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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185965
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】ワイヤレス給電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/90 20160101AFI20221208BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20221208BHJP
   H02J 50/40 20160101ALI20221208BHJP
【FI】
H02J50/90
H02J50/12
H02J50/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093928
(22)【出願日】2021-06-03
(71)【出願人】
【識別番号】000116079
【氏名又は名称】ローレルバンクマシン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500267170
【氏名又は名称】ローレル機械株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】500265501
【氏名又は名称】ローレル精機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】中西 秀行
(72)【発明者】
【氏名】土方 亘
(72)【発明者】
【氏名】大堀 隼輝
(72)【発明者】
【氏名】小澤 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】李 想
(57)【要約】
【課題】被給電装置を搭載した移動体の移動性を損なうことなく、給電装置と被給電装置との位置関係を精度良く把握して送受電を安定して行うワイヤレス給電システムを提供する。
【解決手段】磁界共鳴方式により電力を送電するワイヤレス給電システム1は、送電コイル21をそれぞれ備えている給電装置2a~2cと、送電コイル21から第1周波数の交流電力を受電する受電コイル31と、第1周波数と異なる周波数である第2周波数の交流信号を出力するとともに交流信号を受電コイル31から送信させる発信回路37と、を備えている被給電装置3と、受電コイル31から各給電装置2a~2cにそれぞれ伝播した交流信号の強度に基づいて、各給電装置2a~2cに対する受電コイル31の位置を推定する位置推定装置6と、を備えている
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界共鳴方式により電力を送電するワイヤレス給電システムであって、
送電コイルをそれぞれ備えている複数の給電装置と、
前記送電コイルから第1周波数の交流電力を受電する受電コイルと、前記第1周波数と異なる周波数である第2周波数の交流信号を出力するとともに前記交流信号を前記受電コイルから送信させる発信回路と、を備えている被給電装置と、
前記受電コイルから各給電装置にそれぞれ伝播した前記交流信号の強度に基づいて、各給電装置と受電装置との位置関係を推定する位置推定装置と、
を備えていることを特徴とするワイヤレス給電システム。
【請求項2】
磁界共鳴方式により電力を送電するワイヤレス給電システムであって、
送電コイルをそれぞれ備えている複数の給電装置と、
前記送電コイルから第1周波数の交流電力を受電する受電コイルと、前記第1周波数と同一又は前記第1周波数に対して所定範囲内の周波数の交流信号を出力するとともに前記交流信号を前記受電コイルから送信させる発信回路と、を備えている被給電装置と、
前記受電コイルから各給電装置にそれぞれ伝播した前記交流信号の強度に基づいて、各給電装置と受電装置との位置関係を推定する位置推定装置と、
を備えていることを特徴とするワイヤレス給電システム。
【請求項3】
前記位置推定装置は、
各送電コイルにそれぞれ対応して接続され、前記交流電力を遮断するとともに前記送電コイルが受信した前記交流信号を通過させる複数のフィルタ回路と、
前記複数のフィルタ回路をそれぞれ通過した前記交流信号の強度に基づいて、前記受電コイルに最も近い給電装置を推定する位置推定部と、
を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項4】
前記位置推定装置は、
各送電コイルの近傍にそれぞれ対応して設けられ、前記交流信号を受信する複数のアンテナコイルと、
前記複数のアンテナコイルがそれぞれ受信した前記交流信号の強度に基づいて、前記受電コイルに最も近い給電装置を推定する位置推定部と、
を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項5】
前記被給電装置は、前記受電コイルと前記交流電力が供給される負荷との間に設けられ、所定の周波数帯で駆動可能な整流回路をさらに備え、
前記第2周波数は、前記所定の周波数帯を超えた周波数又は前記整流回路の整流効率が所定の比率以下である周波数に設定されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のワイヤレス給電システム。
【請求項6】
前記整流回路は、複数のダイオードを有するダイオードブリッジ回路であり、
前記第2周波数は、前記ダイオードの応答周波数を超えた周波数又は前記ダイオードの出力がDC特性の所定閾値より低くなる周波数に設定されていることを特徴とする請求項5に記載のワイヤレス給電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤレス給電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、磁界共振結合(磁界共鳴)を利用したワイヤレス給電システムの研究開発が進められている。磁界共振結合とは、給電装置の共振回路に交流電流が流れることにより発生した磁場の振動が、被給電装置の共振回路に伝わって共振することで、各共振回路のコイルで生成された磁界が強固に結合した状態をいう。磁界共振結合を利用したワイヤレス給電は、従来の電磁誘導(磁界結合)を利用したワイヤレス給電と比較して、給電可能距離が長くなるという利点がある。
【0003】
特許文献1には、給電コイルL1から共振コイルL2に対して送電するとともに、被給電装置200の置き方に自由度を持たせるために、多数の給電コイルL1を行列状に配置する構成が開示されている。また、特許文献1には、必要な給電コイルL1のみを駆動して給電コイルL1の消費電力を低減するために、発信回路203が所定の周波数でコイルL3を駆動し、コイルL3に物理的に最も近い共振コイルL0bが被給電装置200からの信号を検知することにより、被給電装置200の位置が検出される構成が開示されている。なお、符号は、特許文献1に記載されたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-149168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したコイルL3を被給電装置200に設けると、コイルL3の分だけ重量が増すとともに装置サイズが大型化するため、AGV(Automatic Guided Vehicle)等の移動体に被給電装置200を搭載した場合、移動体の移動性が悪化するという問題があった。
【0006】
さらに、共振コイルL2とコイルL3との間で干渉が生じる虞があるため、共振コイルL2とコイルL3とを被給電装置200に併せて搭載することは実用性に欠けるという問題があった。
【0007】
そこで、被給電装置を搭載した移動体の移動性を損なうことなく、且つ給電装置と被給電装置との位置関係を精度良く把握して送受電を安定して行うために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係るワイヤレス給電システムは、磁界共鳴方式により電力を送電するワイヤレス給電システムであって、送電コイルをそれぞれ備えている複数の給電装置と、前記送電コイルから第1周波数の交流電力を受電する受電コイルと、前記第1周波数と異なる周波数である第2周波数の交流信号を出力するとともに前記交流信号を前記受電コイルから送信させる発信回路と、を備えている被給電装置と、前記受電コイルから各給電装置にそれぞれ伝播した前記交流信号の強度に基づいて、各給電装置に対する前記受電コイルの位置を推定する位置推定装置と、を備えている。
【0009】
また、上記目的を達成するために、本発明に係るワイヤレス給電システムは、磁界共鳴方式により電力を送電するワイヤレス給電システムであって、送電コイルをそれぞれ備えている複数の給電装置と、前記送電コイルから第1周波数の交流電力を受電する受電コイルと、前記送電コイルから第1周波数の交流電力を受電する受電コイルと、前記第1周波数と同一又は前記第1周波数に対して所定範囲内の周波数の交流信号を出力するとともに前記交流信号を前記受電コイルから送信させる発信回路と、を備えている被給電装置と、前記受電コイルから各給電装置にそれぞれ伝播した前記交流信号の強度に基づいて、各給電装置と受電装置との位置関係を推定する位置推定装置と、を備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、被給電装置を搭載した移動体の移動性を損なうことなく、被給電装置の位置検知及び送受電を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るワイヤレス給電システムの概要を示す模式図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るワイヤレス給電システムの構成を示す模式図である。
図3】本発明の第2実施形態に係るワイヤレス給電システムの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係るワイヤレス給電システム1について図面に基づいて説明する。なお、以下では、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0013】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0014】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0015】
<ワイヤレス給電システムの構成>
図1は、ワイヤレス給電システム1の概要を示す模式図である。図2は、ワイヤレス給電システム1の構成を示す模式図である。ワイヤレス給電システム1は、給電装置2と、被給電装置3と、を備え、磁界共振結合(磁界共鳴)を利用して、給電装置2から被給電装置3に電力を非接触で給電する。
【0016】
給電装置2は、被給電装置3を搭載した移動体4の上方に列状に3台設けられている。各給電装置2に接続された交流電源5は、給電装置2に対して交流電力を供給する。交流電力は、例えば、周波数150kHz、電圧10Vに設定されるが、交流電源5の周波数及び電圧は任意に変更可能である。
【0017】
移動体4は、被給電装置3が受電した交流電力で所定の空間内を移動可能に浮遊するロボット飛翔体等であるが、これに限定されるものではなく、例えば、車両、水中ロボット、カプセル内視鏡、心臓ペースメーカー等であっても構わない。
【0018】
また、ワイヤレス給電システム1は、上述した複数の給電装置2のうち、被給電装置3に最も近い給電装置2のみを駆動し、その他の給電装置2を駆動しないことで、給電装置2の消費電力を低減する位置推定装置6を備えている。位置推定装置6の構成については、後述する。
【0019】
以下の説明では、3台の給電装置2をそれぞれ区別する場合には、末尾にa~cを付与する。また、給電装置2a~2cにそれぞれ対応する各種構成についても同様に符号の末尾にa~cを付与する。
【0020】
<給電装置の構成>
図2に示すように、給電装置2aは、送電コイル21aと、コンデンサ22aと、を備えている。また、送電コイル21a及びコンデンサ22aは、直列に接続されて給電側共振回路23aを構成している。送電コイル21aのインダクタンス及びコンデンサ22aのキャパシタンスによって設定される給電側共振回路23aの共振周波数に応じた周波数の交流電圧が送電コイル21aに流れると、送電コイル21aをコイル軸方向に貫くように振動磁場が生じる。
【0021】
同様にして、給電装置2bは、送電コイル21bとコンデンサ22bとが直列に接続されて成る給電側共振回路23bを備えており、送電コイル21bのインダクタンス及びコンデンサ22bのキャパシタンスによって設定される給電側共振回路23bの共振周波数に応じた周波数の交流電圧が送電コイル21bに流れると、送電コイル21bをコイル軸方向に貫くように振動磁場が生じる。
【0022】
また、給電装置2cは、送電コイル21cとコンデンサ22cとが直列に接続されて成る給電側共振回路23cを備えており、送電コイル21cのインダクタンス及びコンデンサ22cのキャパシタンスによって設定される給電側共振回路23cの共振周波数に応じた周波数の交流電圧が送電コイル21cに流れると、送電コイル21cをコイル軸方向に貫くように振動磁場が生じる。
【0023】
送電コイル21a~21cは、電気伝導率の高い銅線等を円形に巻回して形成されている。なお、銅線内を流れる電流は、内部抵抗の影響によって銅線の中心部よりも表面付近を多く流れる。したがって、送電コイル21a~21cの線材に複数の銅線を撚り合わせたリッツ線を用いた場合には、同一径の1本の銅線と比べて、リッツ線の表面積が大きくなり、より多くの電流を流すことができ、電流損失を抑制できる。
【0024】
給電側共振回路23aには、スイッチ24aが直列に接続されている。また、給電側共振回路23bには、スイッチ24bが直列に接続され、給電側共振回路23cには、スイッチ24cが直列に接続されている。スイッチ24a~24cは、後述するコントローラ64によって開閉制御される。
【0025】
<被給電装置の構成>
図2に示すように、被給電装置3は、受電コイル31と、コンデンサ32と、を備えている。
【0026】
受電コイル31とコンデンサ32とは、直列に接続されて受電側共振回路33を構成している。受電コイル31のインダクタンス及びコンデンサ32のキャパシタンスによって設定される受電側共振回路33の共振周波数は、給電側共振回路23a~23cの共振周波数と一致するように設定されている。これにより、送電コイル21をコイル軸方向に貫くように生じた磁場の振動によって、受電コイル31に誘導電流が流れ、受電コイル31をコイル軸方向に貫くように振動磁場が生じ、送電コイル21a~21c及び受電コイル31の磁場が共鳴して強固に結合する。
【0027】
受電コイル31は、電気伝導率の高い銅線等を円形に巻回して形成されている。なお、受電コイル31も送電コイル21と同様に、線材にリッツ線を用いるのが好ましい。
【0028】
受電コイル31が共振受電した交流電力は、整流回路34を介して負荷41に供給される。負荷41は、移動体4を構成するモータやバッテリ等である。
【0029】
整流回路34は、4つのダイオード35がブリッジ上に配置されて成るダイオードブリッジ回路であり、受電コイル31が受電した交流電力に対して全波整流を行い、直流電圧を出力する。整流回路34が出力した直流電圧は、コンデンサ36により平滑化される。なお、整流回路34は、図示したダイオードブリッジ回路に限定されるものではない。
【0030】
被給電装置3は、発信回路37を備えている。発信回路37は、整流回路34が出力した電力で駆動し、所定の周波数の交流信号を受電コイル31に出力する。発信回路37から出力された交流信号は、受電コイル31から給電装置2a~2cに向けて発信される。
【0031】
<位置推定装置の構成>
位置推定装置6は、給電装置2a~2cに対する被給電装置3(受電コイル31)の相対的な位置を推定可能である。図2に示すように、位置推定装置6は、フィルタ回路61a~61cと、信号検出回路62a~62cと、位置推定部63と、コントローラ64と、を備えている。
【0032】
フィルタ回路61a~61cは、送電コイル21a~21cに対応してそれぞれ接続されている。フィルタ回路61aは、給電側共振回路23a内に混在する交流電力と送電コイル21aが受信した交流信号とを分離して、交流信号を抽出する。同様に、フィルタ回路61bは、給電側共振回路23b内に混在する交流電力と送電コイル21bが受信した交流信号とを分離して交流信号を抽出し、フィルタ回路61cは、給電側共振回路23c内に混在する交流電力と送電コイル21cが受信した交流信号とを分離して交流信号を抽出する。
【0033】
すなわち、送電コイル21a~21cの交流電源5側には、送電コイル21a~21cから生じた交流電力と、発信回路37により出力されて送電コイル21a~21cで受信した交流信号と、が混在した状態で供給されるため、交流信号のみを精度良く抽出することが難しい。そこで、送電コイル21a~21cの交流電源5側に設けられたフィルタ回路61a~61cが、送電コイル21a~21cから生じた交流電力と、発信回路37により出力されて送電コイル21a~21cで受信した交流信号とを分離することにより、送電コイル21a~21cで受信した交流信号のみを通過させることができる。
【0034】
信号検出回路62a~62cは、フィルタ回路61a~61cに対応してそれぞれ接続されている。信号検出回路62aは、フィルタ回路61aが抽出した交流信号の強度を検出する。同様に、信号検出回路62bは、フィルタ回路61bが抽出した交流信号の強度を検出し、信号検出回路62cは、フィルタ回路61cが抽出した交流信号の強度を検出する。なお、信号検出回路62a~62cは、それぞれ独立した図示しないDC電源により駆動する。
【0035】
位置推定部63は、信号検出回路62a~62cがそれぞれ検出した交流信号の強度に基づいて、給電装置2a~2cに対する被給電装置3(受電コイル31)の位置を推定する。コントローラ64は、スイッチ24a~24cをオンオフ制御し、被給電装置3(受電コイル31)の位置に対応するスイッチ24a~24cをオンして、他のスイッチ24a~24cをオフする。
【0036】
次に、ワイヤレス給電システム1の作用について、図面に基づいて説明する。
【0037】
<初期送電>
まず、3つの送電コイル21の全て又は少なくとも何れか1つに交流電力を順次供給すると、被給電装置3に最も近い送電コイル21に通電されたときに、通電された送電コイル21をコイル軸方向に貫くように振動磁場が生じる。また、磁場の振動によって、受電コイル31に誘導電流が流れ、受電コイル31をコイル軸方向に貫くように振動磁場が生じる。このようにして、通電された送電コイル21及び受電コイル31の磁場が共鳴して強固に結合し、第1周波数(例えば、150kHz)の交流電力が、送電コイル21から受電コイル31に送電される。
【0038】
なお、初期送電で給電装置2から被給電装置3へ供給される交流電力は、発信回路37の駆動に足りる程度の小電力であっても構わない。
【0039】
<信号発信>
次に、受電コイル31が受電して整流回路34により整流された直流電圧によって、発信回路37が駆動する。発信回路37は、微弱な交流信号を受電コイル31に対して出力する。
【0040】
発信回路37が出力する交流信号の周波数は、交流信号が交流電力に干渉することを抑制するために、第1周波数及びその高調波と異なる周波数である第2周波数(例えば、数千kHz)に設定される。
【0041】
第2周波数は、整流回路34が駆動可能な周波数帯を超えた周波数又は整流回路34の整流効率が所定比率(例えば、1/10)以下となる周波数に設定されるのが好ましい。特に、整流回路34としてダイオードブリッジ回路を用いた場合には、第2周波数は、ダイオード35の応答周波数を超えた周波数又はダイオード35の出力がDC特性の所定閾値(例えば、1/10)より低くなる周波数に設定されるのが好ましい。
【0042】
<位置推定>
交流信号が、受電コイル31から給電装置2a~2cまで伝播して、受電コイル31と磁場共鳴する送電コイル21a~21cが、受電コイル31から発信された第2周波数の交流信号をそれぞれ受信すると、フィルタ回路61a~61cが、給電側共振回路23a~23c内に存在する第1周波数の交流電力を遮断するとともに、第2周波数の交流信号を通過させる。そして、信号検出回路62a~62cは、フィルタ回路61a~61cを通過した交流信号の強度をそれぞれ検出する。
【0043】
次に、位置推定部63は、信号検出回路62a~62cがそれぞれ検出した交流信号の強度に応じて、受電コイル31に最も近い給電装置2a~2cを推定する。具体的には、位置推定部63は、信号検出回路62a~62cがそれぞれ検出した交流信号の強度を比較し、最も強度が強い交流信号を受信した信号検出回路62a~62cに対応する給電装置2が受電コイル31に最も近いと推定する。
【0044】
図2に示す本実施形態では、被給電装置3(受電コイル31)が、給電装置2bに最も近い位置にある。そのため、受電コイル31と送電コイル21bとが磁場共鳴し、受電コイル31から送信された交流信号は、強い強度で送電コイル21bに受信される。
【0045】
一方、被給電装置3(受電コイル31)は、給電装置2a、2cとコイルの径方向にオフセットした位置にあり、給電装置2a、2cと受電コイル31との距離は、給電装置2bと受電コイル31との距離に比べて遠い。したがって、受電コイル31と送電コイル21a、21cとは磁場共鳴しない又は非常に弱い磁場共鳴状態となり、受電コイル31から送信された交流信号は、送電コイル21a、21cで受信されない又は非常に弱い強度で受信される。
【0046】
以下では、上述したように、給電装置2bが受電コイル31に最も近い場合を例に説明する。
【0047】
そして、コントローラ64は、位置推定部63が受電コイル31に最も近いと選定した給電装置2bに対応するスイッチ24bをオンするとともに、他の給電装置2a、2cに対応するスイッチ24a、24cをオフにする。
【0048】
<本送電>
通電された送電コイル21b及び受電コイル31の磁場が共鳴して強固に結合し、第1周波数の交流電力が、送電コイル21bから受電コイル31に効率的に送電される。
【0049】
なお、送電コイル21から受電コイル31への初期送電は、所定周期(例えば、5秒毎)で行われるのが好ましい。これにより、移動体4が移動する場合であっても、移動体4の移動に追従するように受電コイル31に最も近い給電装置2をリアルタイムで選定することができる。
【0050】
例えば、移動体4の移動に伴って、被給電装置3が給電装置2bの近傍から給電装置2cの近傍へ移動する場合には、信号検出回路62bが検出する交流信号の強度が徐々に小さくなる一方で、信号検出回路62cが検出する交流信号の強度が徐々に大きくなる。そして、交流信号の強度が逆転するタイミングで、コントローラ64が、スイッチ24bをオフするとともにスイッチ24cをオンにすれば、被給電装置3への電力送電は途切れることなく行われ、最も効率的な電力送電を行うことができる。なお、交流信号の強度が逆転するタイミングの前後において、スイッチ24b、24cを両方オンにすることにより、電力送電の安定性をさらに高めることができる。
【0051】
このようにして、本実施形態に係るワイヤレス給電システム1は、磁界共鳴方式により電力を送電するワイヤレス給電システム1であって、送電コイル21をそれぞれ備えている給電装置2a~2cと、送電コイル21から第1周波数の交流電力を受電する受電コイル31と、第1周波数と異なる周波数である第2周波数の交流信号を出力するとともに交流信号を受電コイル31から送信させる発信回路37と、を備えている被給電装置3と、受電コイル31から各給電装置2a~2cにそれぞれ伝播した交流信号の強度に基づいて、給電装置2a~2cと受電コイル31との位置関係を推定する位置推定装置6と、を備えている構成とした。
【0052】
この構成により、発信回路37が、交流電力と同期しない周波数に設定された交流信号を出力し、受電コイル31が、交流電力の受電と交流信号の送信に兼用され、位置推定装置6が、各送電コイル21が受信した交流信号の強度に基づいて給電装置2a~2cと受電コイル31との位置関係を推定することにより、給電装置2a~2cと被給電装置3との位置関係を精度良く把握して送受電を安定して行うことができ、さらに、移動体4を軽量且つ小型に構成することができる。
【0053】
また、本実施形態に係るワイヤレス給電システム1は、位置推定装置6が、送電コイル21a~21cにそれぞれ対応して接続され、交流電力を遮断するとともに送電コイル21a~21cが受信した交流信号を通過させるフィルタ回路61a~61cと、フィルタ回路61a~61cをそれぞれ通過した交流信号の強度に基づいて、受電コイル31に最も近い送電コイル21a~21cを推定する位置推定部63と、を備えている構成とした。
【0054】
この構成により、フィルタ回路61a~61cが、給電装置2a~2c内に複数存在する周波数成分の信号から交流信号を取り出し、位置推定部63が、フィルタ回路61a~61cが取り出した交流信号の強度に基づいて、受電コイル31に最も近い送電コイル21a~21cを推定することにより、給電装置2a~2cと被給電装置3との位置関係を精度良く把握して送受電を安定して行うことができる。
【0055】
また、本実施形態に係るワイヤレス給電システム1は、被給電装置3は、受電コイル31と交流電力が供給される負荷41との間に設けられ、所定の周波数帯で駆動可能な整流回路34をさらに備え、第2周波数は、所定の周波数帯を超えた周波数又は整流回路34の整流効率が所定の比率以下である周波数に設定されている構成とした。
【0056】
この構成により、交流信号が、被給電装置3内で整流回路34に干渉することを抑制できる。
【0057】
また、本実施形態に係るワイヤレス給電システム1は、整流回路34は、複数のダイオード35を有するダイオードブリッジ回路であり、第2周波数は、ダイオード35の応答周波数を超えた周波数又はダイオード35の出力がDC特性の所定閾値より低くなる周波数に設定されている構成とした。
【0058】
この構成により、交流信号が、ダイオード35から成るダイオードブリッジ回路に干渉することを抑制できる。
【0059】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係るワイヤレス給電システム1について、図3に基づいて説明する。なお、後述するように、本実施形態に係るワイヤレス給電システム1は、上述した第1実施形態に係るワイヤレス給電システム1と比較して、位置推定装置6の構成のみが異なるため、その他の共通する構成は同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0060】
位置推定装置6は、アンテナコイル65a~65cと、信号検出回路62a~62cと、位置推定部63と、を備えている。
【0061】
アンテナコイル65a~65cは、送電コイル21a~21cの近傍の任意の位置(例えば、左右、前後又は上下)にそれぞれ対応して設けられ、受電コイル31から発信された交流信号をそれぞれ受信する。すなわち、アンテナコイル65aは、受電コイル31から送電コイル21aに向けて発信された交流信号を受信する。同様に、アンテナコイル65bは、受電コイル31から送電コイル21bに向けて発信された交流信号を受信し、アンテナコイル65cは、受電コイル31から送電コイル21cに向けて発信された交流信号を受信する。
【0062】
信号検出回路62a~62cは、アンテナコイル65a~65cに対応してそれぞれ接続されている。信号検出回路62aは、アンテナコイル65aが受信した交流信号の強度を検出する。同様に、信号検出回路62bは、アンテナコイル65bが受信した交流信号の強度を検出し、信号検出回路62cは、アンテナコイル65cが受信した交流信号の強度を検出する。なお、信号検出回路62a~62cは、それぞれ独立した図示しないDC電源により駆動する。
【0063】
次に、ワイヤレス給電システム1の作用について説明する。
【0064】
<初期送電>
まず、3つの送電コイル21の全て又は少なくとも何れか1つに交流電力を順次供給すると、被給電装置3に最も近い送電コイル21に通電されたときに、通電された送電コイル21をコイル軸方向に貫くように振動磁場が生じる。また、磁場の振動によって、受電コイル31に誘導電流が流れ、受電コイル31をコイル軸方向に貫くように振動磁場が生じる。このようにして、通電された送電コイル21及び受電コイル31の磁場が共鳴して強固に結合し、第1周波数(例えば、150kHz)の交流電力が、送電コイル21から受電コイル31に送電される。
【0065】
なお、初期送電で給電装置2から被給電装置3へ供給される交流電力は、発信回路37の駆動に足りる程度の小電力であっても構わない。
【0066】
<信号発信>
次に、受電コイル31が受電して整流回路34により整流された直流電圧によって、発信回路37が駆動する。発信回路37は、微弱な交流信号を受電コイル31に対して出力する。
【0067】
発信回路37が出力する交流信号の周波数は、交流信号が交流電力に干渉することを抑制するために、第1周波数及びその高調波と異なる周波数である第2周波数(例えば、数千kHz)に設定される。
【0068】
第2周波数は、整流回路34が駆動可能な周波数帯を超えた周波数又は整流回路34の整流効率が所定比率(例えば、1/10)以下となる周波数に設定されるのが好ましい。特に、整流回路34としてダイオードブリッジ回路を用いた場合には、第2周波数は、ダイオード35の応答周波数を超えた周波数又はダイオード35の出力がDC特性の所定閾値(例えば、1/10)より低くなる周波数に設定されるのが好ましい。
【0069】
<位置推定>
次に、交流信号が、受電コイル31から給電装置2a~2cまで伝播して、アンテナコイル65a~65cが、受電コイル31から発信された第2周波数の交流信号をそれぞれ受信すると、信号検出回路62a~62cが、アンテナコイル65a~65cが受信した交流信号の強度をそれぞれ検出する。
【0070】
次に、位置推定部63が、信号検出回路62a~62cが検出した交流信号の強度に応じて、受電コイル31に最も近い給電装置2a~2cを推定する。具体的には、位置推定部63は、信号検出回路62a~62cがそれぞれ検出した交流信号の強度を比較し、最も強度が強い交流信号を受信した信号検出回路62a~62cに対応する給電装置2が受電コイル31に最も近いと推定する。
【0071】
図3に示す本実施形態では、第1実施形態と同様、被給電装置3(受電コイル31)が、給電装置2bに最も近い位置にある。そのため、受電コイル31から送信された交流信号は、強い強度でアンテナコイル65bに受信される。
【0072】
一方、被給電装置3(受電コイル31)は、給電装置2a、2cとコイルの径方向にオフセットした位置にあり、給電装置2a、2cと受電コイル31との距離は、給電装置2bと受電コイル31との距離に比べて遠い。したがって、受電コイル31から送信された交流信号は、アンテナコイル65a、65cで受信されない又は非常に弱い強度で受信される。
【0073】
以下では、上述したように、給電装置2bが受電コイル31に最も近い場合を例に説明する。
【0074】
そして、コントローラ64は、位置推定部63が受電コイル31に最も近いと選定した給電装置2bに対応するスイッチ24bをオンするとともに、他の給電装置2a、2cに対応するスイッチ24a、24cをオフにする。
【0075】
<本送電>
通電された送電コイル21b及び受電コイル31の磁場が共鳴して強固に結合し、第1周波数の交流電力が、送電コイル21bから受電コイル31に効率的に送電される。
【0076】
なお、送電コイル21から受電コイル31への初期送電は、所定周期(例えば、5秒毎)に行われるのが好ましい。これにより、移動体4が移動する場合であっても、移動体4の移動に追従するように受電コイル31に最も近い給電装置2をリアルタイムで選定することができる。
【0077】
例えば、移動体4の移動に伴って、被給電装置3が給電装置2bの近傍から給電装置2cの近傍へ移動する場合には、信号検出回路62bが検出する交流信号の強度が徐々に小さくなる一方で、信号検出回路62cが検出する交流信号の強度が徐々に大きくなる。そして、交流信号の強度が逆転するタイミングで、コントローラ64が、スイッチ24bをオフするとともにスイッチ24cをオンにすれば、被給電装置3への電力送電は途切れることなく行われ、全電力もロスのない最も効率的な電力送電を行うことができる。なお、交流信号の強度が逆転するタイミングの前後において、スイッチ24b、24cを両方オンにすることにより、電力送電の安定性をさらに高めることができる。
【0078】
このようにして、本実施形態に係るワイヤレス給電システム1は、位置推定装置6は、送電コイル21a~21cの近傍にそれぞれ対応して設けられ、交流信号を受信するアンテナコイル65a~65cと、アンテナコイル65a~65cがそれぞれ受信した交流信号の強度に基づいて、受電コイル31に最も近い給電装置2a~2cを推定する位置推定部63と、を備えている構成とした。
【0079】
この構成により、位置推定部63が、アンテナコイル65a~65cが受信した交流信号の強度に基づいて、受電コイル31に最も近い給電装置2a~2cを推定することにより、給電装置2a~2cと被給電装置3との位置関係を精度良く把握して送受電を安定して行うことができる。
【0080】
(第3実施形態)
上述した第1、第2実施形態では、発信回路37が出力する交流信号の周波数として、第1周波数及びその高調波と異なる周波数である第2周波数に設定される場合を例示して説明したが、発信回路37が出力する交流信号の周波数は、第1周波数と同一又は送電コイル21と受電コイル31との共振状態を維持可能な所定範囲内(例えば、第1周波数の周波数に対して±1%)の周波数に設定されても構わない。
【0081】
このように構成すると、受電コイル31と受電コイル31に最も近い位置にある送電コイル21とが共振状態になり、送電コイル21と受電コイル31とが離れた距離(例えば、1m)にあっても、受電コイル31から送信された交流信号は、最も近い送電コイル21a~21cの何れかで受信され、それに接続された信号検出回路62a~62cで検出される。
【0082】
このとき、送電コイル21a~21cの交流電源5側では、第1周波数の交流電力と発信回路37が出力する交流信号とが混在して互いに干渉するものの、位置推定装置6は、交流信号を受信した送電コイル21a~21cの何れかが受電コイル31に最も近いと推定可能なため、互いに干渉する交流電力と交流信号とを区別する必要はない。そこで、位置推定装置6は、干渉の影響により擾乱された交流信号を検出するか、または第1周波数を通さないローパスフィルタもしくはハイパスフィルタを用いて交流信号のみ抽出することにより、受電コイル31に最も近い送電コイル21を推定することができる。
【0083】
また、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り、上記以外にも種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。さらに、上述した各実施形態及び変形例のうち、何れかを組み合わせても構わないし、全てを組み合わせても構わない。
【0084】
また、上述した各実施形態では、送電コイル21a~21cを1列に配置した構成を図示して説明したが、送電コイル21は、マトリクス状に配置されていても構わないし、空間内に三次元状に配置されていても構わない。
【0085】
なお、上述した各実施形態における交流信号の「強度」とは、交流信号の有無も含まれるものとする。例えば、信号検出回路62a~62cが交流信号を受信したと判断した場合には、交流信号の強度が強いとし、信号検出回路62a~62cが交流信号を受信できずに交流信号が無いと判断された場合には、交流信号の強度が弱いものとしても構わない。
【0086】
また、上述した各実施形態では、1台の被給電装置3に対して位置推定及び送電を行う場合を例に説明したが、2台以上の移動体4に対して位置推定及び送電を並行して行っても構わない。
【符号の説明】
【0087】
1 :ワイヤレス給電システム
2、2a、2b、2c:給電装置
21、21a、21b、21c:送電コイル
22a、22b、22c:(給電装置の)コンデンサ
23a、23b、23c:給電側共振回路
24a、24b、24c:スイッチ
3 :被給電装置
31:受電コイル
32:コンデンサ
33:受電側共振回路
34:整流回路
35:ダイオード
36:(被給電装置の)コンデンサ
37:発信回路
4 :移動体
41:負荷
5 :交流電源
6 :位置推定装置
61a、61b、61c:フィルタ回路
62a、62b、62c:信号検出回路
63:位置推定部
64:コントローラ
65a、65b、65c:アンテナコイル
図1
図2
図3