(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185920
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】エンドエフェクタ
(51)【国際特許分類】
A01G 3/02 20060101AFI20221208BHJP
B25J 15/08 20060101ALI20221208BHJP
A01D 46/30 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
A01G3/02 501A
B25J15/08 Z
A01D46/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093851
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】305027401
【氏名又は名称】東京都公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】川口 学
(72)【発明者】
【氏名】武居 直行
【テーマコード(参考)】
2B075
3C707
【Fターム(参考)】
2B075JF05
2B075JF06
3C707AS22
3C707CY36
3C707ES03
3C707EU07
3C707EV22
3C707HS27
(57)【要約】
【課題】コンパクトなエンドエフェクタを提供することを目的とする。
【解決手段】エンドエフェクタ100は、第1作用部11を有するベース10と、ベース10に回転自在に設けられた駆動軸20と、駆動軸20とともに回転する駆動リンク21と、ベース10に回転自在に設けられた従動リンク22と、駆動リンク21及び従動リンク22に回転自在に設けられたアーム23と、を備える。アーム23は、アーチ状の軌跡Lで移動し、第1作用部11に向かい合って進退可能な第1切刃24を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1作用部を有するベースと、
前記ベースに回転自在に設けられた駆動軸と、
前記駆動軸とともに回転する駆動リンクと、
前記ベースに回転自在に設けられた従動リンクと、
前記駆動リンク及び前記従動リンクに回転自在に設けられたアームと、を備え、
前記アームは、アーチ状の軌跡で移動し、前記第1作用部に向かい合って進退可能な第1切刃を有する
ことを特徴とするエンドエフェクタ。
【請求項2】
前記第1切刃は、前記軌跡の頂点において、前記第1作用部と重なる
ことを特徴とする請求項1に記載のエンドエフェクタ。
【請求項3】
前記ベースは、第2作用部を備え、
前記アームは、前記第2作用部に向かい合って進退可能な第2切刃を備える
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のエンドエフェクタ。
【請求項4】
前記第2切刃は、前記軌跡の先端点において、前記第2作用部と重なる
ことを特徴とする請求項3に記載のエンドエフェクタ。
【請求項5】
前記第2切刃は、前記第1切刃の向きとは反対向きに設けられる
ことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のエンドエフェクタ。
【請求項6】
前記ベースは、前記軌跡に沿った形状を有するガイド溝を備え、
前記アームは、前記ガイド溝に沿って移動可能な支持部を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のエンドエフェクタ。
【請求項7】
前記ベースは、先方に刃先を向けた切断用切刃を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のエンドエフェクタ。
【請求項8】
前記ベースは、前記第1作用部に沿って延びる受働グリップを備え、
前記アームは、前記受働グリップに向かい合って進退可能な、前記第1切刃に沿って延びる主働グリップを備える
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のエンドエフェクタ。
【請求項9】
前記主働グリップは、前記アームに対して回転自在に巻かれたベルトである
ことを特徴とする請求項8に記載のエンドエフェクタ。
【請求項10】
前記受働グリップは、前記第1作用部の内端よりも外方にある
ことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載のエンドエフェクタ。
【請求項11】
前記ベースは、前記第1作用部に沿って前記受働グリップを隔てて配置され、前記受働グリップより前記主働グリップに向けて突出するエッジを備える
ことを特徴とする請求項8から請求項10のいずれか1項に記載のエンドエフェクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンドエフェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、果柄を切断する切刃を備えた収穫装置がある(特許文献1及び特許文献2参照)。
また、従来、物体を把持するためのロボットアーム用の把持装置がある(特許文献3参照)。
そして、これらのような収穫装置又は把持装置は、ロボットアームの先端に設けられて、いわゆる、エンドエフェクタとして用いられる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6799363号公報
【特許文献2】特開2012-239386号公報
【特許文献3】特開2018-118373号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の収穫装置又は把持装置は、複雑な構造を有しており、エンドエフェクタの寸法及び重量が大きいものであった。これに従って、エンドエフェクタを支持するロボットアームを含むロボット本体も大型のものであった。このため、エンドエフェクタを作用させる対象物が、芽、茎、葉又は果柄等が相互に重なり合った狭い空間における奥に位置する場合、生長中の植物等を傷めずにエンドエフェクタを対象物までアプローチさせることが困難となる場合があった。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、コンパクトなエンドエフェクタを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の形態を提案している。
【0007】
(1)本発明の一態様に係るエンドエフェクタは、第1作用部を有するベースと、前記ベースに回転自在に設けられた駆動軸と、前記駆動軸とともに回転する駆動リンクと、前記ベースに回転自在に設けられた従動リンクと、前記駆動リンク及び前記従動リンクに回転自在に設けられたアームと、を備え、前記アームは、アーチ状の軌跡で移動し、前記第1作用部に向かい合って進退可能な第1切刃を有する。
(2)上記(1)において、前記第1切刃は、前記軌跡の頂点において、前記第1作用部と重なってよい。
(3)上記(1)又は(2)において、前記ベースは、第2作用部を備え、前記アームは、前記第2作用部に向かい合って進退可能な第2切刃を備えてよい。
(4)上記(3)において、前記第2切刃は、前記軌跡の先端点において、前記第2作用部と重なってよい。
(5)上記(3)又は(4)において、前記第2切刃は、前記第1切刃の向きとは反対向きに設けられてよい。
(6)上記(1)から(5)のいずれかにおいて、前記ベースは、前記軌跡に沿った形状を有するガイド溝を備え、前記アームは、前記ガイド溝に沿って移動可能な支持部を備えてよい。
(7)上記(1)から(6)のいずれかにおいて、前記ベースは、先方に刃先を向けた切断用切刃を備えてよい。
(8)上記(1)から(7)のいずれかにおいて、前記ベースは、前記第1作用部に沿って延びる受働グリップを備え、前記アームは、前記受働グリップに向かい合って進退可能な、前記第1切刃に沿って延びる主働グリップを備えてよい。
(9)上記(8)において、前記主働グリップは、前記アームに対して回転自在に巻かれたベルトであってよい。
(10)上記(8)又は(9)において、前記受働グリップは、前記第1作用部の内端よりも外方にあってよい。
(11)上記(8)から(10)のいずれかにおいて、前記ベースは、前記第1作用部に沿って前記受働グリップを隔てて配置され、前記受働グリップより前記主働グリップに向けて突出するエッジを備えてよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コンパクトなエンドエフェクタを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態のエンドエフェクタを示す斜視図である。
【
図2】アームが後端点にある状態の第1切刃の位置を示すエンドエフェクタの正面図である。
【
図3】アームが頂点にある状態の第1切刃の位置を示すエンドエフェクタの正面図である。
【
図4】アームが先端点にある状態の第1切刃の位置を示すエンドエフェクタの正面図である。
【
図6】アームが頂点にある状態におけるエンドエフェクタを示す背面図である。
【
図7】第1切刃が頂点にある状態においてベースの図示を省略されたエンドエフェクタを示す背面図である。
【
図8】第1切刃が頂点にある状態においてベースの図示を省略されたエンドエフェクタを背面から見た斜視図である。
【
図9】第1切刃が頂点にある状態においてベースの図示を省略されたエンドエフェクタを正面から見た斜視図である。
【
図10】先方から後方にみたときの、第1切刃及び第1作用部と、主働グリップ及び受働グリップとの、位置関係を示す説明図である。(a)は、対象物を挿入した状態である。(b)は、対象物を把持した状態である。(c)は、対象物を把持して切断した状態である。
【
図11】先方から後方にみたときの、第1切刃及び第1作用部と、主働グリップ及び受働グリップと、エッジとの、位置関係を示す説明図である。(a)は、対象物を挿入した状態である。(b)は、対象物を把持して切断した状態である。(c)は、対象物を把持した状態でエンドエフェクタを回転させた状態である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、本実施形態について詳細に説明する。
図1は、本実施形態のエンドエフェクタ100を示す斜視図である。
図2は、アーム23が後端点Pbにある状態の第1切刃24の位置を示すエンドエフェクタ100の正面図である。
図3は、アーム23が頂点Ptにある状態の第1切刃24の位置を示すエンドエフェクタ100の正面図である。
図4は、アーム23が先端点Pfにある状態の第1切刃24の位置を示すエンドエフェクタ100の正面図である。
図5は、
図3におけるA矢視断面の斜視図である。
図6は、アーム23が頂点Ptにある状態におけるエンドエフェクタ100を示す背面図である。
図7は、第1切刃24が頂点Ptにある状態においてベース10の図示を省略されたエンドエフェクタ100を示す背面図である。
図8は、第1切刃24が頂点Ptにある状態においてベース10の図示を省略されたエンドエフェクタ100を背面から見た斜視図である。
図9は、第1切刃24が頂点Ptにある状態においてベース10の図示を省略されたエンドエフェクタ100を正面から見た斜視図である。
なお、以下、特に説明のない限り、
図1に示すように、エンドエフェクタ100において、長手方向における駆動軸20が設けられている側を後方といい、その反対側、すなわち、長手方向における第1切刃24が設けられている側を先方という。また、エンドエフェクタ100の中心側を内方といい、エンドエフェクタ100の中心から長手方向及び駆動軸20の回転中心のそれぞれに対して直交する方向に離れる方向を外方という。
【0011】
本実施形態のエンドエフェクタ100は、例えば、園芸、農作業等における鋏を使った手作業に代用できる。エンドエフェクタ100は、例えば、果枝等の対象物Tを切断するために用いることができる。なお、エンドエフェクタ100が作用する対象物Tは、果枝等に限られない。エンドエフェクタ100は、例えば、工業製品の製造時における部材の切断に用いてよい。エンドエフェクタ100は、例えば、走行可能なロボット本体(不図示)から延びるロボットアーム(不図示)の先端に設けられる。エンドエフェクタ100は、適宜の自由度(例えば、6自由度)を有するロボットアームにより、後端部を支持される。空間におけるエンドエフェクタ100の位置及び姿勢は、ロボットアームによって移動させたり回転させたりすることにより、制御される。これにより、対象物Tが農作物で覆われていても、僅かな狭い空間から対象物Tへエンドエフェクタ100をアプローチさせて、対象物Tを切断することができる。
【0012】
図1から
図4に示すように、本実施形態のエンドエフェクタ100は、第1作用部11を有するベース10と、ベース10に回転自在に設けられた駆動軸20と、駆動軸20を中心に揺動する駆動リンク21と、ベース10に回転自在に設けられた従動リンク22と、駆動リンク21及び従動リンク22に回転自在に設けられたアーム23と、を備えている。なお、回転自在とは、360度回転可能であることに限られず、所定角度で揺動自在であることを含む概念である。
【0013】
ベース10は、後方から先方に延びる板状体である。ベース10は、後端部に、不図示のロボットアームに取り付けるための取付部を有している。ベース10は、先端部に、第1作用部11を有している。
【0014】
第1作用部11は、第1切刃24が作用する際のせん断力によって押される対象物Tからの力を受ける機能を有している。第1作用部11は、第1切刃24に対向する切刃であることが好ましい。これにより、対象物Tの一方の側面と他方の側面との両面から、高いせん断応力を作用させることができる。よって、対象物Tの表面がせん断されずに支圧されて潰れたりすることを抑制でき、対象物Tの切断面を綺麗にできる。なお、第1作用部11は、第1切刃24が頂点Ptに有る際に、第1切刃24に対して僅かな遊間を介して嵌る溝を有する棒状体であってよい。
【0015】
ベース10の先端部は、第2作用部12を有していてよい。ベース10は、第1作用部11とは別の第2作用部12を有していてよい。このため、例えば、第1作用部11と第2作用部12とで、同じ対象物Tに対して、切断方向を異ならせる等の異なる作用をさせたり、断面の大きさ等の異なる対象物Tに対して使い分けたりすることができる。よって、対象物Tを効率よく切断できる。
【0016】
ベース10は、先方に刃先を向けた切断用切刃13を有していてもよい。切断用切刃13は、ベース10における先端に設けられていることが好ましい。これにより、ベース10を、地中に向けて突き刺すように移動させることで、切断用切刃13を地中に貫通させて、植物の地表近くにある地中に埋まっている生長点を切断できる。また、地上にある生長点に向けて突き刺すように移動させることで、地上にある植物の生長点を切断できる。なお、切断用切刃13で切断する対象は、植物の生長点に限られない。なお、切断用切刃13は、例えば、二つの直線状の刃先を交差させて先端を尖らせた刃又は円形の回転刃等であってよい。
【0017】
ベース10は、アーチ状の軌跡Lに沿った形状を有するガイド溝Gを備えている。ガイド溝Gは、最も先方にある先端点Pfから、最も第1作用部11に近い箇所にある頂点Ptを経て、最も後方にある後端点Pbに至る、アーチ状の軌跡Lに沿った形状を有している。
また、アーム23は、ガイド溝Gに沿って移動可能な支持部Sを備えている。支持部Sは、ガイド溝Gとの摩擦を低減するため、ガイド溝Gの溝幅(軌跡Lに垂直な方向における一方の溝側壁と他方の溝側壁との間の距離)に対応する外径を有する円柱形状である。支持部Sは、アーム23に対して回転自在に設けられた、いわゆる、ローラであることが好ましい。これにより、対象物Tの切断時に、第1切刃24又は第2切刃25から対象物Tに作用するせん断力に対して対象物Tから受ける反力を、支持部Sを介してベース10のガイド溝Gで受けることができる。よって、アーム23へ作用するモーメント等の負荷を抑制できるので、アーム23の剛性を必要以上に高めずにコンパクトにできる。
【0018】
ベース10は、
図1から
図4及び
図6示すように、先端に、第1作用部11の内端から外方に向けて拡がるように傾斜する傾斜面を有する第1テーパガイド17を備えていてよい。これにより、エンドエフェクタ100の先端を対象物Tに向けて移動させることで、第1テーパガイド17の傾斜面が対象物Tに作用し、対象物Tを、第1切刃24と第1作用部11との間に誘導し易くできる。なお、第1テーパガイド17は、
図1、
図3及び
図4に示すように、第1作用部カバー11Cに設けられていてもよく、第1作用部カバー11C及びベース10の両方に設けられていてもよい。
【0019】
駆動軸20は、正転、反転及び揺動可能な回転軸である。駆動軸20は、不図示の軸受によりベース10に対して回動自在に設けられている。駆動軸20は、電動モータ等のローター自体であってよく、駆動源からの回転力によってギヤ等を介して回転する軸であってもよい。駆動軸20は、電動モータ等を制御することにより、任意の角度、任意の速度、任意のトルク又はそれらの自由な組み合わせで、正転、反転又は揺動可能となっている。
【0020】
駆動リンク21は、駆動軸20からのトルクをアーム23に伝達する棒状体である。駆動リンク21は、一端を駆動軸20に固定され、他方をアーム23に回転自在に連結されている。したがって、駆動リンク21は、駆動軸20の回転に伴って、駆動軸20を中心に駆動軸20とともに回転する。すると、駆動リンク21の回転に伴い、アーム23が移動する。
【0021】
従動リンク22は、可動するアーム23をベース10に支持する棒状体である。従動リンク22は、一端をベース10に設けられた不図示の軸受に回転自在に支持され、他方をアーム23に回転自在に連結されている。したがって、従動リンク22は、駆動軸20の回転、すなわち、駆動リンク21の動きに伴って回転する。すると、駆動リンク21の回転に伴い、従動リンク22によって規制された範囲でアーム23が移動する。
【0022】
アーム23は、ベース10に沿ってエンドエフェクタ100の後方から先方に延びる棒状体である。アーム23は、駆動リンク21及び従動リンク22に回転自在に設けられている。
【0023】
ここで、アーム23は、アーチ状の軌跡Lで移動し、第1作用部11に向かい合って進退可能な第1切刃24を有している。
具体的には、アーム23は、
図2に示すように、後端点Pbにある状態(詳細には、正面視において、アーム23の支持部Sの中心が後端点Pbと重なっている状態)から、
図3に示すように、頂点Ptにある状態(詳細には、正面視において、アーム23の支持部Sの中心が頂点Ptと重なっている状態)を経て、
図4に示すように、先端点Pfにある状態(詳細には、正面視において、アーム23の支持部Sの中心が先端点Pfと重なっている状態)までを、軌跡Lに沿って往復できるようになっている。
このように、アーム23は、アーチ状の軌跡Lで移動する。そして、アーム23は、第1作用部11に向かい合って進退可能な第1切刃24を有している。これにより、第1作用部11と第1切刃24との間に挟まれた対象物Tにせん断力を作用させて、対象物Tを切断することができる。
【0024】
アーム23は、
図1から
図4及び
図6から
図9に示すように、先端に、第1切刃24の内端から外方に向けて拡がるように傾斜する傾斜面を有する第2テーパガイド28を備えていてよい。これにより、エンドエフェクタ100の先端を対象物Tに向けて移動させることで、第2テーパガイド28の傾斜面が対象物Tに作用し、対象物Tを、第1切刃24と第1作用部11との間に誘導し易くできる。なお、第2テーパガイド28は、
図1、
図3、
図4及び
図6に示すように、第1作用部カバー11Cに設けられていてもよく、第1作用部カバー11C及びベース10の両方に設けられていてもよい。
【0025】
第1切刃24は、アーム23に対して着脱自在に装着されていることが好ましい。これにより、第1切刃24を交換し易くできる。
【0026】
第1切刃24は、第1切刃カバー24Cで覆われた状態でアーム23に取り付けられていてもよい。これにより、第1切刃24を剥き出しにならないようにでき、安全性を高めることができる。なお、第1切刃カバー24Cは、
図1、
図3及び
図4に示すように、第2テーパガイド28を有していてもよい。これにより、エンドエフェクタ100の先端を対象物Tに向けて移動させることで、対象物Tを、第1切刃24と第1作用部11との間に誘導し易くできる。
【0027】
第1切刃24は、直線状の刃先を有していてよい。第1切刃24は、第1作用部11に向かって凸の曲線状の刃先を有していてもよい。
【0028】
第1切刃24は、駆動軸20の揺動に連動するアーム23に設けられている。したがって、第1切刃24の位置と駆動軸20の位置とを離して、エンドエフェクタ100の先方に第1切刃24を設けて、後方に駆動軸20を設けることができる。これにより、対象物Tに作用する部分となるエンドエフェクタ100の先方の質量をできるだけ低減できるので、エンドエフェクタ100を取り付けるロボットアームを支持するロボット本体に作用するモーメントを小さくできる。
【0029】
また、第1切刃24は、アーム23の移動に伴って、アーチ状の軌跡Lで移動する。そして、第1切刃24は、頂点Ptの近傍において対象物Tに作用する。この際、第1作用部11は、対象物Tの他方の側面を支持して、対象物Tに作用したせん断力の反力を受ける。このように、第1切刃24は、対象物Tに対して、アーチ状の軌跡Lで侵入するので、直線状の軌跡で侵入する場合と比べて、第1切刃24が対象物Tに接している面積を小さく維持してせん断力を与えることができる。すなわち、対象物Tに高いせん断応力を作用し続けることができ、小さいせん断力で切断することができる。よって、エンドエフェクタ100をコンパクトにできる。
【0030】
第1切刃24は、
図3に示すように、軌跡Lの頂点Ptにおいて(アーム23に設けられた支持部Sの中心が頂点Ptにある状態において)、第1作用部11と重なる。例えば、第1作用部11が切刃である場合、第1切刃24の刃先は、第1作用部11の切刃の刃先に突き当たらずに、第1作用部11の切刃の刃先の側方をかすめて擦れ違い、第1作用部11(の切刃の刃先)と重なる。また、例えば、第1作用部11が溝を有する棒状体である場合、第1切刃24の刃先は、第1作用部11に突き当たらずに、第1作用部11の溝に嵌り、第1作用部11と重なる。
そして、第1切刃24は、対象物Tの一方の側面に対して、アーチ状の軌跡Lにおける頂点Ptの近傍における軌跡で侵入して、せん断力を付与する。すなわち、第1切刃24は、第1作用部11からみて、斜め方向から侵入して対象物Tに食い込んでいき、対象物Tを切断した後、侵入した方向とは異なる方向に斜めに離れるような軌跡を経る。このように、第1切刃24は、頂点Ptで第1作用部11と重なるので、第1切刃24をアーチ状の軌跡Lに沿って動かすことで、第1切刃24と第1作用部11との間に位置する対象物Tを容易に切断できる。
【0031】
ところで、
図1、
図3及び
図4等に示すように、ベース10は、第2作用部12を備えてよい。そして、アーム23は、第2作用部12に向かい合って進退可能な第2切刃25を備えてよい。これにより、第2作用部12と第2切刃25との間に挟まれた対象物Tにせん断力を作用させて、対象物Tを切断することができる。
【0032】
第2切刃25は、アーム23に対して着脱自在に装着されていることが好ましい。これにより、第2切刃25を交換し易くできる。
【0033】
第2切刃25は、直線状の刃先を有していてよい。第2切刃25は、第2作用部12に向かって凸の曲線状の刃先を有していてもよい。
【0034】
第2切刃25は、駆動軸20の揺動に連動するアーム23に設けられている。したがって、第2切刃25の位置と駆動軸20の位置とを離して、エンドエフェクタ100の先方に第2切刃25を設けて、後方に駆動軸20を設けることができる。これにより、対象物Tに作用する部分となるエンドエフェクタ100の先方の質量をできるだけ低減できるので、エンドエフェクタ100を取り付けるロボットアームを支持するロボット本体に作用するモーメントを小さくできる。
【0035】
第2切刃25は、軌跡Lの先端点Pfにおいて(アーム23に設けられた支持部Sの中心が先端点Pfにある状態において)、第2作用部12と重なる。例えば、第2作用部12が切刃である場合、第2切刃25の刃先は、第2作用部12の切刃の刃先に突き当たらずに、第2作用部12の切刃の刃先の側方をかすめて擦れ違う。また、例えば、第2作用部12が溝を有する棒状体である場合、第2切刃25の刃先は、第2作用部12に突き当たらずに、第2作用部12の溝に嵌る。
そして、第2切刃25は、対象物Tの一方の側面に対して、アーチ状の軌跡Lにおける先端点Pfの近傍における軌跡で侵入して、せん断力を付与する。すなわち、第2切刃25は、第2作用部12からみて、正面から少しずれた斜め方向から侵入して対象物Tに食い込んでいき、対象物Tを切断した後、再び侵入した方向に戻るような軌跡を経る。よって、ロボットアームからみて遠くにある対象物Tにアプローチして、切断することができる。
このように、第2切刃25は、先端点Pfで第2作用部12と重なるので、第2切刃25をアーチ状の軌跡Lに沿って動かすことで、第2切刃25と第2作用部12との間に位置する対象物Tを容易に切断できる。
【0036】
第2切刃25は、第1切刃24の向きとは反対向きに設けられている。詳細には、第1切刃24は、アーム23の先端部の側方に、刃先をアーム23の長手方向に沿わせるように設けられている。これに対して、第2切刃25は、アーム23の先端部における第1切刃24が設けられた側方とは反対側の側方に、刃先をアーム23の長手方向に沿わせるように設けられている。このように、第2切刃25は、第1切刃24の向きとは反対向きに設けられているので、アーム23の揺動による小さな動きによって、第1切刃24での切断の作用及び機能と、第2切刃25での切断の作用及び機能とを、兼ねることができる。
【0037】
第2作用部12は、第2切刃25が作用する際のせん断力によって押される対象物Tからの反力を受ける機能を有している。第2作用部12は、第2切刃25が先端点Pfに有る際に、第2切刃25に対して僅かな遊間を介して嵌る溝を有する棒状体であってよい。第2作用部12は、第2切刃25に対向する切刃であることが好ましい。これにより、対象物Tの一方の側面と他方の側面との両面から、高いせん断応力を作用させることができる。よって、対象物Tの表面がせん断されずに支圧されて潰れたりすることを抑制でき、対象物Tの切断面を綺麗にできる。
【0038】
第2作用部12は、ベース10において、第1作用部11よりも先方に配置されている。これにより、比較的太くてせん断力を要する果柄等の対象物Tである場合は、第1作用部11と第1切刃24との間に対象物Tを配置して切断することができる。そして、比較的細くてせん断力を要しない果柄等の対象物Tである場合や、対象物Tが遠くにあってアプローチし難い場合は、エンドエフェクタ100の先方に配置された第2作用部12と第2切刃25との間に対象物Tを配置して切断することができる。このように、エンドエフェクタ100は、第1作用部11及び第1切刃24並びに第2作用部12及び第2切刃25を有しているので、対象物Tの特性によって切り方を使い分けて、対象物Tを切断し易くできる。また、第1切刃24による切断と、第2切刃25による切断を、駆動軸20の回転に基づいて、駆動リンク21と従動リンク22を介して、アーチ状の軌跡Lに沿うアーム23の一連の動きによって実現できる。よって、エンドエフェクタ100の構造をコンパクトにできる。
【0039】
ベース10は、
図5に示すように、第1作用部11に沿って延びる受働グリップ14を備えている。そして、アーム23は、受働グリップ14に向かい合って進退可能な、第1切刃24に沿って延びる主働グリップ26を備えている。このように、受働グリップ14と主働グリップ26とは向かい合っている。したがって、アーム23の動作により、受働グリップ14と主働グリップ26との間を狭めていくことで、対象物Tを、受働グリップ14と主働グリップ26との間に挟むことができる。また、主働グリップ26は、第1切刃24に沿って延びているので、対象物Tの切断位置となる第1切刃24の位置よりも下にある対象物Tの部分を把持できる。よって、第1切刃24によって切断した後の対象物Tの落下を防ぐことができる。
【0040】
主働グリップ26は、受働グリップ14と比較して剛性の高い材料、例えば、合成ゴムで形成されている。これにより、切断された対象物Tの部分を傷めずに把持できる。
【0041】
詳細には、主働グリップ26は、
図6から
図9に示すように、アーム23に対して回転自由に巻かれたベルトであることが好ましい。ベルト状の主働グリップ26は、例えば、アーム23から突出した2つのローラ26Rに対して回転自在に巻回されている。これにより、エンドエフェクタ100の先方にある対象物Tを、第1切刃24と第1作用部11との間に案内する際に、接触による抵抗を小さくできるとともに、切断時におけるアーム23の移動に伴って対象物Tを移動させないようにできる。また、ベルト状の主働グリップ26には、テンショナ26Tによって、ローラ26Rに巻かれている方向に張力が作用している。テンショナ26Tは、アーム23に対して位置調節可能に、回転自在に取り付けられたリングであってよい。このリングの外周面がベルト状の主働グリップ26を押すことで、主働グリップ26に張力が作用する。したがって、このリングの位置を調節することで、主働グリップ26に張力、すなわち、対象物Tへの不勢力を調節できる。主働グリップ26は、このような構造であるため、対象物Tを受働グリップ14との間に挟んだ際に、対象物Tを弾性的に付勢した状態にできる。よって、対象物Tを傷めることなく把持できる。
【0042】
受働グリップ14は、第1作用部11の内端よりも外方にある。これにより、対象物Tが受働グリップ14と主働グリップ26との間に挟まれた状態で、対象物Tが第1作用部11に触れた状態にできる。よって、第1切刃24で対象物Tを確実に切断できる。
【0043】
受働グリップ14は、主働グリップ26の剛性と同等以下の剛性を有する材料、例えば、発泡樹脂で形成されている。これにより、切断された対象物Tの部分を傷めずに把持できる。
また、受働グリップ14は、対象物Tの摩擦係数より高い摩擦係数を有することが好ましい。これにより、対象物Tを確実に把持できる。
また、主働グリップ26は、対象物Tの摩擦係数より高い摩擦係数を有することが好ましい。これにより、対象物Tを確実に把持できる。
【0044】
受働グリップ14は、ベース10に対して、適宜、ホルダ15を介して取り付けられている。これにより、対象物Tの種類に応じて、受働グリップ14をホルダ15ごと交換できる。
【0045】
ここで、主に、
図2から
図4及び
図10を用いて、対象物Tの切断時における受働グリップ14及び主働グリップ26の作用を説明する。
図10は、先方から後方にみたときの、第1切刃24及び第1作用部11と、主働グリップ26及び受働グリップ14との、位置関係を示す説明図である。
図10(a)は、対象物Tを挿入した状態である。
図10(b)は、対象物Tを把持した状態である。
図10(c)は、対象物Tを把持して切断した状態である。
【0046】
(1)まず、
図2又は
図4に示すように、アーム23が先端点Pfの近傍又は後端点Pbの近傍にある状態、すなわち、第1切刃24と第1作用部11とが離れており、主働グリップ26と受働グリップ14とが離れている状態で、
図10(a)に示すように、第1切刃24と第1作用部11との間及び主働グリップ26と受働グリップ14との間に対象物Tを通す。なお、第1作用部11及び受働グリップ14は、ベース10に取り付けられている。一方、第1切刃24及び主働グリップ26は、アーム23に取り付けられているので、アーム23の動きに合わせて一体として移動する。
【0047】
(2)そして、アーム23を頂点Ptの手前まで移動すると、すなわち、第1切刃24と第1作用部11とを近付けると、対象物Tは、
図10(b)に示すように、主働グリップ26と受働グリップ14とで挟まれて把持された状態となる。
【0048】
(3)続いて、
図3に示すように、アーム23を頂点Ptに達するまで更に移動すると、すなわち、第1切刃24と第1作用部11とが擦れ違って重なった状態となるまでアーム23を移動すると、対象物Tは、
図10(c)に示すように、主働グリップ26と受働グリップ14とで挟まれて把持された状態で第1切刃24によって切断される。
このように、エンドエフェクタ100は、受働グリップ14及び主働グリップ26を有しているので、対象物Tの切断に伴って、対象物Tを把持することができる。よって、切断された対象物Tを把持した状態で移動できる。
【0049】
ベース10は、
図5及び
図11に示すように、第1作用部11に沿って受働グリップ14を隔てて配置され、受働グリップ14より主働グリップ26に向けて突出するエッジ16を備えていてよい。このように、ベース10は、エッジ16を有しているので、第1切刃24及び第1作用部11によって切断した対象物Tを、主働グリップ26と受働グリップ14とで把持した状態で、ベース10を回転させて、エッジ16の内端16eに載せることで、対象物Tの重量を支えることができる。よって、主働グリップ26と受働グリップ14とによる把持力の不足分を補うことができ、重量の大きい対象物を切断と同時に把持できる。
【0050】
ここで、主に、
図2から
図4及び
図11を用いて、対象物Tの切断時におけるエッジ16の作用を説明する。
図10は、先方から後方にみたときの、第1切刃24及び第1作用部11と、主働グリップ26及び受働グリップ14と、エッジ16との、位置関係を示す説明図である。
図11(a)は、対象物Tを挿入した状態である。
図11(b)は、対象物Tを把持して切断した状態である。
図11(c)は、対象物Tを把持した状態でエンドエフェクタ100を回転させた状態である。
【0051】
(1)まず、
図2又は
図4に示すように、アーム23が先端点Pfの近傍又は後端点Pbの近傍にある状態、すなわち、第1切刃24と第1作用部11とが離れており、主働グリップ26と受働グリップ14とが離れている状態で、
図11(a)に示すように、第1切刃24と第1作用部11との間及び主働グリップ26と受働グリップ14との間に対象物Tを通す。なお、第1作用部11、受働グリップ14及びエッジ16は、ベース10に取り付けられている。一方、第1切刃24及び主働グリップ26は、アーム23に取り付けられているので、アーム23の動きに合わせて一体として移動する。
【0052】
(2)そして、
図3に示すように、アーム23を頂点Ptに達するまで移動すると、すなわち、第1切刃24と第1作用部11とが擦れ違って重なった状態となるまでアーム23を移動すると、対象物Tは、
図11(b)に示すように、主働グリップ26と受働グリップ14とで挟まれて把持された状態で第1切刃24によって切断される。
【0053】
(3)この際、切断の前から切断の後までの間に、
図11(c)に示すように、エンドエフェクタ100を、エッジ16の内端16eが上方を向くように捻る。このようにして、エッジ16の内端16eに対象物Tを載せて、対象物Tの重量を支えることができる。
【0054】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0055】
例えば、ベース10は、第2作用部12に沿って延びる第2受働グリップ(不図示)を備えていてもよい。そして、アーム23は、第2受働グリップに向かい合って進退可能な、第2切刃25に沿って延びる第2主働グリップ(不図示)を備えていてもよい。このように、第2受働グリップと第2主働グリップとは向かい合っている。したがって、アーム23の動作により、第2受働グリップと第2主働グリップとの間を狭めていくことで、対象物Tを、第2受働グリップと第2主働グリップとの間に挟むことができる。また、第2主働グリップは、第2切刃25に沿って延びているので、対象物Tの切断位置となる第2切刃25の位置よりも下にある対象物Tの部分を把持できる。よって、第2切刃25によって切断した後の対象物Tの落下を防ぐことができる。
【0056】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、コンパクトなエンドエフェクタを提供できる。
【符号の説明】
【0058】
10 ベース
11 第1作用部
11C 第1作用部カバー
12 第2作用部
13 切断用切刃
14 受働グリップ
15 ホルダ
16 エッジ
16e (エッジの)内端
17 第1テーパガイド
20 駆動軸
21 駆動リンク
22 従動リンク
23 アーム
24 第1切刃
24C 第1切刃カバー
25 第2切刃
26 主働グリップ
26R ローラ
26T テンショナ
28 第2テーパガイド
100 エンドエフェクタ
G ガイド溝
L 軌跡
Pb 後端点
Pf 先端点
Pt 頂点
S 支持部
T 対象物