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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185957
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】カメラカバー装置
(51)【国際特許分類】
   G03B 17/02 20210101AFI20221208BHJP
   G03B 17/56 20210101ALI20221208BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20221208BHJP
   G03B 11/04 20210101ALI20221208BHJP
【FI】
G03B17/02
G03B17/56 H
G03B15/00 T
G03B15/00 S
G03B11/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093906
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】302048153
【氏名又は名称】株式会社テー・シー・アイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福岡 一也
【テーマコード(参考)】
2H083
2H100
2H105
【Fターム(参考)】
2H083CC01
2H083CC23
2H100AA61
2H100CC02
2H100CC04
2H100EE06
2H105DD06
2H105EE05
2H105EE11
(57)【要約】
【課題】エアの流れを整えることで、周囲のミストや粉塵を巻き込まずに引き込むことがなく、それらの侵入を防いでカメラレンズ側への付着を抑制することができるカメラカバー装置を提供することを目的とする。
【解決手段】画像を撮像するカメラの前面に設けられ、前記カメラのレンズと対向する位置に開口する開口部を開閉可能な蓋部が設けられた気密部と、前記気密部に設けられ、前記気密部を前記レンズの中心軸側と外周側とで区切る気体透過性を有する筒状のフィルターと、前記気密部において、前記フィルターの前記外周側の閉じた空間にエアを供給する供給部と、を備えた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を撮像するカメラの前面に設けられ、前記カメラのレンズと対向する位置に開口する開口部を開閉可能な蓋部が設けられた気密部と、
前記気密部に設けられ、前記気密部を前記レンズの中心軸側と外周側とで区切る気体透過性を有する筒状のフィルターと、
前記気密部において、前記フィルターの前記外周側の閉じた空間にエアを供給する供給部と、
を備えたカメラカバー装置。
【請求項2】
前記フィルターは、多孔質体である請求項1に記載のカメラカバー装置。
【請求項3】
前記蓋部を開閉方向に駆動する蓋駆動機構が設けられ、
前記蓋駆動機構は、外部から供給されるエアによって伸縮駆動されるエアシリンダーを備えている請求項1又は請求項2に記載のカメラカバー装置。
【請求項4】
前記フィルターは、前記気密部の前面側の長さよりも短く形成されている請求項1、2又は3に記載のカメラカバー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカメラレンズを覆うカメラカバー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工場の製造工程において、製造工程を監視するために、通常のカメラや、赤外線カメラ、いわゆるサーモグラフィカメラ等を用いて、製造工程を監視するシステムが用いられている。
【0003】
工場の製造工程、例えば、金型に溶融した金属又は樹脂等を圧入することにより、高い寸法精度の鋳物等を短時間に大量生産する金型鋳造法の現場では、金型が開いた僅かなタイミングで、金型表面の温度分布を赤外線カメラ(サーモグラフィカメラ)により非接触で測定可能な金型温度測定システム等が導入されている。この金型温度測定システムでは、赤外線カメラ(サーモグラフィカメラ)により測定された温度分布を、良好な過去のデータと比較し、不良品の判定を行うことができる。また、それらの温度分布データを制御装置にフィードバックすることにより、冷却水や、金型の内側に塗布することで材料と型とが付着するのを抑える働きを持つ離型剤等の制御を可能とすることができる。
【0004】
そのような金型鋳造法の現場は、水や油等の空気中に浮遊する微小な液体の微粒子(飛沫)である多数のミストや、金型の開閉作動に伴う粉塵が舞う高温、多湿の環境で、カメラ等の精密機械にとって過酷な作動環境であり、防塵対策、ミスト対策が必要となってくる。特にカメラレンズに粉塵やミストが付着すると、撮影性能が低下することになるため、当該カメラを粉塵やミストから避けるためのカメラカバー装置等の機能性向上が重要なものとなる。
【0005】
従来技術(特許文献1)には、カメラレンズとカバーとの間に形成される閉空間にエアを供給することで、閉空間の圧力を外部の圧力よりも高くするパージ機構を備えるカメラカバー装置が開示されている。
また、従来技術(特許文献2)には、カメラレンズ前面に透明な仕切り板を設けたカメラハウジングと、仕切り板の前方に周囲から仕切り板表面に沿って且つ中心に向かうように構成されたエアと、その仕切り板に向かってくる粉塵等を吹き飛ばすように構成されたエアとを設けたものが開示されている。
【0006】
しかしながら、上述したような技術においては、エアの供給量が少ないと、粉塵等の侵入を抑制するパージ機構の効果が少なく、また、粉塵等を除去する効果が小さい。
一方、それらのエアの供給量を増加させて、エアの供給量や流速を大きくすると、当該エアにより当該装置の周囲の粉塵や、ミストをカメラレンズ側に巻き込んでしまい、却って、粉塵の侵入やミストの付着を促してしまうという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-3135号公報
【特許文献2】特開2001-108880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述したような実情に鑑み、エアの流れを整えることで、周囲のミストや粉塵のカメラレンズへの付着を抑制することができるカメラカバー装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、請求項に記載の発明は以下のような構成を有する。
【0010】
(第1の発明)
第1の発明に係るカメラカバー装置は、画像を撮像するカメラの前面に設けられ、前記カメラのレンズと対向する位置に開口する開口部を開閉可能な蓋部が設けられた気密部と、
前記気密部に設けられ、前記気密部を前記レンズの中心軸側と外周側とで区切る気体透過性を有する筒状のフィルターと、
前記気密部において、前記フィルターの前記外周側の閉じた空間にエアを供給する供給部と、
を備えた。
【0011】
(作用効果)
第1の発明に係るカメラカバー装置によれば、供給部が気密部内の閉じた空間にエアを供給することで、気密部の内部の圧力を気密部の外部の圧力よりも高くすることができる(いわゆるパージ機構)。このため、気密部の内部と、気密部の外部との間に隙間が存在していても、気密部の内部から外部に向かってエアが漏れることになり、気密部の外部から内部に向かって、外部の粉塵やミストの内部への侵入を抑制することができる。
さらに、供給部からのエアが、外周側から中心軸側へ移動する際、両者の間に介在する筒状のフィルターを必ず通過する。この供給部からのエアは、フィルターの筒状の周囲の全体から、その筒状内部の中心軸側へ入り込む。さらに、蓋部を開放すると、開口部から正面側にエアが放出される。これにより、フィルター内部のエア圧力を均等に高めることができ、エアの流れを均一なものに整えることができる。このため、フィルターの中心軸側では前面側の開口部側への整えられたエアの流れを形成することができ、部分的なエアの急な流れが発生することによる気密部の外部の粉塵や、ミストの巻き込みが発生せずに、粉塵やミストを巻き込むこと等を抑制することが可能となる。
結果として、周囲のミストや粉塵のカメラレンズへの付着を抑制することが可能となる。
【0012】
(第2の発明)
第2の発明に係るカメラカバー装置は、前記フィルターは、多孔質体である。
【0013】
(作用効果)
第2の発明に係るカメラカバー装置によれば、多孔質体であるため、洗浄等が容易で繰り返し何度も使用することができる。
さらに、不純物等で目詰まりし、通気性等の性能が低下した場合、溶剤、酸による逆流洗浄、超音波洗浄等により、半永久的に使用することができる。
【0014】
(第3の発明)
第3の発明に係るカメラカバー装置は、前記蓋部を開閉方向に駆動する蓋駆動機構が設けられ、
前記蓋駆動機構は、外部から供給されるエアによって伸縮駆動されるエアシリンダーを備えている。
【0015】
(作用効果)
第3の発明に係るカメラカバー装置によれば、気密部への粉塵、ミストの侵入抑制(いわゆるパージ機構)と、蓋駆動機構とのいずれもエアを用いているので、蓋駆動機構を電気モータや油圧モータ等により作動させるような場合と比較して、別途、配線や配管等を設ける必要がなく、装置全体をシンプルで単純なものにすることができる。
【0016】
(第4の発明)
第4の発明に係るカメラカバー装置は、前記フィルターは、前記気密部の前面側の長さよりも短く形成されている。
【0017】
(作用効果)
第4の発明に係るカメラカバー装置によれば、広角撮影をする場合に、フィルターの前方側がカットされていることで、広角撮影の邪魔にならず、良好な広角撮影が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る第1の実施形態であって、エアパージフードの縦断面図である。
図2】本発明に係る第1の実施形態であって、カメラカバー装置の外観正面図である。
図3】本発明に係る第1の実施形態であって、蓋部を閉じた状態のエアパージフードの水平断面図である。
図4】本発明に係る第1の実施形態であって、蓋部を閉じた状態のカメラカバー装置の外観斜視図である。
図5】本発明に係る第1の実施形態であって、蓋部を開いた状態のカメラカバー装置の外観斜視図である。
図6】本発明に係る第1の実施形態であって、蓋部を閉じた状態のカメラカバー装置の外観底面図である。
図7】本発明に係る第1の実施形態であって、蓋部を開いた状態のカメラカバー装置の外観底面図である。
図8】本発明に係る第1の実施の形態であって、(A)は、蓋部を閉じた状態の気密部におけるフィルターと、蓋部との関係を示す概略斜視図及び概略断面図、(B)は、蓋部を開いた状態の気密部におけるフィルターと、蓋部との関係及びエアの流れを示す概略斜視図及び概略断面図である。
図9】本発明に係る第2の実施の形態であって、蓋部を閉じた状態のエアパージフードの水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0020】
(第1の実施の形態)
図1図8は、本発明に係る第1の実施形態であって、図1は、エアパージフードの縦断面図、図2は、カメラカバー装置の外観正面図、図3は、蓋部を閉じた状態のエアパージフードの水平断面図、図4は、蓋部を閉じた状態のカメラカバー装置の外観斜視図、図5は、蓋部を開いた状態のカメラカバー装置の外観斜視図、図6は、蓋部を閉じた状態のカメラカバー装置の外観底面図、図7は、蓋部を開いた状態のカメラカバー装置の外観底面図、図8は、(A)は、蓋部を閉じた状態の気密部におけるフィルターと、蓋部との関係を示す概略斜視図及び概略断面図、(B)は、蓋部を開いた状態の気密部におけるフィルターと、蓋部との関係及びエアの流れを示す概略斜視図及び概略断面図である。
【0021】
本実施の形態に係るカメラカバー装置10は、金型に溶融した樹脂を圧入することにより、高い寸法精度の樹脂成形品を短時間に大量生産する金型成型法を用いる現場において、金型が開いた僅かなタイミングで、金型表面の温度分布を、物体から放射される赤外線を可視可するための後述する赤外線カメラ(サーモグラフィカメラ)13(図3参照)により非接触で測定可能な金型温度測定システムに用いられるものである。もちろん、用いられる箇所は、上述したものに限定されるものではなく、他の粉塵やミストが発生する雰囲気下で使用される他の赤外線カメラを用いる箇所にも使用可能なものであり、さらに、内部に収納されるカメラは、赤外線カメラに限定されるものではなく、通常の可視光カメラが用いられる箇所で粉塵やミストが多い環境下で用いても良いものである。
【0022】
本実施の形態に係るカメラカバー装置10は、図4図7に示すように、直方体箱状であって、内部に赤外線カメラ13(図3参照)を収納可能なカメラ収納部11と、このカメラ収納部11の正面側(収納されたカメラのカメラレンズ側)に配置されたエアパージフード20とを備えている。
【0023】
前記カメラ収納部11は、直方体箱状の内部に、赤外線カメラ13が収納され固定されている。カメラ収納部11の赤外線カメラ13のカメラレンズが配置されている正面側は、正面側を撮影できるように開口する正面開口部11a(図3参照)が形成されている。この正面開口部11aの外側に当該正面開口部11aを覆うように四角筒状のエアパージフード20が設けてある。
この赤外線カメラ13の正面側には、カメラレンズを防護するための透明樹脂からなる透明板11bが形成されている。そして、この赤外線カメラ13の正面側の透明板11bは、図3に示すように、赤外線カメラ13と共にカメラ収納部11の正面開口部11aに密着して取り付けられている。
【0024】
前記エアパージフード20のカメラ収納部11側には、カメラ収納部11の前記正面開口部11aの前面に整合すると共に開口する背面側開口部12(図3参照)が設けてある。
上述した透明板11bの正面側に背面側開口部12が整合するように形成されている。上述したように、赤外線カメラ13の透明板11bが正面開口部11aに密着して形成されていることで、カメラ収納部11の正面開口部11aからカメラ収納部11内部に粉塵等が入り込むことが抑制される。
カメラ収納部11内部に収納された赤外線カメラ13は、透明板11b、エアパージフード20の背面側開口部12、開口部22を介して、カメラカバー装置10の正面側を撮影可能に形成されている。
【0025】
本実施の形態における赤外線カメラ13での最大撮影角度は、図3の一点鎖線間の角度Aになる。
すなわち、本実施の形態に係る赤外線カメラ13の撮影視野範囲は、上述した図3に示す最大撮影角度Aの撮影視野範囲となる。
さらに、本実施の形態では、赤外線カメラ13の上述した最大撮影角度A内の撮影視野範囲内では、蓋部24を開放した状態において、赤外線カメラ13の正面側の透明板11bと、開口部22との間は、障害物等が何も無い、連通する開放された空間になっている。蓋部24を開いた状態では、上述した最大撮影角度Aの撮影視野範囲には、赤外線が遮断されたり、反射されるような障害物は何も無い。すなわち、赤外線カメラ13の正面側には外部に向かって連通する開放空間が形成されているだけである。
これにより、赤外線が反射される等によって、赤外線カメラ13の撮影視野範囲内に反射した赤外線が赤外線カメラ13に取り込まれてしまうことがない。また、赤外線がそのような障害物により遮断されてしまうことがない。
結果として、本実施の形態に係るカメラカバー装置10は、赤外線カメラ13での撮影に障害物による支障が発生することを抑制することができる。
また、エアパージフード20の背面側開口部12が、カメラ収納部11の正面側に密着されて固定されることにより、エアパージフード20の背面側開口部12から周囲の粉塵、ミスト等がエアパージフード20の内部に入り込まないように形成されている。
【0026】
なお、本実施の形態に係るカメラカバー装置10は、赤外線カメラ13を内部に収納するカメラ収納部11を有し、このカメラ収納部11の正面側にエアパージフード20が取り付けてあるが、必ずしもカメラ収納部11を有する当該構造に限定されるものではない。具体的には、例えば、カメラ収納部11を有さずに、赤外線カメラ13自体は、外部に露出した状態であって、赤外線カメラ13のカメラレンズ又は透明板11bの正面側にカメラレンズ又は透明板11bの正面側を覆うエアパージフード20だけを設けるような構造のものでもよい。
【0027】
前記エアパージフード20は、カメラ収納部11の正面側であって、カメラ収納部11の内部に収納されて画像を撮影するための赤外線カメラ13のカメラレンズの前面に設けられた気密部30を有している。
この気密部30は、図1に示すように、エアパージフード20の内部の円柱状の閉じられた空間を形成することができるものである。
【0028】
図2に示すように、この気密部30の前面側には、上述した赤外線カメラ13のレンズと対向すると共に円形状に開口する開口部22(図5参照)を開閉可能な円板状部分を有する蓋部24が設けられている。
なお、この蓋部24の背面側には、図3に示すように前後に開口する開口孔22aが、円板状の蓋部24の中央付近に90度間隔で4個(図5参照)形成されている。そして、この開口孔22aの正面側には、下面側において外部と連通する外部連通路22b(図3参照)が設けられている。この外部連通路22bは、下面側が開口することで外部と連通するような構造となっている。エアパージフード20内部の気密部30の圧力が外部と比べて著しく高くなった場合に、エアパージフード20内部のエアは、上述した開口孔22aから、外部連通路22bへ進み、当該外部連通路22bの下面から、下方側の外部へ放出される(図4の矢印参照。)。このように、気密部30内のエアの一部は、開口孔22a及び外部連通路22bを介して、外部へ放出可能としていることで、蓋部24を閉じた状態において、気密部30内のエアの圧力が著しく高まってしまうようなことを抑えることができる。
本実施の形態に係るカメラカバー装置10には、前記蓋部24を開閉方向に駆動する蓋駆動機構80が設けられている。
【0029】
この蓋駆動機構80は、図2図6及び図7に示すように、外部から供給されるエアによって伸縮駆動されるエアシリンダー82を備えている。このエアシリンダー82は、カメラカバー装置10の底面側に斜めに固定されている。このエアシリンダー82は、その内部に外部からのエアが第3供給口84a又は第4供給口84bを介して供給されるシリンダーチューブ84を有している。
【0030】
このシリンダーチューブ84の内部には、外部から第3供給口84a又は第4供給口84bを介して供給されるエアによって、当該シリンダーチューブ84内を移動可能なピストン(図示せず)が収納されている。そして、当該ピストンには、当該ピストンに接続され、ピストンの移動と共にシリンダーチューブ84内を移動可能であって、シリンダーチューブ84外へ突出して移動可能なピストンロッド86が設けられている。また、このピストンロッド86の先端側には、後述する軸レバー26の一端側と回転可能に軸支するためのロッド先端回転軸87が形成されている。このロッド先端回転軸87は、軸レバー26の一端側と、ピストンロッド86の先端側との交差角度が自由に変更できるように回動可能に両者を軸支しているものである。
【0031】
また、エアシリンダー82の他端側には、エアシリンダー82の他端側をカメラ収納部11に対して回動可能に軸支する支持軸83が形成されている。これにより、エアシリンダー82は、支持軸83を回転の中心として、水平面上を回動することが可能となる。
エアシリンダー82のピストンロッド86の先端側が後述する軸レバー26の先端側のロッド先端回転軸87に軸支された状態で、蓋回転軸25を回転の中心として、軸レバー26が回転する。その結果、ピストンロッド86の先端側が、支持軸83を回転の中心として、水平面上で回動可能となる。
【0032】
図6に示すように、ピストンロッド86をシリンダーチューブ84の外部に最大限突出させた状態において、蓋部24が開口部22を閉塞した状態に維持することができるように形成されている。
【0033】
また、上述した図6に示す状態から、図7に示すように、ピストンロッド86をシリンダーチューブ84の内部に最大限引き込んだ状態にすると、軸レバー26が蓋回転軸25を回転の中心として回転する。これにより、蓋部24が閉じた状態から最大開放角度である122度、回転して開口部22を開放することができるように形成されている。
【0034】
図2図4及び図5に示すように、前記蓋部24の正面から見て左端側には、蓋部24と一体に固定され、縦方向に中心軸を有する蓋回転軸25が設けられている。
さらに、図2図6及び図7に示すように、この蓋回転軸25の下端には、蓋回転軸25と一体に回転可能に固定され、斜め正面側に突出する細片状の軸レバー26が固定されている。
この軸レバー26の先端側には、上述したピストンロッド86の先端側が、上述したロッド先端回転軸87を介して、回動可能に軸支されている。ピストンロッド86の移動に伴い、ピストンロッド86の先端にロッド先端回転軸87を介して回動可能に軸支されている軸レバー26が、蓋回転軸25の中心軸を回転中心として、回動することで、蓋回転軸25の回転と共に、蓋回転軸25に固定されている蓋部24も、蓋回転軸25を回転の中心として回動可能に形成されているものである。
すなわち、ピストンロッド86が、外部からのシリンダーチューブ84内へのエア供給によりシリンダーチューブ84から突出状態又は引き込んだ状態と変化して伸縮することで、蓋部24を回動させることができ、開口部22の開放状態又は閉塞状態のいずれかを形成することができる。
【0035】
図1に示すように、このエアパージフード20の気密部30には、当該気密部30を上述した赤外線カメラ13のレンズの中心軸側と、外周側とで区切る気体透過性を有する円筒状のフィルター40が設けられている。
【0036】
このフィルター40は、多孔質体からなり、具体的には、金属球を焼結することで形成した金属多孔質体からなるものであり、焼結された金属球間の隙間から気体が透過可能に形成されている。
この金属球の材質は、具体的には、例えば、ブロンズ(CAC403)からなり、焼結体密度が5.0~6.5g/cm、空隙率25~43%のものが含まれる。
また、他の金属球の材質として、具体的には、例えば、ステンレス(SUS316L)からなり、焼結体密度が4.2~5.2g/cm、空隙率36~48%のものが含まれる。
【0037】
図1及び図3に示すように、円柱状の空間である気密部30の内部には、円筒状のフィルター40が両者の中心軸が同一となるように配置されている。これにより、円柱状の気密部30は、円筒状のフィルター40を介して、フィルター40の中心軸側の円柱状空間である中心軸側空間34と、フィルター40の外周側の円筒状空間である外周側空間32との二つの空間に分けられる。
【0038】
前記気密部30には、フィルター40の外周側の閉じた空間である外周側空間32にエアを供給する供給部50が設けられている。
この供給部50は、図1に示すように、外周側空間32の上部側に外部からエアを供給するための第1供給金具60と、外周側空間32の下部側に外部からエアを供給するための第2供給金具70とを備えている。
【0039】
第1供給金具60は、エアパージフード20の上部から外部に突出して、外部からのエアを供給するためのエアチューブ(図示せず)をはめ込み可能な第1差し込み口64を有している。さらに、第1供給金具60は、第1差し込み口64に連通すると共に、第1差し込み口64を介して、外部からのエアチューブにより供給されるエアを、気密部30の外周側空間32に供給するための第1供給口62とを備えている。
【0040】
第2供給金具70は、エアパージフード20の下部から外部に突出して、外部からのエアを供給するためのエアチューブ(図示せず)をはめ込み可能な第2差し込み口74を有している。さらに、第2供給金具70は、第2差し込み口74に連通すると共に、第2差し込み口74を介して、外部からのエアチューブにより供給されるエアを、気密部30の外周側空間32に供給するための第2供給口72とを備えている。
【0041】
第1供給口62及び第2供給口72から供給されるエアは、フィルター40の外周側の外周側空間32の内部に入り込む。上述したようにフィルター40は、金属球を焼結した多孔質体であり、焼結した金属球間には、隙間があり、気体透過性を有している。このため、外周側空間32のエア圧力が高くなると、フィルター40の焼結した金属球間の隙間から外周側空間32内のエアが、フィルター40を透過して、円筒状のフィルター40内部の円柱状の中心軸側空間34に入り込む。その際、外周側空間32内に高速で吹き込まれたエアは、円筒状のフィルター40の外周全面から、微小隙間を有するフィルター40の微小隙間を通って、中心軸側空間34に入り込むため、かかるエアの流速も低下させられると共に、エアの移動方向も、図8(B)に示すように、円筒状のフィルター40の全周面から中心軸側空間34に方向も整えられた状態で入り込むことになる。その後、中心軸側空間34に入り込んだエアは、蓋部24が開口部22を開放している状態において、正面側に向かって均一な層流状態で移動することになる。
【0042】
その際、図3に示すように、蓋部24が開口部22を閉じた状態であるときには、中心軸側空間34も閉じた空間となり、外周側空間32と同様、図8(A)に示すように、中心軸側空間34もエア圧力(P1)が、大気圧(P2)よりも高まることになる(すなわち、P1>P2となる)。このエア圧力(P1)が高まることで、蓋部24と、開口部22との間の隙間からエアが漏れ出る(図8(A)矢印参照)ことにより、当該隙間から外部の粉塵やミスト等が、エアパージフード20内部に入り込むことを抑えることができる。
【0043】
この蓋部24が開いた状態において、開口部22、フィルター40の円筒状の内部空間である中心軸側空間34、背面側開口部12、及び、カメラ収納部11の正面開口部11aに位置する赤外線カメラ13の透明板11bを介し、カメラ収納部11内に収納されている赤外線カメラ13が、エアパージフード20の前面側を撮影可能に形成されている。
【0044】
本実施の形態によれば、上述したような構成を有することで、下記に示すような作用及び効果を奏する。
【0045】
本実施の形態によれば、蓋部24により開口部22を閉じた状態において、気密部30の内部の圧力(P1)を気密部30の外部の圧力(P2)よりも高くする(P1>P2)ことができる(図8(A)参照)。このため、気密部30の内部と、気密部30の外部との間に隙間が存在していても、気密部30の内部から外部に向かってエアが漏れることになり(図8(A)矢印参照)、気密部30の外部から内部に向かって、外部の粉塵やミストの内部への侵入を抑制することができる(いわゆるパージ機構)。
【0046】
さらに、供給部50からのエアが、外周側の外周側空間32から中心軸側の中心軸側空間34へ移動する際、両者の間に介在する筒状のフィルター40を必ず通過する。この供給部50からのエアは、フィルター40の筒状の外周面の全体から、その筒状内部の中心軸側の中心軸側空間34へ入り込む。これにより、フィルター40内部のエア圧力を均等に高めることができ、エアの流れを均一な層流状態に整えることができる。
【0047】
このため、供給部50から供給されるエアの流速が大きい場合であっても、フィルター40内部の中心軸側空間34内部では前面側の開口部22側へ乱流等が発生していない比較的穏やかな整えられた層流状態のエアの流れを形成することができ、乱流発生による部分的なエアの急な流れによる気密部30の外部の粉塵、ミストの巻き込み又は引き込みの発生を抑制することが可能となる。
結果として、気密部30の周囲の粉塵及びミストのカメラレンズへの粉塵及びミストの付着を抑制することが可能となる。
【0048】
本実施の形態によれば、フィルター40は、多孔質体からなる。具体的には、このフィルター40は、金属球を焼結した金属多孔質体であるため、洗浄等が容易で繰り返し何度も使用することができる。
具体的には、フィルター40が金属球を焼結した金属多孔質体であることで、セラミック多孔質体よりも引っ張り強度及び靱性等の機械的強度が大きく、機械的及び熱の衝撃に耐えることができ、熱による燃焼や、圧力による破損の心配がなく、長期使用に耐えることができる。さらに、金属多孔質体であることで、セラミック多孔質体よりも経済的であり、また加工性に優れるものである。
さらに、不純物等で目詰まりし、通気性等の性能が低下した場合、溶剤、酸による逆流洗浄、超音波洗浄等により、半永久的に使用することができる。
【0049】
なお、フィルター40は、上述したような金属球を焼結した金属多孔質体に限定されるものではない。外周側空間32に供給されるエアを、中心軸側空間34を介して、開口部22から均一な層流状態で流すことができるものであれば、上述したセラミック多孔質体も含めて、他の材質の多孔質体や、他の形状のものでもよいものである。
具体的には、本実施の形態では、フィルター40は、金属球を焼結しているが、焼結する個々の形状は、上述したような金属球の形状に限定されるものではなく、四面体、六面体、八面体、十二面体、二十面体等の多面体の形状、または、そのような形状のものを複数種類、組み合わせたものを焼結して間に多数の隙間を有する多孔質体であってもよい。
さらに、フィルター40は、材質も金属に限定されるものではなく、木質、セラミック、樹脂、スポンジ等の他の材質からなるものでもよい。具体的には、例えばアルミナ(酸化アルミニウム)、ジルコニア、炭化ケイ素等の材料を使ったセラミックを用いたセラミック多孔質体を用いてもよい。
【0050】
さらに、それらの材質も、上述したような金属、セラミック、スポンジ等の単一の材料に限定されるものではなく、具体的には例えば、スポンジの周囲を金属線からなる金網で覆って強度を補強したような複合材料でもよい。
また、開口部22からエアを均一な層流状態で流すことができるものであれば、例えば、木質、金属、樹脂等の筒材や板材にドリル加工等により多数の微小孔を形成したものでもよく、また、金網等の金属細線を何重にも重ねたものや、不織布等のフィルター等でもよいものである。
また、エアの噴出口から噴出されるエアが層流状態となるように特殊な工夫が施された噴出口を有する特殊なエアノズル等を用いてもよいものである。
【0051】
本実施の形態によれば、気密部30への粉塵、ミストの侵入抑制(いわゆるパージ機構)と、蓋駆動機構80とのいずれもエアを用いているので、蓋駆動機構80だけを電気モータや油圧モータ等により作動させるような場合と比較して、別途、配線や配管等を設ける必要がなく、装置全体をシンプルで単純なものにすることができる。
【0052】
(第2の実施の形態)
図9は、本発明に係る第2の実施の形態であって、蓋部24を閉じた状態のエアパージフード21の水平断面図である。
【0053】
本実施の形態に係るカメラカバー装置10aは、カメラ収納部11に収納されているカメラ(図示せず)が赤外線カメラ13であって、第1の実施の形態で説明したカメラカバー装置10と比較して、気密部30の正面側にフィルター41を有していない前面側空間35を設け、フィルター41の前後方向の長さが、第1の実施の形態のフィルター40と比較して短く形成されているものである。本実施の形態におけるカメラでの最大撮影角度は、図9の一点鎖線間の角度Bになる。
【0054】
具体的には、第1の実施の形態では、図3に示すように、フィルター40の前後方向の長さは、エアパージフード20の気密部30の前面側への長さと略同一の長さに設定されている。それに対して、本実施の形態では、図9に示すように、フィルター41の前方側が、第1の実施の形態の場合と比べて、カットされていることで、フィルター41の前後方向の長さは、エアパージフード21の気密部30の前面側への長さよりも短く(具体的には、半分程度の長さ)なるように形成されている。
【0055】
このように、フィルター41の前後方向の長さが第1の実施の形態と比較して短くなることで、カメラでの最大撮影角度(具体的には、図9の角度B)を第1の実施の形態におけるカメラでの最大撮影角度(具体的には、図3の角度A)より広角(B>A)にすることができるものである。なお、その他の構成は、第1の実施の形態と略同様であって、それらの説明は、省略する。
本実施の形態によれば、最大撮影角度を第1の実施の形態の場合より広げた広角撮影をする場合に、フィルター41の前方側が、第1の実施の形態の場合と比べて、カットされていることで、最大撮影角度(角度B)が、第1の実施の形態の最大撮影角度(角度A)と比べてより広い角度(広角)にすることができる広角撮影が可能となるものである。本実施の形態によれば、このような広角撮影の邪魔にならず、良好な広角撮影が可能となる。
なお、上述した第1及び第2の実施の形態のフィルター40、41は円筒状であるが、フィルター40、41は筒状であればよく、中心軸に垂直な断面形状が多角形状の角筒状であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
10、10a:カメラカバー装置
11:カメラ収納部
11a:正面開口部
11b:透明板
12:背面側開口部
13:赤外線カメラ
20、21:エアパージフード
22:開口部
22a:開口孔
22b:外部連通路
24:蓋部
25:蓋回転軸
26:軸レバー
30:気密部
32:外周側空間
35:前面側空間
34:中心軸側空間
40、41:フィルター
50:供給部
60:第1供給金具
62:第1供給口
64:第1差し込み口
70:第2供給金具
72:第2供給口
74:第2差し込み口
80:蓋駆動機構
82:エアシリンダー
83:支持軸
84:シリンダーチューブ
84a:第3供給口
84b:第4供給口
86:ピストンロッド
87:ロッド先端回転軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9