(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185949
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】回転電機、巻上機およびエレベータ
(51)【国際特許分類】
H02K 5/18 20060101AFI20221208BHJP
H02K 9/22 20060101ALI20221208BHJP
H02K 5/24 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
H02K5/18
H02K9/22 Z
H02K5/24 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093894
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】浅海 勇介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 暁史
(72)【発明者】
【氏名】床井 博洋
(72)【発明者】
【氏名】三好 努
(72)【発明者】
【氏名】税所 亮平
(72)【発明者】
【氏名】于 海于
【テーマコード(参考)】
5H605
5H609
【Fターム(参考)】
5H605AA01
5H605AA04
5H605AA05
5H605BB05
5H605CC01
5H605DD03
5H605DD12
5H605EA16
5H605GG04
5H609BB03
5H609PP01
5H609PP05
5H609QQ23
5H609RR63
(57)【要約】
【課題】
軽量化と振動・騒音低減を両立した構造の回転電機およびエレベータ用の巻上機を提供する。
【解決手段】
内周側に固定子を嵌装した筒状のフレームと、該フレームの外周面上に並置形成された複数のフィンとを備えた回転電機であって、前記回転電機は、前記回転電機の回転軸方向90が地面と略水平方向になるよう設けられ、前記フィン12は、前記回転電機の回転軸方向90に対して垂直方向に延在し、前記フレームの側面に並置形成されたことを特徴とするものである。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周側に固定子を嵌装した筒状のフレームと、該フレームの外周面上に並置形成された複数のフィンとを備えた回転電機であって、
前記回転電機は、前記回転電機の回転軸方向が地面と略水平方向になるよう設けられ、
前記フィンは、前記回転電機の回転軸方向に対して垂直方向に延在し、前記フレームの側面に並置形成されたことを特徴とする回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機において、
前記フレームの下面および上面には、前記フィンが設けられていないことを特徴とする回転電機。
【請求項3】
請求項1に記載の回転電機において、
前記フレームには、両側面に、据え付けるための脚部を備え、
前記フレームの側面と前記脚部に前記フィンが並置形成されていることを特徴とする回転電気。
【請求項4】
請求項1に記載の回転電機において、
前記フィンの先端部には、回転軸方向に突出した鍔部が設けられていることを特徴とする回転電機。
【請求項5】
請求項1に記載の回転電機において、
前記フレームと前記フィンとが別パーツ化され、前記フィンが前記フレームの側面に取り付けられることを特徴とする回転電気。
【請求項6】
請求項5に記載の回転電機において、
前記フレームの側面には複数個の凹部を有し、前記フィンを前記凹部に挿入することで前記フィンが取り付けられることを特徴とする回転電機。
【請求項7】
請求項5に記載の回転電機において、
複数個の前記フィンを、短手方向端部に設けられた平板を介して繋いだことを特徴とする回転電機。
【請求項8】
請求項5に記載の回転電機において、
回転電機径方向で向かい合う2つの前記フィン同士を、長手方向端部において円弧状部品を介して繋いだことを特徴とする回転電機。
【請求項9】
請求項8に記載の回転電機において、
回転電機径方向で向かい合う2つの前記フィン同士を繋いだ複数の円弧状部品を、回転軸方向に延伸した複数個の梁で繋いだことを特徴とする回転電機。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載の回転電機と、前記回転電機のシャフトに取り付けた駆動シーブを備える巻上機。
【請求項11】
請求項10に記載の巻上機と、かご室と、前記巻上機の運転により前記かご室を上下に移動させるロープとを備えるエレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ等の回転電機に関し、特に、軽量化が必要となるエレベータ用の巻上機を構成する回転電機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベータ駆動巻上機用のモータは、既存設備へのリプレース需要が多く、持ち運びの観点で軽量化が望まれている。
【0003】
特許文献1には、「内周側に固定子コアを嵌装したケーシングのフレームに対し、その外周面上に軸方向に延在する多数条の放熱フィンを並置形成し、アウターファン,ファンカバーを経て軸方向に送風される図示矢印の冷却風を前記放熱フィンの相互間に画成された通風路に通風して冷却するようにした風冷方式の回転電気において、前記放熱フィンをフレームと一体に押出,ないし引抜成形するものとし、かつ各条の放熱フィンの先端側にはその長手に沿ってT字形に張り出す庇状の屈曲部を形成して、冷却風が通風経路の途中から周囲外方に逃げるのを抑制する。」(要約参照)と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
モータの軽量化のためには、モータ重量の最大50%程度を占めるフレーム部の軽量化が重要である。例えば、特許文献1に記載されるようなモータについて、軽量化のためにフレームの円筒形状部を薄肉化すると、モータの径方向の電磁加振力により振動と騒音が発生するようになる。このようなモータをエレベータに用いた場合、エレベータかご内の振動・騒音の要因となり、利用者の快適性を損なうことになる。また、このモータについては、フレーム外周部に回転軸水平方向に延伸したフィンを設けることで放熱面積を増やして、モータの放熱性を高めている。このフィンを削除して、軽量化を図ることは、モータ温度上昇の要因となり、効率低下、磁石減磁が発生するため、困難である。エレベータ駆動巻上機用のモータには、放熱性を損なわずに軽量化と振動・騒音低減を両立した構造が求められる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、軽量化と振動・騒音低減を両立した構造の回転電機およびエレベータ用の巻上機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための、本発明の「回転電機」の一例を挙げるならば、
内周側に固定子を嵌装した筒状のフレームと、該フレームの外周面上に並置形成された複数のフィンとを備えた回転電機であって、前記回転電機は、前記回転電機の回転軸方向が地面と略水平方向になるよう設けられ、前記フィンは、前記回転電機の回転軸方向に対して垂直方向に延在し、前記フレームの側面に並置形成されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、薄肉円筒形状のフレーム側面に、直線形状フィンを回転軸方向に対して垂直方向に設け、モータの径方向の電磁加振力に対する剛性を高めることで、放熱性を損なわずに軽量化と振動・騒音低減を両立した構造の回転電機及びそれを用いたエレベータ用の巻上機を提供することができる。
【0009】
上記した以外の課題、構成及び効果は以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本発明の優位性を示すための、別形態の回転電機の分解斜視図である。
【
図2A】本発明の優位性を示すための、他の別形態の回転電機の組立斜視図である。
【
図3A】本発明の実施例1に係る回転電機の斜視図である。
【
図4】本発明の実施例2に係る回転電機の組立途中の斜視図である。
【
図5A】本発明の実施例3に係る回転電機の組立途中の斜視図である。
【
図5B】本発明の実施例3に係る回転電機の組立後の斜視図である。
【
図6A】本発明の実施例4に係る回転電機の組立途中の斜視図である。
【
図6B】本発明の実施例4に係る回転電機の組立後の斜視図である。
【
図7A】本発明の実施例5に係る回転電機の組立途中の斜視図である。
【
図7B】本発明の実施例5に係る回転電機の組立後の斜視図である。
【
図8】本発明の実施例6に係る巻上機の斜視図である。
【
図9】本発明の実施例7に係るエレベータの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施例を説明する前に、従来の回転電機を説明する。
図1A~1Dに、本発明の優位性を示すための、従来型構造の内転型回転電機を示す。
図1Aは従来型構造の内転型回転電機100の分解斜視図であり、
図1Bは従来型構造の内転型回転電機100の組立斜視図である。内転型回転電機100は、固定子フレーム8の中に、回転子3と固定子6を収めた後、両端部をエンドブラケット9で固定することによって、組み立てられる。
図1Cは内転型回転電機100の中心部におけるX-Y断面図である。前記内転型回転電機100は、回転子コア1と永久磁石2により構成された回転子3と、前記回転子3の外径側に所定の間隙を設けて配置され、固定子コア4とコイル5により構成された固定子6を備える。前記回転子3は回転軸90を中心軸として回転可能に配置されている。前記コイル5は、スロット7に挿入され、集中巻または分布巻により前記固定子コア4に取り付けられる。固定子コア4の外側には固定子フレーム8がある。固定子フレーム8は、円筒部11と、地面等に据え付けるための脚10と、円筒部11及び脚10の側面に備えられた複数個のフィン12とで構成されている。フィン12は回転軸に沿って水平方向に延伸している。
図1Dは内転型回転電機100の中心部におけるX-Z断面図である。回転電機100の駆動時には、回転子3と固定子6の間に径方向の電磁加振力70が発生し、振動・騒音の要因となるが、固定子フレーム8の円筒部11が厚肉であることで、振動・騒音を抑制することができる。しかしながら、この円筒部に厚みがあることで、重量が重くなっている。以下で述べる本発明の実施例1~5についても、固定子フレーム8、フィン12、脚10以外の部位の形状は、
図1A~1Dと同じである。
【0012】
図2A~2Cに、本発明の優位性を示すための、従来型構造の内転型回転電機の別形態を示す。
図2Aは従来型構造の内転型回転電機100の斜視図であり、
図2Bは内転型回転電機100の中心部におけるX-Y断面図である。
図1と比べて、
図2の異なる点は、固定子フレーム8の円筒部11が薄肉にして、軽量化されていることである。
図2Cは内転型回転電機100の中心部におけるX-Z断面図である。回転電機100の駆動時には、回転子3と固定子6の間に径方向の電磁加振力70が発生したとき、固定子フレーム8の円筒部11が薄いことで剛性が低い。これによりX方向、すなわち水平方向に変形することが、振動・騒音の要因となる。なお、径方向の電磁加振力70は、垂直方向であるY方向にも働くが、Y方向は片側の回転電機下部が地面等と接していることで振動の節点が拘束されており、Y方向の変形は小さく、振動・騒音への影響は小さい。
【0013】
本発明では、軽量化と振動・騒音低減を両立した構造の回転電機を提供する。
【0014】
以下、本発明の実施例を、図面を用いて説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし主旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
なお、実施例を説明するための各図において、同一の構成要素には同一の名称、符号を付して、その繰り返しの説明を省略する。
【0015】
本発明は内転型回転電機を対象としている。コイルの巻き方は集中巻でも分布巻でも良い。回転子は磁石を回転子コア表面に貼り付けることで形成した表面磁石型でも良いし、回転子コアが複数の磁石挿入孔を有し、前記磁石挿入孔に磁石を挿入することで形成した埋込磁石型の回転子であっても良い。また、磁石を用いない誘導モータや、シンクロナスリラクタンスモータ、スイッチドリラクタンスモータでも良い。
【実施例0016】
図3A~3Cに、本発明の実施例1の内転型回転電機を示す。
図3Aは実施例1の内転型回転電機100の組立斜視図であり、
図3Bは内転型回転電機100の中心部におけるX-Y断面図である。
図3Cは内転型回転電機100の中心部におけるX-Z断面図である。
図1及び
図2に示す従来型構造との違いは、固定子フレーム8の円筒部11の側面に複数個のフィン12を有しており、フィン12は回転軸90に対して垂直方向に延伸していることにある。固定子フレーム8には、両側面から下方に向けて脚10が設けられており、固定子フレーム8の側面から脚10にフィン12が配置されている。そして、固定子フレーム8の円筒部11の上面や下面には、フィン12は設けられていない。フィン12の先端には、回転軸方向に延伸する鍔14が設けられている。なお、符号13は回転軸90のシャフトである。
【0017】
実施例1の回転電機では、フレーム8の円筒部11を薄肉にして軽量化を図りつつ、円筒部11の側面に回転軸90に対して垂直方向に延伸した複数のフィン12が設けられている。これにより振動の節点が拘束されて、径方向の電磁加振力70に対して剛性が高くなっており、X方向、すなわち水平方向の変形が小さくなり、振動・騒音を抑制することができる。前述の通り、径方向の電磁加振力70は、垂直方向であるY方向にも働くが、Y方向は片側の回転電機下部が地面等と接していることで振動の節点が拘束されており、Y方向の変形は小さく、振動・騒音への影響は小さい。よって、フィン12を設けるのは円筒部11の側面のみで良い。
【0018】
また、フィン12の先端に回転軸方向に延伸した鍔14を設けることで、より剛性が高くなり、さらに振動・騒音を抑制することができる。鍔14を設けることで固定子フレーム8の表面積が大きくなるため、放熱性の向上も期待できる。鍔14は、剛性を高める形状であれば、どんな形状でもよく、
図3Cではフィン12と鍔14の断面形状がT字状となっているが、L字状やY字状などの形状でもよい。
フィン12を別パーツ化することにより、固定子フレーム8の量産に用いる金型形状を単純化することができ、量産性の向上につながる。また、フィン12が別パーツ化されていることによりフィン12の形状の自由度が向上し、より剛性が高く、放熱性が高い構造などとすることが可能となる。また、固定子フレーム8とフィン12とが別パーツ化されていることで、それぞれ別の材料とする自由度が向上する。例えば、固定子フレーム8には剛性が低いが軽い材料を用い、フィン12には剛性が高く重い材料を用いることで、軽量化と振動・騒音の低減の両立を図ることが考えられる。凹部15が設けられていることで、強固に固定することができ、位置決めも容易となる。これに限らず、凹部15を設けずに、圧入や接着によってフィン12を固定してもよい。