IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 信越ファインテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-フェイスシールド 図1
  • 特開-フェイスシールド 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018596
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】フェイスシールド
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20220120BHJP
   A42B 3/18 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
A41D13/11 L
A42B3/18
A41D13/11 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020121807
(22)【出願日】2020-07-16
(71)【出願人】
【識別番号】504002300
【氏名又は名称】信越ファインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】小濱 芳郎
(72)【発明者】
【氏名】西川 倫
【テーマコード(参考)】
3B107
【Fターム(参考)】
3B107AA01
3B107BA07
3B107DA07
3B107DA13
(57)【要約】
【課題】 製造作業を簡素化して製造時間を短縮したり、部品点数や製造コストを削減でき、しかも、殺菌作業の手間を省けるフェイスシールドを提供する。
【解決手段】 装着者1の頭部2に嵌合される嵌合板10と、嵌合板10の前部表面に設けられる取付領域11と、取付領域11に着脱自在に粘着されて装着者1の少なくとも顔面3を覆う光透過性の樹脂フィルム20とを備え、取付領域11を、タック性を有するゴム素材30により形成する。嵌合板10と樹脂フィルム20を高精度に位置決め固定する必要がなく、ゴム素材30に樹脂フィルム20を粘着するだけで良いので、フェイスシールドの完成までの時間を短縮できる。また、ゴム素材30から樹脂フィルム20を剥離できるので、嵌合板10を減菌して再利用すれば、新たな樹脂フィルム20のみを用意するだけで良い。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の頭部に嵌められる嵌合部材と、この嵌合部材に設けられる取付領域と、この取付領域に着脱自在に取り付けられて装着者の少なくとも顔面を覆う光透過性の樹脂フィルムとを含み、嵌合部材と取付領域のうち、少なくとも取付領域を、タック性を有するゴム素材により形成したことを特徴とするフェイスシールド。
【請求項2】
嵌合部材を略C字形に形成し、この嵌合部材の後部両端のうち、少なくとも一端に嵌め合わせサイズ調整具を取り付けた請求項1記載のフェイスシールド。
【請求項3】
嵌合部材の前部に取付領域を設け、嵌合部材内の両側部間に、装着者の額に接触する区画部材を架設し、この区画部材により、装着者の顔面と樹脂フィルムとの間に空間を区画するようにした請求項1又は2記載のフェイスシールド。
【請求項4】
樹脂フィルムを2軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルムとした請求項1、2、又は3記載のフェイスシールド。
【請求項5】
樹脂フィルムに防曇性を付与した請求項1ないし4のいずれかに記載のフェイスシールド。
【請求項6】
樹脂フィルムの厚さを60μm以上とした請求項1ないし5のいずれかに記載のフェイスシールド。
【請求項7】
ゴム素材を低硬度シリコーンとした請求項1ないし6のいずれかに記載のフェイスシールド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療、介護、接客等の現場で使用されるフェイスシールドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、医療現場や介護現場等において、湿性生体物質の飛沫が飛散する場合に、飛沫に含まれる病原体による曝露から眼部、鼻腔、口腔粘膜を防護するフェイスシールドが用いられている(特許文献1、2参照)。また、製造現場においても、防塵飛沫対策のため、フェイスシールドが利用されている。
【0003】
この種のフェイスシールドは、図示しないが、例えば(1)作業者である装着者の頭部を保護するヘルメットと、このヘルメットの両側部に保持部材を介し上下動可能に支持されて装着者の顔面を被覆する保護板とを備え、この保護板がポリカーボネート(PC)樹脂やアクリル樹脂により湾曲した透明板に成形されるタイプ、(2)医療従事者である装着者の額付近に嵌合する湾曲バンドと、この湾曲バンドに固定されて装着者の顔面を被覆する保護板とを備え、この保護板がポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂により湾曲した透明板に成形されるタイプ等があげられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3224635号公報
【特許文献2】特開2019‐85669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来におけるフェイスシールドは、保持部材又は湾曲バンドに保護板が組み合わされて位置決め固定される必要があるので、製造作業が煩雑化し、完成までに時間を要するという問題がある。また、(1)のタイプの場合には、ヘルメットと保護板とが分離不能なので、部品点数が増大し、製造コストの削減を図ることができない。さらに、(2)のタイプの場合には、消毒液を用いた浸漬法により長期使用するのを前提としているが、単なる浸漬法では保護板に付着した病原体を除去できないおそれがある。したがって、フェイスシールドの長期の使用は、衛生上、問題がある。
【0006】
本発明は上記に鑑みなされたもので、製造作業を簡素化して製造時間を短縮したり、部品点数や製造コストを削減することができ、しかも、殺菌作業の手間を省くことのできるフェイスシールドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明においては上記課題を解決するため、装着者の頭部に嵌められる嵌合部材と、この嵌合部材に設けられる取付領域と、この取付領域に着脱自在に取り付けられて装着者の少なくとも顔面を覆う光透過性の樹脂フィルムとを含み、嵌合部材と取付領域のうち、少なくとも取付領域を、タック性を有するゴム素材により形成したことを特徴としている。
【0008】
なお、嵌合部材を略C字形に形成し、この嵌合部材の後部両端のうち、少なくとも一端に嵌め合わせサイズ調整具を取り付けることができる。
また、嵌合部材の前部に取付領域を設け、嵌合部材内の両側部間に、装着者の額に接触する区画部材を架設し、この区画部材により、装着者の顔面と樹脂フィルムとの間に空間を区画することができる。
また、樹脂フィルムを2軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルムとすることもできる。
また、樹脂フィルムに防曇性を付与することが可能である。
【0009】
また、樹脂フィルムの厚さを60μm以上とすることが可能である。
また、ゴム素材を低硬度シリコーンとすることが可能である。
また、ゴム素材の硬度は、JIS K6253の規定に準拠してデュロメータタイプAで測定した場合に、2°以上80°以下が好ましい。
さらに、ゴム素材が低硬度シリコーンの場合、この低硬度シリコーンの硬度は、JIS K6253の規定に準拠してデュロメータタイプAで測定した場合に、2°以上20°以下が好ましい。
【0010】
ここで、特許請求の範囲における嵌合部材は、平面略C字形、略O字形、略U字形等に形成することができる。この嵌合部材が平面略C字形の場合、平面略C字形には、平面C字形やその類似形(例えば、馬蹄形等)が含まれる。嵌合部材には、必要に応じ、可撓性、タック性、バネ性等を付与することができる。また、取付領域は、嵌合部材の前部の他、嵌合部材の一側部から前部を経由して他側部に亘る部分等に設けることができる。
【0011】
樹脂フィルムは、縦長でも良いし、横長でも良い。また、取付領域のゴム素材には、必要枚数(例えば、2枚、3枚等)の樹脂フィルムを並べて粘着等することが可能である。ゴム素材の表面には、鏡面加工を施し、密着性を向上させることができる。さらに、本発明に係るフェイスシールドは、医療、介護、家庭、教育現場、小売店、歯科、実験、製造、接客、剪定、農作業、料理等の現場で使用することが可能である。
【0012】
本発明によれば、フェイスシールドを製造して使用可能な状態にする場合には、例えば装着者の頭部に嵌合部材を嵌めてその取付領域を装着者の額側に位置決めし、取付領域のタック性を有するゴム素材に樹脂フィルムを粘着して装着者の少なくとも顔面に対向させれば、フェイスシールドを製造することができる。このフェイスシールドにより、装着者は、少なくとも顔面を有害飛散物等から保護しながら所定の作業等に従事することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、嵌合部材と取付領域のうち、少なくとも取付領域を、タック性を有するゴム素材により形成するので、製造作業を簡素化して製造時間を短縮したり、部品点数や製造コストを削減することができるという効果がある。また、樹脂フィルムを使い捨てることができるので、汚れた樹脂フィルムを殺菌して再利用する必要がなく、殺菌作業の手間を省くことができるという効果がある。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、嵌め合わせサイズ調整具を用いれば、装着者の頭部の大きさに応じて嵌合部材の大きさを調整することができるので、装着者の頭部から嵌合部材がずり下がり、位置ずれ等するのを防止することができる。
請求項3記載の発明によれば、区画部材を架設する場合、装着者の額に区画部材が接触することにより、装着者の顔面と樹脂フィルムとの間に空間が形成され、装着者の顔面に樹脂フィルムが非接触となるので、例え装着者が眼鏡やマスク等を使用していても、眼鏡やマスク等に樹脂フィルムが接触することにより、装着者の視界が悪化したり、呼吸困難等になるのを防止することができる。
【0015】
請求項4記載の発明によれば、樹脂フィルムとして、2軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルムを用いるので、優れた印刷性、光沢性、衝撃性、耐水性、耐熱性、透明性、防湿性を有する樹脂フィルムを得ることができる。また、環境に良い樹脂フィルムを提供することもできる。
請求項5記載の発明によれば、樹脂フィルムとして、防曇性を有する樹脂フィルムを用いるので、フェイスシールドの使用時に樹脂フィルムがフェイスシールド装着者の吐息で曇り、視界が悪化したり、作業等に支障を来すのを防ぐことが可能となる。
【0016】
請求項6記載の発明によれば、樹脂フィルムの厚さを60μm以上とするので、樹脂フィルムに強度や剛性を付与し、樹脂フィルムに装着者の少なくとも顔面を保護させることが可能となる。
請求項7記載の発明によれば、ゴム素材を低硬度シリコーンとするので、優れた耐熱性、温度安定性、耐候性、耐寒性、粘着性、密着力、撥水性等を得ることが可能となる。また、ゴム素材が低硬度シリコーンの場合、樹脂フィルムの材質や透明性にかかわらず、樹脂フィルムを適切に粘着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係るフェイスシールドの実施形態を模式的に示す側面説明図である。
図2】本発明に係るフェイスシールドの実施形態における嵌合板と取付領域のゴム素材を模式的に示す斜視説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施の形態を説明すると、本実施形態におけるフェイスシールドは、図1図2に示すように、医療従事者等からなる装着者1の頭部2に嵌合される軽量の嵌合板10と、この嵌合板10に設けられる取付領域11と、この取付領域11に粘着されて装着者1の少なくとも顔面3を覆う光透過性の樹脂フィルム20とを備え、取付領域11を、タック性を有するゴム素材30により形成するようにしている。
【0019】
嵌合板10は、図2に示すように、例えば所定の材料により平面略C字形の細長い板に形成されて装着者1の頭部2に着脱自在に嵌合し、連続して湾曲した前部の表面に横長の取付領域11が設けられるとともに、相対向する後部の両端に嵌合サイズ調整孔12がそれぞれ穿孔されており、この一対の嵌合サイズ調整孔12にサイズ調整紐13が挿通して蝶結び等に緊縛されることにより、装着者1の頭部2の大きさに応じて内径サイズが調整される。
【0020】
嵌合板10の材料としては、特に限定されるものではないが、例えばポリプロピレン(PP)樹脂、ポリエステル(PEs)樹脂、ナイロン(PA)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、タック性を有する低硬度シリコーンゴム、中硬度や高硬度のシリコーンゴム、各種のエラストマーやゴム、スポンジ、布、又はこれらの組み合わせ等があげられる。この嵌合板10の材料は、嵌合板10が減菌して長期使用される場合には、樹脂含有の成形材料が使用され、所定の加工方法(例えば射出成形、プレス成形、樹脂シートの打ち抜き加工等)により嵌合板10が製造される。これに対し、嵌合板10が原則として使い捨てされる場合には、安価な樹脂の他、布等が使用される。
【0021】
嵌合板10は、例えば断面略I字形に形成され、内面の前部両側間には、装着者1の額に接触する可撓性の区画板14が平面略I字形に架設されており、この区画板14の額に対する接触により、装着者1の顔面3と取付領域11に粘着された樹脂フィルム20との間に1cm以上5cm以下、好ましくは約3cm程度の空間が区画されて通気性や曇り止め等に資することとなる。区画板14については、嵌合板10と同様の材料により形成したり、接着して架設したり、又は嵌合板10に嵌合する支持具により上下方向に揺動可能に架設しても良い。
【0022】
樹脂フィルム20は、所定の大きさ(例えば、315mm×315mm)を有する平面矩形の透明に形成され、必要に応じ、防曇性等が付与されており、平面弓なりに湾曲した状態で装着者1の顔面3、具体的には少なくとも額から顎までの領域に空間を介し対向して被覆保護するよう機能する。
【0023】
係る樹脂フィルム20としては、特に限定されるものではないが、例えば2軸延伸ポリプロピレン(OPP)樹脂フィルム、無軸延伸ポリプロピレン(CPP)樹脂フィルム、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂フィルム、非晶性ポリエチレンテレフタレート(A‐PET)樹脂フィルム、ポリアリーレンエーテルケトン(PAEK)樹脂フィルム等があげられる。これらの中では、2軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルムと無軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルムが好ましく、印刷性、光沢性、衝撃性、耐水性、耐熱性、透明性、防湿性に優れ、環境に良い安価な2軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルムが最適である。
【0024】
樹脂フィルム20の表裏両面のうち、少なくとも装着者1の顔面3に対向する裏面(片面)には、装着者1の吐息で曇ることのないよう防曇性や親水性が選択的に付与される。この場合には、樹脂フィルム20の成形時に成形材料に防曇フィラーが添加されたり、又は樹脂フィルム20に防曇剤や防曇フィルム等がコーティングされる。また、樹脂フィルム20の厚さは、40μm以上、好ましくは50μm以上150μm以下、より好ましくは60μm以上130μm以下、さらに好ましくは60μm以上100μm以下が良い。
【0025】
樹脂フィルム20の厚さは、40μm以上であれば良いが、防曇性を確保したい場合には、防曇剤や防曇フィルムの厚さに配慮して40μm以上150μm以下が良い。これに対し、強度や剛性を確保したい場合には、40μm以上、好ましくは60μm以上150μm以下が良い。
【0026】
樹脂フィルム20は、生分解性タイプやバイオ系等の種類があるが、特に問うものではない。樹脂フィルム20が2軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルムの場合、この2軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルムの具体例として、信越ポリマー株式会社製、サン・トックス株式会社製、フタムラ化学株式会社製、三井化学東セロ株式会社製等があげられる。
【0027】
ゴム素材30は、タック性(粘着性)を発揮するエラストマー等からなり、横長又は縦長に加工されて嵌合板10の前部表面に貼着されることで取付領域11として機能し、樹脂フィルム20の上部21や上端部22等に着脱自在に粘着する。このゴム素材30としては、例えば低硬度シリコーン、一般的な硬度のシリコーン、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系エラストマー、合成ゴム等があげられるが、強いタック性を確保したい場合には、低硬度シリコーンが好適である。
【0028】
ゴム素材30の硬度は、特に限定されるものではないが、密着性を得る観点からすると、JIS K6253の規定に準拠してデュロメータタイプAで測定した場合に、2°以上80°以下、好ましくは2°以上70°以下、より好ましくは2°以上60°以下が良い。ゴム素材30が一般的な硬度を有するシリコーン等の場合、50°前後の中硬度が良い。また、ゴム素材30の表面は、必要に応じ、鏡面加工され、保護用の離型樹脂フィルムが剥離可能に粘着される。
【0029】
ゴム素材30が低硬度シリコーンの場合、この低硬度シリコーンは、例えば強いタック性を発揮する低硬度で柔らかい安全なシリコーンシート等からなり、耐熱性、温度安定性、耐候性、耐寒性、密着力、吸着性、撥水性等に優れる。この低硬度シリコーンの硬度は、優れた粘着性や密着性を得る観点からすると、JIS K6253の規定に準拠してデュロメータタイプAで測定した場合に、2°以上80°以下、好ましくは2°以上20°以下、より好ましくは2°以上10°以下、さらに好ましくは2°以上9°以下が良い。
【0030】
ゴム素材30が低硬度シリコーンの場合、この低硬度シリコーンの特性としては、25℃における比重が1.00以上1.03以下、引張り強さ(MPa)が1.2以上、伸び(%)が1100以上、アングル形(N/mm)が3.2以上6.8以下、体積抵抗率(Ω・cm)が3×1017、圧縮永久歪特性(70℃×22h、30%圧縮の条件)が30以上37以下程度が良い。
【0031】
このようなゴム素材30の具体例としては、サカセ化学工業株式会社や巴工業株式会社が製造・販売しているタックシートがあげられる。また、低硬度シリコーンの具体例としては、低硬度放熱シリコーンゴムシート(両面粘着)[信越化学工業株式会社製:製品名 TC‐50TXS]、超低硬度シリコーン(MSG)[サンシンエンタープライズ株式会社製:製品名]、MSG‐05[木野機工株式会社製:製品名]等があげられる。
【0032】
上記構成において、フェイスシールドを製造して使用可能とする場合には、先ず、装着者1の頭部2に嵌合板10を嵌合し、サイズ調整紐13を緊縛して装着者1の頭部2の大きさに応じて嵌合板10の内径サイズを調整し、装着者1の額側に嵌合板10の前部、すなわち取付領域11を位置決めする。こうして嵌合板10の取付領域11を位置決めしたら、この取付領域11のゴム素材30に、用意した枚葉の樹脂フィルム20の上部21を調整しながら粘着し、装着者1の少なくとも顔面3に湾曲した樹脂フィルム20を空間を介して対向させれば、図1に示す軽量のフェイスシールドを製造することができる。
【0033】
この際、取付領域11が密着力に優れるゴム素材30なので、樹脂フィルム20の材質や透明性にかかわらず、ゴム素材30に樹脂フィルム20を適切に粘着することができる。粘着層無しの樹脂フィルム20をも適切に粘着することが可能である。また、ゴム素材30に樹脂フィルム20の任意の箇所を上下左右に微調整しながら粘着することができるので、装着者1の眼鏡や医療用マスク4の有無にかかわらず、装着者1の顔面3を有効に保護することができる。
【0034】
また、装着者1の額に区画板14が接触することにより、装着者1の顔面3と樹脂フィルム20との間に空間が区画され、装着者1の眼鏡や医療用マスク4に樹脂フィルム20が干渉するのを防ぐことができる。したがって、装着者1の視界が悪化したり、息苦しさを覚えることがない。
【0035】
係るフェイスシールドにより、装着者1は、顔面3を湿性生体物質の飛沫等から保護しながら医療作業等に従事することができる。この際、樹脂フィルム20の湾曲により、樹脂フィルム20の強度が増大するので、樹脂フィルム20が風等に煽られて変形し、フェイスシールドの保護機能の低下を招くことが少ない。医療作業等が終了したら、装着者1の頭部2から嵌合板10を取り外し、この嵌合板10のゴム素材30から使用済みの樹脂フィルム20を剥離して廃棄すれば良い。この際、嵌合板10は、減菌して再利用するようにしても良いし、樹脂フィルム20同様、廃棄しても良い。
【0036】
樹脂フィルム20を廃棄した後、再びフェイスシールドを利用する場合には、上記同様、装着者1の頭部2に嵌合板10を嵌合し、装着者1の額側に嵌合板10の取付領域11を位置決めした後、取付領域11のゴム素材30に新たに用意した樹脂フィルム20の上部21を微調整しながら粘着すれば、フェイスシールドを再び利用することができる。
【0037】
上記によれば、嵌合板10と樹脂フィルム20を高精度に位置決め固定する必要が全くなく、嵌合板10のゴム素材30に樹脂フィルム20を粘着するだけで良いので、フェイスシールドの製造作業が簡素となり、完成までの時間を大幅に短縮することができる。また、嵌合板10のゴム素材30から樹脂フィルム20を簡単に剥離することができるので、嵌合板10を減菌して再利用するようにすれば、新たな樹脂フィルム20のみを用意するだけで良い。したがって、部品点数や製造コストの削減を図ることができる。
【0038】
また、樹脂フィルム20を使い捨てることができるので、汚染した樹脂フィルム20を消毒液で殺菌して使用する必要が全くなく、衛生的な問題を解消することができる。また、ゴム素材30が低硬度シリコーンの場合、この低硬度シリコーンに塵埃が付着して汚れたとき、低硬度シリコーンの塵埃を水やアルコールで拭き取れば、低硬度シリコーンのタック性が回復するので、ゴム素材30の長期に亘る繰り返し使用が大いに期待できる。また、ゴム素材30が低硬度シリコーンの場合、低硬度シリコーンの表面に鏡面加工を施せば、密着性の向上が大いに期待できる。また、樹脂フィルム20が安価な2軸延伸ポリプロピレン樹脂フィルムの場合、ランニングコストを低減し、生産性を大幅に向上させることが可能となる。
【0039】
また、樹脂フィルム20が可撓性を有するので、例え装着者1が眼鏡を使用している場合でも、眼鏡をかけたまま、特別な加工を施すことなく、フェイスシールドを使用することが可能となる。また、ゴム素材30が粘着作用を発揮するので、樹脂フィルム20の周縁部やその近傍等に専用の粘着層を帯形に塗布して積層する必要がなく、樹脂フィルム20の製造の円滑化、迅速化、容易化が大いに期待できる。さらに、多数の樹脂フィルム20を畳んだり、巻いたりして一度に輸送することができるので、収納や輸送の便宜を図ることが可能になる。
【0040】
なお、上記実施形態では嵌合板10や区画板14を断面略I字形としたが、何らこれに限定されるものではなく、例えば断面略矩形や略楔形でも良い。また、嵌合板10の内周面や区画板14には、装着者1の頭部2との間の空隙を埋めるEPDM、ウレタンフォーム、スポンジ等を貼着しても良い。また、嵌合板10の前部表面に複数の取付領域11を並べ設けても良い。また、嵌合板10の両側間には、装着者1の頭部頭頂に接触する逆U字形の頭頂板を架設しても良い。
【0041】
また、上記実施形態では嵌合板10の後部両端をサイズ調整紐13により緊縛したが、何らこれに限定されるものではなく、例えば嵌合板10にバネ性を付与して装着者1の頭部2に密嵌可能とし、サイズ調整紐13を省略することができる。また、上記実施形態における嵌合板10の後部両端に、嵌め合わせサイズ調整具として、面ファスナーをそれぞれ貼着し、この面ファスナーの着脱自在の粘着により、嵌合板10の内径サイズを調整することができる。
【0042】
また、嵌め合わせサイズ調整具として、嵌合板10の後部両端間にゴムバンドを張架したり、嵌合板10の後部両端に樹脂製のバックル等をそれぞれ取り付けることもできる。また、嵌め合わせサイズ調整具として、嵌合板10の後部一端側に複数の取付孔を所定の間隔をおいて横一列に穿孔し、嵌合板10の後部他端側に複数の取付孔のいずれかに着脱自在に嵌入する略画鋲形の取付ピンを装着することもできる。また、嵌合板10の内面の後部両側間や内面両側部間に、装着者1の額に接触する平面略C字形の区画板14を着脱自在に架設したり、上下方向に揺動可能に張架することが可能である。
【0043】
また、必要性に乏しければ、区画板14を省略することが可能である。また、樹脂フィルム20の大きさは、必要に応じ、360mm×310mmや240mm×240mm等に変更することが可能である。また、上記実施形態の樹脂フィルム20には、上記樹脂やフィラーの他、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、難燃剤、帯電防止剤、耐熱向上剤等を選択的に添加することも可能である。
【0044】
さらに、フェイスシールドを製造して使用する場合の順序を変更し、嵌合板10の取付領域11のゴム素材30に、用意した樹脂フィルム20の上部21を調整しながら粘着し、装着者1の頭部2に嵌合板10を嵌合してサイズ調整紐13の緊縛により装着者1の頭部2の大きさに応じて嵌合板10の内径サイズを調整し、装着者1の少なくとも顔面3に樹脂フィルム20を空間を介して対向させても良い。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係るフェイスシールドは、医療、介護、家庭、小売業、歯科、製造、接客、選定、農作業等の分野で使用される。
【符号の説明】
【0046】
1 装着者
2 頭部
3 顔面
10 嵌合板(嵌合部材)
11 取付領域
13 調整紐(嵌め合わせサイズ調整具)
14 区画板(区画部材)
20 樹脂フィルム
21 上部
22 上端部
30 ゴム素材
図1
図2