとを有する流路切替手段である。四方弁30は、a-b、a-c、a-dの3つの経路の間で流路切替可能に構成されている。
【0044】
四方弁20のaポートは、水配管43を介して、循環ポンプ8の吐出口と冷媒-水熱交換器14との間のヒートポンプ入水配管18に接続されている。四方弁20のcポートは、第一湯水配管44を介して、貯湯タンク3の下部に接続されている。四方弁20のdポートは、第二湯水配管45を介して、四方弁30のaポートに接続されている。四方弁30のbポートは、第三湯水配管46を介して、温水導入配管33の途中の位置に接続されている。四方弁30のcポートは、第四湯水配管47を介して、貯湯タンク3の中間部に接続されている。四方弁30のdポートは、第五湯水配管48を介して、給湯配管25及び送湯配管26に連通している。
【0045】
複数の貯湯温度センサ5は、貯湯タンク3の上下方向に間隔をおいて配置されている。制御装置10は、貯湯温度センサ5により検知された温度情報を受信することで、貯湯温度分布を算出するとともに、貯湯タンク3内の貯湯量を計算する。貯湯タンク3内の貯湯量が目標量に到達するまで沸き上げ運転を続けるよう、制御装置10がヒートポンプユニット2と貯湯ユニット9に指示を出す。
【0046】
入水温度センサ49は、ヒートポンプ入水配管18または冷媒-水熱交換器14の入口に取り付けられ、冷媒-水熱交換器14で加熱される前の水の温度を検知する。出湯温度センサ50は、ヒートポンプ出湯配管19または冷媒-水熱交換器14の出口に取り付けられ、冷媒-水熱交換器14で加熱された後の湯の温度、すなわち沸き上げ温度を検知する。入水温度センサ49及び出湯温度センサ50による温度情報は、制御装置10に送られる。沸き上げ運転において、制御装置10は、出湯温度センサ50で検知される実際の沸き上げ温度が、目標沸き上げ温度に等しくなるように、循環ポンプ8の回転数とヒートポンプユニット2の動作とのいずれか一方または両方を制御する。
【0047】
浴槽温度センサ51は、浴槽戻り配管83を介して風呂熱交換器12に流入する浴槽水の温度を検知する。浴槽温度センサ51による温度情報は、制御装置10に送られる。浴槽温度センサ51が検知した浴槽水の温度がユーザー設定温度よりも低温となった場合、追焚動作を開始するよう、制御装置10が貯湯ユニット9と浴槽ユニット80へ指示を出す。浴槽往き温度センサ52は、風呂熱交換器12を通過し、浴槽往き配管82を通って浴槽81へ流れる浴槽水の温度を検知する。浴槽往き配管82による温度情報は、制御装置10に送られる。追焚動作時に加熱後の浴槽水がユーザー設定温度に到達するよう、制御装置10が貯湯ユニット9と浴槽ユニット80へ指示を出す。
【0048】
給湯流量センサ53は、一般給湯配管39上に設けられ、給湯流量を検出する。給湯流量センサ53の検出値は、制御装置10に送信される。制御装置10は、給湯負荷を算出する際に、給湯流量センサ53の検出値を用いる。給湯温度センサ55は、一般給湯配管39上に設けられ、給湯温度を検出する。
【0049】
湯張り流量センサ54は、湯張り配管37上に設けられ、湯張り流量を検出する。湯張り流量センサ54の検出値は、制御装置10に送信される。制御装置10は、湯張り負荷を算出する際に、湯張り流量センサ54の検出値を用いる。
【0050】
制御装置10は、過去複数日間(例えば、過去14日間)の毎日の、給湯負荷量、湯張り負荷量、及び追焚負荷量を時間帯ごとに学習することにより、翌日の給湯負荷量、湯張り負荷量、及び追焚負荷量を時間帯ごとに予測してもよい。追焚動作のときに、制御装置10は、例えば、浴槽温度センサ51の検出温度と、浴槽往き温度センサ52の検出温度と、浴槽循環ポンプ22の回転数から推定される浴槽水の流量とを用いて、追焚負荷を算出してもよい。
【0051】
本実施の形態における沸き上げ回路4は、下部取出口3dから貯湯タンク3内の水を取り出す下部取り出しと、中間部取出口3eから貯湯タンク3内の水を取り出す中間部取り出しとに切り替え可能である。
【0052】
下部取り出しの沸き上げ回路4は、三方弁28をa-c方向に開くと共に、四方弁20をb-d方向に開き、さらに四方弁30をa-d方向に開くことで形成される。下部取り出しの沸き上げ回路4は、下部取出口3dから、三方弁28とヒートポンプ入水配管18を経由して冷媒-水熱交換器14へ連通し、ヒートポンプ出湯配管19と第二湯水配管45と第五湯水配管48と送湯配管26とを経由して上部口3cへと繋がる回路である。
【0053】
中間部取り出しの沸き上げ回路4は、三方弁28をb-c方向に開くと共に、四方弁20をb-d方向に開き、さらに四方弁30をa-d方向に開くことで形成される。中間部取り出しの沸き上げ回路4は、中間部取出口3eから、中温水配管40と、温水導出配管42と、温水導出配管34と、三方弁28と、ヒートポンプ入水配管18を経由して冷媒-水熱交換器14へ連通し、ヒートポンプ出湯配管19と第二湯水配管45と第五湯水配管48と送湯配管26とを経由して上部口3cへと繋がる回路である。
【0054】
給湯回路は、貯湯タンク3の上部から送湯配管26及び給湯配管25を経由して一般給湯混合弁36に連通する回路と、給水端24から給水配管27、a-c方向に開かれた三方弁29及び給水配管41を経由して一般給湯混合弁36に連通する回路と、一般給湯混合弁36から一般給湯配管39を経由して給湯端23に連通する回路とを有する。
【0055】
湯張り回路は、貯湯タンク3の上部から送湯配管26及び給湯配管25を経由して風呂給湯混合弁35に連通する回路を有する。また、湯張り回路は、給水端24からタンク給水配管31を経由して貯湯タンク3の下部に接続される回路と、給水端24から給水配管27、a-c方向に開かれた三方弁29及び給水配管41を経由して風呂給湯混合弁35に連通する回路とを有する。さらに、湯張り回路は、風呂給湯混合弁35から湯張り配管37、湯張り開閉弁38及び浴槽往き配管82を経由して浴槽81へと繋がる回路を有する。
【0056】
追焚回路は、三方弁28をb-c方向に開くと共に、四方弁20をa-c方向に開くことで形成される。追焚回路は、貯湯タンク3の上部から送湯配管26及び温水導入配管33を経由して風呂熱交換器12へと連通し、温水導出配管34、水配管43、第一湯水配管44を経由して貯湯タンク3の最下部に繋がる回路である。
【0057】
浴槽循環回路は、風呂熱交換器12と、浴槽循環ポンプ22と、浴槽81とを有し、浴槽戻り配管83及び浴槽往き配管82により接続されている回路である。浴槽循環回路には、浴槽循環ポンプ22により浴槽水が循環する。
【0058】
給湯動作は、給湯先での湯の使用操作に応じて開始される。給湯動作では、給湯回路において、貯湯タンク3に貯められた湯水が、給湯先での湯の使用に応じて、貯湯タンク3の上部または貯湯タンク3の中間部から導出され、一般給湯混合弁36に送られる。一般給湯混合弁36には、給水端24から給水配管27を経由して低温の水道水が導かれており、貯湯タンク3からの湯と混合されて設定温度とされ、給湯端23から蛇口等の給湯先へ供給される。貯湯タンク3の上部または中間部から導出された湯の減少分に合せて、給水端24から供給された低温水が、給水配管27及びタンク給水配管31を通って、貯湯タンク3内の最下部3bに自動的に流入する。このように、貯湯タンク3内の最下部3bに水道水が供給されることで、貯湯タンク3内では、温度境界層が上方へ移動する。
【0059】
湯張り動作は、ユーザーがリモコン11を操作することで開始される。このとき、湯張り開閉弁38は開となる。湯張り動作では、湯張り回路において、貯湯タンク3に貯められた湯水が、貯湯タンク3の上部または貯湯タンク3の中間部から導出され、風呂給湯混合弁35に送られる。風呂給湯混合弁35には、給水端24から給水配管27を経由して低温の水道水が導かれており、貯湯タンク3からの湯と混合されて適温に調整され、湯張り開閉弁38を通って浴槽81に供給され、湯張りが行われる。湯張りは、浴槽81内の水位が設定値となったときに停止される。浴槽81内の水位は、浴槽循環回路内に設置された水位センサ(図示省略)で検知される。水位センサは、水位センサに搭載された圧力センサで圧力変化を計測して水位を検知する。
【0060】
追焚動作は、ユーザーがリモコン11を操作することで強制的に開始される。あるいは、浴槽81内の湯水の温度低下が検知された場合に、自動的に追焚動作が開始される。追焚動作が開始されると、循環ポンプ8及び浴槽循環ポンプ22の運転が開始される。追焚動作では、追焚回路において貯湯タンク3の上部から導出された高温水が風呂熱交換器12に導かれる。また、このタイミングと概ね同時に、浴槽81に貯められた湯が、浴槽戻り配管83を通って風呂熱交換器12に導かれる。風呂熱交換器12では、貯湯タンク3からの高温のタンク水と、浴槽81からの浴槽水との間で熱が交換される。浴槽水へ熱を与えて温度が低下したタンク水は、温水導出配管34、三方弁28、循環ポンプ8、水配管43、四方弁20、第二湯水配管45、四方弁30、及び第四湯水配管47を通って、貯湯タンク3に戻る。風呂熱交換器12で熱を受け取って温度の上昇した浴槽水は、浴槽往き配管82を通って浴槽81に戻る。浴槽温度センサ51で検知された浴槽水温度が目標浴槽温度に達したことを制御装置10が検知すると、制御装置10は追焚停止指令を発し、浴槽循環ポンプ22及び循環ポンプ8の運転を停止させる。このように、追焚動作では、浴槽81内の浴槽水を目標浴槽温度まで上昇させる運転が行われる。
【0061】
本実施の形態の貯湯式給湯装置1を有する家庭に太陽光発電装置(図示省略)が設けられている。以下では、当該家庭を単に「家庭」と称する。太陽光発電装置は、太陽光を受けて発電する太陽電池等を備える。太陽光発電装置により発電された直流電力は、パワーコンディショナ(図示省略)により、交流電力に変換され、家庭に供給される。家庭内の貯湯式給湯装置1と、貯湯式給湯装置1以外の電気機器とは、太陽光発電装置により発電された電力により作動可能である。
【0062】
太陽光発電装置が発電しない時間帯においては、電力会社の商用電源から電力が家庭に供給される。また、太陽光発電装置の発電中に、太陽光発電装置の発電電力が家庭の消費電力に対して不足する場合には、その不足分の電力が商用電源から家庭に供給される。以下、商用電源から家庭に供給される電力を「商用電力」と称する。
【0063】
太陽光発電装置の発電中に、太陽光発電装置の発電電力が、貯湯式給湯装置1以外の家庭内の電気機器の全消費電力よりも大きい場合には、その余剰電力を利用して、貯湯式給湯装置1が沸き上げ運転を実行できる。以下では、余剰電力を利用した沸き上げ運転を「余剰電力沸き上げ運転」と称する。
【0064】
太陽光発電装置により発電された時間当たりの電力量を以下「PV発電量」と称する。また、貯湯式給湯装置1の時間当たりの消費電力量を以下「給湯機消費電力量」と称する。また、貯湯式給湯装置1以外の家庭内の電気機器の時間当たりの消費電力量を「宅内消費電力量」と称する。また、PV発電量から宅内消費電力量を差し引いた値を「余剰電力量」と称する。
【0065】
図2は、実施の形態1による貯湯式給湯装置1の制御装置10の構成の一例を示す図である。制御装置10は、貯湯式給湯装置1に設けられた各部を制御する。
図2に示す例において、制御装置10は、情報取得部10aと、演算処理部10bと、機器制御部10cと、通信部10dと、タイマ10eと、記憶部10fとを有している。制御装置10は、例えば、マイクロコンピュータ等の演算装置上でソフトウェアを実行することにより各種機能を実現してもよい。もしくは、制御装置10は、各種機能を実現する回路デバイス等のハードウェア等で構成されてもよい。
【0066】
情報取得部10aは、貯湯温度センサ5、入水温度センサ49、出湯温度センサ50、浴槽温度センサ51、浴槽往き温度センサ52、給湯流量センサ53、湯張り流量センサ54、給湯温度センサ55等の各種センサの検知情報と、循環ポンプ8の回転数などの機器稼働情報とを取得する。また、情報取得部10aは、貯湯式給湯装置1と接続している電源回路から、現在の余剰電力量の情報を取得する。
【0067】
商用電力を買電するときの電力料金単価が、深夜時間帯になると割安になるという電気料金体系がある。以下では、電力料金単価が割安になる深夜時間帯を「夜間」と称し、一日のうちで「夜間」以外の時間帯を「昼間」と称する場合がある。「夜間」と「昼間」が具体的にどの時間帯となるかは、電気料金体系等によって異なる。一例として、23時から7時までの時間帯を「夜間」とし、7時から23時までの時間帯を「昼間」としてもよい。
【0068】
演算処理部10bは、一日の負荷終了後に、翌日の給湯負荷量、湯張り負荷量、及び追焚負荷量の予測値と、翌日の余剰電力量の予測値とを用いて、給湯負荷及び湯張り負荷に対応した夜間の目標蓄熱量と、給湯負荷及び湯張り負荷に対応した昼間の目標蓄熱量と、追焚負荷に対応した高温水の目標蓄熱量とを決定してもよい。この場合、夜間の目標蓄熱量と、昼間の目標蓄熱量とは、給湯負荷量及び湯張り負荷量の予測値に応じて決定される。追焚負荷に対応した高温水の目標蓄熱量は、追焚負荷量の予測値に応じて決定される。
【0069】
演算処理部10bは、夜間の沸き上げ運転、及び、昼間の沸き上げ運転のそれぞれについて、開始条件、終了条件、目標加熱能力、及び沸き上げ温度を、上記で決定した各目標蓄熱量と、余剰電力量の状況とに応じて、判定してもよい。
【0070】
機器制御部10cは、演算処理部10bでの処理結果に応じて、圧縮機13、膨張弁15、三方弁28、三方弁29、四方弁20、四方弁30、風呂給湯混合弁35、湯張り開閉弁38、一般給湯混合弁36、循環ポンプ8及び浴槽循環ポンプ22を制御する。
【0071】
通信部10dは、リモコン11と有線通信または無線通信可能に接続され、リモコン11との間で情報の送受信を行う。また、家庭にHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)が設置されている場合には、通信部10dは、HEMSと通信し、余剰電力量の情報を受信してもよい。また、通信部10dは、例えば翌日の天気予報情報など、翌日の余剰電力量の予測に関する情報をHEMSから受信してもよい。
【0072】
タイマ10eは、現在の時刻をカウントし、設定された時刻になった場合に、設定時刻であることを示す信号を出力する。また、タイマ10eは演算処理部10bから要求があれば、時刻情報を送信する。
【0073】
記憶部10fは、制御装置10の各部で用いられる各種の値を記憶する。例えば、記憶部10fは、蓄熱量管理のため、夜間の目標蓄熱量、昼間の目標蓄熱量、追焚負荷の目標蓄熱量、及び現時点で貯湯タンク3に貯留されている湯水の貯湯量等を記憶する。
【0074】
本実施の形態において、制御装置10は、沸き上げ運転として、通常沸き上げ運転と、高温沸き上げ運転とを実行可能である。高温沸き上げ運転は、沸き上げ温度が、通常沸き上げ運転よりも高い運転である。通常沸き上げ運転の沸き上げ温度は、65℃未満が好ましく、55℃未満がより好ましく、50℃未満がさらに好ましい。通常沸き上げ運転の沸き上げ温度は、例えば45℃でもよい。高温沸き上げ運転の沸き上げ温度は、65℃以上が好ましい。高温沸き上げ運転の沸き上げ温度は、例えば65℃でもよい。
【0075】
制御装置10は、余剰電力沸き上げ運転において、まず通常沸き上げ運転を実行し、通常沸き上げ運転の実行後に高温沸き上げ運転を実行する。通常沸き上げ運転が実行されると、貯湯タンク3内に、通常沸き上げ運転の沸き上げ温度と同等の温度の湯が生成される。通常沸き上げ運転により生成される湯を以下「中温水」と称する。その後、高温沸き上げ運転が実行されると、貯湯タンク3内に、高温沸き上げ運転の沸き上げ温度と同等の温度の湯が生成される。高温沸き上げ運転により生成される湯を以下「高温水」と称する。余剰電力沸き上げ運転の終了後の貯湯タンク3内では、上部に高温水があり、高温水の下に中温水がある状態となる。
【0076】
本実施の形態であれば、余剰電力沸き上げ運転において、まず、沸き上げ温度の低い通常沸き上げ運転を実行することで、以下の効果が得られる。沸き上げ温度が低いので、ヒートポンプユニット2のCOPが高くなるというCOP向上効果と、ヒートポンプユニット2を出た湯がヒートポンプ出湯配管19を通過する間に散逸して失われる熱量が少なくなるという配管放熱ロス低減効果と、貯湯タンク3に湯が貯留されている間に散逸して失われる熱量が少なくなるというタンク放熱ロス低減効果とが得られる。これらのことから、エネルギー効率が高くなる。
【0077】
また、余剰電力沸き上げ運転において、通常沸き上げ運転の実行後に高温沸き上げ運転を実行することで、貯湯タンク3内の上部に高温水を生成できる。追焚動作のときには、この高温水を風呂熱交換器12に熱媒体として供給することで、風呂熱交換器12での熱交換量を十分に大きくすることができ、適切な追焚動作が可能となる。仮に、高温沸き上げ運転を実行しないとすると、貯湯タンク3内の上部に高温水が生成されずに中温水しかないため、追焚動作のときには、中温水を熱媒体として風呂熱交換器12に供給することになる。そうすると、風呂熱交換器12にて、熱媒体である中温水と、浴槽81からの浴槽水との温度差が小さいため、熱交換量を十分に大きくすることができず、適切な追焚動作が困難である。
【0078】
制御装置10は、夜間の沸き上げ運転のときの沸き上げ温度を、高温沸き上げ運転の沸き上げ温度よりも低くしてもよい。沸き上げ温度が低くすることで、上述したCOP向上効果と、配管放熱ロス低減効果と、タンク放熱ロス低減効果とが得られる。夜間の沸き上げ運転のときの沸き上げ温度は、通常沸き上げ運転の沸き上げ温度と同等でもよい。
【0079】
余剰電力沸き上げ運転の実行中に、制御装置10は、余剰電力の変化に応じて、ヒートポンプユニット2の加熱能力を変化させてもよい。ヒートポンプユニット2の加熱能力を変化させると、貯湯式給湯装置1の消費電力が変化する。制御装置10は、貯湯式給湯装置1の消費電力が余剰電力を超えないように、ヒートポンプユニット2の加熱能力を変化させてもよい。余剰電力の変化に応じてヒートポンプユニット2の加熱能力を変化させることで、商用電力の買電が発生することを確実に抑制できるので、電気料金の低減に有利になる。
【0080】
通常沸き上げ運転は、制御装置10からヒートポンプユニット2及び循環ポンプ8への運転開始の指示により開始される。ヒートポンプユニット2においては、圧縮機13が起動してヒートポンプ回路内に冷媒が循環する。圧縮機13で圧縮されてから吐出された冷媒は、冷媒-水熱交換器14内に流入し、貯湯タンク3から送られてきた湯水と熱交換して冷却される。冷却された冷媒は、膨張弁15で減圧された後、室外熱交換器16に流入する。室外熱交換器16に流入した冷媒は、室外熱交換器ファン17からの空気と熱交換して加熱された後、圧縮機13に戻る。
【0081】
一方、貯湯ユニット9においては、制御装置10は、下部取り出しの沸き上げ回路4を形成する。そして、循環ポンプ8の駆動により、貯湯タンク3内の下部の低温水が、下部取出口3dから取り出され、ヒートポンプ入水配管18を経由して冷媒-水熱交換器14に送られる。冷媒-水熱交換器14では、その低温水が、ヒートポンプ回路の冷媒との熱交換により、目標沸き上げ温度まで加熱されて、湯すなわち中温水が生成される。このときの目標沸き上げ温度は、前述したように、65℃未満であり、例えば45℃である。生成された湯すなわち中温水は、ヒートポンプ出湯配管19、第二湯水配管45及び第五湯水配管48を経由して貯湯タンク3の上部に流入する。通常沸き上げ運転が進行すると、貯湯タンク3内では、上側に中温水が溜まっていき、下側の低温水との間の温度境界層が、貯湯タンク3の下部に近づいていく。
【0082】
高温沸き上げ運転の動作は、通常沸き上げ運転と比べて、制御装置10が、中間部取り出しの沸き上げ回路4を形成する点と、目標沸き上げ温度が65℃またはそれ以上となる点が異なる。高温沸き上げ運転では、循環ポンプ8の駆動により、貯湯タンク3内の中温水が、中間部取出口3eから取り出され、中温水配管40、温水導出配管42、温水導出配管34、三方弁28、及びヒートポンプ入水配管18を経由して、冷媒-水熱交換器14に送られる。冷媒-水熱交換器14では、その中温水が、ヒートポンプ回路の冷媒との熱交換により、上記の目標沸き上げ温度まで加熱されて、湯すなわち高温水が生成される。生成された湯すなわち高温水は、ヒートポンプ出湯配管19、第二湯水配管45及び第五湯水配管48を経由して貯湯タンク3の上部に流入する。高温沸き上げ運転が実行されると、貯湯タンク3内の上部に高温水が溜まっていき、高温水と中温水との間の温度境界層の位置が徐々に下へ移動していく。
【0083】
図3は、一日のうちの、PV発電量、給湯機消費電力量、及び宅内消費電力量の変動の例を示す図である。
図3に示す例は、余剰電力沸き上げ運転の実行中に、余剰電力の変動に応じて、制御装置10が、ヒートポンプユニット2の加熱能力を変化させている例に相当する。すなわち、
図3に示す例において、制御装置10は、給湯機消費電力量と、給湯機以外の宅内消費電力量との和が、PV発電量を超えないように、ヒートポンプユニット2の加熱能力を変化させている。これにより、沸き上げ運転のために商用電力の買電が発生することを確実に抑制できるので、電気料金の低減に有利になる。
【0084】
図3に示す例では、9時頃から15時頃までの時間帯に、余剰電力沸き上げ運転を実行している。この例では、9時頃から14頃までが通常沸き上げ運転となり、沸き上げ終盤に当たる14時頃から15時頃までが高温沸き上げ運転となっている。また、19時頃から23時頃までの時間帯は、給湯負荷、湯張り負荷、あるいは追焚負荷が多く発生する傾向がある負荷発生時間帯に相当する。
【0085】
貯湯タンク3内の温度が高いほど、タンク放熱ロスが多くなる。本実施の形態であれば、通常沸き上げ運転の後に高温沸き上げ運転を実行するので、高温沸き上げ運転により生成された高温水が、負荷発生時間帯までの間に、貯湯タンク3内に貯留される時間を短くすることができる。このため、高温水からのタンク放熱ロスを低減することが可能となる。
【0086】
追焚負荷以外の給湯負荷及び湯張り負荷に対しては、通常、高温沸き上げ運転で生成された高温水を使用する必要はなく、通常沸き上げ運転で生成された中温水のみで対応可能である。また、追焚動作に備えて、貯湯タンク3内の高温水は、なるべく温存しておくことが望ましい。このような観点から、制御装置10は、追焚動作よりも前に給湯需要が発生したときには、高温水を使用せずに、通常沸き上げ運転で生成された中温水を用いて給湯することが望ましい。すなわち、追焚動作よりも前に給湯動作あるいは湯張り動作を行う場合には、制御装置10は、三方弁29をb-cとし、貯湯タンク3内の中温水が、中間部取出口3e、中温水配管40、及び給水配管41を通って、風呂給湯混合弁35あるいは一般給湯混合弁36に供給される状態にする。この際、制御装置10は、設定された給湯温度が達成されるように、三方弁29の開度を調整し、中温水配管40からの中温水に対して、給水配管27からの低温水を混合するように構成されていてもよい。
【0087】
図3に示す例のように、一日に余剰電力沸き上げ運転を実行する時間のうち、通常沸き上げ運転を実行する時間は、高温沸き上げ運転を実行する時間よりも長い。一般的に、追焚負荷量は、給湯負荷量と湯張り負荷量の合計に比べて、ずっと小さい。すなわち、必要な高温水の量は、必要な中温水の量よりもずっと小さい。それゆえ、高温沸き上げ運転を実行する時間を、通常沸き上げ運転を実行する時間よりも短くすることで、高温水を必要以上に生成することを抑制できるので、エネルギー効率がさらに向上する。
【0088】
制御装置10は、給湯負荷量及び湯張り負荷量の予測値に応じて、通常沸き上げ運転を実行する時間を調整し、追焚負荷量の予測値に応じて、高温沸き上げ運転を実行する時間を調整してもよい。
【0089】
図3に示す例のように、制御装置10は、余剰電力沸き上げ運転において、PV発電量が一日のピークを過ぎた後に、通常沸き上げ運転から高温沸き上げ運転に切り替える。これにより、通常沸き上げ運転を実行する時間を、高温沸き上げ運転を実行する時間よりも長くする上で、より有利になり、通常沸き上げ運転により生成される中温水の量と、高温沸き上げ運転により生成される高温水の量との割合がより適切になる。
【0090】
また、制御装置10は、余剰電力沸き上げ運転において、余剰電力量が一日のピークを過ぎた後に、通常沸き上げ運転から高温沸き上げ運転に切り替える。これにより、通常沸き上げ運転を実行する時間を、高温沸き上げ運転を実行する時間よりも長くする上で、より有利になり、通常沸き上げ運転により生成される中温水の量と、高温沸き上げ運転により生成される高温水の量との割合がより適切になる。
【0091】
上述したように、高温沸き上げ運転は、PV発電量あるいは余剰電力量が一日のピークを過ぎた後に実行される。このため、高温沸き上げ運転のときには、給湯機消費電力量を抑えるために、ヒートポンプユニット2の加熱能力を低くする必要がある。低い加熱能力で高温水を生成するためには、沸き上げ流量を低くする必要がある。沸き上げ流量が低いほど、ヒートポンプユニット2を出た高温水が貯湯タンク3に流入するまでの時間が長くなるので、配管放熱ロスが大きくなる。
【0092】
図4は、高温沸き上げ運転のときの状態を模式的に示す図である。
図4に示すように、沸き上げ温度をTwo、入水温度をTwi、沸き上げ流量をV、水の密度をρ、水の比熱をCpとすると、ヒートポンプユニット2の加熱能力は、次式で表される。
加熱能力=(Two-Twi)×V×ρ×Cp ・・・(1)
【0093】
本実施の形態では、高温沸き上げ運転のときに、貯湯タンク3の中間部取出口3eから取り出された中温水をヒートポンプユニット2で加熱して高温水を生成する。それゆえ、高温沸き上げ運転のときの入水温度Twiは、通常沸き上げ運転のときの入水温度Twiよりも高い。(1)式が示す通り、入水温度Twiが高くなれば、加熱能力が低くても、沸き上げ流量Vが低くなりにくい。このように、本実施の形態であれば、高温沸き上げ運転のときの沸き上げ流量Vの低下を抑制できるので、配管放熱ロスを低減できる。
【0094】
図5は、レジオネラ属菌と水温との関係を示す図である。
図5に示すように、水温が60℃以上であれば、レジオネラ属菌が死滅する。水温が50℃から60℃の範囲であれば、レジオネラ属菌がやがて死滅し、水温が45℃から50℃の範囲であれば、レジオネラ属菌が繁殖しない。これに対し、水温が20℃から45℃の範囲にあると、レジオネラ属菌が活動的となる傾向がある。
【0095】
貯湯タンク3内の中温水の温度が45℃またはそれ以下であると、中温水にレジオネラ属菌が含まれている可能性がある。これに対し、本実施の形態では、高温沸き上げ運転のときに、貯湯タンク3から取り出された中温水をヒートポンプユニット2で加熱して高温水を生成することで、中温水に含まれている可能性があるレジオネラ属菌を確実に殺菌することが可能となる。
【0096】
ただし、本開示は、上記の例に限定されるものではなく、余剰電力沸き上げ運転の高温沸き上げ運転のときに、貯湯タンク3の下部取出口3dから取り出された低温水をヒートポンプユニット2で加熱して高温水を生成してもよい。
【0097】
夜間電気料金時間帯になると、演算処理部10bは、前述したようにして決定された夜間の目標蓄熱量に基づき、夜間の沸き上げ運転の開始時刻を算出する。そして、その開始時刻になると、演算処理部10bは、沸き上げ運転を実施する指示を機器制御部10cに送る。前述したように、演算処理部10bは、夜間の沸き上げ運転のときの目標沸き上げ温度を、高温沸き上げ運転の目標沸き上げ温度よりも低くすることが望ましい。演算処理部10bは、夜間の沸き上げ運転のときの目標沸き上げ温度を、余剰電力沸き上げ運転の通常沸き上げ運転のときの目標沸き上げ温度と同等としてもよい。また、制御装置10は、夜間の沸き上げ運転のときの加熱能力を、一定に保つことが望ましい。夜間の沸き上げ運転の実行中に、制御装置10は、積算沸き上げ熱量が、夜間の目標蓄熱量に達すると、沸き上げ運転を終了する。
【0098】
図6は、実施の形態1による貯湯式給湯装置1が余剰電力沸き上げ運転を行うときに制御装置10が実行する処理の例を示すフローチャートである。以下、このフローチャートに基づいて説明する。
【0099】
夜間電気料金時間帯が終了し、昼間の時間帯になると、ステップS1として、制御装置10は、情報取得部10aもしくは通信部10dにより取得された余剰電力量の情報に基づいて、現在の余剰電力量が所定値に達しているかどうかを判断する。当該所定値は、沸き上げ運転を余剰電力によって実行可能かどうかを判断するための基準となる値である。現在の余剰電力量が当該所定値に達していれば、ステップS2に進み、制御装置10は、余剰電力を利用して、通常沸き上げ運転を開始する。
【0100】
制御装置10は、通常沸き上げ運転のとき、給湯機消費電力量が余剰電力量と同等となるように、ヒートポンプユニット2の目標加熱能力を設定する。余剰電力量は、時々刻々と変化する。このため、制御装置10は、目標加熱能力の調整を所定時間毎に繰り返し実行する。これにより、余剰電力をより有効に活用することができる。
【0101】
通常沸き上げ運転の実行中、ステップS3として、制御装置10は、通常沸き上げ運転を開始してからの積算沸き上げ熱量が、給湯負荷及び湯張り負荷に対応した昼間の目標蓄熱量に達したどうかを判断する。積算沸き上げ熱量が昼間の目標蓄熱量にまだ達していない場合には、制御装置10は、通常沸き上げ運転を継続する。
【0102】
積算沸き上げ熱量が昼間の目標蓄熱量に達した場合には、ステップS4に進み、制御装置10は、通常沸き上げ運転から高温沸き上げ運転に切り替える。すなわち、制御装置10は、目標沸き上げ温度を、通常沸き上げ運転よりも高い値に変更するとともに、沸き上げ回路4を下部取り出しから中間部取り出しに切り替える。高温沸き上げ運転のときにも、制御装置10は、給湯機消費電力量が余剰電力量と同等となるように、目標加熱能力の調整を所定時間毎に繰り返し実行する。これにより、余剰電力をより有効に活用することができる。
【0103】
高温沸き上げ運転の実行中、ステップS5として、制御装置10は、高温沸き上げ運転を開始してからの積算沸き上げ熱量が、追焚負荷に対応した高温水の目標蓄熱量に達したどうかを判断する。積算沸き上げ熱量が、追焚負荷に対応した目標蓄熱量にまだ達していない場合には、制御装置10は、高温沸き上げ運転を継続する。積算沸き上げ熱量が、追焚負荷に対応した目標蓄熱量に達すると、ステップS6に進み、制御装置10は、沸き上げ運転を終了する。これにより、余剰電力沸き上げ運転が完了する。
【0104】
なお、余剰電力沸き上げ運転の実行中に、PV発電量が低下し、余剰電力量が、上記ステップS1の所定値以下となった場合において、制御装置10は、その時点での積算沸き上げ熱量が目標蓄熱量にまだ達していないときには、通常沸き上げ運転及び高温沸き上げ運転のうち、その時点で実施している沸き上げ運転を継続する。この場合、余剰電力が発生していないため、目標加熱能力を時々刻々と調整する必要はないので、制御装置10は、目標加熱能力を一定の値に維持する。
【0105】
図7は、昼間の沸き上げ運転の開始から終了までの貯湯タンク3内の温度分布の変化の例を示す図である。
図7に示す例では、以下のようになっている。昼間の沸き上げ運転の開始時には、貯湯タンク3内の上部に、夜間の沸き上げ運転により生成された中温水(45℃)が残っており、その下は、水道水に相当する低温水(9℃)で満たされている。この状態から通常沸き上げ運転を実施すると、貯湯タンク3内の低温水(9℃)が減少して中温水(45℃)が増加する。通常沸き上げ運転の終了時には、貯湯タンク3内の下部に低温水(9℃)があり、その上は、中温水(45℃)で満たされている。この状態から高温沸き上げ運転を実施すると、貯湯タンク3内の中温水(45℃)の一部が取り出されてヒートポンプユニット2により加熱され、高温水(65℃)となる。高温沸き上げ運転が終了したときには、貯湯タンク3内の上部が高温水(65℃)で満たされた状態となる。
【0106】
次に、沸き上げ運転におけるヒートポンプ回路を循環する冷媒の状態変化について説明する。
図8は、実施の形態1による貯湯式給湯装置1のヒートポンプ回路のモリエル線図である。
図8において、横軸はエンタルピH[kJ/kg]であり、縦軸は圧力P[MPa]である。
図8中で、破線のグラフが通常沸き上げ運転を示し、実線のグラフが高温沸き上げ運転を示す。
【0107】
まず、通常沸き上げ運転について説明する。圧縮機13により圧縮された冷媒の圧力とエンタルピは、冷媒-水熱交換器14内で、x1’→x2’へ変化する。冷媒-水熱交換器14内において冷媒は、貯湯タンク3から送られてきた水と熱交換し、最大で、冷媒-水熱交換器14への入水温度(例えば9℃)近くまで冷却される。冷媒-水熱交換器14内において水は、冷媒-水熱交換器14への冷媒の入口温度近くまで加熱される。膨張弁15に流入した冷媒の圧力とエンタルピは、膨張弁15内でx2’→x3へ変化する。膨張弁15内では冷媒が減圧され、気液二相状態へと変化する。
【0108】
膨張弁15から室外熱交換器16に流入した冷媒の圧力とエンタルピは、室外熱交換器16内でx3→x4へ変化する。室外熱交換器16内において冷媒は、室外熱交換器ファン17により送られてきた空気と熱交換して蒸発し、気相状態へと変化する。
【0109】
冷媒の圧力とエンタルピは、圧縮機13内でx4→x1’へ変化する。圧縮機13内では、室外熱交換器16により加熱された冷媒蒸気が圧縮される。圧力が上昇した冷媒蒸気は、超臨界域に達し、冷媒-水熱交換器14に流入する。
【0110】
次に、高温沸き上げ運転について、通常沸き上げ運転との相違点を中心に説明する。目標沸き上げ温度を通常沸き上げ運転のときよりも高くするために、圧縮機吐出温度を、通常沸き上げ運転のときよりも高くする。そのため、吐出圧力とエンタルピは、通常沸き上げ運転に比べて、x1’→x1へ変化する。冷媒-水熱交換器14に流入する水の温度が、水道水の温度の付近で一定の場合、沸き上げ温度が上昇しても、冷媒-水熱交換器14の出口の冷媒エンタルピは変化しない。そのため、冷媒-水熱交換器14の出口の冷媒の圧力とエンタルピは、通常沸き上げ運転に比べて、x2’→x2へ変化する。室外熱交換器16の熱交換能力は通常沸き上げ運転のときと比べて変化しないため、室外熱交換器16の入口及び出口の冷媒の圧力とエンタルピは、通常沸き上げ運転と同じく、それぞれx3及びx4となる。
【0111】
実施の形態2.
次に、
図9を参照して、実施の形態2について説明するが、前述した実施の形態1との相違点を中心に説明し、共通する説明を簡略化または省略する。また、前述した要素と共通または対応する要素には、同一の符号を付す。
【0112】
図9は、一日のうちの、PV発電量、給湯機消費電力量、及び宅内消費電力量の変動の例を示す図である。
図9に示す例は、天候が悪いために日射量が少なく、PV発電量が低く、余剰電力が発生していない例を示す。
【0113】
図9に示す例のように、余剰電力が、余剰電力沸き上げ運転を実行可能な基準に満たず、かつ、貯湯タンク3内の蓄熱量が目標蓄熱量に満たない場合に、制御装置10は、余剰電力沸き上げ運転に代えて、商用電力を利用した沸き上げ運転である商用電力昼間沸き上げ運転を実行する。
【0114】
商用電力昼間沸き上げ運転において、制御装置10は、余剰電力沸き上げ運転のときと同じように、まず通常沸き上げ運転を実行し、通常沸き上げ運転の実行後に高温沸き上げ運転を実行する。すなわち、制御装置10は、まず、給湯負荷及び湯張り負荷に対応した昼間の目標蓄熱量を蓄えるように通常沸き上げ運転を実行し、その後、追焚負荷に対応した高温水の目標蓄熱量を蓄えるように高温沸き上げ運転を実行する。
【0115】
本実施の形態であれば、以下の効果が得られる。通常沸き上げ運転においては、沸き上げ温度が低いので、ヒートポンプユニット2のCOPが高くなるというCOP向上効果と、ヒートポンプユニット2を出た湯がヒートポンプ出湯配管19を通過する間に散逸して失われる熱量が少なくなるという配管放熱ロス低減効果と、貯湯タンク3に湯が貯留されている間に散逸して失われる熱量が少なくなるというタンク放熱ロス低減効果とが得られる。これらのことから、エネルギー効率が高くなり、買電量を抑制できる。
【0116】
また、通常沸き上げ運転の後の高温沸き上げ運転によって貯湯タンク3内の上部に高温水を生成できるので、追焚動作のときに、風呂熱交換器12での熱交換量を十分に大きくすることができ、適切な追焚動作が可能となる。
【0117】
商用電力昼間沸き上げ運転を実施する場合、制御装置10は、負荷発生時間帯までに商用電力昼間沸き上げ運転が完了するように、商用電力昼間沸き上げ運転の開始時刻を調整する。商用電力昼間沸き上げ運転のときには、加熱能力を時々刻々と変動させる必要がないので、制御装置10は、目標加熱能力の値を一定に維持する。
【0118】
なお、上述した複数の実施の形態のうち、組み合わせることが可能な二つ以上を組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0119】
1 貯湯式給湯装置、 2 ヒートポンプユニット、 3 貯湯タンク、 3a 最上部、 3b 最下部、 3c 上部口、 3d 下部取出口、 3e 中間部取出口、 4 沸き上げ回路、 5 貯湯温度センサ、 6 往き水路、 7 戻り水路、 8 循環ポンプ、 9 貯湯ユニット、 10 制御装置、 10a 情報取得部、 10b 演算処理部、 10c 機器制御部、 10d 通信部、 10e タイマ、 10f 記憶部、 11 リモコン、 12 風呂熱交換器、 13 圧縮機、 14 冷媒-水熱交換器、 15 膨張弁、 16 室外熱交換器、 17 室外熱交換器ファン、 18 ヒートポンプ入水配管、 19 ヒートポンプ出湯配管、 20 四方弁、 22 浴槽循環ポンプ、 23 給湯端、 24 給水端、 25 給湯配管、 26 送湯配管、 27 給水配管、 28 三方弁、 29 三方弁、 30 四方弁、 31 タンク給水配管、 32 配管、 33 温水導入配管、 34 温水導出配管、 35 風呂給湯混合弁、 36 一般給湯混合弁、 37 湯張り配管、 38 湯張り開閉弁、 39 一般給湯配管、 40 中温水配管、 41 給水配管、 42 温水導出配管、 43 水配管、 44 第一湯水配管、 45 第二湯水配管、 46 第三湯水配管、 47 第四湯水配管、 48 第五湯水配管、 49 入水温度センサ、 50 出湯温度センサ、 51 浴槽温度センサ、 52 浴槽往き温度センサ、 53 給湯流量センサ、 54 湯張り流量センサ、 55 給湯温度センサ、 80 浴槽ユニット、 81 浴槽、 82 浴槽往き配管、 83 浴槽戻り配管、 84 排水栓