(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185985
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】内燃機関用のスパークプラグ及びその製造方法、並びに内燃機関
(51)【国際特許分類】
H01T 13/20 20060101AFI20221208BHJP
H01T 13/54 20060101ALI20221208BHJP
H01T 21/02 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
H01T13/20 B
H01T13/54
H01T13/20 E
H01T21/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093962
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 明光
【テーマコード(参考)】
5G059
【Fターム(参考)】
5G059AA01
5G059AA10
5G059DD11
5G059EE11
5G059KK23
5G059KK30
(57)【要約】
【課題】生産性を向上させることができる内燃機関用のスパークプラグ及びその製造方法、並びに内燃機関を提供すること。
【解決手段】スパークプラグ1において、プラグカバー5は、放電ギャップGが配される副燃焼室50を覆うようハウジング2の先端部に設けられている。プラグカバー5には、副燃焼室50と外部とを連通させる噴孔51が形成されている。接地電極6は、ハウジング2の内壁面21に固定されている。接地電極6は、内壁面21に固定された固定端部62から副燃焼室50内に突出している。放電ギャップGは、中心電極4の先端部と接地電極6の基端面61とがプラグ軸方向Zに互いに対向することにより形成されている。放電ギャップGは、ハウジング2の先端よりも基端側に形成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、
上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に設けられたプラグカバー(5)と、を有し、
上記プラグカバーには、上記副燃焼室と外部とを連通させる噴孔(51)が形成されており、
上記接地電極は、上記ハウジングの内壁面(21)に固定されていると共に、該内壁面に固定された固定端部(62)から上記副燃焼室内に突出しており、
上記放電ギャップは、上記中心電極の先端部と上記接地電極の基端面(61)とがプラグ軸方向(Z)に互いに対向することにより形成されていると共に、上記ハウジングの先端よりも基端側に形成されている、内燃機関用のスパークプラグ(1)。
【請求項2】
上記内壁面は平坦面(211)を有し、上記接地電極は該平坦面に固定されている、請求項1に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項3】
上記ハウジングは、上記内壁面の一部をプラグ径方向の外側に後退させることにより凹設した固定凹部(22)を有し、該固定凹部は、プラグ軸方向における上記放電ギャップの先端の位置、又は上記放電ギャップの先端よりも基端側の位置から上記ハウジングの先端にわたって形成されていると共に、先端側に開口しており、上記接地電極は、上記固定凹部を形成する凹部形成面(221)に固定されている、請求項1又は2に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項4】
上記放電ギャップは、上記噴孔の中心軸の延長線(51L)よりも基端側に形成されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の内燃機関用のスパークプラグ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の内燃機関用のスパークプラグを製造する方法であって、
上記プラグカバー及び上記接地電極を固定する前の上記ハウジングに、上記接地電極を固定するにあたっては、
上記接地電極の上記固定端部と反対側の突出側端部(63)を組付け治具(14)にて保持し、上記接地電極の上記固定端部を上記ハウジングの上記内壁面に当接させて溶接し、
上記組付け治具は、上記接地電極を基端側と先端側とから挟持する基端側支持部(141)と先端側支持部(142)とを有し、
上記固定端部を上記内壁面に溶接する際には、上記基端側支持部の基端面(143)を、上記中心電極の先端に当接させる、内燃機関用のスパークプラグの製造方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の内燃機関用のスパークプラグを備えた内燃機関(10)であって、
主燃焼室(11)と、
該主燃焼室に設けられた吸気弁(12)及び排気弁(13)と、を有し、
上記スパークプラグの先端部は、上記主燃焼室に面するように配置されており、
上記接地電極は、プラグ軸方向から見たとき、上記中心電極の先端部よりも上記吸気弁側の位置から、上記中心電極の先端部に向かって突出しており、
上記噴孔のうち少なくとも一つは、プラグ軸方向から見たとき、外側開口部(511)が上記吸気弁側を向くように形成された吸気側噴孔(510)であり、
該吸気側噴孔は、先端側へ向かうほどプラグ径方向の外側へ向かうように、プラグ軸方向に対して傾斜して開口している、内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関用のスパークプラグ及びその製造方法、並びに内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されているように、放電ギャップが配される副燃焼室を備えたスパークプラグが知られている。当該スパークプラグは、接地電極がハウジングの先端部に固定されており、放電ギャップを形成した後に、副燃焼室を覆うプラグカバーをハウジングに接合することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のスパークプラグにおいては、ハウジングにプラグ径方向に貫通した貫通孔を設けて、その貫通孔に接地電極を挿通している。一方、放電ギャップは、中心電極と接地電極とがプラグ軸方向に互いに対向することにより形成されている。それゆえ、放電ギャップを所望の長さに調整することが困難である。そのため、生産性が低くなりやすい。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、生産性を向上させることができる内燃機関用のスパークプラグ及びその製造方法、並びに内燃機関を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、筒状の絶縁碍子(3)と、
該絶縁碍子の内周側に保持されると共に該絶縁碍子から先端側に突出した中心電極(4)と、
上記絶縁碍子を内周側に保持する筒状のハウジング(2)と、
上記中心電極との間に放電ギャップ(G)を形成する接地電極(6)と、
上記放電ギャップが配される副燃焼室(50)を覆うよう上記ハウジングの先端部に設けられたプラグカバー(5)と、を有し、
上記プラグカバーには、上記副燃焼室と外部とを連通させる噴孔(51)が形成されており、
上記接地電極は、上記ハウジングの内壁面(21)に固定されていると共に、該内壁面に固定された固定端部(62)から上記副燃焼室内に突出しており、
上記放電ギャップは、上記中心電極の先端部と上記接地電極の基端面(61)とがプラグ軸方向(Z)に互いに対向することにより形成されていると共に、上記ハウジングの先端よりも基端側に形成されている、内燃機関用のスパークプラグ(1)にある。
【0007】
本発明の第2の態様は、上記内燃機関用のスパークプラグを製造する方法であって、
上記プラグカバー及び上記接地電極を固定する前の上記ハウジングに、上記接地電極を固定するにあたっては、
上記接地電極の上記固定端部と反対側の突出側端部(63)を組付け治具(14)にて保持し、上記接地電極の上記固定端部を上記ハウジングの上記内壁面に当接させて溶接し、
上記組付け治具は、上記接地電極を基端側と先端側とから挟持する基端側支持部(141)と先端側支持部(142)とを有し、
上記固定端部を上記内壁面に溶接する際には、上記基端側支持部の基端面(143)を、上記中心電極の先端に当接させる、内燃機関用のスパークプラグの製造方法にある。
【0008】
本発明の第3の態様は、上記内燃機関用のスパークプラグを備えた内燃機関(10)であって、
主燃焼室(11)と、
該主燃焼室に設けられた吸気弁(12)及び排気弁(13)と、を有し、
上記スパークプラグの先端部は、上記主燃焼室に面するように配置されており、
上記接地電極は、プラグ軸方向から見たとき、上記中心電極の先端部よりも上記吸気弁側の位置から、上記中心電極の先端部に向かって突出しており、
上記噴孔のうち少なくとも一つは、プラグ軸方向から見たとき、外側開口部(511)が上記吸気弁側を向くように形成された吸気側噴孔(510)であり、
該吸気側噴孔は、先端側へ向かうほどプラグ径方向の外側へ向かうように、プラグ軸方向に対して傾斜して開口している、内燃機関にある。
【発明の効果】
【0009】
上記スパークプラグにおいて、接地電極は、ハウジングの内壁面に固定されている。それゆえ、ハウジングに対する接地電極の位置を調整しやすい。そのため、放電ギャップの調整が容易となり、スパークプラグの生産性を向上させることができる。
【0010】
上記スパークプラグの製造方法においては、上記組付け治具を用いて、接地電極をハウジングの内壁面に固定する。それゆえ、所望の長さを有する放電ギャップを容易に形成することができる。その結果、スパークプラグを効率的に製造することができる。
【0011】
以上のごとく、上記態様によれば、生産性を向上させることができる内燃機関用のスパークプラグ及びその製造方法、並びに内燃機関を提供することができる。
なお、特許請求の範囲及び課題を解決する手段に記載した括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態1における、スパークプラグの先端部付近のプラグ軸方向に沿った断面図であって、
図2のI-I線矢視断面相当図。
【
図4】実施形態1における、内燃機関を先端側から見た図。
【
図5】実施形態1における、内燃機関に設置されたスパークプラグを先端側から見た図。
【
図6】実施形態1における、噴孔を開口方向に延長した延長領域と放電ギャップとの関係を説明する、断面説明図。
【
図7】実施形態1における、組付け治具を中心電極に当接させる様子を示す断面図。
【
図8】実施形態1における、接地電極を内壁面に溶接する様子を示す断面図。
【
図9】実施形態1における、プラグカバーをハウジングに当接させる様子を示す断面図。
【
図10】実施形態1における、圧縮行程時の、放電が伸長する前のスパークプラグの先端部付近の断面図。
【
図11】実施形態1における、圧縮行程時の、放電が伸長したときのスパークプラグの先端部付近の断面図。
【
図12】実施形態2における、スパークプラグの先端部付近のプラグ軸方向に沿った断面図であって、
図13のXII-XII線矢視断面相当図。
【
図14】実施形態3における、スパークプラグの先端部のプラグ軸方向に直交する断面を先端側から見た図。
【
図15】実施形態3における、接地電極を、接地電極の突出側から見た図。
【
図16】実施形態4における、スパークプラグの先端部付近のプラグ軸方向に沿った断面図。
【
図17】実施形態4における、接地電極を、接地電極の突出側から見た図。
【
図18】実施形態5における、スパークプラグの先端部のプラグ軸方向に直交する断面を先端側から見た図。
【
図19】実施形態6における、スパークプラグの先端部付近のプラグ軸方向に沿った断面図であって、
図20のXIX-XIX線矢視断面相当図。
【
図21】実施形態7における、スパークプラグの先端部のプラグ軸方向に直交する断面を基端側から見た図。
【
図22】実施形態8における、スパークプラグの先端部のプラグ軸方向に直交する断面を基端側から見た図。
【
図23】実施形態9における、内燃機関に設置されたスパークプラグのプラグ軸方向に沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(実施形態1)
内燃機関用のスパークプラグ及びその製造方法、並びに内燃機関に係る実施形態について、
図1~
図11を参照して説明する。
本形態の内燃機関用のスパークプラグ1は、
図1、
図2に示すごとく、筒状の絶縁碍子3と、中心電極4と、筒状のハウジング2と、接地電極6と、プラグカバー5と、を有する。中心電極4は、絶縁碍子3の内周側に保持されると共に絶縁碍子3から先端側に突出している。ハウジング2は、絶縁碍子3を内周側に保持する。接地電極6は、中心電極4との間に放電ギャップGを形成する。プラグカバー5は、放電ギャップGが配される副燃焼室50を覆うようハウジング2の先端部に設けられている。プラグカバー5には、副燃焼室50と外部とを連通させる噴孔51が形成されている。
【0014】
接地電極6は、ハウジング2の内壁面21に固定されている。接地電極6は、内壁面21に固定された固定端部62から副燃焼室50内に突出している。放電ギャップGは、中心電極4の先端部と接地電極6の基端面61とがプラグ軸方向Zに互いに対向することにより形成されている。放電ギャップGは、
図1に示すごとく、ハウジング2の先端よりも基端側に形成されている。
【0015】
本形態のスパークプラグ1は、例えば、自動車等の内燃機関における着火手段として用いることができる。
図3に示すごとく、ハウジング2の外周面に形成したネジ部23を、シリンダヘッド17のプラグホール171の雌ネジ部に螺合して、スパークプラグ1が内燃機関10に取り付けられる。
【0016】
そして、スパークプラグ1の軸方向Zの一端が、内燃機関10の主燃焼室11に配置される。スパークプラグ1の軸方向Zにおいて、主燃焼室11に露出する側を先端側、その反対側を基端側というものとする。また、スパークプラグ1の軸方向Zを、適宜、プラグ軸方向Z、或いは単に、Z方向ともいう。なお、プラグ中心軸Cは、スパークプラグ1の中心軸Cを意味するものとする。また、プラグ中心軸Cは、本形態において、中心電極4の中心軸及び主燃焼室11の中心軸でもある。また、プラグ径方向とは、スパークプラグ1の中心軸Cに直交する平面上において、スパークプラグ1の中心軸Cを中心とする円の半径方向を意味する。
【0017】
本形態において、プラグカバー5は、ハウジング2の先端部に溶接等によって接合されている。
図6、
図10、
図11に示すごとく、スパークプラグ1が内燃機関10に取り付けられた状態において、プラグカバー5は、副燃焼室50を主燃焼室11と区画している。
【0018】
副燃焼室50は、
図10、
図11に示すごとく、絶縁碍子3から先端側に突出した中心電極4の周辺における、ハウジング2の先端部の内周側の空間を含む。また、副燃焼室50は、絶縁碍子3の外周面とハウジング2の内壁面21との間に形成された環状の空間であるポケット部501をも含む。
【0019】
プラグカバー5に形成された噴孔51は、副燃焼室50と主燃焼室11とを連通させている。本形態において、噴孔51は、
図2に示すごとく、Z方向から見たとき、噴孔51の中心軸の延長線51Lがプラグ径方向に沿うように形成されている。噴孔51の中心軸の延長線51Lは、実質的にプラグ中心軸Cを通過する。
【0020】
また、本形態において、放電ギャップGは、
図1に示すごとく、噴孔51の中心軸の延長線51Lよりも基端側に形成されている。また、放電ギャップGは、
図6に示すごとく、噴孔51を開口方向に延長した延長領域51Eよりも、基端側に形成されている。
【0021】
本形態において、放電ギャップGは、中心電極4の先端面42と接地電極6の基端面61とがZ方向に互いに対向することにより形成されている。先端面42と基端面61とは、それぞれ平坦面となっている。先端面42は、基端面61に沿って形成されている。また、先端面42と基端面61とは、それぞれZ方向に略直交している。
【0022】
また、中心電極4の先端部には、他の部分よりも外径が小さい小径部41が形成されている。先端面42は、小径部41に形成されている。放電ギャップGは、例えば、中心電極4の小径部41をZ方向に投影した領域であって、中心電極4の先端面42と接地電極6の基端面61との間の領域である。
【0023】
また、本形態において、接地電極6は、略四角柱形状をなしている。接地電極6は、
図1、
図2に示すごとく、プラグ径方向に沿って設けられている。
【0024】
また、ハウジング2は、
図10、
図11に示すごとく、内壁面21の一部がプラグ径方向における内側に突出することにより形成された支承部24を有する。支承部24は環状に形成されている。支承部24は、絶縁碍子3をZ方向に支承している。
【0025】
ハウジング2の内壁面21は、支承部24よりも先端側において、略円筒形状に形成されている。
【0026】
次に、本形態のスパークプラグ1の製造方法について説明する。
プラグカバー5及び接地電極6を固定する前のハウジング2に、接地電極6を固定するにあたっては、
図7に示すごとく、接地電極6の固定端部62と反対側の突出側端部63を組付け治具14にて保持する。そして、
図8に示すごとく、接地電極6の固定端部62をハウジング2の内壁面21に当接させて溶接する。
【0027】
組付け治具14は、接地電極6を基端側と先端側とから挟持する基端側支持部141と先端側支持部142とを有する。固定端部62を内壁面21に溶接する際には、基端側支持部141の基端面143を、中心電極4の先端に当接させる。
【0028】
本形態において、基端側支持部141と先端側支持部142とは、接地電極6の突出側端部63をZ方向に挟持する。このとき、基端側支持部141の先端面と接地電極6の基端面61とは、互いに当接している。先端側支持部142の基端面と接地電極6の先端面とは、互いに当接している。
【0029】
本形態において、基端側支持部141の基端面143は、平坦面となっている。基端面143は、Z方向に略直交している。また、基端側支持部141の先端面及び先端側支持部142の基端面も、それぞれ平坦面となっていると共に、Z方向に略直交している。
【0030】
図7に示すごとく、基端側支持部141のZ方向における厚みL1は、
図9に示す、放電ギャップGのプラグ軸方向Zにおける長さL2と同等となっている。
【0031】
また、組付け治具14は、
図7、
図8に示すごとく、治具本体部144に、基端側支持部141と先端側支持部142とが配設されている。基端側支持部141は、治具本体部144の基端部に固定され、該基端部から、治具本体部144の軸方向に対して直交する方向に突出している。先端側支持部142は、基端側支持部141の先端側において、治具本体部144に対してスライド可能な状態で、取り付けられている。これにより、先端側支持部142と基端側支持部141との間に、接地電極6の突出側端部63を挟持することができる。本形態において、組付け治具14は、突出側端部63の突出端面を治具本体部144に当接させた状態にて、接地電極6を保持する。
【0032】
次に、本形態の製造方法について、詳細に説明する。接地電極6の組付けにおいては、接地電極6を保持した組付け治具14を、
図7の矢印Mに示すごとく、中心電極4の先端部に向けて移動させる。そして、
図8に示すごとく、基端側支持部141の基端面143と中心電極4の先端面42とを、Z方向に互いに当接させると共に、接地電極6の固定端部62とハウジング2の内壁面21とを互いに当接させる。このとき、中心電極4の先端面42と接地電極6の基端面61とは、基端側支持部141を挟んで、Z方向に互いに対向している。
【0033】
次いで、接地電極6の固定端部62を、レーザー溶接によって内壁面21に接合する。具体的には、固定端部62と内壁面21とが互いに当接する当接部に向けてレーザー光Lを照射することにより、接地電極6を内壁面21に溶接する。溶接後、組付け治具14を接地電極6から取り外す。なお、例えば、接地電極6を内壁面21に、抵抗溶接等にて仮固定した後、組付け治具14を接地電極6から取り外し、その後、レーザー溶接を行うことも考えられる。
【0034】
次いで、プラグカバー5を、
図9の矢印Mに示すごとく、ハウジング2の先端部に向けて移動させ、プラグカバー5の基端部とハウジング2の先端部とをZ方向に互いに当接させる。そして、ハウジング2の先端部とプラグカバー5の基端部とを互いに溶接する。これにより、
図1、
図2に示すごとく、本形態のスパークプラグ1を得ることができる。
【0035】
次に、本形態の内燃機関10について説明する。
内燃機関10は、
図3、
図4に示すごとく、上記スパークプラグ1を備える。また、内燃機関10は、主燃焼室11と、主燃焼室11に設けられた吸気弁12及び排気弁13と、を有する。スパークプラグ1の先端部は、主燃焼室11に面するように配置されている。
【0036】
接地電極6は、
図4、
図5に示すごとく、プラグ軸方向Zから見たとき、中心電極4の先端部よりも吸気弁12側の位置から、中心電極4の先端部に向かって突出している。
【0037】
また、噴孔51のうち少なくとも一つは、プラグ軸方向Zから見たとき、外側開口部511が吸気弁12側を向くように形成された吸気側噴孔510である。吸気側噴孔510は、
図6に示すごとく、先端側へ向かうほどプラグ径方向の外側へ向かうように、プラグ軸方向Zに対して傾斜して開口している。
【0038】
内燃機関10は、
図3に示すごとく、シリンダ15内を往復運動するピストン16を備える。主燃焼室11は、ピストン16の往復運動によって、容積変化する。また、内燃機関10には、吸気ポート121及び排気ポート131が形成されており、それぞれ吸気弁12又は排気弁13が備えられている。なお、本明細書においては、
図4に示すごとく、内燃機関10をZ方向から見たときの吸気弁12と排気弁13との並び方向であって、Z方向と直交する方向を、適宜、Y方向という。
【0039】
スパークプラグ1は、
図3、
図4に示すごとく、シリンダヘッド17における、吸気ポート121と排気ポート131とに囲まれた位置に配設されている。
図4に示すごとく、吸気ポート121および排気ポート131は、一つの主燃焼室11に対して、2個ずつ配設されている。
【0040】
2つの吸気ポート121と2つの排気ポート131とは、スパークプラグ1の周りにおいて、周状に配列されている。スパークプラグ1の周りにおいて、2つの吸気ポート121同士が互いに隣り合い、2つの排気ポート131同士が互いに隣り合っている。
図3に示すごとく、吸気ポート121及び排気ポート131は、その開口方向が主燃焼室11の中心軸側に向かうように、ピストン16の進退方向に対して傾斜している。また、主燃焼室11の基端面は、スパークプラグ1から遠ざかるにつれて先端側へ向かうように傾斜している。
【0041】
また、内燃機関10は、ピストン16の往復運動に伴って、吸気行程、圧縮行程、膨張行程、排気行程を順次繰り返す。吸気行程において、2つの吸気ポート121からガスが主燃焼室11内に導入され、排気行程において、2つの排気ポート131から主燃焼室11内のガスが排出される。
【0042】
そして、主燃焼室11内においては、主として、
図3の矢印A1に示すごとく、ピストン16の摺動方向に直交する方向の軸周りの気流である、タンブル流が形成される。そして、この気流は、主燃焼室11内のスパークプラグ1の先端部付近においては、吸気弁12側から排気弁13へ向かう向き、すなわちY方向に沿った向きとなる。より具体的には、
図4に示すごとく、プラグ軸方向Zから見たとき、2つの吸気ポート121の中間位置から、2つの排気ポート131の中間位置へ向かう方向に沿った気流が、スパークプラグ1の先端部付近の主な気流となる。
【0043】
なお、主燃焼室11内の気流は、常に一定となっているわけではなく、サイクル間、或いは1サイクル中の異なるタイミングの間において、変動し得る。ただし、主な気流の向き、特に、点火タイミングにおける気流は、概略定まっており、上述した気流は、点火タイミングにおける主な気流を意味する。そして、「主燃焼室11の気流」というときは、特に断らない限り、上述の、点火タイミングにおける、スパークプラグ1の先端部付近の気流を意味する。また、単に「上流側」、「下流側」というときは、特に断らない限り、上記「主燃焼室11の気流」における、上流側、下流側を意味する。
【0044】
また、本形態においては、1つの吸気側噴孔510を有する。
図3~
図6に示すごとく、Y方向において、吸気側噴孔510は、他の噴孔51よりも吸気弁12側に形成されている。また、吸気側噴孔510の外側開口部511は、主燃焼室11の気流の上流側を向いている。
【0045】
吸気側噴孔510は、
図4、
図5に示すごとく、Z方向から見たとき、吸気側噴孔510の中心軸の延長線51Lが、接地電極6の突出方向に沿うように、形成されている。吸気側噴孔510は、
図5に示すごとく、Z方向から見たとき、吸気側噴孔510の中心軸の延長線51LがY方向に沿うように、形成されている。また、接地電極6は、接地電極6の突出方向がY方向に沿うように、固定されている。
【0046】
次に、本形態の作用効果を説明する。
上記スパークプラグ1において、接地電極6は、ハウジング2の内壁面21に固定されている。それゆえ、ハウジング2に対する接地電極6の位置を調整しやすい。そのため、放電ギャップGの調整が容易となり、スパークプラグ1の生産性を向上させることができる。
【0047】
つまり、接地電極6は内壁面21に固定されている。それゆえ、接地電極6をハウジング2に固定する際、接地電極6の一端(すなわち固定端部62となる側の端部)を内壁面21に当接させつつ内壁面21に沿ってスライドさせることができる。それゆえ、ハウジング2に対する接地電極6の位置を微調整することができる。それゆえ、スパークプラグ1における各部品の寸法のばらつき等があったとしても、内壁面21に対する接地電極6の固定位置を調整することにより、中心電極4の先端と接地電極6の基端面61との間の距離を所望の長さとしやすい。その結果、所望の長さを有する放電ギャップGを容易に形成することができる。
【0048】
また、放電ギャップGは、噴孔51の中心軸の延長線51Lよりも基端側に形成されている。それゆえ、噴孔51を介して副燃焼室50に導入された気流の流速が比較的速い場合であっても、流速の速い気流は放電ギャップGに流入しにくい。それゆえ、気流による、放電ギャップGに生じた放電の吹き消え、短絡を抑制することができる。それゆえ、放電によって副燃焼室50内の混合気を着火させやすい。その結果、着火性を向上させることができる。
【0049】
また、放電ギャップGは、噴孔51を開口方向に延長した延長領域51Eよりも基端側に形成されている。それゆえ、噴孔51を介して副燃焼室50に導入された気流の流速が比較的速い場合であっても、流速の速い気流は放電ギャップGに一層流入しにくい。その結果、気流による放電の吹き消え、短絡を一層抑制することができる。
【0050】
また、接地電極6は、ハウジング2の内壁面21に固定されているため、放電ギャップGの形成位置を、副燃焼室50の、より基端側としやすい。つまり、放電ギャップGの形成位置を、噴孔51から離れた位置としやすい。それゆえ、噴孔51から充分離れた位置から火炎が広がり、充分に内圧が高い状態で、火炎ジェットが噴孔51から主燃焼室に噴出することが期待できる。その結果、火炎ジェットが強化されることにより、内燃機関10の高負荷時のノック抑制が期待でき、内燃機関10の出力及び燃費の向上が期待できる。
【0051】
上記スパークプラグ1の製造方法においては、組付け治具14を用いて、接地電極6をハウジング2の内壁面21に固定する。それゆえ、所望の長さを有する放電ギャップGを容易に形成することができる。その結果、スパークプラグ1を効率的に製造することができる。
【0052】
基端側支持部141のZ方向における厚みL1(
図7参照)は、放電ギャップGのZ方向における長さL2(
図9参照)と同等となっている。そして、基端側支持部141の基端面143を中心電極4の先端に当接させた状態にて、接地電極6の固定端部62を内壁面21に溶接する。それゆえ、長さL2を、厚みL1と同等の長さにすることができる。それゆえ、接地電極6をハウジング2に固定した後に放電ギャップGの長さを調整することなく、放電ギャップGを所望の長さとすることができる。それゆえ、放電ギャップGが直接確認しにくい場合であっても、所望の長さの放電ギャップGを容易に形成することができる。その結果、生産性を向上させることができる。
【0053】
また、組付け治具14を用いることにより、所望の長さを有する放電ギャップGを、副燃焼室50のより基端側、すなわち噴孔51から離れた位置に容易に形成することができる。それゆえ、着火性を向上させることができるスパークプラグ1を容易に形成することができる。
【0054】
また、接地電極6は内壁面21に固定されるため、ハウジング2に接地電極6を挿通するための貫通孔等を設ける必要がない。それゆえ、生産性を向上させることができる。
【0055】
上記内燃機関10において、スパークプラグ1は吸気側噴孔510を有する。また、接地電極6は、Z方向から見たとき、中心電極4の先端部よりも吸気弁12側の位置から、中心電極4の先端部に向かって突出している。これにより、吸気側噴孔510を介して副燃焼室50に導入された気流が、接地電極6の基端面61に案内されることにより放電ギャップGに向かいやすい。それゆえ、放電ギャップGに形成された放電が伸長しやすい。その結果、着火性を向上させることができる。
【0056】
本形態において、吸気側噴孔510の外側開口部511は、Z方向から見たとき、吸気弁12側を向いている。つまり、吸気側噴孔510の外側開口部511は、主燃焼室11の気流の上流側を向いている。そのため、圧縮行程等において、吸気側噴孔510を介して副燃焼室50に導入された気流は、他の噴孔51を介して副燃焼室50に導入された気流よりも、強くなりやすい。また、吸気側噴孔510は、先端側へ向かうほどプラグ径方向の外側へ向かうように、Z方向に対して傾斜して開口している。それゆえ、
図10、
図11に示すごとく、吸気側噴孔510を介して副燃焼室50に導入された気流A2は、副燃焼室50における下流側に向かうと共に、副燃焼室50の基端側に向かいやすい。そして、基端側に向かった気流A2は、ポケット部501に流入すると共に、ポケット部501において向きを変え、上流側において先端側へ向かいやすい。つまり、副燃焼室50において、Z方向に直交する方向の軸周りの気流(すなわち、タンブル流)が形成されやすい。そして、先端側へ向かう気流A2は、中心電極4の先端部よりも上流側に位置する接地電極6の基端面61に案内されることにより、放電ギャップGへと向かいやすい。それゆえ、
図10に示すごとく、放電ギャップGに生じた放電Sは、
図11に示すごとく、気流A2によって伸長しやすい。その結果、着火性を向上させることができる。
【0057】
また、放電によって生じた初期火炎は、基端側に向かう気流A2によって、副燃焼室50の、より基端側に運ばれやすい。これによって、噴孔51から充分離れた位置から火炎が広がり、充分に内圧が高い状態で、火炎ジェットが噴孔51から主燃焼室11に噴出することが期待できる。その結果、内燃機関10の高負荷時のノック抑制が期待でき、内燃機関10の出力及び燃費の向上が期待できる。
【0058】
以上のごとく、本形態によれば、生産性を向上させることができる内燃機関用のスパークプラグ及びその製造方法、並びに内燃機関を提供することができる。
【0059】
(実施形態2)
本形態は、
図12、
図13に示すごとく、接地電極6がハウジング2の平坦面211に固定された形態である。
すなわち、内壁面21は平坦面211を有する。そして、接地電極6は平坦面211に固定されている。
【0060】
本形態において、平坦面211は、
図12、
図13に示すごとく、Z方向に沿って形成されている。平坦面211は、ハウジング2の先端から支承部24にわたって形成されている。
【0061】
図12に示すごとく、Z方向における平坦面211の長さL3は、Z方向における接地電極6の厚みL4以上である。また、
図13に示すごとく、接地電極6の長手方向に直交する接地電極6の幅方向において、平坦面211の幅L5は、接地電極6の幅L6以上である。
その他は、実施形態1と同様である。なお、実施形態2以降において用いた符号のうち、既出の実施形態において用いた符号と同一のものは、特に示さない限り、既出の実施形態におけるものと同様の構成要素等を表す。
【0062】
接地電極6の固定端部62は平坦面211に固定されている。それゆえ、固定端部62における内壁面21に接合される面を平坦な面とすることができる。それゆえ、内壁面21に固定する前の接地電極6を効率的に製造することができる。つまり、例えば、金属からなる線材等を、切断面が平坦面となるように、所定の長さに切断することにより、接地電極6を製造することができる。その結果、スパークプラグ1の生産性を向上させることができる。
【0063】
平坦面211は、ハウジング2の先端から支承部24にわたって形成されている。それゆえ、平坦面211が形成されたハウジング2を冷鍛加工によって製造しやすい。その結果、生産性を向上させることができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0064】
(実施形態3)
本形態は、
図14、
図15に示すごとく、実施形態2に対し、接地電極6の形状を変更した形態である。
【0065】
本形態において、接地電極6の固定端部62は、
図14、
図15に示すごとく、プラグ径方向の外側に向かうほど、幅が大きくなっている。
その他は、実施形態2と同様である。
【0066】
接地電極6の固定端部62は、プラグ径方向の外側に向かうほど、幅が大きくなっている。それゆえ、ハウジング2に対する接地電極6の接合面積を広くすることができる。それゆえ、ハウジング2と接地電極6との接合部の強度を高めることができる。それゆえ、高い強度を有するスパークプラグ1を製造することができる。
【0067】
また、ハウジング2に対する接地電極6の接合面積が広くなることにより、接地電極6の熱がハウジング2に効率的に伝わりやすい。それゆえ、接地電極6が高温となることを抑制することができる。その結果、プレイグニッションを抑制することができる。
その他、実施形態2と同様の作用効果を有する。
【0068】
(実施形態4)
本形態は、
図16、
図17に示すごとく、実施形態2に対し、接地電極6の形状を変更した形態である。
【0069】
本形態において、接地電極6の固定端部62は、
図16、
図17に示すごとく、プラグ径方向の外側に向かうほど、Z方向の厚みが厚くなっている。
その他は、実施形態2と同様である。
【0070】
接地電極6の固定端部62は、プラグ径方向の外側に向かうほど、Z方向の厚みが厚くなっている。それゆえ、ハウジング2に対する接地電極6の接合面積を広くすることができる。その結果、ハウジング2と接地電極6との接合部の強度を高めることができると共に、プレイグニッションを抑制することができる。
その他、実施形態2と同様の作用効果を有する。
【0071】
(実施形態5)
本形態は、
図18に示すごとく、実施形態2に対し、ハウジング2の平坦面211がプラグ径方向の内側に突出した形態である。
【0072】
本形態において、ハウジング2は、
図18に示すごとく、内壁面21の一部がプラグ径方向における内側に突出することにより形成された凸部25を有する。凸部25には、プラグ径方向における内側を向く平坦面211が形成されている。接地電極6の固定端部62は、凸部25に形成された平坦面211に溶接されている。
【0073】
また、凸部25は、ハウジング2の先端から支承部24にわたって形成されている(図示略)。
その他の構成及び作用効果は、実施形態2と同様である。
【0074】
(実施形態6)
本形態は、
図19、
図20に示すごとく、接地電極6が凹部形成面221に固定された形態である。
【0075】
ハウジング2は、
図19、
図20に示すごとく、内壁面21の一部をプラグ径方向の外側に後退させることにより凹設した固定凹部22を有する。固定凹部22は、プラグ軸方向Zにおける放電ギャップGの先端の位置、又は放電ギャップGの先端よりも基端側の位置からハウジング2の先端にわたって形成されている。また、固定凹部22は先端側に開口している。接地電極6は、固定凹部22を形成する凹部形成面221に固定されている。
【0076】
本形態において、固定凹部22は、
図19に示すごとく、放電ギャップGの先端よりも基端側の位置からハウジング2の先端にわたって形成されている。また、
図20に示すごとく、接地電極6の幅方向における固定凹部22の幅L7は、接地電極6の幅L6と略同じとなっている。
【0077】
凹部形成面221は、
図19、
図20に示すごとく、接地電極6とプラグ周方向に対向する2つの周方向対向面222と、接地電極6とプラグ径方向に対向する1つの径方向対向面223とを有する。本形態において、周方向対向面222と径方向対向面223とは、それぞれ平坦面211でもある。なお、プラグ周方向は、プラグ中心軸Cを中心とする円周に沿った方向である。
【0078】
本形態において、接地電極6と、2つの周方向対向面222のそれぞれとは、互いに接合されている。また、接地電極6と径方向対向面223とも、互いに接合されている。
【0079】
本形態において、ハウジング2に対し接地電極6を接合するにあたっては、固定端部62を固定凹部22に嵌合した後、溶接を行う。
その他は、実施形態2と同様である。
【0080】
接地電極6は、凹部形成面221に固定されている。それゆえ、ハウジング2に対する接地電極6の接合面積を一層広くすることができる。その結果、ハウジング2と接地電極6との接合部の強度を一層高めることができる。
【0081】
また、ハウジング2に対する接地電極6の接合面積が一層広くなることにより、接地電極6の熱がハウジング2に一層効率的に伝わりやすい。それゆえ、プレイグニッションを一層抑制することができる。
また、ハウジング2に対する接地電極6の、プラグ周方向の位置決めを容易に行うことができる。
【0082】
また、固定凹部22は先端側に開口している。それゆえ、固定凹部22の先端側から、接地電極6の固定端部62を、Z方向に沿って挿入配置することができる。それゆえ、接地電極6を所望の位置に配置しやすい。その結果、生産性を向上させることができる。
【0083】
また、ハウジング2におけるネジ部23のネジ切り始めに対して固定凹部22を所定の位置に形成することにより、接地電極6に対する噴孔51の位置、及びネジ部23のネジ切り始めに対する噴孔51の位置を定めやすい。つまり、例えば、プラグカバー5の基端部に凸部を設けておく。また、噴孔51に対する当該凸部の形成位置を定めておく。そして、ハウジング2に対しプラグカバー5を固定する際、この凸部を、先端側に開口した固定凹部22に嵌合する。これにより、ネジ部23のネジ切り始め及び接地電極6に対する噴孔51の位置を容易に定めることができる。それゆえ、噴孔51を介して副燃焼室50に導入された気流が、接地電極6の基端面61に向かうように、噴孔51を配置しやすい。また、噴孔51の外側開口部511が主燃焼室の気流の上流側を向くように、噴孔51を配置しやすい。それゆえ、気流によって、放電ギャップGに生じた放電を伸長させやすい。また、放電によって形成された初期火炎は、気流によって、副燃焼室50における、より基端側に運ばれやすい。それゆえ、副燃焼室50における、より基端側から火炎が成長しやすい。その結果、着火性を向上させることができる。
その他、実施形態2と同様の作用効果を有する。
【0084】
(実施形態7)
本形態は、
図21に示すごとく、実施形態6に対し、接地電極6及び固定凹部22の形状を変更した形態である。
【0085】
図21に示すごとく、接地電極6の幅方向において、固定端部62の一部の幅L8は、接地電極6の他の部位における幅L9と比較して小さくなっている。
【0086】
接地電極6の幅方向における固定凹部22の幅L7は、幅L8と略同じとなっている。固定端部62の一部は、固定凹部22に嵌合されている。
その他の構成及び作用効果は、実施形態6と同様である。
【0087】
(実施形態8)
本形態は、
図22に示すごとく、実施形態6に対し、接地電極6及び固定凹部22の形状を変更した形態である。
【0088】
接地電極6の固定端部62は、
図22に示すごとく、プラグ径方向の外側に向かうほど、幅が小さくなっている。
【0089】
また、固定凹部22も、プラグ径方向の外側に向かうほど、接地電極6の幅方向における幅が小さくなっている。
その他の構成及び作用効果は、実施形態6と同様である。
【0090】
(実施形態9)
本形態は、
図23に示すごとく、吸気側噴孔510の開口面積を大きくした形態である。
【0091】
図23に示すごとく、プラグカバー5には、吸気側噴孔510と、吸気側噴孔510以外の噴孔51とが形成されている。吸気側噴孔510は、他の噴孔51よりも開口面積が大きい。吸気側噴孔510の内径L10は、例えば、他の噴孔51の内径L11の1.2倍~1.4倍とすることができる。また、吸気側噴孔510の開口面積は、例えば、他の噴孔51の開口面積の1.5倍~2.0倍とすることができる。
その他は、実施形態1と同様である。
【0092】
吸気側噴孔510は、他の噴孔51よりも開口面積が大きい。それゆえ、吸気側噴孔510を介して副燃焼室50に導入された気流を強くすることができる。それゆえ、副燃焼室50内のタンブル流を一層強くすることができる。それゆえ、放電ギャップGに向かう気流を一層強くすることができる。それゆえ、放電ギャップGに生じた放電を一層伸長させることができる。その結果、着火性を一層向上させることができる。
その他、実施形態1と同様の作用効果を有する。
【0093】
上記実施形態1~9において、接地電極6は、略四角柱形状をなしている。ただし、接地電極は、例えば、略円柱形状とすることもできる。
【0094】
上記実施形態1~9において、プラグカバー5には、4つの噴孔51が形成されている。ただし、噴孔は、プラグカバーに5つ以上形成することもできる。また、プラグカバーに形成された噴孔の数は、3つ以下とすることもできる。
【0095】
上記実施形態1~9において、噴孔51は、Z方向から見たとき、噴孔51の中心軸の延長線51Lがプラグ径方向に沿うように形成されている。ただし、噴孔は、Z方向から見たとき、噴孔とプラグ中心軸とを通過するプラグ径方向に延びる仮想直線(図示略)に対して、噴孔の中心軸が傾斜するように形成することもできる。つまり、噴孔を介して副燃焼室に気流が導入されることによって、副燃焼室にスワール流が生じるように、噴孔を形成することもできる。
【0096】
また、放電ギャップを形成する中心電極の先端部と接地電極とのそれぞれに、チップを接合することもできる。つまり、中心電極の先端部に接合されたチップと接地電極に接合されたチップとの間に、放電ギャップを形成することもできる。チップは、例えば、イリジウムや白金等の貴金属、又はこれらを主成分とする合金とすることができる。
【0097】
本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の実施形態に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0098】
1…スパークプラグ、2…ハウジング、21…内壁面、3…絶縁碍子、4…中心電極、5…プラグカバー、50…副燃焼室、51…噴孔、6…接地電極、61…基端面、62…固定端部、G…放電ギャップ、Z…プラグ軸方向