(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022186022
(43)【公開日】2022-12-15
(54)【発明の名称】フルフェース型のマスク、表示制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20221208BHJP
H04N 5/64 20060101ALI20221208BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
H04N5/64 511A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021094025
(22)【出願日】2021-06-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】本橋 輝行
(72)【発明者】
【氏名】植松 厚志
(72)【発明者】
【氏名】小松 聖
【テーマコード(参考)】
2H199
【Fターム(参考)】
2H199CA04
2H199CA05
2H199CA12
2H199CA23
2H199CA25
2H199CA42
2H199CA46
2H199CA47
2H199CA64
2H199CA74
2H199CA75
2H199CA76
2H199CA87
2H199CA89
2H199CA92
2H199CA94
(57)【要約】
【課題】情報表示を行うための光学要素が外部の障害物と接触することを避け、容易に且つ低コストで製造可能なフルフェース型のマスクを提供する。
【解決手段】フルフェース型のマスク1は、装着者の少なくとも両眼部を覆う部分に対応する部分に配された前面透明体11と、その周囲を覆うフレーム部12と、単眼用の映像投影装置20と、を備える。映像投影装置20は、前面透明体11の内面側に、表示素子21と、その出射光を通過させるレンズ部22と、ビームスプリッタ24及び凹面鏡25を有する投影ユニット23と、を有する。投影ユニット23は、前面透明体11の内面側の空間を介してレンズ部22からの出射光をビームスプリッタ24に入射し透過させて凹面鏡25で反射させ、凹面鏡25からの反射光をビームスプリッタ24で装着者の片眼側に反射させるように配設される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の少なくとも両眼部を覆う部分に対応する部分に配された前面透明体と、
前記前面透明体の周囲を覆うフレーム部と、
単眼用の映像投影装置と、
を備え、
前記映像投影装置は、前記前面透明体の内面側に、表示素子と、前記表示素子からの出射光を通過させるレンズ部と、ビームスプリッタ及び凹面鏡を有する投影ユニットと、を有し、
前記投影ユニットは、前記前面透明体の内面側の空間を介して前記レンズ部からの出射光を前記ビームスプリッタに入射し、前記ビームスプリッタを透過させて前記凹面鏡で反射させ、前記凹面鏡からの反射光を前記ビームスプリッタで装着者の片眼側に反射させるように配設される、
フルフェース型のマスク。
【請求項2】
前記映像投影装置は、前記ビームスプリッタの反射角度を調整する角度調整機構を有する、
請求項1に記載のフルフェース型のマスク。
【請求項3】
前記映像投影装置は、前記角度調整機構で調整された反射角度に応じて、前記表示素子の表示輝度を変更する、
請求項2に記載のフルフェース型のマスク。
【請求項4】
前記ビームスプリッタは、透過率が50%以上である、
請求項1~3のいずれか1項に記載のフルフェース型のマスク。
【請求項5】
前記映像投影装置は、前記前面透明体の外面側に設けられる外部筐体と、前記前面透明体の内面側に設けられる、前記表示素子と前記レンズ部とを有する筐体である内部筐体と、を有し、
前記内部筐体と前記投影ユニットとは、互いに位置決めする位置決め構造を有し、
前記内部筐体と前記外部筐体とは前記前面透明体を挟んだ状態で互いに固定される、
請求項1~4のいずれか1項に記載のフルフェース型のマスク。
【請求項6】
前記投影ユニットは透明部品で構成され、前記内部筐体は非透明部品で構成される、
請求項5に記載のフルフェース型のマスク。
【請求項7】
前記映像投影装置は、前記前面透明体の外面側に設けられる外部筐体を有し、
前記外部筐体には、障害物までの距離を計測する測距デバイスが設けられ、
前記レンズ部は、フォーカス調整レンズを有し、
前記フォーカス調整レンズは、表示面となる前記ビームスプリッタにおいて、前記測距デバイスで計測された距離に表示対象映像が視認されるようにフォーカスを調整する、
請求項1~6のいずれか1項に記載のフルフェース型のマスク。
【請求項8】
装着者の口元及び鼻孔の周囲を覆う内部接顔体を備え、
前記映像投影装置は、前記前面透明体の内面側に設けられる、前記表示素子と前記レンズ部とを有する筐体である内部筐体を有し、
前記内部筐体は、前記内部接顔体を避ける方向に、装着者の正中線に対応させる中心線から角度をつけて配設される、
請求項1~7のいずれか1項に記載のフルフェース型のマスク。
【請求項9】
装着者の少なくとも両眼部を覆う部分に対応する部分に配された前面透明体と、前記前面透明体の周囲を覆うフレーム部と、単眼用の映像投影装置と、を備えたフルフェース型のマスクにおける表示制御方法であって、
前記映像投影装置は、前記前面透明体の内面側に、表示素子と、前記表示素子からの出射光を通過させるレンズ部と、ビームスプリッタ及び凹面鏡を有する投影ユニットと、前記ビームスプリッタの反射角度を調整する角度調整機構と、を有し、
前記投影ユニットは、前記前面透明体の内面側の空間を介して前記レンズ部からの出射光を前記ビームスプリッタに入射し、前記ビームスプリッタを透過させて前記凹面鏡で反射させ、前記凹面鏡からの反射光を前記ビームスプリッタで装着者の片眼側に反射させるように配設され、
前記表示制御方法は、前記映像投影装置が、前記角度調整機構で調整された反射角度に応じて、前記表示素子の表示輝度を変更する、
表示制御方法。
【請求項10】
装着者の少なくとも両眼部を覆う部分に対応する部分に配された前面透明体と、前記前面透明体の周囲を覆うフレーム部と、単眼用の映像投影装置と、を備えたフルフェース型のマスクにおける表示制御方法であって、
前記映像投影装置は、前記前面透明体の内面側に、表示素子と、前記表示素子からの出射光を通過させるフォーカス調整レンズと、ビームスプリッタ及び凹面鏡を有する投影ユニットと、を有するとともに、前記前面透明体の外面側に、障害物までの距離を計測する測距デバイスが設けられた外部筐体を有し、
前記投影ユニットは、前記前面透明体の内面側の空間を介して前記フォーカス調整レンズからの出射光を前記ビームスプリッタに入射し、前記ビームスプリッタを透過させて前記凹面鏡で反射させ、前記凹面鏡からの反射光を前記ビームスプリッタで装着者の片眼側に反射させるように配設され、
前記表示制御方法は、
前記測距デバイスが、障害物までの距離を計測し、
前記フォーカス調整レンズが、表示面となる前記ビームスプリッタにおいて、前記測距デバイスで計測された距離に表示対象映像が視認されるようにフォーカスを調整する、
表示制御方法。
【請求項11】
装着者の少なくとも両眼部を覆う部分に対応する部分に配された前面透明体と、前記前面透明体の周囲を覆うフレーム部と、単眼用の映像投影装置と、を備えたフルフェース型のマスクにおける、前記映像投影装置に具備された制御コンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記映像投影装置は、前記前面透明体の内面側に、表示素子と、前記表示素子からの出射光を通過させるレンズ部と、ビームスプリッタ及び凹面鏡を有する投影ユニットと、前記ビームスプリッタの反射角度を調整する角度調整機構と、を有し、
前記投影ユニットは、前記前面透明体の内面側の空間を介して前記レンズ部からの出射光を前記ビームスプリッタに入射し、前記ビームスプリッタを透過させて前記凹面鏡で反射させ、前記凹面鏡からの反射光を前記ビームスプリッタで装着者の片眼側に反射させるように配設され、
前記プログラムは、前記制御コンピュータに、前記角度調整機構で調整された反射角度に応じて、前記表示素子の表示輝度を変更する処理を実行させる、
プログラム。
【請求項12】
装着者の少なくとも両眼部を覆う部分に対応する部分に配された前面透明体と、前記前面透明体の周囲を覆うフレーム部と、単眼用の映像投影装置と、を備えたフルフェース型のマスクにおける、前記映像投影装置に具備された制御コンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記映像投影装置は、前記前面透明体の内面側に、表示素子と、前記表示素子からの出射光を通過させるフォーカス調整レンズと、ビームスプリッタ及び凹面鏡を有する投影ユニットと、を有するとともに、前記前面透明体の外面側に、障害物までの距離を計測する測距デバイスが設けられた外部筐体を有し、
前記投影ユニットは、前記前面透明体の内面側の空間を介して前記フォーカス調整レンズからの出射光を前記ビームスプリッタに入射し、前記ビームスプリッタを透過させて前記凹面鏡で反射させ、前記凹面鏡からの反射光を前記ビームスプリッタで装着者の片眼側に反射させるように配設され、
前記プログラムは、前記制御コンピュータに、
前記測距デバイスで障害物までの距離を計測させ、
表示面となる前記ビームスプリッタにおいて、前記測距デバイスで計測された距離に表示対象映像が視認されるように、前記フォーカス調整レンズにおけるフォーカスを調整する、
処理を実行させる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フルフェース型のマスク、表示制御方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
装着者が頭部に装着するHMD(Head Mounted Display)が流通している。
【0003】
特許文献1には、頭部装着のフレームを有するアイウェアに対するコンパクトな再装着自由のディスプレイデバイスであり、ハウジングアッセンブリー、回路構成、電子イメージングアッセンブリー、及び光学要素を備えるデバイスが記載されている。前記ハウジングアッセンブリーは、前記アイウェアの頭部で受けるフレームのテンプルへ動きが可能に装着された装着機構を有する。前記回路構成は、前記ハウジングアッセンブリーに内蔵され、データシグナル又はビデオシグナルを受ける。前記電子イメージングアッセンブリーは、前記ハウジングアッセンブリーにより支持され、前記ハウジングアッセンブリーに内蔵の前記回路構成と連通して、イメージを作る。前記光学要素は、アイピースアッセンブリーを使用者の目の前側に支持する透明な取付具であって、前記電子イメージングアッセンブリーからのイメージを受け、該イメージを内部的に中継伝達することができる取付具を備える。前記光学要素は、前記透明な取付具により支持されて、前記イメージを使用者の目に入るようにするアイピースアッセンブリーを備える。
【0004】
特許文献2には、ユーザ頭部により支えられる様に配置されたヘッドセットを具備する支持フレームと、ユーザの目の正面に支持フレームにより支えられたディスプレイ組立体と、を具備する頭部装着型画像ディスプレイシステムが記載されている。前記ディスプレイ組立体は、ディスプレイ要素、光学リレー、光路、及びアイピース組立体を含む。前記ディスプレイ要素は、周囲光から分離された画像を提供するために作動する。前記光学リレーは、2光学面を通りユーザの目に向かって周囲光を通過させる様に配置された前記2光学面を有する。前記光路は、少なくとも光学リレーの2光学面に沿ってその間に配置された部分を有する、ディスプレイ要素から光を受け取る為に光学リレー内に配置された光路である。前記アイピース組立体は、光学リレー内に配置され、且つ光路の少なくとも一部に沿って通過してきた光を光路外のユーザの目に転送するために配置されたインターフェースを具備する。
【0005】
特許文献2には、光学装置はダイバー用マスク、消防士用顔面シールド、宇宙飛行士スーツマスク、危険物取り扱いようボディースーツ用フェースマスクの様なフルフェース型マスクシステムに利用できることが記載されている。また、特許文献2には、眼鏡上にディスプレイ及び回路を取り付けること、並びに、潜水用マスクに関しては、回路及びディスプレイはフェースマスク内、その縁に直接取り付けることができることも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2001-522064号公報
【特許文献2】特表2002-539498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載されたデバイスは、頭部装着のフレームを有するアイウェアに対するディスプレイデバイスである。よって、特許文献1に記載のデバイスを防毒マスク等の装着者の顔を覆うフェースマスク型のマスクに取り付ける場合にはその光学要素がマスクの外側に設けられ、障害物との接触等により表示させた情報が視界からずれるため、常に確実に視認できるとは言い難い。実際、フェースマスク型のマスクを付けると距離感がつかめずに障害物との接触はフェースマスクを付けない場合に比べて多くなるため、このような問題は解決すべき課題となる。なお、特許文献1に記載されたデバイスは、フェースマスク型のマスクの内部にアイウェアとともに装着することは可能であるが、二重の装備となってしまう。
【0008】
また、特許文献2に記載の頭部装着型画像ディスプレイシステムは、ディスプレイとビームスプリッタとの間の光線が光学リレー内を通過するシステムであるため、光学リレーを含む光学系のサイズが大きくなる。従って、特許文献2に記載のシステムにおいてフルフェース型マスクシステムを採用した場合、マスクの前面透明体の構造が複雑且つ肉厚となり、既存のフェースマスクを利用して製造することもできる構造でもないため、製造時間とコストが嵩むことになる。
【0009】
本開示の目的は、上述した課題を鑑み、情報表示を行うための光学要素が外部の障害物と接触することを避けることが可能で、容易に且つ低コストで製造することが可能なフルフェース型のマスク、表示制御方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の第1の態様に係るフルフェース型のマスクは、装着者の少なくとも両眼部を覆う部分に対応する部分に配された前面透明体と、前記前面透明体の周囲を覆うフレーム部と、単眼用の映像投影装置と、を備える。前記映像投影装置は、前記前面透明体の内面側に、表示素子と、前記表示素子からの出射光を通過させるレンズ部と、ビームスプリッタ及び凹面鏡を有する投影ユニットと、を有する。前記投影ユニットは、前記前面透明体の内面側の空間を介して前記レンズ部からの出射光を前記ビームスプリッタに入射し、前記ビームスプリッタを透過させて前記凹面鏡で反射させ、前記凹面鏡からの反射光を前記ビームスプリッタで装着者の片眼側に反射させるように配設される。
【0011】
本開示の第2の態様に係る表示制御方法は、装着者の少なくとも両眼部を覆う部分に対応する部分に配された前面透明体と、前記前面透明体の周囲を覆うフレーム部と、単眼用の映像投影装置と、を備えたフルフェース型のマスクにおける表示制御方法である。前記映像投影装置は、前記前面透明体の内面側に、表示素子と、前記表示素子からの出射光を通過させるレンズ部と、ビームスプリッタ及び凹面鏡を有する投影ユニットと、前記ビームスプリッタの反射角度を調整する角度調整機構と、を有する。前記投影ユニットは、前記前面透明体の内面側の空間を介して前記レンズ部からの出射光を前記ビームスプリッタに入射し、前記ビームスプリッタを透過させて前記凹面鏡で反射させ、前記凹面鏡からの反射光を前記ビームスプリッタで装着者の片眼側に反射させるように配設される。前記表示制御方法は、前記映像投影装置が、前記角度調整機構で調整された反射角度に応じて、前記表示素子の表示輝度を変更する。
【0012】
本開示の第3の態様に係る表示制御方法は、装着者の少なくとも両眼部を覆う部分に対応する部分に配された前面透明体と、前記前面透明体の周囲を覆うフレーム部と、単眼用の映像投影装置と、を備えたフルフェース型のマスクにおける表示制御方法である。前記映像投影装置は、前記前面透明体の内面側に、表示素子と、前記表示素子からの出射光を通過させるフォーカス調整レンズと、ビームスプリッタ及び凹面鏡を有する投影ユニットと、を有する。前記映像投影装置は、前記前面透明体の外面側に、障害物までの距離を計測する測距デバイスが設けられた外部筐体を有する。前記投影ユニットは、前記前面透明体の内面側の空間を介して前記フォーカス調整レンズからの出射光を前記ビームスプリッタに入射し、前記ビームスプリッタを透過させて前記凹面鏡で反射させ、前記凹面鏡からの反射光を前記ビームスプリッタで装着者の片眼側に反射させるように配設される。前記表示制御方法は、前記測距デバイスが、障害物までの距離を計測し、前記フォーカス調整レンズが、表示面となる前記ビームスプリッタにおいて、前記測距デバイスで計測された距離に表示対象映像が視認されるようにフォーカスを調整する。
【0013】
本開示の第4の態様に係るプログラムは、装着者の少なくとも両眼部を覆う部分に対応する部分に配された前面透明体と、前記前面透明体の周囲を覆うフレーム部と、単眼用の映像投影装置と、を備えたフルフェース型のマスクにおける、前記映像投影装置に具備された制御コンピュータに実行させるためのプログラムである。前記映像投影装置は、前記前面透明体の内面側に、表示素子と、前記表示素子からの出射光を通過させるレンズ部と、ビームスプリッタ及び凹面鏡を有する投影ユニットと、前記ビームスプリッタの反射角度を調整する角度調整機構と、を有する。前記投影ユニットは、前記前面透明体の内面側の空間を介して前記レンズ部からの出射光を前記ビームスプリッタに入射し、前記ビームスプリッタを透過させて前記凹面鏡で反射させ、前記凹面鏡からの反射光を前記ビームスプリッタで装着者の片眼側に反射させるように配設される。前記プログラムは、前記制御コンピュータに、前記角度調整機構で調整された反射角度に応じて、前記表示素子の表示輝度を変更する処理を実行させる。
【0014】
本開示の第5の態様に係るプログラムは、装着者の少なくとも両眼部を覆う部分に対応する部分に配された前面透明体と、前記前面透明体の周囲を覆うフレーム部と、単眼用の映像投影装置と、を備えたフルフェース型のマスクにおける、前記映像投影装置に具備された制御コンピュータに実行させるためのプログラムである。前記映像投影装置は、前記前面透明体の内面側に、表示素子と、前記表示素子からの出射光を通過させるフォーカス調整レンズと、ビームスプリッタ及び凹面鏡を有する投影ユニットと、を有する。前記映像投影装置は、前記前面透明体の外面側に、障害物までの距離を計測する測距デバイスが設けられた外部筐体を有する。前記投影ユニットは、前記前面透明体の内面側の空間を介して前記フォーカス調整レンズからの出射光を前記ビームスプリッタに入射し、前記ビームスプリッタを透過させて前記凹面鏡で反射させ、前記凹面鏡からの反射光を前記ビームスプリッタで装着者の片眼側に反射させるように配設される。前記プログラムは、前記制御コンピュータに、前記測距デバイスで障害物までの距離を計測させ、表示面となる前記ビームスプリッタにおいて、前記測距デバイスで計測された距離に表示対象映像が視認されるように、前記フォーカス調整レンズにおけるフォーカスを調整する、処理を実行させる。
【発明の効果】
【0015】
本開示により、情報表示を行うための光学要素が外部の障害物と接触することを避けることが可能で、容易に且つ低コストで製造することが可能なフルフェース型のマスク、表示制御方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態1に係るフルフェース型のマスクの一構成例を示す正面図である。
【
図2】実施形態1に係るフルフェース型のマスクの一構成例を示す側面図である。
【
図3】
図1及び
図2のマスクにおける光路の一例を示す断面図である。
【
図4】
図1及び
図2のマスクを装着者が装着した場合の視野を示す模式図である。
【
図5】実施形態2に係るフルフェース型のマスクにおけるビームスプリッタの角度調整機構の一例を示す側面図である。
【
図6】
図5の角度調整機構における調整の様子を示す模式図である。
【
図7】
図5のマスクに具備された制御装置の一構成例を示すブロック図である。
【
図8】実施形態3に係るフルフェース型のマスクにおける表示機能の構成部品の一例をマスクに取り付ける様子を示す斜視図である。
【
図9】
図8に続く、構成部品をマスクに取り付ける様子を示す斜視図である。
【
図10】実施形態4に係るフルフェース型のマスクの一構成例を示す斜視図である。
【
図11】
図10のマスクにおける構成部品の一部を示す斜視図である。
【
図12】
図10のマスクにおける表示制御の一例を示す模式図である。
【
図13】実施形態5に係る作業者装置の一構成例を示すブロック図である。
【
図14】実施形態5に係る作業者装置に具備される映像投影装置で表示される表示画像の一例を示す図である。
【
図15】実施形態6に係るフルフェース型のマスクの一構成例を示す正面図である。
【
図17】フルフェース型のマスクの映像投影装置におけるハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、実施形態について説明する。なお、実施形態において、同一又は同等の要素には、同一の符号を付すことがあり、重複する説明は適宜省略される。
【0018】
<実施形態1>
図1~
図4を参照しながら、実施形態1に係るフルフェース型のマスクについて説明する。
図1は、実施形態1に係るフルフェース型のマスクの一構成例を示す正面図で、
図2は、その側面図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態に係るフルフェース型のマスク1(以下、単に「マスク1」)は、装着者の少なくとも両眼部を覆う部分に対応する部分に配された前面透明体11と、前面透明体11の周囲を覆うフレーム部12と、映像投影装置20と、を備える。また、
図1に示したように、マスク1は、装着者の口元及び鼻孔の周囲を覆う内部接顔体(ノーズカップ)13を備えることができる。
【0020】
マスク1は、フルフェース型であればよく、
図1等では省略しているが、例えば、装着するために後頭部に沿わせて頭部にマスク1本体を固定するためのバンド等の装着具が設けられる。あるいは、マスク1は、後頭部を覆うシールド(これも合わせてフルフェース型のヘルメットのような形状となる)が設けられることになる。フルフェース型のマスク1は、防毒マスク(ガスマスク)、防塵マスク、水中マスク(ダイバー用の潜水マスク)、消防士用顔面シールド(防毒・防煙マスク)、宇宙飛行士用のフェースマスク、危険物取り扱い者用のフェースマスクなどとして適用できる。これ以外にもマスク1は、様々な種類のマスクとして適用できる。マスク1は、空気の吸気口及び排気口が設けられることとなるが、その用途に合わせた気密性が確保され、また必要に応じて酸素ボンベ等に接続される。
【0021】
前面透明体11は、透明な面体であって、所謂アイピースと称されるものであり、マスク1の用途に応じた材質(例えばポリカーボネート、ガラス等)及び厚みで、用途に応じた強度を保つように形成されることができる。フレーム部12は、上記バンド等の装着具が用いられる場合には、装着者の顔に密着させる部分に弾性体などを設けておくことができる。また、上記の後頭部を覆うシールドが用いられる場合には、そのシールドをフレーム部12の後頭部側の端部などに取り付けておくことができ、この場合にも装着者の顔に密着させるための弾性体などを設けておくこともできる。
【0022】
映像投影装置20は、単眼用の映像投影装置であり、
図1では右眼用として配設された例を挙げているが、左眼用として配設されることもできる。マスク1は、情報の表示が可能な映像投影装置20を備えることから、HMD(Head Mounted Display)付きマスクあるいはスマートマスクと称することもできる。
【0023】
映像投影装置20は、前面透明体11の内面側(つまりマスク1の内側)に、表示素子21と、表示素子21からの出射光を通過させるレンズ部22と、ビームスプリッタ24及び凹面鏡25を有する投影ユニット23と、を有する。
【0024】
表示素子21は、有機EL(electro-luminescence)素子、液晶素子などとすることができ、複数個の表示素子で1枚の画像を表示させることができる。なお、表示素子21が液晶素子等の非自発光素子である場合にはバックライトが背後に設けられる。また、映像投影装置20は、図示しないが、表示素子21における表示を制御する表示制御部を有することができる。
【0025】
レンズ部22は、投影ユニット23へ像を転送する(表示素子からの出射光を出射する)リレーレンズを含む複数枚のレンズで構成することができ、このリレーレンズは1倍より大きい倍率のものを採用することで、表示素子21の小型化が実現できる。
【0026】
ビームスプリッタ24は入射光の一部を反射し、一部を透過させるものであればよく、図示したようにプレート型のビームスプリッタとし小型化及び軽量化を図ることができる。但し、ビームスプリッタ24はプリズム型であってもよい。ビームスプリッタ24は、所謂ハーフミラーであってもよく、また偏光成分を分離できる偏光ビームスプリッタとすることもでき、その場合、表示素子21からの出射光をそれに合わせた偏光成分をもつもととすることができる。凹面鏡25は、ビームスプリッタ24を透過した光をビームスプリッタ24に返す。
【0027】
装着者は、片眼(この例では右眼)についてはビームスプリッタ24及び前面透明体11を介して視野を確保することができ、他の眼(この例では左眼)については前面透明体11のみを介して視野を確保することができる。
【0028】
また、映像投影装置20は、表示素子21及びレンズ部22を有するインナーユニット26を有することができ、インナーユニット26はアウターユニット27と前面透明体11を挟んで固定接続されることができ、以下ではこのような例を挙げて説明する。インナーユニット26は、前面透明体11の内面側に設けられ、表示素子21及びレンズ部22を収容する筐体である内部筐体の一例であり、以下では表示素子21及びレンズ部22も含めてインナーユニット26として説明する。アウターユニット27は、前面透明体11の外面側に設けられる筐体の一例であり、以下ではそこに収容される構成要素も含めてアウターユニット27として説明する。
【0029】
また、前面透明体11にこのような固定接続のための1又は複数の孔を設けておき、インナーユニット26及びアウターユニット27の少なくとも一方を上記1又は複数の孔に貫通させて互いが固定されることができる。この際には気密性を保つように固定される。但し、映像投影装置20は、後述するカメラ等の他の部位を前面透明体11の外側に備える必要がない構成では、アウターユニット27を設けないこともできる。アウターユニット27を設けない場合、表示素子21及びレンズ部22を収容するインナーユニット26がフレーム部12において前面透明体11の内側に位置するように固定されることができる。
【0030】
次に、
図3を参照しながらマスク1における光路の一例について説明する。
図3は
図1及び
図2のマスク1における光路の一例を示す断面図である。
【0031】
投影ユニット23は、
図3に示すような光路となるようにビームスプリッタ24及び凹面鏡25が配置される。即ち、投影ユニット23は、前面透明体11の内面側の空間を介してレンズ部22からの出射光をビームスプリッタ24に入射し透過させて凹面鏡25で反射させ、その反射光をビームスプリッタ24で装着者の片眼側に反射させるように配設される。ここで、レンズ部22からの出射光とは、
図3に示したように、表示素子21から出射された光をレンズ部22の内部で結像してビームスプリッタ24側に出射させた光を指すことができる。このように、投影ユニット23は、所謂Birdbath光学系のユニットとすることができる。なお、投影ユニット23はコンバイナユニットと称することもできる。
【0032】
即ち、表示素子21から出射された映像光はレンズ部22で最適条件の光線に変換され、投影ユニット23のビームスプリッタ24を通過して凹面鏡25で反射される。そして、凹面鏡25で反射された光線は反射の際に必要な倍率を得て、ビームスプリッタ24で反射され瞳に入る。また、瞳の前にビームスプリッタ24を設置しているため、瞳から外部へは透過仕様となり、装着者はビームスプリッタ24が配設された側の眼でも外部を視認することができる。つまり、表示させる映像(虚像)は前面透明体11を介した装着者の視界と重なるため、装着者はほとんど視線を動かすことなく、映像(虚像)を視認することができる。
【0033】
このように、本実施形態では、凹面鏡25及び途中で結像させるレンズ部22により表示に必要な倍率を稼ぐことができ、レンズ部22のレンズ径を小さくでき映像投影装置20における光学部品(表示素子21、レンズ部22、及び投影ユニット23)の小型化を図ることができる。これにより、映像投影装置20における光学部品は、マスク1のように面内のスペースが少ないようなマスクにも実装可能となる。
【0034】
また、マスク1は、上述したように、レンズ部22と投影ユニット23との間に光路となる空間を有し、この空間は前面透明体11の内面側(つまりマスク1の面体内)に位置する。従って、マスク1では、
図3において両方向矢印で示すように、この空間により装着者の下方視野が確保できるようになる。
【0035】
このような装着者の正面から見た視野について、
図4を参照しながら説明する。
図4は、マスク1を装着者が装着した場合の視野を示す模式図である。
図4において斜線領域で示すように、マスク1を装着者が装着した場合には、レンズ部22の小型化により視界の遮断領域を最小化できるため、装着者は広い視野を確保できているのが分かる。なお、
図4では、測距デバイス42及びカメラ等の撮像装置である映像取得部41をアウターユニット27に備えた例を挙げているが、本実施形態では必須ではなく、実施形態2以降で後述する。
【0036】
特に、ビームスプリッタ24は透過率が50%以上である(透過率50%以上の透過仕様とする)ことが好ましい。装着者はビームスプリッタ24を介して外部を視認することになるが、レンズ部22の小型化により視界の遮断領域を最小化する効果に加え、このような透過仕様により、より視野を確保することができる。
【0037】
上述したように、本実施形態に係るマスク1では、映像投影装置20を設けることで装着者に情報を視認させることができるだけでなく、面体内に設ける映像投影装置20の小型化(省スペース化)及び簡素化が可能である。このような映像投影装置20は、簡易で小型化が可能な構造であるため、面体内のスペースが小さいマスクにも実装が可能であり、マスクへの実装の自由度を向上させ、また光学要素(光学部品)が外部の障害物と接触することを避けるような実装が可能となる。また、本実施形態に係るマスク1は、様々なサイズの既存のフルフェース型のマスクの中から選択して映像投影装置20を後付けで取り付けることで、装着者の顔のサイズに合わせるように容易に製造できる構造であり、製造時間とコストを低減させることができる。
【0038】
このように、本実施形態によれば、情報表示を行うための光学要素が外部の障害物と接触することを避けることが可能で、容易に且つ低コストで製造することが可能なフルフェース型のマスク1を提供することができる。
【0039】
また、映像投影装置20は、前面透明体11の内面側に設けられる、表示素子21とレンズ部22とを有する筐体である内部筐体(インナーユニット26)を有することができるが、このインナーユニット26の配置は次のようにすることができる。
【0040】
即ち、本実施形態では、
図4に示すようにインナーユニット26は、ノーズカップ13を避ける方向に、装着者の正中線Cに対応させる中心線から角度(
図4のθ)をつけて配設されることができる。このようにインナーユニット26を、ノーズカップ13を避けるように中心線から角度をつけて設けることで、ノーズカップ13との接触による装着者の違和感を避けること、並びに光学系のブレを避けることができる。また、このような効果は、ノーズカップ13の外側においてインナーユニット26の外形(主にレンズ部22の外形)より大きな凹部(溝部)を設けることでも得ることができる。無論、このような溝部を設け且つ中心線から角度をつけることもできる。
【0041】
<実施形態2>
本実施形態について、
図5~
図7を参照しながら、主に実施形態1では必須でないなどの理由から説明しなかった点や実施形態1との相違点について説明するが、実施形態1で説明した様々な例が適用できる。
図5は、実施形態2に係るフルフェース型のマスクにおけるビームスプリッタの角度調整機構の一例を示す側面図で、
図6は、
図5の角度調整機構における調整の様子を示す模式図である。
【0042】
投影ユニット23から出る光線と瞳の位置とを合わせることで、装着者に合った情報の表示が可能である。そのため、
図5に示すように、本実施形態における映像投影装置20はビームスプリッタ24の反射角度を調整する角度調整機構30を有する。角度調整機構30は、上記反射角度の調整が可能であればよいが、ここでは簡素な例として、フレーム部12に固定された固定具31に対し、ビームスプリッタ24の配設角度が調整可能に取り付けられている例を挙げている。例えばビームスプリッタ24に設けた回転軸24rを固定具31に固定しておくことで、角度を変えることができる。
【0043】
図6に示すように、固定具31は、回転軸24rを中心にビームスプリッタ24を回転させた際に、どの調整位置に位置するかを示し且つその位置においてビームスプリッタ24側の突起部材などと係合して角度を固定する複数の角度固定部32を備える。各角度固定部32は、それぞれに対応して、ビームスプリッタ24の角度が或る程度の強さで動かさない限り固定できるような機構とするとよい。また、どの調整位置に位置するかは、ビームスプリッタ24側に設けた角度指示部33で視認することができる。
【0044】
具体的には、
図6に示すように角度調整機構30を角度調整機構30aの状態、つまり調整値下限の状態にすることで、ビームスプリッタ24をビームスプリッタ24aで示す角度で配置させ、矢印で示す光路aを選択することができる。同様に、角度調整機構30を角度調整機構30bの状態、つまり調整値中央(角度固定部32中の角度固定部32cで示す位置)の状態にすることで、ビームスプリッタ24をビームスプリッタ24bで示す角度で配置させ、矢印で示す光路bを選択できる。同様に、角度調整機構30を角度調整機構30cの状態、つまり調整値上限の状態にすることで、ビームスプリッタ24をビームスプリッタ24cで示す角度で配置させ、矢印で示す光路cを選択することができる。
【0045】
このような角度調整機構30により、凹面鏡25からの光線のビームスプリッタ24での反射角度を変えることで、光線の到達位置を瞳の位置に対して上下方向に変えることができる。つまり、角度調整機構30により、面体内にある映像投影装置20において投影映像が最適に見える位置を、装着者の瞳の位置に合わせるように調整することができる。つまり、本実施形態では、角度調整機構30を備えることで、装着者の眼の位置に合わせて情報表示を行うことができる。
【0046】
ここで例示したように、ビームスプリッタ24が平面部品であるプレート型のビームスプリッタである場合には、装着者が最適な角度を容易に選択することができ、また選択した角度に合わせるように容易に調整することができる。角度調整機構30は、マスク1内の密閉性の確保の観点から外部からの調整を行うのではなく装着者がマスク1を装着する前に調整を行うような機構とするとよい。無論、角度調整機構30は、外部からの指示により自動的に調整する電動機構を備えることもできる。
【0047】
また、角度調整機構30で調整された角度によっては表示される映像の輝度が変化する。それに対応できるような構成について、映像投影装置20に含むことができる他の制御系の構成要素とともに、
図7を参照しながら説明する。
図7は、
図5のマスクに具備された制御装置の一構成例を示すブロック図である。
【0048】
図7に示すように、映像投影装置20に具備される制御装置70は、制御部71、表示素子21、映像取得部41、測距デバイス42、表示制御部72、フォーカス調整部73、情報受信部74、映像送信部75、及び調整角度検知部76を有することができる。なお、測距デバイス42及びフォーカス調整部73は、本実施形態では採用しないことができ、実施形態4として後述する。
【0049】
制御部71は、制御装置70の主制御部となる部位であり、映像投影装置20の全体を制御する。制御部71は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、作業用メモリ、及び表示制御や情報処理制御等のプログラムを記憶した不揮発性の記憶装置などでなる制御コンピュータによって実現することができる。また、制御部71は、例えば集積回路(Integrated Circuit)を含んで実現することもできる。
【0050】
表示制御部72は、表示素子21に接続され、表示素子21での表示を制御する。
情報受信部74は、スマートフォン等の情報処理装置やサーバ装置などの外部装置から表示させる情報を、無線通信又は有線通信で受信する。なお、スマートフォン等の情報処理装置は、装着者への指示等を行う管理者が使用することができ、これにより管理者が装着者に指示を出すことができる。また、情報受信部74は、情報として、管理者等が管理する外部装置側の映像(例えば管理者の顔の映像など)を受信することもできる。上記のサーバ装置は装着者への指示等を行う管理者がアクセス可能なコンピュータとすることができ、これにより管理者がサーバ装置を介して装着者に指示を出すことができる。
【0051】
制御部71は、情報受信部74で受信された情報を受け取り、表示素子21で表示させる映像を構築し、表示制御部72に表示を指示する。無論、情報受信部74で受信される情報は表示させる映像そのものであってもよい。また、制御部71は、内部の記憶装置に予め格納された情報を読み出して映像を構築して表示指示を行うことや、予め格納された映像を読み出して表示指示を行うこともできる。
【0052】
映像取得部41は、赤外線カメラ及び可視カメラの少なくとも一方などの撮像装置であり、アウターユニット27において撮影範囲がマスク1を装着した装着者の前方を向くように配設されることができる。赤外線カメラは、当該赤外線カメラが受光する赤外線に基づいて、装着者の周辺の環境を撮像し、可視カメラは、当該可視カメラが受光する可視光に基づいて、装着者の周辺の環境を撮像する。映像取得部41で取得された映像も、制御部71が表示制御部72を介して表示素子21に表示させることができる。但し、実際に装着者の前面に見える風景は前面透明体11(及びビームスプリッタ24)を介して視野の確保ができているため、装着者によって視認できる。よって、映像取得部41で取得された映像を表示させる場合には、赤外線カメラの映像(温度分布を示すような映像など)を表示させるなど実際に視認できない映像を表示素子21に表示させることがよい。
【0053】
また、映像送信部75は、映像取得部41で取得された映像又はビームスプリッタ24に表示される映像などを、上述したスマートフォン等の情報処理装置やサーバ装置に送信し、これにより管理者は装着者の状況を把握することができる。ビームスプリッタ24に表示される映像を送信する場合には、その映像は、映像取得部41で取得された映像と表示素子21に表示させる映像とを合成するなどして得ることができる。
【0054】
調整角度検知部76は、固定具31の目盛りの位置(角度固定部32の位置)のそれぞれに設けられたセンサであり、各目盛りに合うとそれを検知し、制御部71に検知結果を出力する。制御部71はこの検知結果を表示制御部72に伝え、表示制御部72は、角度調整機構30で調整された反射角度に応じて、表示素子21の表示輝度(例えば最大輝度又は画面全体の平均輝度など)を変更する。具体的には、調整値の上限、中央、下限に対応して、表示素子21の表示輝度を上げるように、つまり下限では輝度が大で、上限では輝度が小となるように、制御するとよい。
【0055】
マスク1と装着者の顔面との位置関係は、マスク1の機能を満足するため顔面形状により特定の位置に決定されてしまう。一方で、映像投影装置20はマスク1の本体(前面透明体11及びフレーム部12等)固定しているため、瞳位置の個人差により投影映像が瞳に届かないといった事態が生じ得る。しかし、角度調整機構30を備えることで、このような問題を解消し、マスク1を最適な光線位置になるように設定することができる。また、角度調整を行う対象であるビームスプリッタ24を平面部品とすることで、調整による光路長の変動を抑えることができ、調整範囲全域において投影映像の画質を確保することができる。
【0056】
さらに、調整角度検知部76を備えるなどして、検知された角度に応じて映像の輝度を調整することで、調整された角度によって視認される映像の輝度が変わらないように調整することができる。ここでは、角度調整機構30として手動で調整する機械的な調整機構を設けた例を挙げたが、外部に設けた操作スイッチや外部のスマートフォン等の情報処理装置からの制御により自動的に角度を変更する機構を採用することもできる。その場合には、調整角度検知部76は不要で、その変更制御に合わせた輝度調整の制御も行えばよい。
【0057】
上述したように、
図7において制御装置70として示した構成要素のうち、表示素子21がインナーユニット26に内蔵され、調整角度検知部76が投影ユニット23に備えられ、それ以外の構成要素がアウターユニット27に内蔵される。この構成では、映像取得部41で取得された映像はアウターユニット27から有線でインナーユニット26へ直接送信されることとなる。但し、このような配置に限ったものではなく、例えば、表示素子21とレンズ部22との間の光路上にミラーを配置することで表示素子21であってもアウターユニット27に内蔵させることもできる。なお、映像取得部41及び測距デバイス42はアウターユニット27側に備えることが、インナーユニット26や投影ユニット23側に備える場合に比べて前面透明体11を介さない分だけ取得される映像の鮮明さや測距の精度を上げることができる。また、インナーユニット26とアウターユニット27とが有線で接続されることを前提として説明したが、無線接続される構成を採用することもできる。
【0058】
<実施形態3>
本実施形態について、
図8及び
図9を参照しながら、実施形態2との相違点について説明するが、実施形態1,2で説明した様々な例が適用できる。
図8は、実施形態3に係るフルフェース型のマスクにおける表示機能の構成部品の一例をマスクに取り付ける様子を示す斜視図で、
図10は、
図8に続く、構成部品をマスクに取り付ける様子を示す斜視図である。
【0059】
図1等でも図示したが、
図8においてマスク1の表示機能の構成部品(つまり映像投影装置20)を抽出して内側から見た様子を分解図で示したように、映像投影装置20は、3つのユニットで構成されることができる。即ち、映像投影装置20は、投影ユニット(コンバイナユニット)23と、レンズ部22及び表示素子21を含むインナーユニット26、及び面体外側の映像取得部41や他の制御基板等を含むアウターユニット27の3つのユニットで構成されることができる。
【0060】
さらに、本実施形態では、インナーユニット26とアウターユニット27とは前面透明体11を挟んだ状態で互いに強固に固定されるものとする。また、投影ユニット23の固定はアウターユニット27又はアウターユニット27及びフレーム部12又はアウターユニット27及びフレーム部12及び前面透明体11などを用いて行う。
【0061】
そして、本実施形態では、インナーユニット26と投影ユニット23とは、互いに位置決めする位置決め構造26a,23aを有する。つまり、投影ユニット23の取り付け位置はインナーユニット26に設けた位置決め構造により制約されることになる。なお、位置決め構造26a,23aは、前者に凸部、後者にそれと噛み合う凹部を設けたものを図示しているが、互いの位置を決めることが可能な形状を有していれば、その形状は問わない。
【0062】
図8及び
図9に示すように、投影ユニット23を取り付ける際、投影ユニット23の位置決め構造23aとインナーユニット26の位置決め構造26aとが互いに噛み合うような位置に落ち着き、その状態でねじ等によりインナーユニット26とアウターユニット27とを固定する。その際、投影ユニット23の位置を調整する作業は必要とせず、単純な突き当て動作によって組立を行うことができる。
【0063】
実際、前面透明体11である面体は曲面として構成されることとなるが、各ユニットの僅かな取り付け位置の差により面体内での姿勢が変わってしまう。しかし、この位置決め構造によって、インナーユニット26と投影ユニット23との間の位置決めを正確に行うことができ、正常な投射を行うことができる。また、このような構成によっても、マスク1の本体を製造後に映像投影装置20を構成する3つのユニットを取り付け、マスク1を製造することが容易となる。
【0064】
また、インナーユニット26と投影ユニット23とを予め別部品として構成することで、個別の部品交換に対応することができる。例えば投影ユニット23のキズ等が生じた場合には投影ユニット23だけを交換すれば済む。
【0065】
また、投影ユニット23は透明部品で構成され、インナーユニット26非透明部品で構成されることができる。投影ユニット23をビームスプリッタ24以外も透明部品(無論、凹面鏡25の一部は除く)で構成することで、装着者の視覚を十分に確保することができる。
【0066】
<実施形態4>
本実施形態について、
図7、
図10~
図12を参照しながら、実施形態2との相違点について説明するが、実施形態1~3で説明した様々な例が適用できる。
図10は、実施形態4に係るフルフェース型のマスクの一構成例を示す斜視図で、
図11は、
図10のマスクにおける構成部品の一部を示す斜視図である。
図12は、
図10のマスクにおける表示制御の一例を示す模式図である。なお、
図10は
図1の斜視図に相当する。
【0067】
本実施形態における映像投影装置20は、
図7、
図10、及び
図11に示すように、測距デバイス(測距離デバイス)42及びフォーカス調整部73を備えるとともに、レンズ部22に液体レンズ等のフォーカス調整レンズを有するように構成する。
【0068】
測距デバイス42は、障害物までの距離を計測するデバイスであり、アウターユニット27に備えられることができる。測距デバイス42は、例えば映像取得部41の例として説明した赤外線カメラを利用するなど、赤外線センサにより障害物までの距離を計測し、制御部71に計測結果を出力する。但し、距離を計測する方式は問わない。なお、障害物とは、装着者の前面に見える物体であり、計測できる閾値以上の距離の場合には無限遠と同等の処理を行うなどして障害物がないとした計測結果を出力することができる。
【0069】
制御部71は上記計測結果を受けて、フォーカス調整部73にフォーカス調整レンズにおけるフォーカスを調整するように指示し、フォーカス調整部73がその調整をフォーカス調整レンズに対して実行する。
【0070】
ここで、フォーカス調整部73は、フォーカス調整レンズに対し、表示面となるビームスプリッタ24において、測距デバイス42で計測された距離に表示対象映像が視認されるようにフォーカスを調整する。例えば、
図12に示したように、計測された距離が距離Maである場合には距離Maと一致する投射距離Daとして映像を投射し、距離Mbである場合には距離Mbと一致する投射距離Dbとして映像を投射するように、フォーカスを調整する。このように、本実施形態では、測距デバイス42の計測結果(測距離情報)に基づきフォーカス調整レンズを制御することで投影映像の投影距離を制御し、装着者の正面に存在する物体の距離に映像を投影する(提示する映像に距離表現を加える)。但し、投影距離には上限を設け、一定の距離以上遠方には映像を投影しないよう制御するとよい。
【0071】
このようにして、計測された距離に映像(例えば赤外線センサにより得た温度分布画像)があるようにフォーカス調整を行うことで、装着者は暗所でも距離感を得ることができる。
【0072】
実際、装着者が暗所にてマスク1を使用する場合、ビームスプリッタ24への投影映像を頼りに行動することになるが、測距デバイス42及びフォーカス調整レンズを備えない構成では、距離の表現が行えないために手探りでの物体の探索が必要となることが多い。画像に距離感を出すための一般的な手段としては、両眼に対してそれぞれ映像を投影する3次元表現があるが、実装スペース不足や、面体側に固定する関係上瞳孔間距離の調整が非常に困難である。そのため、本実施形態では、映像投影装置20を単眼用とするとともに、このような測距デバイス42及びフォーカス調整レンズを備えることにより、このような問題を解決し、小型なサイズを維持したまま片眼用の投影で装着者に直感的に物体の探索を行わせる。これにより、マスク1の装着者に手探りでの物体の探索を行わせない又はそのような探索を補助することができる。
【0073】
また、レンズ部22にフォーカス調整レンズを用いてフォーカス調整を行う例を挙げたが、このようなフォーカス調整を行わないような構成を採用することもできる。例えば、アウターユニット27に測距デバイス42を設け、制御部71が表示制御部72に対し、計測された距離を数字や色等で映像に含めるように画像(例えば赤外線センサにより得た温度分布画像)があるように表示制御を行わせる。このような構成であっても、装着者は暗所でも距離感を得ることができる。
【0074】
<実施形態5>
本実施形態について、
図13及び
図14を参照しながら実施形態2との相違点について説明するが、実施形態1~4で説明した様々な例が適用できる。
図13は、実施形態5に係る作業者装置の一構成例を示すブロック図である。
図14は、実施形態5に係る作業者装置に具備される映像投影装置で表示される表示画像の一例を示す図である。
【0075】
本実施形態では、フルフェース型のマスク1において、マスク1の装着者となる作業者が背負うボンベ及び制御ボックスを加えた装置である作業者装置について説明する。この作業者装置は、図示しないボンベと、映像投影装置20側の制御装置70の代替例としての、
図13に示す第1制御装置70a及び第2制御装置70bと、を備える。なお、本実施形態では、作業者がボンベを利用する場合を例にしているが、ボンベを備えない作業者装置として構成することもでき、その場合には後述する圧力センサ79及びボンベ残量判定部78も不要である。
【0076】
ボンベを必要とする作業者は、例えば消火活動を行う消防隊員であるが、これに限られない。例えば、作業者は、警察官、自衛隊員、レスキュー隊員、建設現場の作業者、任意の施設内での作業者等であってもよい。つまり、作業者装置は、様々な作業者に携帯され得る。
【0077】
上述の制御ボックスは、その外形について図示しないが、ボンベを背負うための背負いベルトにボンベとともに取り付けられることができる。但し、制御ボックスは、腰に巻き付けるウエストベルト又は肩にかけるショルダーベルトに取り付けることもできる。
【0078】
第1制御装置70a及び第2制御装置70bは、
図7の制御装置70の構成要素の他に、通信インターフェース(I/F)77a,77bを備えるとともに、第2制御装置70b側にボンベ残量判定部78及び圧力センサ79を備える。通信I/F77a,77bは、それぞれ第1制御装置70a、第2制御装置70bに設けられ、それらの間を有線ケーブルで繋ぎ、情報の送受を行う。
【0079】
第1制御装置70aの構成要素は、
図1のマスク1における投影ユニット23、インナーユニット26、アウターユニット27のいずれかに内蔵される。少なくとも調整角度検知部76は投影ユニット23に備えられ、表示素子21はインナーユニット26に備えられ、映像取得部41及び測距デバイス42はアウターユニット27側に備えられる。インナーユニット26とアウターユニット27とは有線で接続されることができる。また、第2制御装置70bの構成要素は、上述の制御ボックスに内蔵される。
【0080】
第1制御装置70aは、表示素子21に接続された表示制御部72、フォーカス調整部73、測距デバイス42、調整角度検知部76、及び映像取得部41が通信I/F77aに接続され、第2制御装置70bの制御部71bにより制御されることができる。つまり、例えば、アウターユニット27の映像取得部41で取得された映像は、通信I/F77a、有線ケーブル、及び通信I/F77bを介して制御ボックス側の制御部71bに渡され、制御部71bで処理されるなど、第1制御装置70aの制御は、制御部71bが担う。このように、アウターユニット27と制御ボックスとは有線で接続されることができる。
【0081】
第2制御装置70bは、通信I/F77b、制御部71b、情報受信部74、映像送信部75、ボンベ残量判定部78、及び圧力センサ79を備える。制御部71bは、圧力センサ79からの圧力検出データを受信しボンベ残量判定部78を制御するとともに、一部において通信I/F77a,77bを経由した制御を行う以外は
図7の制御部70と同様の制御を行う。例えば、制御ボックスの制御部71bが表示用の映像を生成して有線でアウターユニット27に送信し、アウターユニット27の表示制御部72が実際の表示用のデータに変換した後、インナーユニット26内の表示素子21に送って表示させることができる。なお、
図13の構成例において、第1制御装置70a側においてもその全体を制御する制御部を備える構成を採用することもでき、その場合、この制御部は制御部71bと協働しながら処理を行えばよい。
【0082】
情報受信部74は、
図7の情報受信部74として説明した機能をもつ。即ち、情報受信部74は、スマートフォン等の情報処理装置やサーバ装置などの外部装置から表示させる情報を無線通信又は有線通信で受信し、制御部71bに渡す。制御部71bは、情報受信部74で受信された情報を受け取り、表示素子21で表示させる映像を構築し、通信I/F77bを介して有線ケーブルにて第1制御装置70aに渡す。第1制御装置70aでは、通信I/F77aを介してその映像を表示制御部72で受信し、表示制御部72が表示素子21に表示させることができる。また、情報受信部74は、情報として、管理者等が管理する外部装置側の映像(例えば管理者の顔の映像など)を受信し、制御部71bに渡すこともできる。このようにして受信された外部装置側の映像も、制御部71bが通信I/F77b、有線ケーブル、及び通信I/F77aを介して表示制御部72に渡し、表示制御部72が表示素子21に表示させることができる。このようにして、情報受信部74で受信された情報は、インナーユニット26及び投影ユニット23による表示対象となり、作業者が視認できる。
【0083】
圧力センサ79は、実際には、作業者が背負っているボンベに設けられており、制御ボックスへは有線ケーブルで接続されることができる。圧力センサ79は、ボンベ内の気体(例えば空気)の残量を検出するために、ボンベ内の圧力を検出し、制御部71bに検出データを出力する。
【0084】
ボンベ残量判定部78は、作業者装置を携帯する作業者が携帯するボンベ内の気体(例えば空気)の残量が所定の閾値未満になったか否かを判定する。具体的には、ボンベ残量判定部78は、圧力センサ79の出力に基づいて特定されるボンベ内の気体の残量が、所定の閾値未満になったか否かを判定する。
【0085】
この判定結果は、ボンベ内の気体の残量が閾値未満となったことによる緊急通知として作業者に通知されることができる。例えば、
図14で例示する表示画像80では、メッセージ表示領域82に、緊急通知の種別を表す情報として「ボンベ残量」という文字が表示されている。メッセージ表示領域82は、上述したボンベ残量の緊急通知以外の作業者への通知も表示されることができる。なお、メッセージ表示領域82には、例えば「落下物に注意せよ」など、管理者側から送信され情報受信部74で受信された情報を表示させることもできる。
【0086】
その他、第2制御装置70bは、図示しないが、作業者装置を携帯する作業者の動きを検出するために、加速度を検出し、制御部71bに検出データを出力する加速度センサと、その検出データに基づき動作を判定する動作判定部と、を備えることができる。この動作判定部は、作業者装置を携帯する作業者の動作状態が所定の動作状態であるか否かを判定する。ここで、所定の動作状態とは、作業者に異常が発生した際の動作であり、具体的には例えば所定時間以上にわたって継続する静止状態である。動作判定部は、作業者の動作状態を、作業者の動きを検出する加速度センサ等のセンサからの出力に基づいて判定する。この判定結果も、表示画像80のメッセージ表示領域82などに表示させることができる。
【0087】
また、
図14に示した表示画像80には、メッセージ表示領域82だけではなく、撮像画像表示領域81、ボンベ表示領域83、及び装置ステータス表示領域84のいずれか1又は複数を含むことができる。撮像画像表示領域81は、映像取得部41で取得された映像が表示される領域であり、例えば、赤外線カメラ映像が表示される。ボンベ表示領域83は、ボンベ内の気体の残量(圧力)が表示される。装置ステータス表示領域84は、第1制御装置70a及び第2制御装置70bの双方又は一方の装置のステータスを表示する領域であり、例えばバッテリ残量及び通信に用いる電波の強度が表示される。
【0088】
なお、
図14に示した表示画像80は、一例に過ぎず、上述した情報以外の情報を表示する領域を含んでもよい。例えば、作業者の活動場所のマップが表示されてもよい。このマップは、予め第1制御装置70a又は第2制御装置70bが保持していてもよいし、管理者側から送信され情報受信部74で受信されてもよい。
【0089】
また、第2制御装置70bは、図示しないが、ボンベ残量の判定結果や作業者の動作状態の判定結果を示す通知を外部装置に送信する通知送信部を備えることができる。このような構成により、管理者は作業者の状態を知ることができ、適宜、外部装置から必要なメッセージを入力し、情報受信部74で受信できるように送信することができる。
【0090】
また、本実施形態では、インナーユニット26にアウターユニット27が有線接続され、アウターユニット27に制御ボックスが有線接続された構成例を挙げて説明したが、次のような他の構成例を採用することもできる。即ち、本実施形態では、例えば映像取得部41及び測距デバイス42及び圧力センサ79等の情報取得機器を備えたアウターユニット27を、制御ボックスに有線で接続し、その制御ボックスとインナーユニット26とを有線で接続する構成を採用することもできる。後者の有線は、アウターユニット27の内部を通過するようなケーブルとすることもできる。また、この場合にも圧力センサ79は、作業者が背負っているボンベに設けられており、アウターユニット27の本体へは有線ケーブルで接続されることができる。そして、このような構成例の場合、
図13とはその接続形態が異なり、アウターユニット27で取得された映像やデータは、制御ボックスを経由して、インナーユニット26で表示させることができる。
【0091】
また、本実施形態では、インナーユニット26にアウターユニット27が有線接続され、アウターユニット27に制御ボックスが有線接続された構成例と、上記他の構成例(制御ボックスとインナーユニット26とが直接有線接続された例)とを挙げて説明した。但し、本実施形態では、これらの有線接続のいずれか1又は複数が無線接続となるように構成することもできる。また、圧力センサ79と制御ボックス本体との接続(又は上記他の構成例における圧力センサとアウターユニット27本体との接続)も有線に限らず、無線であってもよい。
【0092】
なお、実施形態2のように制御ボックスを備えない構成だけではなく、本実施形態で説明した制御ボックスを備えた上記他の構成例においても、制御ボックスを介さない映像送信を可能にしてもよい。即ち、制御ボックスを介さずアウターユニット27からインナーユニット26へ映像取得部41で取得された映像を有線又は無線で送信するように構成しておくこともできる。
【0093】
<実施形態6>
本実施形態について、
図15及び
図16を参照しながら実施形態1との相違点について説明するが、実施形態1~5で説明した様々な例が適用できる。
図15は、実施形態6に係るフルフェース型のマスクの一構成例を示す正面図で、
図16は、
図15のマスクの一部の断面を示した断面図である。
【0094】
本実施形態として、
図4で例示したインナーユニット26のノーズカップ13に対する配置の例の変形例を説明する。
図15に示すように、本実施形態に係るマスク1aは、
図4のマスク1において、インナーユニット26を備える映像投影装置20を、インナーユニット26bを備える映像投影装置20aに変更したものである。
【0095】
図16に示すように、インナーユニット26bは、上側のレンズ自体は装着者の正中線Cに対応させる中心線に対し角度をつけず平行とし、レンズ部22aの内部に折り返しミラー22b,22cを設けることでノーズカップ13を避ける形状としている。ここで、レンズ部22aの上側のレンズから出射される光の経路も正中線Cに対応させる中心線に平行としている。このような構成例でも、ノーズカップ13との接触による装着者の違和感を避けること、並びに光学系のブレを避けることができる。また、本実施形態でも、ノーズカップ13の外側においてインナーユニット26bの外形(主にレンズ部22aの外形)より大きな凹部(溝部)を設けてもよい。
【0096】
<他の実施形態等>
[a]
各実施形態において、フルフェース型のマスクの機能などについて説明したが、各マスクは、例示した形状や構成の例に限ったものではなく、各マスクとしてこれらの機能が実現できればよい。
【0097】
[b]
各実施形態に係るマスクの映像投影装置は、次のようなハードウェア構成を有していてもよい。
図17は、フルフェース型のマスクの映像投影装置におけるハードウェア構成の一例を示す図である。なお、上記他の実施形態[a]についても同様である。
【0098】
図17に示すフルフェース型のマスクの映像投影装置100は、プロセッサ101、メモリ102、及びインターフェース103を有することができる。プロセッサ101は、例えば、マイクロプロセッサ、MPU(Micro Processor Unit)、又はCPUなどであってもよい。プロセッサ101は、複数のプロセッサを含んでもよい。メモリ102は、例えば、揮発性メモリ及び不揮発性メモリの組み合わせによって構成される。各実施形態で説明したマスクの映像投影装置における機能は、プロセッサ101がメモリ102に記憶されたプログラムを読み込んで実行することにより実現される。この際、情報の入出力は、内部の他の部位や外部の他の装置との通信を行う通信インターフェース等のインターフェース103を介して行うことができる。また、実施形態5における制御ボックス(第2制御装置70b)も
図17で例示するハードウェア構成を採用することができる。この場合も同様に、制御ボックスの処理機能は、プロセッサ101がメモリ102に記憶されたプログラムを読み込んで実行することにより実現される。この際、情報の入出力は、第1制御装置70aや外部の他の装置との通信を行う通信インターフェース等のインターフェース103を介して行うことができる。
【0099】
上述の例において、プログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0100】
[c]
さらに、上述した実施形態2において、表示制御の手順を例示したように、本開示は、角度調整機構を備えたフルフェース型のマスクにおける表示制御方法としての形態も含む。この表示制御方法は、映像投影装置が、角度調整機構で調整された反射角度に応じて、表示素子の表示輝度を変更する。なお、その他の例については、上述した各実施形態で説明した通りである。また、この場合のプログラムは、映像投影装置に具備された制御コンピュータに上述した変更の処理を実行させるためのプログラムである。
【0101】
さらに、上述した実施形態4において、フォーカス調整制御の手順を例示したように、本開示は、測距デバイス及びフォーカス調整レンズを備えたフルフェース型のマスクにおける表示制御方法としての形態も含む。この表示制御方法は、測距デバイスが、障害物までの距離を計測し、フォーカス調整レンズが、表示面となるビームスプリッタにおいて、測距デバイスで計測された距離に表示対象映像が視認されるようにフォーカスを調整する。なお、その他の例については、上述した各実施形態で説明した通りである。また、この場合のプログラムは、映像投影装置に具備された制御コンピュータに上述した処理を実行させるためのプログラムである。
【0102】
なお、本開示は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。また、本開示は、それぞれの実施形態を適宜組み合わせて実施されてもよい。
【0103】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
装着者の少なくとも両眼部を覆う部分に対応する部分に配された前面透明体と、
前記前面透明体の周囲を覆うフレーム部と、
単眼用の映像投影装置と、
を備え、
前記映像投影装置は、前記前面透明体の内面側に、表示素子と、前記表示素子からの出射光を通過させるレンズ部と、ビームスプリッタ及び凹面鏡を有する投影ユニットと、を有し、
前記投影ユニットは、前記前面透明体の内面側の空間を介して前記レンズ部からの出射光を前記ビームスプリッタに入射し、前記ビームスプリッタを透過させて前記凹面鏡で反射させ、前記凹面鏡からの反射光を前記ビームスプリッタで装着者の片眼側に反射させるように配設される、
フルフェース型のマスク。
(付記2)
前記映像投影装置は、前記ビームスプリッタの反射角度を調整する角度調整機構を有する、
付記1に記載のフルフェース型のマスク。
(付記3)
前記前記映像投影装置は、前記角度調整機構で調整された反射角度に応じて、前記表示素子の表示輝度を変更する、
付記2に記載のフルフェース型のマスク。
(付記4)
前記ビームスプリッタは、透過率が50%以上である、
付記1~3のいずれか1項に記載のフルフェース型のマスク。
(付記5)
前記映像投影装置は、前記前面透明体の外面側に設けられる外部筐体と、前記前面透明体の内面側に設けられる、前記表示素子と前記レンズ部とを有する筐体である内部筐体と、を有し、
前記内部筐体と前記投影ユニットとは、互いに位置決めする位置決め構造を有し、
前記内部筐体と前記外部筐体とは前記前面透明体を挟んだ状態で互いに固定される、
付記1~4のいずれか1項に記載のフルフェース型のマスク。
(付記6)
前記投影ユニットは透明部品で構成され、前記内部筐体は非透明部品で構成される、
付記5に記載のフルフェース型のマスク。
(付記7)
前記映像投影装置は、前記前面透明体の外面側に設けられる外部筐体を有し、
前記外部筐体には、障害物までの距離を計測する測距デバイスが設けられ、
前記レンズ部は、フォーカス調整レンズを有し、
前記フォーカス調整レンズは、表示面となる前記ビームスプリッタにおいて、前記測距デバイスで計測された距離に表示対象映像が視認されるようにフォーカスを調整する、
付記1~6のいずれか1項に記載のフルフェース型のマスク。
(付記8)
装着者の口元及び鼻孔の周囲を覆う内部接顔体を備え、
前記映像投影装置は、前記前面透明体の内面側に設けられる、前記表示素子と前記レンズ部とを有する筐体である内部筐体を有し、
前記内部筐体は、前記内部接顔体を避ける方向に、装着者の正中線に対応させる中心線から角度をつけて配設される、
付記1~7のいずれか1項に記載のフルフェース型のマスク。
(付記9)
装着者の少なくとも両眼部を覆う部分に対応する部分に配された前面透明体と、前記前面透明体の周囲を覆うフレーム部と、単眼用の映像投影装置と、を備えたフルフェース型のマスクにおける表示制御方法であって、
前記映像投影装置は、前記前面透明体の内面側に、表示素子と、前記表示素子からの出射光を通過させるレンズ部と、ビームスプリッタ及び凹面鏡を有する投影ユニットと、前記ビームスプリッタの反射角度を調整する角度調整機構と、を有し、
前記投影ユニットは、前記前面透明体の内面側の空間を介して前記レンズ部からの出射光を前記ビームスプリッタに入射し、前記ビームスプリッタを透過させて前記凹面鏡で反射させ、前記凹面鏡からの反射光を前記ビームスプリッタで装着者の片眼側に反射させるように配設され、
前記表示制御方法は、前記映像投影装置が、前記角度調整機構で調整された反射角度に応じて、前記表示素子の表示輝度を変更する、
表示制御方法。
(付記10)
装着者の少なくとも両眼部を覆う部分に対応する部分に配された前面透明体と、前記前面透明体の周囲を覆うフレーム部と、単眼用の映像投影装置と、を備えたフルフェース型のマスクにおける表示制御方法であって、
前記映像投影装置は、前記前面透明体の内面側に、表示素子と、前記表示素子からの出射光を通過させるフォーカス調整レンズと、ビームスプリッタ及び凹面鏡を有する投影ユニットと、を有するとともに、前記前面透明体の外面側に、障害物までの距離を計測する測距デバイスが設けられた外部筐体を有し、
前記投影ユニットは、前記前面透明体の内面側の空間を介して前記フォーカス調整レンズからの出射光を前記ビームスプリッタに入射し、前記ビームスプリッタを透過させて前記凹面鏡で反射させ、前記凹面鏡からの反射光を前記ビームスプリッタで装着者の片眼側に反射させるように配設され、
前記表示制御方法は、
前記測距デバイスが、障害物までの距離を計測し、
前記フォーカス調整レンズが、表示面となる前記ビームスプリッタにおいて、前記測距デバイスで計測された距離に表示対象映像が視認されるようにフォーカスを調整する、
表示制御方法。
(付記11)
装着者の少なくとも両眼部を覆う部分に対応する部分に配された前面透明体と、前記前面透明体の周囲を覆うフレーム部と、単眼用の映像投影装置と、を備えたフルフェース型のマスクにおける、前記映像投影装置に具備された制御コンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記映像投影装置は、前記前面透明体の内面側に、表示素子と、前記表示素子からの出射光を通過させるレンズ部と、ビームスプリッタ及び凹面鏡を有する投影ユニットと、前記ビームスプリッタの反射角度を調整する角度調整機構と、を有し、
前記投影ユニットは、前記前面透明体の内面側の空間を介して前記レンズ部からの出射光を前記ビームスプリッタに入射し、前記ビームスプリッタを透過させて前記凹面鏡で反射させ、前記凹面鏡からの反射光を前記ビームスプリッタで装着者の片眼側に反射させるように配設され、
前記プログラムは、前記制御コンピュータに、前記角度調整機構で調整された反射角度に応じて、前記表示素子の表示輝度を変更する処理を実行させる、
プログラム。
(付記12)
装着者の少なくとも両眼部を覆う部分に対応する部分に配された前面透明体と、前記前面透明体の周囲を覆うフレーム部と、単眼用の映像投影装置と、を備えたフルフェース型のマスクにおける、前記映像投影装置に具備された制御コンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記映像投影装置は、前記前面透明体の内面側に、表示素子と、前記表示素子からの出射光を通過させるフォーカス調整レンズと、ビームスプリッタ及び凹面鏡を有する投影ユニットと、を有するとともに、前記前面透明体の外面側に、障害物までの距離を計測する測距デバイスが設けられた外部筐体を有し、
前記投影ユニットは、前記前面透明体の内面側の空間を介して前記フォーカス調整レンズからの出射光を前記ビームスプリッタに入射し、前記ビームスプリッタを透過させて前記凹面鏡で反射させ、前記凹面鏡からの反射光を前記ビームスプリッタで装着者の片眼側に反射させるように配設され、
前記プログラムは、前記制御コンピュータに、
前記測距デバイスで障害物までの距離を計測させ、
表示面となる前記ビームスプリッタにおいて、前記測距デバイスで計測された距離に表示対象映像が視認されるように、前記フォーカス調整レンズにおけるフォーカスを調整する、
処理を実行させる、
プログラム。
【符号の説明】
【0104】
1、1a フルフェース型のマスク
11 前面透明体
12 フレーム部
13 ノーズカップ
20、100 映像投影装置
21 表示素子
22、22a レンズ部
22b、22c 折り返しミラー
23 投影ユニット
23a 位置決め機構
24 ビームスプリッタ
24r 回転軸
25 凹面鏡
26、26b インナーユニット
26a 位置決め機構
27 アウターユニット
30 角度調整機構
31 固定具
32 角度固定部
33 角度指示部
41 映像取得部
42 測距デバイス
70 制御装置
70a 第1制御装置
70b 第2制御装置
71、71b 制御部
72 表示制御部
73 フォーカス調整部
74、74b 情報受信部
75 映像送信部
76 調整角度検知部
77a、77b 通信I/F
78 ボンベ残量判定部
79 圧力センサ
80 表示画像
81 撮像画像表示領域
82 メッセージ表示領域
83 ボンベ表示領域
84 装置ステータス表示領域
101 プロセッサ
102 メモリ
103 インターフェース