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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185924
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 15/06 20060101AFI20221208BHJP
   B60C 15/04 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
B60C15/06 B
B60C15/04 C
B60C15/04 G
B60C15/06 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093860
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】吉野 将行
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131AA32
3D131BA01
3D131BB03
3D131BC31
3D131HA11
3D131HA14
3D131HA15
3D131HA36
3D131HA37
3D131HA42
3D131HA45
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ビード耐久性能をさらに向上させた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】ビードコア5とカーカス6とビードエーペックスゴムとを備えた空気入りタイヤ1である。ビード部4の幅がリム幅に保持されたリム組前の状態において、ビードコア5のコア内側面は、タイヤ軸方向に対して20度±2度で、タイヤ軸方向外側に向かってタイヤ半径方向外側に傾斜している。ビードエーペックスゴムは、ビードコア5の周囲を覆うように配され、かつ、輪郭が円形又は略楕円形をなす第1ゴム部10と、第1ゴム部10からタイヤ半径方向外側にテーパ状に延びる第2ゴム部11とを含んでいる。第1ゴム部10は、第2ゴム部11よりもゴム硬度が大きい。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気入りタイヤであって、
ビードコアがそれぞれ埋設された一対のビード部と、前記ビードコア間を延びるカーカスとを備え、
前記ビードコアは、タイヤ半径方向の内側で略直線状にのびるコア内側面を備え、
前記ビード部の幅がリム幅に保持されたリム組前の状態において、前記コア内側面は、タイヤ軸方向に対して20度±2度で、タイヤ軸方向外側に向かってタイヤ半径方向外側に傾斜しており、
前記一対のビード部のそれぞれには、前記ビードコアからタイヤ半径方向外側に延びるビードエーペックスゴムが設けられており、
前記ビードエーペックスゴムは、タイヤ子午線断面において、前記ビードコアの周囲を覆うように配され、かつ、輪郭が円形又は略楕円形をなす第1ゴム部と、
前記第1ゴム部からタイヤ半径方向外側にテーパ状に延びる第2ゴム部とを含み、
前記第1ゴム部は、前記第2ゴム部よりもゴム硬度が大きい、
空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1ゴム部のタイヤ半径方向の外端とビードベースラインとの間のタイヤ半径方向の距離は、タイヤ最大幅位置と前記ビードベースラインとの間のタイヤ半径方向の距離の10%~65%である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ビードコアのタイヤ軸方向の内端位置において、前記第1ゴム部のタイヤ軸方向の厚さは、1.0~2.0mmである、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記ビードコアのタイヤ半径方向の内端位置において、前記第1ゴム部のタイヤ半径方向の厚さは、1.0~2.0mmである、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記第1ゴム部のゴム硬度は、前記第2ゴム部のゴム硬度の1.6~2.0倍である、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記ビード部において、前記カーカスを覆う補強層が設けられ、
タイヤ子午線断面において、前記補強層は、U字状をなし、かつ、その両端は、前記第1ゴム部のタイヤ半径方向の外端よりもタイヤ半径方向の外側に20mm以上離隔している、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記ビードコアは、その周囲が有機繊維コードを含むキャンバス布で覆われている、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
重荷重用である、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ビードコアと、前記ビードコア廻りを折り返されたカーカスとを含む重荷重用タイヤが記載されている。前記ビードコアは、前記ビードコアを成形する際、その内側面をタイヤ軸方向の外側に向かって内径が大となる向きの傾斜で、かつタイヤ軸方向線に対して20度となるように形成されている。このようなタイヤは、規格荷重負荷状態において、前記ビードコアが回転して、前記内側面と、リムシートの外面であるリムシート面とのなす角度が実質的に平行となるので、優れたビード耐久性能を有するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-254736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の発明は、前記規格荷重負荷状態になる際の前記ビードコアの回転によって、前記カーカスのカーカスコードが、前記ビードコアと擦れることで損傷や破断(以下、CBUという。)が生じるおそれがあった。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、CBUといった損傷を抑制して、ビード耐久性能をさらに向上させた空気入りタイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、空気入りタイヤであって、 ビードコアがそれぞれ埋設された一対のビード部と、前記ビードコア間を延びるカーカスとを備え、前記ビードコアは、タイヤ半径方向の内側で略直線状にのびるコア内側面を備え、前記ビード部の幅がリム幅に保持されたリム組前の状態において、前記コア内側面は、タイヤ軸方向に対して20度±2度で、タイヤ軸方向外側に向かってタイヤ半径方向外側に傾斜しており、前記一対のビード部のそれぞれには、前記ビードコアからタイヤ半径方向外側に延びるビードエーペックスゴムが設けられており、前記ビードエーペックスゴムは、タイヤ子午線断面において、前記ビードコアの周囲を覆うように配され、かつ、輪郭が円形又は略楕円形をなす第1ゴム部と、前記第1ゴム部からタイヤ半径方向外側にテーパ状に延びる第2ゴム部とを含み、前記第1ゴム部は、前記第2ゴム部よりもゴム硬度が大きい。
【0007】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記第1ゴム部のタイヤ半径方向の外端とビードベースラインとの間のタイヤ半径方向の距離が、タイヤ最大幅位置とビードベースラインとの間のタイヤ半径方向の距離の10%~65%である、のが望ましい。
【0008】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記ビードコアのタイヤ軸方向の内端位置において、前記第1ゴム部のタイヤ軸方向の厚さが、1.0~2.0mmである、のが望ましい。
【0009】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記ビードコアのタイヤ半径方向の内端位置において、前記第1ゴム部のタイヤ半径方向の厚さが、1.0~2.0mmである、のが望ましい。
【0010】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記第1ゴム部のゴム硬度が、前記第2ゴム部のゴム硬度の1.6~2.0倍である、のが望ましい。
【0011】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記ビード部において、前記カーカスを覆う補強層が設けられ、タイヤ子午線断面において、前記補強層は、U字状をなし、かつ、その両端は、前記第1ゴム部のタイヤ半径方向の外端よりもタイヤ半径方向の外側に20mm以上離隔している、のが望ましい。
【0012】
本発明に係る空気入りタイヤは、前記ビードコアが、その周囲が有機繊維コードを含むキャンバス布で覆われている、のが望ましい。
【0013】
本発明に係る空気入りタイヤは、重荷重用である、のが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の空気入りタイヤは、上記の構成を採用することで、ビード耐久性能をさらに高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の空気入りタイヤの一実施形態の断面図である。
図2図1の空気入りタイヤのリム組前の状態のビードコアの拡大図である。
図3図1のビード部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」という場合がある。)1の正規状態におけるタイヤ回転軸(図示省略)を含むタイヤ子午線断面図である。図1のタイヤ1には、正規リム(以下、単に「リム」という場合がある。)Rが組み込まれている。本発明は、例えば、重荷重用のタイヤ1に適用される。但し、本発明は、乗用車用やライトトラック用等のタイヤ1に適用されても良い。
【0017】
前記「正規状態」は、タイヤ1が正規リムRにリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷の状態である。本明細書では、特に言及されない場合、タイヤ1の各部の寸法等はこの正規状態で測定された値である。
【0018】
前記「正規リムR」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMA であれば "標準リム" 、TRA であれば"Design Rim" 、ETRTO であれば"Measuring Rim" である。「正規内圧」は、タイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMA であれば "最高空気圧" 、TRA であれば表"TIRELOAD LIMITSAT VARIOUSCOLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTO であれば"INFLATION PRESSURE" である。
【0019】
本実施形態のタイヤ1は、ビードコア5がそれぞれ埋設された一対のビード部4と、ビードコア5間を延びるカーカス6とを備えている。また、タイヤ1は、ビード部4のタイヤ半径方向の外側に配される一対のサイドウォール部3と、両側のサイドウォール部3を継ぐトレッド部2とを備えている。
【0020】
図2は、図1のタイヤ1のビード部4の幅がリム幅(図示省略)に保持されたリム組前の状態におけるビードコア5の拡大図である。図2に示されるように、ビードコア5は、タイヤ半径方向の内側で略直線状に延びるコア内側面5aを備えている。コア内側面5aは、リム組み時に、リムシート面Ra(図1に示す)に沿って延びる面である。
【0021】
ビード部4の幅がリム幅に保持されたリム組前の状態において、コア内側面5aは、タイヤ軸方向に対して20度±2度の角度θ1で、タイヤ軸方向外側に向かってタイヤ半径方向外側に傾斜している。これにより、タイヤ1が正規状態又は正規荷重負荷状態になると、ビードコア5が回転して、コア内側面5aとリムシート面Raとが実質的に平行になるので、ビード耐久性が向上する。なお、リムシート面Raのタイヤ軸方向に対する角度θ2(図1に示す)は、15度である。
【0022】
前記「正規荷重負荷状態」とは、正規状態のタイヤ1に、正規荷重を負荷して、キャンバー角0度で平面に接地させた状態をいう。「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば "最大負荷能力" 、TRAであれば表"TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "LOAD CAPACITY" である。
【0023】
図1に示されるように、一対のビード部4のそれぞれには、ビードコア5からタイヤ半径方向外側に延びるビードエーペックスゴム9が設けられている。
【0024】
ビードエーペックスゴム9は、タイヤ子午線断面において、ビードコア5の周囲を覆うように配され、かつ、輪郭が円形又は略楕円形をなす第1ゴム部10と、第1ゴム部10からタイヤ半径方向外側にテーパ状に延びる第2ゴム部11とを含んでいる。このような第1ゴム部10は、ビードコア5が回転した場合でも、ビードコア5廻りに配されたカーカス6とビードコア5との接触を抑制して、カーカス6の損傷を抑制し、CBUの発生を抑える(耐CBU性能を高める)。また、このような第1ゴム部10は、ビードコア5によって生じるカーカス6のせん断歪を均一化するので、カーカス6の損傷を抑制する。本実施形態の第1ゴム部10は、ビードコア5の全周囲を覆うように形成されている。
【0025】
第1ゴム部10は、第2ゴム部11よりもゴム硬度が大きく形成されている。このような第1ゴム部10は、より一層、カーカス6とビードコア5との接触を抑制する。したがって、本実施形態のタイヤ1は、優れたビード耐久性能を有する。
【0026】
本実施形態のカーカス6は、1枚のカーカスプライ6Aにより構成されている。カーカスプライ6Aは、例えば、両ビードコア5に至る本体部6aと、本体部6aに連なりかつビードコア5で折り返される折返し部6bとを含んでいる。カーカスプライ6Aは、周知のコードとトッピングゴム(図示省略)とで構成されている。
【0027】
図2に示されるように、ビードコア5は、本実施形態では、コア内側面5aを含む略6角形状で形成されている。ビードコア5は、例えば、コア内側面5aと向き合うコア外側面5bと、コア内側面5aとコア外側面5bとをタイヤ軸方向の外側で継ぐコア外向面5cと、コア内側面5aとコア外側面5bとをタイヤ軸方向の内側で継ぐコア内向面5dとをさらに含んでいる。コア外向面5cは、例えば、タイヤ軸方向の外側に屈曲する第1屈曲部13aを有している。コア内向面5dは、例えば、タイヤ軸方向の内側に屈曲する第2屈曲部13bを有している。コア外側面5bは、例えば、略直線状に延びている。
【0028】
ビードコア5のタイヤ軸方向の内端位置5iは、本実施形態では、コア内向面5dの第2屈曲部13bに形成されている。ビードコア5のタイヤ半径方向の内端位置5kは、本実施形態では、コア内側面5aとコア内向面5dとが交差する位置に形成されている。
【0029】
本実施形態のビードコア5は、ビードワイヤ14をタイヤ周方向に渦巻状に巻き重ねて形成されている。ビードコア5は、例えば、ビードワイヤ14がタイヤ軸方向に並ぶワイヤ層15をタイヤ半径方向に複数段配して形成されている。コア内側面5aは、タイヤ半径方向に最も内側に配された最内ワイヤ層15Aで形成されている。なお、ビードコア5は、このような態様に限定されるものではなく、例えば、一体成形品として形成されても良い。
【0030】
ビードワイヤ14は、例えば、断面円形をなしている。このような場合、コア内側面5aの角度θ1は、最内ワイヤ層15Aのタイヤ軸方向の両端のビードワイヤ14a、14bの最もリムシート面Ra側の各点c1、c2を結ぶ直線の傾斜角度である。ビードワイヤ14は、本実施形態では、スチールコードが用いられる。
【0031】
図3は、図1のタイヤ1のビード部4の拡大図である。図3に示されるように、ビードコア5は、本実施形態では、その周囲が有機繊維コードを含むキャンバス布16で覆われている。これにより、ビードコア5とカーカス6との接触が一層抑制される。前記有機繊維コードとしては、例えば、ナイロン繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維及びアラミド繊維が望ましい。
【0032】
第1ゴム部10は、本実施形態では、タイヤ子午線断面において、略楕円形で形成されている。本明細書において、「略楕円形」とは、辞書的な意味の楕円は勿論、第1ゴム部10(ビードコア5を含む)の図心(図示省略)を中心としてその外側に向かって凸の円弧で形成されるものを含む。前記円弧には、曲率半径rが連続して変化する態様を含む。
【0033】
第1ゴム部10のゴム硬度haは、第2ゴム部11のゴム硬度hbの1.6~2.0倍が望ましい。第1ゴム部10のゴム硬度haが第2ゴム部11のゴム硬度hbの1.6倍以上であるので、第1ゴム部10の剛性が高く維持されて、ビードコア5とカーカス6との接触が抑えられる。第1ゴム部10のゴム硬度haが第2ゴム部11のゴム硬度hbの2.0倍以下であるので、第2ゴム部11の剛性が確保されてビード部4の変形が抑制される。また、第1ゴム部10の剛性が過度に大きくなるのが抑制されて第1ゴム部10によるカーカス6の損傷が抑えられる。ゴム硬度は、本明細書では、JIS-K6253に準拠して23℃の環境下でデュロメータータイプAにより測定されたデュロメータA硬さである。
【0034】
特に限定されるものではないが、第1ゴム部10のゴム硬度haは、例えば、75度以上が望ましく、80度以上がさらに望ましく、110度以下が望ましく、105度以下がさらに望ましい。第2ゴム部11のゴム硬度hbは、例えば、50度以上が望ましく、55度以上がさらに望ましく、70度以下が望ましく、65度以下がさらに望ましい。
【0035】
ビードコア5のタイヤ軸方向の内端位置5iにおいて、第1ゴム部10のタイヤ軸方向の厚さt1は、1.0~2.0mmであるのが望ましい。また、ビードコア5のタイヤ半径方向の内端位置5kにおいて、第1ゴム部10のタイヤ半径方向の厚さt2は、1.0~2.0mmであるのが望ましい。タイヤ1に正規内圧を充填すると、ビードコア5の回転により、各内端位置5i、5kにおいて、相対的に大きなせん断歪が作用する。このため、各内端位置5i、5kでの厚さt1、t2を1.0mm以上とすることで、ビードコア5とカーカス6との接触を抑えて、カーカス6の損傷を抑制することができる。厚さt1、t2が過度に大きくなると、リムRとの嵌合圧が小さくなり、ビード耐久性能が小さくなるおそれがある。このため、厚さt1、t2は、2.0mm以下が望ましい。
【0036】
各内端位置5i、5kでの第1ゴム部10の厚さt1、t2を確保するために、ビードコア5のタイヤ軸方向の内端位置5iよりもタイヤ半径方向の内側では、第1ゴム部10を1.0mm厚さのシート状のゴム材料で形成するのが望ましい。本実施形態では、コア内向面5dのタイヤ半径方向の外端5n(図2に示す)からタイヤ半径方向の内側の部分が、シート状のゴム材料で形成されている。
【0037】
図1に示されるように、第1ゴム部10のタイヤ半径方向の外端10eとビードベースラインBLとの間のタイヤ半径方向の距離L2は、タイヤ最大幅位置MとビードベースラインBLとの間のタイヤ半径方向の距離L1の10%~65%であるのが望ましい。ビードベースラインBLは、リムRのリム径(JATMA参照)を規定するタイヤ軸方向線である。タイヤ最大幅位置Mは、本明細書では、サイドウォール部3の外面3aがタイヤ軸方向外側に最も張り出す位置である。外面3aは、本明細書では、部分的に形成される凹凸(例えば、装飾用のセレーション、標章表示用のリブ、後述するサイドプロテクトタなど)を排除して特定される滑らかな曲線である。
【0038】
図3に示されるように、本実施形態のビード部4には、カーカス6を覆う補強層20が設けられている。タイヤ子午線断面において、補強層20は、U字状に形成されている。より具体的には、本実施形態の補強層20は、本体部6aに沿って延びる第1部分20Aと、第1部分20Aに連なりかつ折返し部6bに沿って延びる第2部分20Bとを含んでいる。第2部分20Bは、折返し部6bのタイヤ半径方向の外端7bよりもタイヤ半径方向の内側で終端している。
【0039】
補強層20は、本実施形態では、並列された多数のコードとトッピングゴム(図示省略)とからなる。各コードは、タイヤ半径方向に対して傾斜している。コードの材質は、スチールである。トッピングゴムは、周知のゴム材料で成形されている。補強層20は、ビードエーペックスゴム9が大きく倒れることを抑えるので、ビード耐久性能を向上する。
【0040】
第1部分20A及び第2部分20Bのそれぞれは、タイヤ半径方向の外端21a、21bを有している。各外端21a、21bは、第1ゴム部10のタイヤ半径方向の外端10eよりもタイヤ半径方向の外側に2mm以上離隔しているのが望ましい。これにより、走行中のビードコア5の回転が抑制される。このような観点より、第1部分20A及び第2部分20Bの各外端21a、21bと、第1ゴム部10の外端10eとの間のタイヤ半径方向の距離LTは、4mm以上がより望ましい。距離LTが過度に大きくなると、ビード部4に剛性段差が生じ、ビード耐久性能が低下するおそれがある。このため、距離LTは、8mm以下が望ましく、6mm以下がより望ましい。
【0041】
本実施形態では、第2部分20Bの外端21bは、第1部分20Aの外端21aよりもタイヤ半径方向の外側に位置している。これにより、走行中のビードコア5の回転をより効果的に抑えることができる。ビード部4の剛性バランスを保ちつつ、ビードコア5の回転を効果的に抑える観点より、距離Laは、第1ゴム部10のタイヤ半径方向の長さLAの5.0%以上が望ましく、6.5%以上がさらに望ましく、12%以下が望ましく、10%以下がさらに望ましい。距離Laは、第2部分20Bの外端21bと第1部分20Aの外端21aとの間のタイヤ半径方向の距離である。
【0042】
本実施形態のビード部4は、さらに、リムR(図1に示す)と接触するチェーファ22を含んでいる。チェーファ22は、補強層20よりもタイヤ軸方向の外側に配されている。チェーファ22は、例えば、補強層20のタイヤ半径方向の内側に延びている。チェーファ22は、本実施形態では、折返し部6bのタイヤ半径方向の外端7bよりもタイヤ半径方向の外側に延びている。チェーファ22は、例えば、架橋ゴムから形成される。
【0043】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例0044】
図1の基本構造を有するサイズ275/80R22.5の重荷重用の空気入りタイヤが、表1の仕様に基づいて試作された。そして各試供タイヤのビード耐久性能についてテストが行われた。なお各試供タイヤの共通仕様やテスト方法は、以下のとおりである。
リム:22.5×7.50
内圧:900kPa
【0045】
<ビード耐久性能>
正規リムに組み込まれた各試供タイヤが、周知構造のドラム試験機上で走行された。各試供タイヤの内部には、水が充填されている。そして、ビード部の損傷が発生するまでの時間が測定された。結果は、実施例1を100とする指数で表示されている。数値が大きいほどビード耐久性能が良好である。
速度:20km/h
荷重:79.50kN
【0046】
【表1】
【0047】
表に示すように、実施例のタイヤは、ビード耐久性能に優れている。
【符号の説明】
【0048】
1 空気入りタイヤ
4 ビード部
5 ビードコア
6 カーカス
9 ビードエーペックスゴム
10 第1ゴム部
11 第2ゴム部
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2022-04-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項6
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項6】
前記ビード部において、前記カーカスを覆う補強層が設けられ、
タイヤ子午線断面において、前記補強層は、U字状をなし、かつ、その両端は、前記第1ゴム部のタイヤ半径方向の外端よりもタイヤ半径方向の外側に2mm以上離隔している、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0034
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0034】
特に限定されるものではないが、第1ゴム部10のゴム硬度haは、例えば、75度以上が望ましく、80度以上がさらに望ましい。第2ゴム部11のゴム硬度hbは、例えば、50度以上が望ましく、55度以上がさらに望ましく、70度以下が望ましく、65度以下がさらに望ましい。