(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185946
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】機械学習装置及び停電発生区間予測装置
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20221208BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20221208BHJP
G06Q 50/06 20120101ALI20221208BHJP
【FI】
H02J3/00 170
H02J13/00 301A
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093890
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】平本 尚生
(72)【発明者】
【氏名】元吉 庸泰
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
5L049
【Fターム(参考)】
5G064AC09
5G064BA02
5G064CB04
5G064DA03
5G066AA03
5G066AA10
5G066AE03
5G066AE09
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】電力系統の絶縁部材への塩分の付着に起因する停電の発生区間をより高い精度で効率的に予測するための学習モデルを構築できる機械学習装置及び該学習モデルを用いた停電発生区間予測装置を提供すること。
【解決手段】機械学習装置1は、地域A内の電力系統の複数の絶縁部材のそれぞれの位置を示す位置情報と、地域Aの地形情報と、基準時よりも過去の時点から基準時までの地域Aの気象情報と、基準時よりも過去の時点から基準時までの電力系統の零相電圧情報を含むデータ群を入力データとして取得する入力データ取得部11と、基準時から所定期間経過後の地域Aにおける絶縁部材への塩分の付着による停電の発生区間をラベルとして取得するラベル取得部12と、入力データとラベルとの組を教師データとして教師あり学習を行うことにより、停電の発生区間を予測するための学習モデルを構築する学習モデル構築部14と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の地域内の電力系統の電線と地面を電気的に絶縁する複数の絶縁部材のそれぞれの位置を示す位置情報と、前記所定の地域の地形情報と、基準時よりも過去の時点から前記基準時までの前記所定の地域の気象情報と、前記基準時よりも過去の時点から前記基準時までの前記電力系統の零相電圧情報を含むデータ群を入力データとして取得する入力データ取得部と、
前記基準時から所定期間経過後の前記所定の地域における前記絶縁部材への塩分の付着による停電の発生区間をラベルとして取得するラベル取得部と、
前記入力データと前記ラベルとの組を教師データとして教師あり学習を行うことにより、前記停電の発生区間を予測するための学習モデルを構築する学習モデル構築部と、を備える機械学習装置。
【請求項2】
前記入力データ取得部は、複数の前記絶縁部材のそれぞれの絶縁性能情報を前記入力データとして更に取得する請求項1に記載の機械学習装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の機械学習装置で構築した前記学習モデルを用いた停電発生区間予測装置であって、
前記位置情報と、前記地形情報と、過去の所定の時点から現時点までの前記所定の地域の気象情報と、前記過去の所定の時点から現時点までの前記電力系統の零相電圧情報を予測用データ群として取得する予測用データ取得部と、
前記予測用データ群と前記学習モデルとに基づいて、現時点から所定期間経過後に新たに発生する前記停電の発生区間を予測する停電発生区間予測部と、を備える停電発生区間予測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械学習装置及び停電発生区間予測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、台風や暴風等による電力系統への影響を予測する技術が知られている。この種の技術が記載されているものとして例えば特許文献1及び2がある。特許文献1には、碍子の位置情報、台風情報等に基づいて、台風通過後の碍子の汚損状況を予測する技術が記載されている。特許文献2には、配電設備の塩害等に対する耐性情報と過去の気象情報と被害情報との関係式を作成し、該耐性情報と将来の気象情報と該関係式から塩害による被害を予測する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-123805号公報
【特許文献2】特開2015-75828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電力系統の絶縁部材への塩分の付着に起因する停電の発生区間を予測する場合、目視で塩分の付着を確認することが困難な上に台風や暴風等の荒天が広範囲に亘って生じるので停電の発生区間を予測するために時間や手間がかかる。特許文献1及び2の技術によれば気象情報等を利用して停電の発生区間を予測できるものの、予測精度の点で改善の余地があった。
【0005】
本発明は、電力系統の絶縁部材への塩分の付着に起因する停電の発生区間をより高い精度で効率的に予測するための学習モデルを構築できる機械学習装置及び該学習モデルを用いた停電発生区間予測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、所定の地域内の電力系統の電線と地面を電気的に絶縁する複数の絶縁部材のそれぞれの位置を示す位置情報と、前記所定の地域の地形情報と、基準時よりも過去の時点から前記基準時までの前記所定の地域の気象情報と、前記基準時よりも過去の時点から前記基準時までの前記電力系統の零相電圧情報を含むデータ群を入力データとして取得する入力データ取得部と、前記基準時から所定期間経過後の前記所定の地域における前記絶縁部材への塩分の付着による停電の発生区間をラベルとして取得するラベル取得部と、前記入力データと前記ラベルとの組を教師データとして教師あり学習を行うことにより、前記停電の発生区間を予測するための学習モデルを構築する学習モデル構築部と、を備える機械学習装置に関する。
【0007】
前記入力データ取得部は、複数の前記絶縁部材のそれぞれの絶縁性能情報を前記入力データとして更に取得する。
【0008】
また本発明は、前記機械学習装置で構築した前記学習モデルを用いた停電発生区間予測装置であって、前記位置情報と、前記地形情報と、過去の所定の時点から現時点までの前記所定の地域の気象情報と、前記過去の所定の時点から現時点までの前記電力系統の零相電圧情報を予測用データ群として取得する予測用データ取得部と、前記予測用データ群と前記学習モデルとに基づいて、現時点から所定期間経過後に新たに発生する前記停電の発生区間を予測する停電発生区間予測部と、を備える停電発生区間予測装置に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電力系統の絶縁部材への塩分の付着に起因する停電の発生区間をより高い精度で効率的に予測するための学習モデルを構築できる機械学習装置及び該学習モデルを用いた停電発生区間予測装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る停電発生区間予測システムの全体構成を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る停電発生区間予測システムによって停電区間が予測される地域の一例を示す概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る機械学習装置の機能ブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る停電発生区間予測装置の機能ブロック図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る機械学習装置の動作のフローチャートを示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る停電発生区間予測装置の動作のフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、停電発生区間予測システム100の全体構成を示す図である。
図2は、本実施形態に係る停電発生区間予測システム100によって停電の発生区間が予測される地域Aの一例を示す概略図である。
【0012】
停電発生区間予測システム100の構成について説明する。
図1に示すように、停電発生区間予測システム100は、機械学習装置1及び停電発生区間予測装置2を備える。
【0013】
ここで、機械学習装置1と停電発生区間予測装置2とは1対1の組とされて、通信可能に接続されている。なお、
図1では図示しないが、機械学習装置1と停電発生区間予測装置2とはネットワークを介して、互いに接続されていてもよい。ネットワークは、例えば、LAN(Local Area Network)や、インターネット、公衆電話網、あるいは、これらの組み合わせである。ネットワークにおける具体的な通信方式や、有線接続及び無線接続のいずれであるか等については、特に限定されない。あるいは、機械学習装置1と停電発生区間予測装置2とは、ネットワークを用いた通信ではなく、コネクタを介して直接接続してもよい。
【0014】
停電発生区間予測システム100は、電力系統の絶縁部材への塩分の付着に起因する停電の発生区間を予測するために用いられる。絶縁部材は、電力系統の発電所、変電所、送電線路、配電線路等に配置され、電線と地面を電気的に絶縁する部材である。絶縁部材としては、例えば、電線と該電線を支持する電柱や鉄塔等に装着される碍子等が挙げられる。
【0015】
海岸線の近傍に電柱に装着される碍子等の絶縁部材に潮風に含まれる塩分が付着すると、その絶縁性能が低下して地絡が起こり、停電が発生する。停電発生区間予測システム100は、後述する各種情報を利用することで所定の地域Aにおける絶縁部材への塩分の付着による停電の発生区間を予測する。
【0016】
停電の発生区間の予測対象となる地域Aについては特に限定されない。例えば、
図2に示すように、地域Aは日本の岡山県、広島県、山口県、島根県、鳥取県を含む中国地方全体であってもよく、該中国地方における海岸線から所定の距離までの範囲であってもよい。または、地域Aは1または複数の市町村内であっても、1または複数の変電所から電力が供給されるエリア内であってもよい。本実施形態では、
図2に示す中国地方における海岸線から内陸に向かって所定の距離までの範囲を地域Aとしている。
【0017】
停電発生区間予測システム100の機械学習装置1について
図3を参照しながら説明する。
図3は機械学習装置1の機能ブロックを示す図である。
【0018】
機械学習装置1は、教師あり学習により、停電発生区間予測装置2で用いる学習モデルを構築する。機械学習装置1によって構築される学習モデルは、地域Aにおける絶縁部材への塩分の付着に起因する停電の発生区間を予測するために用いられる。
図3に示すように、機械学習装置1は、入力データ取得部11と、ラベル取得部12と、記憶部13と、学習モデル構築部14を備える。
【0019】
入力データ取得部11は、地域Aにおける各種情報を入力データとして取得する。入力データとしては、地域Aの地形情報と、地域A内の複数の絶縁部材のそれぞれの位置を示す位置情報と、地域A内の複数の絶縁部材のそれぞれの絶縁性能情報と、地域Aの気象情報と、地域A内の電力系統の電相電圧情報を含むデータ群が挙げられる。
【0020】
地形情報は、地域Aの地形に関する情報である。地形情報としては、例えば、扇状地等の地形の種類や河口や河川の位置、樹木や田畑の位置、海岸線の近傍に配置される電力系統以外の建造物の情報等が挙げられる。建造物の情報としては、例えば、建造物の高さや形状、位置等の情報が挙げられる。これらの地形情報は、例えば、衛生画像等から取得してもよく、地形情報を管理するシステム等から取得してもよい。
【0021】
位置情報は、地域A内の電力系統に設けられる複数の絶縁部材のそれぞれの位置を示す情報である。位置情報は、例えば、絶縁部材の経度や緯度、高度等の情報、電柱や鉄塔等における絶縁部材の配置等が挙げられる。これらの位置情報は、例えば、電力系統の管理システム等から取得してもよい。
【0022】
地形情報と位置情報を組み合わせることで、複数の絶縁部材のそれぞれの周囲の環境に関する情報を特定することができる。絶縁部材の周囲の環境に関する情報としては、例えば、絶縁部材から海岸線までの距離、絶縁部材からその近傍に位置する樹木や建造物までの距離、絶縁部材と海岸線との間に位置する樹木や建造物等の高さ、絶縁部材が位置する地形の種類や河川、河口の有無等の様々な情報が挙げられる。
【0023】
絶縁性能情報は、塩分の付着に対する絶縁部材の絶縁性能を示す情報である。絶縁性能情報としては、例えば、絶縁部材の長さや形状、絶縁部材の表面への撥水物質の塗布の有無、絶縁部材の洗浄履歴等が挙げられる。例えば、絶縁部材を長くすることで、電線と電柱の間の絶縁距離が延びて絶縁性能が向上する。洗浄履歴は、付着した塩分を除去するために絶縁部材の洗浄を実施した日時等の情報である。絶縁性能情報は、例えば、電力系統の管理システム等から取得してもよい。
【0024】
気象情報は、基準時よりも過去の時点から基準時までの地域Aにおける気象に関する情報である。基準時とは、過去の任意の時点である。基準時よりも過去の時点から基準時までの期間の長さは特に限定されない。例えば、1週間未満であっても、1週間以上であってもよい。
【0025】
気象情報としては、例えば、天気や天候に関する情報や潮汐に関する情報等が挙げられる。天気や天候に関する情報としては、例えば、気圧、風速、風向、気温、降雨量、日照量、台風の有無、台風の進路、台風通過後の天気等が挙げられる。潮汐に関する情報としては、例えば、潮位、満潮干潮時刻等が挙げられる。これらの気象情報は、気象観測所の発表値であってもよく、気圧、風速、風向、気温、降雨量、日照量等を測定する測定機器から得られる値であってもよい。
【0026】
零相電圧情報は、基準時よりも過去の時点から基準時までの地域Aの電力系統の零相電圧に関する情報である。零相電圧情報としては、例えば、零相電圧の大きさ、方向、周波数等が挙げられる。零相電圧情報は、例えば、電力系統の管理システム等で常時測定される零相電圧の測定結果であってもよい。
【0027】
零相電圧について説明する。零相電圧は、電線に流れる電流や季節や天候によって変化せず、地面や樹木等と電線との間の距離に伴う静電容量の変化や変圧器が接続される接続相の組み合わせ等によって決定される。
【0028】
零相電圧は、地絡が生じていない通常状態では小さい値に調整されている。しかし、三相交流の各相のうち何れかの相と地面の電位差が減少すると、三相の対地電圧の大きさや位相が不揃いとなり、零相電圧が増加する。零相電圧が所定の閾値を超えて地絡が起こると、地絡保護継電器によって地絡の発生区間が電力系統から切り離されて停電する。
【0029】
塩分の付着等により絶縁部材の絶縁性能が低下している場合、零相電圧の大きさが閾値を超えない程度に継続的に変動する微地絡が発生する。微地絡は、地絡保護継電器が動作する零相電圧の閾値を超えないので停電にはならないが、停電が発生する兆候を示す情報として利用することができる。
【0030】
ラベル取得部12は、基準時から所定期間経過後の地域A内における絶縁部材への塩分の付着による停電の発生区間をラベルとして取得する。所定期間の長さは、特に限定されない。例えば、1日未満であっても、1日以上であってもよく、1週間以上であってもよい。
【0031】
ここで、入力データ取得部11によって取得される地形情報、位置情報、絶縁性能情報、気象情報、零相電圧情報等のデータ群とラベル取得部12によって取得される停電の発生区間の関係性について説明する。
【0032】
停電の発生の可能性は、地域Aの気象や地形、地域Aの電力系統の絶縁部材の位置や絶縁性能、電力系統の零相電圧等の情報により推定できる。例えば、海岸線の近傍に絶縁部材が存在する区間は停電が発生する可能性が高いと推定できる。また、海岸線と絶縁部材との距離が等しい場合であっても、風向、台風の進路等によって塩分を含む潮風の方向が変化するので、これらの気象条件と海岸線及び絶縁部材の位置関係によって絶縁部材への塩分の付着量が変化する。
【0033】
また、海岸線から絶縁部材までの距離や気象条件が等しい場合であっても、地形の種類によって停電の発生の可能性が異なる。例えば、海に面した扇状地に存在する区間や市街地を広い河口を持つ河川が流れる区間、標高が低い低地が河川沿いに内陸まで続いている区間等に存在する電力系統の絶縁部材は、より塩分が付着し易い傾向にある。また、海岸線と電力系統の間に位置する建造物や樹木等の存在する場合、電力系統が海岸線の近傍に位置していても、建造物や樹木等が海から運ばれる潮風を遮り、絶縁部材への塩分の付着を防ぐので、停電が発生する可能性が少ない区間であると推定できる。
【0034】
また例えば、絶縁部材の長さに応じて絶縁性能が高くなり、停電が発生し難くなることが推定できる。また例えば、絶縁部材の位置及び絶縁性能、地域Aの地形情報、気象情報等とともに、零相電圧の大きさや方向の変化に関する情報を考慮することにより、停電の発生区間をより正確に予測できる。このような停電の発生要因と過去の停電の発生区間を教師データとして学習させるので、精度の高い学習モデルを構築させることができる。
【0035】
記憶部13は、入力データ取得部11によって取得された地域Aの地形情報及び気象情報と、絶縁部材の位置情報及び絶縁性能情報と、電力系統の零相電圧情報を互いに紐づけられた1組のデータ群として記憶する。そして、記憶部13は、1組のデータ群である入力データと、該入力データに対する地域A内における停電の発生区間であるラベルを互いに紐づけて1組の教師データとして記憶する。また、記憶部13は、学習モデル構築部14が構築した学習モデルも記憶する。
【0036】
学習モデル構築部14は、記憶部13に記憶された入力データと、ラベルとの組を教師データとして教師あり学習を行うことにより、絶縁部材への塩分の付着に起因する停電の発生区間を予測するための学習モデルを構築する。そして、学習モデル構築部14は、構築した学習モデルを停電発生区間予測装置2に送信する。
【0037】
学習モデル構築部14は、例えば、サポート・ベクター・マシン(Support Vector Machine、以下SVMともいう)を用いて実現することが可能である。
【0038】
停電発生区間予測装置2について
図3を参照しながら説明する。
図3は、停電発生区間予測装置2の機能ブロック図である。停電発生区間予測装置2は、制御部20と、記憶部24と、通信部25と、表示部26と、を備える。
【0039】
制御部20は、停電発生区間予測装置2の全体を制御する部分であり、各種プログラムを、ROM、RAM、フラッシュメモリ又はハードディスク(HDD)等の記憶領域から適宜読み出して実行することにより、本実施形態における各種機能を実現している。制御部20は、CPUであってよい。制御部20は、予測用データ取得部21と、停電発生区間予測部22と、出力部23と、を備える。
【0040】
予測用データ取得部21は、停電発生区間予測部22が停電の発生区間を予測するための予測用データを取得する。予測用データ取得部21は、地形情報取得部211と、位置情報取得部212と、絶縁性能情報取得部213と、気象情報取得部214と、零相電圧情報取得部215を有する。
【0041】
地形情報取得部211は、地域Aの地形情報を取得する。地域Aの地形情報は、機械学習した際に用いた教師データに含まれる情報であってもよく、該教師データに含まれる情報とは別個に取得される現時点での最新の地形情報であってもよい。なお、現時点とは、ユーザが地域Aの停電の発生区間の予測のための作業を開始する時点のことをいう。
【0042】
位置情報取得部212は、地域Aにおける複数の絶縁部材のそれぞれの位置情報を取得する。位置情報は、機械学習した際に用いた教師データに含まれる情報であってもよく、該教師データに含まれる情報とは別個に取得される現時点での最新の位置情報であってもよい。位置情報取得部212は、例えば、電力系統を管理する管理システム等から取得してもよい。
【0043】
絶縁性能情報取得部213は、地域Aにおける複数の絶縁部材のそれぞれの絶縁性能を示す情報を取得する。絶縁性能情報は、機械学習した際に用いた教師データに含まれる情報であってもよく、該教師データに含まれる情報とは別個に取得される現時点での最新の絶縁性能情報であってもよい。絶縁性能情報取得部213は、例えば、電力系統の管理システム等から取得してもよい。
【0044】
気象情報取得部214は、機械学習した際に用いた教師データに含まれる気象情報とは別個に、過去の所定の時点から現時点までの地域Aの気象情報を取得する。過去の所定の時点から現時点までの期間は、特に限定されない。例えば、1週間未満であっても、1週間以上であっても、1ヵ月以上であってもよい。気象情報取得部214は、例えば、気象観測所の発表値や気圧、風速、風向、気温、降雨量、日照量等を測定する測定機器から得られる値を気象情報として取得してもよい。
【0045】
零相電圧情報取得部215は、機械学習した際に用いた教師データに含まれる零相電圧情報とは別個に、過去の時点から現時点までの地域Aの電力系統の零相電圧情報を取得する。零相電圧情報取得部215は、例えば、電力系統の管理システム等で常時測定される零相電圧の測定値を零相電圧情報として取得してもよい。
【0046】
停電発生区間予測部22は、予測用データ取得部21によって取得された予測用データと学習モデルに基づいて、地域A内の電力系統の絶縁部材への塩分の付着に起因する停電の発生区間を予測する。
【0047】
出力部23は、停電発生区間予測部22によって予測された地域Aの停電の発生区間を表示部26に出力する。
【0048】
記憶部24は、機械学習装置1から取得した学習モデルを記憶する。また、記憶部24は、予測用データ取得部21によって取得された地形情報と、位置情報と、絶縁性能情報と、気象情報と、零相電圧情報を1組の入力データとし、該入力データに対して予測された停電の発生区間をラベルとして記憶してもよい。
【0049】
通信部25は、機械学習装置1との間でデータを送受信する。例えば、停電発生区間予測システム100は、機械学習装置1から停電発生区間予測装置2に通信部25を介して学習モデル構築部14によって構築された学習モデルを送信できる。反対に停電発生区間予測システム100は、停電発生区間予測装置2から機械学習装置1に通信部25を介して予測用データ取得部21によって取得された予測用データ群と、停電発生区間予測部22によって予測された新たに発生する停電の発生区間を送信できる。
【0050】
表示部26は、制御部20の出力部23から出力された地域Aにおける停電の発生区間の予測結果を表示するモニタである。
【0051】
次に、本実施形態に係る停電発生区間予測システム100における機械学習時の動作について説明する。
図5は、この機械学習時の機械学習装置1の動作を示すフローチャートである。
【0052】
ステップS11において、機械学習装置1の入力データ取得部11は、地域Aの地形情報と、地域A内の電力系統の複数の絶縁部材のそれぞれの位置情報及び特性情報と、基準時よりも過去から基準時までの地域Aの気象情報と、基準時よりも過去から基準時までの地域A内の電力系統の零相電圧情報を含む1組のデータ群を入力データとして取得する。
【0053】
ステップS12において、機械学習装置1のラベル取得部12は、基準時から所定期間経過後の地域Aにおける地域Aにおける停電の発生区間をラベルとして取得する。
【0054】
ステップS13において、機械学習装置1の学習モデル構築部14は、入力データとラベルとの組を教師データとして受け付ける。
【0055】
ステップS14において、機械学習装置1の学習モデル構築部14は、この教師データを用いて機械学習を実行する。
【0056】
ステップS15において、学習モデル構築部14は、機械学習を終了するか機械学習を繰り返すかを判定する。学習モデル構築部14は、機械学習を繰り返すと判定した場合(ステップS15でNo)、処理をステップS11に戻す。そして、機械学習装置1は同じ動作を繰り返す。一方、学習モデル構築部14は、機械学習を終了すると判定した場合(ステップS15でYes)、処理をステップS16に進める。なお、機械学習を終了させる条件は任意に定めることができる。例えば、予め定められた回数だけ機械学習を繰り返した場合に、機械学習を終了させるようにしてもよい。
【0057】
ステップS16において、機械学習装置1は、その時点までの機械学習により構築した学習モデルを、ネットワーク等を介して停電発生区間予測装置2に送信する。
【0058】
また、機械学習装置1の記憶部13は、この学習モデルを記憶する。これにより、停電発生区間予測装置2から学習モデルを要求された場合に、その停電発生区間予測装置2に学習モデルを送信することができる。また、新たな教師データを取得した場合に、学習モデルに対して更なる機械学習を行うこともできる。
【0059】
次に、停電発生区間予測装置2による地域Aにおける停電の発生区間を予測する処理の一例について
図6を参照しながら説明する。
図6は、停電発生区間予測装置2による地域Aにおける停電の発生区間の予測の処理の流れを示すフローチャートである。
【0060】
ステップS21において、予測用データ取得部21が地域Aの地形情報と、地域A内の複数の絶縁部材のそれぞれの位置情報及び絶縁性能情報と、地域Aの気象情報と、零相電圧情報の予測用データを取得する。
【0061】
ステップS22において、停電発生区間予測部22は、ステップS21で取得された地形情報、位置情報、絶縁性能情報、気象情報、零相電圧情報を含む1組のデータと、機械学習装置1から送信された学習モデルとに基づいて停電の発生区間を予測する。
【0062】
ステップS23において、出力部23は、ステップS22で予測された停電の発生区間を表示部26に出力する。この結果、停電発生区間予測部22に予測された地域Aにおける停電の発生区間が表示部26に表示される。
【0063】
以上説明した本実施形態に係る停電発生区間予測システム100の機械学習装置1又は停電発生区間予測装置2によれば、以下のような効果を奏する。
【0064】
本実施形態に係る機械学習装置1は、地域A内の電力系統の電線と地面を電気的に絶縁する複数の絶縁部材のそれぞれの位置を示す位置情報と、地域Aの地形情報と、基準時よりも過去の時点から基準時までの地域Aの気象情報と、基準時よりも過去の時点から基準時までの電力系統の零相電圧情報を含むデータ群を入力データとして取得する入力データ取得部11と、基準時から所定期間経過後の地域Aにおける絶縁部材への塩分の付着による停電の発生区間をラベルとして取得するラベル取得部12と、入力データとラベルとの組を教師データとして教師あり学習を行うことにより、停電の発生区間を予測するための学習モデルを構築する学習モデル構築部14と、を備える。
【0065】
これにより、地域A内の電力系統の絶縁部材の位置情報、地域Aの地形情報及び気象情報とともに、微地絡の発生によって変化する零相電圧が反映されるので、絶縁部材への塩分の付着に起因する停電の発生区間をより高い精度で効率的に予測するための学習モデルを構築できる。
【0066】
また本実施形態に係る機械学習装置1において、入力データ取得部11は、複数の絶縁部材のそれぞれの絶縁性能情報を入力データとして更に取得する。
【0067】
これにより、絶縁部材毎の塩分の付着に対する絶縁性能を考慮して停電の発生区間を予測できるより予測精度の高い学習モデルを構築できる。
【0068】
また本実施形態に係る停電発生区間予測装置2は、機械学習装置1で構築した学習モデルを用いた停電発生区間予測装置2であって、位置情報と、地形情報と、過去の所定の時点から現時点までの地域Aの気象情報と、過去の所定の時点から現時点までの地域A内の電力系統の零相電圧情報を予測用データ群として取得する予測用データ取得部21と、予測用データ群と学習モデルとに基づいて、現時点から所定期間経過後に新たに発生する停電の発生区間を予測する停電発生区間予測部22と、を備える。
【0069】
これにより、本実施形態の学習モデルに予測対象地域の予測用データ群を入力することで、停電の発生区間をより高い精度で予測できる。よって、停電発生区間予測装置2によって予測された停電の発生区間の情報を用いることで、該発生区間に存在する洗浄が必要な絶縁部材をより正確に特定でき、停電の防止や復旧作業をより効率的に行うことができる。
【0070】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に制限されるものではなく適宜変更が可能である。
【0071】
上記実施形態では、機械学習装置1は地域Aの地形情報、地域Aの電力系統の絶縁部材のそれぞれの位置情報及び絶縁性能情報、地域Aの気象情報、零相電圧情報を入力データとして取得して教師あり学習を行っていたが、入力データとして絶縁性能情報を取得せずに教師あり学習を行う構成であってもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 機械学習装置
11 入力データ取得部
12 ラベル取得部
14 学習モデル構築部
A 地域