(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185958
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】移動体用シート、生体情報検出装置、及び制御システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/11 20060101AFI20221208BHJP
H01L 41/113 20060101ALI20221208BHJP
H01L 41/193 20060101ALI20221208BHJP
H01L 41/087 20060101ALI20221208BHJP
H01L 41/04 20060101ALI20221208BHJP
G01L 1/16 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
A61B5/11
H01L41/113
H01L41/193
H01L41/087
H01L41/04
G01L1/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093907
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 哲史
(72)【発明者】
【氏名】丸子 展弘
(72)【発明者】
【氏名】吉田 光伸
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 勝敏
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038VA04
4C038VB33
4C038VC20
(57)【要約】
【課題】本発明は、上記事実に鑑みてなされたものであり、高温となり得る環境下においても、精度よく生体情報を取得することができる移動体用シート、生体情報検出装置、及び制御システムを提供することを目的とする。
【解決手段】移動体に設けられ、人体を支持する支持体と、前記支持体に設けられ、前記人体から受ける圧力を検知する圧電基材と、を備え、前記圧電基材は、軸状の内部導体と、前記内部導体の周囲において同軸状に設けられ、かつ光学活性ポリペプチドを含む長尺状圧電体と、を備える移動体用シート。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体に設けられ、人体を支持する支持体と、
前記支持体に設けられ、前記人体から受ける圧力を検知する圧電基材と、を備え、
前記圧電基材は、
軸状の内部導体と、
前記内部導体の周囲において同軸状に設けられ、かつ光学活性ポリペプチドを含む長尺状圧電体と、
を備える移動体用シート。
【請求項2】
前記圧電基材は、前記長尺状圧電体の長さ方向と、前記光学活性ポリペプチドの主配向方向とが略平行である、
請求項1に記載の移動体用シート。
【請求項3】
X線回折測定から下記式(a)によって求められる前記光学活性ポリペプチドの配向度Fが0.50以上1.00未満である、
請求項1又は請求項2に記載の移動体用シート。
配向度F=(180°-α)/180° … 式(a)
〔式(a)中、αは配向由来のピークの半値幅(°)を表す。〕
【請求項4】
前記長尺状圧電体は、一方向に螺旋状に巻回されている、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の移動体用シート。
【請求項5】
前記圧電基材は、外周に外部導体をさらに備える、
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の移動体用シート。
【請求項6】
前記圧電基材は、前記外部導体の外周にさらに絶縁体を備える、
請求項5に記載の移動体用シート。
【請求項7】
前記光学活性ポリペプチドが、シルク及びクモ糸の少なくとも一方を含む、
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の移動体用シート。
【請求項8】
請求項1から請求項7の何れか1項に記載の移動体用シートと、
前記圧電基材が受ける圧力に応じた信号を検知する検知部と、
前記検知部から検知した信号に基づき、前記人体における生体情報を検出する検出部と、
を備える生体情報検出装置。
【請求項9】
前記支持体は、複数の圧電基材を備え、
前記検知部は、各々の圧電基材から独立に信号を検知し、
前記検出部は、各々の圧電基材から検知した前記信号から人体が接している位置を示す位置情報を検出する、
請求項8に記載の生体情報検出装置。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の生体情報検出装置と、
前記生体情報検出装置が検出した情報に基づいて、前記移動体における機器を制御する制御装置と、
を備える制御システム。
【請求項11】
前記制御装置は、前記生体情報から取得した前記人体の心拍に係る情報に応じて、前記機器を制御する、
請求項10に記載の制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動体用シート、生体情報検出装置、及び制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両を運転する運転者の状態を検出するために、車両のシートにセンサを設置し、当該シートから運転者の生体情報を検出する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、フィルム状のポリフッ化ビニリデン(以下、「PVDF」という。)を適用した感圧センサを用いて、生体情報を取得することを特徴としている。しかしながら、特許文献1に記載のPVDFは、強誘電体であるため焦電性を有し、温度変化によってセンサの感度が変動することがある。そのため、PVDFを適用した感圧センサは、車両内に設置されるシート等の高温に変化する環境下において、センサ感度が不安定となり、必ずしも精度よく生体情報を取得できるとは限らなかった。
【0005】
本発明は、上記事実に鑑みてなされたものであり、高温に変化する環境下においても、精度よく生体情報を取得することができる移動体用シート、生体情報検出装置、及び制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を達成するための具体的手段は、以下の通りである。
【0007】
<1> 移動体に設けられ、人体を支持する支持体と、
前記支持体に設けられ、前記人体から受ける圧力を検知する圧電基材と、を備え、
前記圧電基材は、
軸状の内部導体と、
前記内部導体の周囲において同軸状に設けられ、かつ光学活性ポリペプチドを含む長尺状圧電体と、
を備える移動体用シート。
【0008】
<2> 前記圧電基材は、
前記長尺状圧電体の長さ方向と、前記光学活性ポリペプチドの主配向方向とが略平行である、
<1>に記載の移動体用シート。
【0009】
<3> X線回折測定から下記式(a)によって求められる前記光学活性ポリペプチドの配向度Fが0.50以上1.00未満である、
<1>又は<2>に記載の移動体用シート。
配向度F=(180°-α)/180° … 式(a)〔式(a)中、αは配向由来のピークの半値幅(°)を表す。〕
【0010】
<4> 前記長尺状圧電体は、一方向に螺旋状に巻回されている、
<1>から<3>の何れか1つに記載の移動体用シート。
【0011】
<5> 前記圧電基材は、外周に外部導体をさらに備える、
<1>から<4>の何れか1つに記載の移動体用シート。
【0012】
<6> 前記圧電基材は、前記圧電基材は、前記外部導体の外周にさらに絶縁体を備える、
<5>に記載の移動体用シート。
【0013】
<7> 前記光学活性ポリペプチドが、シルク及びクモ糸の少なくとも一方を含む、
<1>から<6>の何れか1つに記載の移動体用シート。
【0014】
<8> <1>から<7>の何れか1つに記載の移動体用シートと、
前記圧電基材が受ける圧力に応じた信号を検知する検知部と、
前記検知部から検知した信号に基づき、前記人体における生体情報を検出する検出部と、
を備える生体情報検出装置。
【0015】
<9> 前記支持体は、複数の圧電基材を備え、
前記検知部は、各々の圧電基材から独立に信号を検知し、
前記検出部は、各々の圧電基材から検知した前記信号から人体が接している位置を示す位置情報を検出する、
<8>に記載の生体情報検出装置。
【0016】
<10> <8>又は<9>に記載の生体情報検出装置と、
前記生体情報検出装置が検出した情報に基づいて、前記移動体における機器を制御する制御装置と、
を備える制御システム。
【0017】
<11> 前記制御装置は、前記生体情報から取得した前記人体の心拍に係る情報に応じて、前記機器を制御する、
<10>に記載の制御システム。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、高温に変化する環境下においても、精度よく生体情報を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】各実施形態に係る制御システムの一例を示すブロック図である。
【
図2】各実施形態に係る移動体用シートの一例を示す斜視図である。
【
図3】各実施形態に係る圧電基材の配置の説明に供する移動体用シートの一例を示す断面図である。
【
図4】第1実施形態に係る圧電基材の配置の説明に供する移動体用シートの一例を示す投影図である。
【
図5】各実施形態に係る生体情報検出装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】各実施形態に係る制御装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図7】第1実施形態に係る制御システムの機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図8】各実施形態に係る圧電基材を模式的に示す概略側面図である。
【
図9】各実施形態に係る圧電基材における
図8のX-X’線断面図である。
【
図10】各実施形態の変形例に係る圧電基材を模式的に示す概略側面図である。
【
図11】第2実施形態に係る圧電基材の配置の説明に供する移動体用シートの一例を示す投影図である。
【
図12】第2実施形態の変形例に係る圧電基材の配置の説明に供する移動体用シートの一例を示す投影図である。
【
図13】第3実施形態に係る圧電基材の配置の説明に供する移動体用シートの一例を示す投影図である。
【
図14】第3実施形態に係る制御システムの機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図15】第3実施形態の変形例に係る圧電基材の配置の説明に供する移動体用シートの一例を示す投影図である。
【
図16】第4実施形態に係る圧電基材の配置の説明に供する移動体用シートの一例を示す投影図である。
【
図17】第5実施形態に係る圧電基材の配置の説明に供する移動体用シートの一例を示す投影図である。
【
図18】実施例に係る圧電基材から生体情報を検出する検出回路の一例を示すブロック図である。
【
図19】実施例に係る圧電基材から検出した生体情報の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書中において、部材の「面」は、特に断りが無い限り、部材の「主面」を意味する。
本明細書において、厚さ、幅、及び長さは、通常の定義どおり、厚さ<幅<長さの関係を満たす。
本明細書において、2つの線分のなす角度は、0°以上90°以下の範囲で表す。
本明細書において、「フィルム」は、一般的に「フィルム」と呼ばれているものだけでなく、一般的に「シート」と呼ばれているものをも包含する概念である。
本明細書において図面を参照して実施形態を説明する場合、当該実施形態の構成は図面に示された構成に限定されない。また、各図における部材の大きさは概念的なものであり、部材間の大きさの相対的な関係はこれに限定されない。
本明細書において、移動体の一例として、「車両」について説明する。しかし、これに限定されない。移動体は、航空機であってもよいし、船舶であってもよいし、シートが設置され、かつ移動可能である乗り物であれば、如何なる乗り物であってもよい。
【0021】
[第1実施形態]
図1~
図10を参照して、制御システムについて説明する。
【0022】
<制御システムの構成>
一例として
図1に示すように、本実施形態に係る制御システム1は、車両2に搭載され、生体情報検出装置10、制御装置100、及び機器200を備えている。生体情報検出装置10は、移動体用シート20を備え、移動体用シート20に設置されているセンサから着座した乗員の生体情報を検出する。制御装置100は、生体情報検出装置10が検出した情報を用いて、車両2に搭載されている機器200を制御する。ここで、機器200は、車両内のエアコン、シートヒータ、照明、眠気防止装置、ディフューサー、及びオーディオ等の装置、並びに操舵、スロットル、及びブレーキ等を操作するアクチュエータ等を含む。例えば、制御装置100は、検出した生体情報に応じて、冷暖房の起動、眠気防止のための臭いを発生、乗員への通知、及び車両の停止等の制御を行う。
【0023】
<移動体用シートの構成>
図2を参照して、移動体用シート20について説明する。移動体用シート20は、移動体としての車両において、乗員が着座した場合に車両前方を向く方向で設けられている。そのため、シート幅方向は車両幅方向と一致し、シート奥行き方向は車両前後方向と一致し、シート高さ方向は車両上下方向に一致する。なお、以下、シート方向を単に幅方向とし、シート奥行き方向を単に奥行き方向とし、シート高さ方向を単に高さ方向として説明する。
【0024】
一例として
図2に示すように、本実施形態に係る移動体用シート20は、シートクッション21と、シートバック22と、センサユニット23と、を備えている。シートクッション21及びシートバック22は、車両の乗員が着座し、かつ接触することによって加圧されるものである。ここで、シートクッション21及びシートバック22は、人体を支持する「支持体」の一例である。
図3に示すように、シートクッション21及びシートバック22は、それぞれ図示しないフレームと、当該フレームに設けられたウレタン、スポンジゴム等の弾性体24と、当該弾性体24の表面を覆う表皮25と、を含んで構成されている。
【0025】
センサユニット23は、圧力Pが入力されることによって電圧を発生する圧電基材50と、圧電基材50に接続された後述する配線29と、を備えている。
図3に示すように、圧電基材50は、シートクッション21及びシートバック22を構成する弾性体24に設置され、乗員の人体から受ける圧力Pを検知可能としている。具体的には、圧電基材50は、弾性体24の上部に形成された切込み26の内部であって、切込み26の底部に設けられたスポンジゴム27の上に載置されている。これにより、圧電基材50は、シートクッション21及びシートバック22の表面から受ける乗員の人体の圧力Pを検知可能としている。なお、圧電基材50は、表皮25の直下であって、弾性体24の表面に設置されていてもよいし、スポンジゴム等の弾性体24を用いずに、圧電基材50を配置してもよい。
【0026】
また、一例として
図4に示すように、シートクッション21の奥行き方向中央に圧電基材50が配置され、シートバック22の幅方向中央に圧電基材50が配置されている。ここで、
図4(a)は、高さ方向の上方から見た移動体用シート20の平面図を示しており、
図4(b)は、奥行き方向の手前から正面に見た移動体用シート20の正面図を示している。
【0027】
具体的には、
図4(a)に示すように、シートクッション21の表皮の直下において、シートクッション21の奥行き方向中央に幅方向に沿って圧電基材50が配置されている。また、
図4(b)に示すように、シートバック22の表皮25の直下において、シートバック22の幅方向中央に高さ方向に沿って圧電基材50が配置されている。
【0028】
なお、本実施形態では、幅方向及び高さ方向直線的に圧電基材50が配置される形態について説明した。しかし、これに限定されない。例えば、
図3におけるシートクッション21において、切込み26を奥行き方向に対して奥側に湾曲させて圧電基材50が配置されてもよい。また、シートクッション21において、幅方向中央に近づくほどの配置が深くなるように、切込み26を高さ方向に対して下方に湾曲させて圧電基材50を配置してもよい。また、圧電基材50の検知感度が向上するように、シートクッション21及びシートバック22において、圧電基材50と接する表皮25及びスポンジゴム27に凹凸を設けてもよい。また、圧電基材50をシートベルトにおける乗員の上半身が接触する部位に配置してもよい。
【0029】
<生体情報検出装置の構成>
次に、
図5を参照して、生体情報検出装置10のハードウェア構成について説明する。生体情報検出装置10は、圧電基材50からの出力信号を検出する。
図5に示すように、生体情報検出装置10は、圧電基材50から出力されたアナログ信号である電圧出力をデジタル信号に変換するAD変換器28と、変換された各圧電基材50のデジタル信号を検出する車載器30と、を備えている。AD変換器28は、アナログ信号を入力するための入力端子が複数設けられており、各入力端子に圧電基材50が配線29を介して電気的に接続されている。
車載器30は、CPU(Central Processing Unit)31、ROM(Read Only Memory)32、RAM(Random Access Memory)33、ストレージ34、通信I/F(Inter Face)35、及び入出力I/F36を含んで構成されている。CPU31、ROM32、RAM33、ストレージ34、通信I/F35、及び入出力I/F36は、バス37を介して相互に通信可能に接続されている。
【0030】
CPU31は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU31は、ROM32又はストレージ34からプログラムを読み出し、RAM33を作業領域としてプログラムを実行する。本実施形態では、ストレージ34に各種処理を実行するための実行プログラムが記憶されている。CPU31は、実行プログラムを実行することで、
図7に示す検知部41、及び検出部42Aとして機能する。
ROM32は、各種プログラム及び各種データを記憶している。RAM33は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。記憶部としてのストレージ34は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム、及び各種データを記憶している。
【0031】
通信I/F35は、制御装置100と通信するためのインタフェースであり、CAN(Controller Area Network)プロトコルによる通信が行われている。なお、通信I/F35は、イーサネット(登録商標)による通信規格を適用してもよい。通信I/F35は、図示しない外部バスに対して接続されている。つまり、図示しない外部バスにおいて、生体情報検出装置10、及び制御装置100の間で送受信されるデータは、CANプロトコルに基づく通信フレームとして送受信される。ここで、通信I/F35は、制御装置100を介さずに機器200と直接接続され、生体情報検出装置10、及び機器200の間でデータを送受信していてもよい。
【0032】
<制御装置の構成>
図6に示されるように、制御装置100は、CPU101、ROM102、RAM103、ストレージ104、入出力部105、表示部106、及び通信I/F107を含んで構成されている。制御装置100は、CPU101、ROM102、RAM103、ストレージ104、入出力部105、表示部106、及び通信I/F107は、バス108を介して相互に通信可能に接続されている。
【0033】
CPU101は、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPU101は、ROM102からプログラムを読み出し、RAM103を作業領域としてプログラムを実行する。
【0034】
ROM102は、各種プログラム及び各種データを記憶している。本実施形態のROM102には、制御装置100を制御するための制御プログラムが記憶されている。
RAM103は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。
【0035】
ストレージ104は、一例としてHDD、SSD、又はフラッシュメモリ等である。なお、ストレージ104には、制御プログラム等を記憶してもよい。入出力部105は、例えば、マウス、キーボード、タッチパネル、及びスピーカ等である。表示部106は、検出した生体情報に応じて、乗員への通知を表示する。
【0036】
通信I/F107は、生体情報検出装置10、制御装置100、及び機器200を接続するためのインタフェースである。当該インタフェースは、CANプロトコルによる通信が行われている。なお、通信I/F107では、イーサネット(登録商標)による通信規格を適用してもよい。通信I/F107は、図示しない外部バスに対して接続されている。つまり、図示しない外部バスにおいて、生体情報検出装置10、制御装置100、及び機器200の間で送受信されるデータは、CANプロトコルに基づく通信フレームとして送受信される。
【0037】
<生体情報検出装置及び制御装置の機能構成>
図7は、生体情報検出装置10及び制御装置100の機能構成の例を示すブロック図である。
図7に示すように、生体情報検出装置10は、検知部41、及び検出部42Aを有している。各機能構成は、CPU31がストレージ34に記憶された実行プログラムを読み出し、これを実行することによって実現される。
【0038】
検知部41は、入出力I/F36を介してAD変換器28から出力された各圧電基材50に係るデジタル信号を検知する機能を有している。
【0039】
検出部42Aは、検知部41が検知したデジタル信号の大きさ、及び周期から呼吸、及び脈拍等の生体情報を検出する機能を有している。
【0040】
また、
図7に示すように、制御装置100は、取得部111A、及び制御部112Aを有している。各機能構成は、CPU101がストレージ104に記憶された実行プログラムを読み出し、これを実行することによって実現される。
【0041】
取得部111Aは、生体情報検出装置10から生体情報を取得する機能を有している。
【0042】
制御部112Aは、取得した生体情報を用いて、機器200を制御する機能を有している。例えば、制御部112Aは、生体情報に応じて、各々の機器200に処理を実行する指示を送信する。具体的には、制御部112Aは、生体情報から心拍の間隔のゆらぎを検出し、当該心拍のゆらぎが小さくなった(心拍の間隔が安定している)場合、乗員が眠くなっている状態であると判定して、機器200としてのアクチュエータにブレーキを作用させる指示を送信する。心拍のゆらぎは、直接心拍の間隔を測定するほか、心拍の間隔を周波数に変換してもよい。また、制御部112Aは、生体情報から心拍の大きさ、及び回数を検出し、心拍の大きさが乗員における平均値より大きく、かつ所定の期間の心拍の回数が乗員における平均値より多い場合、乗員は緊張状態にあると判定して、機器200としてのアクチュエータにブレーキを作用させる指示を送信する。
【0043】
<圧電基材>
本実施形態の圧電基材は、軸状の内部導体と、内部導体の周囲において同軸状に設けられ、かつ光学活性ポリペプチドを含む長尺状の圧電体と、を備えている。
【0044】
本実施形態の圧電基材では、長尺状の圧電体が、内部導体の周囲において同軸状に設けられていること、かつ長尺状の圧電体が光学活性ポリペプチドを含むことにより、圧電性(圧電感度)が発現する。
本実施形態の圧電基材は、内部導体に、圧電体が一方向に螺旋状に巻回されている。
【0045】
さらに、本実施形態の圧電基材は、高温高湿環境での耐加水分解性に優れる光学活性ポリペプチドを含むので、例えばポリ乳酸を用いた圧電基材と比較して、(特に、高温高湿環境下での)耐久性に優れる。
本明細書において、耐久性に優れるとは、(特に、高温高湿環境下において)圧電感度の低下が抑制されることを意味する。
【0046】
<圧電体>
本実施形態の圧電基材は、長尺状の圧電体を備える。
長尺状の圧電体の配向度Fは、0.50以上1.00未満の範囲である。
圧電体の配向度Fは、X線回折測定から下記式(a)によって求められる値であり、c軸配向度を意味する。
【0047】
配向度F=(180°―α)/180° … 式(a)
〔式(a)中、αは配向由来のピークの半値幅(°)を表す。〕
【0048】
配向度Fは、圧電体に含まれる光学活性ポリペプチドの配向の度合いを示す指標である。
本実施形態において、長尺状の圧電体の配向度Fが0.50以上であることは、圧電性の発現に寄与する。
長尺状の圧電体の配向度Fが1.00未満であることは、圧電体の生産性に寄与する。
長尺状の圧電体の配向度Fは、0.50以上0.99以下であることが好ましく、0.70以上0.98以下であることがさらに好ましく、0.80以上0.97以下であることが特に好ましい。
【0049】
本実施形態において、上記圧電体の長さ方向と、上記圧電体に含まれる光学活性ポリペプチドの主配向方向と、が略平行であることも、圧電性の発現に寄与する。
上記圧電体の長さ方向と、上記圧電体に含まれる光学活性ポリペプチドの主配向方向と、が略平行であることは、圧電体がその長さ方向への引張強度に優れるという利点も有する。したがって、圧電体を螺旋状に巻回する際に、圧電体が破断しにくい。
本明細書中において、「略平行」とは、2つの線分のなす角度を0°以上90°以下の範囲で表した場合に、2つの線分のなす角度が、0°以上30°未満(好ましくは0°以上22.5°以下、より好ましくは0°以上10°以下、さらに好ましくは0°以上5°以下、特に好ましくは0°以上3°以下)であることを指す。
例えば、圧電体がシルク又はクモ糸である場合、シルク又はクモ糸の生成の過程で、圧電体(シルク又はクモ糸)の長さ方向と、上記圧電体に含まれる光学活性ポリペプチド(例えばフィブロイン又はクモ糸タンパク質)の主配向方向と、が略平行となっている。
【0050】
上記圧電体の長さ方向と、上記圧電体に含まれる光学活性ポリペプチドの主配向方向と、が略平行であることは、X線回折測定において、サンプルの設置方向と結晶ピークの方位角と、を比較することによって確認できる。
【0051】
本実施形態において、圧電体が光学活性ポリペプチドを含むことも、圧電性の発現に寄与する。
また、前述のとおり、光学活性ポリペプチドは耐加水分解性に優れるので、圧電体が光学活性ポリペプチドを含むことは、ポリ乳酸を主成分として含む圧電体と比較して、圧電体及び圧電基材の耐久性に優れる。
【0052】
また、PVDFを含む圧電体は、高い焦電性を有するため、温度変化による電荷量の出力の変化が大きい。これに対して、本実施形態の光学活性ポリペプチドを含む圧電体は、PVDFを含む圧電体と比較して、温度変化による電荷量の出力の変化が小さく、電荷量の出力が安定している点において優れる。
一方、ポリ乳酸を含む圧電体は、昇温時に所定の温度より高温になった場合、センサ感度が低下する傾向にある。これに対して、本実施形態の光学活性ポリペプチドを含む圧電体は、ポリ乳酸を含む圧電体と比較して、所定の温度より高温になった場合であってもセンサ感度が安定している点において優れる。
したがって、本実施形態の圧電体は、感度に優れており、かつ高温に変化する環境下に配置して、人体から生体情報を検出するために用いるのに適切である。
【0053】
また、前述のとおり、光学活性ポリペプチドは焦電性を有しないため、圧電体が光学活性ポリペプチドを含むことは、PVDFを主成分として含む圧電体と比較して、圧電体及び圧電基材の耐久性に優れる。
【0054】
本明細書において、光学活性ポリペプチドとは、光学活性を有するポリペプチド(すなわち、不斉炭素原子を有し、かつ、光学異性体の存在量に偏りがあるポリペプチド)を意味する。
光学活性ポリペプチドは、圧電性や強度の観点から、βシート構造を有することが好ましい。
光学活性ポリペプチドとしては、光学活性を有する動物性タンパク質(例えば、フィブロイン、セリシン、コラーゲン、ケラチン、エラスチン、クモ糸タンパク質等)が挙げられる。
光学活性ポリペプチドは、フィブロイン及びクモ糸タンパク質の少なくとも一方を含むことが好ましく、フィブロイン及びクモ糸タンパク質の少なくとも一方からなることが特に好ましい。
【0055】
クモ糸タンパク質は、天然クモ糸タンパク質、又は、天然クモ糸タンパク質に由来若しくは類似(以下、これらをまとめて「由来」という。)するものであればよく、特に限定されない。
ここで、「天然クモ糸タンパク質に由来するもの」とは、天然クモ糸タンパク質が有するアミノ酸の反復配列と同様又は類似のアミノ酸配列を有するものである。
「天然クモ糸タンパク質に由来するもの」として、例えば、組換えクモ糸タンパク質、天然クモ糸タンパク質の変異体、天然クモ糸タンパク質の類似体、又は、天然クモ糸タンパク質の誘導体などが挙げられる。
【0056】
クモ糸タンパク質としては、強靭性に優れるという観点から、クモの大瓶状腺で産生される大吐糸管しおり糸タンパク質、又は、大吐糸管しおり糸タンパク質に由来するクモ糸タンパク質が好ましい。
大吐糸管しおり糸タンパク質としては、アメリカジョロウグモ(Nephila clavipes)に由来する大瓶状腺スピドロインである、MaSp1又はMaSp2、ニワオニグモ(Araneus diadematus)に由来する、ADF3又はADF4などが挙げられる。
【0057】
クモ糸タンパク質は、クモの小瓶状腺で産生される小吐糸管しおり糸タンパク質、又は、小吐糸管しおり糸タンパク質に由来するクモ糸タンパク質であってもよい。
小吐糸管しおり糸タンパク質としては、アメリカジョロウグモ(Nephila clavipes)に由来する小瓶状腺スピドロインである、MiSp1、MiSp2が挙げられる。
【0058】
その他にも、上記クモ糸タンパク質は、クモの鞭毛状腺(flagelliform gland)で産生される横糸タンパク質、又は、この横糸タンパク質に由来するクモ糸タンパク質であってもよい。
上記横糸タンパク質としては、例えば、アメリカジョロウグモ(Nephila clavipes)に由来する鞭毛状絹タンパク質(flagelliform silk protein)などが挙げられる。
【0059】
上述した大吐糸管しおり糸タンパク質に由来するクモ糸タンパク質としては、例えば、下記式(1)で示されるアミノ酸配列の単位を含む組換えクモ糸タンパク質が挙げられる。
組換えクモ糸タンパク質は、下記式(1)で示されるアミノ酸配列の単位を2以上(好ましくは4以上、より好ましくは6以上)含んでもよい。
組換えクモ糸タンパク質が下記式(1)で示されるアミノ酸配列の単位を2以上含む場合、2以上のアミノ酸配列の単位は、同一であっても異なっていてもよい。
【0060】
REP1-REP2 … 式(1)
〔式(1)中、REP1は、主としてアラニンにより構成され(X1)pで表されるポリアラニン領域であり、REP2は、10~200残基のアミノ酸からなるアミノ酸配列である。〕
【0061】
式(1)において、REP1は、主としてアラニンにより構成され(X1)pで表されるポリアラニン領域である。REP1として、好ましくはポリアラニンである。
(X1)pにおいて、pは、特に限定されるものではないが、好ましくは2~20の整数、より好ましくは4~12の整数を示す。
(X1)pにおいて、X1は、アラニン(Ala)、セリン(Ser)、又はグリシン(Gly)を示す。
(X1)pで表されるポリアラニン領域において、アラニンの合計残基数が、上記ポリアラニン領域のアミノ酸の合計残基数の80%以上(より好ましくは85%以上)であることが好ましい。
式(1)中のREP1において、連続して並んでいるアラニンは、2残基以上であることが好ましく、より好ましくは3残基以上であり、さらに好ましくは4残基以上であり、特に好ましくは5残基以上である。
また、式(1)中のREP1において、連続して並んでいるアラニンは、20残基以下であることが好ましく、より好ましくは16残基以下であり、さらに好ましくは12残基以下であり、特に好ましくは10残基以下である。
【0062】
式(1)において、REP2は、10~200残基のアミノ酸からなるアミノ酸配列である。このアミノ酸配列中に含まれる、グリシン、セリン、グルタミン、プロリン及びアラニンの合計残基数は、上記アミノ酸残基数全体に対し、40%以上が好ましく、50%以上がより好ましく、60%以上が特に好ましい。
【0063】
上記小吐糸管しおり糸タンパク質に由来するクモ糸タンパク質としては、例えば、下記式(2)で示されるアミノ酸配列を含む組換えクモ糸タンパク質が挙げられる。
【0064】
REP3-REP4-REP5 … 式(2)
〔式(2)中、REP3は、(Gly-Gly-Z)mで表されるアミノ酸配列であり、REP4は、(Gly-Ala)lで表されるアミノ酸配列であり、REP5は(Ala)rで表されるアミノ酸配列である。
REP3において、Zは任意の一つのアミノ酸を意味する。
REP3において、mは1~4であり、REP4において、lは、0~4であり、REP5において、rは、1~6である。〕
【0065】
REP3において、Zは任意の一つのアミノ酸を意味するが、特にAla、Tyr及びGlnからなる群から選ばれる一つのアミノ酸であることが好ましい。
【0066】
上述した組換えクモ糸タンパク質(例えば、式(1)で示されるアミノ酸配列の単位を含む組換えクモ糸タンパク質、式(2)で示されるアミノ酸配列を含む組換えクモ糸タンパク質、等)は、組換えの対象となる天然型クモ糸タンパク質をコードする遺伝子を含有する発現ベクターで形質転換した宿主を用いて製造することができる。
【0067】
長尺状の圧電体は、圧電性の観点から、光学活性ポリペプチドからなる繊維を含むことが好ましい。
光学活性ポリペプチドからなる繊維としては、光学活性を有する動物性タンパク質からなる繊維(例えば、シルク、ウール、モヘヤ、カシミア、キャメル、ラマ、アルパカ、ビキューナ、アンゴラ、クモ糸、等)が挙げられる。
光学活性ポリペプチドからなる繊維は、圧電性の観点から、シルク及びクモ糸の少なくとも一方を含むことが好ましく、シルク及びクモ糸の少なくとも一方からなることがより好ましい。
【0068】
シルクとしては、生糸(raw silk)、精錬シルク、再生シルク等が挙げられる。
シルクとしては、生糸又は精錬シルクが好ましく、精製シルクが特に好ましい。
ここで、精錬シルクとは、セリシンとフィブロインとの2重構造である生糸からセリシンを取り除いたシルクを意味し、精錬とは、生糸からセリシンを取り除く操作を意味する。生糸の色は艶の無い白色であるが、生糸からセリシンを取り除くこと(すなわち、精錬)により、艶の無い白色から光沢がある白銀色へと変化する。また、精錬により、柔らかい風合いが増す。
【0069】
長尺状の圧電体は、圧電性の観点から、光学活性ポリペプチドからなる長繊維を含むことが好ましい。この理由は、短繊維に比べて長繊維の方が、圧電基材に印加された応力が圧電体へ伝わり易いためと考えられる。
ここで、「長繊維」とは、圧電基材の長尺方向の一端から他端まで連続して巻回できる長さを有する繊維を意味する。
前述した、シルク、ウール、モヘヤ、カシミア、キャメル、ラマ、アルパカ、ビキューナ、アンゴラ、及びクモ糸は、何れも長繊維に該当する。
長繊維の中でも、シルク及びクモ糸が、圧電性の観点から、好ましい。
【0070】
長尺状の圧電体が上記繊維を含む場合、長尺状の圧電体は、少なくとも1本の上記繊維からなる糸を少なくとも1本含むことが好ましい。
長尺状の圧電体が上記糸を含む場合の態様としては、長尺状の圧電体が1本の上記糸からなる態様、長尺状の圧電体が複数の上記糸の集合体である態様、等が挙げられる。
上記糸は、撚糸であっても無撚糸であってもよいが、圧電性の観点から、撚数が500T/m以下である糸(すなわち、撚数500T/m以下の撚糸又は無撚糸(撚数0T/m))であることが好ましい。
無撚糸としては、1本の原糸、複数本の原糸の集合体、等が挙げられる。
【0071】
長尺状の圧電体の太さ(長尺状の圧電体が複数の糸の集合体である場合には集合体全体の太さ)には特に制限はないが、0.0001~2mmが好ましく、0.001~1mmがより好ましく、0.005~0.8mmが特に好ましい。
【0072】
長尺状の圧電体が、1本の原糸又は複数の原糸の集合体である場合、原糸1本の繊度は、0.01~10000デニールが好ましく、0.1~1000デニールがより好ましく、1~100デニールが特に好ましい。
【0073】
本実施形態において、長尺状の圧電体は、螺旋状に巻回されている。
本実施形態では、螺旋状に巻回されている長尺状の圧電体にずり応力が印加されることにより、電荷が発生する。これにより、圧電性が発現する。
圧電体に対するずり応力は、例えば、螺旋状に巻回されている長尺状の圧電体全体を螺旋軸方向に引っ張ること、螺旋状に巻回されている長尺状の圧電体の一部をねじる(すなわち、上記圧電体の一部を螺旋軸を軸としてねじる)こと、螺旋状に巻回されている長尺状の圧電体の一部又は全体を曲げること、等によって印加することができる。
【0074】
本実施形態の圧電基材は、さらに、長尺状の芯材を備え、長尺状の圧電体が、長尺状の芯材の周りに螺旋状に巻回されている態様である。
本実施形態の圧電基材における好ましい態様については、後述の「芯材、外部導体」の項に示す。
【0075】
長尺状の圧電体は、螺旋角度20°~70°にて巻回されていることが好ましい。
ここで、螺旋角度とは、螺旋軸方向(芯材を備える場合には芯材の長さ方向)と、巻回されている圧電体の長さ方向と、のなす角度を意味する(
図8中の螺旋角度β1参照)。
螺旋角度としては、25°~65°がより好ましく、30°~60°がさらに好ましく、35°~55°が特に好ましい。
【0076】
長尺状の圧電体は、一方向に螺旋状に巻回されていることが好ましい。
ここで、「一方向に螺旋状に巻回されている」とは、圧電基材の一端から見たときに、手前側から奥側に向けて左巻き(すなわち、反時計回り)となるように、圧電体が螺旋状に左旋方向に巻回されていること、又は、圧電基材の一端から見たときに手前側から奥側に向けて右巻き(すなわち、時計回り)となるように、圧電体が螺旋状に右旋方向に巻回されていることを意味する。
長尺状の圧電体が一方向に螺旋状に巻回されている場合には、発生した電荷の極性が打ち消し合う現象(すなわち、圧電性が低下する現象)が抑制される。したがって、圧電基材の圧電性がより向上する。
【0077】
圧電基材が一方向に螺旋状に巻回されている長尺状の圧電体を備える態様には、上記圧電体を一層のみ備える態様だけでなく、上記圧電体を複数層重ねた態様も包含される。
上記圧電体を複数層重ねた態様として、例えば、一方向に螺旋状に巻回されている一層目の圧電体の上に重ねて、二層目の圧電体を上記一方向と同じ方向に螺旋状に巻回した態様が挙げられる。
【0078】
本実施形態の圧電基材の態様としては、長尺状の圧電体として、一方向に螺旋状に巻回されている第1圧電体と、前記一方向とは異なる方向に螺旋状に巻回されている第2圧電体と、を備え、第1圧電体に含まれる光学活性ポリペプチドのキラリティと、第2圧電体に含まれる光学活性ポリペプチドのキラリティと、が互いに異なる態様も挙げられる。
【0079】
圧電体は、必要に応じ、光学活性ポリペプチド以外の成分を含んでいてもよい。
例えば、圧電体が複数本の原糸の集合体である場合、圧電体は、複数の原糸の集合体を固定するための接着剤を含んでいてもよい。接着剤の好ましい態様は後述する。
【0080】
<芯材、外部導体>
本実施形態の圧電基材は、長尺状の芯材を備える。
本実施形態の圧電基材では、かかる長尺状の芯材の周りに、長尺状の圧電体が螺旋状に巻回される。
【0081】
圧電基材が、導体である芯材を備える態様は、導体である芯材を通じ、圧電体から電気的信号(電圧信号又は電荷信号)を取り出しやすいという利点を有する。
また、この態様は、同軸ケーブルに備えられる内部構造(内部導体及び誘電体)と同一の構造となるため、例えば、この態様の圧電基材を同軸ケーブルに適用した場合、電磁シールド性が高く、ノイズに強い構造となり得る。
導体としては、電気的な良導体であることが好ましく、例えば、銅線、アルミ線、SUS線、絶縁皮膜被覆された金属線、カーボンファイバー、カーボンファイバーと一体化した樹脂繊維、錦糸線、有機導電材料等が挙げられる。
錦糸線とは、繊維に銅箔がスパイラル状に巻回されたものを意味する。
導体の中でも、圧電感度を向上し、高い屈曲性を付与する観点から、錦糸線、カーボンファイバーが好ましい。
【0082】
特に、電気的抵抗が低く、かつ屈曲性、可撓性が要求される用途においては、錦糸線を用いることが好ましい。
錦糸線の形態は、繊維に対して、銅箔が螺旋状に巻回された構造を有するが、電気伝導度の高い銅が用いられていることにより出力インピーダンスを低下することが可能となる。従って、芯材として錦糸線を用いることにより、圧電基材の圧電性がより向上する。
【0083】
また、非常に高い屈曲性、しなやかさが求められる、織物や、編物などへの加工用途(例えば圧電織物、圧電編物、圧電センサ(織物状圧電センサ、編物状圧電センサ))においては、カーボンファイバーを用いることが好ましい。
また、本実施形態の圧電基材を繊維として用い、圧電織物又は圧電編物を製造する場合は、しなやかさ、高屈曲性が求められる。そのような用途においては、糸状又は繊維状の信号線導体が好ましい。糸状又は繊維状の信号線導体を備える圧電基材は、高い屈曲性を有するため、織機又は編機での加工が好適である。
【0084】
圧電基材が導体である芯材を備える場合、圧電基材は、芯材の周りに螺旋状に巻回されている長尺状の圧電体よりも外周側に外部導体を備え、導体である芯材と外部導体とが電気的に絶縁されていることが好ましい。
この態様では、外部導体によって圧電基材の内部(圧電体、及び、導体である芯材)を静電シールドすることができるので、圧電基材の外部の静電気の影響による、導体である芯材の電圧変化又は電荷変化が抑制される。
従って、圧電基材において、より安定した圧電性が得られる。
外部導体には、グラウンド電位に接続されることが好ましい。
【0085】
外部導体の材料には特に限定はないが、断面形状によって、主に以下のものが挙げられる。
例えば、矩形断面を有する外部導体の材料としては、円形断面の銅線を圧延して平板状に加工した銅箔リボンや、Al箔リボンなどを用いることができる。
例えば、円形断面を有する外部導体の材料としては、銅線、アルミ線、SUS線、絶縁皮膜被覆された金属線、カーボンファイバー、カーボンファイバーと一体化した樹脂繊維、錦糸線を用いることができる。
また、外部導体の材料として、有機導電材料を絶縁材料でコーティングしたものを用いてもよい。
【0086】
外部導体は、導体である芯材と短絡しないように、導体である芯材及び圧電体を包むように配置されていることが好ましい。
導体である芯材及び圧電体の包み方としては、銅箔などを螺旋状に巻回して包む方法や、銅線などを筒状の組紐にして、その中に包みこむ方法などを選択することができる。
なお、上記包み方は、これら方法に限定されない。
導体である芯材及び圧電体を包み込むことにより、静電シールドの効果をより高めることができる。
また、外部導体の配置は、圧電基材の最小基本構成単位(すなわち、導体及び圧電体)を円筒状に包接するように配置することも好ましい形態の一つである。
また、例えば、上記最小基本構成単位を備えた圧電基材を用いて、後述する圧電編物や圧電織物をシート状に加工した場合、その加工物の対向する片面若しくは両面に、面状若しくはシート状の導体を近接して配置することも好ましい形態の一つである。
【0087】
外部導体の断面形状は、円形状、楕円形状、矩形状、異形状など様々な断面形状を適用することができる。特に、矩形断面は、導体及び圧電体などに対して、平面で密着することができるため、効率的に圧電効果により発生した電荷を電圧信号として検出することができる。
【0088】
<絶縁体>
(第1態様の絶縁体)
本実施形態の圧電基材は、さらに、第1態様の絶縁体を備えていてもよい。
第1態様の絶縁体は、内部導体の外周面に沿って螺旋状に巻回されることが好ましい。
この場合、第1態様の絶縁体は、圧電体から見て、内部導体とは反対側に配置されていてもよく、内部導体と圧電体との間に配置されていてもよい。
また、第1態様の絶縁体の巻回方向は、圧電体の巻回方向と同じ方向であってもよく、異なる方向であってもよい。
特に、圧電基材が外部導体を備える場合においては、圧電基材がさらに第1態様の絶縁体を備えることにより、圧電基材が屈曲変形する時に、内部導体と外部導体の電気的短絡の発生を抑制しやすくなるという利点がある。
【0089】
第1態様の絶縁体としては、特に限定はないが、例えば、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、四フッ化エチレン・パーフロロプロピルビニルエーテル共重合体(PFA)、フッ素ゴム、ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ゴム(エラストマーを含む)等が挙げられる。
第1態様の絶縁体の形状は、導体に対する巻回の観点から、長尺形状であることが好ましい。
(第2態様の絶縁体)
本発明の圧電基材において、外周に外部導体を備える場合、さらに、第1の外部導体の外周に第2態様の絶縁体を備えていてもよい。
これにより、静電シールドすることが可能となり、外部の静電気の影響による、導体(好ましくは内部導体)の電圧変化が抑制される。
【0090】
第2の絶縁体には特に限定はないが、例えば、第1態様の絶縁体として例示した材料が挙げられる。
また、第2態様の絶縁体の形状は特に限定はなく、外部導体の少なくとも一部を被覆できる形状であればよい。
【0091】
本実施形態の圧電基材の最外周に、絶縁体を設ける方法としては、絶縁体が設けられる前の圧電基材に対し、長尺状の絶縁体を巻回する方法;円筒形状の絶縁体(例えば熱収縮チューブ)の内部空間に絶縁体が設けられる前の圧電基材を配置し、次いで熱によって円筒形状の絶縁体を収縮させて密着させる方法;絶縁性の溶融樹脂で被覆して冷却固化させる方法;絶縁性の樹脂塗工液をコーティングして固化させる方法;等が挙げられる。
【0092】
<接着剤>
本実施形態の圧電基材は、接着剤を含んでいてもよい。
圧電基材が接着剤を含む態様では、少なくとも、螺旋状に巻回されている圧電体を機械的に一体化させることができる。
また、圧電基材が芯材等の圧電体以外の部材(芯材、外部導体、等)を備える場合には、接着剤により、圧電体と圧電体以外の部材とを一体化させることもできる。
圧電体(又は、圧電体及び圧電体以外の部材)を機械的に一体化させることにより、圧電基材に力が印加された場合に、圧電基材中の圧電体に力が作用しやすくなる。したがって、圧電性がより向上する。
【0093】
接着剤の材料としては、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、酢酸ビニル樹脂系エマルション形接着剤、(EVA)系エマルション形接着剤、アクリル樹脂系エマルション形接着剤、スチレン・ブタジエンゴム系ラテックス形接着剤、シリコーン樹脂系接着剤、α-オレフィン(イソブテン-無水マレイン酸樹脂)系接着剤、塩化ビニル樹脂系溶剤形接着剤、ゴム系接着剤、弾性接着剤、クロロプレンゴム系溶剤形接着剤、ニトリルゴム系溶剤形接着剤等、シアノアクリレート系接着剤等が挙げられる。
【0094】
<その他の要素>
本実施形態の圧電基材は、上述した各要素以外のその他の要素を備えていてもよい。
その他の要素として、例えば、長尺状の圧電体以外の繊維が挙げられる。
本実施形態の圧電基材では、長尺状の圧電体とともに、長尺状の圧電体以外の繊維が巻回されていてもよい。
また、本実施形態の圧電基材には公知の取出し電極を接合することができる。取出し電極としては、コネクター等の電極部品、圧着端子などが挙げられる。電極部品は、半田付けなどのろう付け、導電性接合剤等により圧電基材と接合することができる。
【0095】
以下、本実施形態の圧電基材の具体例について、図面を参照しながら説明するが、本実施形態の圧電基材は以下の具体例に限定されるものではない。
なお、全図面を通じ、実質的に同一の要素には同一の符号を付し、重複した説明を省略することがある。また、本実施形態の圧電基材の具体例において、後述する圧電基材50A、圧電基材50B、及び圧電基材50Cは、上述した圧電基材50の一例である。
【0096】
<具体例A>
図8は、本実施形態の具体例Aに係る圧電基材を模式的に示す概略側面図であり、
図9は、
図8のX-X’線断面図である。
具体例Aは、第1態様の圧電基材(芯材を備える圧電基材)のうち、外部導体を備えない態様の具体例である。
【0097】
図8に示されるように、具体例Aである圧電基材50Aは、導体である長尺状の芯材52と、長尺状の圧電体54Aと、を備えている。圧電体54Aは、芯材52の外周面に沿って、螺旋角度β1にて一端から他端にかけて、隙間がないように一方向に螺旋状に巻回されている。
ここで、螺旋角度β1は、側面視において、螺旋軸G1の方向(この例では芯材52の軸方向)と、圧電体54Aの長さ方向と、のなす角度である。
この圧電基材50Aでは、圧電体54Aは、芯材52に対して左巻きで巻回している。具体的には、圧電基材50Aを芯材52の軸方向の一端側(
図8の右端側)から見たときに、圧電体54Aは、芯材52の手前側から奥側に向かって左巻きで巻回している。
また、
図8において、圧電体54Aに含まれる光学活性ポリペプチドの主配向方向は、両矢印E1で示されている。すなわち、光学活性ポリペプチドの主配向方向と、圧電体54Aの長さ方向とが、略平行となっている。
圧電基材50Aでは、各部材(芯材5A及び圧電体54A)間に接着剤(不図示)が含浸されることにより、各部材が一体化(固定化)されている。
【0098】
以下、圧電基材50Aの作用効果について説明する。
例えば、圧電基材50Aの長さ方向に張力が印加されると、圧電体54Aに含まれる光学活性ポリペプチドにずり応力が加わり、光学活性ポリペプチドは分極する。この光学活性ポリペプチドの分極は、
図9において矢印で示されるように、圧電基材50Aの径方向に位相が揃えられて生じると考えられる。これにより、圧電基材50Aの圧電性が発現する。
さらに、圧電基材50Aは、導体である芯材52を備えるので、圧電体54Aに生じた電気的信号(電圧信号又は電荷信号)を、芯材52を介してより容易に取り出すことができる。
【0099】
<具体例B>
図10は、本実施形態の具体例Bに係る圧電基材を模式的に示す概略側面図である。
具体例Bは、第1態様の圧電基材(芯材を備える圧電基材)のうち、外部導体を備える態様の具体例である。
【0100】
図10に示されるように、具体例Bである圧電基材50Bは、前述の具体例Aである圧電基材50Aに対し、圧電体54Aよりも外周側に外部導体56を備え、芯材52と外部導体56とが電気的に絶縁されている点で異なる。その他の構成は、前述の具体例Aである圧電基材50Aと同様である。
外部導体56の好ましい態様は前述のとおりである。外部導体56は、例えば、芯材52の周りに螺旋状に巻回されている圧電体54Aの周りに、銅箔リボンを螺旋状に巻回することによって形成される。
圧電基材50Bでは、各部材(芯材52、圧電体54A、及び外部導体56)間に接着剤(不図示)が含浸されることにより、各部材が一体化(固定化)されている。
図10に示されるように圧電基材50Bでは、側面視において、圧電体54Aの巻回体(すなわち、螺旋状に巻回された圧電体54A)の端部と外部導体56の端部との位置がずれている。これにより、芯材52と外部導体56とが確実に絶縁されるようになっている。但し、これらの端部の位置は必ずしもずれている必要はなく、導体である芯材と外部導体とが電気的に絶縁されている限りにおいて、これらの端部の位置は側面視において重なる位置であってもよい。
【0101】
圧電基材50Bにおいても、圧電基材50Aと同様の作用効果が奏される。
さらに、圧電基材50Bは外部導体56を備えるので、外部導体56によって圧電基材50Bの内部(圧電体54A、及び、導体である芯材52)を静電シールドすることができる。このため、圧電基材50Bの外部の静電気の影響による、芯材52の電圧変化を抑制でき、その結果、より安定した圧電性が得られる。
【0102】
なお、圧電基材50Bにおいて、外部導体56は省略されていてもよい。
外部導体56が省略されている場合においても、導体である芯材52による作用効果が奏されることは言うまでもない。
また、外部導体56が省略されている場合においても、同軸ケーブルに備えられる内部構造(内部導体及び誘電体)と同一の構造となるため、同軸ケーブルに適用した場合、電磁シールド性が高く、ノイズに強い構造となり得る。
【0103】
<第1実施形態のまとめ>
本実施形態の移動体用シート20は、移動体に設けられ、人体を支持する支持体と、支持体に設けられ、人体から受ける圧力を検知する圧電基材50と、を備える。移動体用シート20は、圧電基材50が軸状の内部導体(芯材52)と、内部導体(芯材52)の周囲において同軸状に設けられ、かつ光学活性ポリペプチドを含む長尺状圧電体54Aと、を備える。
【0104】
圧電基材50は、圧電体54Aが内部導体(芯材52)に螺旋状に巻回されることにより、加圧された方向と異なる方向に、ずり応力に応じた電気的信号を出力可能である。そのため、移動体用シート20に設置されたライン上の圧電基材50は、当該移動体用シート20に対する圧力による軸方向に張力が生じることで電気的信号を出力する。一方、PVDFを移動体用シートに適用した場合、当該移動体用シート20に対する圧力と同じ方向にPVDFが加圧されなければ、電気的信号が生じない。そのため、本実施形態の圧電基材50によれば、圧力検知により電気的信号を出力するPVDFを含む圧電体と比べて、張力検知により電気的信号を出力するため、移動体用シートのような弾性体に対して設置しても高い感度を得ることができる。
また、圧電基材50を構成する光学活性ポリペプチドを含む圧電体54Aは、シート状ではなく、ライン状に配置可能であり、本実施形態によれば、シート状に配置されているPVDFを含む圧電体と比較して、配置箇所の制約が少ない点において優れている。
【0105】
また、PVDFを含む圧電体は、温度変化による電荷量の出力の変化が大きい。これに対して、本実施形態の圧電基材50は、PVDFを含む圧電体を備えた移動体用シートと比較して、温度変化による電荷量の出力の変化が小さく、電荷量の出力が安定している点において優れている。
一方、ポリ乳酸を含む圧電体は、昇温時に所定の温度より高温になった場合、センサ感度が低下する傾向にある。これに対して、本実施形態の圧電基材50は、ポリ乳酸を含む圧電体を備えた移動体用シートと比較して、所定の温度より高温になった場合であってもセンサ感度が安定している点において優れている。
【0106】
したがって、本実施形態の圧電基材50は、感度に優れており、かつ高温に変化する環境下である車両のシートクッション21及びシートバック22に配置して、人体から生体情報を検出するために用いるのに適切である。
【0107】
また、パネルを設け、当該パネルに接している人体によって生じる静電容量の変化から人体の接触を検知する静電容量方式の接触センサを移動体用シートに適用した場合、移動体用シートにおけるパネルで静電気が発生し、生体情報を誤検出することがある。
一方、本実施形態の移動体用シート20は、圧電基材50がシートクッション21及びシートバック22における弾性体24の内部に配置されており、静電気に影響されないため、生体情報の誤検出を防止可能である。
【0108】
また、所定の間隔を設けて重畳する2枚のフィルムにおいて、上面のフィルムが触れられることによってたわみ、たわみによって上面のフィルムが下面のフィルムに接触する。当該接触した箇所から通電することを検知することによって、フィルムへの接触を検知する抵抗感圧式の感圧センサがある。当該抵抗感圧式の感圧センサを移動体用シートに適用した場合、接触箇所の位置を検出するためには、感圧センサに常時電圧を供給し、流れる電流測定による抵抗測定が必要になり、電力を供給し続ける必要がある。
一方、本実施形態の移動体用シート20は、圧電基材50に圧力が入力されることによって発生した電気的信号を検出し、生体情報が検出可能であるため、電力の供給を要しない。
【0109】
したがって、本実施形態の移動体用シート20は、静電気による生体情報の誤検出が抑制可能、かつ電力の消費が抑制可能であるため、人体から生体情報を検出するために用いるのに適切である。
【0110】
[第2実施形態]
次に、
図11を参照して、第2実施形態に係る移動体用シートについて説明する。
図11(a)は、高さ方向の上方から見た移動体用シート20の平面図を示しており、
図11(b)は、奥行き方向の手前から正面に見た移動体用シート20の正面図を示している。なお、本実施形態は、第1実施形態とは、圧電基材50の配置のみ異なるが、その他の形態は同一である。以下の説明では、第1実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0111】
一例として、
図11(a)に示すように、シートクッション21において、シートクッション21に圧電基材50が重畳しないように渦巻き状に配置されている。また、
図11(b)に示すように、シートバック22において、シートバック22に圧電基材50が重畳しないように渦巻き状に配置されている。
【0112】
シートクッション21及びシートバック22に重畳しないように渦巻き状に圧電基材50が配置されることによって、シートクッション21及びシートバック22の表面における広い範囲から生体情報の検出が可能となり、様々な体格の人をカバーできる。
【0113】
[第2実施形態の変形例]
第2実施形態では、シートクッション21及びシートバック22に圧電基材50が渦巻き状に配置されている形態について説明した。しかし、これに限定されない。一例として
図12に示すように、圧電基材50がつづら折り状に配置されていてもよい。ここで、
図12(a)は、高さ方向の上方から見た移動体用シート20の平面図を示しており、
図12(b)は、奥行き方向の手前から正面に見た移動体用シート20の正面図を示している。
【0114】
図12(a)に示すように、シートクッション21において、圧電基材50が重畳しないようにつづら折り状に配置されている。また、
図12(b)に示すように、シートバック22において、圧電基材50が重畳しないようにつづら折り状に配置されている。
【0115】
シートクッション21及びシートバック22において、重畳しないようにつづら折り状に圧電基材50が配置されることによって、第2実施形態と同様に、シートクッション21及びシートバック22の表面における広い範囲から生体情報の検出が可能となり、様々な体格の人をカバーできる。
【0116】
[第3実施形態]
次に、
図13を参照して、第3実施形態に係る移動体用シートについて説明する。
図14(a)は、高さ方向の上方から見た移動体用シート20の平面図を示しており、
図13(b)は、奥行き方向の手前から正面に見た移動体用シート20の正面図を示している。なお、本実施形態は、第2実施形態とは、圧電基材50の配置、及び機能構成のみ異なるが、その他の形態は同一である。以下の説明では、第2実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0117】
一例として
図13(a)に示すように、シートクッション21において、シートクッション21の幅方向に沿って、互いに独立した複数の圧電基材50が配置されている。また、
図13(b)に示すように、シートバック22において、シートバック22の幅方向に沿って、互いに独立した複数の圧電基材50が配置されている。
【0118】
次に、
図14を参照して、互いに独立した複数の圧電基材50が配置された場合における生体情報検出装置10及び制御装置100の機能構成について説明する。
図14に示すように、生体情報検出装置10は、検知部41、及び検出部42Bを有している。各機能構成は、CPU31がストレージ34に記憶された実行プログラムを読み出し、これを実行することによって実現される。なお、
図14における
図7に示す生体情報検出装置10及び制御装置100の機能と同一の機能については、
図7と同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0119】
図14に示す検出部42Bは、検知部41が検知したデジタル信号の大きさ、及び周期から呼吸、及び脈拍等の生体情報を検出する機能を有している。また、検出部42Bは、隣接する圧電基材50同士の出力信号を比較することで、乗員が着座している位置を示す位置情報を検出する機能を有している。
【0120】
また、
図14に示すように、制御装置100は、取得部111B、及び制御部112Bを有している。各機能構成は、CPU101がストレージ104に記憶された実行プログラムを読み出し、これを実行することによって実現される。
【0121】
取得部111Bは、生体情報検出装置10から生体情報及び位置情報を取得する機能を有している。
【0122】
制御部112Bは、取得した生体情報及び位置情報を用いて、機器200を制御する機能を有している。例えば、制御部112Bは、生体情報に応じて、各々の機器200に処理を実行する指示を送信する。具体的には、制御部112Bは、生体情報から心拍の間隔のゆらぎを検出し、当該心拍のゆらぎが小さくなった(心拍の間隔が安定している)場合、乗員が眠くなっている状態であると判定して、機器200としてのアクチュエータにブレーキを作用させる指示を送信する。また、制御部112Bは、生体情報から心拍の大きさ、及び回数を検出し、心拍の大きさが乗員における平均値より大きく、かつ所定の期間の心拍の回数が乗員における平均値より多い場合、乗員は緊張状態にあると判定して、機器200としてのアクチュエータにブレーキを作用させる指示を送信する。また、制御部112Bは、生体情報から心拍の間隔のゆらぎに応じて乗員の五感を刺激するために、眠気防止のための臭いを発生させる、及びシートベルトを締める等の指示を送信する。また、制御部112Bは、位置情報を用いて、乗員の着座姿勢を判定し、着座姿勢に関する音声情報を出力する指示をスピーカ等の入出力部105に送信してもよいし、文字情報を出力する指示をモニタ等の表示部106に送信してもよい。
【0123】
互いに独立した複数の圧電基材50が配置されることによって、各々の圧電基材50が独立に検知した圧力を比較して、乗員の生体情報、及び位置情報(着座姿勢)が検出され、生体情報、及び位置情報を用いて機器200が制御される。
【0124】
[第3実施形態の変形例]
第3実施形態では、複数の圧電基材50が幅方向に沿って配置されている形態について説明した。しかし、これに限定されない。一例として
図15に示すように、シートクッション21に複数の圧電基材50が奥行き方向に配置され、シートバック22に複数の圧電基材50が高さ方向に配置されてもよい。
【0125】
図15(a)に示すように、シートクッション21において、シートクッション21の奥行き方向に沿って、互いに独立した複数の圧電基材50が配置されている。また、
図15(b)に示すように、シートバック22において、シートバック22の高さ方向に沿って、互いに独立した複数の圧電基材50が配置されている。
【0126】
互いに独立した複数の圧電基材50が配置されることによって、第4実施形態と同様に、各々の圧電基材50が独立に検知した圧力を比較して乗員の位置情報(着座姿勢)が検出される。
【0127】
ここで、互いに独立した複数の圧電基材50をシートクッション21及びシートバック22に設ける場合、圧電体54Aが右旋方向に巻回された圧電基材50のみを配置してもよいし、圧電体54Aが左旋方向に巻回された圧電基材50のみを配置してもよい。また、交互に設置する等、圧電体54Aが右旋方向に巻回された圧電基材50、及び圧電体54Aが左旋方向に巻回された圧電基材50の両方をシートクッション21及びシートバック22に配置してもよい。
【0128】
[第4実施形態]
次に、
図16を参照して、第4実施形態に係るシートクッション21について説明する。
図16は、高さ方向の上方から見た移動体用シート20の平面図を示している。なお、本実施形態は、第3実施形態とは、圧電基材50の配置のみ異なるが、その他の形態は同一である。以下の説明では、第3実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0129】
一例として
図16に示すように、シートクッション21において、幅方向及び奥行き方向の各々に複数の圧電基材50が交差するように配置されている。具体的には、幅方向に沿って延在する3本の圧電基材50が、奥行き方向に等間隔に配置されている。また、奥行き方向に沿って延在する3本の圧電基材50が、幅方向に等間隔に配置されている。
【0130】
幅方向及び奥行き方向に圧電基材50が配置されることにより、奥行き方向における各圧電基材50の出力と、幅方向における各圧電基材50の出力との関係により、シートクッション21における乗員の体圧分布や、乗員の重心の位置を検出可能である。すなわち、本実施形態によれば、より正確な乗員の着座姿勢(位置情報)が検出可能である。
【0131】
[第5実施形態]
次に、
図17を参照して、第5実施形態に係るシートクッション21について説明する。
図17は、高さ方向の上方から見た移動体用シート20の平面図を示している。なお、本実施形態は、第4実施形態とは、圧電基材50の配置のみ異なるが、その他の形態は同一である。以下の説明では、第4実施形態と同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0132】
一例として
図17に示すように、シートクッション21において、乗員の大腿部が接する箇所に、乗員の両足を各々検出するために複数の圧電基材50が配置されている。また、図示しないアームレストに圧電基材50が配置されている。
【0133】
人体が接する箇所に応じて、圧電基材50が配置されることによって、乗員の着座姿勢、乗員の腕部の配置、及び乗員の脚部の配置が検出可能である。
【0134】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0135】
[実施例1]
<光学活性ポリペプチド繊維の準備>
光学活性ポリペプチド繊維として、生糸シルクを準備した。生糸シルクは、光学活性ポリペプチドからなる長繊維である。生糸シルクは、21デニールである。生糸シルクの太さは0.06mm-0.04mmである。
【0136】
(光学活性ポリペプチド繊維の配向度Fの測定)
広角X線回折装置(リガク社製の「RINT2550」、付属装置:回転試料台、X線源:CuKα、出力:40kV 370mA、検出器:シンチレーションカウンター)を用い、生糸シルク(光学活性ポリペプチド繊維)をホルダーに固定し、結晶面ピーク[2θ=20°]の方位角分布強度を測定した。
得られた方位角分布曲線(X線干渉図)において、ピークの半値幅(α)から、下記式(a)により、生糸シルク(光学活性ポリペプチド繊維)の配向度F(c軸配向度)を算出した。
光学活性ポリペプチド繊維の配向度Fは、0.91である。
配向度(F)=(180°-α)/180° … (a)
(αは配向由来のピークの半値幅)
【0137】
<圧電糸の作製>
生糸シルクを公知の方法により、圧電糸として、6本片撚り(撚数150T/m)した糸を精錬して、精練シルクを作製した。この精錬シルクの撚り糸の配向度Fは、0.86である。
光学活性ポリペプチド繊維の配向度Fが0.86であること、及び精練シルクを用いて6本片撚りした糸(圧電糸)を作製したことから、圧電糸の長さ方向と、精練シルク(光学活性ポリペプチド繊維)に含まれる光学活性ポリペプチドの主配向方向とは略平行であると評価することができる。
【0138】
<圧電基材の作製>
内部導体として、株式会社明清産業製の錦糸線「U24-01-00」(線径0.26mm、長さ200mm)を準備した。
圧電糸を内部導体の外周面上に、螺旋角度が約45°となるように、左巻きで極力隙間なく、巻きつけた。これにより、内部導体の外周面上に層(以下、「圧電糸層」という。)を形成し、圧電基材前駆体を得た。圧電糸層は、内部導体の外周面の全面を覆っていた。つまり、内部導体の外周面は露出していなかった。
なお、「左巻き」とは、内部導体(錦糸線)の軸方向の一端から見たときに、内部導体の手前側から奥側に向かって圧電糸が左巻きで巻回していることを示す。「螺旋角度」とは、内部導体の軸方向に対する、圧電糸の長さ方向とがなす角度を示す。
次に、接着剤として東亞合成社製のアロンアルファ902H3(シアノアクリレート系接着剤)を滴下し、含浸させることにより、生糸を機械的に一体化させた。
次に、外部導体として、幅0.3mmにスリットカットした銅箔リボンを準備した。この銅箔リボンを、芯材の周りに巻回し、機械的に一体化した生糸の周りに、生糸がほぼ露出しないように隙間無く巻回した。ここで、銅箔リボンの巻回方向は右巻きとした。また、銅箔リボンは、2つの圧着端子に接触しないように巻回した。
次に、さらに絶縁被覆として、厚さ0.15mmのPTFEフィルムを左巻きにカバリング巻して、外部銅箔が露出しないように、全体を覆った。
以上により、圧電基材を得た。
【0139】
<クッションに圧電基材を配置>
長さ20cmの圧電基材を用意し、圧電基材の末端を同軸線に接続し、内部導体と外部導体が電気的接触をしないように配置し、前記接続部分を外部から包むように銅箔で覆い、前記銅箔と外部導体を半田付けにより電気的に接続した。次に、
図4(a)に示すように1本の圧電基材を座面のウレタンクッションの上に配置しカプトンテープを用いて固定した。
【0140】
<圧電基材の圧電感度の検出>
また、圧電基材からの信号の検出は、以下の方法とした。
圧電基材の末端に接続した同軸線を検出回路に接続した。ここで、外部導体側の配線を検出回路のグラウンド側に接続した。
検出回路は、
図18に示すような増幅回路を用い、可変抵抗を調整し、1倍の増幅度に設定した。
この回路の出力電圧(OUTPUT)をNI製のUSB-6002に接続し、デジタル信号に変換し、USB接続でパソコンに入力し、パソコン上で制御用ソフトLabViewを用いて、ローパスフィルターを通し、移動平均処理をして、電圧信号を測定した。
ここで、ローパスはカットオフ周波数30Hzのバターワ―スフィルター3次を用い、電圧波形を測定した。
このシステムを用い、着座中の生体情報の検知を以下の方法で行った。
圧電基材から検出した電圧変動を
図19に示す。
図19に示すように、着座した人の太腿の下に配置した圧電基材から微妙な振動を検知し、1秒前後で周期的な心拍による振動を検知した。
また、この電圧信号を数分取り込み、数秒から10秒程度の周期的な呼吸による体動に対応する電圧変動も検出できた。
【0141】
なお、上述の本願の開示する技術の一実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0142】
(付記1)
前記圧電基材は、前記内部導体の外周面に沿って螺旋状に巻回された絶縁体をさらに備え、
前記絶縁体が、前記内部導体と前記圧電体との間に配置されている、
<5>に記載の移動体用シート。
【符号の説明】
【0143】
1 制御システム
2 車両(移動体)
10 生体情報検出装置
20 移動体用シート
21 シートクッション(支持体)
22 シートバック(支持体)
41 検知部
42A、42B 検出部
50、50A、50B、50C 圧電基材
52 芯材(内部導体)
54A 圧電体
56 外部導体
100 制御装置