(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185961
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】装着型アシスト装置
(51)【国際特許分類】
B25J 11/00 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
B25J11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093911
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】304023994
【氏名又は名称】国立大学法人山梨大学
(71)【出願人】
【識別番号】000110022
【氏名又は名称】トーヨーコーケン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】寺田 英嗣
(72)【発明者】
【氏名】牧野 浩二
(72)【発明者】
【氏名】土橋 裕太
(72)【発明者】
【氏名】山田 健次
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 角栄
(72)【発明者】
【氏名】唐木 雅人
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS38
3C707CY23
3C707CY34
3C707HS27
3C707HT04
3C707HT21
3C707KS20
3C707KV01
3C707KV06
3C707MT13
3C707XK02
3C707XK06
3C707XK12
3C707XK16
3C707XK21
3C707XK42
3C707XK56
3C707XK63
(57)【要約】 (修正有)
【課題】応答性を維持しつつも、姿勢保持の際に電力が不要で発熱のない装着型アシスト装置を提供する。
【解決手段】使用者の身体に装着される第1装着具及び第2装着具を備え、これら第1装着具及び第2装着具の間の距離を短縮させることで使用者の動作をアシストする装着型アシスト装置であって、第1装着具に設けられるとともに巻取りプーリを有するアクチュエータと、一端側が巻取りプーリに取着され、他端側が第2装着具に取着される動力伝達部材とを備え、アクチュエータは、モータと、モータ側ギアと、プーリ側ギアと、回転方向規制手段とをさらに備え、モータ側ギアは、プーリ側ギアと噛み合う状態と当該プーリ側ギアとの噛み合いが解除される状態の2つの状態をとるよう構成されるとともに、モータの駆動により一方向に回転するよう構成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の身体に装着される第1装着具及び第2装着具を備え、これら第1装着具及び第2装着具の間の距離を短縮させることで前記使用者の動作をアシストする装着型アシスト装置であって、
前記第1装着具に設けられるとともに巻取りプーリを有するアクチュエータと、一端側が前記巻取りプーリに取着され、他端側が前記第2装着具に取着される動力伝達部材とを備え、
前記アクチュエータは、モータと、モータ側ギアと、プーリ側ギアと、回転方向規制手段とをさらに備え、
前記モータ側ギアは、前記プーリ側ギアと噛み合う状態と当該プーリ側ギアとの噛み合いが解除される状態の2つの状態をとるよう構成されるとともに、前記モータの駆動により一方向に回転するよう構成され、
前記回転方向規制手段は、前記モータ側ギアの前記一方向の回転を許容し且つ他方向の回転を規制するよう構成され、
前記プーリ側ギアは、前記巻取りプーリと一体的に回転するか又は前記巻取りプーリと連動して回転するよう構成されるとともに、前記モータ側ギアの前記一方向の回転により前記巻取りプーリが巻き取り方向に回転する向きに配置されている、装着型アシスト装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装着型アシスト装置であって、
前記モータ側ギアは、ギア歯のない欠け歯部を備えた欠け歯ギアである、装着型アシスト装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の装着型アシスト装置であって、
前記回転方向規制手段は、外輪及び内輪を備えたワンウェイクラッチであり、
前記外輪と内輪の一方が前記アクチュエータのハウジングに固定され、他方が前記モータ側ギア又は当該モータ側ギアと連動して回転する部材に固定されることで、前記モータ側ギアの前記一方向の回転を許容し且つ他方向の回転を規制するよう構成される、装着型アシスト装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれかに記載の装着型アシスト装置であって、
前記モータ側ギアの回転角度を検出する角度検出器を備え、
前記角度検出器は、前記モータ側ギアが前記プーリ側ギアと噛み合う第1の角度と、前記モータ側ギアが前記プーリ側ギアと噛み合わない第2の角度とを少なくとも検出可能とされる、装着型アシスト装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装着型アシスト装置であって、
前記角度検出器はポテンショメータである、装着型アシスト装置。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれかに記載の装着型アシスト装置であって、
前記モータ側ギアと前記プーリ側ギアの噛み合いが解除された際に前記プーリ側ギアを巻き戻し方向に回転させる付勢手段をさらに備える、装着型アシスト装置。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれかに記載の装着型アシスト装置を左右一対備えており、
各装着型アシスト装置の前記第1装着具は、前記使用者の腰部に装着される腰部プレートであり、前記各装着型アシスト装置の前記第2装着具は、前面が前記使用者の背中に接するように装着される背中プレートであって、
前記各装着型アシスト装置の各アクチュエータは、前記背中の下方であって左右方向の中央部に位置するよう配置され、
前記各装着型アシスト装置の動力伝達部材の他端側は、前記使用者の背中の上方両側端部に配置されており、
前記使用者の上半身における左右への回旋動作をアシストするよう構成される、装着型回旋アシスト装置。
【請求項8】
請求項7に記載の装着型回旋アシスト装置であって、
回旋センサと、制御装置とを備え、
前記回旋センサは、前記使用者の上半身における左右への回旋を検知し、
前記制御装置は、前記回旋センサにより検知された回旋の度合いが所定の閾値を超えると、当該角度が増加する方向に前記上半身を回旋させるよう、一方の装着型アシスト装置のモータを駆動する、装着型回旋アシスト装置。
【請求項9】
請求項8に記載の装着型回旋アシスト装置であって、
前記回旋センサは、ロードセルである、装着型回旋アシスト装置。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の装着型アシスト装置であって、
使用者によって操作可能な解除スイッチをさらに備え、
前記制御装置は、前記回旋センサにより検知されている回旋の度合いが所定の閾値を超えている状態で前記解除スイッチが操作されると、前記一方の装着型アシスト装置の前記モータを前記モータ側ギアが前記一方向に回転する向きに駆動する、装着型回旋アシスト装置。
【請求項11】
モータと、巻取りプーリと、モータ側ギアと、プーリ側ギアと、回転方向規制手段と、を備えたアクチュエータであって、
前記モータ側ギアは、前記プーリ側ギアと噛み合う状態と当該プーリ側ギアとの噛み合いが解除される状態の2つの状態をとるよう構成されるとともに、前記モータの駆動により一方向に回転するよう構成され、
前記回転方向規制手段は、前記モータ側ギアの前記一方向の回転を許容し且つ他方向の回転を規制するよう構成され、
前記プーリ側ギアは、前記巻取りプーリと一体的に回転するか又は前記巻取りプーリと連動して回転するよう構成されるとともに、前記モータ側ギアの前記一方向の回転により前記巻取りプーリが巻き取り方向に回転する向きに配置されている、アクチュエータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の動作をアシストするための装着型アシスト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用者に身体に装着し、使用者の動作をアシストする装着型アシスト装置がある。例えば、特許文献1には、マッキベン型のアクチュエータを備えたアシスト装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、マッキベン型のアクチュエータを備えた装着型アシスト装置は、圧縮空気によりアクチュエータを駆動するため、圧縮空気を供給するタンク及び配管が必要であり、また、応答性にも改善の余地があった。この点、応答性を良好なものとするため、ワイヤを巻き取ることで動作をアシストするワイヤ巻取り型の装着型アシスト装置も提案されているが、ワイヤ巻取り型のアシスト装置の場合、姿勢保持のためにワイヤを巻き取った状態で維持する電磁ブレーキ(電磁ロック)が必要となるため、バッテリ容量及び発熱が問題となる。
【0005】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、応答性を維持しつつも、姿勢保持の際に電力が不要で発熱のない装着型アシスト装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、使用者の身体に装着される第1装着具及び第2装着具を備え、これら第1装着具及び第2装着具の間の距離を短縮させることで前記使用者の動作をアシストする装着型アシスト装置であって、前記第1装着具に設けられるとともに巻取りプーリを有するアクチュエータと、一端側が前記巻取りプーリに取着され、他端側が前記第2装着具に取着される動力伝達部材とを備え、前記アクチュエータは、モータと、モータ側ギアと、プーリ側ギアと、回転方向規制手段とをさらに備え、前記モータ側ギアは、前記プーリ側ギアと噛み合う状態と当該プーリ側ギアとの噛み合いが解除される状態の2つの状態をとるよう構成されるとともに、前記モータの駆動により一方向に回転するよう構成され、前記回転方向規制手段は、前記モータ側ギアの前記一方向の回転を許容し且つ他方向の回転を規制するよう構成され、前記プーリ側ギアは、前記巻取りプーリと一体的に回転するか又は前記巻取りプーリと連動して回転するよう構成されるとともに、前記モータ側ギアの前記一方向の回転により前記巻取りプーリが巻き取り方向に回転する向きに配置されている、装着型アシスト装置が提供される。
【0007】
本発明によれば、回転方向制限手段によりモータ側ギアの一方向の回転が規制されることで、プーリ側ギアを介して巻取りプーリの巻き戻し方向の回転が規制されるよう構成されているため、動力伝達部材を巻き取った状態で維持する場合に電力が不要となり、発熱することもない構成となっている。また、アクチュエータは、欠け歯ギアの作用により、モータを一方向に回転させるのみで回転方向制限手段により巻取りプーリの巻き戻し方向の回転を規制する状態と巻取りプーリの巻き戻し方向の回転を許容する状態とを切り替えることが可能となっており、制御が容易となるうえ、アシストを解除する際の応答性を向上させることが可能となっている。
【0008】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
【0009】
好ましくは、前記モータ側ギアは、ギア歯のない欠け歯部を備えた欠け歯ギアである。
【0010】
好ましくは、前記回転方向規制手段は、外輪及び内輪を備えたワンウェイクラッチであり、前記外輪と内輪の一方が前記アクチュエータのハウジングに固定され、他方が前記モータ側ギア又は当該モータ側ギアと連動して回転する部材に固定されることで、前記モータ側ギアの前記一方向の回転を許容し且つ他方向の回転を規制するよう構成される。
【0011】
好ましくは、前記モータ側ギアの回転角度を検出する角度検出器を備え、前記角度検出器は、前記モータ側ギアが前記プーリ側ギアと噛み合う第1の角度と、前記モータ側ギアが前記プーリ側ギアと噛み合わない第2の角度とを少なくとも検出可能とされる。
【0012】
好ましくは、前記角度検出器はポテンショメータである。
【0013】
好ましくは、前記モータ側ギアと前記プーリ側ギアの噛み合いが解除された際に前記プーリ側ギアを巻き戻し方向に回転させる付勢手段をさらに備える。
【0014】
また、本発明によれば、上記装着型アシスト装置を左右一対備えており、各装着型アシスト装置の前記第1装着具は、前記使用者の腰部に装着される腰部プレートであり、前記各装着型アシスト装置の前記第2装着具は、前面が前記使用者の背中に接するように装着される背中プレートであって、前記各装着型アシスト装置の各アクチュエータは、前記背中の下方であって左右方向の中央部に位置するよう配置され、前記各装着型アシスト装置の動力伝達部材の他端側は、前記使用者の背中の上方両側端部に配置されており、前記使用者の上半身における左右への回旋動作をアシストするよう構成される、装着型回旋アシスト装置が提供される。
【0015】
好ましくは、回旋センサと、制御装置とを備え、前記回旋センサは、前記使用者の上半身における左右への回旋を検知し、前記制御装置は、前記回旋センサにより検知された回旋の度合いが所定の閾値を超えると、当該角度が増加する方向に前記上半身を回旋させるよう、一方の装着型アシスト装置のモータを駆動する。
【0016】
好ましくは、前記回旋センサは、ロードセルである。
【0017】
好ましくは、使用者によって操作可能な解除スイッチをさらに備え、前記制御装置は、前記回旋センサにより検知されている回旋の度合いが所定の閾値を超えている状態で前記解除スイッチが操作されると、前記一方の装着型アシスト装置の前記モータを前記モータ側ギアが前記一方向に回転する向きに駆動する。
【0018】
また、本発明によれば、モータと、巻取りプーリと、モータ側ギアと、プーリ側ギアと、回転方向規制手段と、を備えたアクチュエータであって、前記モータ側ギアは、前記プーリ側ギアと噛み合う状態と当該プーリ側ギアとの噛み合いが解除される状態の2つの状態をとるよう構成されるとともに、前記モータの駆動により一方向に回転するよう構成され、前記回転方向規制手段は、前記モータ側ギアの前記一方向の回転を許容し且つ他方向の回転を規制するよう構成され、前記プーリ側ギアは、前記巻取りプーリと一体的に回転するか又は前記巻取りプーリと連動して回転するよう構成されるとともに、前記モータ側ギアの前記一方向の回転により前記巻取りプーリが巻き取り方向に回転する向きに配置されている、アクチュエータが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る装着型回旋アシスト装置1の全体斜視図である。
【
図2】
図1の装着型回旋アシスト装置1において、カバー部材10を取り外した様子を示す拡大斜視図である。
【
図3】
図1のA-A線で切断したときの端面を示す模式図である。
【
図4】
図1の装着型回旋アシスト装置1の機能構成を示すブロック図である。
【
図5】
図1の装着型回旋アシスト装置1が備えるグローブ14を示す模式図である。
【
図6】
図1の装着型回旋アシスト装置1のアクチュエータ6の斜視図である。
【
図9】
図6のアクチュエータ6の分解斜視図である。
【
図10】
図6のアクチュエータ6の各部材の接続関係を示すブロック図である。
【
図11】
図1の装着型回旋アシスト装置1の動作を説明するタイミングチャートである。
【
図13】
図13Aは、本発明の実施例に係るアクチュエータ6と比較例に係るマッキベン式のアクチュエータの吊り上げ動作の比較実験の結果を示すグラフであり、
図13Bは、本発明の実施例に係るアクチュエータ6と比較例に係るマッキベン式のアクチュエータの解放動作の比較実験の結果を示すグラフである。
【
図14】
図14A及び
図14Bは、本発明に係るアクチュエータ6をハンド装置100に用いた例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴について独立して発明が成立する。
【0021】
1.装着型回旋アシスト装置1の全体構成
本発明の一実施形態に係る装着型アシスト装置としての装着型回旋アシスト装置1は、例えば、空港における乗客の荷物積載作業に際して、使用者の上半身に装着して使用者の上半身の動作をアシストするために用いられる。本実施形態の装着型回旋アシスト装置1は、より具体的には、使用者が荷物を運ぶ場合において、使用者が荷物を保持した状態で脊椎を軸として上半身を左右へ回旋させる動作のアシスト(以下、回旋アシスト動作と呼ぶ)のために用いられる。また、本実施形態の装着型回旋アシスト装置1は、使用者が荷物を保持した状態で上半身を屈曲させた状態から起こす動作のアシスト(以下、伸展アシスト動作と呼ぶ)のためにも用いられる。
【0022】
なお、以下の説明においては、装着型回旋アシスト装置1を装着する使用者の人体を基準として、上下左右および前後の方向を規定する。また、上半身の回旋については、平面視における時計回りを右方向への回旋とし、反時計回りを左方向への回旋と規定する。
【0023】
本実施形態の装着型回旋アシスト装置1は、
図1に示すように、使用者の腰部に巻きつけられて装着される第1装着具としての腰部プレート2と、前面が使用者の背中に接するように装着される第2装着具としての背中プレート3と、これら腰部プレート2及び背中プレート3を連結する連結プレート4と、方向変換部材としての左滑車5L及び右滑車5Rを支持する滑車支持プレート5とを備える。また、装着型回旋アシスト装置1は、腰部プレート2に設けられるとともに左巻取りプーリ60Lを有する左アクチュエータ6Lと、腰部プレート2に設けられるとともに右巻取りプーリ60Rを有する右アクチュエータ6Rとを備える。さらに、装着型回旋アシスト装置1は、一端側が左巻取りプーリ60Lに取着され、他端側が背中プレート3の左翼部30Lに取着される動力伝達部材としての左ワイヤ7Lと、一端側が右巻取りプーリ60Rに取着され、他端側が背中プレート3の右翼部30Rに取着される動力伝達部材としての右ワイヤ7Rとを備える。加えて、装着型回旋アシスト装置1は、左アクチュエータ6L及び右アクチュエータ6Rを制御する制御装置11とを備える。なお、本実施形態の装着型回旋アシスト装置1は、腰部プレート2(第1装着具)及び背中プレート3(第2装着具)の距離を短縮させることで使用者の動作をアシストする装着型アシスト装置を左右一対備えていると考えることもできる。以下、装着型回旋アシスト装置1の各構成を具体的に説明する。
【0024】
腰部プレート2は、使用者の腰部に巻きつけられるよう、平面視においてC字状の帯状に形成されており、連結プレート4と、滑車支持プレート5と、締結部20が取り付けられている。締結部20は、腰部及び下半身の動作をアシストする下半身アシスト装置(図示せず)を締結可能に構成される。
【0025】
背中プレート3は、平板状に形成され、装着時に使用者の左右の肩甲骨周辺に位置する左翼部30L及び右翼部30Rと、これらを連結する中央部31とを有する。左翼部30L及び右翼部30Rの上下方向の長さは、中央部31側で長く、左右方向の両端側において短くなるように構成されている。左翼部30L及び右翼部30Rは、それぞれ下方に向かうにつれて左右方向の幅が狭くなるテーパ状をなしている。左翼部30L及び右翼部30Rの上方であって左右方向の両端部には、左ワイヤ7L及び右ワイヤ7Rを取着するための取付部32L,32Rが設けられている。
【0026】
連結プレート4は、腰部プレート2と背中プレート3を連結する部材であり、上下方向に延びるよう平板状に形成される。背中プレート3と連結プレート4とは、
図2に示すように、具体的には、左補強部材8L及び左ロードセル9L、右補強部材8R及び右ロードセル9Rを介して連結される。なお、これら左補強部材8L及び左ロードセル9L、右補強部材8R及び右ロードセル9Rは、
図1に示すように、カバー部材10により覆われている。
【0027】
左補強部材8L及び右補強部材8Rは、
図2に示すように、それぞれ上下方向に延びる平板状の部材である。左補強部材8Lは、背中プレート3の左翼部30Lの下端部に取着され、右補強部材8Rは、背中プレート3の右翼部30Rの下端部に取着される。
【0028】
左ロードセル9L及び右ロードセル9Rは、負荷が加えられると当該負荷を電気信号(電圧)に変換する部材であり、
図2及び
図3に示すように、それぞれ左右方向に延びるよう水平に配置される。左ロードセル9Lは、その右側が連結プレート4の上端左側に取着され、左側が左補強部材8Lの下端部に取着される。右ロードセル9Rは、その左側が連結プレート4の上端右側に取着され、右側が右補強部材8Rの下端部に取着される。
【0029】
ここで、左ロードセル9L及び右ロードセル9Rは、使用者の上半身における左右への回旋を検知する回旋センサとして機能する部材である。左ロードセル9Lは、使用者の上半身が右方向に移動する場合に正の向きに負荷がかかるよう配置され、右ロードセル9Rは、使用者の上半身が左方向に移動する場合に正の向きに負荷がかかるよう配置される。このような配置により、左ロードセル9L及び右ロードセル9Rは、互いに正負の異なる電圧を検出することで、上半身の左右方向への回旋の度合い、つまり、上半身の左右方向への回旋角度が所定の閾値を超えていることを検知することが可能となっている。さらに、左ロードセル9L及び右ロードセル9Rは、正負の同じ電圧を検出することにより、上半身の前後方向への屈曲動作(詳細には、上半身の屈曲の度合い、つまり、上半身の屈曲角度が所定の閾値を超えていること)を検知することも可能である。
【0030】
滑車支持プレート5は、
図1に示すように、下端部が腰部プレート2に支持され、上端部において左滑車5L及び右滑車5Rを支持する。滑車支持プレート5は、連結プレート4の背面側に配置され、連結プレート4に沿って上下方向に延びている。左滑車5L及び右滑車5Rは、左ワイヤ7L及び右ワイヤ7Rが使用者の背中に沿って配置されるよう、左ワイヤ7L及び右ワイヤ7Rの方向を変換するために用いられる。
【0031】
左アクチュエータ6Lは、左巻取りプーリ60Lを備え、左ワイヤ7Lを巻取り可能に構成される。右アクチュエータ6Rは、右巻取りプーリ60Rを備え、右ワイヤ7Rを巻取り可能に構成される。左ワイヤ7Lは、一端側が左巻取りプーリ60Lに取着され、他端側が背中プレート3の左翼部30Lの取付部32Lに取着される。また、右ワイヤ7Rは、一端側が右巻取りプーリ60Rに取着され、他端側が背中プレート3の右翼部30Rの取付部32Rに取着される。左アクチュエータ6L及び右アクチュエータ6Rの具体的な構成については、後述する。なお、本実施形態の左アクチュエータ6L及び右アクチュエータ6Rは、
図4のブロック図に示す制御装置11により制御される。
【0032】
制御装置11は、例えばワンボードマイコン及びモータドライバ基板で構成される。制御装置11は、
図4に示すように、回旋センサとしての左ロードセル9L及び右ロードセル9Rと、後述する左アクチュエータ6L及び右アクチュエータ6Rの角度検出器としてのポテンショメータ66(
図6も参照)と、解除スイッチとしての親指センサ12と、荷物検知センサとしての手のひらセンサ13の各センサからの信号に基づいて、左アクチュエータ6L及び右アクチュエータ6Rのモータ61を駆動する。
【0033】
ここで、親指センサ12及び手のひらセンサ13は、
図5に示すように、使用者が手のひらに装着するグローブ14に配置される。親指センサ12は、使用者が親指を動かすことにより、後述する回旋アシスト動作の解除操作及び伸展アシスト動作の開始操作を行うために用いられる。また、手のひらセンサ13は、手のひらにかかる荷重を検知することにより、使用者が荷物を保持しているか否かを検知するために用いられる。
【0034】
本実施形態の装着型回旋アシスト装置1は、制御装置11の制御によって左アクチュエータ6L及び右アクチュエータ6Rを動作させることにより、左ワイヤ7L及び右ワイヤ7Rを巻き取り、背中プレート3の左翼部30L及び右翼部30Rと腰部プレート2に配置された左巻取りプーリ60L及び右巻取りプーリ60R間の距離を短縮させることで、使用者の動作をアシストする。具体的には、使用者の上半身の左方向の回旋をアシストするには、左アクチュエータ6Lを動作させて左ワイヤ7Lを巻き取ればよく、使用者の上半身の右方向の回旋をアシストするには、右アクチュエータ6Rを動作させて右ワイヤ7Rを巻き取れば良い。また、上半身を屈曲させた状態から起こす動作(伸展動作)をアシストするには、左アクチュエータ6L及び右アクチュエータ6Rを共に動作させて、左ワイヤ7L及び右ワイヤ7Rを同時に巻き取ればよい。
【0035】
2.アクチュエータ6の構成
以下、
図6~
図10を用いて、左アクチュエータ6L及び右アクチュエータ6Rのより具体的な構成を説明する。なお、左アクチュエータ6L及び右アクチュエータ6Rは同一構成(図示のように左右対称の構成を含む)であり、以下では左右の区別なく一般にアクチュエータ6として説明する。
【0036】
アクチュエータ6は、
図6、
図7及び
図9に示すように、巻取りプーリ60(60L,60R)に加えて、モータ61と、モータ側ギア62と、プーリ側ギア63と、回転方向規制手段としてのワンウェイクラッチ64と、ハウジング65と、角度検出器としてのポテンショメータ66と、付勢手段としてのバックテンション用ぜんまい67とを備える。
【0037】
モータ61は、図示しないバッテリからの電力を受けて、制御装置11の制御により駆動する。本実施形態において、モータ61は、一方向に回転可能であれば良い。モータ61の出力軸(図示せず)の回転は、減速機構61aを介して回転軸68に伝達される。
【0038】
本実施形態において、モータ側ギア62は、
図8にも示すように、ギア歯のない欠け歯部62aを備えた欠け歯ギアである。モータ側ギア62は、
図8に示すように、回転軸68に嵌合しており、回転軸68の回転によりモータ側ギア62が連動回転するようになっている。モータ側ギア62は、欠け歯ギアとなっていることで、プーリ側ギア63と噛み合う状態と当該プーリ側ギア63との噛み合いが解除される状態の2つの状態をとるよう構成されている。
【0039】
一方、プーリ側ギア63は、外周に亘ってギア歯を有する平歯ギアである。プーリ側ギア63は、
図6~
図9に示すように、回転軸69に嵌合しており、プーリ側ギア63の回転は回転軸69を介して巻取りプーリ60に伝達されるようになっている。
【0040】
ワンウェイクラッチ64は、一方向のみに回転を伝達する部材である。ワンウェイクラッチ64は、例えばカム式とされ、
図10に示すように、外輪64aに対し一方向にのみ回転する内輪64bを備えている。本実施形態において、外輪64aはハウジング65に固定され、内輪64bは、モータ側ギア62と連動して回転する回転軸68に固定されている。このような構成により、本実施形態のワンウェイクラッチ64は、モータ側ギア62の一方向の回転を許容し且つ他方向の回転を規制するようになっている。ここで、モータ側ギア62の「一方向の回転」は、プーリ側ギア63を介して回転を伝達する巻取りプーリ60が巻取り方向に回転する向きの回転であり、「他方向の回転」は、巻取りプーリ60が巻き戻し方向に回転する向きの回転である。このような構成により、モータ側ギア62とプーリ側ギア63が噛み合っている場合には、巻取りプーリ60は巻取り方向の回転のみが許容され、巻き戻し方向の回転が規制されるようになっている。
【0041】
ハウジング65は、上述した各部材を保持する部材である。アクチュエータ6の各部材は、ハウジング65を介して、装着型回旋アシスト装置1の腰部プレート2に固定される。ハウジング65は、具体的には、
図6、
図7及び
図9に示すように、台座部65aと、回転軸68及び回転軸69を支持する軸支持部材65bと、モータ61(減速機構61a)を支持するモータ支持部材65cと、各部材を覆うカバー65d(
図1参照)とを備える。軸支持部材65b及びモータ支持部材65cは、台座部65aに固定されている。なお、各部材を固定するためのビス等の部材の説明は省略している。
【0042】
ポテンショメータ66は、回転軸68に設けられ、回転軸68の回転角度を検知可能に構成される。本実施形態では、回転軸68の回転角度を検出することで、一体回転するモータ側ギア62の回転角度を検知可能となっている。
【0043】
バックテンション用ぜんまい67は、回転軸69に取着される。バックテンション用ぜんまい67は、巻取りプーリ60の巻取り方向の回転に対応する方向に回転軸69が回転することで蓄勢され、巻取りプーリ60が巻取り方向に回転した状態において、回転軸69を巻き戻し方向に回転する向きに付勢する。
【0044】
本実施形態のアクチュエータ6は、上記構成により、モータ61の駆動によりモータ側ギア62を一方向に回転させることで、当該モータ側ギア62と噛み合うプーリ側ギア63を介して巻取りプーリ60を巻取り方向に回転させるとともに、巻取りプーリ60を巻き戻し方向に回転しないよう維持可能になっている。
【0045】
3.装着型回旋アシスト装置1の動作
次に、
図11のタイミングチャート及び
図12A~
図12Dに基づいて、上記構成の装着型回旋アシスト装置1の動作、具体的には、回旋アシスト動作及び伸展アシスト動作についてそれぞれ説明する。なお、これら回旋アシスト動作及び伸展アシスト動作は、制御装置11によって制御される。
【0046】
3.1 回旋アシスト動作
回旋アシスト動作は、使用者が荷物を把持するとともに、使用者が上半身を所定の角度以上左右へ回転することで実施される。以下では、一例として、右アクチュエータ6Rのモータ61を駆動させて上半身の右方向への回旋をアシストする動作について説明する。ただし、左アクチュエータ6Lのモータ61を駆動させて左方向への回旋をアシストする動作についても同様である。なお、アシスト動作を行っていない場合において、左アクチュエータ6L及び右アクチュエータ6Rの各モータ側ギア62は、
図12Aに示すように、その欠け歯部62aがプーリ側ギア63と対向しており、プーリ側ギア63とは噛み合わない状態となっている。以下、この状態を初期状態とし、ポテンショメータ66(
図6等参照)により検知されるこのときのモータ側ギア62の角度を0°とする。また、モータ側ギア62とプーリ側ギア63が噛み合った際に巻取りプーリ60が巻取り方向に回転するときのモータ側ギア62の回転方向(一方向)を、正の方向とする。
【0047】
使用者が荷物を保持すると、まず、手のひらセンサ13(
図5参照)が荷物の保持を検知する。この状態で、左ロードセル9L及び右ロードセル9R(回旋センサ)により検知される使用者の上半身の右方向への回旋角度が所定の閾値を超えると(
図11の移行トリガT1参照)、回旋アシスト動作が実行される(
図11の局面(i)~局面(ii)参照)。具体的には、制御装置11は、右アクチュエータ6Rのモータ61を駆動するよう制御信号を送信する。これにより、図示しないバッテリからモータ61に電力が供給され、モータ61が回転を開始する。そして、モータ61が回転を開始すると、モータ61の回転は減速機構61aにより変速され、回転軸68を介してモータ側ギア62が回転を開始し、ポテンショメータ66の検知する角度が増加する(
図11参照)。なお、モータ61が回転を開始した直後は、
図12Aに示すように、モータ側ギア62がプーリ側ギア63と噛み合っていないため、プーリ側ギア63は回転しない。このときのモータ側ギア62の角度を、第2の角度とする。
【0048】
その後、制御装置11は、モータ61の回転を継続する。すると、
図12Bに示すように、モータ側ギア62がプーリ側ギア63と噛み合い、モータ側ギア62の回転に伴ってプーリ側ギア63も回転するようになる。そして、プーリ側ギア63が回転することにより、回転軸69を介して巻取りプーリ60が巻取り方向に回転を開始する。回転を開始するときのモータ側ギア62の角度を、第1の角度とする。その結果、右巻取りプーリ60Rが巻取り方向に回転することで、右ワイヤ7Rが右巻取りプーリ60Rに巻き取られ、使用者の上半身の右方向の回旋がアシストされる(
図11の局面(ii)参照)。
【0049】
制御装置11は、ポテンショメータ66が検知するモータ側ギア62の角度が270°になるまで、モータ61の駆動を継続する。これは、
図12B~
図12Cに示すように、モータ側ギア62とプーリ側ギア63の噛み合いが継続する期間である。そして、モータ側ギア62の角度が270°になると(
図11の移行トリガT2参照)、制御装置11はモータ61への電力の供給を停止し、モータ61の駆動を停止させる(
図11の局面(ii)~局面(iii)参照)。ここで、モータ61への駆動を停止すると、モータ61の出力軸(図示せず)は自由に回転可能になるが、本実施形態のアクチュエータ6は、回転軸68にワンウェイクラッチ64が取り付けられていることで、モータ側ギア62が他方向(負の方向)に回転しないようになっている。そして、モータ側ギア62が他方向に回転しないことで、これと噛み合うプーリ側ギア63も回転が規制され、その結果、巻取りプーリ60の巻き戻し方向の回転が規制される。つまり、巻取りプーリ60は、背中プレート3及び連結プレート4が捻られた際のバネ特性及びバックテンション用ぜんまい67の付勢力により巻き戻し方向に回転しようとするが、ワンウェイクラッチ64の働きにより当該回転が規制され、回旋のアシストが継続される。
【0050】
制御装置11は、上記回旋のアシストが継続した状態において、使用者による親指センサ12の瞬間的な解除操作の信号を検知すると(
図11の移行トリガT3参照)、モータ61を再度同方向に駆動させる(
図11の局面(iii)~局面(iv)参照)。そして、モータ61の回転によりモータ側ギア62が正の方向に回転すると、モータ側ギア62の回転に伴ってプーリ側ギア63が僅かに回転した後、
図12C~
図12Dに示すように、モータ側ギア62とプーリ側ギア63の噛み合いが解除される。
【0051】
モータ側ギア62とプーリ側ギア63の噛み合いが解除されると、ワンウェイクラッチ64による巻取りプーリ60の巻き戻し方向の回転の規制が解除される。すると、背中プレート3及び連結プレート4が捻られた際のバネ特性及びバックテンション用ぜんまい67の付勢力により、プーリ側ギア63は逆回転し、右ワイヤ7Rが巻き戻される。そして、右ワイヤ7Rが元の状態まで巻き戻されることで、回旋のアシストが終了する。
【0052】
そして、制御装置11は、ポテンショメータ66が検知するモータ側ギア62の角度が360°に達すると(
図11の移行トリガT4参照)、モータ61の駆動を停止する(
図11の局面(iv)~局面(v)参照)。この際、モータ側ギア62及びプーリ側ギア63は初期状態に戻っており、次の回旋アシストを行うことが可能な状態となる(
図11の局面(v)参照)。
【0053】
3.2 伸展アシスト動作
一方、伸展アシスト動作は、使用者が荷物を把持するとともに、使用者が親指センサ12を操作することで実施される。伸展アシスト動作は、使用者が親指センサ12を操作すると、親指センサ12がONになっている間、左アクチュエータ6L及び右アクチュエータ6Rの両方を駆動し、左ワイヤ7L及び右ワイヤ7Rをともに巻き取る。これにより、使用者の上半身は伸展方向に引き起こされて回動し、伸展アシストが実現される。なお、その後使用者が親指センサ12をOFFにすると、背中プレート3及び連結プレート4が捻られた際のバネ特性及びバックテンション用ぜんまい67の付勢力により、左アクチュエータ6L及び右アクチュエータ6Rの各巻取りプーリ60が巻き戻し方向に回転し、左ワイヤ7L及び右ワイヤ7Rが巻き戻されて伸展アシストが終了する。
【0054】
4.作用効果
以上のように、本実施形態に係る装着型回旋アシスト装置1は、左アクチュエータ6L及び右アクチュエータ6Rのそれぞれにおいて、ワンウェイクラッチ64によりモータ側ギア62の他方向(負の方向)の回転を規制することにより、プーリ側ギア63を介してこれと連動する巻取りプーリ60(左巻取りプーリ60L及び右巻取りプーリ60R)の巻き戻し方向の回転を規制するよう構成されている。これにより、左ワイヤ7L及び右ワイヤ7Rを巻き取った状態で維持する場合に電力が不要となり、発熱することもない構成となっている。
【0055】
また、巻取りプーリ60の回転を規制する構成としてワンウェイクラッチ64を用いることで、ワンウェイクラッチ64をトルクリミッタとして機能させ、装着型回旋アシスト装置1及びこれを装着する使用者の身体を保護することが可能となっている。
【0056】
加えて、左アクチュエータ6L及び右アクチュエータ6Rは、それぞれ欠け歯部62aの作用により、モータ側ギア62がプーリ側ギア63と噛み合う状態と当該プーリ側ギア63との噛み合いが解除される状態の2つの状態をとるよう構成されている。このような構成により、モータ61を一方向に回転させるのみで、モータ側ギア62とプーリ側ギア63の噛み合いと噛み合いの解除を切り替えることができ、ワンウェイクラッチ64による左巻取りプーリ60L及び右巻取りプーリ60Rの巻き戻し方向の回転を規制する状態と許容する状態とで切り替えることが可能となっている。そして、モータ61を一方向に回転させるだけで上記切り替えができ、モータ61を両方向に回転駆動しなくて良いため、制御が容易となって制御装置11として単純なワンボードマイコンを用いることが可能となり、さらに、回旋アシストを解除する際の応答性を向上させることも可能となっている。
【0057】
なお、
図13Aは、本発明の実施例に係るアクチュエータ6(巻取り式)と比較例に係るマッキベン式のアクチュエータの吊り上げ動作の比較実験の結果を示すグラフである。当該グラフに示すように、本発明の実施例に係るアクチュエータ6は、マッキベン式のアクチュエータと比較して短時間で大きく変位させることが可能である。また、
図13Bは、本発明の実施例に係るアクチュエータ6(巻取り式)と比較例に係るマッキベン式のアクチュエータの解放動作の比較実験の結果を示すグラフである。当該グラフに示すように、本発明の実施例に係るアクチュエータ6は、マッキベン式のアクチュエータと比較して、短時間で変位を元の状態に回復させることも可能となっている。
【0058】
5.変形例
本発明は、以下の態様でも実施可能である。
【0059】
上記実施形態では、腰部プレート2(第1装着具)及び背中プレート3(第2装着具)の距離を短縮させることで使用者の動作をアシストする装着型アシスト装置を左右1対備えた装着型回旋アシスト装置1について説明した。しかしながら、使用者の身体における第1装着具及び第2装着部を装着する位置は任意であり、本願発明は、任意の2点間の距離を短縮させることで使用者の動作をアシストする装着型アシスト装置に適用することが可能である。
【0060】
上記実施形態では、モータ側ギア62の一方向の回転を許容し且つ他方向の回転を規制する回転方向規制手段としてワンウェイクラッチ64を用いていた。しかしながら、同様の機能を奏する他の構成、例えばラチェットを用いることも可能である。
【0061】
上記実施形態では、モータ側ギア62は、プーリ側ギア63と噛み合う状態とプーリ側ギア63との噛み合いが解除される状態の2つの状態をとるため、欠け歯ギアとして構成されていた。しかしながら、プーリ側ギア63と噛み合う状態とプーリ側ギア63との噛み合いが解除される状態の2つの状態をとる他の構成、例えば、モータ側ギア62がその回転に伴って軸方向又は軸と垂直な方向に移動することで、プーリ側ギア63と噛み合う状態とプーリ側ギア63との噛み合いが解除される状態の2つの状態をとる構成とすることも可能である。
【0062】
上記実施形態では、第1装着具(腰部プレート2)と第2装着具(背中プレート3)の間を短縮させる動力伝達部材としてワイヤ(7L,7R)が用いられていた。しかしながら、使用者の身体に沿って湾曲し、巻取りプーリ60による巻取り及び巻き戻しが可能であれば、ワイヤ(7L,7R)に代えて、ベルト等の他の部材を用いることも可能である。
【0063】
上記実施形態では、モータ側ギア62の回転角度を検出する角度検出器として、ポテンショメータ66が回転軸68に配置されていたが、角度検出器として、エンコーダを用いたり、モータ61としてサーボモータを用いたりしてモータ61と角度検出器とを一体的に構成することも可能である。
【0064】
上記実施形態では、使用者の回旋動作を検知する回旋センサとしてロードセル(9L,9R)を用いていたが、ロードセル(9L,9R)の代わりに、ポテンショメータやジャイロセンサを用いることも可能である。
【0065】
上記実施形態では、巻取り状態を解除する解除スイッチとして親指センサ12が用いられ、また、荷物検知センサとして手のひらセンサ13が用いられていた。しかしながら、解除スイッチ及び荷物検知センサは、制御装置11に電気的な信号を送信可能であれば、任意の手段を用いることが可能である。
【0066】
6.アクチュエータ6の他の適用例
図14A及び
図14Bは、本発明に係るアクチュエータ6をハンド装置100に用いた例を示す模式図である。ハンド装置100は、搬送物Fを把持して搬送するための装置である。ハンド装置100は、固定アーム101と、固定アーム101の上端から水平に延びる水平部材102と、固定アーム101と対向するよう配置される移動アーム103と、上述したアクチュエータ6と、移動アーム103を固定アーム101に対して平行に移動させるためのガイド部材104及びガイドレール105と、移動アーム103と固定アーム101の間隔を広げる向きに移動アーム103を付勢する付勢手段106とを備える。
【0067】
固定アーム101及び移動アーム103は、それぞれ搬送物Fを把持する把持面101a及び把持面103aを備える。また、アクチュエータ6は、水平部材102の上面に配置される。アクチュエータ6の巻取りプーリ60には、ワイヤ7の一端が巻取り及び巻き戻し可能に取着され、ワイヤ7の他端は移動アーム103の保持部材107に保持されている。また、付勢手段106は、コイルスプリングであり、付勢手段106の一端は水平部材102の上面に配置された固定部材108に取着され、他端は移動アーム103に取り付けられている。付勢手段106の付勢力により、アクチュエータ6の巻取りプーリ60は、ワンウェイクラッチ64(上述した実施形態の
図10等参照)による巻き戻し方向の回転の規制が解除されることで巻き戻し方向に回転する。
【0068】
このような構成のハンド装置100は、
図14Aに示すように、アクチュエータ6がワイヤ7を巻き取っていない状態では、移動アーム103が固定アーム101から離れた位置にあって搬送物Fを把持せず、アクチュエータ6を駆動させてワイヤ7を巻取りプーリ60に巻き取ることで、搬送物Fを把持して、搬送可能となっている。
【0069】
本発明に係るアクチュエータ6は、上記のようなハンド装置100に用いる場合にも、ワイヤ7を巻き取って搬送物Fを把持した状態では電力が必要ないため、ハンド装置100を省電力で動作させることができ、バッテリにより動作させることも可能となる。これにより、商用電源が確保できない条件であっても、ハンド装置100を好適に使用することが可能となる。また、モータ61(
図10等参照)を一方向にのみ回転させれば良いので、制御を容易に行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0070】
1 :装着型回旋アシスト装置(装着型アシスト装置)
2 :腰部プレート(第1装着具)
3 :背中プレート(第2装着具)
4 :連結プレート
5 :滑車支持プレート
5L :左滑車
5R :右滑車
6 :アクチュエータ
6L :左アクチュエータ
6R :右アクチュエータ
7,7L,7R :ワイヤ(動力伝達部材)
8L :左補強部材
8R :右補強部材
9L :左ロードセル(回旋センサ)
9R :右ロードセル(回旋センサ)
10 :カバー部材
11 :制御装置
12 :親指センサ(解除スイッチ)
13 :センサ
14 :グローブ
20 :締結部
30L :左翼部
30R :右翼部
31 :中央部
32L :取付部
32R :取付部
60 :巻取りプーリ
60L :左巻取りプーリ
60R :右巻取りプーリ
61 :モータ
61a :減速機構
62 :モータ側ギア
62a :歯部
63 :プーリ側ギア
64 :ワンウェイクラッチ(回転方向規制手段)
64a :外輪
64b :内輪
65 :ハウジング
65a :台座部
65b :軸支持部材
65c :モータ支持部材
65d :カバー
66 :ポテンショメータ(角度検出器)
67 :バックテンション用ぜんまい(付勢手段)
68 :回転軸
69 :回転軸
100 :ハンド装置
101 :固定アーム
101a :把持面
102 :水平部材
103 :移動アーム
103a :把持面
104 :ガイド部材
105 :ガイドレール
106 :付勢手段
107 :保持部材
108 :固定部材
F :搬送物
T1~T4 :移行トリガ