(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022185986
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
H01R 13/56 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
H01R13/56
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021093965
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(72)【発明者】
【氏名】李 致彦
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA09
5E021FB07
5E021FC02
5E021GB04
(57)【要約】
【課題】組立作業性の向上を含むコネクタの改良を提供する。
【解決手段】コネクタ1は、ケーブル2が接続される端子41を保持する第1ハウジング11と、ケーブル2が引き出される引出部122を含む第2ハウジング12とを備える。第1ハウジング11と第2ハウジング12とは、引出部122からケーブル2が引き出される方向(xまたはz)に対して傾斜した境界3に沿って組み付けられる。引出方向(xまたはz)と嵌合方向zとの平行・交差の関係にかかわらず、第1ハウジング11の内側と第2ハウジング12の内側とにケーブル2を直線的に容易に通すことができる。しかも、境界3に対して直交する境界直交軸線5を中心に第1ハウジング11に対して第2ハウジング12を回転させて組み付けることで、同一構造のコネクタ部品一式により複数の引出方向x,zに対応することができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルが接続される端子を保持する第1ハウジングと、
前記ケーブルが引き出される引出部を含む第2ハウジングと、を備え、
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとは、前記引出部から前記ケーブルが引き出される方向に対して傾斜した境界に沿って組み付けられ、
前記第2ハウジングは、前記境界に対して直交した境界直交軸線を中心に、前記第1ハウジングに対して回転させて組付け可能に構成され、
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとの相対回転により、前記引出部には、いずれも前記ケーブルが引き出される方向としての第1引出方向または第2引出方向が設定される、コネクタ。
【請求項2】
前記第1ハウジングと前記第2ハウジングとは、分離可能に構成され、
前記第1ハウジングは、嵌合される側に位置する第1前側開口と、前記境界側に位置する第1後側開口と、を含み、
前記第2ハウジングは、前記境界側に位置する第2前側開口と、前記引出部側に位置する第2後側開口と、を含み、
前記第1後側開口を前記コネクタの嵌合方向に沿って前記第1前側開口に投影したときの前記第1後側開口の投影範囲は、前記第1前側開口の領域に重なり、
前記第2後側開口を前記ケーブルが引き出される方向に沿って前記第2前側開口に投影したときの前記第2後側開口の投影範囲は、前記第2前側開口の領域に重なる、
請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記第1引出方向および前記第2引出方向は、互いに直交し、
前記境界は、前記第1引出方向および前記第2引出方向のいずれに対しても45°をなしている、
請求項1または2に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルに接続される端子を備えた電気コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
ケーブルに接続される端子を備えたコネクタとしては、コネクタの嵌合方向に対して平行にケーブルが引き出されるタイプばかりでなく、嵌合方向に対して直交する方向にケーブルが引き出されるタイプも存在する。後者のタイプにおいて、端子に接続されたケーブルは、ハウジングの内側で屈曲した状態に配置される。ケーブルをハウジングに組み付ける際には、ケーブルの先端側を曲げた状態でハウジングにケーブルを挿入する。
【0003】
特許文献1に記載されたコネクタは、後者のタイプに該当し、側面視においてL字状の筒状のハウジングを備えている。L字状のハウジングの本体には、ケーブルの引き出し方向に向けて突出したケーブル支持部が設けられている。円弧状の横断面を呈するケーブル支持部の上側が開放されている状態で、ケーブルがケーブル支持部からハウジングの内側に挿入される。そして、ハウジングの嵌合口から露出したケーブルの先端に端子が接続される。その後、ケーブルがハウジングの内側に引き戻され、ケーブル支持部には蓋部材が取り付けられる。ケーブルは、ケーブル支持部および蓋部材により包囲された状態でハウジングから引き出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のケーブル支持部および蓋部材のように、ハウジングにおいてケーブルが引き出される引き出し箇所がケーブルの横断面の方向において分割されていると、ケーブルの外周部を包囲する引き出し箇所の一部を開放させることができる。そのため、特許文献1によれば、引き出し箇所からハウジングの内側にケーブルを挿入し易いとされている。
しかしながら、特許文献1の構成によっても、引き出し箇所が一体に形成されている場合と同様、ハウジングの内側で、引き出し箇所から、ケーブルの引き出し方向とは異なる方向に開口した嵌合口に向けてケーブルを通すために、ケーブルを予め曲げておく必要がある。
つまり、ハウジングの内側で引き出し箇所から嵌合口へと転向する経路にケーブルを通すため、ハウジングに通す前にケーブルの先端側を曲げて、曲がった形状をケーブルに与えておく必要があるから、組立作業性に劣る。
また、コネクタに対しては、組立作業性の他、部材コスト等の観点からも、改良が常に期待されている。
【0006】
以上より、本発明は、組立作業性の向上を含むコネクタの改良を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のコネクタは、ケーブル(2)が接続される端子を保持する第1ハウジング(11)と、ケーブルが引き出される引出部(122)を含む第2ハウジング(12)と、を備える。
第1ハウジング(11)と第2ハウジング(12)とは、引出部(122)からケーブル(2)が引き出される方向(xまたはz)に対して傾斜した境界(3)に沿って組み付けられる。
第2ハウジング(12)は、境界(3)に対して直交した境界直交軸線(5)を中心に、第1ハウジング(11)に対して回転させて組付け可能に構成される。
第1ハウジング(11)と第2ハウジング(12)との相対回転により、引出部(122)には、いずれもケーブル(2)が引き出される方向としての第1引出方向(x)または第2引出方向(z)が設定される。
【0008】
本発明のコネクタにおいて、第1ハウジング(11)と第2ハウジング(12)とは、分離可能に構成されることが好ましい。
第1ハウジング(11)は、嵌合される側に位置する第1前側開口(11A)と、境界側に位置する第1後側開口(11B)と、を含み、第1後側開口(11B)をコネクタの嵌合方向(z)に沿って第1前側開口(11A)に投影したときの第1後側開口(11B)の投影範囲(R1)は、第1前側開口(11A)の領域(r1)に重なることが好ましい。
第2ハウジング(12)は、境界側に位置する第2前側開口(12A)と、引出部(122)側に位置する第2後側開口(12B)と、を含み、第2後側開口(12B)をケーブル(2)が引き出される方向に沿って第2前側開口(12A)に投影したときの第2後側開口(12B)の投影範囲(R2)は、第2前側開口(12A)の領域(r2)に重なることが好ましい。
【0009】
本発明のコネクタにおいて、第1引出方向(x)および第2引出方向(z)は、互いに直交し、境界(3)は、第1引出方向(x)および第2引出方向(z)のいずれに対しても45°をなしていることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のコネクタは、ケーブルの複数の引出方向のいずれに対しても傾斜した境界に沿って組み付け可能な第1ハウジングと第2ハウジングとを備えている。第1ハウジングおよび第2ハウジングのそれぞれに対して直線的にケーブルを挿入することができるので、引出方向と嵌合方向との平行・交差の関係にかかわらず、第1ハウジングと第2ハウジングとがそれぞれケーブルの延びている方向に倣う姿勢に配置された状態で、第1ハウジングの内側と第2ハウジングの内側とにケーブルを直線的に容易に通すことができる。
ケーブルを通した後、所望する引出方向に対応する向きで第1ハウジングに第2ハウジングを組み付けることができる。引出方向が嵌合方向に対して交差している場合は、第1ハウジングと第2ハウジングとの組み付けに伴い、ケーブルが第1ハウジングおよび第2ハウジングの内側で屈曲する。
【0011】
したがって、嵌合方向に対して引出方向が交差している場合でも予めケーブルの先端部に曲がった形状を与えることなく、ケーブルを第1ハウジングおよび第2ハウジングの内側にスムーズに通すことができるので、組み立て作業性を向上させることができる。
しかも、境界に対して直交する境界直交軸を中心に第1ハウジングに対して第2ハウジングを回転させて組み付けることで、同一構造のコネクタ部品一式により複数の引出方向に対応することができる。そうすると、製造するコネクタの品種の数を抑えることができるので、コネクタ製品の製造コストの低減に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(a)および(b)は、本発明の実施形態に係るコネクタの斜視図である。
図1および
図2は、嵌合方向に対して直交する方向にケーブルが引き出されるType 1に相当する。
【
図2】(a)は、
図1(a)および(b)に示すコネクタの外観側面図である。(b)は、ハウジングを破断してハウジングの内側を示した一部破断側面図である。
【
図3】(a)は、第1ハウジングを示す模式図である。(b)は、第2ハウジングを示す模式図である。
【
図4】ケーブルがハウジングに通された状態を示す図である。
【
図5】(a)は、同一実施形態に係るType 2のコネクタの斜視図である。(b)は、(a)に示すコネクタの外観側面図である。
【
図6】(a)は、ケーブルがハウジングに通された状態を示す図である。(b)は、ハウジングを破断してハウジングの内側を示した一部破断側面図である。
【
図7】(a)は、本発明の変形例に係るType 2のコネクタを示す側面模式図である。(b)は、Type 1のコネクタの側面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の一実施形態について説明する。
〔コネクタのケーブルに係る機能〕
図1(a)および(b)に示すコネクタ1のハウジング10は、ケーブル2が引き出される方向に対して傾斜した境界3に沿って組み付けられる第1ハウジング11と第2ハウジング12とを備えている。この構造に基づいて、詳しくは後述するように、ケーブル2を意図的に曲げることなく、ほぼ真っ直ぐに延びた状態でケーブル2をハウジング10に通すことができる。
加えて、同一構造のコネクタ1により、ケーブル2が引き出される方向を第1引出方向xと第2引出方向zとから選択することが可能である。
【0014】
以下、第1引出方向xが設定されているコネクタ1をType 1(
図1および
図2)と称し、第2引出方向zが設定されているコネクタ1をType 2(
図5)と称する。
【0015】
第1引出方向xは、図示しない相手コネクタのハウジングと第1ハウジング11とが嵌合される方向(z)に対して直交している。そのため、第1引出方向xに対応するType 1の場合、端子部材4に接続されたケーブル2の電線21はハウジング10の内側で屈曲した状態に配置される。
第2引出方向zは、嵌合方向(z)に対して平行である。第1引出方向xと第2引出方向zとは、互いに直交している。
【0016】
〔コネクタの構造〕
まず、Type 1のコネクタ1(
図1および
図2)を参照し、コネクタ1の構成要素を説明する。
ハウジング10は、
図1および
図2に示すように、第1ハウジング11と第2ハウジング12とに分割されている。第1ハウジング11と第2ハウジング12との境界3が第1引出方向xに対してなす角度θ
1は、45°に相当する。第2引出方向xが選択される場合に、境界3が第2引出方向zに対してなす角度θ
2(
図5(a))も、45°に相当する。
なお、角度θ
1,θ
2の値に公差は許容される。
【0017】
図2(b)は、端子部材4およびケーブル2の構造の一例を示している。
端子部材4は、単一または複数の端子41と、端子41を収容する樹脂製の内部ハウジング42と、グランド電位に接続される金属部品43とを備えている。
ケーブル2は、端子41に電気的に接続される単一または複数の電線21と、金属部品43に接続されるシールド編組22と、電線21およびシールド編組22を覆う外皮23とを備えている。電線21のそれぞれの図示しない芯線は、はんだ付けまたは圧着等により端子41に個別に接続される。
【0018】
本実施形態のコネクタ1は、2つの端子部材4と、各端子部材4に個別に対応する2つのケーブル2とを備えている。2つのケーブル2は、x方向およびz方向のいずれに対しても直交したy方向に並んで配置される。同様に、2つの端子部材4は、それぞれケーブル2に接続された状態でy方向に並んで配置される。
【0019】
(第1ハウジング)
第1ハウジング11は、絶縁性の樹脂材料から形成された射出成形品であり、端子部材4を保持する。第1ハウジング11の外観の概略形状としては、x方向の4つの辺と、y方向の4つの辺と、z方向の4つの辺とからなる直方体の1/2の領域が、xz方向の矩形状の側面における対角線に沿って除去された形状に相当する。当該対角線の位置には、第1ハウジング11と第2ハウジング12との境界3の位置が対応している。
【0020】
第1ハウジング11は、
図1および
図2に示すように、y方向に対向し、xz方向に延在する略三角形状の一対の側壁101と、xz方向に延在する矩形状の壁102と、一対の側壁101間をy方向に沿って延びる縁壁103とを備えている。
【0021】
第1ハウジング11には、一対の側壁101、壁102、および縁壁103によりそれぞれ区画される第1前側開口11Aおよび第1後側開口11B(
図3(a))が形成されている。第1前側開口11Aは、嵌合方向(z)を指向している。縁壁103は、第1前側開口11Aに設定される嵌合面11C(xy面)に対して境界3が交差する箇所に位置している。第1後側開口11Bは、境界3に対して直交した境界直交軸線5の方向を指向している。
【0022】
図3(a)に示すように、第1後側開口11Bを第1前側開口11Aに向けてz方向に投影すると、その投影範囲R1が第1前側開口11Aの領域に重なる。重なる範囲r1が斜線パターンにより示されている。図示を省略するが、逆も同様に言える。つまり、第1前側開口11Aを第1後側開口11Bに向けてz方向に投影すると、その投影範囲が第1後側開口11Bの領域に重なる。
【0023】
また、第1ハウジング11は、端子部材4を所定位置に係止する図示しない係止部と、第2ハウジング12が装着される装着部112とを備えている。
相手コネクタのハウジングの一部が、端子部材4の周りの凹部113に受容されると、端子41は、相手コネクタの端子と電気的に接続される。
【0024】
第1ハウジング11と第2ハウジング12とは、境界3の線に対して第1ハウジング11側および第2ハウジング12側の一方または両方において一部が重なり合うように組み付けられる。
本実施形態の装着部112は、境界3の線から境界直交軸線5に沿って第2ハウジング12側に突出する突起112Aと、リング状のシール114が配置される溝112Bと、第2ハウジング12が突き当てられる境界面112Cと、ねじ115(
図1(b)および
図2(a))が挿入される固定部112Dとを備えている。
【0025】
突起112A、溝112B、および境界面112Cは、第1後側開口11Bを囲んで、境界直交軸線5の方向からの平面視において略矩形状に形成されている。溝112Bは、突起112Aよりも外側に配置されている。境界3が位置する平坦な境界面112Cは、溝112Bよりも外側に配置されている。
固定部112Dは、y方向の両側に配置されている。
【0026】
(第2ハウジング)
次に、第2ハウジング12は、絶縁性の樹脂材料から形成された射出成形品であり、ケーブル2が引き出される。
第2ハウジング12には、
図3(b)に示すように、境界直交軸線5の方向を指向する第2前側開口12Aと、ケーブル2が引き出される方向(Type 1の場合はx)を指向する第2後側開口12Bとが形成されている。
境界3に沿って組み付けられる第1ハウジング11と第2ハウジング12との内側の空間7には、ケーブル2の一部と端子部材4とが収容される。
【0027】
図3(b)に示すように、第2後側開口12Bを第2前側開口12Aに向けてケーブル引出方向(ここではx方向)に投影すると、その投影範囲R2が第2前側開口12Aの領域に重なる。重なる範囲r2が斜線パターンにより示されている。図示を省略するが、逆も同様に言える。
投影範囲R2が第2前側開口12Aに重なる範囲r2は、投影範囲R1が第1前側開口11Aに重なる範囲r1よりも広い。これとは逆に、範囲r1が範囲r2よりも広くてもよい。
【0028】
第2ハウジング12は、
図1および
図2に示すように、第2前側開口12Aが貫通して形成される矩形の板状の基部121と、ケーブル2がそれぞれ引き出される2つの第2後側開口12Bが形成される引出部122とを備えている。
境界直交軸線5は、基部121における平面中心に設定されている。
【0029】
基部121は、第2前側開口12Aを囲み、第1ハウジング11における突起112Aの外側に嵌合する開口周縁121Aと、固定部112Dにねじ115により固定される固定部121Bとを備えている。開口周縁121Aが突起112Aに嵌合すると、基部121の背面121Cは第1ハウジング11の境界面112Cに突き当てられる。
【0030】
基部121の四隅のそれぞれにおいてねじ115により固定部112Dと固定部121Bとが締結される。このとき、基部121の背面121Cにより押圧されて弾性変形するシール114により、第1ハウジング11と第2ハウジング12との境界3が水密に封止される。
【0031】
引出部122は、基部121における第2前側開口12Aの周りからx方向に突出し、2つのケーブル2を囲む周壁122Aと、周壁122Aの先端に設けられてyz方向に延在し、2つの引出孔122Bが形成された引出壁122Cと、引出壁122Cに取り付けられてケーブル2をそれぞれ固定する2つのケーブル固定部123とを備えている。
【0032】
ケーブル固定部123は、樹脂材料等から第2ハウジング12とは別体の筒状に形成されている。ケーブル固定部123は、内側にケーブル2が通された状態で引出壁122Cに適宜な方法により係合されることで、引出孔122Bに通されたケーブル2を第2ハウジング12に固定する。
例えば、
図2(b)に示すように、ケーブル固定部123の内側に形成された雌ねじ123Aが、引出孔122Bの周りに形成された雄ねじ122Dに係合する。ケーブル固定部123の後端には、ねじの固定に用いる図示しない工具を係合可能な六角形状の被係合部124が設けられている。
【0033】
(第1ハウジングおよび第2ハウジングの組付方向)
第2ハウジング12は、第1ハウジング11に対して境界直交軸線5を中心に回転させることにより、
図2(a)に実線で示すように引出部122がx方向を指向する状態(Type 1)、あるいは、
図2(a)に二点鎖線で示すように引出部122がz方向を指向する状態(Type 2)に組み付けることができる。
Type 1の場合は、周壁122Aの高さが高い側が嵌合面11Cから離れている向きで基部121が第1ハウジング11の固定部112Dに固定される。Type 2の場合は、Type 1に対して境界直交軸線5を中心に180°回転させた向きで、つまり、周壁122Aの高さが高い側が嵌合面11Cに近接する向きで基部121が固定部112Dに固定される。これは、第1ハウジング11と第2ハウジング12との組付けに係る構造(装着部112、基部121、およびねじ115等)が、境界直交軸線5を中心として点対称に配置されていることにより実現する。
【0034】
〔コネクタの組立〕
図4を参照し、コネクタ1の組み立てについて説明する。
上述したように、ケーブル2の引出方向(xまたはz)に対して傾斜した境界3に沿って、ハウジング10は第1ハウジング11と第2ハウジング12とに分割されている。そのため、ケーブル2をハウジング10に通す作業は、第1ハウジング11と第2ハウジング12とを分離させた状態で行うことができる。
【0035】
加えて、
図3(a)に示すように、第1ハウジング11の第1後側開口11Bの投影範囲R1は第1前側開口11Aの領域に重なり、
図3(b)に示すように、第2ハウジング12の第2後側開口12Bの投影範囲R2は第2前側開口12Aの領域に重なる。そうすると、第1ハウジング11および第2ハウジング12のそれぞれにおいて、一方の第1後側開口11B(または12B)から他方の第1前側開口11A(または11B)へと、直線的に延びているケーブル2を通過させることができる。
【0036】
ケーブル2をハウジング10に通した後、第1ハウジング11に第2ハウジング12を所定の向きに組み付けることで、引出部122に第1引出方向xまたは第2引出方向zのいずれかを選択的に設定することができる。
【0037】
図4を参照し、Type 1のコネクタ1を組み立てる具体的な手順の一例を説明する。
(1)ケーブル挿通ステップ:
ケーブル固定部123に通された状態のケーブル2の先端部2Aを第2ハウジング12の第2後側開口12Bから第2ハウジング12の内側に挿入し、次いで、第2前側開口12Aから露出した先端部2Aを第1後側開口11Bから第1ハウジング11の内側に挿入して第1前側開口11Aから露出させる。
【0038】
ケーブル2の引出方向は、ケーブル2をハウジング10に通した後に第1ハウジング11と第2ハウジング12とを組み付けるステップ(後述の(4))において決まる。そのため、ケーブル2をハウジング10に通す際には、
図6(a)に示すように第1ハウジング11の装着部112と第2ハウジング12の基部121とが互いに平行に配置される場合を含め、互いに分離している第1ハウジング11と第2ハウジング12とのそれぞれを任意の姿勢で配置することができる。
【0039】
そうすると、例えば
図4に示すように、第2ハウジング12に直線的に通され、境界3に対して傾斜した状態で第1前側開口11Aから露出したケーブル2の先端部2Aを、ケーブル2の延出方向に倣うように配置される第1ハウジング11に対し、第1後側開口11Bから第1前側開口11Aに向けて直線的に挿入することができる。
図4に示す例では、ケーブル2は僅かに湾曲しつつ、全体としてほぼ真っ直ぐな状態で、第2ハウジング12および第1ハウジング11を順次、直線的に通過する。
【0040】
(2)端子接続ステップ:
続いて、第1前側開口11Aから露出したケーブル2に備わる電線21の芯線と端子41とを接続するとともに、シールド編組22と金属部品43とを接続する。
(3)端子係止ステップ:
端子41等が接続されたならば、ケーブル2を引出方向xに引き戻し、端子部材4を図示しない係止部により第1ハウジング11に係止させる。端子41は、嵌合方向zに向けて第1ハウジング11の所定位置に配置される。
【0041】
(4)ハウジング締結ステップ:
第1ハウジング11に対して第2ハウジング12をType 1の引出方向xに対応する向きで境界3に沿って突き当て、それぞれの固定部112D,121Bをねじ115で固定する(
図2(a))。Type 1の引出方向xに合わせるため、必要に応じて、境界直交軸線5を中心に第2ハウジング12を第1ハウジング11に対して回転させてから組み付ける。第1ハウジング11と第2ハウジング12との組み付けに伴い、境界3に相当する箇所でケーブル2の電線21が屈曲する。
【0042】
したがって、組み付けられた第1ハウジング11および第2ハウジング12の内側の空間には、
図2(b)に示すように、ケーブル2の電線21がz方向とx方向とに屈曲した状態で配置される。引出部122からは第1引出方向xへとケーブル2が引き出される。
【0043】
(5)ケーブル固定ステップ:
ケーブル固定部123を引出部122に係合させることで、ケーブル2を第2ハウジング12に固定する。
以上により、コネクタ1の組立を完了する。
【0044】
別の手順としては、例えば、(4)ハウジング締結ステップを行った後、(2)端子接続ステップおよび(3)端子係止ステップを行ったり、(2)端子接続ステップに続いて(4)ハウジング締結ステップを行った後、(3)端子係止ステップを行ったりすることも可能である。
【0045】
(Type 2のコネクタの組立)
境界直交軸線5を中心に第2ハウジング12を第1ハウジング11に対して相対回転させることで、第1ハウジング11と第2ハウジング12との組み付ける向きを変更することにより、上述したType 1の他、
図5(a)および(b)に示すType 2のコネクタ1を組み立てることができる。
Type 2の場合、第2ハウジング12の引出部122には、第2引出方向zが設定される。
【0046】
Type 2のコネクタ1の組立は、上述の(4)ハウジング締結ステップにおいて第1ハウジング11に対して第2ハウジング12を組み付ける向きを除いて、Type 1のコネクタ1を組み立てる場合と同様の手順(1)~(5)により行うことができる。なお、(1)、(4)、(2)、(3)、(5)あるいは(1)、(2)、(4)、(3)、(5)といった順序で組み立てることもできる。
【0047】
Type 2の場合、(1)ケーブル挿通ステップにおいては、例えば
図6(a)に示すように、あるいは
図4に示すように、第1ハウジング11と第2ハウジング12とが適宜な姿勢で配置されている。いずれにしても、第2ハウジング12および第1ハウジング11に順次、第2ハウジング12および第1ハウジング11のそれぞれの境界3側の第2前側開口12Aと第1後側開口11Bとを超えてケーブル2を直線的に通すことができる。これは、第1ハウジング11と第2ハウジング12とが分離していること、および、第1ハウジング11および第2ハウジング12のそれぞれの一方の第1後側開口11B(または12B)の投影範囲R1(またはR2)が他方の第1前側開口11A(または12A)の領域と重なることに基づく。
【0048】
Type 2の第2引出方向zに適合する向きに第1ハウジング11と第2ハウジング12とが組み付けられると、
図6(b)に示すように、第1ハウジング11および第2ハウジング12の内側にケーブル2がほぼ真っ直ぐ延びている状態で配置されるとともに、引出部122からは第2引出方向zへとケーブル2が引き出される。
【0049】
〔本実施形態による効果〕
以上で説明したように、本実施形態のコネクタ1によれば、ケーブル2が引き出される方向(xまたはz)と嵌合方向zとの平行・直交等の関係にかかわらず、ケーブル2を意図的に曲げることなくほぼ真っ直ぐな状態で、引出方向(xまたはz)に対して傾斜した境界3で分割されているハウジング10にケーブル2を容易に通すことができる。
【0050】
Type 1の場合は、分離した状態の第1ハウジング11および第2ハウジング12にケーブル2を直線的に通した後、第1ハウジング11と第2ハウジング12との組み付けに伴いケーブル2の電線21が屈曲する。そのため、ケーブル2をハウジング10に通す前にケーブル2の先端部2Aに曲げクセを与えておく必要がなく、ケーブル2を第2ハウジング12および第1ハウジング11にスムーズに通すことができる。したがって、嵌合方向zに対して直交した第1引出方向xを選択可能なコネクタ1にあって、組立作業性を向上させることができる。
【0051】
加えて、境界直交軸線5を中心として第2ハウジング12を第1ハウジング11に対して回転させて組み付けることができることにより、同一構造のコネクタ1を第1引出方向xと第2引出方向zとのいずれにも対応させることが可能となる。そうすると、製造するコネクタの品種の数を抑えることができるので、コネクタ製品のコストの低減に寄与することができる。
【0052】
〔変形例〕
図7(a)および(b)には、同一構造のコネクタ6が示されている。このコネクタ6は、端子部材4を介して端子41を保持する第1ハウジング61と、端子部材4に接続されるケーブル2が引き出される第2ハウジング62とを備えている。
図7(a)に示す第2引出方向D2はType 2に対応し、
図7(b)に示す第1引出方向D1はType 1に対応する。
第1引出方向D1と第2引出方向D2とは直交しておらず、所定の角度で交差している。
【0053】
第1ハウジング61と第2ハウジング62には、上記実施形態と同様に、第1引出方向D1および第2引出方向D2のいずれに対しても傾斜した境界3が設定されている。但し、境界3が第1引出方向D1および第2引出方向D2のそれぞれに対してなす角度θ
1,θ
2は、45°ではなく、例えば、約60°である。この点を除き、第1ハウジング61および第2ハウジング62は、上記実施形態の第1ハウジング11および第2ハウジング12と同様に構成されている。
境界3に対して直交した境界直交軸線5を中心に第2ハウジング62を第1ハウジング61に対して回転させることで、
図7(a)に示す第2引出方向D2、または
図7(b)に示す第1引出方向D1を引出部122に設定することができる。
【0054】
Type 1およびType 2のいずれを組み立てるときでも、
図4あるいは
図6(a)に示される状態と同様に、第1ハウジング61と第2ハウジング62とが分離している状態で、第2ハウジング62および第1ハウジング61に順次、ケーブル2を直線的にスムーズに通すことができる。
【0055】
ケーブル2を通した後、第2引出方向D2に対応する向きで第1ハウジング61に第2ハウジング62を組み付けることにより、Type 2のコネクタ6を得ることができる。
Type 2のコネクタ6に対し、境界直交軸線5を中心として180°回転させた向きで第2ハウジング62を第1ハウジング61に対して組み付けることにより、Type 1のコネクタ6を得ることができる。
【0056】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
上記実施形態に限らず、コネクタ1が、1つの端子部材4のみを備えていたり、3以上の端子部材4を備えていたりしてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1,6 コネクタ
2 ケーブル
2A 先端部
3 境界
4 端子部材
5 境界直交軸線
7 空間
10 ハウジング
11,61 第1ハウジング
11A 第1前側開口
11B 第1後側開口
11C 嵌合面
12,62 第2ハウジング
12A 第2前側開口
12B 第2後側開口
21 電線
22 シールド編組
23 外皮
41 端子
42 内部ハウジング
43 金属部品
101 側壁
102 壁
103 縁壁
112 装着部
112A 突起
112B 溝
112C 境界面
112D 固定部
113 凹部
114 シール
115 ねじ
121 基部
121A 開口周縁
121B 固定部
121C 背面
122 引出部
122A 周壁
122B 引出孔
122C 引出壁
122D 雄ねじ
123 ケーブル固定部
123A 雌ねじ
124 被係合部
x,D1 第1引出方向(引き出される方向)
z,D2 第2引出方向(引き出される方向)
R1,R2 投影範囲
r1,r2 重なる範囲
z 嵌合方向
θ1,θ2 角度