(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185932
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】貯槽内残存物の除去方法
(51)【国際特許分類】
E04G 23/08 20060101AFI20221208BHJP
B65D 90/00 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
E04G23/08 J
E04G23/08 D
B65D90/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093870
(22)【出願日】2021-06-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)令和2年8月1日に「令和2年度 土木学会全国大会 第75回 年次学術講演会講演概要集,第VI-1016頁,公益社団法人土木学会」において公開 (2)令和2年9月9日に「令和2年度 土木学会全国大会 第75回 年次学術講演会https://confit.atlas.jp/jsce2020」において公開
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 淳
(72)【発明者】
【氏名】丸山 高志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英文
(72)【発明者】
【氏名】古川 耕平
【テーマコード(参考)】
2E176
3E170
【Fターム(参考)】
2E176AA15
2E176DD21
2E176DD61
3E170AA03
3E170AB01
3E170AB11
3E170BA10
3E170CA10
3E170VA20
(57)【要約】
【課題】貯槽内の下部に存在する残存物を、人力によらず且つ貯槽の倒壊を抑えつつ除去する。
【解決手段】貯槽内残存物の除去方法は、貯槽内の下部に存在する残存物を除去する方法である。この貯槽内残存物の除去方法では、まず、土質試験によって残存物の深度方向の強度特性を把握する(ステップS4)。続いて、把握された強度特性に適した掘削手段を選定する(ステップS5)。そして、選定された掘削手段によって残存物を掘削して除去する(ステップS6)。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯槽内の下部に存在する残存物を除去する方法であって、
土質試験によって前記残存物の深度方向の強度特性を把握し、
把握された前記強度特性に適した掘削手段を選定し、
選定された前記掘削手段によって前記残存物を掘削して除去すること、を特徴とする貯槽内残存物の除去方法。
【請求項2】
前記残存物を除去する前に、前記残存物よりも上方に存在する液体の液面に浮体足場を浮設し、前記浮体足場上で前記貯槽の一部の解体作業を行うこと、を特徴とする請求項1に記載の貯槽内残存物の除去方法。
【請求項3】
前記浮体足場は、前記貯槽の内部形状に合わせて前記液面上で拡大縮小させるように変形可能であること、を特徴とする請求項2に記載の貯槽内残存物の除去方法。
【請求項4】
前記残存物が除去された後に、前記貯槽内に液体を注入して、前記浮体足場上でさらに前記解体作業を行うこと、を特徴とする請求項2または請求項3に記載の貯槽内残存物の除去方法。
【請求項5】
前記残存物を除去する前に、前記貯槽の上部から前記残存物よりも上方の所定高さ位置までの解体作業を行うこと、を特徴とする請求項1に記載の貯槽内残存物の除去方法。
【請求項6】
前記掘削手段は、クラムシェルおよびハンマーグラブを含み、前記クラムシェルが選定される場合の前記強度特性は、前記ハンマーグラブが選定される場合の前記強度特性よりも低いこと、を特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の貯槽内残存物の除去方法。
【請求項7】
前記土質試験は、スウェーデン式サウンディング試験、オートマチックラムサウンディング試験、ポータブルコーン貫入試験、および簡易動的コーン貫入試験から選択された少なくとも一つを含むこと、を特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の貯槽内残存物の除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯槽内残存物の除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、浮き屋根式貯槽の側板の解体工事において、貯槽に注水し、水面上に浮遊する浮き屋根を、解体作業のための足場に利用することを特徴とする浮き屋根式貯槽の側板解体工法が開示されている。
下記特許文献2には、タンク本体に水張りして残留ガスパージを行った内部に、浮体足場を水面上にて拡大縮小させて設置して、タンク本体に対する検査作業を行うようにした球形タンク検査方法が開示されている。
下記特許文献3には、柱状塔容器内へ流体を注入し、柱状塔容器の横断面に対応した形状を有して流体に浮かぶ筏状の作業台を組み立て、この作業台に作業員が乗り柱状塔容器内を点検整備する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62-78363号公報
【特許文献2】特開昭62-283296号公報
【特許文献3】特開平9-217481号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タンク等の貯槽内の下部には、重金属、有機溶剤、農薬、油、有害な化学物質、高アルカリ等の物質が沈殿、固化した残存物が存在する場合がある。この場合、貯槽に対して解体、検査等の作業を行う際には、貯槽内に存在する残存物を除去する必要がある。
しかしながら、このような残存物を人力によって除去することは非効率であり、残存物の種類によっては作業員に残存物が接触しないよう対策を講じる必要がある。また、貯槽が老朽化している場合があるため、貯槽が倒壊して内部の残存物が外部へ流出することがないように、残存物の除去作業を慎重に行う必要がある。
一方、特許文献1~3には、貯槽内の残存物の除去については何ら触れられていない。
本発明は、前記した課題を解決し、貯槽内の下部に存在する残存物を、人力によらず且つ貯槽の倒壊を抑えつつ除去することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための本発明は、貯槽内の下部に存在する残存物を除去する、貯槽内残存物の除去方法である。この貯槽内残存物の除去方法では、まず、土質試験によって前記残存物の深度方向の強度特性を把握する。続いて、把握された前記強度特性に適した掘削手段を選定する。そして、選定された前記掘削手段によって前記残存物を掘削して除去する。
この発明では、残存物の強度特性(硬さ)に適した掘削手段が選定されて使用される。これにより、残存物の強度特性に見合わない程に掘削力の大きい掘削手段を使用して貯槽に過剰な振動等の負荷を与えることを防止できる。したがって、貯槽が倒壊して内部の残存物が外部へ流出することを回避できる。また、貯槽内の下部に例えば高アルカリ等の物質が沈殿、固化した残存物が存在していた場合でも、人が直接触れることなく残存物を除去することができる。
このように、本発明によれば、貯槽内の下部に存在する残存物を、人力によらず且つ貯槽の倒壊を抑えつつ除去することができる。
【0006】
前記貯槽内残存物の除去方法では、前記残存物を除去する前に、前記残存物よりも上方に存在する液体の液面に前記浮体足場を浮設し、前記浮体足場上で前記貯槽の一部の解体作業を行うことが好ましい。
この構成では、浮体足場を利用することで、貯槽の解体作業を貯槽の上部で行うことができる。また、液位を低下させることによって浮体足場を下降させることができるので、貯槽の上から下へ向けて解体作業を順次進めることができる。しかも、残存物を除去する前に貯槽の解体作業を進めることで、残存物の除去作業の開始時には、貯槽は、上部が取り去られて重心が低くなるため、より安定する。このため、貯槽の倒壊をより抑えることができるとともに、貯槽の解体作業を効率良く進めることができる。
【0007】
前記貯槽内残存物の除去方法では、前記浮体足場は、前記貯槽の内部形状に合わせて前記液面上で拡大縮小させるように変形可能であることが好ましい。
この構成では、貯槽の内部形状が高さ方向において変化している場合でも、貯槽内の壁面に可能な限り接近して浮体足場を形成することができる。これにより、貯槽の解体作業をより良好に行うことができる。
前記貯槽内残存物の除去方法では、前記残存物が除去された後に、前記貯槽内に液体を注入して、前記浮体足場上でさらに前記解体作業を行うことが好ましい。
この構成では、浮体足場を利用して可能な限り貯槽の下方まで解体作業を行うことができる。これにより、貯槽の解体作業をより効率良く行うことができる。また、貯槽は、未だ解体されていない残りの部分が少なくなって重心がさらに低くなるため、より安定する。したがって、当該残りの部分は、横荷重等の負荷に対しても転倒することがないため、例えば重機を用いて解体することも可能となる。
前記貯槽内残存物の除去方法では、前記残存物を除去する前に、前記貯槽の上部から前記残存物よりも上方の所定高さ位置までの解体作業を行ってもよい。この場合、重機解体またはクレーンによる揚重解体が行われる。このように、残存物を除去する前に貯槽の解体作業を進めることで、残存物の除去作業の開始時には、貯槽は、上部が取り去られて重心が低くなるため、より安定する。したがって、浮体足場を用いることなく、貯槽の倒壊をより抑えることができるとともに、貯槽の解体作業を効率良く進めることができる。
【0008】
前記掘削手段は、クラムシェルおよびハンマーグラブを含み、前記クラムシェルが選定される場合の前記強度特性は、前記ハンマーグラブが選定される場合の前記強度特性よりも低いことが好ましい。
この構成では、残存物の強度特性がそれ程高くない場合には、浚渫等に適用されるものであって残存物にかかる垂直荷重が比較的小さくて済むクラムシェルが使用される。したがって、貯槽に過剰な負荷を与えることを確実に防止できる。
前記土質試験は、スウェーデン式サウンディング試験、オートマチックラムサウンディング試験、ポータブルコーン貫入試験、および簡易動的コーン貫入試験から選択された少なくとも一つを含むことが好ましい。
この構成では、このような地盤の性状を探査するための土質試験を利用することで、残存物の深度方向の強度特性を容易かつ確実に把握できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、貯槽内の下部に存在する残存物を、人力によらず且つ貯槽の倒壊を抑えつつ除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る貯槽内残存物の除去方法が適用される貯槽の一例を示す概略側面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る貯槽内残存物の除去方法の内容を示すフローチャートである。
【
図3】液面に浮体足場を浮設する様子を説明するための概略拡大断面図である。
【
図5】掘削手段の一例としてのクラムシェルを示す概略拡大側面図である。
【
図6】掘削手段の一例としてのハンマーグラブを示す概略拡大側面図である。
【
図7】残存物を掘削して除去する様子を説明するための概略側面図である。
【
図8】本発明の別の実施形態に係る貯槽内残存物の除去方法の内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について適宜図面を参照して説明する。なお、以下に示す図面において、同一または同種の部材については、同一の参照符号を付し、重複した説明を適宜省略する。また、部材の形状およびサイズは、説明の便宜のため、変形、誇張または省略して模式的に表す場合がある。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る貯槽内残存物の除去方法が適用される貯槽100の一例を示す概略側面図である。
図1に示すように、貯槽100は、例えば大型の円筒形タンクである。貯槽100は、液体、粉体、気体等の貯留物を収容するケーシング10を備えている。ケーシング10は、ここでは、円筒形状を呈する円筒部11と、円筒部11の下側に設けられた逆円錐形状の外形を呈するコーン部12と、円筒部11の上部の内側に配置された内部ケーシング13とを有している。内部ケーシング13は、上端が開口した有底円筒形状を呈しており、吊材14を介して円筒部11に支持されている。ケーシング10は、その中心軸が鉛直方向に沿うように、支持構造体15を介して地盤16上に設置されている。また、ケーシング10の上部には、各種作業の足場や支持部等を提供する上部構造体20が設置されている。
【0013】
貯槽100のケーシング10内の下部には、ここでは、重金属、有機溶剤、農薬、油、有害な化学物質、高アルカリ等の物質が沈殿、固化した残存物30が存在している。したがって、貯槽100に対して解体、検査等の作業を行う際には、貯槽100内に存在する残存物30を除去する必要がある。
本実施形態は、貯槽100に対して例えば解体作業を行うに際して貯槽100内の下部に存在する残存物30を除去する方法を提供するものである。
【0014】
次に、
図2~
図7を参照して、本発明の実施形態に係る貯槽内残存物の除去方法について説明する。
図2は、本発明の実施形態に係る貯槽内残存物の除去方法の内容を示すフローチャートである。
図3は、液面に浮体足場40を浮設する様子を説明するための概略拡大断面図である。
図4は、
図3のIV-IV線断面図である。
図3、
図4に示すように、まず、浮体足場40が浮設される(
図2のステップS1)。
すなわち、残存物30(
図1参照)よりも上方に存在する水の水面(液体の液面)50に浮体足場40を浮かべる。具体的には、浮体足場40の構成部材41を水面50に複数搬入して組み合わせることで、水面50に浮体足場40が浮設される。ここで、貯槽100のケーシング10内に必要に応じて注水が行われる。構成部材41は、例えば、平面視で四角形状を呈しており、4つの構成部材41ごとに、それらの共通接触点である中心位置でピン(図示省略)によって連結される。浮体足場40の上下方向の位置は、貯槽100のケーシング10内に対して注水または排水することによって水位を変化させることで調整される。
なお、浮体足場40の上面の外側および内側の端部全周には、手摺42がそれぞれ設置されている。ケーシング10の上部の径方向外側には、作業員、資材、道具等が通る通路を提供する歩廊21が設置されている。作業者は、梯子22を介して歩廊21と浮体足場40との間を行き来可能となっている。
【0015】
続いて、浮体足場40上で貯槽100の一部の解体作業が行われる(
図2のステップS2)。具体的には、上部構造体20の大部分が、例えばガス溶断により切断され、クレーン等の揚重装置(図示省略)によって移動させられて地盤16上におろされる。また、内部ケーシング13が、例えばガス溶断により切断され、揚重装置によって移動させられて地盤16上におろされる。さらに、必要に応じて、ケーシング10の上部が、例えばガス溶断により切断され、揚重装置によって移動させられて地盤16上におろされる。
続いて、浮体足場40が撤去される(
図2のステップS3)。具体的には、浮体足場40が複数の構成部材41に解体されて、水面50から搬出される。
【0016】
次に、残存物30の深度方向の強度特性が把握される(
図2のステップS4)。具体的には、まず、貯槽100内の水が排出された後に、例えば吊りワイヤによって吊り下げられた足場板(図示省略)が設置される。続いて、この足場板を利用して、残存物30に対して、本実施形態では、土質試験の一つである例えばスウェーデン式サウンディング試験が行われる。この試験では、先端にドリル状の部品を取り付けた鉄の棒を地面に垂直に立て、垂直に立てた鉄の棒におもりを載せて、荷重に対する貫入量を測ることで、地盤の強度(硬さ;換算N値)が算出される。スウェーデン式サウンディング試験は、試験装置・試験方法が簡単で容易に実施できる利点がある。ただし、スウェーデン式サウンディング試験に限られず、例えばオートマチックラムサウンディング試験、ポータブルコーン貫入試験、簡易動的コーン貫入試験等、またはこれらの二つ以上が実施されてもよい。
【0017】
続いて、掘削手段60が選定される(
図2のステップS5)。
図5は、掘削手段60の一例としてのクラムシェル61を示す概略拡大側面図である。
図6は、掘削手段60の一例としてのハンマーグラブ62を示す概略拡大側面図である。すなわち、ステップS4における土質試験によって把握された残存物30の深度方向の強度特性に適した掘削手段60が選定される。
掘削手段60は、例えば、クラムシェル61(
図5参照)、またはハンマーグラブ62(
図6参照)である。クラムシェル61は、吊ったバケットを口の開いた状態から閉じることで土砂等をつかみ取る方式のバケットである。ハンマーグラブ62は、落下力によって地盤に打ち込んで土砂等をつかみ取る方式のグラブである。掘削力は、ハンマーグラブ62の方がクラムシェル61よりも大きい。一方、1回当たりの掘削ボリュームは、クラムシェル61の方がハンマーグラブ62よりも大きい。本実施形態では、クラムシェル61が選定される場合の残存物30の深度方向の強度特性は、ハンマーグラブ62が選定される場合の残存物30の深度方向の強度特性よりも低く設定されている。
【0018】
続いて、選定された掘削手段60によって残存物30が掘削されて除去される(
図2のステップS6)。
図7は、残存物30を掘削して除去する様子を説明するための概略側面図である。
図7に示すように、具体的には、クレーン等の揚重装置70のワイヤ71に支持された掘削手段60によって貯槽100のケーシング10内の下部に存在する残存物30が掘削されて除去される。なお、コーン部12に存在する残存物30は、作業性の観点から、例えばロングバックホウ等の重機によって除去されてもよい。
【0019】
残存物30が除去された後、再び浮体足場40が浮設される(
図2のステップS7)。具体的には、貯槽100のケーシング10内に水が注入されて、ステップS1と同様にして、注入された水の水面50に浮体足場40が浮かぶように設置される。
続いて、浮体足場40上でさらに貯槽100の解体作業が行われる(
図2のステップS8)。具体的には、貯槽100の残りの部分が、例えばガス溶断により切断され、クレーン等の揚重装置(図示省略)によって移動させられて地盤16上におろされる。
【0020】
前記したように、本実施形態に係る貯槽内残存物の除去方法は、貯槽100内の下部に存在する残存物30を除去する方法である。この貯槽内残存物の除去方法では、まず、土質試験によって残存物30の深度方向の強度特性を把握する。続いて、把握された強度特性に適した掘削手段60を選定する。そして、選定された掘削手段60によって残存物30を掘削して除去する。
本実施形態では、残存物30の強度特性(硬さ)に適した掘削手段60が選定されて使用される。これにより、残存物30の強度特性に見合わない程に掘削力の大きい掘削手段60を使用して貯槽100に過剰な振動等の負荷を与えることを防止できる。したがって、貯槽100が倒壊して内部の残存物30が外部へ流出することを回避できる。また、貯槽100内の下部に例えば高アルカリ等の物質が沈殿、固化した残存物30が存在していた場合でも、人が直接触れることなく残存物30を除去することができる。
このように、本実施形態によれば、貯槽100内の下部に存在する残存物30を、人力によらず且つ貯槽100の倒壊を抑えつつ除去することができる。
【0021】
また、本実施形態では、残存物30を除去する前に、残存物30よりも上方に存在する水の水面50に浮体足場40を浮設し、浮体足場40上で貯槽100の一部の解体作業を行う。この構成では、浮体足場40を利用することで、貯槽100の解体作業を貯槽100の上部で行うことができる。また、水位を低下させることによって浮体足場40を下降させることができるので、貯槽100の上から下へ向けて解体作業を順次進めることができる。しかも、残存物30を除去する前に貯槽100の解体作業を進めることで、残存物30の除去作業の開始時には、貯槽100は、上部が取り去られて重心が低くなるため、より安定する。このため、貯槽100の倒壊をより抑えることができるとともに、貯槽100の解体作業を効率良く進めることができる。
【0022】
また、本実施形態では、浮体足場40は、貯槽100の内部形状に合わせて水面上で拡大縮小させるように変形可能である。この構成では、貯槽100の内部形状が高さ方向において変化している場合でも、貯槽100内の壁面に可能な限り接近して浮体足場40を形成することができる。これにより、貯槽100の解体作業をより良好に行うことができる。
【0023】
また、本実施形態では、残存物30が除去された後に、貯槽100内に水を注入して、浮体足場40上でさらに解体作業を行う。この構成では、浮体足場40を利用して可能な限り貯槽100の下方まで解体作業を行うことができる。これにより、貯槽100の解体作業をより効率良く行うことができる。また、貯槽100は、未だ解体されていない残りの部分が少なくなって重心がさらに低くなるため、より安定する。したがって、当該残りの部分は、横荷重等の負荷に対しても転倒することがないため、例えば重機を用いて解体することも可能となる。
【0024】
また、本実施形態では、掘削手段60は、クラムシェル61およびハンマーグラブ62を含む。そして、クラムシェル61が選定される場合の残存物30の強度特性は、ハンマーグラブ62が選定される場合の残存物30の強度特性よりも低い。この構成では、残存物30の強度特性がそれ程高くない場合には、浚渫等に適用されるものであって残存物30にかかる垂直荷重が比較的小さくて済むクラムシェル61が使用される。したがって、貯槽100に過剰な負荷を与えることを確実に防止できる。
また、本実施形態では、土質試験は、スウェーデン式サウンディング試験、オートマチックラムサウンディング試験、ポータブルコーン貫入試験、および簡易動的コーン貫入試験から選択された少なくとも一つを含む。この構成では、このような地盤の性状を探査するための土質試験を利用することで、残存物30の深度方向の強度特性を容易かつ確実に把握できる。
【0025】
図8は、本発明の別の実施形態に係る貯槽内残存物の除去方法の内容を示すフローチャートである。以下、
図1~
図7に示す実施形態と相違する点について主に説明し、共通する点については説明を省略する。
図8に示すように、本実施形態では、まず、残存物30の深度方向の強度特性が把握される(
図8のステップS11)。具体的には、例えば吊りワイヤによって吊り下げられた足場板(図示省略)を利用して、残存物30に対して、土質試験の一つである例えばスウェーデン式サウンディング試験が行われる。続いて、掘削手段60が選定される(
図8のステップS12)。
図8のステップS11,S12は、
図2のステップS4,S5と同様の内容であるため、詳しい説明を省略する。
続いて、貯槽100の上部から残存物30の手前の高さまでが解体される(
図8のステップS13)。すなわち、貯槽100の上部から残存物30よりも上方の所定高さ位置までの解体作業が行われる。この場合、重機解体またはクレーンによる揚重解体が行われる。このように、残存物30を除去する前に貯槽100の解体作業を進めることで、残存物30の除去作業の開始時には、貯槽100は、上部が取り去られて重心が低くなるため、より安定する。したがって、本実施形態によれば、浮体足場40(
図4参照)を用いることなく、貯槽100の倒壊をより抑えることができるとともに、貯槽100の解体作業を効率良く進めることができる。
続いて、ステップS12において選定された掘削手段60によって残存物30が掘削されて除去される(
図8のステップS14)。
図8のステップS14は、
図2のステップS6と同様の内容であるため、詳しい説明を省略する。続いて、残りの貯槽100の解体作業が行われる(
図8のステップS15)。具体的には、貯槽100の残りの部分に対して、例えば重機解体またはクレーンによる揚重解体が行われる。
【0026】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜に変更が可能である。
例えば、前記実施形態では、ステップS7,S8において、残存物30が除去された後に、貯槽100内に水を注入して、浮体足場40上でさらに解体作業を行うが、これらの作業は省略されてもよい。この場合、ステップS7,S8を行うことなく例えば重機を用いてそのまま解体作業を行うことが可能である。
掘削手段60の例としてクラムシェル61とハンマーグラブ62とを挙げたが、これらに限定されるものではなく、他の掘削手段が使用されてもよい。例えば、掘削ボリュームおよび掘削力の向上を図るために、クラムシェル61に代えてドレッジャーバケットが使用されてもよい。
土質試験は、スウェーデン式サウンディング試験、オートマチックラムサウンディング試験、ポータブルコーン貫入試験、および簡易動的コーン貫入試験に限定されるものではなく、他の土質試験が行われてもよい。
浮体足場40の構成部材41は、平面視で、前記実施形態では四角形状を呈しているが、これに限定されるものではなく、例えば六角形状等の他の形状を呈していてもよい。
本発明は、貯槽100に対して検査等の他の作業を行うに際して貯槽100内の下部に存在する残存物30を除去する方法に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0027】
30 残存物
40 浮体足場
50 水面(液面)
60 掘削手段
61 クラムシェル
62 ハンマーグラブ
100 貯槽