(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185939
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】インパクトビーム
(51)【国際特許分類】
B60J 5/00 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
B60J5/00 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093881
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】591185423
【氏名又は名称】千代田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】滝田 尚紀
(72)【発明者】
【氏名】池田 修
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 弦
(57)【要約】
【課題】乗員保護性能が高く、製造が容易なインパクトビームを提供する。
【解決手段】インパクトビーム4は、アウタ部材10(第1部材)と、インナ部材20(第2部材)とを備える。アウタ部材10は、第1ビーム11と、第2ビーム12と、第1連結部13とを有し、金属板からなる。第1ビーム11は、車両の左右方向に開く第1U字断面部11Aを有する。第2ビーム12は、車両の前後方向に延びる。第2ビーム12は、車両の左右方向に開く第2U字断面部12Aを有する。第1連結部13は、第1ビーム11と第2ビーム12とを連結する。インナ部材20は、第3ビーム21を有し、金属板からなる。第3ビーム21は、第1ビーム11と接合されることで、第1ビーム11と共に閉断面形状を形成する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用のドアに固定されるインパクトビームであって、
車両の前後方向に延びる第1ビームであって、車両の左右方向に開く第1U字断面部を有する第1ビームと、車両の前後方向に延びる第2ビームであって、車両の左右方向に開く第2U字断面部を有する第2ビームと、前記第1ビームと前記第2ビームとを前後方向における一部において連結する第1連結部と、を有する金属板からなる第1部材と、
車両の前後方向に延びる第3ビームであって、前記第1ビームと接合されることで、前記第1ビームと共に閉断面形状を形成する金属板からなる第2部材と、
を備えることを特徴とするインパクトビーム。
【請求項2】
前記第1ビームは、前記第2ビームより下に位置することを特徴とする請求項1に記載にインパクトビーム。
【請求項3】
前記第1ビームは、
前記第1U字断面部の上端から上に延びる第1上フランジと、
前記第1U字断面部の下端から下に延びる第1下フランジと、を有し、
前記第2ビームは、
前記第1U字断面部の上端から上に延びる第2上フランジと、
前記第1U字断面部の下端から下に延びる第2下フランジと、を有することを特徴とする請求項2に記載のインパクトビーム。
【請求項4】
前記第3ビームは、
車両の左右方向に開く第3U字断面部と、
前記第3U字断面部の上端から上に延びる第3上フランジと、
前記第3U字断面部の下端から下に延びる第3下フランジと、を有し、
前記インパクトビームは、
前記第1上フランジが前記第3上フランジと接合され、前記第1下フランジが前記第3下フランジと接合されることで、前記第1ビームと前記第3ビームが閉断面形状を形成することを特徴とする請求項3に記載のインパクトビーム。
【請求項5】
前記第1連結部は、
車両の左右方向に開く第4U字断面部と、
前記第4U字断面部の前端から前方に延びる前フランジと、
前記第4U字断面部の後端から後方に延びる後フランジと、を有し、
前記前フランジは、前記第1上フランジおよび前記第2下フランジと連続して繋がっており、
前記後フランジは、前記第1上フランジおよび前記第2下フランジと連続して繋がっていることを特徴とする請求項4に記載のインパクトビーム。
【請求項6】
前記第1部材は、前記第1連結部から車両の前後方向に離れて位置し、前記第1ビームと前記第2ビームとを連結する第2連結部をさらに有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のインパクトビーム。
【請求項7】
前記第3ビームは、前記第1ビームよりも車両の後方に突出していることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のインパクトビーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のドアに設けられるインパクトビームに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両用のドアには、側方衝突時に乗員を保護するインパクトビームが設けられている(特許文献1,2参照)。特許文献1のインパクトビームは、プレス加工により成形された2つの部材をフランジ部において接合することで構成されている。特許文献2のインパクトビームは、閉断面構造のアルミニウム合金などからなる2つインパクトビームを上下に離れて有し、荷重伝達部材によって2つのインパクトビームが連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-104429号公報
【特許文献2】特開2016-47675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のインパクトビームは、一本のビームであるので、上下方向における広い範囲で乗員を保護することができないという問題がある。一方、特許文献2のインパクトビームは、上下方向において広い範囲で乗員を保護することができるが、3つの部材を組み立てて製造する必要があり、製造が煩雑であるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、乗員保護性能が高く、製造が容易なインパクトビームを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る車両用のドアに固定されるインパクトビームは、第1部材と、第2部材と、を備える。第1部材は、第1ビームと、第2ビームと、第1連結部と、を有し、金属板からなる。第1ビームは、車両の前後方向に延びる。第1ビームは、車両の左右方向に開く第1U字断面部を有する。第2ビームは、車両の前後方向に延びる。第2ビームは、車両の左右方向に開く第2U字断面部を有する。第1連結部は、第1ビームと第2ビームとを前後方向の一部において連結する。第2部材は、車両の前後方向に延びる。第2部材は、第3ビームを有し、金属板からなる。第3ビームは、第1ビームと接合されることで、第1ビームと共に閉断面形状を形成する。
【0007】
この構成によれば、インパクトビームが2つのビームを有する第1部材と第1部材とともに閉断面形状を形成する第2部材とからなるため、製造が容易であるとともに、上下に広い範囲で乗員を保護することができる。また、連結部は、前後方向の一部において第1ビームと第2ビームを連結するので、インパクトビームに、高い乗員保護性能を持たせつつ、軽量化を図ることができる。
【0008】
また、前記したインパクトビームにおいて、第1ビームは、第2ビームより下に位置する構成としてもよい。
【0009】
これによれば、第3ビームとともに閉断面形状を形成する第1ビームが第2ビームより下側に位置することで、車両用ドアの下部の乗員保護性能を高くできる。
【0010】
また、前記したインパクトビームにおいて、第1ビームは、第1U字断面部の上端から上に延びる第1上フランジと、第1U字断面部の下端から下に延びる第1下フランジと、を有し、第2ビームは、第1U字断面部の上端から上に延びる第2上フランジと、第1U字断面部の下端から下に延びる第2下フランジと、を有する構成としてもよい。
【0011】
これによれば、第1ビームおよび第2ビームが上下にフランジを有するので、インパクトビームの乗員保護性能を高くできる。
【0012】
また、前記したインパクトビームにおいて、第3ビームは、車両の左右方向に開く第3U字断面部と、第3U字断面部の上端から上に延びる第3上フランジと、第3U字断面部の下端から下に延びる第3下フランジと、を有し、インパクトビームは、第1上フランジが第3上フランジと接合され、第1下フランジが第3下フランジと接合されることで、第1ビームと第3ビームが閉断面形状を形成する構成としてもよい。
【0013】
これによれば、第1ビームのフランジと第3ビームのフランジが接合されることで、閉断面形状を形成するので、インパクトビームの剛性が高くなり、乗員保護性能を高くできる。
【0014】
また、前記したインパクトビームにおいて、第1連結部は、車両の左右方向に開く第4U字断面部と、第4U字断面部の前端から前方に延びる前フランジと、第4U字断面部の後端から後方に延びる後フランジと、を有し、前フランジは、第1上フランジおよび第2下フランジと連続して繋がっており、後フランジは、第1上フランジおよび第2下フランジと連続して繋がっている構成としてもよい。
【0015】
これによれば、前フランジは、第1上フランジおよび第2下フランジと連続して繋がっており、後フランジは、第1上フランジおよび第2下フランジと連続して繋がっていることで、インパクトビームの乗員保護性能を高くできる。
【0016】
また、前記したインパクトビームにおいて、第1部材は、第1連結部から車両の前後方向に離れて位置し、第1ビームと第2ビームとを連結する第2連結部をさらに有する構成としてもよい。
【0017】
これによれば、第1ビームおよび第2ビームが2つの連結部で連結されているため、インパクトビーム全体の剛性が高くなるとともに、第1部材の成形精度が向上する。
【0018】
また、前記したインパクトビームにおいて、第3ビームは、第1ビームよりも車両の後方に突出している構成としてもよい。
【0019】
これによれば、インパクトビームの乗員保護性能を高くしつつ、ドアパネルとの干渉を抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、乗員保護性能が高く、製造が容易なインパクトビームを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】車両用のドアのインナパネルに固定されたインパクトビームを示す図である。
【
図3】第1実施形態におけるインパクトビームを構成するアウタ部材およびインナ部材の分解斜視図(a)と、インパクトビームを固定するブラケット(b)を示す図である。
【
図4】第1実施形態におけるインパクトビームを示す図である。
【
図7】第2実施形態におけるインパクトビームを示す図である。
【
図8】第3実施形態におけるインパクトビームを示す図である。
【
図9】第4実施形態におけるインパクトビームを示す図である。
【
図10】第5実施形態におけるインパクトビームを示す図である。
【
図11】第5実施形態におけるインパクトビームのD-D断面図である。
【
図12】インナ部材の形が異なる他の形態のインパクトビームを示す断面図(a)~(c)である。
【
図13】インナ部材の突出部が後方に長い形態を示す
図2に対応する図である。
【
図14】参考形態1~3におけるインパクトビームを示す図(a)~(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の第1実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
以下の説明において、前後、左右、上下は、車両を基準とする。
【0023】
図1に示すように、車両用ドア1は、車両に使用されるドアである。本実施形態では、一例として、車両の後列に配置される左側のサイドドアにインパクトビーム4を設ける場合を示す。
【0024】
図2に示すように、車両用ドア1は、外側に位置するアウタパネル2と、内側に位置するインナパネル3と、インパクトビーム4と、ブラケット5と、を備える。
【0025】
アウタパネル2は、車両用ドア1の外側部分を構成するパネルである。アウタパネル2は、例えば、金属板からなる。アウタパネル2は、車両の前後方向に沿って延びている。アウタパネル2の後端部は、左右内側に向けて曲がっている。
【0026】
インナパネル3は、車両用ドア1の内側部分を構成するパネルである。インナパネル3は、例えば、金属板からなる。インナパネル3は、車両の前後方向に沿って延び、第1部分3Aと、第2部分3Bと、第3部分3Cと、第4部分3Dとを有している。第1部分3Aは、インナパネル3の前端部であり、前後方向に延びている。第2部分3Bは、第1部分3Aより車両の内側に位置し、前後方向に延びている。第3部分3Cは、第2部分3Bの後端から車両の外側に向けて延びている。第4部分3Dは、インナパネル3の後端部であり、第3部分3Cの左右外側の端部から後方に延びている。
【0027】
インパクトビーム4は、車両用ドア1の内部に設けられ、側方衝突時に乗員を保護するための部材である。インパクトビーム4は、アウタパネル2とインナパネル3の間に配置される。インパクトビーム4は、車両の前後方向に沿って延びている。
【0028】
図1に示すように、インパクトビーム4は、車両用ドア1に固定されている。具体的に、インパクトビーム4の前端部は、インナパネル3の第1部分3Aにスポット溶接などの溶接によって接合されている。
図1では、溶接部分を*マークで示している。また、インパクトビーム4の後端部は、インナパネル3の第4部分3Dに溶接によって接合されていると共に、ブラケット5によってインナパネル3の第2部分3Bに固定されている。
【0029】
図3(a),
図4に示すように、インパクトビーム4は、第1部材の一例としてのアウタ部材10と、第2部材の一例としてのインナ部材20と、を備える。
【0030】
アウタ部材10は、金属板からなる。本実施形態では、アウタ部材10は、冷間プレスで成形されている。アウタ部材10は、第1ビーム11と、第2ビーム12と、第1連結部13と、第2連結部14と、を有する。
【0031】
第1ビーム11は、車両の前後方向に延びている。
第1ビーム11は、第1U字断面部11Aと、第1上フランジ11Bと、第1下フランジ11Cと、を有する。
【0032】
図5に示すように、第1U字断面部11Aは、断面がU字形状であり、車両の左右方向内側に開いている。本実施形態では、第1U字断面部11Aは、車両外側に向けて凸となるU字断面形状である。第1U字断面部11Aは、第1リブ11Mと、第2リブ11Nを有している。第1リブ11Mおよび第2リブ11Nは、前後方向に連続して延び、車両の内側に凸となるリブであり、第1U字断面部11Aの剛性を向上させている。
【0033】
第1上フランジ11Bは、第1U字断面部11Aの上端から上に延びている。
図3(a)に示すように、第1上フランジ11Bは、前後方向に延びているが、前後方向の中間部で途切れている。ここで、前後方向における第1上フランジ11Bが途切れている部分を第1不連続部11Hと呼ぶ。
図2および
図6に示すように、第1不連続部11Hにおいては、第1部材10の第1ビーム11と第2部材20が接合されておらず、隙間が形成されている。この第1不連続部11Hまたはその近傍の部位は、衝突時において、インパクトビーム4が変形する場合における変形の起点となる部分である。本実施形態では、第1上フランジ11Bは、第1不連続部11Hの前と後の両方において前後方向に延びている。
【0034】
図5に示すように、第1下フランジ11Cは、第1U字断面部11Aの下端から下に延びている。
図3(a)に示すように、第1下フランジ11Cは、前後方向に延びている。
【0035】
第2ビーム12は、車両の前後方向に延びている。第2ビーム12は、第2U字断面部12Aと、第2上フランジ12Bと、第2下フランジ12Cと、延出部12Dと、を有する。
【0036】
第2U字断面部12Aは、断面がU字形状であり、車両の左右方向内側に開いている。本実施形態では、第2U字断面部12Aは、車両外側に向けて凸となるU字断面形状である。
【0037】
第2上フランジ12Bは、第2U字断面部12Aの上端から上に延びている。第2上フランジ12Bは、前後方向に延びている。
【0038】
第2下フランジ12Cは、第2U字断面部12Aの下端から下に延びている。
図3(a)に示すように、第2下フランジ12Cは、前後方向に延びているが、前後方向の中間部で途切れている。ここで、前後方向における第2下フランジ12Cが途切れている部分を第2不連続部12Hと呼ぶ。本実施形態では、第2下フランジ12Cは、第2不連続部12Hの前と後の両方において前後方向に延びている。
【0039】
延出部12Dは、第2ビーム12の後端部から上下方向に延出している。延出部12Dの後端は、インナパネル3の第4部分3Dに溶接されている(
図1参照)。
【0040】
図3(a)に示すように、第1連結部13は、第1ビーム11と第2ビーム12とを連結する部分である。第1連結部13は、第4U字断面部13Aと、前フランジ13Bと、後フランジ13Cと、を有している。
【0041】
第4U字断面部13Aは、断面がU字形状であり、車両の左右方向内側に開いている。本実施形態では、第4U字断面部13Aは、車両外側に向けて凸となるU字断面形状である。
【0042】
前フランジ13Bは、第4U字断面部13Aの前端から前方に延びている。前フランジ13Bは、第1上フランジ11Bおよび第2下フランジ12Cと連続して繋がっている。
【0043】
後フランジ13Cは、第4U字断面部13Aの後端から後方に延びている。後フランジ13Cは、第1上フランジ11Bおよび第2下フランジ12Cと連続して繋がっている。
【0044】
第2連結部14は、第1連結部13から車両の前後方向に離れて位置し、第1ビーム11と第2ビーム12とを連結する。本実施形態では、第2連結部14は、第1ビーム11の前端部と第2ビーム12の前端部とを連結している。そして、第2連結部14の前端がインナパネル3の第1部分3Aに溶接されている(
図1参照)。
【0045】
アウタ部材10は、第1開口K1と、第2開口K2とが形成されている。第1開口K1は、第1ビーム11、第2ビーム12、第1連結部13および第2連結部14の間に形成された開口である。第2開口K2は、第1開口より後ろに位置し、第1ビーム11、第2ビーム12および第1連結部13の間に形成された開口である。
【0046】
インナ部材20は、車両の前後方向に延びる。インナ部材20は、第3ビーム21を有し、金属板からなる。第3ビーム21は、第3U字断面部21Aと、第3上フランジ21Bと、第3下フランジ21Cを有する。インナ部材20は、左右方向においてアウタ部材10と略同じ幅を有する。
【0047】
第3U字断面部21Aは、断面がU字形状であり、車両の左右方向外側に開いている。本実施形態では、
図5に示すように、第3U字断面部21Aは、車両内側に向けて凸となるU字断面形状である。第3U字断面部21Aは、第3リブ21Mと、第4リブ21Nを有している。第3リブ21Mおよび第4リブ21Nは、前後方向に連続して延び、車両の内側に凸となるリブであり、第3U字断面部21Aの剛性を向上させている。
【0048】
第3上フランジ21Bは、第3U字断面部21Aの上端から上に延びている。第3上フランジ21Bは、前後方向に延びている。
図5に示すように、第3上フランジ21Bは、アウタ部材10と接合される場合に、第1ビーム11の第1上フランジ11Bと接合される部分である。本実施形態では、第3上フランジ21Bは、第1上フランジ11Bとレーザ溶接される。
図5では、レーザ光源WPから出射されたレーザによりレーザ溶接された箇所を黒い塗りつぶしで示している。
【0049】
第3下フランジ21Cは、第3U字断面部21Aの下端から下に延びている。第3下フランジ21Cは、前後方向に延びている。第3下フランジ21Cは、アウタ部材10と接合される場合に、第1ビーム11の第1下フランジ11Cと接合される部分である。本実施形態では、第3下フランジ21Cは、第1下フランジ11Cとレーザ溶接される。
【0050】
図4に示すように、インナ部材20は、アウタ部材10と接合されることで、インパクトビーム4を形成する。
図5に示すように、第3ビーム21は、第1ビーム11と接合されることで、第1ビーム11と共に閉断面形状を形成する。詳しくは、インパクトビーム4は、第1上フランジ11Bが第3上フランジ21Bと接合され、第1下フランジ11Cが第3下フランジ21Cと接合されることで、第1ビーム11と第3ビーム21が閉断面形状を形成する。なお、
図4に示すように、第3ビーム21と第1ビーム11による閉断面形状は、前後方向に延びているが、前記した第1不連続部11Hにおいて途切れている。言い換えると、第3ビーム21と第1ビーム11による閉断面形状は、第1不連続部11Hの前と後の両方において前後方向に延びている。
【0051】
第1ビーム11と第3ビーム21が接合された状態において、第3ビーム21は、第1ビーム11よりも車両の後方に突出した突出部PRを有している(
図2も参照)。逆に言えば、第1ビーム11は、後端部が第3ビーム21よりも前に位置している。これにより、第3ビーム21を後方に長く延ばして、車両の側面衝突時に、衝突荷重を車体に伝達しやすくしつつ、アウタパネル2と第1ビーム11の干渉を抑制することができる。
【0052】
図3(b)に示すように、ブラケット5は、本体部5Aと、第1屈曲部5Bと、第2屈曲部5Cとを有する。第1屈曲部5Bは、本体部5Aから屈曲しており、インナ部材20と溶接により接合される部分である。第2屈曲部5Cは、インナパネル3の第2部分3Bに溶接される部分である。
【0053】
以上のような構成のインパクトビーム4によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
インパクトビーム4によれば、インパクトビーム4が、第1ビーム11と第2ビーム12の2つのビームを有するアウタ部材10と、アウタ部材10とともに閉断面形状を形成するインナ部材20とからなるため、製造が容易であるとともに、上下に広い範囲で乗員を保護することができる。また、アウタ部材10およびインナ部材20の構造が複雑でないことで、冷間プレスで成形することが可能となり、熱間プレスで成形する場合と比較して製造コストを抑えることができる。また、第1連結部13および第2連結部14は、前後方向の一部において第1ビーム11と第2ビーム12を連結するので、インパクトビーム4に、高い乗員保護性能を持たせつつ、第1ビーム11と第2ビーム12が前後方向の全体に渡って連結される場合と比較して軽量化を図ることができる。
【0054】
また、第3ビーム21とともに閉断面形状を形成する第1ビーム11が第2ビーム12より下に位置することで、車両用ドア1の下部の乗員保護性能を高くできる。
【0055】
また、第1ビーム11は、第1上フランジ11Bと第1下フランジ11Cとを有し、第2ビーム12は、第2上フランジ12Bと第2下フランジ12Cとを有する。このため、第1ビーム11および第2ビーム12が上下にフランジを有することで、インパクトビーム4の乗員保護性能を高くできる。
【0056】
また、第1ビーム11のフランジ11B,11Cと第3ビーム21のフランジ21B,21Cが接合されることで、閉断面形状を形成するので、インパクトビーム4の乗員保護性能を高くできる。
【0057】
また、前フランジ13Bは、第1上フランジ11Bおよび第2下フランジ12Cと連続して繋がっており、後フランジ13Cは、第1上フランジ11Bおよび第2下フランジ12Cと連続して繋がっていることで、インパクトビーム4の剛性が高くなり、乗員保護性能を高くできる。
【0058】
また、第1ビーム11および第2ビーム12が第1連結部13および第2連結部14の2つの連結部で連結されているため、インパクトビーム全体の剛性が高くなるとともに、第1部材の成形精度が向上する。
【0059】
また、第3ビーム21は、第1ビーム11よりも車両の後方に突出しているため、車両の側面衝突時にインパクトビーム4から車体に衝突荷重を伝達しやすいとともに、インパクトビーム4とアウタパネル2の干渉を抑制することができる。
【0060】
また、インパクトビーム4は、閉断面形状を形成する第1ビーム11に第1上フランジ11Bが途中で途切れた第1不連続部11Hを有している。このため、衝突時において、インパクトビーム4が変形する場合には、第1不連続部11Hにおいて第1上フランジ11Bと第3上フランジ21Bの溶接が途切れるので、第1不連続部11Hまたはその近傍が変形の起点となる。この結果、衝突時において、インパクトビーム4の変形の仕方をコントロールすることができる。
【0061】
次に、
図7を参照して、第2実施形態について説明する。以下の説明においては、前記実施形態と略同様の構造となる部材には同一の符号を付し、その説明は省略する。
前記した第1実施形態では、第1連結部13と第2連結部14の2つの連結部が第1ビーム11と第2ビーム12とを連結していたが、第2連結部14を配置しない構成としてもよい。
例えば、
図7に示すように、第2実施形態におけるインパクトビーム104は、第1連結部13のみで第1ビーム11と第2ビーム12とを連結している。
本実施形態では、第1開口K1は、第1ビーム11、第2ビーム12、第1連結部13の間に形成された開口である。
この第2実施形態のインパクトビーム104においても、第1実施形態と同様に、容易に製造でき、かつ、乗員保護性能を高くすることができる。
【0062】
次に、
図8,9を参照して、第3,4実施形態について説明する。以下の説明においては、前記実施形態と略同様の構造となる部材には同一の符号を付し、その説明は省略する。
前記した第1実施形態では、第1連結部13が第1ビーム11の前後方向における中央に位置していたが、第1連結部が前後方向における中央に位置しない構成としてもよい。
例えば、
図8に示すように、第3実施形態のインパクトビーム204は、第1連結部13が前後方向における中央よりも前に位置している。この場合には、第1不連続部211Hおよび第2不連続部212Hも前後方向における中央よりも前に位置することとなる。
また、例えば、
図9に示すように、第4実施形態のインパクトビーム304は、第1連結部313が前後方向における中央よりも後ろに位置している。この場合には、第1不連続部311Hおよび第2不連続部312Hも前後方向における中央よりも後ろに位置することとなる。
このように、第1連結部の位置を変えることで、変形の起点を変えることが可能である。
【0063】
また、前記した第1実施形態では、第3ビーム21は、第1ビーム11よりも車両の後方に突出していた(
図2も参照)が、この形態に限定されない。
例えば、
図8,9に示すように、第3,4実施形態におけるインパクトビーム204,304では、第3ビーム21は、第1ビーム11よりも車両の後方に突出しておらず、同じ長さである構成としてもよい。
【0064】
次に、
図10,11を参照して、第5実施形態について説明する。以下の説明においては、前記実施形態と略同様の構造となる部材には同一の符号を付し、その説明は省略する。
前記した第1実施形態では、第1連結部13と第2連結部14の2つの連結部が第1ビーム11と第2ビーム12とを連結していたが、第1連結部13を配置しない構成としてもよい。
例えば、
図10に示すように、第5実施形態におけるインパクトビーム404は、第2連結部14のみで第1ビーム11と第2ビーム12とを連結している。
本実施形態では、第1開口K1は、第1ビーム11、第2ビーム12、第2連結部14の間に形成された開口である。
第1ビーム411の第1上フランジ411Bには、フランジが途切れている第1不連続部411Hが形成されている。
図11に示すように、第1不連続部411Hが形成されている部分においては、第1ビーム11は、インナ部材20の第3ビーム21の第3上フランジ21Bと接合されていないので、閉断面形状も途切れている。このため、この第1不連続部411Hは、衝突時において、インパクトビーム404が変形する場合における変形の起点となる。第1上フランジ411Bは、第1不連続部411Hの前と後において前後方に延びている。
【0065】
次に、
図12(a),(b),(c)を参照して、インナ部材の形が異なる他の形態のインパクトビームについて説明する。以下の説明においては、前記実施形態と略同様の構造となる部材には同一の符号を付し、その説明は省略する。
前記した各実施形態では、インナ部材が同じ形態であったが、インナ部材の形態を異ならせてもよい。
【0066】
例えば、
図12(a)に示すインナ部材120は、アウタ部材10よりも左右方向の幅が小さい。インナ部材120における第3ビーム121のU字断面部121Aは、第1実施形態のU字断面部21A(
図5参照)に比べて車両内側への突出量が少ない。これにより、インパクトビームを左右方向においてコンパクトに構成できる。また、インパクトビーム全体の剛性を調整することができる。
【0067】
また、
図12(b)に示すインナ部材220は、インナ部材120よりもさらに左右方向に幅が小さい。インナ部材220における第3ビーム221のU字断面部221Aは、車両内側への突出しておらず、略平板形状である。これにより、インパクトビームを左右方向においてコンパクトに構成できる。また、インパクトビーム全体の剛性を調整することができる。
【0068】
また、
図12(c)に示すインナ部材320は、アウタ部材10よりも左右方向の幅が大きい。インナ部材320における第3ビーム321のU字断面部321Aは、第1実施形態のU字断面部21A(
図5参照)に比べて車両内側への突出量が大きい。これにより、インパクトビーム全体の剛性を調整することができる。
【0069】
また、
図12(a),(b),(c)に示すようにインナ部材の形態を変えることでインパクトビーム全体の剛性を変えるだけでなく、インナ部材の材質、板厚、リブ形状などを変更することでインパクトビーム全体の剛性を変えてもよい。
【0070】
次に、
図13を参照して、インナ部材の形が異なる他の形態のインパクトビームについて説明する。以下の説明においては、前記実施形態と略同様の構造となる部材には同一の符号を付し、その説明は省略する。
前記した各実施形態では、インナ部材20の突出部PRがアウタパネル2およびインナパネル3の間に配置され、アウタパネル2およびインナパネル3に接触しない構成であった(
図2参照)がこの構成に限定されるものではない。
例えば、
図13に示すように、突出部PRを第1実施形態よりも後方に長くすることで、インナパネル3に接触する構成であってもよい。この構成によれば、第1実施形態よりもさらに車両の側面衝突時にインパクトビーム4が受けた衝撃をインナパネル3を介して、より効率的に車両に伝達することができる。
なお、
図13の実施形態においては、突出部PRがインナパネル3の第4部分3Dと溶接してもよい。この場合においては、ブラケット5を省略することもできる。
【0071】
次に、
図14(a),(b),(c)を参照して、参考形態1~3について説明する。
前記した各実施形態では、アウタ部材が2つのビームを有していのに対し、参考形態1~3では、アウタ部材が1つのビームのみを備える。
【0072】
例えば、
図14(a)に示す参考形態1のインパクトビーム504は、アウタビーム511と、インナビーム521とから構成されている。アウタビーム511は、U字断面部511Aと、上フランジ511Bと、下フランジ511Cと、を有している。アウタビーム511の上フランジ511Bは、インナビーム521の上フランジ521Bと溶接により接合されている。アウタビーム511の下フランジ511Cは、インナビーム521の下フランジ521Cと溶接により接合されている。これにより、アウタビーム511は、インナビーム521と共に閉断面形状を形成する。
【0073】
アウタビーム511の上フランジ511Bには、フランジが途切れている不連続部511Hが形成されている。アウタビーム511の上フランジ511Bは、不連続部511Hの前と後において前後方に延びている。不連続部511Hが形成されている部分においては、アウタビーム511は、インナビーム521の上フランジ521Bと接合されていないので、閉断面形状も途切れている。このため、この不連続部511Hまたはその近傍の部位は、衝突時において、インパクトビーム504が変形する場合における変形の起点となる。
【0074】
インパクトビーム504は、インナビーム521の後端がアウタ部材504の後端と前後方向において揃っている。
【0075】
なお、参考形態1においては、アウタビーム511の上フランジ511Bに不連続部511Hが設けられていたが、アウタビーム511の下フランジ511C、インナビーム521の上フランジ521B、または、インナビーム521の下フランジ521Cに不連続部を設けてもよいし、複数のフランジに不連続部を設けてもよい。
【0076】
例えば、
図14(b)に示す参考形態2のインパクトビーム604は、アウタビーム611と、インナビーム621とから構成されている。アウタビーム611は、U字断面部611Aと、上フランジ611Bと、下フランジ611Cと、を有している。アウタビーム611の上フランジ611Bは、インナビーム621の上フランジ621Bと溶接により接合されている。アウタビーム611の下フランジ611Cは、インナビーム621の下フランジ621Cと溶接により接合されている。これにより、アウタビーム611は、インナビーム621と共に閉断面形状を形成する。
【0077】
アウタビーム611の上フランジ611Bには、フランジが途切れている不連続部611Hが形成されている。すなわち、アウタビーム611の上フランジ611Bは、不連続部611Hの前と後において前後方に延びている。不連続部611Hが形成されている部分においては、アウタビーム611は、インナビーム621の上フランジ621Bと接合されていないので、閉断面形状も途切れている。このため、この不連続部611Hまたはその近傍の部位は、衝突時において、インパクトビーム604が変形する場合における変形の起点となる。
【0078】
アウタビーム611とインナビーム621が接合された状態において、インナビーム621は、アウタビーム611よりも車両の後方に突出した突出部PRを有している。逆に言えば、アウタビーム611は、後端部がインナビーム621よりも前に位置している。これにより、インナビーム621を後方に長く延ばして、車両の側面衝突時に、衝突荷重を車体に伝達しやすくしつつ、アウタパネル2とアウタビーム611の干渉を抑制することができる(
図2参照)。
【0079】
なお、参考形態2においては、アウタビーム611の上フランジ611Bに不連続部611Hが設けられていたが、アウタビーム611の下フランジ611C、インナビーム621の上フランジ621B、または、インナビーム621の下フランジ621Cに不連続部を設けてもよいし、複数のフランジに不連続部を設けてもよい。
また、参考形態2においては、インナビーム621がアウタビーム611より後方に突出して突出部PRが設けられていたが、アウタビームがインナビームより後方に突出して突出部を設ける構成としてもよい。
【0080】
例えば、
図14(c)に示す参考形態3のインパクトビーム704は、アウタビーム711と、インナビーム721とから構成されている。アウタビーム711は、U字断面部711Aと、上フランジ711Bと、下フランジ711Cと、を有している。アウタビーム711の上フランジ711Bは、インナビーム721の上フランジ721Bと溶接により接合されている。アウタビーム711の下フランジ711Cは、インナビーム721の下フランジ721Cと溶接により接合されている。これにより、アウタビーム711は、インナビーム721と共に閉断面形状を形成する。
【0081】
アウタビーム711とインナビーム721が接合された状態において、インナビーム721は、アウタビーム711よりも車両の後方に突出した突出部PRを有している。逆に言えば、アウタビーム711は、後端部がインナビーム721よりも前に位置している。これにより、インナビーム721を後方に長く延ばして、車両の側面衝突時に、衝突荷重を車体に伝達しやすくしつつ、アウタパネル2とアウタビーム711の干渉を抑制することができる(
図2参照)。
【0082】
なお、参考形態3においては、インナビーム721がアウタビーム711より後方に突出して突出部PRが設けられていたが、アウタビームがインナビームより後方に突出して突出部を設ける構成としてもよい。
【0083】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
【0084】
前記実施形態では、インパクトビームが車両の後列に使用されるサイドドアに設けられていたが、インパクトビームが車両の前列に使用されるサイドドアに設けられていてもよく、サイドドア以外のドアに使用されるドアに設けられていてもよい。
【0085】
前記実施形態では、第2部材は、第1ビームと接合される第3ビームを有するだけであったが、第2ビームと接合される第4ビームをさらに有していてもよい。すなわち、第2部材は、第3ビームと第4ビームを一体に有する構造を有していてもよい。
【0086】
前記実施形態では、インパクトビーム4がインナパネル3に接合されていたが、インパクトビーム4がアウタパネル2に接合されていてもよく、アウタパネル2とインナパネル3の両方に接合されていてもよい。
【0087】
前記実施形態では、第1部材がアウタ部材10であり、第2部材がインナ部材20である構成であったが、第1部材がインナ部材であり、第2部材がアウタ部材である構成であってもよい。
【0088】
前記実施形態では、アウタ部材10およびインナ部材20が冷間プレスによって成形されていたが、熱間プレスや、他の方法によって成形されていてもよい。
【0089】
前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 車両用ドア
2 アウタパネル
3 インナパネル
4 インパクトビーム
5 ブラケット
10 アウタ部材
11 第1ビーム
11A 第1U字断面部
11B 第1上フランジ
11C 第1下フランジ
11H 第1不連続部
12 第2ビーム
12A 第2U字断面部
12B 第2上フランジ
12C 第2下フランジ
12H 第2不連続部
13 第1連結部
13A 第4U字断面部
13B 前フランジ
13C 後フランジ
14 第2連結部
20 インナ部材
21 第3ビーム
21A 第3U字断面部
21B 第3上フランジ
21C 第3下フランジ