(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186019
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】作業車両自動操舵システム
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20221208BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
A01B69/00 303V
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094019
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003133
【氏名又は名称】弁理士法人近島国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 将太郎
【テーマコード(参考)】
2B043
【Fターム(参考)】
2B043AA04
2B043BA02
2B043BA09
2B043BB06
2B043DA01
2B043DA04
2B043DB17
2B043EA06
2B043EA35
2B043EB05
2B043EB15
2B043EB22
2B043EC12
2B043EC13
2B043EC16
2B043EC18
2B043ED12
(57)【要約】
【課題】より簡易に自動操舵の経路を設定する。
【解決手段】位置情報取得手段は、走行機体5の位置情報を取得する。経路設定手段は、基準方位と平行にかつ所定の間隔で配置された複数の往復経路201と、基準方位と交差する方向へ延びる外周経路202とを設定する。旋回検知手段は、位置情報取得手段による走行機体5の位置情報に基づいて、隣接する往復経路間での走行機体5の旋回開始地点Pと旋回終了地点Qの少なくとも一方の地点を検知する。そして、経路設定手段は、旋回検知手段による走行機体5の旋回開始地点Pと旋回終了地点Qの少なくとも一方の地点の検知に基づき、一方の圃場端における複数の往復経路201の複数の端点を取得し、複数の端点が並ぶ方向に沿うように外周経路202を設定する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両の走行機体が圃場端での旋回を繰り返して圃場を往復走行する際、及び往復走行の終了後に圃場の外周に沿って走行する際に、前記走行機体を自動で操舵する作業車両自動操舵システムにおいて、
前記走行機体の位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記走行機体が圃場を往復走行する際の基準方位を設定する基準方位設定手段と、
前記基準方位と平行にかつ所定の間隔で配置された複数の往復経路と、前記基準方位と交差する方向へ延びる外周経路と、を設定する経路設定手段と、
前記複数の往復経路及び前記外周経路のいずれかの経路に沿って前記走行機体が走行するように前記走行機体を操舵する操舵手段と、
前記位置情報取得手段による前記走行機体の位置情報に基づいて、隣接する前記往復経路間での前記走行機体の旋回開始地点と旋回終了地点の少なくとも一方の地点を検知する旋回検知手段と、を備え、
前記経路設定手段は、前記旋回検知手段による前記走行機体の旋回開始地点と旋回終了地点の少なくとも一方の地点の検知に基づき、一方の圃場端における前記複数の往復経路の複数の端点を取得し、前記複数の端点が並ぶ方向に沿うように前記外周経路を設定する、
ことを特徴とする作業車両自動操舵システム。
【請求項2】
作業車両の走行機体が圃場端での旋回を繰り返して圃場を往復走行する際、及び往復走行の終了後に圃場の外周に沿って走行する際に、前記走行機体を自動で操舵する作業車両自動操舵システムにおいて、
前記走行機体の位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記走行機体が圃場を往復走行する際の基準方位を設定する基準方位設定手段と、
前記基準方位と平行にかつ所定の間隔で配置された複数の往復経路と、前記基準方位と交差する方向へ延びる外周経路と、を設定する経路設定手段と、
前記複数の往復経路及び前記外周経路のいずれかの経路に沿って前記走行機体が走行するように前記走行機体を操舵する操舵手段と、
前記走行機体の前進と後進とを切り換える切換手段と、
前記位置情報取得手段による前記走行機体の位置情報に基づいて、前記走行機体を圃場の畦際まで前進させた後に後進に切り換えた地点を検知する切換検知手段と、を備え、
前記経路設定手段は、前記切換検知手段による前記走行機体の前進と後進の切り換え地点を複数取得し、取得した前記複数の切り換え地点が並ぶ方向に沿うように前記外周経路を設定する、
ことを特徴とする作業車両自動操舵システム。
【請求項3】
前記位置情報取得手段による前記走行機体の位置情報に基づいて前記走行機体の往復走行の終了を検知する往復終了検知手段を備え、
前記経路設定手段は、前記往復終了検知手段による前記走行機体の往復走行の終了の検知後に、前記外周経路を設定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の作業車両自動操舵システム。
【請求項4】
前記走行機体の畦際からの走行距離が所定の枕地距離に達した際に前記作業車両の作業機を作動させることで、圃場端においてオペレータが前記走行機体を旋回操作する際の目印を形成する目印形成手段を備えた、
ことを特徴とする請求項1に記載の作業車両自動操舵システム。
【請求項5】
前記作業車両の種類を入力可能な入力手段を備え、
前記経路設定手段は、前記複数の切り換え地点を結んだ線、又は、前記複数の切り換え地点の近似線に対して所定値を加えた線を前記外周経路として設定し、
前記所定値は、前記入力手段により入力された前記作業車両の種類により自動的に設定される、
ことを特徴とする請求項2に記載の作業車両自動操舵システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両の走行基体を自動で操舵する作業車両自動操舵システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、GPS装置を備えた作業車において、機体の旋回位置を取得し、隣接する旋回位置を接続した位置を畦に沿った畦際として取得する作業者が提案されている(特許文献1)。
【0003】
また、作業領域にて走行機体を周回走行させた際の走行機体の位置情報を取得し、この位置情報に基づいて作業領域の形状(畦際)を取得する農業用作業車両が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-4798号公報
【特許文献2】特開2017-127291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
より簡易に自動操舵の経路を設定することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、作業車両の走行機体が圃場端での旋回を繰り返して圃場を往復走行する際、及び往復走行の終了後に圃場の外周に沿って走行する際に、前記走行機体を自動で操舵する作業車両自動操舵システムにおいて、
前記走行機体の位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記走行機体が圃場を往復走行する際の基準方位を設定する基準方位設定手段と、
前記基準方位と平行にかつ所定の間隔で配置された複数の往復経路と、前記基準方位と交差する方向へ延びる外周経路と、を設定する経路設定手段と、
前記複数の往復経路及び前記外周経路のいずれかの経路に沿って前記走行機体が走行するように前記走行機体を操舵する操舵手段と、
前記位置情報取得手段による前記走行機体の位置情報に基づいて、隣接する前記往復経路間での前記走行機体の旋回開始地点と旋回終了地点の少なくとも一方の地点を検知する旋回検知手段と、を備え、
前記経路設定手段は、前記旋回検知手段による前記走行機体の旋回開始地点と旋回終了地点の少なくとも一方の地点の検知に基づき、一方の圃場端における前記複数の往復経路の複数の端点を取得し、前記複数の端点が並ぶ方向に沿うように前記外周経路を設定する、
ことを特徴とする作業車両自動操舵システムにある。
【0007】
また、本発明は、作業車両の走行機体が圃場端での旋回を繰り返して圃場を往復走行する際、及び往復走行の終了後に圃場の外周に沿って走行する際に、前記走行機体を自動で操舵する作業車両自動操舵システムにおいて、
前記走行機体の位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記走行機体が圃場を往復走行する際の基準方位を設定する基準方位設定手段と、
前記基準方位と平行にかつ所定の間隔で配置された複数の往復経路と、前記基準方位と交差する方向へ延びる外周経路と、を設定する経路設定手段と、
前記複数の往復経路及び前記外周経路のいずれかの経路に沿って前記走行機体が走行するように前記走行機体を操舵する操舵手段と、
前記走行機体の前進と後進とを切り換える切換手段と、
前記位置情報取得手段による前記走行機体の位置情報に基づいて、前記走行機体を圃場の畦際まで前進させた後に後進に切り換えた地点を検知する切換検知手段と、を備え、
前記経路設定手段は、前記切換検知手段による前記走行機体の前進と後進の切り換え地点を複数取得し、取得した前記複数の切り換え地点が並ぶ方向に沿うように前記外周経路を設定する、
ことを特徴とする作業車両自動操舵システムにある。
【0008】
例えば、前記位置情報取得手段による前記走行機体の位置情報に基づいて前記走行機体の往復走行の終了を検知する往復終了検知手段を備え、
前記経路設定手段は、前記往復終了検知手段による前記走行機体の往復走行の終了の検知後に、前記外周経路を設定する。
【0009】
例えば、前記走行機体の畦際からの走行距離が所定の枕地距離に達した際に前記作業車両の作業機を作動させることで、圃場端においてオペレータが前記走行機体を旋回操作する際の目印を形成する目印形成手段を備える。
【0010】
例えば、前記作業車両の種類を入力可能な入力手段を備え、
前記経路設定手段は、前記複数の切り換え地点を結んだ線、又は、前記複数の切り換え地点の近似線に対して所定値を加えた線を前記外周経路として設定し、
前記所定値は、前記入力手段により入力された前記作業車両の種類により自動的に設定される。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る本発明によると、走行機体の旋回開始地点と旋回終了地点の少なくとも一方の地点の検知に基づき、一方の圃場端における複数の往復経路の複数の端点を取得し、複数の端点が並ぶ方向に沿うように外周経路を設定するため、畦際を直接検出することなく、外周経路の設定が行え、より簡易に自動操舵の経路を設定することができる。
【0012】
請求項2に係る本発明によると、走行機体を圃場の畦際まで前進させた後に後進に切り換えた切り換え地点を複数取得し、取得した複数の切り換え地点が並ぶ方向に沿うように外周経路を設定するため、圃場の形状に拘わらず外周経路の設定が行え、より簡易に自動操舵の経路を設定することができる。
【0013】
請求項3に係る本発明によると、走行機体の往復走行の終了の検知後に、外周経路を設定するため、外周経路を設定するための演算負荷を軽くでき、外周経路の設定をより正確に行える。
【0014】
請求項4に係る本発明によると、圃場端においてオペレータが走行機体を旋回操作する際の目印を形成するため、走行機体の旋回位置の正確性を向上させることができ、外周経路の演算制度も向上させることができる。
【0015】
請求項5に係る本発明によると、外周経路を設定するための所定値が、作業車両の種類の入力により自動で設定されるため、作業車両の種類に応じた外周経路の設定を容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】操作パネルを示し、(A)は、正体斜視図、(B)は、一部を拡大した正面図。
【
図5】第1モードにおける自動操舵の圃場面を示す平面図。
【
図6】第1モードにおける複数の往復経路を示す平面図。
【
図8】第1モードにおける外周経路の設定を説明するための平面図。
【
図9】第1モードにおける外周経路生成制御を示すフロー図。
【
図10】第2モードにおける自動操舵の圃場面を示す平面図。
【
図11】第2モードにおける外周経路の設定を説明するための図で、(A)は走行機体の寸法を、(B)は一方の圃場端の平面図、(C)は(B)の一部を拡大した平面図。
【
図12】第2モードにおける外周経路生成制御を示すフロー図。
【
図13】操作画面を示す図で、(A)は機種情報が自動で入力される場合を、(B)は機種情報を手動で入力する場合をそれぞれ示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に沿って、本発明の実施の形態について説明する。作業車両としての乗用型の田植機1は、
図1及び
図2に示すように、走行装置としての前輪2及び後輪3により支持される走行機体5を有し、走行機体5の後部には昇降リンク機構6を介して植付作業機7が昇降自在に支持されている。走行機体5の前部にはボンネット9で覆われているエンジンが搭載されており、該エンジンの左右両側には予備苗台10が配置されている。上記走行機体5の後部は、運転席11になっており、該運転席にはオペレータが座れるシート12が配置され、その前方にはステアリングハンドル13及び主変速レバー15、副変速レバー16及び作業機操作レバー17及び各種スイッチ、表示用パネル等が配置されている。ステアリングハンドル13は、走行機体5の下部に配置されている操向装置4によって前輪2と連結されている。前輪2は、オペレータによるステアリングハンドル13の操向操作により、ステアリングハンドル13の操舵角に応じて操舵される。なお、ステアリングハンドル13及び操向装置4によって、本実施の形態において、走行機体5を操向する操向部Sが構成される。
【0018】
また、走行機体5の左右には、使用位置及び格納位置に移動自在に線引きマーカ18が配置されている。線引きマーカ18は、格納位置である
図1の位置から左右に開き、田植機1(植付作業機7)の中心(植付中央位置)からそれぞれ所定の距離に位置する使用位置まで移動可能である。そして、例えば、左右の片側の線引きマーカ18を使用位置に位置させた状態で、走行機体5を走行させた際に、その走行機体5の中心から所定の距離に走行機体5の移動方向と平行に線が引かれる。この線は、走行機体5が旋回して次の経路を辿る際の目標ラインとなる。
【0019】
上記走行機体5には運転席11の前方の左右において上方に延びた2本のステー19が立設されており、該ステーの上方を幅方向に連結する横バー20に2個のGPS受信機21,21が機体中心から等間隔隔てて配置されており、これら2個のGPS受信機21は、田植機1の位置を検出し得ると共に、2個の受信機を結んだ直線に直交する直線方向を前後方向として、この前後方向に対して左右の受信機が左右何れにあるかにより、走行機体5の現在の前進方向を特定し得る。
【0020】
運転席11前方には、
図3に示すように、操作パネル23が配置されており、該操作パネルには始点A点登録スイッチ25a及び終点B点登録スイッチ25bを有するA-B地点入力部25と、自動直進及び自動旋回の両方のON状態とOFF状態とを切り替える自動操舵スイッチ26dを有する自動操舵モード選択部26と、後述する第1モード(ノーマル)と第2モード(どん突きバック)を含む作業モードの切り換えを行う作業モードスイッチ27と、上記スイッチの作動状態や、目標ライン上等、自動直進走行及び自動旋回走行中の走行機体5の状態を表示する各ランプと、が配置されており、各ランプは、各スイッチのオン状態等で点灯表示する。なお、このような操作パネル23内の各種スイッチやランプは、後述する
図13に示すように、タブレット32の操作画面にも表示されている。そして、タブレット32の画面をタッチ操作することでも、各種設定や動作が可能となっている。
【0021】
上記走行機体5には、
図4に示すように、位置情報取得手段としてのGNSS(全地球測位システム)ユニット30及び制御部としての制御ユニット31が配置されており、これらGNSSユニット30及び制御ユニット31がCAN通信されている。GNSSユニット30は、前記GPS受信機21から基準(位置)情報(21a)と方位(前進方向)情報(21b)が入力され、タブレット(携帯端末、ナビゲーションソフト)32からの各情報が入力され、またRTK基地局(補正情報出力装置)33からの情報が補正信号受信装置35を介して入力されて、上記GPS受信機21からの情報が補正される。タブレット32は、操作指示機能、ステータス表示機能、ナビゲーション機能などを有する。本実施形態では、後述するように、タブレット32により圃場面の内周経路や外周経路の設定などを行っている。但し、制御ユニット31或いはGNSSユニット30により圃場面の内周経路や外周経路の設定などを行っても良い。また、本実施形態では、GNSSユニット30を含む田植機1及びタブレット32により作業車両自動操舵システム100を構成している。
【0022】
制御ユニット31には前記操作パネル23の始点A点登録スイッチ25a、終点B点登録スイッチ25b、自動操舵スイッチ26d、作業モードスイッチ27からの信号が入力され、更に主変速レバー15から変速信号、副変速レバー16からの副変速、前後進信号が入力され、ステアリングハンドル13による操舵角センサー38の旋回角信号が入力され、車速センサー36からの車速信号、及び走行距離を計測する計測手段としての回転センサー37からの走行機体の走行距離信号が入力される。また、制御ユニット31から、ステアリングハンドル13を自動操舵(自動制御)する自動操舵信号が操舵手段としてのステアリングモータ39に出力され、かつ報知ブザー40及び報知表示部41に出力される。
【0023】
[自動操舵の圃場面]
次に、本実施の形態の自動操舵の圃場面について、
図5を用いて説明する。本実施の形態の作業車両自動操舵システム100では、作業車両としての田植機1の走行機体5が圃場端での旋回を繰り返して圃場200を往復走行する際、及び往復走行の終了後に圃場の外周に沿って走行する際に、走行機体5を自動で操舵するものである。即ち、
図5に示すように、圃場200の内周側に往復経路(内周経路)201が、往復経路201の外側に外周経路202が設定され、それぞれの経路において走行機体5を直線状に自立走行して植付などの作業を行う。
【0024】
具体的には、外周経路202は、田植機1が複数の往復経路201の端部において旋回を行う枕地203に、往復経路201と交差する方向に沿って設定される。以下、このような往復経路201及び外周経路202の設定方法について説明する。
【0025】
[第1モードにおける複数の往復経路の設定]
まず、複数の往復経路201は、ティーチング走行制御により設定される。なお、後述する第1モード及び第2モードにおける複数の往復経路201の設定の方法は、基本的に同じであり、それぞれの往復経路201はティーチング走行制御によって設定される。ここでは、第1モード(ノーマルモード)における複数の往復経路201に設定について説明する。
【0026】
まず、
図6に示すように、田植機1を圃場200の出入口210から進入させ、更に、畦際211、212に沿って、例えば、出入口210に対して最も奥の位置で旋回させる。そして、植付作業機7の後端が
図6の下側の畦際213に位置するまで田植機1を後退させる。この動作は、例えば、オペレータが目視で行う。更に、不図示のボタンなどを操作することで、田植機1が畦際213から所定の枕地距離、自動で前進する。この所定の枕地距離は、回転センサー37により計測される。本実施形態の場合、後述するように、枕地203に2本の直線状の外周経路202を設定するため、2本分(植付2回り)の外周経路202を設定するための距離に畦代を加えた距離が、所定の枕地距離となる。なお、外周経路202が1本の場合もある。
【0027】
田植機1が畦際213から所定の枕地距離に達した時点で、目印形成手段としてのタブレット32からの指令により制御ユニット31が自動で、植付作業機7を作動させ、1回だけ植付を行う(一点植え)。なお、目印形成手段は制御ユニット31であっても良い。この一点植えを行った地点は、
図6の下側の圃場端においてオペレータが田植機1を旋回操作する際の目印(目標ターゲット)となる。このように、圃場端においてオペレータが走行機体5を旋回操作する際の目印を形成するため、走行機体の旋回位置の正確性を向上させることができ、後述する外周経路202の演算制度も向上させることができる。なお、この一点植えは、オペレータが手動で行うようにしても良い。
【0028】
次いで、田植機1を
図6の下側から上側に向かって、
図6の右側の畦際212と略平行に前進させる。この際、走行機体5の左右にある線引きマーカ18のうち、左側の線引きマーカ18を使用位置に位置させて、左側に目標ラインを引く。そして、田植機1を
図6の上側の位置で旋回させ、上述した場合と同様に、植付作業機7の後端が
図6の上側の畦際211に位置するまで田植機1を後退させる。そして、不図示のボタンなどを操作することで、田植機1が畦際211から所定の枕地距離、自動で前進する。田植機1が畦際213から所定の枕地距離に達した時点で、タブレット32からの指令により制御ユニット31が自動で、植付作業機7を作動させ、1回だけ植付を行う(一点植え)。この一点植えを行った地点は、
図6の上側の圃場端においてオペレータが田植機1を旋回操作する際の目印となる。本実施形態では、この位置をA点とする。なお、A点は、予め圃場面に標付けられていても良い。
【0029】
田植機1は、上記A点に植付中央位置を合せ、かつ予め標付けられているB点に向くように、横方向の畦と平行になるように進行方向を合せる。この状態で、
図7に示すように、ティーチング走行制御を行う。即ち、オペレータは、始点A点登録スイッチ25aを押圧して、A点を登録し(S1)、植付作業を行いながら一方向に向けて走行するティーチング走行を開始する。この際、走行機体5の左右にある線引きマーカ18のうち、右側の線引きマーカ18を使用位置に位置させて、右側に目標ラインを引く。田植機1の植付中央位置がB点に到ると、オペレータは、それをみて終点B点登録スイッチ25bを押圧してB点を登録する(S2)。また、予め植付距離をタブレット32又は制御ユニット31内に格納し、回転センサー37により田植機の植付走行距離を測定し、該植付走行距離が上記植付距離に達した位置を終点B点として、オペレータがB点登録スイッチ25bを押すようにしてもよい。
【0030】
そして、上記登録された上記A点をB点から植付作業を行う際の基準の方位(方向)となる基準方位としての基準ラインLk0を演算(設定)する(S3)。更に、該基準ラインLk0に平行に、植付幅を演算して次工程以降の複数の直進経路(往復経路201)としての走行目標ライン(仮想線)Lk1(第1直進経路),Lk2(第2直進経路),Lk3,・・・,Lknを演算(設定)する(S4)。なお、基準方位を設定するステップS3の処理は、タブレット32が基準方位設定手段として処理を行い、複数の直進経路を設定するステップS4の処理も、タブレット32が経路設定手段として処理を行う。本実施の形態では、このようなティーチング走行制御によって、基準方位と平行にかつ所定の間隔で配置された複数の往復経路201(走行目標ラインLk1(第1直進経路),Lk2(第2直進経路),Lk3,・・・,Lkn)が設定される。なお、基準方位設定手段及び経路設定手段は、制御ユニット31或いはGNSSユニット30であっても良い。
【0031】
[第1モードにおける外周経路の設定]
次に、
図5で説明した第1モードにおける外周経路202の設定について、
図8及び
図9を用いて説明する。第1モードにおける外周経路202の設定は、隣接する往復経路間での走行機体5の旋回開始地点と旋回終了地点の少なくとも一方の地点を検知することで行う。即ち、旋回検知手段でもあるタブレット32は、GNSSユニット30による走行機体5の位置情報に基づいて、隣接する往復経路間での走行機体5の旋回開始地点と旋回終了地点の少なくとも一方の地点を検知する。なお、旋回検知手段は、制御ユニット31或いはGNSSユニット30であっても良い。本実施の形態の場合、旋回開始地点と旋回終了地点の両方を検知するようにしているが、旋回開始点だけでも良いし、旋回終了点だけでも良い。そして、タブレット32は、走行機体5の旋回開始地点と旋回終了地点の少なくとも一方の地点の検知に基づき、一方の圃場端における複数の往復経路201の複数の端点を取得し、複数の端点が並ぶ方向に沿うように外周経路を設定する。以下、具体的に説明する。
【0032】
上述のように、ティーチング走行制御によって複数の往復経路201を設定した後、複数の往復経路201にそって自動操舵制御を行う。具体的には、オペレータは、
図3に示した操作パネル23或いはタブレット32において、自動操舵スイッチ26dを操作して自動操舵をON状態とする。この際、作業モードスイッチ27を操作して、作業モードを「ノーマル」にしておく。この状態では、作業モードの状態を示すランプが消灯している。この際、上述のティーチング走行制御によって、田植機1は、植付作業を行いながらA点からB点に進んでおり、オペレータは、予め畦際213から所定の枕地距離に一点植えを行っていた目標ターゲットを目印として田植機1を次の目標ラインに向けて旋回させた状態である。
【0033】
また、タブレット32は、田植機1の旋回時に、GNSSユニット30による走行機体5の位置情報に基づいて、田植機1の旋回開始地点及び旋回終了地点を検知する。具体的には、GNSSユニット30による走行機体5の座標の変化から移動経路が変曲したことを検知し、例えば、変曲が開始された地点を旋回開始地点、変曲が終了した地点を線化終了地点として、タブレット32が有する記憶部に記憶しておく。
【0034】
図8を参照しつつ、
図9のフローに沿って説明する。本実施の形態のノーマルモードにおける外周経路202の生成制御(外周仮想線生成制御(ノーマル))を行う場合には、まず、複数の往復経路(内周経路)201の位置データ(走行データ)を時系列で記憶する(S101)。即ち、上述のようにA点からB点までティーチング走行制御を行いながら植付作業を行い、自動操舵をON状態にすると、
図8に示すように、タブレット32の指令に基づく制御ユニット31によるステアリングモータ39の制御によって、走行目標ライン(直進経路、仮想線Lk1,Lk2,・・・,Lkn)に沿って走行機体5が直進走行するように、ステアリングハンドル13を制御する直進制御が実行される。
【0035】
走行機体5が直進制御によって直進走行しながら植付作業が進行し、オペレータが各目標ラインの端部で田植機1を次の目標ラインに向けて旋回させ、その度に、タブレット32がGNSSユニット30による走行機体5の位置情報に基づいて、田植機1の旋回開始地点P及び旋回終了地点Qを検知し、記憶部に記憶する(S102)。この動作を複数の往復経路201の全てで行う(S103)。
【0036】
往復終了検知手段でもあるタブレット32は、GNSSユニット30による走行機体5の位置情報に基づいて走行機体5の往復走行の終了を検知可能である。即ち、全ての往復経路201の走行が終わったことを走行機体5の座標の変化から検知する(S104)。例えば、
図8に示すように、複数の往復経路201の走行がすべて終わった後は、そのまま外周経路202に向けて移動し、走行機体5を
図8の右側に旋回させる。このため、例えば、現在の走行機体5の方向に対して、一定角度を持った走行機体5の方向を所定時間、或いは、所定距離検知することで、複数の往復経路(内周経路)201における植付作業の終了を検知できる。即ち、走行機体5の方向転換を検知することで内周経路の作業の終了を検知する。
【0037】
或いは、枕地旋回点よりも外側での所定時間、或いは、所定距離の走行を検知する、言い換えれば、外周作業の開始を検知することで、内周経路の作業の終了を検知するようにしても良い。或いは、走行機体5の走行パターンを認識可能なアルゴリズムによって、内周経路の走行パターンから外周経路202の走行パターンへの移行を検知することで、内周経路の作業の終了を検知するようにしても良い。なお、往復終了検知手段は、制御ユニット31或いはGNSSユニット30であっても良い。
【0038】
S104で内周経路の作業(内周作業)の終了を検知したら、記憶部に記憶した全ての往復経路201の旋回開始地点P及び旋回終了地点Qから外周経路202の近似線を演算する(S105)。近似線は、一方の圃場端における複数の往復経路201の複数の端点を結んだ線、或いは、複数の端点を最小二乗法などで近似した近似線である。そして、タブレット32は、この近似線に所定値を加えた線を外周経路(外周の植付作業の目標走行ライン(仮想線))202として設定する(S106)。即ち、タブレット32は、走行機体5の旋回開始地点Pと旋回終了地点Qの少なくとも一方の地点の検知に基づき、一方の圃場端における複数の往復経路201の複数の端点を取得し、複数の端点が並ぶ方向に沿うように外周経路202を設定する。
【0039】
ここで、
図8に示すように、植付作業機7の幅をH、畦代をDとすると、所定値は、外周経路202の1本目の経路は1/2H、2本目の経路は1本目の経路に更にH-Dを加算した値となる。なお、畦代がない場合には、2本目の経路は1本目の経路に更にHを加算した値となる。本実施の形態では、このように複数の往復経路(内周経路)201の複数の端点を結んだ線、或いは、近似線から、複数の往復経路201と交差する仮想線を外周経路(走行目標ライン)202として設定するようにしている。これにより、外周経路202においても、内周経路と同様に、走行目標ラインに沿って自動操舵により植付作業(外周作業)を行うことが可能となる。
【0040】
上述の第1モードで外周経路202を設定する場合の、田植機1の圃場面での作業経路について、
図5を用いて説明する。作業経路は、
図5の(1)内周経路、(2)外周経路の内側から2本目、(3)外周経路の内側から1本目の順番となる。具体的に説明すると、まず、上述の
図6で説明したように、田植機1をA点に移動させる。そして、上述のように複数の往復経路(内周経路)201を、植付作業を行いながら走行する(1)。
【0041】
複数の往復経路201の作業が終了したら、次に、外周経路202の2本目の経路202aに向けて旋回し、植付作業機7の後端が
図5の左側の畦際214に位置するまで田植機1を後退させる。そして、この位置から、上述のように演算した外周経路の2本目の経路(目標走行ライン)202aに沿って植付作業を行いながら走行する。
図5の上側の外周経路202の2本目の経路202aを走行した後、複数の往復経路201の右側の経路220aを下側に向けて旋回し、植付作業機7の後端が
図5の上側の畦際211に位置するまで田植機1を後退させる。そして、この位置から経路220aを下側に向けて植付作業を行いながら走行し、下側の外周経路202の2本目の経路202bに向けて旋回する。次いで、植付作業機7の後端が
図5の右側の畦際212に位置するまで田植機1を後退させ、この位置から下側の2本目の経路202bを走行する。次いで、複数の往復経路201の左側の経路220bを上側に向けて旋回し、植付作業機7の後端が
図5の下側の畦際213に位置するまで田植機1を後退させる。そして、この位置から経路220bを上側に向けて植付作業を行いながら走行する(2)。
【0042】
次に、上側の外周経路202の1本目の経路202cに向けて旋回し、植付作業機7の後端が
図5の左側の畦際214に位置するまで田植機1を後退させ、この位置から上側の1本目の経路202cに沿って植付作業を行いながら走行する。
図5の上側の外周経路202の1本目の経路202cを走行した後、複数の往復経路201の右側の経路220aよりも内側の経路221aを下側に向けて旋回し、植付作業機7の後端が上側の経路202aで植付した範囲の略端部に位置するまで田植機1を後退させる。そして、この位置から経路221aを下側に向けて植付作業を行いながら走行し、下側の外周経路202の1本目の経路202dに向けて旋回する。次いで、植付作業機7の後端が右側の経路220aで植付した範囲の略端部に位置するまで田植機1を後退させ、この位置から下側の1本目の経路202dを走行する。次いで、複数の往復経路201の左側の経路220bよりも内側の経路221bを上側に向けて旋回し、植付作業機7の後端が下側の経路202bで植付した範囲の略端部に位置するまで田植機1を後退させる。そして、この位置から経路221bを上側に向けて植付作業を行いながら走行する(3)。経路221bを走行した後は、田植機1を出入口210から圃場200の外部に退出させる。
【0043】
なお、複数の往復経路201の左右の上下に沿った経路220a、220b、221a、221bの走行は、例えば、オペレータが手動で走行機体5を操舵して、植付作業を行いながら走行するようにしても良いし、複数の往復経路201の左右の両端を走行している際に、線引きマーカ18を使用して目標ラインを引いておき、そのラインに沿って自動操舵で走行するようにしても良い。或いは、ティーチング走行制御を行って複数の往復経路201の目標走行ラインを設定する際に、複数の往復経路201の左右両側の経路220a、220b、221a、221bも予め設定しておくようにしてもよい。
【0044】
[第2モードにおける外周経路の設定]
次に、第2モードにおける外周経路202の設定について、
図10ないし
図13を用いて説明する。第1モードの外周経路202の設定は、隣接する往復経路間での走行機体5の旋回開始地点と旋回終了地点の少なくとも一方の地点を検知することで行ったが、第2モードの外周経路202の設定は、田植機1の前輪2を畦際に当てて、その時の植付作業機7による作業位置を、後述する切り換え地点(どん突き位置)として複数取得し、複数の切り換え地点に基づいて外周経路202の設定を行うようにしている。
【0045】
ここで、
図1に示した主変速レバー15は、走行機体5の前進と後進とを切り換える切換手段に相当する。第2モードの場合、タブレット32は、主変速レバー15による走行機体5の前進と後進の切り換え地点を複数取得し、取得した複数の切り換え地点が並ぶ方向に沿うように外周経路202を設定する。
【0046】
具体的に説明する。オペレータは、
図3に示した操作パネル23或いはタブレット32において、作業モードスイッチ27を操作して、作業モードを「どん突きバック」にしておく。この状態では、作業モードの状態を示すランプが点灯している。なお、本実施形態では、田植機1の前輪2を畦際に突き当てることを「どん突き」と呼び、この状態から田植機1を後退させることを「どん突きバック」と呼ぶ。したがって、第2モードのことをどん突きバックモードとも呼び、図面では第2モードを「どん突きバック」と表現する。
【0047】
第2モードにより圃場面に植付作業を行う場合、
図10に示すように、田植機1を圃場200の出入口210から進入させ、A点に位置させる。そして、上述した場合と同様に、A点からB点までティーチング走行制御を行う。B点に到達した後、オペレータは田植機1の前輪2を
図10の下側の畦際213に突き当てる(どん突き)。この状態でオペレータが主変速レバー15を操作して田植機1を後退させる。この際、切換検知手段でもあるタブレット32は、GNSSユニット30による走行機体5の位置情報に基づいて、田植機1が後退したことを検知する。即ち、タブレット32は、走行機体5を圃場200の畦際まで前進させた後に後進に切り換えた地点(どん突き位置)を検知する。切換検知手段は、制御ユニット31或いはGNSSユニット30であっても良い。なお、田植機1をどん突きさせたときに、植付作業機7を作動させ、1回だけ植付を行う(一点植え)。
【0048】
上述のティーチング走行制御によって、複数の往復経路201が設定されるため、オペレータは、どん突きバック後に、田植機1を次の目標走行ラインに向けて旋回させる。そして、
図10の上側に向けて植付作業を行いながら田植機1を自動操舵で走行させ、上側の畦際211で、上述と同様のどん突きバックを行う。このときも、タブレット32は、GNSSユニット30による走行機体5の位置情報に基づいて、田植機1が後退したことを検知し、どん突き位置を取得する。
【0049】
このようなどん突きバックについて、
図11(B)、(C)を用いて説明する。
図11では、上側の畦際211におけるどん突きバックについて示しているが、下側の畦際213についても同様である。
図11(B)、(C)に示す地点Rは、畦際211のどん突きさせたときの植付作業機7の作業位置、即ち、どん突き位置である。
図11(C)に示すように、どん突き位置から田植機1を旋回開始位置まで後退させる。この際、タブレット32は、GNSSユニット30による走行機体5の位置情報に基づいて、田植機1が後退したことを検知し、田植機1の前進と後進の切り換え地点をどん突き位置として取得し、記憶部に記憶する。そして、オペレータは田植機1を次の目標走行ラインに向けて旋回させて、地点Sで示す旋回終了位置に移動させる。
【0050】
なお、旋回開始位置まで田植機1が後退した後に旋回を開始させるため、田植機1の走行速度が0の状態からある程度走行してから旋回が開始されることになる。即ち、田植機1が所定の速度まで到達してから実際の旋回が始まる。このため、旋回開始位置は、どん突き位置よりも内側にあり、旋回終了位置は旋回開始位置よりも外側にある。本実施の形態の場合、
図11(C)に示す旋回開始位置は、実際に旋回が開始される位置がどん突き位置又はこの位置の近傍となるように設定されており、旋回終了位置が
図11(C)の上下方向に関してどん突き位置と略同じ位置となるようにしている。
【0051】
上述のようなどん突きバックを複数の往復経路201を走行している際に行い、それぞれ田植機1の前進と後進の切り換え地点、即ち、どん突き位置を複数取得し、複数の切り換え地点(どん突き位置)を記憶部に記憶する。そして、タブレット32は、複数の切り換え地点(どん突き位置)が並ぶ方向に沿うように外周経路202を設定する。
図10及び
図11の例では、外周経路202が1本である。
【0052】
このようなどん突きバックを利用して外周経路202を設定する第2モードについて、
図12のフロー図に沿って説明する。本実施の形態のどん突きバックモードにおける外周経路202の生成制御(外周仮想線生成制御(どん突きバック))を行う場合には、まず、複数の往復経路(内周経路)201の位置データ(走行データ)を時系列で記憶する(S201)。即ち、上述のようにA点からB点までティーチング走行制御を行いながら植付作業を行い、自動操舵をON状態にすると、
図10に示すように、タブレット32の指令に基づく制御ユニット31によるステアリングモータ39の制御によって、走行目標ライン(直進経路、仮想線Lk1,Lk2,・・・,Lkn)に沿って走行機体5が直進走行するように、ステアリングハンドル13を制御する直進制御が実行される。
【0053】
走行機体5が直進制御によって直進走行しながら植付作業が進行し、オペレータが各目標ラインの端部で、植付作業機7を上昇させた状態で、田植機1を畦際211又は213に突き当てて、田植機1を後退させる。タブレット32は、その度に、GNSSユニット30による走行機体5の位置情報に基づいて、田植機1の切り換え地点(どん突き位置)Rを検知し、記憶部に記憶する。本実施形態では、旋回終了地点(旋回終了位置)Sについても第1モードと同様に、GNSSユニット30による走行機体5の位置情報に基づいて検知し、記憶部に記憶している(S202)。この動作を複数の往復経路201の全てで行う(S203)。
【0054】
タブレット32は、第1モードと同様に、GNSSユニット30による走行機体5の位置情報に基づいて走行機体5の往復走行の終了を検知する(S204)。この検知は、第1モードとほぼ同様であるが、外周作業の開始を検知することで、内周経路の作業の終了を検知する場合には、枕地旋回点ではなく、どん突き位置よりも外側での所定時間、或いは、所定距離の走行を検知することで行う。
【0055】
S204で内周経路の作業(内周作業)の終了を検知したら、記憶部に記憶した全ての往復経路201のどん突き位置R及び旋回終了地点Qから外周経路202の近似線を演算する(S205)。近似線は、一方の圃場端における複数の切り換え地点(どん突き位置)を結んだ線、或いは、複数の切り換え地点を最小二乗法などで近似した近似線である。そして、タブレット32は、この近似線に所定値Xを加えた線を外周経路(外周の植付作業の目標走行ライン(仮想線))202として設定する(S206)。即ち、タブレット32は、走行機体5のどん突き位置Rと旋回終了地点Qを複数取得し、複数のどん突き位置Rと旋回終了地点Qが並ぶ方向に沿うように外周経路202を設定する。なお、旋回終了位置Qについては、外周経路202の設定に含まなくても良い。
【0056】
ここで、所定値は、走行機体5の前輪から植付作業機7による作業位置までの距離、及び、植付作業機7の幅に基づいて設定される。
図11(A)に示すように、植付作業機7の幅をH、どん突き位置での前輪2から植付作業機7の作業位置までの距離をLf、畦代をDとすると、所定値Xは、次式で求められる。
X=Lf-(1/2)H-D
なお、畦代がない場合には、
X=Lf-(1/2)H
となる。
【0057】
ここで、田植機1の種類(機種)によっては、Lf、Hの値が異なる。このため、本実施形態では、
図13(A)、(B)に示すように、入力手段としてのタブレット32の操作画面により機種を入力可能であり、機種に応じた設定が可能となっている。
図13(A)の画面は、機種を選択することで、自動的にLf、H、Dが設定され、所定値Xも自動的に演算される。
【0058】
例えば、7条植えでは、Lf=2400mm、H=2500mm、D=30mmとした場合、X=2400-(1/2)×2500-30=1120mmとなり、8条植えでは、Lf=2400mm、H=2800mm、D=30mmとした場合、X=2400-(1/2)×2800-30=9700mmとなる。
【0059】
一方、
図13(B)は、Lf、H、Dを手動で設定可能なカスタム画面である。Lf、H、Dの値を入力することで、自動で所定値Xが演算される。これにより、タブレット32に登録されていない機種であっても対応可能である。
図13(A)、(B)の何れの画面であっても、実行ボタンをタップすることで、外周経路(外周仮想線)202の生成が行われる。これにより、外周経路202を設定するための所定値が、作業車両の種類の入力により自動で設定されるため、作業車両の種類に応じた外周経路202の設定を容易に行える。なお、入力手段は操作パネル23であっても良い。
【0060】
第2モードにおいては、複数の切り換え地点(どん突き位置)を結んだ線、或いは、近似線から、複数の往復経路201と交差する仮想線を外周経路(走行目標ライン)202として設定するようにしている。これにより、外周経路202においても、内周経路と同様に、走行目標ラインに沿って自動操舵により植付作業(外周作業)を行うことが可能となる。また、畦際に前輪2を突き当てるどん突きによって、上述の外周経路202の設定のための複数の切り換え地点を取得しているため、複数の切り換え地点を結ぶ線或いは近似線は、畦際の形状に沿った線となる。このため、圃場200の形状が長方形又は正方形ではない多角形などの特殊な形状であっても、圃場200の形状に適した外周経路202を設定可能である。
【0061】
上述の第2モードで外周経路202を設定する場合の、田植機1の圃場面での作業経路は、
図10に示す通りである。作業経路は、
図10の(1)内周経路、(2)外周経路の順番となる。具体的な作業経路は、
図5で説明した場合の(3)の経路がなく、(2)の経路の後に田植機1を出入口210から圃場200の外部に退出させる以外は、
図5の場合と同様である。
【0062】
本実施形態の場合、上述のように、外周経路202の設定を第1モード又は第2モードで実行可能であり、これらのモードを選択して行う。本実施形態の自動操舵制御について、
図14のフロー図を用いて具体的に説明する。まず、自動操舵制御を開始すると、タブレット32は、田植機1の現在位置に対して位置が近く、作業経路において方向が近い任意の仮想線を目標ラインとして設定する(S301)。仮想線は、上述した複数の往復経路201や外周経路202である。
【0063】
次いで、タブレット32は、作業モードがどん突きバックであるか否かを判断する(S302)。作業モードがどん突きバックではない場合には(S302のN)、
図9で説明した第1モードにより外周経路202の設定を行う、即ち、外周仮想線生成制御(ノーマル)を実行する(S303)。一方、作業モードがどん突きバックである場合には(S302のY)、
図12で説明した第2モードにより外周経路202の設定を行う、即ち、外周仮想線生成制御(どん突きバック)を実行する(S304)。
【0064】
内周経路(複数の往復経路201)又は外周経路202において自動操舵がONである場合(S305のY)、タブレット32は、GNSSユニット30による走行機体5の位置情報に基づいて、田植機1の目標走行ラインに対する横ずれを演算し、横ずれ量が所定の閾値Dtと比較する(S306)。そして、横ずれ量が所定の閾値Dtよりも大きい場合(S306のN)、田植機1を自動操舵する(S307、S308)。具体的には、横ずれ量と所定の閾値Dtとの比較から修正操舵角θsを演算し(S307)、ステアリングモータ39にこの修正操舵角θsを出力する(S308)。
【0065】
また、タブレット32は、田植機1の目標走行ラインに対する進行方向のずれを演算し、方向ずれが所定の角度θtと比較する(S309)。そして、横ずれ量が所定の閾値Dt以下であっても(S306のY)、方向ずれが所定の角度θtよりも大きい場合(S309のN)、田植機1を自動操舵する(S307、S308)。S306及びS309が共にYの場合、タブレット32は、報知ブザー40と報知表示部41の何れかに田植機1が目標ライン上にあることを報知する(S310)。
【0066】
以上説明したように、本実施の形態における作業車両自動操舵システム100は、第1モードにおいては、内周経路である複数の往復経路201の走行中に、旋回開始地点と旋回終了地点の少なくとも一方の地点を、GNSSユニット30による走行機体5の位置情報に基づいて検知し、これらの地点を一方の圃場端における複数の往復経路の複数の端点として取得するようにしている。そして、複数の端点が並ぶ方向に沿うように外周経路202を設定するため、畦際を直接検出することなく、外周経路202の設定が行え、より簡易に自動操舵の経路を設定することができる。また、本実施形態では、田植機1が内周経路である複数の往復経路201を植付作業を行いながら走行すると、自動的に外周経路202の設定が行われることになる。このため、オペレータの作業負担を軽減できる。
【0067】
また、第2モードにおいては、走行機体5を圃場200の畦際まで前進させた後に後進に切り換えた切り換え地点を複数取得するようにしている。即ち、内周経路である複数の往復経路201の走行中に、田植機1を畦際にどん突きさせてから後退させている。この際、GNSSユニット30による走行機体5の位置情報に基づいて、どん突き位置から後退、即ち、どん突きバックを検知することで、田植機1の前進と後進の切り換え地点であるどん突き位置を複数取得するようにしている。そして、取得した複数の切り換え地点(どん突き位置)が並ぶ方向に沿うように外周経路202を設定するため、圃場200の形状に拘わらず外周経路202の設定が行え、より簡易に自動操舵の経路を設定することができる。
【0068】
また、本実施の形態では、走行機体5の往復走行の終了の検知後、即ち、複数の往復経路201の走行が終了してから、外周経路202の設定を行うようにしている。即ち、第1モードのおいては複数の往復経路201の複数の端点を全て取得してから、第2モードにおいては複数の往復経路201を走行中のどん突き位置を全て取得してから、それぞれ外周経路202の演算を行うようにしている。このため、往復経路201の端点、或いは、どん突き位置を取得する度に外周経路202の演算を行う場合よりも演算負荷を軽くできる。また、目標走行ラインとしての外周経路202の設定をより正確に行える。
【0069】
即ち、端点或いはどん突き位置を取得する度に演算を行う場合、演算回数が多くなり、演算負荷が増える。また、演算回数が多くなると、演算の度に誤差が大きくなる可能性があり、目標走行ラインを正確に設定できない虞がある。これに対して本実施の形態のように、内周経路の全ての端点、或いは、内周経路野走行中の全てのどん突き位置を取得してから外周経路202を演算することで、一度の演算で外周経路202を設定でき、演算負荷の軽減及び外周経路202の設定の正確性の向上を図れる。
【0070】
なお、上述した実施の形態においては、作業車両として乗用型の田植機1について説明をしたが、これに限定されない。作業車両は、例えば、トラクタやコンバイン等、他の作業車両であってもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 田植機(作業車両)
5 走行機体
7 植付作業機(作業機)
15 主変速レバー(切換手段)
30 GNSSユニット(位置情報取得手段)
31 制御ユニット
32 タブレット(入力手段、基準方位設定手段、経路設定手段、旋回検知手段、往復終了検知手段、切換検知手段、目印形成手段)
39 ステアリングモータ(操舵手段)