(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186013
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】静電荷像現像用トナー及び静電荷像現像用トナーの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03G 9/087 20060101AFI20221208BHJP
G03G 9/08 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
G03G9/087 325
G03G9/08 384
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094005
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯部 和也
【テーマコード(参考)】
2H500
【Fターム(参考)】
2H500AA01
2H500BA11
2H500CA03
2H500EA41B
(57)【要約】 (修正有)
【課題】耐熱保管性及び低温定着性を満足しつつ、印刷物の静電貼り付きを抑制できる静電荷像現像用トナー及びその製造方法を提供することである。
【解決手段】本発明の静電荷像現像用トナーは、結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母体粒子を含む静電荷像現像用トナーであって、前記トナー母体粒子が、前記結着樹脂として、少なくとも、下記一般式(1)で表される第1構造単位を有する重合体とノルボルネンエステル骨格を有する特定の第2構造単位を有する重合体、又は前記第1構造単位と前記第2構造単位を有する共重合体を含有することを特徴とする静電荷像現像用トナー。
[一般式(1)中、R
1は、水素原子、又は炭素数1~3のアルコキシ基を表す。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母体粒子を含む静電荷像現像用トナーであって、
前記トナー母体粒子が、前記結着樹脂として、少なくとも、下記一般式(1)で表される第1構造単位を有する重合体と下記一般式(2)で表される第2構造単位を有する重合体、又は前記第1構造単位と前記第2構造単位を有する共重合体を含有する
ことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【化1】
[一般式(1)中、R
1は、水素原子、又は炭素数1~3のアルコキシ基を表す。]
【化2】
[一般式(2)中、R
2は、水素原子、又は炭素数1~3のアルキル基を表す。]
【請求項2】
前記トナー母体粒子が、前記結着樹脂として、前記第1構造単位と前記第2構造単位を有する共重合体を含有する
ことを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項3】
前記一般式(1)中のR1が、水素原子又はメトキシ基を表す
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項4】
前記一般式(2)中のR2が、水素原子又はメチル基を表す
ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項5】
前記一般式(1)中のR1が、メトキシ基を表す
ことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項6】
前記一般式(2)中のR2が、水素原子を表す
ことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項7】
前記共重合体が、前記第1構造単位及び前記第2構造単位と異なる第3構造単位を更に有する
ことを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項8】
下記式(I)で表される構成比率Xが、25~75質量%の範囲内である
ことを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
式(I):X[質量%]=W1/(W1+W2)×100
W1:全結着樹脂中の前記第1構造単位の質量
W2:全結着樹脂中の前記第2構造単位の質量
【請求項9】
前記第3構造単位が、少なくとも、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルに由来する構造単位である
ことを特徴とする請求項7に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項10】
前記第3構造単位が、少なくとも、アクリル酸、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル又はメタクリル酸に由来する構造単位である
ことを特徴とする請求項7に記載の静電荷像現像用トナー。
【請求項11】
結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母体粒子を含む静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
少なくとも下記一般式(3)で表される構造を有する第1単量体と、下記一般式(4)で表される構造を有する第2単量体とを共重合させて、前記結着樹脂の粒子分散液を調製する工程を有する
ことを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
【化3】
[一般式(3)中、R
1は、水素原子、又は炭素数1~3のアルコキシ基を表す。]
【化4】
[一般式(4)中、R
2は、水素原子、又は炭素数1~3のアルキル基を表す。]
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用トナー及び静電荷像現像用トナーの製造方法に関する。
より詳しくは、耐熱保管性及び低温定着性を満足しつつ、印刷物の静電貼り付きを抑制できる静電荷像現像用トナー等に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式による画像形成を行う印刷分野においては、近年、消費電力の低減化、プリントの高速化、画像形成媒体の多様化、高画質化、環境負荷の低減などに対応可能な静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう。)が求められている。
【0003】
このようなトナーに求められる特性としては、従来よりも低い温度でトナー画像の定着を行うことができるといういわゆる低温定着性や、定着強度の向上がある。さらには従来のオフィス市場に限らず、軽印刷市場への展開に伴って、印刷物表面へのニス加工や、ラミネート加工等、商品の高付加価値化のための後処理が行われることも多く、印刷物の後処理工程での適合性が求められている。
【0004】
トナーは通常、バインダー機能を有する結着樹脂(以下、「トナーバインダー」ともいう。)を含有し、この結着樹脂としては、スチレン・アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、グラフト化されたアクリル重合セグメントを有するポリエステル樹脂などのハイブリッド樹脂を用いることが知られている。上記のような要求に対して、これらの結着樹脂などを改良することで、低温定着性などを改良する技術が知られている(例えば、特許文献1~3参照。)。
【0005】
また、軽印刷市場に限らず、印刷物の高画質化を実現するためにトナー粒子径の小粒径化が求められており、従来の粉砕法からケミカル法へトナー製造方法がシフトしてきている。トナーの小粒径化によって、静電潜像に対してトナーがより均質に付着することができるようになり、高画質化を実現することができるようになった。
【0006】
このように、より低温で定着可能な結着樹脂の採用及び、トナー粒子径の小粒径化によって、消費電力の低減化、プリントの高速化、高画質化、環境負荷の低減を実現することができている。
【0007】
一方、印刷物はプリント時に搬送経路にある多くの搬送ローラーと接触しながら出力されている。この搬送ローラー等との接触によって印刷物は帯電し、その結果として、出力した印刷物同士が静電的に貼り付いてしまうといった問題があった。特に、プリントを高速化すればするほど、帯電した電荷が漏洩するまでの時間が短くなってしまい、静電的な貼りつきはより強固となり、ニス加工や、ラミネート加工等の後加工を行う際には、印刷物の重送などの問題が顕在化し、ペーパーハンドリングが困難となることがあった。また、ポリプロピレンフィルムや、ストーンペーパー等、より絶縁性の高い媒体を用いた場合には、静電的な貼りつきが更に顕在化することがあった。
【0008】
この問題に対して、これまで印刷環境全体を加湿することや、印刷機自体に加湿ユニットを設けることで帯電電荷を漏洩させ、静電貼りつきを抑制することが行われてきた。しかしながら、印刷環境を適切な湿度に保ち続けることは、コストアップを招き、また、印刷機自体に加湿ユニットを設けるのみでは、静電貼りつきの抑制は十分なものとは言えない状況であった。
【0009】
また、静電貼りつきの抑制のために、電荷漏洩しやすい樹脂を結着樹脂として用いる方法も考えられる。しかし、従来の電荷漏洩しやすい樹脂では、結着樹脂間の相互作用が大きく耐熱保管性が悪化するという問題があり、耐熱保管性を満足しつつ、印刷物の静電貼りつきを抑制することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007-279714号公報
【特許文献2】特開2008-287229号公報
【特許文献3】特開2010-15159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、耐熱保管性及び低温定着性を満足しつつ、印刷物の静電貼り付きを抑制できる静電荷像現像用トナー及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記課題の原因等について検討した結果、結着樹脂として特定の構造単位を有する重合体を含有することにより、耐熱保管性及び低温定着性を満足しつつ、印刷物の静電貼り付きを抑制できる静電荷像現像用トナー等を提供することができることを見いだし、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
【0013】
1.結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母体粒子を含む静電荷像現像用トナーであって、
前記トナー母体粒子が、前記結着樹脂として、少なくとも、下記一般式(1)で表される第1構造単位を有する重合体と下記一般式(2)で表される第2構造単位を有する重合体、又は前記第1構造単位と前記第2構造単位を有する共重合体を含有する
ことを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【化1】
[一般式(1)中、R
1は、水素原子、又は炭素数1~3のアルコキシ基を表す。]
【化2】
[一般式(2)中、R
2は、水素原子、又は炭素数1~3のアルキル基を表す。]
【0014】
2.前記トナー母体粒子が、前記結着樹脂として、前記第1構造単位と前記第2構造単位を有する共重合体を含有する
ことを特徴とする第1項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0015】
3.前記一般式(1)中のR1が、水素原子又はメトキシ基を表す
ことを特徴とする第1項又は第2項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0016】
4.前記一般式(2)中のR2が、水素原子又はメチル基を表す
ことを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0017】
5.前記一般式(1)中のR1が、メトキシ基を表す
ことを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0018】
6.前記一般式(2)中のR2が、水素原子を表す
ことを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0019】
7.前記共重合体が、前記第1構造単位及び前記第2構造単位と異なる第3構造単位を更に有する
ことを特徴とする第1項から第6項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0020】
8.下記式(I)で表される構成比率Xが、25~75質量%の範囲内である
ことを特徴とする第1項から第7項までのいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー。
式(I):X[質量%]=W1/(W1+W2)×100
W1:全結着樹脂中の前記第1構造単位の質量
W2:全結着樹脂中の前記第2構造単位の質量
【0021】
9.前記第3構造単位が、少なくとも、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルに由来する構造単位である
ことを特徴とする第7項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0022】
10.前記第3構造単位が、少なくとも、アクリル酸、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル又はメタクリル酸に由来する構造単位である
ことを特徴とする第7項に記載の静電荷像現像用トナー。
【0023】
11.結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母体粒子を含む静電荷像現像用トナーの製造方法であって、
少なくとも下記一般式(3)で表される構造を有する第1単量体と、下記一般式(4)で表される構造を有する第2単量体とを共重合させて、前記結着樹脂の粒子分散液を調製する工程を有する
ことを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
【化3】
[一般式(3)中、R
1は、水素原子、又は炭素数1~3のアルコキシ基を表す。]
【化4】
[一般式(4)中、R
2は、水素原子、又は炭素数1~3のアルキル基を表す。]
【発明の効果】
【0024】
本発明の上記手段により、耐熱保管性及び低温定着性を満足しつつ、印刷物の静電貼り付きを抑制できる静電荷像現像用トナー及びその製造方法を提供することができる。
【0025】
本発明の効果の発現機構又は作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
【0026】
トナーに要求される特性は、光学的特性、熱的特性(粘弾性)、電気的特性(帯電性)、耐熱保管性など多岐にわたる。トナーは前記物性を満足するために多様な構成材料から成っており、そのうち、トナーの構成材料のひとつである結着樹脂には、粘弾性、耐熱保管性、帯電性の制御が求められている。具体的には、樹脂の種類、モノマー組成、製造条件の制御によって、平均分子量、軟化点、ガラス転移点(Tg)等について要求特性に応じた最適化が行われている。
【0027】
結着樹脂に用いられる代表的な樹脂組成にスチレン・アクリル樹脂がある。粘弾性、耐熱保管性の制御については、Tgの高いハードセグメントとしてスチレンを、Tgの低いソフトセグメントとしてn-ブチルアクリレートを、主成分として用いることが多く、分子量、及びハードセグメント/ソフトセグメントの比率について検討を行ない、その調整を行ってきた。
【0028】
ここで、低温定着化するためには、Tgの高いスチレン比率を下げ、結着樹脂のTgを下げることが有効ではあるものの、耐熱保管性は悪化してしまうトレードオフの関係にあり、例えば、Tgを45℃以上とする必要があるといった設計限界が存在する。
【0029】
また、帯電性の制御については、飽和帯電量は、誘電正接tanδ(誘電損失(ε’’)/誘電率(ε’))の逆数に比例するとされている。tanδは、樹脂組成に依存し、組成比を調整することで帯電性の制御が可能である。スチレン系樹脂のtanδは低く、(メタ)アクリレート系樹脂のtanδは高いことが知られている。また、帯電電荷の漏洩を促進するには、tanδは高い方が良く、静電貼りつきを抑制するためには、tanδの低いスチレン比率を下げることが有効である。
【0030】
しかしながら、スチレン比率を下げることは、前述した耐熱保管性を悪化させてしまうことから、事実上制御することが困難である。前記問題に対して、結着樹脂組成として、Tgの高い一般式(1)で表される構造、及びTgが高くtanδの高い一般式(2)で表される構造を導入することで、ガラス転移温度を保ちつつ、tanδを高くすることが可能となり、結果として、耐熱保管性が悪化することなく、低温定着性を満足しつつ、印刷物の静電貼りつきを抑制し、後加工工程も含めて生産性に優れる静電荷像現像用トナーを提供することが可能となる。
【0031】
本発明のトナーが、低温定着性を満足しつつ、印刷物の静電貼りつきを抑制できた理由としては、嵩高い置換基を有する一般式(2)で表される構造を導入することで、高分子鎖間の分子間力を低く保つことが可能となるため、高tanδかによる静電貼り付き性の抑制と共に、耐熱保管性、低温定着性を維持することが可能となったと推察できる。
【0032】
これらの発現機構又は作用機構により、耐熱保管性及び低温定着性を満足しつつ、印刷物の静電貼り付きを抑制できる静電荷像現像用トナー及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の静電荷像現像用トナーは、結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母体粒子を含む静電荷像現像用トナーであって、前記トナー母体粒子が、前記結着樹脂として、少なくとも、上記一般式(1)で表される第1構造単位を有する重合体と上記一般式(2)で表される第2構造単位を有する重合体、又は前記第1構造単位と前記第2構造単位を有する共重合体を含有することを特徴とする。
この特徴は、下記各実施形態に共通又は対応する技術的特徴である。
【0034】
本発明の静電荷像現像用トナーの実施形態としては、静電貼りつきを抑制するために、均一な電荷漏洩が可能となるという観点から、前記トナー母体粒子が、前記結着樹脂として、前記第1構造単位と前記第2構造単位を有する共重合体を含有することが好ましい。
【0035】
本発明の静電荷像現像用トナーの実施形態としては、低温定着性の観点から、上記一般式(1)中のR1が、水素原子又はメトキシ基を表すことが好ましく、メトキシ基を表すことがより好ましい。
【0036】
本発明の静電荷像現像用トナーの実施形態としては、静電貼り付き抑制の観点から、上記一般式(2)中のR2が、水素原子又はメチル基を表すことが好ましく、水素原子を表すことがより好ましい。
【0037】
本発明の静電荷像現像用トナーの実施形態としては、熱物性の調整の観点から、前記共重合体が、前記第1構造単位及び前記第2構造単位と異なる第3構造単位を更に有することが好ましい。
【0038】
本発明の静電荷像現像用トナーの実施形態としては、低温定着性及び静電貼り付き抑制のバランスの観点から、下記式(I)で表される構成比率Xが、25~75質量%の範囲内であることが好ましい。
式(I):X[質量%]=W1/(W1+W2)×100
W1:全結着樹脂中の前記第1構造単位の質量
W2:全結着樹脂中の前記第2構造単位の質量
【0039】
本発明の静電荷像現像用トナーの実施形態としては、耐熱保管性の観点から、前記第3構造単位が、少なくとも、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルに由来する構造単位であることが好ましい。
【0040】
本発明の静電荷像現像用トナーの実施形態としては、耐熱保管性の観点から、前記第3構造単位が、少なくとも、アクリル酸、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル又はメタクリル酸に由来する構造単位であることが好ましい。
【0041】
本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法は、結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母体粒子を含む静電荷像現像用トナーの製造方法であって、少なくとも上記一般式(3)で表される構造を有する第1単量体と、上記一般式(4)で表される構造を有する第2単量体とを共重合させて、前記結着樹脂の粒子分散液を調製する工程を有することを特徴とする。
【0042】
以下、本発明とその構成要素及び本発明を実施するための形態・態様について説明をする。なお、本願において、「~」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【0043】
[本発明の静電荷像現像用トナー]
本発明の静電荷像現像用トナーは、結着樹脂及び着色剤を含有するトナー母体粒子を含む静電荷像現像用トナーであって、前記トナー母体粒子が、前記結着樹脂として、少なくとも、上記一般式(1)で表される第1構造単位を有する重合体と上記一般式(2)で表される第2構造単位を有する重合体、又は前記第1構造単位と前記第2構造単位を有する共重合体を含有することを特徴とする。
【0044】
本明細書において、「トナー母体粒子」とは、「トナー粒子」の母体を構成するものである。「トナー母体粒子」は、少なくとも結着樹脂及び着色剤を含むものであり、その他必要に応じて、離型剤、荷電制御剤などの他の構成成分を含有してもよい。「トナー母体粒子」は、外添剤の添加によって「トナー粒子」と称される。そして、「トナー」とは、「トナー粒子」の集合体のことをいう。
【0045】
<結着樹脂>
本発明の静電荷像現像用トナーは、下記要件A又は要件Bの少なくともいずれかを満たすことを特徴とする。また、静電貼りつきを抑制するために、均一な電荷漏洩が可能となるという観点から、特に要件Bを満たすことが好ましい。
【0046】
要件A:トナー母体粒子が、結着樹脂として、「下記一般式(1)で表される第1構造単位を有する重合体」と「下記一般式(2)で表される第2構造単位を有する重合体」を含有する。
要件B:トナー母体粒子が、結着樹脂として、「下記一般式(1)で表される第1構造単位と下記一般式(2)で表される第2構造単位を有する共重合体」を含有する。
【0047】
以下、「下記一般式(1)で表される第1構造単位を有する重合体」を単に「第1構造単位を有する重合体」と、「下記一般式(2)で表される第2構造単位を有する重合体」を単に「第2構造単位を有する重合体」と、「下記一般式(1)で表される第1構造単位と下記一般式(2)で表される第2構造単位を有する共重合体」を単に「第1構造単位と第2構造単位を有する共重合体」とも称する。
【0048】
「第1構造単位と第2構造単位を有する共重合体」は、「第1構造単位を有する重合体」にも「第2構造単位を有する重合体」にも該当する。そのため、要件Bは、要件Aの限定要件である。
【0049】
また、以下の説明では、「第1構造単位を有する重合体」及び「第2構造単位を有する重合体」をまとめて、「本発明に係る重合体」と称する。「本発明に係る重合体」には「第1構造単位と第2構造単位を有する共重合体」も含まれる。
【0050】
(第1構造単位)
第1構造単位は、下記一般式(1)で表される構造単位である。
【0051】
【0052】
一般式(1)中、R1は、水素原子、又は炭素数1~3のアルコキシ基を表す。炭素数1~3のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、iso-プロポキシ基、n-ブトキシ基、t-ブトキシ基等が挙げられる。R1は、低温定着性観点から、水素原子又はメトキシ基であることが好ましく、特にメトキシ基であることが好ましい。
【0053】
(第2構造単位)
第2構造単位は、下記一般式(2)で表される構造単位である。
【0054】
【0055】
一般式(2)中、R2は、水素原子、又は炭素数1~3のアルキル基である。炭素数1~3のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、t-ブチル基等が挙げられる。R2は、静電貼りつき抑制の観点から、水素原子又はメチル基であることが好ましく、特に水素原子であることが好ましい。
【0056】
「第1構造単位を有する重合体」は、下記一般式(3)で表される構造を有する第1単量体を重合材料として重合を行うことにより合成することができる。一般式(3)中のR1は、前記一般式(1)におけるR1と同義である。
【0057】
【0058】
第1単量体は、具体例として、下記の例示化合物M1~M5が挙げられる。なお、これらに限定されるものではない。
【0059】
【0060】
「第1構造単位を有する重合体」は、第1単量体を2種以上を組み合わせて重合材料としてもよく、また、他の単量体を組み合わせて重合材料としてもよい。
【0061】
「第2構造単位を有する重合体」は、下記一般式(4)で表される構造を有する第2単量体を重合材料として重合を行うことにより合成することができる。一般式(4)中のR2は、前記一般式(2)におけるR2と同義である。
【0062】
【0063】
第2単量体は、具体例として、下記の例示化合物M6~M10が挙げられる。なお、これらに限定されるものではない。
【0064】
【0065】
「第2構造単位を有する重合体」は、第2単量体を2種以上を組み合わせて重合材料としてもよく、また、他の単量体を組み合わせて重合材料としてもよい。
【0066】
「第1構造単位と第2構造単位を有する共重合体」は、上記第1単量体及び上記第2単量体をそれぞれ少なくとも1種以上を組み合わせて重合材料とすることにより合成することができる。
【0067】
(第3構造単位)
本発明において、「第3構造単位」とは、「本発明に係る重合体」が有する構造単位のうち、第1構造単位及び第2構造単位と異なる構造単位のことをいう。
【0068】
「本発明に係る重合体」は、第1単量体及び第2単量体と異なる単量体(以下「第3単量体」ともいう。)を更に組み合わせて重合材料とすることで、第3構造単位を更に有する共重合体とすることが、熱物性の調整の観点から好ましい。
【0069】
第3単量体の具体例としては、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン、o-アセトキシスチレン、m-アセトキシスチレン、p-アセトキシスチレン等のスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸イソブチル(アクリル酸iso-ブチル)、アクリル酸n-オクチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸n-オクチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル類;等が挙げられる。
【0070】
また、第3単量体として、イオン性解離基を有する単量体を用いてもよい。イオン性解離基を有する単量体は、例えばカルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基などの基を有するものである。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等が挙げられる。
【0071】
第3単量体は、重合体のガラス転移温度の調整が容易になるという観点から、上記のうち、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、アクリル酸、又はメタクリル酸が好ましい。また、アクリル酸エステルとしては、アクリル酸n-ブチル又はアクリル酸2-エチルヘキシルが特に好ましい。すなわち、第3構造単位を更に有する共重合体は、これらの好ましい第3単量体に由来する構造単位を更に有する共重合体であることが好ましい。
【0072】
第3単量体は、単独で用いることもでき、2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0073】
(ピーク分子量)
「本発明に係る重合体」は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定されたポリスチレン換算による分子量分布から得られるピーク分子量が、3500~35000の範囲内であることが好ましく、10000~30000の範囲内であることがより好ましい。このような範囲のピーク分子量であれば、定着時に重合体が適正な溶融粘度となり、良好な定着性と耐オフセット性とを両立させることができるため好ましい。
【0074】
なお、「ピーク分子量」とは、分子量分布におけるピークトップの溶出時間に相当する分子量である。分子量分布中にピークが複数存在した場合、ピーク面積比率の一番大きなピークトップの溶出時間に相当する分子量を指す。
【0075】
重合体のピーク分子量の測定方法は、以下のとおりである。装置「HLC-8220」(東ソー株式会社製)及びカラム「TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZM-M3連」(東ソー株式会社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2ml/minで流し、測定試料を室温(25℃)において超音波分散機を用いて5分間処理を行う溶解条件で、濃度1mg/mlになるようにテトラヒドロフランに溶解させる。次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理する。処理した試料溶液10μlを上記のキャリア溶媒と共に装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて測定試料の有する分子量分布を検出する。検出した分子量分布から、ピーク分子量を測定する。
【0076】
(結着樹脂の構成比率)
トナー母体粒子が含有する全結着樹脂の合計質量を100質量%としたとき、「本発明に係る重合体」の合計質量は、定着性及び、耐オフセット性のバランスの観点から、65~99質量%の範囲であることが好ましく、70~97質量%の範囲であることがより好ましく、75~95質量%の範囲であることがさらに好ましい。
【0077】
本発明のトナーは、下記式(I)で表される構成比率Xが、25~75質量%の範囲内であることが好ましく、30~70質量%の範囲内であることがより好ましい。
式(I):X[質量%]=W1/(W1+W2)×100
W1:全結着樹脂中の第1構造単位の質量
W2:全結着樹脂中の第2構造単位の質量
【0078】
「本発明に係る重合体」において、第3構造単位の構成比率は、特に制限されず、構造単位の種類によって適宜調整することができる。
【0079】
例えば、第3構造単位が、アクリル酸エステル又はメタクリル酸エステルに由来する構造単位である場合、「本発明に係る重合体」の合計を100質量%としたとき、5~50質量%の範囲内であることが好ましく、10~40質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0080】
また、第3構造単位が、イオン性解離基を有する単量体に由来する構造単位である場合、「本発明に係る重合体」の合計を100質量%としたとき、3~8質量%の範囲内であることが好ましい。
【0081】
(その他の樹脂)
本発明に係るトナー母体粒子は、「本発明に係る重合体」以外の樹脂(以下、「その他の樹脂」ともいう。)を、結着樹脂として含有していてもよい。
【0082】
その他の樹脂は、具体的には、例えばポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、又はエポキシ樹脂などが挙げられる。これらは、単独で用いることもでき、2種以上組み合わせて用いることもできる。
【0083】
以下では、「その他の樹脂」として結着樹脂に用いられ得るポリエステル樹脂について説明する。
【0084】
ポリエステル樹脂は、2価以上のカルボン酸(多価カルボン酸成分)と、2価以上のアルコール(多価アルコール成分)との重縮合反応によって得られる公知のポリエステル樹脂である。なお、ポリエステル樹脂は、非晶性であってもよいし結晶性であってもよい。
【0085】
多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分の価数としては、好ましくはそれぞれ2~3であり、特に好ましくはそれぞれ2であるため、特に好ましい形態として価数がそれぞれ2である場合(すなわち、ジカルボン酸成分、ジオール成分)について説明する。
【0086】
ジカルボン酸成分としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,9-ノナンジカルボン酸、1,10-デカンジカルボン酸(ドデカン二酸)、1,11-ウンデカンジカルボン酸、1,12-ドデカンジカルボン酸、1,13-トリデカンジカルボン酸、1,14-テトラデカンジカルボン酸、1,16-ヘキサデカンジカルボン酸、1,18-オクタデカンジカルボン酸などの飽和脂肪族ジカルボン酸;メチレンコハク酸、フマル酸、マレイン酸、3-ヘキセンジオイック酸、3-オクテンジオイック酸、ドデセニルコハク酸などの不飽和脂肪族ジカルボン酸;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、t-ブチルイソフタル酸、テトラクロロフタル酸、クロロフタル酸、ニトロフタル酸、p-フェニレン二酢酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸などの不飽和芳香族ジカルボン酸;などが挙げられ、また、これらの低級アルキルエステルや酸無水物を用いることもできる。ジカルボン酸成分は、単独でも又は2種以上混合して用いてもよい。
【0087】
その他、トリメリット酸、ピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸、及び上記のカルボン酸化合物の無水物、又は炭素数1~3のアルキルエステルなども用いることができる。
【0088】
ジオール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,20-エイコサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの飽和脂肪族ジオール;2-ブテン-1,4-ジオール、3-ブテン-1,4-ジオール、2-ブチン-1,4-ジオール、3-ブチン-1,4-ジオール、9-オクタデセン-7,12-ジオールなどの不飽和脂肪族ジオール;ビスフェノールA、ビスフェノールFなどのビスフェノール類、及びこれらのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物などのビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などの芳香族ジオールが挙げられ、また、これらの誘導体を用いることもできる。ジオール成分は、単独でも又は2種以上混合して用いてもよい。
【0089】
ポリエステル樹脂の製造方法は特に制限されず、公知のエステル化触媒を利用して、上記多価カルボン酸成分及び多価アルコール成分を重縮合する(エステル化する)ことにより製造することができる。
【0090】
ポリエステル樹脂の製造の際に使用可能な触媒としては、ナトリウム、リチウムなどのアルカリ金属化合物;マグネシウム、カルシウムなどの第2族元素を含む化合物;アルミニウム、亜鉛、マンガン、アンチモン、チタン、スズ、ジルコニウム、ゲルマニウムなどの金属の化合物;亜リン酸化合物;リン酸化合物;及びアミン化合物などが挙げられる。具体的には、スズ化合物としては、酸化ジブチルスズ(ジブチル錫オキサイド)、オクチル酸スズ、ジオクチル酸スズ、これらの塩などを挙げることができる。
【0091】
チタン化合物としては、テトラノルマルブチルチタネート(Ti(O-n-Bu)4)、テトライソプロピルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラステアリルチタネートなどのチタンアルコキシド;ポリヒドロキシチタンステアレートなどのチタンアシレート;チタンテトラアセチルアセトナート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネートなどのチタンキレートなどを挙げることができる。
【0092】
ゲルマニウム化合物としては、二酸化ゲルマニウムなどを挙げることができる。
【0093】
さらにアルミニウム化合物としては、ポリ水酸化アルミニウム、アルミニウムアルコキシド、トリブチルアルミネートなどを挙げることができる。これらは1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0094】
重合温度は特に限定されるものではないが、70~250℃の範囲内であることが好ましい。また、重合時間も特に限定されるものではないが、0.5~10時間であることが好ましい。重合中には、必要に応じて反応系内を減圧にしてもよい。
【0095】
上記ポリエステル樹脂は、ポリエステル重合セグメントとスチレン・アクリル重合セグメントグラフトとのグラフト共重合体構造を有するハイブリッドポリエステル樹脂であってもよい。
【0096】
<着色剤>
本発明に係るトナー母体粒子は、着色剤を含有する。着色剤としては、一般に知られている染料及び顔料を用いることができる。
【0097】
黒色のトナーを得るための着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、鉄・チタン複合酸化物ブラック等が挙げられ、カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等が挙げられる。
【0098】
イエローのトナーを得るための着色剤としては、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162などの染料;C.I.ピグメントイエロー14、同17、同74、同93、同94、同138、同155、同180、同185等の顔料が挙げられる。
【0099】
マゼンタのトナーを得るための着色剤としては、C.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122等の染料;C.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222等の顔料が挙げられる。
【0100】
シアンのトナーを得るための着色剤としては、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等の染料;C.I.ピグメントブルー1、同7、同15、同60、同62、同66、同76等の顔料が挙げられる。
【0101】
各色のトナーを得るための着色剤は、各色について、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0102】
着色剤の含有比率は、トナー母体粒子の全質量を100質量%として、0.5~20質量%の範囲内であることが好ましく、2~10質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0103】
<離型剤>
本発明に係るトナー母体粒子は、離型剤を含有しても良い。当該離型剤は、脂肪酸エステルワックスであることが好ましい。
【0104】
脂肪酸エステルワックスの例としては、例えば、ベヘニルベヘネート(ベヘン酸ベヘニル)、ステアリルステアレート(ステアリン酸ステアリル)、ベヘニルステアレート、ステアリルベヘネート、ブチルステアレート、プロピルオレエート、ヘキサデシルパルミテート(パルミチン酸ヘキサデシル)、メチルリグノセレート(リグノセリン酸メチル)、グリセリンモノステアレート(ステアリン酸グリセリル)、ジグリセリルジステアレート(ジステアリン酸ジグリセリル)、ペンタエリスリトールテトラベヘネート(ペンタエリスリトールテトラベヘン酸エステル)、ジエチレングリコールモノステアレート、ジプロピレングリコールジステアレート、ソルビタンモノステアレート、コレステリルステアレート、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、トリステアリルトリメリテート(トリメリット酸トリステアリル)、ジステアリルマレエート、メチルトリアコンタネート(トリアコンタン酸メチル)等が挙げられる。これら脂肪酸エステルワックスは、単独でも又は2種以上混合しても用いることができる。
【0105】
これら脂肪酸エステルワックスは、市販品を用いてもよいし合成品を用いてもよい。
【0106】
また、離型剤は、脂肪酸エステルワックス以外のワックスであってもよい。
【0107】
脂肪酸エステルワックス以外のワックスの例としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン等のポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等の分枝鎖状炭化水素ワックス、パラフィンワックス、サゾールワックス等の長鎖炭化水素系ワックス、ジステアリルケトン等のジアルキルケトン系ワックス、エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミド等の脂肪酸アミドワックス等が挙げられる。
【0108】
離型剤の含有比率は、定着性及び耐オフセット性のバランスの観点から、「本発明に係る重合体」の合計を100質量%としたとき、1~25質量%の範囲内であることが好ましく、5~20質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0109】
<荷電制御剤>
本発明に係るトナー母体粒子は、荷電制御剤を含有してもよい。
【0110】
使用される荷電制御剤は、摩擦帯電により正又は負の帯電を与えることのできる物質であり、かつ無色のものであれば特に限定されず、公知の種々の正帯電性の荷電制御剤及び負帯電性の荷電制御剤を用いることができる。
【0111】
具体的には、正帯電性の荷電制御剤としては、例えば「ニグロシンベースEX」(オリエント化学工業株式会社製)などのニグロシン系染料、「第4級アンモニウム塩P-51」(オリエント化学工業株式会社製)、「コピーチャージPX VP435」(ヘキストジャパン社製)などの第4級アンモニウム塩、アルコキシ化アミン、アルキルアミド、モリブデン酸キレート顔料、及び「PLZ1001」(四国化成工業株式会社製)などのイミダゾール化合物などが挙げられる。
【0112】
また、負帯電性の荷電制御剤としては、例えば、「ボントロン(登録商標)S-22」、「ボントロン(登録商標)S-34」、「ボントロン(登録商標)E-81」、「ボントロン(登録商標)E-84」(以上、オリエント化学工業株式会社製)、「スピロンブラックTRH」(保土谷化学工業株式会杜製)などの金属錯体、チオインジゴ系顔料、「コピーチャージNX VP434」(ヘキストジャパン社製)などの第4級アンモニウム塩、「ボントロン(登録商標)E-89」(オリエント化学工業株式会社製)などのカリックスアレーン化合物、「LR147」(日本カーリット株式会社製)などのホウ素化合物、フッ化マグネシウム、フッ化カーボンなどのフッ素化合物などが挙げられる。
【0113】
負帯電性の荷電制御剤として用いられる金属錯体としては、上記に示したもの以外にも、オキシカルボン酸金属錯体、ジカルボン酸金属錯体、アミノ酸金属錯体、ジケトン金属錯体、ジアミン金属錯体、アゾ基含有ベンゼン-ベンゼン誘導体骨格金属錯体、アゾ基含有ベンゼン-ナフタレン誘導体骨格金属錯体などの各種の構造を有したものなどを使用することができる。
【0114】
このようにトナー母体粒子が荷電制御剤を含有するものとして構成されることにより、トナーの帯電性が向上される。
【0115】
荷電制御剤の含有比率は、トナー母体粒子の全質量を100質量%として、0.01~30質量%の範囲内であることが好ましく、0.1~10質量%の範囲内であることがより好ましい。
【0116】
(トナー母体粒子の形態)
本発明に係るトナー母体粒子の形態は特に制限されず、例えば、いわゆる単層構造(コア・シェル型ではない均質な構造)、コア・シェル構造、3層以上の多層構造、ドメイン-マトリックス構造等の形態をとることができる。
【0117】
<外添剤>
トナーの流動性、帯電性、クリーニング性等を改良するために、トナー母体粒子に、いわゆる後処理剤である流動化剤、クリーニング助剤等の外添剤を添加して本発明のトナーを構成してもよい。
【0118】
外添剤としては、例えば、シリカ粒子、アルミナ粒子、酸化チタン粒子などの無機酸化物粒子、ステアリン酸アルミニウム粒子、ステアリン酸亜鉛粒子などの無機ステアリン酸化合物粒子、チタン酸ストロンチウム粒子、チタン酸亜鉛粒子などの無機チタン酸化合物粒子などの無機粒子が挙げられる。これらは単独でも又は2種以上を組み合わせても用いることができる。
【0119】
これら無機粒子は、シランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって、耐熱保管性や環境安定性の向上のために、表面処理が行われていてもよい。
【0120】
外添剤の添加量は、トナー母体粒子の全質量を100質量%として、0.05~5質量部の範囲内であることが好ましく、0.1~3質量部の範囲内であることがより好ましい。
【0121】
<トナーの平均粒径>
トナーの平均粒径は、体積基準のメジアン径(D50)で4~10μmの範囲内であることが好ましく、5~9μmの範囲内であることがより好ましい。体積基準のメジアン径(D50)が上記の範囲にあることにより、転写効率が高くなりハーフトーンの画質が向上し、細線やドット等の画質が向上する。
【0122】
本発明において、トナーの体積基準のメジアン径(D50)は、「コールターカウンター3」(ベックマン・コールター株式会社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステム(ベックマン・コールター株式会社製)を接続した測定装置を用いて測定・算出されるものである。
【0123】
具体的には、測定試料(トナー)0.02gを、界面活性剤溶液20mL(トナー粒子の分散を目的として、例えば、界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)に添加して馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を調製し、このトナー分散液を、サンプルスタンド内の「ISOTONII」(ベックマン・コールター株式会社製)の入ったビーカーに、測定装置の表示濃度が8%になるまでピペットにて注入する。
【0124】
ここで、この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値を得ることができる。そして、測定装置において、測定粒子カウント数を25000個、アパーチャー径を50μmにし、測定範囲である1~30μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率の大きい方から50%の粒子径が体積基準のメジアン径(D50)とされる。
【0125】
[トナーの製造方法]
本発明の静電荷像現像用トナーを製造する方法は、特に限定されず、例えば重合材料となる単量体を水系媒体中で乳化重合、ミニエマルジョン重合等により結着樹脂粒子分散液を調製し、着色剤粒子分散液や、必要に応じて離型剤粒子分散液等を凝集、融着させる乳化凝集法を用いることができる。他にも、本発明に係る結着樹脂、着色剤及び必要に応じて離型剤等を溶融混練し、その後粉砕、分級等を行ってトナーを得ることができる。また、特開2010-191043号公報に記載の懸濁重合法でもトナーを得ることができる。
【0126】
これらの中でも、粒子径及び形状の制御が容易であり、生産時のエネルギーコストが削減できるという観点から、乳化凝集法を利用した製造方法であることが好ましい。乳化凝集法としては、特開平5-265252号公報、特開平6-329947号公報、特開平9-15904号公報等に記載の方法を採用することができることができる。
【0127】
以下、乳化凝集法を利用した製造方法の詳細を説明する。
【0128】
乳化凝集法を利用した製造方法は、下記(1A)~(1C)の工程で行うことができる。
(1A)結着樹脂粒子の分散液を調製する結着樹脂粒子分散液調製工程
(1B)着色剤粒子の分散液を調製する着色剤粒子分散液調製工程
(1C)離型剤粒子の分散液を調製する離型剤粒子分散液調製工程
(2)結着樹脂粒子、着色剤粒子及び離型剤粒子が存在している水系媒体中に、凝集剤を添加し、塩析を進行させると同時に凝集・融着を行い、会合粒子を形成する会合工程
(3)会合粒子の形状制御をすることによりトナー粒子を形成する熟成工程
(4)水系媒体からトナー粒子を濾別し、当該トナー粒子から界面活性剤等を除去する濾過、洗浄工程
(5)洗浄処理されたトナー粒子を乾燥する乾燥工程
(6)乾燥処理されたトナー粒子に外添剤を添加する外添剤添加工程
【0129】
以下、(1A)~(1C)の工程について説明する。
【0130】
(1A)結着樹脂粒子分散液調製工程
本工程では、従来公知の乳化重合などにより樹脂粒子を形成し、この樹脂粒子を凝集、融着させて結着樹脂粒子を形成する。一例として、結着樹脂の重合材料となる単量体(「本発明に係る重合体」の場合は第1単量体、第2単量体、及び必要に応じて第3単量体)を水系媒体中へ投入、分散させ、水溶性ラジカル重合開始剤により重合させることによって、結着樹脂粒子分散液を調製する。
【0131】
各単量体は、市販品を用いてもよいし、合成品を用いてもよい。
【0132】
水溶性ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸及びその塩、過酸化水素などを用いることができる。
【0133】
また、結着樹脂粒子分散液を調製する方法としては、上記の乳化重合の他に、ラジカル重合等により得た結着樹脂を、有機溶媒を用いることなく、水系媒体中において分散処理を行う方法によっても、結着樹脂粒子分散液を得ることができる。また、ラジカル重合等により得た結着樹脂を、酢酸エチルなどの有機溶媒に溶解させて溶液とし、分散機を用いて当該溶液を水系媒体中に乳化分散させた後、脱溶媒処理を行う方法によっても、結着樹脂粒子分散液を得ることができる。
【0134】
乳化重合以外の方法で結着樹脂粒子分散液を調製する場合であっても、結着樹脂を重合する方法は、簡便に合成できるという観点から、ラジカル重合が好ましい。
【0135】
ラジカル重合に使用するラジカル重合開始剤としては、上述の水溶性ラジカル重合開始剤の他に、油溶性ラジカル重合開始剤が挙げられる。油溶性ラジカル重合開始剤は、具体的には、アゾ系又はジアゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤等が挙げられる。
【0136】
アゾ系又はジアゾ系重合開始剤の例としては、2,2’-アゾビス-(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルなどが挙げられる。
【0137】
過酸化物系重合開始剤の例としては、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、t-ブチルヒドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,2-ビス-(4,4-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス-(t-ブチルパーオキシ)トリアジンなどが挙げられる。
【0138】
ラジカル重合には、必要に応じて、例えばn-オクチルメルカプタン、n-オクチル-3-メルカプトプロピオネートなどの公知の連鎖移動剤を使用してもよい。
【0139】
また、分散のために、適宜公知の界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレン(2)ドデシルエーテル硫酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアニオン系界面活性剤)の存在下で重合させることも好ましい。
【0140】
重合温度は、用いる単量体や重合開始剤の種類によっても異なるが、50~100℃の範囲内であることが好ましく、55~90℃の範囲内であることがより好ましい。また、重合時間は、用いる単量体や重合開始剤の種類によっても異なるが、例えば、1~12時間であることが好ましい。
【0141】
結着樹脂粒子分散液調製工程において、必要に応じ、結着樹脂粒子分散液に離型剤を予め含有させておいてもよい。
【0142】
分散液中の結着樹脂粒子の体積基準のメジアン径は、50~300nmの範囲内が好ましい。分散液中の結着樹脂粒子の体積基準のメジアン径は、「マイクロトラックUPA-150」(日機装株式会社製)を用いて動的光散乱法によって測定することができる。
【0143】
(1B)着色剤粒子分散液調製工程
この着色剤粒子分散液調製工程は、着色剤を水系媒体中に微粒子状に分散させて着色剤粒子の分散液を調製する工程である。
【0144】
着色剤の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができる。分散液中の着色剤粒子の体積基準のメジアン径は、10~300nmの範囲内であることが好ましく、50~200nmの範囲内であることがより好ましい。
【0145】
分散液中の着色剤粒子の体積基準のメジアン径は、上記と同様に「マイクロトラックUPA-150」(日機装株式会社製)を用いて動的光散乱法によって測定することができる。
【0146】
(1C)離型剤粒子分散液調製工程
この離型剤粒子分散液調製工程は、離型剤を水系媒体中に微粒子状に分散させて離型剤粒子の分散液を調製する工程である。
【0147】
離型剤の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができる。分散液中の離型剤粒子の体積基準のメジアン径は、100~1000nmの範囲内であることが好ましく、200~700nmの範囲内であることがより好ましい。
【0148】
分散液中の離型剤粒子の体積基準のメジアン径は、例えばレーザー回折式粒度分布測定器LA-750(株式会社堀場製作所製)によって測定することができる。
【0149】
(水系媒体)
(1A)~(1C)の工程で用いられる水系媒体は、水、又は水を主成分(50質量%以上)として、アルコール類、グリコール類などの水溶性溶媒や、界面活性剤、分散剤などの任意成分が配合されている水系媒体等が挙げられる。水系媒体は、好ましくは水と界面活性剤とを混合したものが用いられる。
【0150】
上記の水溶性溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらのうち、重合体を溶解しない有機溶媒であるメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール類が好ましい。
【0151】
界面活性剤としては、例えば、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤などが挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイドなどが挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウムなどの脂肪酸石けん、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。また、ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンヘキサデシルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレアートエーテル、モノデカノイルショ糖などが挙げられる。
【0152】
このような界面活性剤は、単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。界面活性剤の中では、好ましくはアニオン性界面活性剤、より好ましくはドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウムが使用される。
【0153】
界面活性剤の添加量は、水系媒体100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部の範囲内、より好ましくは0.04~2質量部の範囲内である。
【0154】
(2)会合工程から(6)外添剤添加工程までの工程については、従来公知の種々の方法に従って行うことができる。
【0155】
なお、(2)会合工程において使用される凝集剤は、特に限定されるものではないが、金属塩から選択されるものが好適に使用される。
【0156】
金属塩としては、例えば、ナトリウム、カリウム、リチウムなどのアルカリ金属の塩等の一価の金属塩;カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅などの二価の金属塩;鉄、アルミニウムなどの三価の金属塩などが挙げられる。
【0157】
具体的な金属塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、ポリ塩化アルミニウムなどを挙げることができ、これらの中で、より少量で凝集を進めることができることから、二価又は三価の金属塩を用いることが特に好ましい。これらは単独でも又は2種以上組み合わせても用いることができる。
【0158】
[現像剤]
本発明のトナーは、例えば磁性体を含有させて一成分磁性トナーとして使用する場合、いわゆるキャリア粒子と混合して二成分現像剤として使用する場合、非磁性トナーを単独で使用する場合などが考えられ、いずれも好適に使用することができる。
【0159】
前記磁性体としては、例えば、マグネタイト、γ-ヘマタイト、又は各種フェライトなどを使用することができる。
【0160】
二成分現像剤を構成するキャリア粒子としては、鉄、鋼、ニッケル、コバルト、フェライト、マグネタイトなどの金属、それらの金属とアルミニウム、鉛などの金属との合金などの従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができる。
【0161】
キャリア粒子としては、磁性粒子の表面を樹脂等の被覆剤で被覆したコートキャリア粒子や、バインダー樹脂中に磁性体粉末を分散してなるいわゆる樹脂分散型キャリア粒子を用いることが好ましい。
【0162】
被覆用の樹脂としては、特に限定はないが、例えば、オレフィン樹脂、スチレン樹脂、スチレン・アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、又はフッ素樹脂などが用いられる。
【0163】
また、樹脂分散型キャリア粒子を構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、アクリル樹脂、スチレン・アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂などを使用することができる。
【0164】
キャリア粒子の体積基準のメジアン径は、20~100μmの範囲内であることが好ましく、25~60μmの範囲内であることがより好ましい。
【0165】
キャリア粒子の体積基準のメジアン径は、代表的には湿式分散機を備えたレーザー回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパテック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0166】
トナー粒子のキャリア粒子に対する混合量は、トナー粒子とキャリア粒子との合計質量を100質量%として、2~10質量%の範囲内であることが好ましい。
【0167】
[画像形成方法]
本発明のトナーは、圧力を付与すると共に加熱することができる熱圧力定着方式による定着工程を含む画像形成方法に好適に用いることができる。特に、定着工程における定着温度が、定着ニップ部における加熱部材の表面温度において80~110℃、好ましくは80~95℃の範囲内となる温度とされる比較的低温の定着温度において定着する画像形成方法に好適に使用することができる。
【0168】
さらに、定着線速が200~600mm/secの範囲内である高速定着の画像形成方法にも好適に使用することができる。
【0169】
この画像形成方法においては、具体的には、上記のような本発明のトナーを使用して、例えば感光体上に形成された静電荷像を現像してトナー像を得て、このトナー像を画像支持体に転写する。その後、画像支持体上に転写されたトナー像を熱圧力定着方式の定着処理によって画像支持体に定着させることにより、可視画像が形成された印刷物が得られる。
【0170】
また、本発明のトナーは、モノクロの画像形成方法やフルカラーの画像形成方法に用いることができる。
【0171】
フルカラーの画像形成方法では、イエロー、マゼンタ、シアン、及びブラックの各々に係る4種類のカラー現像装置と、1つの感光体とにより構成される4サイクル方式の画像形成方法や、各色に係るカラー現像装置及び感光体を有する画像形成ユニットを、それぞれ色別に搭載するタンデム方式の画像形成方法など、いずれの画像形成方法にも適用することができる。
【実施例0172】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記実施例において、特記しない限り、操作は室温(25℃)で行われた。また、特記しない限り、「%」及び「部」は、それぞれ、「質量%」及び「質量部」を意味する。
【0173】
実施例で用いた第1単量体M1~M5、及び第2単量体M6~M10は以下のとおりである。
【0174】
【0175】
【0176】
[トナー1の製造]
<結着樹脂粒子分散液1の調製>
撹拌装置、温度センサー、冷却管、及び窒素導入装置を取り付けた5Lのステンレス釜(SUS釜)に、ドデシル硫酸ナトリウム8gをイオン交換水3Lに溶解させた界面活性剤溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、液温80℃に昇温した。
【0177】
この界面活性剤溶液に、過硫酸カリウム10gをイオン交換水200gに溶解させた開始剤溶液を添加し、温度を80℃とした後、下記単量体混合液を100分間かけて滴下した。
【0178】
-単量体混合液-
第1単量体M1 282g
第2単量体M6 290g
アクリル酸n-ブチル(nBA) 193g
メタクリル酸(MAA) 40g
n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート 5.5g
【0179】
この系を80℃にて2時間にわたり加熱、撹拌することにより重合を行い、結着樹脂粒子分散液1を調製した。
【0180】
得られた結着樹脂粒子分散液1中の結着樹脂粒子の体積基準のメジアン径を、「マイクロトラックUPA-150」(日機装株式会社製)を用いて動的光散乱法によって測定したところ、115nmであった。
【0181】
また、結着樹脂に含まれる重合体のピーク分子量を、以下のようにして測定したところ、21100であった。
【0182】
装置「HLC-8220」(東ソー株式会社製)及びカラム「TSKguardcolumn+TSKgelSuperHZM-M3連」(東ソー株式会社製)を用い、カラム温度を40℃に保持しながら、キャリア溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を流速0.2ml/minで流し、測定試料を室温(25℃)において超音波分散機を用いて5分間処理を行う溶解条件で濃度1mg/mlになるようにテトラヒドロフランに溶解させた。
【0183】
次いで、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターで処理して試料溶液を得て、この試料溶液10μlを上記のキャリア溶媒と共に装置内に注入し、屈折率検出器(RI検出器)を用いて検出し、測定試料の有する分子量分布から求めた。
【0184】
<着色剤粒子分散液1の調製>
着色剤:カーボンブラック 10質量部
20%アニオン性界面活性剤 1.5質量部
イオン交換水 90質量部
【0185】
上記着色剤には、カーボンブラック(Mogul(登録商標)L キャボット社製)を用いた。また、上記20%アニオン性界面活性剤には、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム20%水溶液を用いた。
【0186】
上記成分を混合しSCミルにて分散させ、着色剤粒子分散液1を得た。分散液中の着色剤粒子の体積基準のメジアン径を「マイクロトラックUPA-150」(日機装株式会社製)を用いて動的光散乱法によって測定したところ、155nmであった。
【0187】
<離型剤粒子分散液1の調製>
ベヘン酸ベヘニル 100質量部
ドデシル硫酸ナトリウム 5質量部
イオン交換水 240質量部
【0188】
上記成分を、丸型ステンレス鋼製フラスコ中でホモジナイザー「ウルトラタラックス(登録商標)T50」(IKA株式会社製)を用いて10分間分散させた後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、離型剤粒子分散液1を得た。分散液中の離型剤粒子の体積基準のメジアン径を、レーザー回折式粒度分布測定器LA-750(株式会社堀場製作所製)によって測定したところ、530nmであった。
【0189】
<トナー母体粒子分散液1の調製>
結着樹脂粒子分散液1 237質量部
着色剤粒子分散液1 42質量部
離型剤粒子分散液1 18質量部
ポリ塩化アルミニウム 1.8質量部
イオン交換水 600質量部
【0190】
上記成分を、丸型ステンレス鋼製フラスコ中でホモジナイザー「ウルトラタラックス(登録商標)T50」(IKA社製)を用いて混合し、分散した後、加熱用オイルバス中でフラスコ内を撹拌しながら55℃まで加熱した。55℃で30分間保持した後、溶液中に体積基準におけるメジアン径(D50)が4.8μmの凝集粒子が生成していることを確認した。
【0191】
さらに加熱用オイルバスの温度を上げて56℃で2時間保持すると、体積基準におけるメジアン径(D50)は5.9μmとなった。
【0192】
その後、系内に1mol/Lの水酸化ナトリウムを追加して系のpHを、56℃において、5.0に調整した後、丸型ステンレス製製フラスコを、磁気シールを用いて密閉し、撹拌を継続しながら98℃まで加熱した。6時間撹拌を継続することにより結着樹脂粒子間の融着(融合)を完了させ、トナー母体粒子分散液1を調製した。分散液中のトナー母体粒子の体積基準におけるメジアン径(D50)は、6.1μmであった。
【0193】
<洗浄・乾燥工程>
トナー母体粒子分散液1をバスケット型遠心分離機「MARKIII 型式番号60×40」(松本機械販売株式会社製)で固液分離し、トナー母体粒子のウェットケーキを形成した。
【0194】
該ウェットケーキを、上記のバスケット型遠心分離機で濾液の電気伝導度が5μS/cmになるまで45℃のイオン交換水で洗浄し、その後「フラッシュジェットドライヤー」(株式会社セイシン企業製)に移し、水分量が0.5質量%となるまで乾燥し、トナー母体粒子を得た。
【0195】
<トナー母体粒子の外添剤処理>
上記で得られたトナー母体粒子100質量部に対して、疎水性シリカ(数平均一次粒子径=12nm)を1質量部、及び疎水性チタニア(数平均一次粒子径=20nm)を0.3質量部添加し、ヘンシェルミキサー(登録商標)により混合して外添剤処理を行い、トナー1を製造した。
【0196】
[トナー2~16の製造]
トナー1の製造において、単量体混合液のうち、n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート5.5gは同じで、他の単量体の組み合わせ及び添加量[質量%]を下記表Iに示すとおりに変更し、トナー2~16を製造した。下記表I中、nBAはアクリル酸n-ブチルを、2EHAはアクリル酸2-エチルヘキシルを、MAAはメタクリル酸を、AAはアクリル酸を表す。
【0197】
なお、各トナーにおける、結着樹脂粒子分散液中の結着樹脂粒子の体積基準のメジアン径は、いずれも120nmであった。
【0198】
また、各トナーにおける、結着樹脂に含まれる重合体のピーク分子量は、下記表Iに示すとおりであった。
【0199】
[二成分現像剤の調製]
フェライト粒子(体積基準のメジアン径:50μm(パウダーテック株式会社製))100質量部と、メチルメタクリレート-シクロヘキシルメタクリレート共重合体樹脂(一次粒子の体積基準のメジアン径:85nm)4質量部とを、水平撹拌羽根式高速撹拌装置に入れ、撹拌羽根の周速:8m/s、温度:30℃の条件で15分間混合した後、120℃まで昇温して撹拌を4時間継続した。その後、冷却し、200メッシュの篩を用いてメチルメタクリレート-シクロヘキシルメタクリレート共重合体樹脂の破片を除去することにより、樹脂被覆キャリアを作製した。
【0200】
この樹脂被覆キャリアを、上記のトナー1~16の各々に、トナーとキャリアとの合計質量に対してトナーの濃度が7質量%になるよう混合し、二成分現像剤1~16を調製した。
【0201】
[評価]
二成分現像剤1~16を用いて下記の評価項目について評価した。評価結果は下記表Iに示すとおりである。
【0202】
(1)折り目定着性
画像形成装置として、市販の複合機「bizhub PRO(登録商標)C6500」(コニカミノルタ株式会社製)を用いた。この装置に、現像剤として上記二成分現像剤1~16をそれぞれ搭載した。熱ロール定着方式の定着手段における定着加熱部材の表面温度を150℃とし、常温常湿(温度20℃、相対湿度50%RH)の環境下において、画像支持体として秤量350g/m2の厚紙を用いて画像形成を行い、5g/m3のトナーが定着したベタ画像を可視画像として得た。
【0203】
その後、定着ベタ画像を、折り機を用いて折り、これに0.35MPaの空気を吹きつけ、折り目の状態を、限度見本を参照し下記のとおり5段階に評価した。ランク3以上であれば合格とした。
【0204】
ランク5:折り目に剥離無し
ランク4:折り目に従い軽微な剥離有り
ランク3:折り目に従い部分的に剥離有り
ランク2:折り目に従い細い線状の剥離有り
ランク1:折り目に従い太い線状の剥離有り
【0205】
(2)貼り付き力の測定
「bizhub PRESS C1070(コニカミノルタ社製)」に、現像剤として上記二成分現像剤1~16をそれぞれ搭載して、貼り付き力の測定を行った。
【0206】
具体的には、常温常湿(温度20℃、湿度50%RH)の環境下において、「OKトップコート紙 157g/m2」(王子製紙社製)上でトナーの付着量を8.0g/m2に設定した後、下ローラー温度を70℃として、片面ベタ画像を両面出力モードで、A3サイズで5枚出力した。出力された紙束の上にA3紙を500枚のせ2時間放置した。平坦なテーブルの上に置き、一番上の用紙の先端にテープを貼り付け水平方向にゆっくり滑らせた。
【0207】
この際、上から2枚目より下の用紙については動かないように、テーブルに固定しておく。用紙を滑らせるのに要する力をばねばかりで測定した。この測定を上から順に4回繰り返し、ばねばかりの示した力[N]の平均値を貼り付き力とした。貼り付き力が2.0N以下となる場合に実用可能レベルとした。
【0208】
(3)耐熱保管性
上記二成分現像剤1~16について、それぞれ0.5gを内径21mmの10mLガラス瓶に取り、蓋を閉めて、タップデンサーKYT-2000(株式会社セイシン企業製)で室温にて600回振盪した後、蓋を取った状態で55℃、35%RHの環境下に2時間放置した。
【0209】
次いで、放置後の上記二成分現像剤を48メッシュ(目開き350μm)の篩上に、二成分現像剤の凝集物を解砕しないように注意しながらのせて、パウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製)にセットし、押さえバー、ノブナットで固定し、送り幅1mmの振動強度に調整し、10秒間振動を加えた。
【0210】
その後、篩上の残存した二成分現像剤量の質量を測定し、下記式によりトナー凝集率At[質量%])を算出した。
At[質量%]=(篩上の残存二成分現像剤質量[g])/0.5[g]×100
【0211】
算出したトナー凝集率Atから、下記の基準により二成分現像剤の耐熱保管性の評価を行った。◎、○及び△であれば実用上問題ないとして合格とした。
【0212】
◎:トナー凝集率Atが15質量%未満(現像剤の耐熱保管性が極めて良好)
○:トナー凝集率Atが15質量%以上20質量%未満(現像剤の耐熱保管性が良好)
△:トナー凝集率Atが20質量%以上25質量%未満(現像剤の耐熱保管性がやや悪い)
×:トナー凝集率Atが25質量%以上(現像剤の耐熱保管性が悪く、使用不可)
【0213】
【0214】
上記結果から、本発明の静電荷像現像用トナーは、前記一般式(1)及び前記一般式(2)で表される構造単位を有する重合体を含有することで、耐熱保管性及び低温定着性を満足しつつ、印刷物の静電貼り付きを抑制できることが分かる。