(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185940
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】選択式還元触媒の性能評価システム、プログラム及び評価方法
(51)【国際特許分類】
B01J 38/00 20060101AFI20221208BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20221208BHJP
F01N 3/20 20060101ALI20221208BHJP
F01N 11/00 20060101ALI20221208BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20221208BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
B01J38/00
F01N3/08 B ZAB
F01N3/20 C
F01N11/00
B01J35/10 301J
B01D53/94 222
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093882
(22)【出願日】2021-06-03
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.THUNDERBOLT
(71)【出願人】
【識別番号】518126144
【氏名又は名称】株式会社三井E&Sマシナリー
(72)【発明者】
【氏名】服部 望
(72)【発明者】
【氏名】牧野 貴明
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 利晴
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA04
3G091AA18
3G091AB05
3G091BA33
3G091GA06
3G091GB01W
4D148AA06
4D148AB02
4D148AC03
4D148BA23X
4D148BA27X
4D148BB02
4D148DA03
4D148DA11
4D148DA20
4G169AA03
4G169BB06A
4G169BC54A
4G169BC60A
4G169CA08
4G169CA13
4G169DA06
4G169EA18
4G169EC02X
4G169FC08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】選択式還元触媒の適切な再活性化時期または交換時期を推定することで触媒の長寿命化を図りうるシステム、プログラムおよびその方法を提供すること。
【解決手段】本発明の一態様によれば、選択式還元触媒の性能評価システム、プログラムおよびその方法が提供される。当該評価システム、プログラム、その方法は、分析ステップと計測ステップと予測ステップを備える。分析ステップでは、触媒表面の含有元素割合を分析する。計測ステップでは、触媒表面における比表面積を計測する。予測ステップでは上記含有元素割合と上記比表面積の値から、触媒の性能を予測する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
選択式還元触媒の性能評価システムであって、
次の各ステップを実行するように構成され、
分析ステップでは、前記触媒表面の含有元素割合を分析し、
計測ステップでは、前記触媒表面における比表面積を計測し、
予測ステップでは、 前記含有元素割合と前記比表面積の値から、触媒の性能を予測する、もの。
【請求項2】
請求項1に記載の選択式還元触媒の性能評価システムにおいて、
前記予測ステップにおける触媒の性能予測は、複数の種類の前記含有元素割合と前記比表面積の値を教師データとして予め学習させた学習済みデータに基づく、もの。
【請求項3】
請求項2に記載の選択式還元触媒の性能評価システムにおいて、
学習ステップをさらに備え、
前記学習ステップでは、前記含有元素割合と前記比表面積の値を教師データとして、前記学習済みデータを生成又は更新する、もの。
【請求項4】
選択式還元触媒の性能評価方法であって、
次の各ステップを備え、
分析ステップでは、前記触媒表面の含有元素割合を分析し、
計測ステップでは、前記触媒表面における比表面積を計測し、
予測ステップでは、 前記含有元素割合と前記比表面積の値から、触媒の性能を予測する、方法。
【請求項5】
請求項4に記載の選択式還元触媒の性能評価方法において、
前記予測ステップにおける触媒の性能予測は、複数の種類の前記含有元素割合と前記比表面積の値を教師データとして予め学習させた学習済みデータに基づく、方法。
【請求項6】
請求項4~請求項5に記載の選択式還元触媒の性能評価方法において、
学習ステップをさらに備え、
前記学習ステップでは、前記含有元素割合と前記比表面積の値を教師データとして、前記学習済みデータを生成又は更新する、方法。
【請求項7】
プログラムであって、
コンピュータに、請求項1~請求項3の何れか1つに記載の選択式還元触媒の性能評価システムにおける各ステップを実行させる、もの。
【請求項8】
請求項4に記載の性能評価方法に供せられる触媒を備えた、選択式還元触媒装置であって、
気体の流路を形成するように一方向に延びた複数の貫通孔を有する構造体を備え、
前記貫通孔を画定する前記構造体の内壁に沿って触媒が担持されており、
前記触媒表面において、バナジウム及びタングステンが含有元素として構成される、もの。
【請求項9】
請求項8に記載の選択式還元触媒装置において、
前記触媒表面における、前記含有元素割合として、バナジウムが1.0w%以上、タングステンが8.0w%以上、であることを特徴とする、もの。
【請求項10】
請求項8~請求項9に記載の選択式還元触媒装置において、
前記触媒表面における比表面積が80平方メートル/グラム以上であるであることを特徴とする、もの。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択式還元触媒の性能評価システム、プログラム及び評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの排ガス浄化装置として選択式還元触媒装置が知られている。しかし、還元剤として添加された尿素水の加水分解によって発生するアンモニアが排ガス中に含まれる硫黄分と反応し硫酸水素アンモニウムを生成してしまうことがある。硫酸水素アンモニウムは排気温度が融点よりも低い場合液体として存在し、選択式還元触媒表面に付着・被毒し性能の劣化を引き起こすことになる。
また尿素水の加水分解が不十分であった場合には尿素結晶あるいはシアヌル酸などが選択式還元触媒に析出し、浄化性能を劣化させる恐れがある。さらに未燃炭素化合物の被毒やリン被毒も考えられ、これらが複合した性能劣化も起こりうる。
【0003】
特許文献1には、燃料噴射量や排気ガスの温度、触媒温度推定手段等により触媒の劣化度合いを診断できる方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される技術は、実際の劣化度合を把握できるものではなく、適切な触媒の再活性化あるいは交換の時期を正確に推定することができない。
【0006】
本発明では上記事情を鑑み、選択式還元触媒の一部を採取し、触媒表面の元素分析および比表面積測定により、触媒の状態を正確に把握でき、適切な触媒の再活性化時期または交換時期を推定することで触媒の長寿命化を図りうるシステム、プログラムおよびその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、選択式還元触媒の性能評価システムが提供される。当該評価システムは、分析ステップと計測ステップと予測ステップを備える。分析ステップでは、触媒表面の含有元素割合を分析する。計測ステップでは、触媒表面における比表面積を計測する。予測ステップでは上記含有元素割合と上記比表面積の値から、触媒の性能を予測する。
【0008】
これによれば、触媒の状態を正確に把握でき、適切な触媒の再活性化時期または交換時期を推定することで触媒の長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る選択式還元触媒の性能評価システムの全体図である。
【
図2】サーバ4のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】サーバ4(制御部43)によって実現される機能を示すブロック図である。
【
図5】ユーザ携帯端末に表示される画面の一例である。
【
図6】含有元素分析装置2で出力される表示結果の一部である。
【
図7】比表面積計測装置3で出力される表示結果の一部である。
【
図8】各供試体における脱硝性能比較試験結果の一部である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0011】
1.ハードウェア構成
第1節では、本実施形態のハードウェア構成について説明する。
【0012】
1.1 選択式還元触媒の性能評価システム1
図1は、本実施形態に係る選択式還元触媒の性能評価システム全体図である。性能評価システム1は、含有元素分析装置2と、比表面積計測装置3と、サーバ4と、ディスプレイ5とを備え、これらがディーゼルエンジン制御装置6ともネットワークを通じて接続されている。これらの構成要素についてさらに説明する。ここで、性能評価システム1に例示されるシステムとは、1つ又はそれ以上の装置又は構成要素からなるものである。
【0013】
1.2 含有元素分析装置2
含有元素分析装置2の代表的な分析方法として、走査型電子顕微鏡の原理を用いたエネルギー分散型X線分光法(以下「SEM-EDX」と呼ぶ)が挙げられる。特に波長分散型X線分光法(以下「SEM-WDX」と呼ぶ)より装置の小型化が図れる点に有用性があるが、SEM-WDXや透過型電子顕微鏡の原理を利用した触媒表面の組成分析であってもよく、さらにX線光電子分光法(XPS)の原理を用いたものであってもよい。
【0014】
含有元素分析装置2は、後述のサーバ4における通信部41とネットワークを介して接続され、含有元素の種類およびその質量%等の情報をサーバ4に転送可能に構成される。なお上記質量%については別の単位でもよく、サーバ4にて格納されているまたは格納されうる教師データに使用される単位に変換できるように、含有元素分析装置2が単位変換機能を有していても良い。
【0015】
1.3 比表面積計測装置3
比表面積計測装置3の代表的な計測方法として、BETの吸着等温式を利用したものが挙げられるが、Freundlichの吸着等温式やGibbsの吸着等温式を利用したものであってもよい。
【0016】
比表面積計測装置3は、後述のサーバ4における通信部41とネットワークを介して接続され、触媒表面における比表面積(平方メートル/グラム)の情報をサーバ4に転送可能に構成される。なお上記比表面積(平方メートル/グラム)の単位については、別の単位(平方メートル/立法メートル)でもよく、サーバ4にて格納されているまたは格納されうる教師データに使用される単位に変換できるように、比表面積計測装置3が元素の状態毎の密度データを有していても良い。
【0017】
1.4 サーバ4
図2は、サーバ4のハードウェア構成を示すブロック図である。サーバ4は、通信部41と、記憶部42と、制御部43とを有し、これらの構成要素がサーバ4の内部において通信バス40を介して電気的に接続されている。各構成要素についてさらに説明する。
【0018】
通信部41は、USB、IEEE1394、Thunderbolt、有線LANネットワーク通信等といった有線型の通信手段が好ましいものの、無線LANネットワーク通信、LTE/3G等のモバイル通信、Bluetooth(登録商標)通信等を必要に応じて含めてもよい。すなわち、これら複数の通信手段の集合として実施することがより好ましい。すなわち、サーバ4は、通信部41を介して、含有元素分析装置2及び比表面積計測装置3とネットワークを経由して分析データや計測データを受信する。詳細は後述する。
【0019】
記憶部42は含有元素分析装置2や比表面積計測装置3により送信された情報を記憶する。これは、例えば、制御部43によって実行されるサーバ4に係る種々のプログラム等を記憶するソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等のストレージデバイスとして、あるいは、プログラムの演算に係る一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶するランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリとして実施されうる。また、これらの組合せであってもよい。特に、触媒の性能予測結果をディスプレイ5に表示されるまで記憶され、当該記憶された情報を教師データとして、前記学習済みデータを生成又は更新しない場合は、ディスプレイ5に性能予測結果を表示後、自動的に消去される。
【0020】
制御部43は、サーバ4に関連する全体動作の処理・制御を行う。制御部43は、例えば不図示の中央処理装置(Central Processing Unit:CPU)である。制御部43は、記憶部42に記憶された所定のプログラムを読み出すことによって、触媒の性能予測を実現する。すなわち、記憶部42に記憶されているソフトウェアによる情報処理が、ハードウェアの一例である制御部43によって具体的に実現されることで、制御部43に含まれる機能部として実行されうる。これらについては、次節においてさらに詳述する。なお、制御部43は単一であることに限定されず、機能ごとに複数の制御部43を有するように実施してもよい。またそれらの組合せであってもよい。
【0021】
1.5 ディスプレイ5
ディスプレイ5は、サーバ4から送信された触媒の性能予測結果を表示する。なお視覚的に表示するのみならず、ディスプレイ5に新たな予測結果が表示された場合には、音声による注意喚起がなされてもよい。ディスプレイ5は、例えば選択式還元触媒装置が取り付けられたエンジンの動作状況を表示するパネルであってもよく、上記ネットワークを介して、個人用携帯端末を含む複数台に表示されるものであっても勿論よい。
【0022】
2.機能構成
本節では、本実施形態の機能構成について説明する。前述の通り、記憶部42に記憶されているソフトウェアによる情報処理がハードウェアの一例である制御部43によって具体的に実現されることで、制御部43に含まれる機能部として実行されうる。
【0023】
図3は、サーバ4(制御部43)によって実現される機能を示すブロック図である。具体的には、性能評価システム1の一例であるサーバ4(制御部43)は、受付部431と、解析部432と、応答部433と、学習部434とを備える。
【0024】
受付部431は、各種の情報を受け付けるように構成される。例えば、受付部431は、含有元素分析装置2から発せられた情報(含有元素の種類およびその質量%等の情報)や比表面積計測装置3から発せられた情報(触媒表面における比表面積(平方メートル/グラム)の情報)を受け付ける。
【0025】
解析部432は、受付部431に受け付けられた情報から、触媒の性能状態を予測するように構成される。具体的には記憶部42に予め設定されている値との差を乖離度として類型化し、その型に合わせた触媒の性能状態を予測するよう構成される。
なお乖離度を最小二乗法の原理から設定してもよく、含有元素分析装置2から受け付けた情報のうち、元素毎に乖離度を設定してもよい。さらに比表面積計測装置3から受け付けた情報も乖離度を設定しており、それらすべてを変数とし、重み付けも考慮に入れた重回帰分析により触媒性能を予測してもよい。
また、記憶部42に予め学習させ格納された、含有元素割合と比表面積の値を教師データとして、機械学習により触媒性能を予測してもよい。
【0026】
学習部433は、含有元素分析装置2や比表面積計測装置3から得られた情報を教師データとして、機械学習を実行するように構成される。機械学習のアルゴリズムは特に限定されず、k近傍法、ロジスティック回帰、サポートベクターマシン、ニューラルネットワーク、トピックモデル、混合ガウスモデル等が適宜採用されればよい。
なお、学習部433は解析部432が機械学習を行う場合において、データの更新、生成を行うためのものであり機械学習を実行しない場面においては特に必要としない。
【0027】
応答部434は、解析部432から得られた触媒の性能状態を予測した情報をディスプレイ5に表示するため、データ送信しうるよう構成される。また解析部432から得られた触媒の性能状態の如何によって、再活性化あるいは交換が必要である旨の情報を送信できるよう構成されるものであってよい。なおディスプレイ5が複数設定されている場合であっても同様である。
【0028】
3.性能評価方法
本節では、前述した触媒性能評価システムの性能評価方法について説明する。この触媒性能評価方法は、次の各ステップ、分析ステップと計測ステップと予測ステップを備える。分析ステップでは、触媒表面の含有元素割合を分析する。計測ステップでは、触媒表面における比表面積を計測する。予測ステップでは上記含有元素割合と上記比表面積の値から、触媒の性能を予測する。
【0029】
図4は、選択式還元触媒の性能評価システムによって実行される情報処理等の流れを示すフローチャート図である。以下、このフローチャート図の各フローに沿って、説明するものとする。
【0030】
ユーザが選択式還元触媒の性能評価をする際には、含有元素分析装置2や比表面積計測装置3に試料として供するために、選択式還元触媒の一部を取り出す(ステップS101)。なお上記取り出しは、選択式還元触媒ユニットの一部取り出しでも、触媒表面の一部削り取りであってもよい。続いて含有元素分析装置2、比表面積計測装置3にて分析(ステップS102)および計測(ステップS103)を行う。含有元素分析装置2による分析と比表面積計測装置3による計測についてはどちらを先に実施してもよいが、触媒性能の予測精度を向上させるためには両方実施することが好ましい。上記分析、計測データはサーバ4に送信される(ステップS104)。
【0031】
続いてサーバ4は、含有元素分析装置2や比表面積計測装置3からネットワークを経由して受け取ったデータから、触媒の性能状態を予測する(ステップS104)。
図6は含有元素分析装置2に係るSEM-EDX法により得られた供試体についての含有元素分析結果である。
図8の供試体の各触媒における脱硝性能比較からわかるとおり、触媒の性能に大きく作用する含有元素はバナジウムとタングステンである。よってステップS104における性能状態の予測における指標のひとつは、上記バナジウムとタングステンの有無及びその割合等が予め設定した値との乖離度を類型化したものである。
なお上記割合については、バナジウムが1.0w%以上、タングステンが8.0w%以上、であれば上記類型化において非常に良好のクラスに分けられるものである。その他の指標としては、硫黄成分の触媒表面への付着割合の予め設定した値との乖離度を類型化したものが考えられる。
【0032】
さらに当該性能評価方法に供せられる触媒選択式還元触媒装置であって、上記元素を含み、気体の流路を形成するように一方向に延びた複数の貫通孔を有する構造体を備え、前記貫通孔を画定する前記構造体の内壁に沿って触媒が担持されていると、空気抵抗を低減できるだけでなく、上記の供試体としてのサンプリングも容易になる。
【0033】
上記性能評価に用いるサンプルは数グラムで十分であり、舶用ディーゼルエンジンの選択式還元触媒全体から見ると極めて少量である。そのため上記性能評価試験を舶用ディーゼルエンジン稼働中に行っても、全体の性能に影響はないため、サンプリングができることは好ましい。
【0034】
また前記構造がハニカム構造であれば、耳かきのような治具でこそぎ落とすことが可能である。舶用ディーゼルエンジンにおける選択式還元触媒の構造が前記ハニカム構造となっているような場合、そのハニカム構造のひとつは約20から30キログラム程度の質量を有するため、それを個別に取り出すことなく、前記こそぎ落としによりサンプリングできることは更に好ましい。
【0035】
図7は比表面積計測装置3に係るBETの吸着等温式により得られた供試体についての計測結果である。
図8の供試体の各触媒における脱硝性能比較からわかるとおり、比表面積が触媒の性能に大きく作用する。よってステップS104における性能状態の予測における指標のひとつは、触媒界面の状態をよく表す計測された比表面積の値と予め設定した値との乖離度を類型化したものである。
なお上記比表面積が80平方メートル/グラム以上である場合、上記類型化において非常に良好のクラスに分けられるものである。
【0036】
さらに上記のようなバナジウムとタングステンを含み、気体の流路を形成するように一方向に延びた複数の貫通孔を有する構造体を備え、前記貫通孔を画定する前記構造体の内壁に沿って触媒が担持されている還元触媒層装置であって比表面積が80平方メートル/グラム以上であると、空気抵抗を低減できるだけでなく、上記の供試体としてのサンプリングも容易になり、触媒の性能の向上にも期待できる。
【0037】
上記ステップS104の終了後、当該予測情報について、ディスプレイ5に送信する(ステップS105)。なおサーバ4が受信した分析データ、計測データについては、当該情報を教師データとして、学習済みデータを生成又は更新しない場合は、ディスプレイ5に性能予測結果を表示後、記憶部42から自動的に消去される。なおディスプレイ5に表示された場合、ユーザが有する携帯端末にその旨が通知される(ステップS106)。
図5はユーザが有する携帯端末に表示される画像の一例である。こうして一連のフローは終了する。
【0038】
一方、学習済みデータを生成又は更新する場合は、含有元素分析装置2や比表面積計測装置3からネットワークを経由して受け取ったデータのみならず、性能予測結果についても、学習済みデータを生成又は更新するまで記憶部42から自動的に消去されることはない。学習済みデータを生成又は更新し、新たに記憶部42に格納された後にディスプレイ5に性能予測結果を表示され(ステップS107)、その後消去されることになる。
なおディスプレイ5に表示された場合、ユーザが有する携帯端末にその旨が通知される(ステップS106)ことについては上記と同様である。こうして一連のフローは終了する。
【0039】
4.その他
さらに、次に記載の各態様で提供されてもよい。
前記性能評価システムにおいて、複数の種類の含有元素割合データと比表面積のデータを教師データとして予め学習させた学習済みデータに基づく、もの。
機械学習を用いることで精度の高い予測を実現できるため、より好ましい。
【0040】
前記性能評価システムにおいて、学習ステップを更に備え、前記学習ステップでは、前記含有元素割合と前記比表面積の値を教師データとして、前記学習済みデータを生成又は更新する、もの。
実データを教師データとしているので上記よりも更に予測精度が高まるため、さらに好ましい。
【0041】
性能評価方法であって、次の各ステップを備え、分析ステップでは、前記触媒表面の含有元素割合を分析し、計測ステップでは、前記触媒表面における比表面積を計測し、予測ステップでは、 前記含有元素割合と前記比表面積の値から、触媒の性能を予測する、方法。
触媒の再活性化あるいは交換の時期を正確に推定できる方法であるため、好ましい。
【0042】
前記性能評価方法において、複数の種類の含有元素割合データと比表面積のデータを教師データとして予め学習させた学習済みデータに基づく、方法。
機械学習を用いることで精度の高い予測を実現できるため、より好ましい。
【0043】
前記性能評価方法において、学習ステップを更に備え、前記学習ステップでは、前記含有元素割合と前記比表面積の値を教師データとして、前記学習済みデータを生成又は更新する、方法。
実データを教師データとしているので上記よりも更に予測精度が高まるため、さらに好ましい。
【0044】
前記性能評価方法に供せられる触媒を備えた、選択式還元触媒装置であって、気体の流路を形成するように一方向に延びた複数の貫通孔を有する構造体を備え、前記貫通孔を画定する前記構造体の内壁に沿って触媒が担持されており、前記触媒表面において、バナジウム及びタングステンが含有元素として構成される、もの。
触媒の性能に大きく関わるのはその表面における元素の種類であり、触媒の主成分としてバナジウムとタングステンを含むと触媒効率がよくなるため好ましい。
【0045】
前記選択式還元触媒装置において、前記触媒表面における、前記含有元素割合として、バナジウムが1.0w%以上、タングステンが8.0w%以上、であることを特徴とする、もの。
触媒の性能に大きく関わるのはその表面における元素の種類だけでなく、その割合であり、特に上記の値をとると触媒効率がさらによくなるため、さらに好ましい
【0046】
前記選択式還元触媒装置において、前記触媒表面における比表面積が50平方メートル/グラム以上であるであることを特徴とする、もの。
比表面積が所定の値をとることで、界面が活性化していることがわかり、触媒効率がよくなるため、もっと好ましい。
【0047】
最後に、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0048】
1 :性能評価システム1
2 :含有元素分析装置2
3 :比表面積計測装置3
4 :サーバ4
40 :通信バス40
41 :通信部41
42 :記憶部42
43 :制御部43
431 :受付部431
432 :解析部432
433 :学習部433
434 :応答部434
5 :ディスプレイ5