(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185923
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E06B 5/16 20060101AFI20221208BHJP
E06B 1/70 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
E06B5/16
E06B1/70 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093858
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桐野 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山中 里加子
【テーマコード(参考)】
2E011
2E239
【Fターム(参考)】
2E011MA02
2E239CA02
2E239CA29
2E239CA32
2E239CA54
2E239CA57
2E239CA62
(57)【要約】
【課題】防火性を損なうことなくレール間アタッチメントの取り扱い性や外観品質を向上させること。
【解決手段】枠体10及び障子20A,20Bを備え、枠体10を構成する下枠14には障子20A,20Bを案内するレール14c,14dが見込み方向に並設され、レール14c,14dの相互間にはレール間アタッチメント70が配設された建具であって、レール間アタッチメント70には、小口端部に樹脂製のキャップ部材71が装着され、下枠14の上面においてレール14c,14dの相互間となる部分には、下枠14の長手方向においてキャップ部材71に重複する位置に下枠用熱膨張性部材51が設けられている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体及び障子を備え、前記枠体を構成する下枠にはレールが見込み方向に並設され、前記レールの相互間にはレール間アタッチメントが配設された建具であって、
前記レール間アタッチメントには、小口端部に樹脂製のキャップ部材が装着され、
前記下枠において前記レールの相互間となる部分には、前記下枠の長手方向において前記キャップ部材に重複する位置に下枠用熱膨張性部材が設けられていることを特徴とする建具。
【請求項2】
前記下枠用熱膨張性部材は、前記下枠の上面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記下枠用熱膨張性部材は、前記キャップ部材によって覆われる位置に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の建具。
【請求項4】
前記レールの相互間には、前記下枠の長手方向に前記レール間アタッチメントが複数並設されていることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項5】
前記レール間アタッチメントは、前記下枠の長手方向に沿って複数配設されており、
前記キャップ部材の一方は、前記障子が閉じた場合に少なくとも一部が召し合わせに配置される縦框の下方に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の建具。
【請求項6】
前記レール間アタッチメントには、前記障子の下框に対向する位置に長手に沿ってアタッチメント用熱膨張性部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建具に関するもので、下枠のレール相互間にレール間アタッチメントが配設された建具に関する。
【背景技術】
【0002】
下枠に障子を案内するレールが見込み方向に並設された引き違い窓等の建具には、レールの相互間にレール間アタッチメントを設けたものがある(例えば、特許文献1参照)。レール間アタッチメントとしては、強度上の観点からアルミニウム合金等の金属によって成形されたものが用いられている。上記のようなレール間アタッチメントを設けた建具によれば、レールの相互間に位置する下枠の上面とレールとの間の段差が減少するため、例えば車椅子での通行も容易になる等の利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
建具には、熱膨張性部材を設けることによって防火性を向上させるようにしたものがある。熱膨張性部材は、熱により膨張する不燃性または難燃性の耐火部材であり、例えば、下枠の上面及び下框においてレールに対向する部分等、枠体を構成する枠材と、障子を構成する框材との間に設けられている。すなわち、火災等の発生によって建具が高温に晒された場合には、熱膨張性部材が膨張することで枠体と障子との間の隙間が塞がれることになり、非加熱面側へ延焼する事態を防止することが可能となる。
【0005】
ここで、レールの相互間にレール間アタッチメントが配設された建具では、下枠の上面に熱膨張性部材を設けた場合、レール間アタッチメントによって熱膨張性部材の膨張が妨げられる懸念がある。このため、上述した特許文献1に記載のものでは、レール間アタッチメントに直接熱膨張性部材を配設することで上述の問題を解決するようにしている。
【0006】
しかしながら、レール間アタッチメントには、取り扱い性や外観品質を考慮して小口端部に樹脂製のキャップ部材が装着されているものがある。樹脂製のキャップ部材については、高温状態になると溶融、もしくは焼失するものであり、熱膨張性部材を配設することが難しい。このため、建具が高温に晒された場合には、キャップ部材が設けられた部分に貫通口を生じるおそれがあり、防火性の観点からは必ずしも好ましいとはいえない。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて、防火性を損なうことなくレール間アタッチメントの取り扱い性や外観品質を向上させることのできる建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る建具は、枠体及び障子を備え、前記枠体を構成する下枠にはレールが見込み方向に並設され、前記レールの相互間にはレール間アタッチメントが配設された建具であって、前記レール間アタッチメントには、小口端部に樹脂製のキャップ部材が装着され、前記下枠において前記レールの相互間となる部分には、前記下枠の長手方向において前記キャップ部材に重複する位置に下枠用熱膨張性部材が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、下枠の長手方向においてキャップ部材に重複する位置に下枠用熱膨張性部材が設けられているため、溶融、あるいは焼失したキャップ部材の配設位置が下枠用熱膨張性部材によって塞がれることになり、火炎の貫通口が生じる事態を防止することができる。下枠用熱膨張性部材を設ける位置としては、下枠の上面であっても、高温状態においてはキャップ部材が溶融、もしくは焼失しているため、熱膨張が妨げられる懸念がない。従って、小口端部にキャップ部材を設けることでレール間アタッチメントの取り扱い性や外観品質を向上させた場合にも、防火性が損なわれる事態を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態である建具を室内側から見た図である。
【
図2】
図1に示した建具の下枠を示す平面図である。
【
図4】
図2に示した下枠及びアタッチメントの分解断面図である。
【
図5】
図2に示した下枠のレール間に設けられるレール間アタッチメントの要部を示す分解斜視図である。
【
図6】
図2に示した下枠からアタッチメントを取り外した状態の要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下においては便宜上、見込み方向及び見付け方向という用語を用いる。見込み方向とは、図中の矢印Aで示すように、建具の奥行きに沿った方向である。見込み方向に沿った面については見込み面と称する場合がある。見付け方向とは、下枠等のように水平方向に沿って延在するものの場合、見込み方向に直交した上下に沿う方向である。縦枠等のように上下方向に沿って延在するものの場合には、見込み方向に直交した水平に沿う方向を見付け方向という。見付け方向に沿った面については、見付け面と称する場合がある。
【0012】
図1~
図10は、本発明の実施の形態である建具を示したものである。ここで例示する建具は、枠体10と、枠体10の室内側となる部分に配設した内障子20Aと、枠体10の室外側となる部分に配設した外障子20Bとを備えた引き違い窓と称されるものである。枠体10は、左右の縦枠11,12の上下両端部の間にそれぞれ上枠13及び下枠14を設けることによって四角形状に構成したものである。内障子20A及び外障子20Bは、それぞれ四角形状を成す面材21の左右両縁部に縦框22,23を設けるとともに、面材21の上下両縁部において縦框22,23の相互間となる部分に上框24及び下框25を装着することによって構成したものである。
【0013】
内障子20A及び外障子20Bは、
図7~
図10に示すように、それぞれの下框25に戸車26を備えている。戸車26は、見込み方向に沿う軸心を中心として回転可能となり、下部周面が下框25の下面に露出する状態で下框25に配設してある。図からも明らかなように、下框25において戸車26よりも室内側に位置する部分には、戸車26の周面よりも下方に突出するように内方カバー壁部25aが設けてあり、下框25において戸車26よりも室外側に位置する部分には、戸車26の周面よりも下方に突出するように外方カバー壁部25bが設けてある。図示の例では、室内側から見て右側に内障子20Aを配置し、かつ左側に外障子20Bを配置した場合に枠体10の開口を閉じることが可能となるように枠体10、内障子20A、外障子20Bが構成してある。枠体10を構成する枠11,12,13,14及び障子20A,20Bを構成する框22,23,24,25は、アルミニウム合金等の金属によって成形した押し出し形材であり、それぞれ長手に沿った全長にわたってほぼ一様となる断面形状を有するように構成してある。
【0014】
枠体10の下枠14は、
図4に示すように、下枠基部14aを有するとともに、下枠基部14aに室内側から内方見付け壁部14b、内方レール14c、外方レール14d及び外方見付け壁部14eを見込み方向に並設することによって構成してある。
下枠基部14aは、見込み方向に沿って延在する板状を成すものである。図示の例では、室外に向けて漸次下方となるように複数の平板状部分を段階状となるように設けることによって下枠基部14aが構成してある。
【0015】
内方見付け壁部14bは、下枠基部14aの室内側に位置する端縁から上下に延在した板状部分である。内方見付け壁部14bの上縁部は、室内に向けてほぼ直角に屈曲している。内方レール14cは、戸車26を介して内障子20Aを移動可能に案内するためのもので、下枠基部14aにおいて室内側に位置する平板状部分の中間部から上方に向けて延在している。外方レール14dは、戸車26を介して外障子20Bを移動可能に案内するためのもので、内方レール14cよりも一段低くなる平板状部分の室外側に位置する縁部から上方に向けて延在している。図からも明らかなように、内方見付け壁部14b、内方レール14c及び外方レール14dは、突出高さが互いにほぼ同じとなるように構成してある。外方見付け壁部14eは、下枠基部14aの室外側に位置する縁部から上方に向けて延在した板状を成すものである。外方見付け壁部14eの突出高さは、外方レール14dよりも低くなるように構成してある。外方見付け壁部14eの上縁部には、室内に向けて突出した外方係合受部14fが設けてある。
【0016】
また、下枠14には、下枠基部14aの下方に中空部14gが構成してある。中空部14gは、内方レール14cの下方から外方レール14dと外方見付け壁部14eとの中間部分の下方までの間に構成したものである。この中空部14gには、鋼材等、アルミニウム合金よりも耐火強度の高い材質によって構成した補強材15が配設してある。
【0017】
図2及び
図3に示すように、上述の構成を有する下枠14には、内方レール14cを覆う位置に内方ストッパ部材16が配設してあるとともに、外方レール14dを覆う位置に外方ストッパ部材17が配設してある。内方ストッパ部材16は、室内側から見た場合に下枠14の左側に位置する端部に配設してあり、内障子20Aが左側の縦枠11に当接する以前に内障子20Aに当接するものである。同様に、外方ストッパ部材17は、室外側から見た場合に下枠14の右側に位置する端部に配設してあり、外障子20Bが右側の縦枠12に当接する以前に外障子20Bに当接するものである。
【0018】
また、
図2~
図4に示すように、下枠14には、内方見付け壁部14bと内方レール14cとの間に室内アタッチメント30が配設してあるとともに、外方見付け壁部14eと外方レール14dとの間に室外アタッチメント40が配設してある。室内アタッチメント30及び室外アタッチメント40は、それぞれアルミニウム合金等の金属によって成形した押し出し形材であり、それぞれ長手に沿った全長にわたってほぼ一様となる断面形状を有するように構成してある。
【0019】
室内アタッチメント30は、中空状を成す内方本体部30aと、内方本体部30aから延在した内押圧脚部30b、内係合脚部30c及び内傾斜突出片30dとを一体に成形したものである。図示の例では、両端部に樹脂製の内方キャップ部材31を装着した状態で、室内側から見た場合に下枠14の右側の端部から内方ストッパ部材16の右側端部までの間に一連となるように配設してある。内押圧脚部30bは、内方本体部30aの室内側に位置する縁部から下方に延在した板状を成すものである。内係合脚部30cは、内方本体部30aの室外側に位置する縁部から下方に延在した板状を成すものである。内係合脚部30cの下縁部には、室外に向けて突出した内係合突起30eが設けてある。内傾斜突出片30dは、内方本体部30aの室外側に位置する縁部から室外に向けて漸次下方となるように延在した板状を成すものである。
【0020】
この室内アタッチメント30は、内押圧脚部30bを内方見付け壁部14bに当接させた状態で内係合脚部30cの内係合突起30eを下枠基部14aに設けた内突条14hに係合させることにより、内方見付け壁部14bと内方レール14cとの間に着脱可能に装着してある。下枠14に装着した室内アタッチメント30は、下枠基部14aからの突出高さが内方レール14cとほぼ同じである。室内アタッチメント30の内方本体部30aは、内方レール14cとの間に内障子20Aの内方カバー壁部25aが挿入可能となる隙間を確保した状態で、内方見付け壁部14bに近接するように位置している。内方レール14cと内方本体部30aとの間の隙間には、内傾斜突出片30dが配置される。内方本体部30aにおいて内方レール14cに対向する面には、アタッチメント用熱膨張性部材50が配設してある。アタッチメント用熱膨張性部材50は、熱により膨張する不燃性または難燃性の耐火部材である。この種のアタッチメント用熱膨張性部材50としては、例えば熱膨張性を有した黒鉛含有の発泡材を適用することができる。本実施の形態では、幅方向の寸法に対して板厚の薄い断面形状を有した長尺状のアタッチメント用熱膨張性部材50が内方本体部30aの長手に沿ってほぼ全長にわたる部分に配設してある。図には明示していないが、アタッチメント用熱膨張性部材50は、両面テープや接着剤によって接着してあり、内方本体部30aから不用意に脱落することはない。アタッチメント用熱膨張性部材50の上方となる部分は、内方本体部30aから延在した上方カバー部30fによって覆ってある。
【0021】
室外アタッチメント40は、板状の外方本体部40aと、外方本体部40aの上縁部から延在した上方突出片40b、外方突出片40c及び外傾斜突出片40dとを一体に成形したものである。図示の例では、両端部に樹脂製の外方キャップ部材41を装着した状態で下枠14の長手に沿ってほぼ全長にわたる部分に一連となるように配設してある。外方本体部40aは、上下方向に延在し、下端部にフック部40eを有したものである。フック部40eは、室外に向けてほぼ直角に屈曲した後、下方に延在し、さらに室外に向けてほぼ直角に屈曲したものである。上方突出片40bは、外方本体部40aの上縁部から上方に向けて延在した後、室内に向けてほぼ直角に屈曲した板状を成すものである。外方突出片40cは、外方本体部40aの上縁部から室外に向けてほぼ直角に延在した後、上方に向けて延在し、さらに室内向けてほぼ直角に延在した後、下方に屈曲するように延在した板状を成すものである。外方突出片40cの延在縁部には、外方見付け壁部14eの外方係合受部14fに係合可能となる係合爪部40gが設けてある。外傾斜突出片40dは、外方本体部40aの上縁部から室内に向けて漸次下方となるように延在した板状を成すものである。
【0022】
この室外アタッチメント40は、フック部40eを下枠基部14aに設けた外方爪部14iに係合させた状態で係合爪部40gを外方見付け壁部14eの外方係合受部14fに係合させることにより、外方見付け壁部14eと外方レール14dとの間に着脱可能に装着してある。下枠14に装着した室外アタッチメント40は、下枠基部14aからの突出高さが外方レール14dとほぼ同じである。室外アタッチメント40の上方突出片40bは、外方レール14dとの間に外障子20Bの外方カバー壁部25bが挿入可能となる隙間を確保した状態で配置される。外方レール14dと上方突出片40bとの間の隙間には、外傾斜突出片40dが配置される。外方本体部40aの室内に臨む面、外方本体部40aの室外に臨む面、上方突出片40bの室内に臨む面及び外方突出片40cにおいて下枠基部14aに対向する下面には、それぞれアタッチメント用熱膨張性部材50が配設してある。アタッチメント用熱膨張性部材50は、室内アタッチメント30に設けたものと同様であり、両面テープや接着剤によって室外アタッチメント40の各部に接着してある。
【0023】
さらに、下枠14には、
図2~
図6に示すように、下枠基部14aの上面において内方レール14cと外方レール14dとの間となる部分に風止板60、下がり防止金具61、レール間アタッチメント70及び下枠用熱膨張性部材51が配設してある。風止板60は、枠体10の開口を閉じた状態において下枠14と内障子20A及び外障子20Bとの間の室内外の通気を遮断するためのもので、樹脂によって成形してある。この風止板60は、それぞれの障子20A,20Bにおいて召し合わせとなる位置に配置される縦框(以下、召し合わせ框23という)の下方となる部分に配設してある。下がり防止金具61は、下枠14に対してそれぞれの障子20A,20Bの召し合わせ框23が下方に移動する事態を防止するためのもので、金属によって成形してある。この下がり防止金具61は、室内側から見て風止板60の左側において風止板60に近接した状態で召し合わせ框23の下方となる部分に配設してある。下がり防止金具61には、アタッチメント用熱膨張性部材50と同じ金具用熱膨張性部材50′が配設してある。
【0024】
レール間アタッチメント70は、アルミニウム合金等の金属によって成形した押し出し形材であり、長手に沿った全長にわたってほぼ一様となる断面形状を有するように構成してある。本実施の形態では、中空状を成す中央本体部70aと、中央本体部70aから延在した中押圧脚部70b、中係合脚部70c及び中傾斜突出片70dとを一体に成形したレール間アタッチメント70を適用している。図示の例では、両端部に樹脂製のキャップ部材71を装着した状態で、内方ストッパ部材16と下がり防止金具61との間及び風止板60と外方ストッパ部材17との間にそれぞれレール間アタッチメント70が配設してある。中押圧脚部70bは、中央本体部70aの室内側に位置する下面から下方に延在した板状を成すものである。中係合脚部70cは、中央本体部70aの室外側に位置する縁部から室外に向けて下方に延在した後、下方に屈曲延在した板状を成すものである。中係合脚部70cの下縁部には、室外に向けて突出した中係合突起70eが設けてある。中傾斜突出片70dは、中央本体部70aの室内側に位置する縁部から室内に向けて漸次下方となるように延在した板状を成すものである。キャップ部材71は、レール間アタッチメント70の小口端面をすべて覆うことのできる断面形状を有するとともに、中央本体部70aの中空部に挿入することのできる挿入部71aを有したものである。キャップ部材71の上方部は、見込み方向の寸法が先端に向けて漸次小さくなるようにテーパ状に形成してある。
【0025】
このレール間アタッチメント70は、中押圧脚部70bを下枠基部14aに設けた中突条14jに当接させた状態で中係合脚部70cの中係合突起70eを外方レール14dの下部に設けた外係合受部14kに係合させることにより、内方レール14cと外方レール14dとの間に着脱可能に装着してある。すなわち、レール間アタッチメント70は、両端部に装着したキャップ部材71の見込み方向の寸法が先端部に向けて小さく構成してあるため、内方レール14cとの間及び外方レール14dとの間にそれぞれ手指を挿入することが可能となるスペースが確保されることになる。従って、このスペースに手指を挿入してキャップ部材71を把持することにより、下枠14から容易に取り外すことが可能である。下枠14に装着したレール間アタッチメント70は、下枠基部14aからの突出高さが内方レール14cとほぼ同じである。レール間アタッチメント70の中央本体部70aは、内方レール14cとの間に内障子20Aの外方カバー壁部25bが挿入可能となる隙間を確保するとともに、外方レール14dとの間に外障子20Bの内方カバー壁部25aが挿入可能となる隙間を確保した状態で、内方レール14cと外方レール14dとの間のほぼ中間となる部分に位置している。内方レール14cと中央本体部70aとの間の隙間には中傾斜突出片70dが配置され、外方レール14dと中央本体部70aとの間の隙間には中係合脚部70cの傾斜して延在する部分が配置される。中央本体部70aにおいて内方レール14cに対向する面、中央本体部70aにおいて外方レール14dに対向する面、中央本体部70aにおいて下枠基部14aに対向する下面及び中傾斜突出片70dにおいて下枠基部14aに対向する下面には、それぞれ長手の全長にわたってアタッチメント用熱膨張性部材50が配設してある。アタッチメント用熱膨張性部材50は、室内アタッチメント30に設けたものと同様であり、両面テープや接着剤によってレール間アタッチメント70の各部に接着してある。中央本体部70aにおいて内方レール14cに対向する面に設けたアタッチメント用熱膨張性部材50及び中央本体部70aにおいて外方レール14dに対向する面に設けたアタッチメント用熱膨張性部材50は、それぞれの上方となる部分が中央本体部70aから延在した上方カバー部70fによって覆ってある。
【0026】
下枠用熱膨張性部材51は、アタッチメント用熱膨張性部材50と同様、熱により膨張する不燃性または難燃性の耐火部材であり、例えば熱膨張性を有した黒鉛含有の発泡材を適用することができる。本実施の形態では、幅方向の寸法に対して板厚の薄い断面形状を有した長尺状の下枠用熱膨張性部材51が下枠基部14aの上面に配設してある。具体的には、
図6に示すように、室内側から見て下がり防止金具61よりも左側となる部分に2本の下枠用熱膨張性部材51が互いに平行となるように見込み方向に並設してあるとともに、風止板60よりも右側となる部分に2本の下枠用熱膨張性部材51が互いに平行となるように見込み方向に並設してある。
【0027】
左側の下枠用熱膨張性部材51は、下枠14の長手方向において、左側に配置されたレール間アタッチメント70の中央側に位置するキャップ部材71に重複し、さらに外障子20Bの戸車26に重複するようにレール間アタッチメント70の端部下方まで延在してある。右側の下枠用熱膨張性部材51は、下枠14の長手方向において、右側に配置されたレール間アタッチメント70の中央側に位置するキャップ部材71に重複し、さらに内障子20Aの戸車26に重複するようにレール間アタッチメント70の端部下方まで延在してある。図には明示していないが、これらの下枠用熱膨張性部材51は、両面テープや接着剤によって接着してあり、下枠基部14aの上面から不用意に脱落することはない。また、下枠14にレール間アタッチメント70を配設した状態においては、これら下枠用熱膨張性部材51の上方部がレール間アタッチメント70及びキャップ部材71によって覆われることになり、外部から視認することが困難な状態となる。
【0028】
上記のように構成した建具では、下枠基部14aの上面に室内アタッチメント30、レール間アタッチメント70及び室外アタッチメント40を設けるようにしているため、下枠基部14aの上面と内方レール14c及び外方レール14dとの段差がほぼゼロとなるとともに、内方レール14c及び外方レール14dの隙間が埋められることになる。従って、例えば車椅子での通行も容易になる等、バリアフリーの点で有利となる。
【0029】
しかも、それぞれのアタッチメント30,70,40の端部には、樹脂によって成形したキャップ部材31,71,41が装着してある。これにより、アタッチメント30,70,40の小口端部が外部に露出することがないため、建具の外観品質を損なうおそれがないばかりか、アタッチメント30,70,40の取り扱い性を向上させることができる。
【0030】
さらに、内方レール14cと外方レール14dとの間に配設したレール間アタッチメント70は、下枠14の長手方向に沿って2つ配設してあるため、枠体10に障子20A,20Bを配設した状態のまま下枠14から取り外すことが可能である。これにより、下枠基部14aの上面に堆積したゴミを除去する作業が容易になる等、メンテナンス性の向上を図ることができる。特に、障子20A,20Bを閉じた場合には、室内側から見て右側に配設したレール間アタッチメント70のキャップ部材71が内障子20Aによって覆われ、かつ室内側から見て左側に配設したレール間アタッチメント70のキャップ部材71が外障子20Bの召し合わせ框23によってほぼ覆われた状態となる。これにより、通常の使用時においては、キャップ部材71がほとんど外部に露出することがなく、建具の外観品質が損なわれる事態を防止することができる。
【0031】
またさらに、上述の建具では、防火性の点でも有利となる。すなわち、室内アタッチメント30及び室外アタッチメント40には、それぞれ全長にわたってアタッチメント用熱膨張性部材50が設けてある。従って、内方レール14cよりも室内側及び外方レール14dよりも室外側においては、アタッチメント用熱膨張性部材50が熱膨張することで下枠14と内障子20Aの下框25との間及び下枠14と外障子20Bの下框25との間に火炎の貫通口が生じる事態を防止することができる。
【0032】
一方、内方レール14cと外方レール14dとの間においては、2つのレール間アタッチメント70の全長にわたってアタッチメント用熱膨張性部材50が設けてあるとともに、下がり防止金具61に金具用熱膨張性部材50′が設けてある。加えて、下枠基部14aの上面においてキャップ部材71の下方となる部分には、下枠用熱膨張性部材51が設けてある。従って、火災等によって建具が高温に晒されることでキャップ部材71が溶融もしくは焼失したとしても、アタッチメント用熱膨張性部材50、金具用熱膨張性部材50′及び下枠用熱膨張性部材51が一連となって熱膨張するため、下枠14と内障子20Aの下框25との間及び下枠14と外障子20Bの下框25との間に隙間が生じる事態を確実に防止することができるようになり、防火性の点で有利となる。
【0033】
なお、上述した実施の形態では、内障子20A及び外障子20Bが移動可能となるように設けた引き違い窓を例示しているが、一方の障子が固定された片引き窓であっても同様に適用することが可能である。
【0034】
また、上述した実施の形態では、レール間アタッチメント70として、中央本体部70a、中押圧脚部70b、中係合脚部70c及び中傾斜突出片70dを一体に成形したものを例示しているが、レール間アタッチメントの形状はこれに限定されない。またレール間アタッチメント70は必ずしも長手に沿って2つである必要はなく、1つであっても3以上であっても構わない。同様に下枠14の断面形状としても実施の形態のものである必要はなく、内方レール14c及び外方レール14dを有したものであれば良い。
【0035】
さらに、下枠基部14aの上面に下枠用熱膨張性部材51を設けるようにしているため、レール間アタッチメント70を着脱した場合にも、レール間アタッチメント70が下枠用熱膨張性部材51に接触するおそれがなく、下枠用熱膨張性部材51に剥がれ等の問題が生じる事態を防止することができる。しかしながら、下枠用熱膨張性部材51としては、必ずしも下枠14の上面に配設する必要はなく、例えば内方レール14cや外方レール14dの表面に設けることも可能である。
【0036】
以上のように、本発明に係る建具は、枠体及び障子を備え、前記枠体を構成する下枠にはレールが見込み方向に並設され、前記レールの相互間にはレール間アタッチメントが配設された建具であって、前記レール間アタッチメントには、小口端部に樹脂製のキャップ部材が装着され、前記下枠において前記レールの相互間となる部分には、前記下枠の長手方向において前記キャップ部材に重複する位置に下枠用熱膨張性部材が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、下枠の長手方向においてキャップ部材に重複する位置に下枠用熱膨張性部材が設けられているため、溶融、あるいは焼失したキャップ部材の配設位置が下枠用熱膨張性部材によって塞がれることになり、火炎の貫通口が生じる事態を防止することができる。下枠用熱膨張性部材を設ける位置としては、下枠の上面であっても、高温状態においてはキャップ部材が溶融、もしくは焼失しているため、熱膨張が妨げられる懸念がない。従って、小口端部にキャップ部材を設けることでレール間アタッチメントの取り扱い性や外観品質を向上させた場合にも、防火性が損なわれる事態を防止することが可能となる。
【0037】
また本発明は、上述した建具において、前記下枠用熱膨張性部材は、前記下枠の上面に設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、下枠に対してレール間アタッチメントを着脱した場合にも、レール間アタッチメントが下枠用熱膨張性部材と接触するおそれがなく、下枠から下枠用熱膨張性部材が剥がれる事態を防止することができる。
【0038】
また本発明は、上述した建具において、前記下枠用熱膨張性部材は、前記キャップ部材によって覆われる位置に設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、通常の使用時においては下枠用熱膨張性部材を視認することが困難となり、建具の外観品質の点で有利となる。
【0039】
また本発明は、上述した建具において、前記レールの相互間には、前記下枠の長手方向に前記レール間アタッチメントが複数並設されていることを特徴としている。
この発明によれば、障子を取り外すことなくレール間アタッチメントを着脱することが可能となり、レールの相互間に堆積したゴミを容易に除去することができる等の利点がある。
【0040】
また本発明は、上述した建具において、前記レール間アタッチメントは、前記下枠の長手方向に沿って複数配設されており、前記キャップ部材の一方は、前記障子が閉じた場合に少なくとも一部が召し合わせに配置される縦框の下方に設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、キャップ部材が視認される事態を防止することができ、外観品質の点で有利となる。
【0041】
また本発明は、上述した建具において、前記レール間アタッチメントには、前記障子の下框に対向する位置に長手に沿ってアタッチメント用熱膨張性部材が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、下枠に設けた下枠用熱膨張性部材とレール間アタッチメントに設けたアタッチメント用熱膨張性部材とによって下枠と障子との間の全長にわたって貫通口が生じる事態をより確実に防止することができる。
【符号の説明】
【0042】
10 枠体、14 下枠、14a 下枠基部、14c 内方レール、14d 外方レール、20A 内障子、20B 外障子、23 召し合わせ框、50 アタッチメント用熱膨張性部材、51 下枠用熱膨張性部材、70 レール間アタッチメント、71 キャップ部材